JP2018106131A - 無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末 - Google Patents

無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラスに封止した際に無機ナノ蛍光体粒子の劣化を抑制することが可能な無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末を提供する。【解決手段】樹脂マトリクス2中に無機ナノ蛍光体粒子3が分散してなる無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1である。【選択図】図1

Description

本発明は、発光装置に使用される蛍光材料として好適な無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末に関する。
近年、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)等の励起光源を用い、これらの励起光源から発生した励起光を、蛍光体に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる発光装置が検討されている。また、蛍光体として、量子ドット等の無機ナノ蛍光体粒子を用いることが検討されている。量子ドットは、その直径を変えることにより蛍光波長の調整が可能であり、高い発光効率を有する(例えば、特許文献1〜3参照)。
無機ナノ蛍光体粒子は、大気中の水分や酸素と接触すると劣化しやすいという性質を有している。このため、無機ナノ蛍光体粒子は、外部環境と接しないように、ガラスにより封止する方法が検討されている(例えば特許文献4参照)。
国際公開第2012/102107号公報 国際公開第2012/161065号公報 特表2013−525243号公報 特開2012−87162号公報
無機ナノ蛍光体粒子をガラスで封止した場合、外部環境に起因する劣化は抑制できるものの、無機ナノ蛍光体粒子自体がガラスと反応して劣化するという問題がある。その結果、所望の発光効率を有する波長変換部材が得にくくなる。
以上に鑑み、本発明は、ガラスに封止した際に無機ナノ蛍光体粒子の劣化を抑制することが可能な無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末を提供することを目的とする。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末は、樹脂マトリクス中に無機ナノ蛍光体粒子が分散してなることを特徴とする。このようにすれば、ガラス中に封止した際に、無機ナノ蛍光体粒子とガラスの間に樹脂が介在しやすくなる。その結果、無機ナノ蛍光体粒子とガラスとの接触が抑制され、ガラスとの反応による無機ナノ蛍光体粒子の劣化を抑制することができるため、波長変換部材の発光効率が向上しやすくなる。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末は、平均粒子径が0.1〜500μmであることが好ましい。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末は、無機ナノ蛍光体粒子の平均粒子径が1〜100nmであることが好ましい。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末は、無機ナノ蛍光体粒子が、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs及びInSbから選択される少なくとも一種、またはこれら二種以上の複合体からなる量子ドット蛍光体であることが好ましい。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末は、樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末は、樹脂がシロキサン構造を有する化合物を含むことが好ましい。
本発明の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末の製造方法は、樹脂と無機ナノ蛍光体粒子を混合した後、樹脂を硬化させることにより無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を作製する工程、及び、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を粉砕する工程を含むことを特徴とする。
本発明の波長変換部材は、ガラスマトリクス中に上記の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末が分散してなることを特徴とする。
本発明の波長変換部材は、ガラスマトリクスがSn−P系ガラスまたはSn−P−F系ガラスからなることが好ましい。
本発明の波長変換部材は、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末とガラス粉末の焼結体からなることが好ましい。
本発明の波長変換部材は、ガラス粉末の平均粒子径が0.1〜100μmであることが好ましい。
本発明の波長変換部材の製造方法は、上記の波長変換部材の製造方法であって、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末とガラス粉末の混合物をプレス成型することを特徴とする。
本発明の発光装置は、上記の波長変換部材と、波長変換部材に励起光を照射する光源と、を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、ガラスに封止した際に無機ナノ蛍光体粒子の劣化を抑制することが可能な無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末の模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る波長変換部材の模式的断面図である。
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末の模式的断面図である。本実施形態に係る無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1は、樹脂マトリクス2中に無機ナノ蛍光体粒子3が分散してなる。
図2は、本発明の一実施形態に係る波長変換部材の模式的断面図である。本実施形態に係る波長変換部材4は、上記で説明した無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1がガラスマトリクス5中に分散してなる構造を有している。
図1及び2に示すように、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1は、樹脂マトリクス2中に無機ナノ蛍光体粒子3が分散してなる構造を有しているため、波長変換部材4において無機ナノ蛍光体粒子3とガラスマトリクス5の接触が抑制される。その結果、ガラスマトリクス5との反応による無機ナノ蛍光体粒子3の劣化を抑制することができるため、波長変換部材4の発光効率が向上しやすくなる。
無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1の平均粒子径は0.1〜500μm、1〜300μm、10〜200μm、20〜150μm、特に50〜100μmであることが好ましい。無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1の平均粒子径が小さすぎると、製造が困難になる傾向がある。一方、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1の平均粒子径が大きすぎると、ガラス粉末と混合し焼結して得られた波長変換部材4に気孔が発生しやすくなる。また、波長変換部材4中に無機ナノ蛍光体粒子3を均一に分散することが困難になる傾向がある。
樹脂マトリクス2を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂及びフッ素樹脂等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。特に耐熱性に優れたエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂としては、シロキサン構造を有する化合物が挙げられる。シロキサン構造を有する化合物とはシロキサン結合を少なくとも1つ分子内に有する化合物のことをいうが、複数のシロキサン結合を有するポリシロキサン化合物であることが好ましい。
無機ナノ蛍光体粒子3としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs及びInSb等の量子ドット蛍光体が挙げられる。これらは単独、または二種以上を混合して使用することができる。あるいは、これら二種以上からなる複合体(例えば、CdSe粒子表面がZnSにより被覆されたコアシェル構造体)を使用してもよい。また、無機ナノ蛍光体粒子としては、量子ドット蛍光体以外にも、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、希土類硫化物、アルミン酸塩化物及びハロリン酸塩化物等の無機粒子からなるものを使用することもできる。これらは単独、または二種以上を混合して使用することができる。無機ナノ蛍光体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1〜100nm、1〜50nm、1〜30nm、1〜15nm、さらには1.5〜12nm程度である。なお、本明細書において、平均粒子径はJIS−R1629に準拠して測定した値(D50)を指す。
波長変換部材4の発光効率は、ガラスマトリクス5中に分散した無機ナノ蛍光体粒子3の種類や含有量、及び波長変換部材4の厚みによって変化する。発光効率を高めたい場合、波長変換部材4の厚みを薄くして蛍光や励起光の透過率を高めたり、無機ナノ蛍光体粒子3の含有量を多くして、蛍光量を増大させることで調整すればよい。ただし、無機ナノ蛍光体粒子3の含有量が多くなりすぎると、製造時に焼結しにくくなり、気孔率が大きくなって、励起光が効率良く無機ナノ蛍光体粒子3に照射されにくくなったり、波長変換部材4の機械的強度が低下しやすくなるなどの問題が生じる。一方、無機ナノ蛍光体粒子3の含有量が少なすぎると、十分な発光強度が得にくくなる。従って、波長変換部材4における無機ナノ蛍光体粒子3の含有量は0.01〜30質量%、0.05〜10質量%、特に0.08〜5質量%の範囲で適宜調整することが好ましい。
なお、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1中の無機ナノ蛍光体粒子3の含有量は特に限定されないが、十分な発光強度が得るため、0.01質量%以上、0.05質量%以上、特に0.1質量%以上であることが好ましい。一方、上限は特に限定されないが、現実的には50質量%以下、さらには25質量%以下である。
ガラスマトリクス5の屈伏点は380℃以下、300℃以下、特に200℃以下であることが好ましい。ガラスマトリクス5の屈伏点が高すぎると、それに応じて波長変換部材4製造時の焼結温度も高くなるため、無機ナノ蛍光体粒子3が劣化しやすくなる。一方、ガラスマトリクス5の屈伏点の下限は特に限定されないが、現実的には100℃以上、特に120℃以上である。ここで屈伏点とは、熱膨張係数測定(TMA)装置での測定において、試験片が最大の伸びを示した点、即ち試験片の伸びが停止した値を指す。
ガラスマトリクス5としては、屈伏点が低いSn−P系ガラス、Sn−P−B系ガラス、Sn−P−F系ガラス等のSn及びPをベースとしたガラスが好ましい。なかでも屈伏点を低くすることが容易であるSn−P−F系ガラスを使用することが好ましい。Sn−P−F系ガラスの具体的な組成としては、カチオン%で、Sn2+ 10〜90%、P5+ 10〜70%、アニオン%で、O2− 30〜99.9%、F 0.1〜70%を含有するものが挙げられる。以下に、各成分の含有量をこのように限定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の各成分の含有量に関する説明において、「%」は「カチオン%」または「アニオン%」を意味する。
Sn2+は化学耐久性や耐候性を向上させる成分である。また、屈伏点を低下させる効果もある。Sn2+の含有量は10〜90%、20〜85%、特に25〜82.5%であることが好ましい。Sn2+の含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、Sn2+の含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなったり、耐失透性が低下しやすくなる。
5+はガラス骨格の構成成分である。また、光透過率を高める効果を有する。また、失透を抑制したり、屈伏点を低下させる効果も有する。P5+の含有量は10〜70%、15〜60%、特に20〜50%であることが好ましい。P5+の含有量が少なすぎると、前記効果が得にくくなる。一方、P5+の含有量が多すぎると、Sn2+の含有量が相対的に少なくなって、耐候性が低下しやすくなる。
なお、P5+とSn2+の含量は50%以上、70.5%以上、75%以上、80%以上、特に85%以上であることが好ましい。P5+とSn2+の含量が少なすぎると、耐失透性や機械的強度が低下しやすくなる。P5+とSn2+の含量の上限は特に限定されず、100%であってもよいが、他の成分を含有する場合は、99.9%以下、99%以下、95%以下、さらには90%以下としてもよい。
カチオン成分として、上記成分以外にも以下の成分を含有させることができる。
3+、Zn2+、Si4+及びAl3+はガラス骨格の構成成分であり、特に化学耐久性を向上させる効果が大きい。B3++Zn2++Si4++Al3+の含有量は0〜50%、0〜30%、0.1〜25%、0.5〜20%、特に0.75〜15%であることが好ましい。B3++Zn2++Si4++Al3+の含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。また、溶融温度の上昇に伴いSn金属等が析出し、光透過率が低下しやすくなる。また、屈伏点が上昇しやすくなる。なお、耐候性を向上させる観点からは、B3++Zn2++Si4++Al3+を0.1%以上含有させることが好ましい。なお本明細書において、「○+○+・・・」は該当する各成分の合量を意味する。
3+、Zn2+、Si4+及びAl3+の各成分の好ましい含有量範囲は以下の通りである。
3+はガラス骨格を構成する成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP5+等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。B3+の含有量は0〜50%、0.1〜45%、特に0.5〜40%であることが好ましい。B3+の含有量が多すぎると、耐失透性や光透過率が低下する傾向がある。
Zn2+は融剤として作用する成分である。また、耐候性を向上させ、研磨洗浄水等の各種洗浄溶液中へのガラス成分の溶出を抑制したり、高温多湿状態でのガラス表面の変質を抑制したりする効果がある。また、Zn2+はガラス化を安定にする効果もある。以上に鑑み、Zn2+の含有量は0〜40%、0.1〜30%、特に0.2〜20%であることが好ましい。Zn2+の含有量が多すぎると、耐失透性や光透過率が低下する傾向がある。
Si4+はガラス骨格を構成する成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP5+等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。Si4+の含有量は0〜20%、特に0.1〜15%であることが好ましい。Si4+の含有量が多すぎると、屈伏点が高くなりやすい。また、未溶解による脈理や気泡がガラス中に残存しやすくなる。
Al3+は、Si4+やB3+とともにガラス骨格を構成することが可能な成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP5+等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。Al3+の含有量は0〜20%、特に0.1〜15%であることが好ましい。Al3+の含有量が多すぎると、耐失透性や光透過率が低下する傾向がある。さらに、溶融温度が高くなって、未溶解による脈理や気泡がガラス中に残存しやすくなる。
Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+(アルカリ土類金属イオン)は融剤として作用する成分である。また、耐候性を向上させ、研磨洗浄水等の各種洗浄溶液中へのガラス成分の溶出を抑制したり、高温多湿状態でのガラス表面の変質を抑制したりする効果がある。また、ガラスの硬度を高める成分である。但し、これらの成分の含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。よって、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+の含量は0〜10%、0〜7.5%、0.1〜5%、特に0.2〜1.5%であることが好ましい。
Liは、アルカリ金属酸化物のなかで最も屈伏点を低下させる効果が大きい成分である。また、但し、Liは分相性が強いため、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。また、Liは化学耐久性を低下させやすく、光透過率も低下させやすい。従って、Liの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。
Naは、Liと同様に屈伏点を低下させる効果を有する。但し、その含有量が多すぎると、脈理が生成しやすくなる。また、耐失透性が低下しやすくなる。また、Naは化学耐久性を低下させやすく、光透過率も低下させやすい。従って、Naの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。
も、Liと同様に屈伏点を低下させる効果を有する。但し、その含有量が多すぎると、耐候性が低下する傾向がある。また、耐失透性が低下しやすくなる。また、Kは化学耐久性を低下させやすく、光透過率も低下させやすい。従って、KOの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。
なお、Li、Na及びKの含量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。Li、Na及びKの含量が多すぎると、失透しやすくなり、化学耐久性も低下する傾向がある。
上記成分以外にも、La3+、Gd3+、Ta5+、W6+、Nb5+、Ti4+、Y3+、Yb3+、Ge4+、Te4+、Bi3+及びZr4+等を合量で10%まで含有させることができる。
Ce4+、Pr3+、Nd3+、Eu3+、Tb3+及びEr3+等の希土類成分、Fe3+、Ni2+、Co2+は光透過率を低下させる成分である。よって、これら成分の含有量は各々0.1%以下であることが好ましく、含有させないことがより好ましい。
In3+は失透傾向が強いため、含有しないことが好ましい。
なお、環境上の理由から、Pb2+及びAs3+を含有しないことが好ましい。
アニオン成分であるFは屈伏点を低下させる作用や光透過率を高める効果を有する。但し、その含有量が多すぎると、溶融時の揮発性が高くなり脈理が発生しやすくなる。また、耐失透性が低下しやすくなる。Fの含有量は0.1〜70%、1〜67.5%、5〜65%、2〜60%、特に10〜60%であることが好ましい。なお、Fを導入するための原料としては、SnFの他、La、Gd、Ta、W、Nb、Y、Yb、Ge、Mg、Ca、Sr、Ba等のフッ化物が挙げられる。
なお、F以外のアニオン成分としては、通常、O2−を含有する。つまり、O2−の含有量は、Fの含有量に応じて決定される。具体的には、O2−の含有量は30〜99.9%、32.5〜99%、35〜95%、40〜98%、特に40〜90%であることが好ましい。
Sn−P系ガラスとしては、モル%で、SnO 50〜80%、P 15〜25%(ただし、25%は含まない)、ZrO 0〜3%、Al 0〜10%、B 0〜10%、LiO 0〜10%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、LiO+NaO+KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜3%、SrO 0〜2.5%、BaO 0〜2%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜11%及びZrO+Al+MgO 0〜10%を含有し、SnO/P 1.6〜4.8であるものが挙げられる。
ガラスマトリクス5としてはガラス粉末の焼結体からなることが好ましい。このようにすれば、ガラスマトリクス5中に無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1を均質に分散した波長変換部材4を容易に作製することができる。
ガラス粉末の平均粒子径は0.1〜100μm、1〜80μm、5〜60μm、10〜50μm、特に15〜40μmであることが好ましい。ガラス粉末の平均粒子径が小さすぎると、無機ナノ蛍光体粒子3に接触しやすくなり、無機ナノ蛍光体粒子3が劣化しやすくなる。また、焼結時に気泡が発生して、波長変換部材4の機械的強度が低下するおそれがある。さらに、波長変換部材4中における光散乱の程度が大きくなって発光効率が低下する場合がある。一方、ガラス粉末の平均粒子径が大きすぎると、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1がガラスマトリクス5中に均質に分散されにくくなり、その結果、波長変換部材4の発光効率が低下するおそれがある。
波長変換部材4の形状は、通常、矩形板状や円盤状等の板状である。この場合、波長変換部材4の厚みは0.03〜1mm、0.05〜0.5mm、特に0.1〜0.3mmであることが好ましい。波長変換部材4の厚みが小さすぎると、機械的強度に劣る傾向がある。一方、波長変換部材4の厚みが大きすぎると、焼結時間が長くなり無機ナノ蛍光体粒子3が劣化しやすくなる。あるいは、焼結が不十分になる傾向がある。
波長変換部材4は、LEDやLD等の励起光源と組み合わせることにより発光デバイスとして使用することができる。
無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1及び波長変換部材4は、例えば以下のようにして作製することができる。
樹脂マトリクス2となる樹脂と、無機ナノ蛍光体粒子3とを混合した後、熱処理等を施して樹脂を硬化することにより、樹脂と無機ナノ蛍光体粒子3の複合体である無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を得る。その後、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を粉砕することにより無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1を得ることができる。得られた粉末の形状は不規則形状でも良いが、球状に近いほうが好ましく、球状であればより好ましい。なお、無機ナノ蛍光体粒子3が量子ドットである場合は、通常、有機分散媒等に分散した状態で取り扱われる。そこで、樹脂と、無機ナノ蛍光体粒子3が分散した有機分散媒とを混合した後、樹脂を硬化させる際に有機分散媒を揮発させることにより、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を得ることができる。この方法に限らず、ゾルゲル法、ガスアトマイズや水アトマイズのようなスプレードライ、スパッタリング、レーザーアブレーション等の方法により無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を得ても良い。
次に、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1に対し、ガラスマトリクス5となるガラス粉末を混合した後、混合物を焼成またはプレス成型することにより、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1とガラス粉末の焼結体からなる波長変換部材4を得ることができる。焼成温度は、ガラス粉末の屈伏点±50℃以内であることが好ましい。具体的には、焼成温度は、380℃以下、300℃以下、200℃以下、特に180℃以下であることが好ましい。焼成温度が高すぎると、無機ナノ蛍光体粒子3が劣化したり、無機ナノ蛍光体粒子3とガラス粉末が反応して波長変換部材4の発光効率が低下しやすくなる。一方、焼成温度が低すぎるとガラス粉末の焼結が不十分になり、波長変換部材4の気孔率が大きくなる傾向がある。その結果、波長変換部材4における光散乱が強まり、蛍光(あるいは励起光)の取り出し効率が低下しやすくなる。よって、焼成温度は130℃以上であることが好ましい。
なお、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末1とガラス粉末の混合物を加熱プレスすることにより、ガラス粉末の軟化流動が促進され、極めて短時間で焼結することが可能となる。よって、焼成時における無機ナノ蛍光体粒子3にかかる熱エネルギーを大幅に抑制することができ、無機ナノ蛍光体粒子3の熱劣化を顕著に抑制することが可能となる。また、薄型の波長変換部材4を容易に製造することができる。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
無機ナノ蛍光体粒子(CdSe/ZnS、平均粒子径=約3nm)を分散媒であるトルエンに1質量%の濃度で分散させた分散液を作製した。次に、樹脂(エポキシ樹脂)0.5gに対し、上記分散液を500μl混合し、乾燥することにより、分散媒を揮発させるとともに樹脂を硬化させた。得られた硬化物を粉砕することにより、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末(平均粒子径60μm)を得た。
次に、原料としてSnO、SnF、Pを用い、カチオン%で、Sn2+ 58.2%、P5+ 41.8%、アニオン%で、F 15.4%、O2− 84.6%を含有するように調合したバッチを石英ビーカーに投入し、窒素雰囲気にした電気炉内にて680℃で60分間溶融した。得られた溶融ガラスをインゴット状に成形した後、乳鉢で粉砕することによりガラス粉末(平均粒子径=25μm)を得た。
上記で得られた無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末0.048gとガラス粉末0.152gを混合し、混合物を得た。得られた混合物を窒素雰囲気中180℃で加熱プレスした。これにより、混合粉末の焼結体からなる板状の波長変換部材が得られた。
(実施例2)
無機ナノ蛍光体粒子(CdSe/ZnS、平均粒子径=約3nm)を分散媒であるトルエンに1質量%の濃度で分散させた分散液を作製した。次に、樹脂(熱硬化性ポリシロキサン樹脂)8gをトルエン2gに溶解させた溶液0.5gに対し、上記分散液を100μl混合し、乾燥することにより、分散媒を揮発させるとともに樹脂を硬化させた。得られた硬化物を粉砕することにより、無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末(平均粒子径80μm)を得た。得られた無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末を用い、実施例1と同様にして波長変換部材を作製した。
(比較例)
無機ナノ蛍光体粒子を樹脂と複合化させることなく、そのままガラス粉末と混合したこと以外は、実施例1と同様にして波長変換部材を作製した。なお、波長変換部材に含まれる無機ナノ蛍光体粒子の含有量は、実施例1、2の波長変換部材と同一になるように調整した。
(発光量子効率の測定)
得られた波長変換部材について、発光量子効率を測定した。その結果、実施例1では59%、実施例2では51%、比較例では2%であった。なお、発光量子効率は下記式により算出される値を指し、浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率装置を用いて測定した。
発光量子効率={(発光としてサンプルから放出されたフォトン数)/(サンプルより吸収されたフォトン数)}×100(%)
1 無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末
2 樹脂マトリクス
3 無機ナノ蛍光体粒子
4 波長変換部材
5 ガラスマトリクス

Claims (13)

  1. 樹脂マトリクス中に無機ナノ蛍光体粒子が分散してなることを特徴とする無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末。
  2. 平均粒子径が0.1〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末。
  3. 無機ナノ蛍光体粒子の平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末。
  4. 無機ナノ蛍光体粒子が、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs及びInSbから選択される少なくとも一種、またはこれら二種以上の複合体からなる量子ドット蛍光体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末。
  5. 樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末。
  6. 樹脂がシロキサン構造を有する化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末。
  7. 樹脂と無機ナノ蛍光体粒子を混合した後、樹脂を硬化させることにより無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を作製する工程、及び、
    無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂を粉砕する工程
    を含むことを特徴とする無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末の製造方法。
  8. ガラスマトリクス中に請求項1〜6のいずれかに記載の無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末が分散してなることを特徴とする波長変換部材。
  9. ガラスマトリクスがSn−P系ガラスまたはSn−P−F系ガラスからなることを特徴とする請求項8に記載の波長変換部材。
  10. 無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末とガラス粉末の焼結体からなることを特徴とする請求項8または9に記載の波長変換部材。
  11. ガラス粉末の平均粒子径が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項10に記載の波長変換部材。
  12. 請求項8〜11のいずれかに記載の波長変換部材の製造方法であって、
    無機ナノ蛍光体粒子含有樹脂粉末とガラス粉末の混合物をプレス成型することを特徴とする波長変換部材の製造方法。
  13. 請求項8〜11のいずれかに記載の波長変換部材と、
    波長変換部材に励起光を照射する光源と、
    を備えていることを特徴とする発光装置。
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