以下、図面を参照しながら、本発明に係る医療用拡大鏡装置の実施形態の一例について、詳細に説明する。実施形態において参照する図面は模式的に記載されたものであり、各構成要素の具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。なお、以下で説明する複数の実施形態の構成を適宜に組み合わせることは当初から想定されている。
以下では、実施形態として医療用拡大鏡装置10,10Xを例示するが、本発明に係る医療用拡大鏡装置はこれらに限定されない。また、医療用拡大鏡装置10,10Xの使用例として、産婦人科検診および手術を挙げるが、医療用拡大鏡装置10,10Xの用途はこれらに限定されない。医療用拡大鏡装置10,10Xは、例えば皮膚科、心臓外科、整形外科、口腔外科・歯科、耳鼻咽喉科など、種々の診療科における検診、治療などに使用することも可能である。
図1は、実施形態の一例である医療用拡大鏡装置10の斜視図である。図2は医療用拡大鏡装置10の装置本体11を内側から見た図、図3は装置本体11の断面図である。図4は、医療用拡大鏡装置10の装着状態を示す図である。なお、本明細書では、説明の便宜上、医療用拡大鏡装置10の装着状態において、顔の幅方向に沿った方向を装置本体11の「横方向または左右方向」、顔の長さ方向に沿った方向を装置本体11の「上下方向」とする。
図1〜図4に例示するように、医療用拡大鏡装置10は、使用者100の顔面102に当接するフェイスパッド12を有し、使用者100の左右の眼前を覆う装置本体11と、装置本体11を使用者100の頭部101に固定するための固定手段とを備える頭部装着型の拡大鏡装置である。本実施形態では、固定手段として、装置本体11の左右両端部に取り付けられたベルト60を備える。ベルト60は、装置本体11の左右両端部から頭部101の後方に延びて後頭部に当接し、医療用拡大鏡装置10の頭部装着を可能とする。なお、ベルト60は長さ調整機能を有していてもよい。
医療用拡大鏡装置10は、固定手段として、頭頂部に当接する補助ベルト61を備えていてもよい。補助ベルト61は、装置本体11の上端部から頭頂部の上方を通って後頭部側に延び、後頭部側でベルト60に連結されている。特に、装置本体11の重量が大きな場合は、補助ベルト61を設けることで医療用拡大鏡装置10の頭部装着性が向上する。
医療用拡大鏡装置10は、装置本体11の前方に設けられたズームレンズ22を有し、このズームレンズ22を介して取得した拡大像をデジタル変換する撮像ユニット20と、撮像ユニット20によりデジタル変換された拡大像を表示する一対のモニター30とを備える。モニター30は、装置本体11の内側において使用者100の左右の眼前にそれぞれ設けられる。医療用拡大鏡装置10は、モニター30として、右眼用のモニター30Rと、左眼用のモニター30Lとを有する。
医療用拡大鏡装置10は、眼鏡のように鼻と耳で支持されるような装置ではなく、装置本体11がフェイスパッド12および上記固定手段によって眼前に保持されるゴーグル型の拡大鏡装置である。装置本体11が顔面102にしっかりフィットして眼前に安定に保持されることで、検診、治療等の医療行為をスムーズに行うことができ、長時間使用しても疲れ難くなる。また、眼の周囲が装置本体11で覆われることにより、モニター30の視認性が向上する。なお、医療用拡大鏡装置10は、産婦人科で使用されているコルポスコープと比較して様々な利点を有する。この点については後述する。
装置本体11は、撮像ユニット20およびモニター30が搭載され、ベルト60および補助ベルト61が取り付けられる部分である。装置本体11は、使用者100の両眼の周囲を覆うことが可能な大きさを有し、例えば額の下部から頬の上部までを覆う程度の上下方向長さ、および顔幅と同程度の横方向長さを有する。また、装置本体11は、撮像ユニット20およびモニター30の搭載スペースを確保するため、前後方向にもある程度の厚みを有する。装置本体11は、例えば使用者100の顔面102から前方に50mm〜150mm程度とび出した状態となる。
装置本体11は、ズームレンズ22が取り付けられる前面部11aを有する。また、装置本体11は、前面部11aの左右両端から後方に延び、使用者100のこめかみ付近まで覆うように形成された側面部11bを有することが好ましい。装置本体11が顔の横まで覆って装着されることで良好なフィット感が得られる。前面部11aは、上下方向および横方向に対して略平坦に形成されてもよく、前方に向かって緩やかに湾曲していてもよい。装置本体11は、前面部11aと各側面部11bとの境界部で外側に向かって湾曲し、当該境界部が丸みを帯びているが、エッジのある角ばった形状を有していてもよい。
また、装置本体11は、前面部11aの上下両端から後方に延び、眼の上下をそれぞれ覆うように形成された上面部11cおよび下面部11dを有することが好ましい。特に、上面部11cを設けることで、モニター30の視認性が向上し、良好なフィット感が得られる。装置本体11は、後述する窓部17を除き、不透明な材料で構成されることが好ましく、軽量性、加工性等を考慮すると樹脂製とすることが好適である。
装置本体11は、上述の通り、使用者100の顔面102に当接するフェイスパッド12を有する。フェイスパッド12は、顔面102に当接したときに弾性変形する発泡体、エラストマ―、またはゴム等で構成される。本実施形態では、使用者100側を向いた装置本体11の内側部分に、鼻との干渉を避けるための凹部16が形成されている。フェイスパッド12は、凹部16が形成された部分を除く、装置本体11の内側端部に設けられている。フェイスパッド12は、例えば装置本体11の各側面部11b、上面部11c、および下面部11dの縁に沿って設けられる。
装置本体11の前面部11aには、前方に向かって突出した状態でズームレンズ22が設けられている。図3に例示するように、装置本体11の前面部11aと内側端部との間に形成されるスペースSには、撮像ユニット20の本体部21およびモニター30が配置されている。本実施形態では、本体部21の使用者100側(後方)を向いた面にモニター30が設置されている。即ち、撮像ユニット20とモニター30が一体化されている。
装置本体11のスペースSには、一対の接眼レンズ13が配置されていてもよい。一対の接眼レンズ13は、右眼用の接眼レンズ13Rと、左眼用の接眼レンズ13Lとで構成される。図1に示す例では、装置本体11の上面部11cに接眼レンズ13R,13L同士の間隔を調整するための接眼レンズ間距離調整部18が設けられている。また、装置本体11の上面部11cには、接眼レンズ13R,13Lのピントを合わせるための接眼レンズ用ピント調整部19R,19Lが設けられている。上面部11cにおいて、接眼レンズ間距離調整部18は使用者100の左右の眼の間に対応する位置に配置され、接眼レンズ用ピント調整部19R,19Lは接眼レンズ間距離調整部18を挟むように上面部11cの左右にそれぞれ配置されている。
接眼レンズ間距離調整部18および接眼レンズ用ピント調整部19R,19Lは、装置本体11に設置されたダイヤルによって構成されている。当該ダイヤルは、一部が上面部11cから上方に突出した状態で設置されている。使用者100は、接眼レンズ間距離調整部18を回すことで、各自の眼の間隔に合わせて接眼レンズ13R,13L同士の間隔を狭くする、或いは広くすることができる。また、使用者100は、接眼レンズ用ピント調整部19R,19Lを回すことで、接眼レンズ13R,13Lをそれぞれ前後方向に動かし、各レンズのピントを別々に調整できる。なお、接眼レンズ間距離調整部18および接眼レンズ用ピント調整部19R,19Lは、後述するリモートコントローラ40の操作スイッチとして設けられていてもよい。
装置本体11のスペースSには、一対の接眼レンズ13の前方に一対のモニター30が配置されている。医療用拡大鏡装置10の装着状態において、使用者100の右眼の前方に接眼レンズ13Rとモニター30Rが順に存在し、左眼の前方に接眼レンズ13Lとモニター30Lが順に存在する。また、スペースSには、装置本体11の横方向中央部に前後方向に沿って隔壁部15が形成されている。隔壁部15は、左眼でモニター30Rが、右眼でモニター30Lがそれぞれ見えないように各モニターを隔離する。
装置本体11は、撮像ユニット20を挟んで左右両側に設けられ、使用者100の左右を視認可能とする窓部17を有することが好ましい。装置本体11は、装着性およびモニター30の視認性向上等の観点から、両眼の周囲を覆って装着されることが好ましいが、装置本体11の全体を不透明な材料で構成すると、周囲が全く見えなくなり、医療行為を行う上で不便な場合がある。装置本体11に窓部17を設けることで、いちいち装置を外さなくても周囲の状況を確認することが可能となり、医療用拡大鏡装置10の使い勝手が向上する。
窓部17は、装置本体11に形成された開口部であってもよいが、好ましくはアクリル樹脂、ポリカーボネート等の透光性が良好な樹脂で構成される。また、アクリル樹脂およびポリカーボネートは耐熱性にも優れるため、装置本体11を滅菌処理する場合にも好適である。窓部17は、各側面部11bに形成されることが好ましく、各側面部11bの一部または全部に透明な樹脂材料を適用することで設けられる。窓部17は、各側面部11bにおいて、例えば湾曲した前面部11aとの境界部、或いは前面部11aの左右両側から眼の真横に対応する位置にわたって設けられる。前面部11aの左右両側まで窓部17を設けた場合、医療用拡大鏡装置10の装着状態で使用者100の左右前方を視認することができる。
窓部17は、少なくとも眼の真横に対応する位置より下側に形成されることが好ましい。検診に使用する器具103(後述の図5参照)等は、使用者100の眼の高さよりも下にあることが一般的であるから、少なくとも眼の高さより下側に窓部17を形成することが好ましい。窓部17は、例えば装置本体11の各側面部11bにおいてベルト60等の固定手段の下端よりも下部に形成される。本実施形態では、左右の視認性をより良好なものとすべく、窓部17が眼の高さより上側にも位置するように、上面部11cの境界部から下面部11dの境界部にわたって装置本体11の上下方向にも大きく形成されている。
また、窓部17は、透明度を変更可能な調光機能を有していてもよい。この場合、撮像ユニット20により取得される拡大像を確認する際には窓部17を不透明な状態とし、器具103を探す際など周囲を確認したいときには透明な状態とすることができる。後述するリモートコントローラ40には、窓部17の透明度を変更するための操作ボタンが設けられていてもよい。
装置本体11の前面部11aの大部分および上面部11cは、モニター30の視認性の観点から、不透明な材料で構成されることが好ましい。下面部11dには、例えば手元を見えるようにするため、窓部17のような透明な部分、或いは開口部が設けられていてもよい。
医療用拡大鏡装置10は、加熱滅菌処理が可能な構成を有していてもよい。加熱滅菌処理では、例えば医療用拡大鏡装置10が高温のスチーム環境に曝される。このため、加熱滅菌処理に対応する医療用拡大鏡装置10は、装置本体11から撮像ユニット20を分離可能な構造、即ち装置本体11に対して撮像ユニット20が着脱自在な構造を有することが好ましい。また、装置本体11およびベルト60は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド等の成形性および耐熱性が高い樹脂で構成される。なお、ベルト60は皮製であってもよい。
撮像ユニット20は、上述の通り、ズームレンズ22を有し、ズームレンズ22を介して取得した拡大像をデジタル変換する機能を有する。撮像ユニット20は、例えばデジタルカメラと同様に、CCD、CMOS等の撮像素子を内蔵する本体部21を備える。ズームレンズ22は本体部21の前方に設置されており、ズームレンズ22を通った光が本体部21の撮像素子に入射し、デジタル変換されてモニター30に表示される。本体部21には、例えば画像処理エンジン、デジタル変換された拡大像のデータを記憶する記憶部等が設けられている。
撮像ユニット20は、手動でピントを合わせるように構成されていてもよいが、好ましくはオートフォーカス機能を有する。この場合、本体部21には、オートフォーカス用のセンサ、モーター、制御用マイコン等が内蔵される。なお、本体部21には、静止画撮影用の機械式シャッターが設けられていてもよい。
ズームレンズ22は、患部の拡大像を取得するためのレンズであって、光学ズーム機能を有する。光学式のズームレンズ22を設けることで、患部の鮮明な拡大像を得ることができる。ズームレンズ22の倍率は、用途に応じて適切な範囲に設定され、例えば産婦人科検診用途では、5倍〜40倍、好ましくは5倍〜20倍に設定される。産婦人科検診専用の拡大鏡装置では、10倍〜15倍のように狭い範囲に設定されてもよい。なお、撮像ユニット20はデジタルズーム機能を有していてもよい。
ズームレンズ22は、装置本体11の前面部11aにおいて、使用者100の左右の眼の間に対応する位置に設けられることが好ましい。本実施形態では、装置本体11が左右対称の形状を有するから、ズームレンズ22は前面部11aの横方向中央に設けられる。モニター30R,30Lに対応する像を得るために、2つのズームレンズ22を設けることも可能であるが、装置の軽量性を考慮すると、ズームレンズ22は1つであることが好ましい。
モニター30は、右眼用のモニター30Rと、左眼用のモニター30Lとで構成され、モニター30Rには右眼用の像が、モニター30Lには左眼用の像が表示される、いわゆるデュアルモニターである。本実施形態では、本体部21の後方を向いた面にモニター30R,30Lが設置され、各モニターは隔壁部15によって隔離されている。モニター30には、例えば液晶モニター、または有機ELモニターが適用される。
モニター30に表示される患部の拡大像は、例えばズームレンズ22および撮像素子によって取得された拡大像を、撮像ユニット20の画像処理エンジンでモニター30R用およびモニター30L用に処理して生成される。
医療用拡大鏡装置10は、さらに、装置本体11の前方に設けられたライト23を備えることが好ましい。ライト23には、例えばLEDが適用される。患部を明るく照らす必要がある場合、別体のライトを用いてもよいが、装置本体11にライト23を搭載することで医療用拡大鏡装置10の使い勝手が向上する。ライト23は、装置本体11の前面部11aにおいて、ズームレンズ22の上方に設けられることが好ましい。
医療用拡大鏡装置10は、さらに、撮像ユニット20と無線接続されるリモートコントローラ40(以下、「リモコン40」とする)を備えることが好ましい。リモコン40は、少なくともズームレンズ22の倍率を操作するための倍率調整ボタン44を有する。撮像ユニット20およびモニター30のオンオフ、ズームレンズ22の倍率調整などを行うための操作部は、装置本体11に設けられていてもよいが、リモコン40を用いることで操作性が向上する。なお、医療用拡大鏡装置10は、使用者100の視線を検知して各種操作を実行する機能を有していてもよい。
リモコン40は、握り易いように細長く形成されたリモコン本体41を有する。リモコン本体41の1つの面には、倍率調整ボタン44を含む複数の操作ボタンが設けられている。操作部としては、撮像ユニット20およびモニター30をオンオフするための電源スイッチ42、ライト23をオンオフするためのライトスイッチ43、静止画を取得するためのシャッターボタン45、および動画を取得するための録画ボタン46などが挙げられる。
医療用拡大鏡装置10は、撮像ユニット20によりデジタル変換された拡大像を記憶する記憶部を備えることが好ましい。本実施形態では、メモリカード用スロット50に収容されるメモリカード52によって記憶部が構成されている。メモリカード用スロット50は、例えば撮像ユニット20に設けられ、装置本体11の下面部11d側からメモリカード52を挿入可能に構成される。撮像ユニット20により取得された患部の拡大像のデータは、メモリカード52に保存される。なお、医療用拡大鏡装置10は、ハードディスク(HDD)等で構成される記憶部を備えていてもよい。
医療用拡大鏡装置10は、撮像ユニット20およびモニター30に電力を供給するための電力線を有していてもよいが、電力線等のコードは医療行為の邪魔になるため、バッテリ53で駆動することが好ましい。バッテリ用スロット51は、例えば撮像ユニット20に設けられ、装置本体11の下面部11d側からバッテリ53を挿入可能に構成される。また、撮像ユニット20には、パソコン、プリンター、外部モニター等に接続するためのケーブルが挿入されるケーブルジャック54が1つまたは複数設けられていてもよい。ケーブルジャック54を設けた場合、画像データおよび動画データをケーブルを介してパソコン等に送信することができる。
ここで、図5を参照し、上記構成を備えた医療用拡大鏡装置10を用いて産婦人科検診、特に産婦人科がん検診(子宮がん検診の精密検査)を行う方法を説明しながら、医療用拡大鏡装置10の作用効果について詳説する。
産婦人科では、コルポスコープを用いて、病変(炎症、腫瘍)の有無、病変の広がりなどを確認するコルポスコピー・コルポ診と呼ばれる検査が行われてきた。この検査では、膣内に専用の器具を挿入し、子宮頸部や膣壁をコルポスコープで数倍〜数十倍に拡大して観察する。また、コルポスコープを覗きながら、酢酸水溶液に浸した綿球を子宮頸部等に軽く押し当て、病変の変化を観察(酢酸により病変が白濁するので、その変化を観察)する酢酸加工診も行われ、必要に応じて生検も行われる。さらに、出血がある場合は止血処置も行われる。
従来のコルポスコープは、上述のように、大型で使い勝手が悪いという課題がある。これに対し、上記構成を備えた医療用拡大鏡装置10によれば、コルポスコープを用いた場合と同等以上の検診精度を確保しながら、より簡便でストレスのない検診が可能となる。
図5に例示するように、医療用拡大鏡装置10は、使用者100(以下、「医師」とする)の頭部101にベルト60および補助ベルト61を用いて固定される。医療用拡大鏡装置10は、フェイスパッド12が顔面102に当接し、装置本体11が左右の眼前を覆って顔面102にフィットした状態で装着される。そして、医療用拡大鏡装置10を装着した医師は、ズームレンズ22を患者側に向け、適切な倍率に調整して子宮頚部や膣壁を観察する。
医療用拡大鏡装置10を用いた産婦人科検診では、医師の頭部101に装置が固定されているため、コルポスコープのようにベース部を移動させる必要がなく、また医師と患者の間にアームのような障害物が存在しない。ズームレンズ22のピントはオートフォーカスで調整されると共に、頭部101を動かすことでも調整できるため、コルポスコープのようにベース部を動かしてピント合わせする必要がない。コルポスコープを用いた場合、医師と患者の間に存在するアームは医療行為の邪魔になるだけでなく、これに接触することで再度ピント合わせが必要になるといった不便もある。
医療用拡大鏡装置10を用いた産婦人科検診では、コルポスコープを用いた場合と同様に、器具103を膣内に挿入して膣を広げ、例えば子宮頚部や膣壁を10倍〜15倍の倍率で観察する。医療用拡大鏡装置10では、患部の拡大像を表示するモニター30R,30Lが左右の眼前に配置されるため、当該拡大像を観察し易く、精度の良い検診が可能となる。モニター30R,30Lに表示される患部の拡大像は、光学式のズームレンズ22で取得され、撮像素子でデジタル変換されるため、明るく鮮明である。また、ライト23を使用することで、より良質な拡大像を簡便に得ることができる。
医療用拡大鏡装置10は、頭部101にしっかり固定され顔面102にフィットしているので、両手を使った医療行為もスムーズに行うことができ、長時間使用しても疲れ難くなる。装置本体11には、左右を視認可能とする窓部17が設けられているため、例えば窓部17を通して器具103の位置を確認でき、いちいち装置を外さなくても器具103を取り扱うことが可能である。窓部17は、装置本体11の左右両側、または左右両側とその近傍のみに設けられるので、モニター30の視認性を損なうことなく、作業性を高めることができる。
なお、医療用拡大鏡装置10では、ズームレンズ22によって前方を見ることはできるが、ズームレンズ22は拡大像を得るためのものであるから、周囲の状況の確認には不向きである。ズームレンズ22の他にレンズを設けることも考えられるが、その場合は、装置重量が重くなり、またモニター30に表示する画像の切り替えも必要となる。
医療用拡大鏡装置10は、リモコン40を用いて容易に操作することができる。例えば、倍率調整ボタン44を操作することで、ズームレンズ22の倍率を調整できる。また、シャッターボタン45を操作することで、患部の静止画データを取得でき、録画ボタン46を操作することで、動画データを取得することもできる。静止画データおよび動画データは、メモリカード52に保存される。
以上のように、医療用拡大鏡装置10は、コルポスコープに比べて、コンパクトで使い勝手が良い。そして、医療用拡大鏡装置10によれば、コルポスコープと同等以上の精度で検診が可能である。医療用拡大鏡装置10は、産婦人科がん検診に使用でき、子宮がん検診の精密検査に好適である。医療用拡大鏡装置10は、例えば子宮がん検診の精密検査用拡大鏡装置として、上述の通り従来にはない優れた効果を奏する。
図6に例示するように、医療用拡大鏡装置10は、手術に使用することもできる。手術で使用される従来の拡大鏡装置(顕微鏡)は、コルポスコープと同様に大型で使い勝手が良いものとは言えない。また、顕微鏡を覗きながら長時間手術をすることは極めて疲労度の高い作業である。医療用拡大鏡装置10を用いて手術を行うことで、医師の疲労を軽減し、手術の精度を高めることも可能となる。
なお、上述の実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、図7に例示する医療用拡大鏡装置10Xのように、固定手段として、頭部の全体を広く覆うヘルメット型の支持部63を備えていてもよい。支持部63は、頭部の前方、後方、側方、および頭頂部を含む頭部全体を覆い、頭部の形状に沿って湾曲したヘルメットのような形状を有する。医療用拡大鏡装置10Xにおいて、装置本体11は、支持部63の前端部に取り付けられている。支持部63によって頭部の全体で装置本体11を支持することができるので、装置本体11の重量が大きくなっても良好な装着性が得られる。