JP2018192181A - 履物用の中敷体およびそれを備えた履物 - Google Patents
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Abstract
Description
特許公報1(特開2002−209605号公報)に開示された靴は、図12に示すように、中敷の上面を足裏の指や踵の形状や凹凸に対して立体的に合致する形状としたものである。この特許公報1は、個人差がある場合にも対応するため、個人個人の足型を取って転写する技術が開示されており、インソールの芯となるべき中底板の上面及び裏面にポリエチレン樹脂フィルムを貼着した状態で一度靴を履き、体重加重によって透明フィルム板を通して靴内部の踏み痕を中底板に転写した後に、踏み痕によって示された輪郭に沿って不要部分をカットして切除したり、上面に被覆材を貼着したり、クッション性を有する仕上げ材を貼着したりして、インソール全体を完成させるという手段が開示されている。出来上がりが図12の下段に示す図のようであると開示されている。
第1の問題は、歩行における接地状態における足裏の3次元形状のみを捉えており、歩行における足が空中に維持された状態の足裏の立体的な3次元形状は全く考慮されていない点である。
歩行において、足裏の骨と筋肉はリズミカルに動いており、実際の生身の足裏は固定的な1つの形ではなく、形状が変化する。足が空中に維持された状態では、足裏の圧力がなくなり、中足骨全体が上昇し、いわゆる拇指球から小指球までの関節も伸び、筋肉も弛緩し、踵裏の筋肉や皮も緩んで丸みを帯びる。その足が空中にある状態から足が接地した状態となると、足裏に圧力がかかり、中足骨がアーチ状に維持されつつも拇指球から小指球までの関節に負荷がかかり、筋肉も収縮し、踵裏の筋肉や皮も圧力で変形する。この歩行の過程で中足骨のアーチ、いわゆる土踏まずのアーチがバネの役割を果たして歩行の力がリズミカルに得られる。
このように、生身の足の足裏は、歩行における接地状態における足裏の3次元形状と同様に、歩行における足が空中に維持された状態における足裏の3次元形状も重要である。上記従来の特許文献1、特許文献2とも、接地した状態の足の足裏の型取りをし、その形状となるように中敷の表面を3次元形状に加工しているが、歩行における足が空中に維持された状態における足裏の3次元形状については何らの加工も施されていない。
また、中敷体が柔らかいクッション材として機能した後に、中底体が体重を受け止めつつ歩行における接地状態における足裏の3次元形状に沿う機能を発揮できる履物を提供することを目的とする。
従来技術において、中敷体の上面形状を、足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状に沿わせるものがあるが、中敷体のクッション性という機能を考えれば、本来は本発明のように中敷の表面形状は足を空中に維持した際の足裏付近の3次元立体形状に沿わせるべきである。また、従来技術において、中敷体の底面形状はおおむね平面状のものであったが、中敷体のクッション性という機能を考えれば、本来は本発明のように中敷の裏面形状は足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状に沿わせるべきである。本発明の中敷体ではそのように歩行前後における空中に維持された状態でも接地された状態でも足裏形状に理想的に沿うものとなっており、中敷体の機能を正しく発揮せしめることができる。
もちろん、その領域を拡張し、拇指球から小指球が当接する箇所から踵にかけた領域としてその3次元立体形状に沿わせることも好ましい。
中敷体の素材としては、スポンジ材、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、綿塊のいずれかまたはそれらの組み合わせとすることができる。適度なクッション性を発揮することができるからである。
そこで、本発明の履物は、上記した本発明の中敷体に加え、中底体の上面に中敷体の底面を沿わせて両者を積層するよう装着したものである。
ここで、中底体の上面形状自体を、中敷体の底面形状と一致させる。つまり、中底体の底面形状の上面が、足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿う3次元立体形状に仕上げられており、かつ、中底体に体重をかけた際にも、中底体の上面において、足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状が維持されるものとする。
このように体重が掛かっても維持される中底体の上面形状自体が、本発明の中敷体の底面形状、つまり、足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿う3次元立体形状に仕上げられていれば、足を接地した状態で立体的な3次元形状にて支持される。上記した従来技術では体重が掛かれば最終的には平面状の中底体や靴底により支持されていた足裏が、真の意味において3次元的立体形状で支えられる。
つまり、本発明の履物は、足を空中に維持した際には、中敷体の上面が空中に維持した足の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿い、足を接地した際には、中敷体が変形し、中敷体の底面および中底体の上面が、接地した足の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿うものとなり、歩行のいずれの状態でも足裏の3次元的立体形状に沿って支持できるものとなる。
一方、中底体つま先から拇指球から小指球が当接する箇所では屈曲しやすい硬度として柔軟性を確保して、屈曲変化に追従できるものとする必要がある。なぜならば、歩行の前後において、足の拇指球から小指球と中足骨骨頭はその下方にある拇指球から小指球と関節を形成しており、歩行において、中足骨骨頭と拇指球から小指球までの関節において大きく屈曲するため、中底体も拇指球から小指球までが当接する箇所において大きく屈曲しやすい物性とする必要がある。
そこで、中底体において、拇指球から小指球が当接する箇所を含む前方部分と、前方部分から一体に踵の当接箇所までつながる後方部分とし、後方部分の素材の硬度よりも前方部分の素材の硬度が小さく調整されており、拇指球から小指球に当接する立体的形状の箇所を包含する前方部分は屈曲しやすく、後方部分は立体的形状を保ちやすい構造とすることが好ましい。
また、本発明にかかる履物によれば、足を空中に維持した際には、中敷体の上面が空中に維持した足の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿い、足を接地した際には、中敷体が変形し、中敷体の底面および中底体の上面が、接地した足の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿うものとなり、歩行のいずれの状態でも足裏の3次元的立体形状に沿って支持できるものとなる。
ここでは、婦人靴への適用を例として説明するが、紳士靴や運動靴であっても同様に適用することができる。
図1は、本発明の実施例1にかかる履物用の中敷体100の構造を簡単に示す図である。
図2は、本発明の実施例1にかかる履物用の中敷体100に合う中底体200の構造を簡単に示す図である。
なお、図1および図2では、足裏の3次元立体形状に沿う曲面を描画することは難しいので、おおむね、ざっくりと描画されているものと理解されたい。実際の上面、側面、底面は、連続一体的に滑らかに起伏をもって形成されている。
なお、上記構成は、上面の表面や底面の表面に何も他の部材を貼付していないが、不織布を貼付したり、シール材を貼付したりすることは可能であり、本発明でもそれら他の素材を貼付しても良い。
図1の例では足裏の3次元立体形状に沿う3次元立体的形状の曲面が作り込まれている領域が土踏まずから踵にかけた領域である例である。婦人靴の例となっている。図1(a)は上面図、図1(b)は底面図、図1(c)は斜視図となっている。
例えば、スポンジ材、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、綿塊等などがあり得る。ここでは発泡ウレタンとする。
ここで、利用者の足裏の形状は個人差があるが、利用者の足裏は多少の個人差があっても、中敷体100にはクッション性、弾力性があるので、ここでは、一般平均的な空中に維持した状態の足の足裏の3次元立体的形状に沿うものとして製作したものとする。もし、オーダーメード仕様とする場合には足を空中に維持した状態で足裏の3次元立体形状を測り取って中敷体100の上面の3次元立体形状110を作り込むことも可能である。
発泡ウレタン樹脂は適度な弾力性、柔軟性、クッション性が得られるよう、添加する可塑剤の量や、成形時の温度、添加する熱硬化性素材の量などで調整することが好ましい。
中敷体100の上面の3次元立体形状110、底面の3次元立体形状120として、足裏形状の3次元立体形状に沿わせる領域としては、足裏全体でも良いが、足の歩行を支える上で重要なパーツに特化しても良い。
図1に示した例では、土踏まずから踵にかけた領域について、足裏の3次元立体形状に沿わせて作り込んだものとなっている。つま先から拇指球から小指球が当接する箇所は、足裏の3次元立体形状に沿わせた形までは再現されておらず、つま先は略平坦形状、拇指球から小指球が当接する箇所は衝撃を和らげるための盛り上げ形状となっている。
図2は、本発明の実施例1にかかる中底体200の構造を簡単に示す図である。
中底体200は、上記した中敷体100の底面120の3次元立体形状に沿う上面の3次元立体形状210を備えたものとなっている。
中底体200の上面210の3次元立体形状は、“足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状”の少なくとも一部の表面に沿う3次元立体形状、ここでは、足を接地した際の足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状に仕上げられている。つまり、上記した中敷体100の底面120の3次元立体形状と同じものとなっている。
なお、つま先部分から拇指球から小指球が当接する箇所についても中敷体100の底面120の3次元立体形状に沿う上面210の3次元立体形状となっている。
そのため、中底体200の上面210に中敷体100の底面120を沿わせて両者を積層するよう装着せしめることができる。
図3に示すように、積層体は上面側が中敷体100の上面110であるので、上面は、“空中に維持した足裏”の土踏まずから踵までの3次元立体形状に沿う曲面となっている。下層側には中底体200があるので、その上面210は“接地した足裏”の土踏まずから踵までの3次元立体形状に沿う曲面となるよう3次元的になめらかに形成されているので、積層体を踏みしめた状態では中敷体100が中底体200の上面に沿うように変形して“接地した足裏” の拇指球から小指球のライン〜踵までの3次元立体形状に沿う曲面となる。
歩行の前後において、足の拇指球から小指球と中足骨骨頭はその下方にある拇指球から小指球と関節を形成しており、歩行において、中足骨骨頭と拇指球から小指球までの関節において大きく屈曲する。つまり、拇指球から小指球までの関節を大きく屈曲させながら体重を前に進めてゆく。そのため、中底体200も拇指球から小指球までが当接する箇所において大きく屈曲しやすい物性とする必要がある。
硬度の調整は、それら上記の主素材に添加する可塑剤の量、成形時の温度、添加する熱硬化性素材の量などで調整可能である。適度な硬度に調整すれば、前方部分110として所望の弾力性、屈曲性などが得られ、拇指球から小指球が当接する箇所の中底として適度な硬度と柔軟性を奏するものとすることができる。
このように、前方部分と後方部分で物性の異なるものと作り込むことができる。
歩行中、足を空中に維持している場合には、図4(a)に示すように、中敷体の上面110が、空中に維持した足の足裏付近の3次元立体形状の表面に沿っていることが分かる。
歩行中、足を接地した場合には、図4(b)に示しように、クッション性があり柔らかい中敷体100は押圧されて変形するが、中底体200の上面210で支持されるため、接地した足の足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状に沿いしっかりと足や体重をサポートしやくなっていることが分かる。このように、歩行のたびに図4(a)と図4(b)の状態が繰り返される。
図5および図6は中敷体100の試作模型、図7および図8は中底体200の試作模型となっている。
図5および図6に示すように、中敷体100は、中敷体100の上面110が、足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状が、空中に維持した足の足裏付近の3次元立体形状に沿うような凹凸のある3次元立体形状となっている。中敷体100の底面120は、足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状が、接地した足の足裏付近の3次元立体形状に沿うような凹凸のある3次元立体形状となっている。
なお、前方部分と後方部分の違いを示すために、異なる色を付して製作しているため、はっきりと境界が見えるものとなっているが、実際の前方部分と後方部分は、同じ色彩で連続一体的に形成すれば、一見すると両者の境目が分からない場合もあり得る。
図7および図8に示すように、中底体200は二色成形によって前方部分の成形素材と後方部分の成形素材が異なり、後方部分の素材の硬度よりも前方部分の素材の硬度が小さく調整されており、全体が連続一体的に足裏形状に沿う滑らかな凹凸を備えた立体的形状の一体成形構造体でありながら、拇指球から小指球に当接する立体的形状の箇所において屈曲しやすく、中足骨から踵が当接する立体的形状の箇所は硬度を保ちやすい構造となっている。
図9は、本発明の実施例2にかかる履物用の中敷体100の構造を簡単に示す図である。
図10は、本発明の実施例2にかかる履物用の中敷体100に合う中底体200の構造を簡単に示す図である。
なお、図9および図10では、足裏の3次元立体形状に沿う曲面を描画することは難しいので、おおむね、ざっくりと描画されているものと理解されたい。実際の上面、側面、底面は、連続一体的に滑らかに起伏をもって形成されている。
中敷体100の底面の3次元立体形状120は実施例1と同様のものとなっている。
このように、中敷体100の上面の3次元立体形状110の領域が拡張されている点を除けば、実施例1のものと同様で良いので、素材や物性などの点についてのここでの説明は適宜省略する。
中底体200は、上記した中敷体100の底面120の3次元立体形状に沿う上面の3次元立体形状210を備えたものとなっている。
中底体200の上面210の3次元立体形状は、“足を接地した際”の足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状に仕上げられている。つまり、上記した中敷体100の底面120の3次元立体形状と同じものとなっている。
そのため、中底体200の上面210に中敷体100の底面120を沿わせて両者を積層するよう装着せしめることができる。
図10に示すように、積層体は上面側が中敷体100の上面110であるので、上面は、“空中に維持した足裏”の拇指球から小指球のライン〜踵までの3次元立体形状に沿う曲面となっている。下層側には中底体200があるので、その上面210は“接地した足裏”の拇指球から小指球のライン〜踵までの3次元立体形状に沿う曲面となるよう3次元的になめらかに形成されているので、積層体を踏みしめた状態では中敷体100が中底体200の上面に沿うように変形して“接地した足裏” の拇指球から小指球のライン〜踵までの3次元立体形状に沿う曲面となる。
このように、中底体200が体重をかけた際にも足を接地した際の足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状が維持されるものとすれば、クッション性に優れた中敷体100の変形の範囲が制限され、足を空中に維持した際には、中敷体100の上面110が、空中に維持した足の前記足裏付近の3次元立体形状に沿い、足を接地した際には、中敷体100が変形し、中敷体100の底面120が、中底体200の上面210、つまり接地した足の足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状に沿うものとなる。
図11は、実施例2の構成において、歩行時の足裏に沿う中敷体100および中底体200の積層体の変形の様子を示した図である。
歩行中、足を空中に維持している場合には、図11(a)に示すように、中敷体の上面110が、空中に維持した足の足裏付近の3次元立体形状の表面に沿っていることが分かる。
歩行中、足を接地した場合には、図11(b)に示しように、クッション性があり柔らかい中敷体100は押圧されて変形するが、中底体200の上面210で支持されるため、接地した足の足裏付近の土踏まずから踵にかけた3次元立体形状に沿いしっかりと足や体重をサポートしやくなっていることが分かる。このように、歩行のたびに図11(a)と図11(b)の状態が繰り返される。
110 上面
120 底面
200 中底体
210 上面
220 底面
Claims (7)
- 足を空中に維持した際の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿う3次元立体形状に上面が仕上げられており、前記足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿う3次元立体形状に底面が仕上げられている履物用の中敷体。
- 前記足裏付近の3次元立体形状が、土踏まずから踵にかけた3次元立体形状であることを特徴とする請求項1に記載の履物用の中敷体。
- 前記足裏付近の3次元立体形状が、拇指球から小指球が当接する箇所から踵にかけた3次元立体形状であることを特徴とする請求項1に記載の履物用の中敷体。
- 素材が、スポンジ材、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、綿塊のいずれかまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の履物用の中敷体。
- 請求項1から4のいずれかに記載の中敷体と、
前記足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿う3次元立体形状に上面が仕上げられている履物用の中底体を備え、
前記中底体の硬度を、前記足を接地して前記中底体に体重をかけた際にも、前記中底体の前記上面において、前記足を接地した際の足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿う前記3次元立体形状が維持されるものとし、
前記中底体の前記上面に前記中敷体の前記底面を沿わせて両者を積層するよう装着せしめた、中敷体を備えた履物。 - 前記足を空中に維持した際に、前記中敷体の前記上面が、空中に維持した前記足の前記足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿い、
前記足を接地した際に、前記中敷体が変形し、前記中敷体の底面および前記中底体の上面が、接地した前記足の前記足裏付近の3次元立体形状の少なくとも一部の表面に沿うものである、請求項5に記載の中敷体を備えた履物。 - 前記中底体において、拇指球から小指球が当接する箇所を含む前方部分と、前記前方部分から一体に踵の当接箇所までつながる後方部分とし、前記後方部分の素材の硬度よりも前記前方部分の素材の硬度が小さく調整されており、前記拇指球から小指球に当接する前記立体的形状の箇所を包含する前方部分は屈曲しやすく、前記後方部分は前記立体的形状を保ちやすい構造であることを特徴とする請求項6に記載の中敷体を備えた履物。
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