{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る端子ホルダおよびこれを備える端子圧着装置について説明する。
<端子付電線>
まず端子圧着装置によって製造される端子付電線1について先に説明する。図1は、端子圧着装置によって製造される端子付電線1の一例である。
端子付電線1は、電線3と電線3の端部に圧着された端子7とを備える。本実施形態では、2つの電線3が撚り合わされてツイスト電線2を成している事例である。さらに本実施形態では、端子付電線1が、ツイスト電線2の周囲を覆うジャケット6を備えている事例を用いて説明する。
各電線3は、芯線4と芯線4の周囲を覆う絶縁被覆5とを含む。芯線4は、銅またはアルミニウム等の導電材料によって形成される。芯線4は、1本の素線で構成されていてもよいし、複数本の素線で構成されていてもよい。芯線4が複数本の素線で構成されている場合、複数本の素線は、撚り合わされていてもよいし、撚り合わされていなくてもよい。絶縁被覆5は、樹脂などの絶縁材料(例えば、ポリエチレン又はポリ塩化ビニル等)が、芯線4の周囲に例えば押出成形されることなどによって形成される。
ジャケット6は、シースなどとも呼ばれ、樹脂などの絶縁材料(例えば、ポリエチレン又はポリ塩化ビニル等)が撚り合わされた2つの電線3の周囲に押出成形されるなどして形成される。
端子付電線1の端部においてジャケット6は皮剥ぎされるなどして、存在していない。このため、端子付電線1の端部において2つの電線3が露出している。この露出した2つの電線3の端部において撚りがほどかれたうえで絶縁被覆5が皮剥ぎされる。これにより、芯線4の端部が露出する。露出した当該芯線4の端部を含む領域に端子7が接続されている。
端子7は、圧着部8と相手側接続部9とを備える。圧着部8は、芯線圧着部8aと被覆圧着部8bとを備える。各圧着部8は、底部と底部に起立して形成される圧着片とを含む。そして、各圧着部8が電線3のうち圧着対象となる部分(芯線圧着部8aは芯線4、被覆圧着部8bは絶縁被覆5)と共に端子圧着装置の金型によって挟み込まれつつプレスされる。これにより、各圧着片が電線3のうち圧着対象となる部分を巻き込んだ状態に圧着されて、もって端子7と電線3とが接続される。相手側接続部9は、例えば、雄端子形状に形成されていてもよいし、雌端子形状に形成されていてもよい。ここでは相手側接続部9が、雌端子形状に形成されている例で説明する。従って相手側接続部9は、箱状に形成された箱部を有している。そして箱部の内部には、当該箱部の内部に挿入された相手側のタブ端子と接続可能な接点部が形成されている。
こうして加工されたツイスト電線2は、車両に搭載されるワイヤーハーネスに組み込まれ、例えば、イーサネット(登録商標)規格に準拠する高速通信用のケーブルとして用いられる。
もっとも、製造対象となる電線3は上記に限られるものではない。例えば、電線3が1本単独で存在する場合もあり得る。また例えば、電線3を複数本備える場合でも撚り合わされていない場合もあり得る。また例えば、複数の芯線4がそれぞれ単独での絶縁被覆5を備えておらず、複数の芯線4が1つの絶縁被覆5を共有している場合もあり得る。また例えば、電線3がジャケット6を備えていない場合もあり得る。また、端子7についても上記したものに限られない。例えば、端子7の圧着部8は被覆圧着部8bが省略され、芯線圧着部8aのみである場合もあり得る。
<端子圧着装置>
次に上記端子7を電線3端部に圧着するための端子圧着装置について説明する。図2は、第1実施形態に係る端子圧着装置10を示す正面図である。図3は、第1実施形態に係る端子圧着装置10を示す側面図である。図4は、第1実施形態に係る端子圧着装置10を示す拡大正面図である。
端子圧着装置10は、端子ホルダ60と、金型とを備える。本実施形態は、端子圧着装置10がいわゆる手動圧着工具である事例であり、特に作業者が圧着に係る力を手で入力するいわゆるハンドツールタイプである事例である。従ってここでは、端子圧着装置10は、ハンドツール本体部20をさらに備える。端子圧着装置10においてハンドツール本体部20に取付けられた上側ユニット40及び下側ユニット50の一部として、端子ホルダ60及び金型が組み込まれている。
まず先にハンドツール本体部20について説明する。ハンドツール本体部20は、入力部22と、変換部30とを備える。
入力部22は、作業者が力を入力可能とされる。ここでは、作業者が手で力を入力するため、入力部22は2つの棒状ハンドル部23、24を含んでいる。2つの棒状ハンドル部23、24は、作業者が手で握ることが可能に形成される。また、2つの棒状ハンドル部23、24は、作業者が手で開閉作動させることが可能に形成されている。具体的には各棒状ハンドル部23、24は長尺棒状に形成され、一端側で回動ピン26によって回動可能に連結されている。作業者は、回動ピン26で連結されている部分よりも他端側部分を握りつつ当該部分を接近離間方向に相対移動させることが可能である。以下では、2つの棒状ハンドル部23、24の他端部が離間した状態(図2に示す状態)を開状態とし、接近した状態(図9に示す状態)を閉状態とする。このとき作業者は開状態にある2つの棒状ハンドル部23、24の他端部が相互に接近する向きに力を入力することによって、2つの棒状ハンドル部23、24を閉じることが可能とされる。
変換部30は、入力部22に入力された力を、金型における上型42及び下型52を接近離間方向に相対移動させる力に変換する。特にここでは変換部30は、2つの棒状ハンドル部23、24の開閉作動を上型42及び下型52の接近離間方向への相対移動に変換する。具体的には、変換部30は、上側フレーム32と、下側フレーム34と、リンク36とを備える。
上側フレーム32において、一端部が回動ピン33によって棒状ハンドル部23の一端部に回動可能に支持されている。上側フレーム32は、棒状ハンドル部23よりも短尺に形成されている。上側フレーム32のうち他端側には、上側ユニット40が取付けられている。かかる上側ユニット40に金型における上型42が設けられている。図4に示すように上型42の先端部は、上側フレーム32に対して下側フレーム34側に突出している。
下側フレーム34において、一端部が回動ピン35によって棒状ハンドル部24の一端部に回動可能に支持されている。下側フレーム34は、棒状ハンドル部24よりも短尺に形成されている。下側フレーム34のうち他端側には、下側ユニット50が取付けられている。かかる下側ユニット50に金型における下型52が設けられている。下型52の先端部は、下側フレーム34に対して上側フレーム32側に突出している。
リンク36は、上側フレーム32と下側フレーム34とをつなぐ部分である。リンク36は、一端側で回動ピン37によって上側フレーム32に回動可能に支持されている。また、リンク36は、他端側で回動ピン38によって下側フレーム34に回動可能に支持されている。リンク36が設けられることによって、棒状ハンドル部23、24が開閉作動した際に、上側フレーム32と下側フレーム34とは、リンク36で連結された部分の間の間隔が変わらずにそれぞれ姿勢変更する。
より詳細には、ここでは上側フレーム32及び下側フレーム34をそれぞれ回動可能に留める2つの回動ピン33、35(作用点)が、2つの棒状ハンドル部23、24を回動可能に留める回動ピン26(支点)に対して、作業者に把持される位置、つまり力が入力される位置(力点)よりも先端側に位置する。このため、2つの棒状ハンドル部23、24が開状態から閉状態に移行すると、上側フレーム32及び下側フレーム34をそれぞれ回動可能に留める2つの回動ピン33、35が離間移動する。この際、上側フレーム32及び下側フレーム34におけるリンク36が連結された中間部分は、その間隔が変わらない。このため、上側フレーム32及び下側フレーム34におけるそれぞれの他端部が接近し、もって、上型42を備える上側ユニット40及び下型52を備える下側ユニット50が接近する向きに相対移動可能とされる(図9参照)。また、2つの棒状ハンドル部23、24が閉状態から開状態に移行する際には、上記とは逆に、上側フレーム32と下側フレーム34とは、それぞれの一端部が接近しつつ他端部が離間し、もって、上型42を備える上側ユニット40及び下型52を備える下側ユニット50が離間する向きに相対移動可能とされる。
変換部30は、図示省略のラチェット部をさらに備えることが考えられる。ラチェット部は、作業者による棒状ハンドル部23、24の作動方向を、開状態から閉状態へ向かう方向に限定する。これにより、圧着中に不意に閉状態から開状態に移行することがなくなり、圧着不良を抑えられる。
このとき変換部30は、ラチェット部の動作を解除する図示省略のラチェット部解除部をさらに備えることが考えられる。これにより、ラチェット部によって規制された棒状ハンドル部23、24の閉状態から開状態への移行を行うことができる。係るラチェット部解除部としては、例えば、2つの棒状ハンドル部23、24が閉状態となって圧着動作が完了した状態で、作業者がさらに、2つの棒状ハンドル部23、24を接近させる向きに力を加えることで作動するように構成されていることが考えられる。これにより、ラチェット部解除部が圧着動作の邪魔をすることが抑制される。なおこの場合、圧着動作が完了した状態で、ラチェット部解除部を動作させるために、作業者が2つの棒状ハンドル部23、24を接近させる向きに力を加えた場合でも、上型42及び下型52がそれ以上接近しないようにストッパ部46が設けられているとよい。係るストッパ部46については後述する。
さらにこのとき変換部30は、2つの棒状ハンドル部23、24を開状態に付勢する図示省略の付勢部をさらに備えることが考えられる。これにより、ラチェット部によってラチェット部の動作が解除された際に、2つの棒状ハンドル部23、24を速やかに開状態に戻すことが可能となる。
もっともハンドツール本体部20は、作業者が手で入力した力を上型42及び下型52を接近離間移動する方向への力に変換可能であればよく、その構成は上記したものに限られるものではない。
上側ユニット40は、上側フレーム32に設けられている。上側ユニット40は、上型42と、上型ガイド部44とを備える。ここでは、上側フレーム32の先端が二又に分かれており、上型42及び上型ガイド部44の一部が、二又に分かれた上側フレーム32の間に挟まれつつ支持されている。
上型42は、後述する下型52と共に端子ホルダ60が保持する端子7を挟み込んで電線3に圧着するための金型を成している。上型42には、下型52と共に端子7を挟み込んだ際に端子7を変形させる端子変形部43が形成されている。上型42は、芯線圧着部用上型42aと、被覆圧着部用上型42bとを備える。上型は、長方形板状に形成され、長尺方向下端にそれぞれ端子変形部43となる凹部が形成される。芯線圧着部用上型42aにおける端子変形部43は、芯線圧着部8aに応じた形状に形成され、被覆圧着部用上型42bにおける端子変形部43は、被覆圧着部8bに応じた形状に形成される。また、上型42は、中間部分に形成された貫通孔を用いて上側フレーム32にネジ止めされる等によって上側フレーム32に支持される。従って上型42は、上側フレーム32に対して着脱可能であり、交換可能とされる。この際、上型42は、圧着高さを調節可能となるように、上側フレーム32に対して長尺方向に移動可能に支持されるとよい。例えば、上型は、上記貫通孔が長孔であることなどによって上側フレーム32に対して長尺方向に移動可能となる。上型42の長尺方向に沿った移動は例えば図示省略の調節部によってなされる。
上型ガイド部44は上側フレーム32に固定される。上型ガイド部44は、例えば、上型42に重ねられる中間部と中間部の両側に突出する両端部45とを含む。中間部は、上型42を止めるネジと同じネジで上側フレーム32に固定される。両端部45は、厚く形成され、上型42を両側方から挟み込む。これにより、上型42の姿勢が安定する。また図3に示すように両端部45の下部45aは、それより上部よりも厚く形成され、二又に分かれた上側フレーム32に引っ掛かっている。これにより、上側フレーム32に対する上型ガイド部44の位置決め(回り止め)がなされている。また、上型ガイド部44の上面には、上記調節部が設けられる。
調節部としては、例えば、調節ネジを用いることが考えられる。より詳細には、調節部は、上型42の両端部45の上面を連結する連結板部と、連結板部に形成された貫通孔に通されるネジと、ネジを留めるナットと、上型42を上向き(下型52から離間する向き)に付勢する付勢部とを備える。付勢部は、上型42の両側部と、上型ガイド部44の両端部45との間にそれぞれ設けられる。そして、連結板部の貫通孔から延びるネジの先端が上型42に当接しており、貫通孔から延びるネジの長さを調節することによって上側フレーム32に対する上型42の位置を調節可能とされる。
下側ユニット50は、下側フレーム34に設けられている。下側ユニット50は、下型52と、端子ホルダ60と、支持治具装着部80とを備え、これらは、下側フレーム34に固定されている。ここでは、下側フレーム34の先端が二又に分かれており、下型52の一部が、二又に分かれた下側フレーム34の間に挟まれている。また、端子ホルダ60は、二又に分かれた下側フレーム34の一方の外方に突出している。また、治具装着部は、二又に分かれた下側フレーム34の他方の外方に突出している。
下型52は、上型42に対向配置されている。下型52は、上型42と共に端子ホルダ60が保持する端子7を挟み込んで電線3に圧着するための金型を成している。下型52は、芯線圧着部用下型52aと、被覆圧着部用下型52bとを備える。下型52は、基端部53が方形板状に形成され、基端部53の幅方向中間部から上向き(上型42に向かう向き)に突出する態様で端子7を支持する端子支持部54が形成されている。芯線圧着部用下型52aにおける端子支持部54は、芯線圧着部8aに応じた形状に形成され、被覆圧着部用下型52bにおける端子支持部54は、被覆圧着部8bに応じた形状に形成される。また、各下型52は、基端部53が下側フレーム34にネジ止めされる等によって下側フレーム34に支持される。従って各下型52は、下側フレーム34に対して着脱可能であり、交換可能とされる。また基端部53の幅方向両端部から上向き(上型42に向かう向き)に突出する態様で突部55が形成されている。係る突部55は、図3に示すように、それより基端部53よりも厚く形成され、二又に分かれた下側フレーム34に引っ掛かっている。これにより、下側フレーム34に対する下型52の位置決め(回り止め)がなされている。
ここで、図3及び図4に示すように、上型ガイド部44の両端部45の下部の下面にはストッパ部46が突設されている。係るストッパ部46は上型ガイド部44の両端部45の下部からの突出寸法を調節可能とされる。これを可能にする構成としては、例えば、上型ガイド部44の両端部45の下部に形成されたネジ穴に螺合されるネジ及びネジに螺合されるナット等による構成が考えられる。係るストッパ部46は、圧着完了時に下型52の突部55の上面に当接し、上型42及び下型52がそれ以上接近することを抑制する。これにより、圧着完了後に、ラチェット部解除のために又は意図せずに、2つの棒状ハンドル部23、24が接近する向きにさらに力が加えられた場合でも、上型42及び下型52がそれ以上接近することが抑制される。
端子ホルダ60は、下型52に対して下型52が支持する端子7の先端側に配される。以下、端子ホルダ60について、図5乃至図7を参照しつつ詳述する。図5は、第1実施形態に係る端子ホルダ60を示す分解斜視図である。図6は、第1実施形態に係る端子ホルダ60を示す平面図である。図7は、図6のVII−VII線に沿って切断した断面図である。
端子ホルダ60は、圧着部8を備える端子7を電線3に圧着する圧着時に端子7を位置決めしつつ保持する。ここでは、端子ホルダ60は、2つの端子7を横並びの状態で位置決めしつつ保持可能とされる。具体的には、端子ホルダ60は、基体62と、蓋部64と、位置決め部68と、付勢部70と、抜止部72とを備える。
基体62は、下側フレーム34に固定される。基体62は、例えば、下方に延びる取付部62aが下側フレーム34にネジ留めされるなどして下側フレーム34に固定される。取付部62aと反対側に位置する基体62の上面62bは、方形状の第1平坦面62cと、第1平坦面62cよりも外方に突出する方形状の第2平坦面62dと、第1平坦面62cの一端縁部であって基体62の上面62bの一端縁部が面取されたガイド面62eとで構成されている。そして、基体62の上面62bには、凹部63が形成されている。
凹部63は例えば第1平坦面62cの法線方向に凹む態様で形成される。凹部63としてここでは、端子収容凹部63aと、位置決め部収容凹部63bと、付勢部収容凹部63cとが形成されている。さらにここでは、凹部63として回動機構収容凹部63dも形成されている。
端子収容凹部63aは、端子7における相手側接続部9を収容可能に形成されている。具体的には、端子収容凹部63aは、第1平坦面62cと第2平坦面62dとが並ぶ方向に沿った第1方向に長い方形穴状に形成されている。端子収容凹部63aの第1方向一端部はガイド面62eから外方に開口している。これにより、端子収容凹部63aに相手側接続部9が収められた状態で、圧着部8が当該開口を通じて外方に延出可能となる。また端子収容凹部63aの第1方向他端部は位置決め部収容凹部63bと連通している。これにより、端子収容凹部63aに収められた端子7の先端が位置決め部収容凹部63bに抜けることができる。
本実施形態では、複数(ここでは2つ)の端子収容凹部63aが形成されている。2つの端子収容凹部63aは、第1平坦面62cの広がる方向において第1方向と交差する第2方向に沿って並んで形成されている。2つの端子収容凹部63aは、それぞれ1つの相手側接続部9を収容可能である。端子収容凹部63aの長さ寸法は、例えば、相手側接続部9の長さ寸法以下に(ここでは相手側接続部9の長さ寸法よりも僅かに小さく)設定されている。端子収容凹部63aの幅寸法は、例えば相手側接続部9の幅寸法と同程度に(ここでは相手側接続部9の幅寸法よりも僅かに大きく)設定されている。また、例えば端子収容凹部63aの深さ寸法は、相手側接続部9の高さ寸法と同程度に(ここでは僅かに大きく)設定されている。
位置決め部収容凹部63bは、位置決め部68を収容可能に第1平坦面62cに形成されている。ここでは、位置決め部収容凹部63bは、第2方向に長い方形穴状に形成されている。位置決め部収容凹部63bの長さ寸法(第2方向に沿った寸法)は、位置決め部68の長さ寸法以上に(ここでは、位置決め部68の長さ寸法よりも僅かに大きく)設定されている。位置決め部収容凹部63bの幅寸法(第1方向に沿った寸法)は、位置決め部68の幅寸法よりも大きく設定されている。これにより、位置決め部68は、位置決め部収容凹部63bに収容された状態で、幅方向に移動可能となる。位置決め部収容凹部63bは、長さ方向中間部において端子収容凹部63aと連通している。また位置決め部収容凹部63bは、長さ方向中間部において端子収容凹部63aと反対側で付勢部収容凹部63cと連通している。
付勢部収容凹部63cは、付勢部70を収容可能に形成されている。付勢部収容凹部63cは、付勢部70に応じた形状に形成される。ここでは、付勢部70として圧縮コイルバネが設けられるため、付勢部収容凹部63cは第1方向に長い溝状に形成されている。
回動機構収容凹部63dは、抜止部72における抜止板部73を回動させる機構を収容可能に形成されている。
蓋部64は、長方形板状に形成されている。蓋部64は、例えば、図示省略のネジ等によって基体62に固定される。蓋部64は、端子収容凹部63aの上方を覆っている。従ってここでは、端子収容凹部63aの内周面と、蓋部64の下面とで、端子7における相手側接続部9の周囲を四方から覆うことが可能とされている。ここでは、端子7における相手側接続部9の周囲を四方から覆う当該部分が、端子7における圧着部8と異なる部分を保持可能な保持部66とされている。ここでは、端子収容凹部63aが複数(ここでは2つ)形成されているため、保持部66は、長手方向と交差する方向に並ぶ複数(ここでは2つ)の端子7を個別に保持可能である。
位置決め部68は、保持部66に保持された端子7の長手方向に沿った先端面に突き当て可能に設けられている。また、位置決め部68は、保持部66に対して接近離間移動可能に設けられている。ここでは位置決め部68は、棒状に形成され、位置決め部収容凹部63bに収められている。この際、位置決め部68は、位置決め部収容凹部63bに対してその幅方向に移動可能である。これにより、位置決め部68は、保持部66に対して接近離間移動可能とされる。
付勢部70は、位置決め部68を保持部66に接近する向きに付勢する。上述したようにここでは、付勢部70は圧縮コイルバネが採用されているものとして説明する。もっとも付勢部70としては、板バネ等の他のバネ部材又はゴム等の弾性材料で形成された部材が用いられていてもよい。付勢部70は、付勢部収容凹部63cに収められている。このとき、付勢部70は、位置決め部68が保持部66に最も接近した状態(ここでは位置決め部68の先端が位置決め部収容凹部63bの側面に当接した状態)で、自然状態又は圧縮状態であるとよい。
抜止部72は、保持部66に保持された端子7の抜け止めを図る部分である。抜け部は、抜止板部73と、開閉操作部75とを含む。
抜止板部73は、幅広部分73aと、幅広部分73aに連なる幅狭部分73bとを備える。幅広部分73aと幅狭部分73bの基端部73cとは扁平板状に形成され、幅狭部分73bの先端部73dは基端部73cに対して曲げられている。抜止板部73は、回動ピン74によって基体62に対して回動可能に軸支されている。抜止板部73は、基体62に対して回動することで開閉される。以下では、図7の実線に示すように抜止板部73が端子7を抜止可能な状態を閉姿勢とし、図7の仮想線に示すように閉姿勢から回動した姿勢であって、端子7を端子収容凹部63aから抜くことが可能な姿勢を開姿勢とする。閉姿勢では、幅広部分73a及び幅狭部分73bの基端部73cが基体62の上面62bと平行となり、幅狭部分73bの先端部73dが端子収容凹部63aの開口の少なくとも一部を塞いでいる。このとき、端子7の相手側接続部9が端子収容凹部63aに収まっていると幅狭部分73bの先端部73dが、相手側接続部9の後端部に引っ掛かることが可能となり、もって端子7の抜け止めが図られた状態とされる。また、開姿勢では、幅広部分73a及び幅狭部分73bの基端部73cが基体62の上面62bから離間し、幅狭部分73bの先端部73dが端子収容凹部63aの開口を塞いだ状態が解除される。なお、閉姿勢からの基体62に対する抜止板部73の回転可能な角度は、抜止板部73の幅狭部分73bの先端部73dが端子収容凹部63aの開口を塞いだ状態が解除されるものであれば、特に限定されるものではない。
開閉操作部75は、抜止部72を開閉操作可能とする。ここでは開閉操作部75は、操作ダイヤル76と、2つのギヤ77、78とを備える。操作ダイヤル76は、基体62の側面に設けられている。2つのギヤ77、78は、相互に噛合った状態で回動機構収容凹部63dに収められている。ギヤ77は、操作ダイヤル76に連なるシャフトに回転不能に支持され、ギヤ78は抜止板部73に固定されている。ギヤ78には、回動ピン74が通されている。そして操作ダイヤル76が回されると、ギヤ77が回る。これにより、ギヤ77と噛み合うギヤ78が回り、ギヤ78が固定された抜止板部73が回る。なお、開閉操作部75は、抜止板部73を開状態に維持可能であるとよい。また、開閉操作部75は、抜止板部73を閉状態に維持可能であるとよい。
支持治具装着部80は、電線3を支持する支持治具90を、支持治具90に支持された電線3の端部が金型に対応する位置に位置するように装着可能である。支持治具装着部80は、下型52に対して端子ホルダ60とは反対側に配される。具体的には支持治具装着部80は、ステージ82と、取付部84とを含む。
ステージ82は、長方形板状に形成されている。ステージ82の上面に支持治具90が載置される。このときステージ82の上面には、凹部83が形成される。凹部83には、支持治具90に形成された凸部98が収められる。凸部98が凹部83に収まることにより、支持治具装着部80と支持治具90との位置決めがなされる。係る凹部83及び凸部98は、複数形成されるとよい。これにより、支持治具装着部80と支持治具90との回り止めを図ることができる。
取付部84は、ステージ82の基端の両側部に突設されている。取付部84は、下型52の突部55に重ねられている。そして、取付部84が突部55にネジ留めされることなどによって支持治具装着部80が下型52に固定され、もって下側フレーム34に固定される。もっとも支持治具装着部80は直接下側フレームに固定されるものであってもよい。
ここで支持治具装着部80に装着される支持治具90について図8を参照しつつ説明する。図8は、支持治具90を示す分解斜視図である。
支持治具90は、電線3への端子圧着時に電線3を支持しておく部材である。ここでは電線3としてツイスト電線2が想定され、さらに端子7の圧着態様として2端子同時圧着が想定されているため、支持治具90は、ツイスト電線2における2つの電線3の端部を位置決めしつつ保持可能である。具体的には、支持治具90は、第1部材91と第2部材94とを含む。
第1部材91は、ツイスト電線2の先端を仕切る部分である。第1部材91は、長尺棒状に形成された棒状部92と棒状部92の一端側の先端に棒状部92の延在方向と交差する方向に突出する態様で設けられた突出片93とを含む。突出片93には、先端縁部から基端側に向けて凹む溝部93aが2つ並んで形成されている。これにより、突出片93aの先端は、3つの歯を有する櫛状に形成されている。各溝部93aは、電線3の絶縁被覆5が存在する部分を挿通可能に形成されている。従って、2つの電線3の端部が各溝部93aにそれぞれ挿通されることによって、2つの電線3が仕切られて保持された状態となる。つまり、ここでは、突出片93のうち2つの溝部93aが形成された部分が仕切部を構成している。このとき、溝部93aの幅寸法は、電線3を圧入可能な寸法に設定されていることが好ましい。これにより、支持治具90が、溝部93aが鉛直下方を向いた状態で用いられる場合でも、仕切部が電線3を保持した状態をより確実に維持することができる。
第2部材94は、ツイスト電線2の中間部(ここでは、ジャケット6を有する部分)を保持する部分である。第2部材94は、長尺な直方体状に形成されている。また、第2部材94は、長尺方向と直交する面に沿って切断した断面が幅広となるように形成されている。第2部材94の一方主面には、上記第1部材91が収まる第1溝95が形成されている。第1溝95の幅寸法は、第1部材91の幅寸法と同程度に設定されている。また、第2部材94の一方主面に対して反対を向く他方主面には、ツイスト電線2が収まって保持される第2溝96が形成されている。ここでは、第1溝95及び第2溝96は、第2部材94の長尺方向に沿って全体に亘って、つまり、第2部材94の一端側縁部から他端側縁部にかけて形成されている。第2溝96の幅寸法は、ツイスト電線2におけるジャケット6が存在する領域の幅寸法と同程度に設定されている。好ましくは、第2溝96の幅寸法は、ツイスト電線2におけるジャケット6が存在する部分を圧入可能な寸法に設定されているとよい。これにより、第2溝96を鉛直下方に向けた状態でも第2溝96からツイスト電線2が脱落しにくくなる。
第1部材91と第2部材94とは、合体機構部によって合体している。このような合体機構部としてここでは、ネジ穴91a、94aとネジとが想定されている。ネジ穴91a、94aは、第1部材91及び第2部材94にそれぞれ形成されている。第1部材91に形成されたネジ穴91aは、棒状部92の基端部に幅方向に沿って両側面を貫く態様で形成されている。例えば、ネジ穴91aは棒状部92の延在方向に沿って2つ形成される。第2部材94に形成されたネジ穴94aは、幅方向に沿って第1溝95の内周面から側面にかけて貫く態様で形成されている。ネジ穴94aも第2部材94の延在方向に沿って2つ形成されている。そして、第1溝95に第1部材91を収めると共に2つのネジ穴91a、94aの位置を合わせた状態で、ネジ穴91a、94aにネジを締めることによって第1部材91と第2部材94とが合体している。また、ネジが外されることによって第1部材91と第2部材94との係止が解除されて、着脱可能な状態となる。なお、ここではネジ穴94aは長穴に形成されている。これにより、第1部材91と第2部材94との位置を調節可能とされている。もっとも、合体機構部の構成としては、上記したものに限られない。例えば、凸部と凹部との嵌め込み構造であってもよいし、後述するスナップ錠のようなロック機構であってもよい。
また、第2部材94には、支持治具装着部80への位置決めを行うための凸部98が形成されている。凸部98は、第2部材94の他方主面から突出する態様で形成されている。凸部98は、第2部材94の幅方向に沿って第2溝96を避けた位置に形成されている。凸部98は、第2部材94の長尺方向に沿って2つのネジ穴94aの間に形成されている。凸部98は、例えば、第2部材94の幅方向に沿って間隔をあけて2つ形成されている。
なお、支持治具装着部80と支持治具90とは、凸部98が凹部83に嵌まった装着状態に維持可能であるとよい。支持治具装着部80と支持治具90とを装着状態に維持する装着状態維持部としては、例えば、磁石を用いることができる。この場合、例えば、凸部98の先端及び凹部83の底の両方に相互に引き付けあう永久磁石が固定される構成が考えられる。また、凸部98の先端又は凹部83の底の一方のみに永久磁石が固定され、相手側の部材における永久磁石との当接部はステンレス鋼等の磁性体によって形成される構成が考えられる。
もっとも、支持治具装着部80と支持治具90とを装着状態に維持する装着状態維持部として永久磁石を用いた構成に限られるものではなく、例えば凹部83と凸部98との圧入等であってもよいし、また例えば後述するスナップ錠を用いた構成であってもよい。
<動作>
次に、端子圧着装置10を用いた端子圧着動作例について説明する。
まずは、端子7を端子圧着装置10に固定された端子ホルダ60にセットする。具体的には、開閉操作部75を操作して、抜止部72を開状態にした状態で、2つの端子7を端子収容凹部63aに挿し込む。そして、端子7の先端面を位置決め部68に突き当てつつ、抜止部72を閉状態にして抜止部72の先端を相手側接続部9の後端に引っ掛ける。これにより端子7が端子圧着装置10に高精度に位置決めされてセットされた状態となる。つまり、端子7が端子ホルダ60にセットされると、端子7のうち端子ホルダ60に保持された相手側接続部9から延出する圧着部8は下型52に載置されるか、下型52に対して僅かに上方に浮いた位置に位置するようになる。
次に、電線3を端子圧着装置10にセットする。
電線3を端子圧着装置10にセットするに当たりまずは、支持治具90に電線3をセットする。具体的には、支持治具90において第1部材91と第2部材94とは予め合体状態にある。この状態で、ツイスト電線2の先端において露出する2つの電線3を、撚りをほどいたうえで第1部材91の各溝部93aに挿入する。また、ツイスト電線2における中間部を第2部材94の第2溝96に挿入する。これにより、支持治具90への電線3のセットが完了する。
支持治具90への電線3のセットが完了したら次に、電線3がセットされた支持治具90を端子圧着装置10に装着する。具体的には、支持治具90の第2部材94の下面に突設された凸部98を、支持治具装着部80のステージ82の上面に形成された凹部83に収める。この際、支持治具90と支持治具装着部80は、上述したように凸部98の先端又は凹部83の底の少なくとも一方に設けられた永久磁石によって固定される。電線3がセットされた支持治具90を端子圧着装置10に装着が完了すると、電線3の端子圧着装置10へのセットが完了となる。これにより、電線3の端部が圧着部8における底部載置されるか、圧着片の間に収まる範囲内で底部に対して僅かに上方に浮いた位置に位置するようになる。
従って端子圧着装置10への端子7及び電線3のセットが完了すると、上型42と下型52との間に端子7の圧着部8が位置すると共に、圧着部8における底部と上型42との間に電線3が位置する状態となる。この状態になったら、作業者は圧着動作を開始する。
具体的には、作業者は、図9に示すように2つの棒状ハンドル部23、24を握りつつ相互に接近する向きに力を入力する。この力により、2つの棒状ハンドル部23、24が相互に接近すると、上述したように、上側フレーム32及び下側フレーム34の先端部が接近し、上側ユニット40及び下側ユニット50が接近する。これにより、上型42及び下型52が接近し、やがて圧着部8及び電線3を挟み込んでプレスし、圧着部8の変形部の形状に応じた形状に変形させる。
この変形に際し、端子7が長手方向に伸びようとすると、端子7の先端面が位置決め部68を押圧する。位置決め部68は、この押圧力を受けて付勢力に抗して図10に示すように保持部66から離間移動する。これにより、端子7は長手方向に伸びることが可能とされる。
圧着の前後における位置決め部68の動作を平面視でみると、図11及び図12に示すようになる。すなわち、圧着前の状態では、図11に示すように、位置決め部68が保持部66に接近した状態で端子7の先端面に当接している。そして、圧着に伴って端子7が長手方向に伸びようとすると、端子7の先端面が位置決め部68を押圧する。位置決め部68は、この押圧力を受けて付勢力に抗して、図12に示すように保持部66から離間移動する。なお、位置決め部68の移動量は端子7の伸び量に依存する。従って、位置決め部収容凹部63bの幅寸法と位置決め部68の幅寸法との差は、予想される端子7の最大伸び量以上に設定されていることが好ましい。なお、図12では、2つ端子7が同様に伸びているが、2つの端子7の伸び量が異なる場合もあり得る。この場合、伸び量が大きい方の端子7のみが位置決め部68を押圧することもあり得る。
端子圧着が完了したら、端子付電線1を取り出す。具体的には、作業者は2つの棒状ハンドル部23、24を握りつつ相互に接近する向きにさらに力を入力する。これにより、ラチェット部が解除され、2つの棒状ハンドル部23、24が開状態に移行する。この状態で、端子ホルダ60における抜止部72を開状態にしつつ、端子付電線1がセットされた支持治具90を支持治具装着部80から外す。そして、支持治具90から端子付電線1を取り外すことによって、図1に示すような端子付電線1を得ることができる。
上記態様によると、端子7セット時に端子7における圧着部8と異なる部分が保持部66に保持されると共に端子7における長手方向に沿った先端面に位置決め部68が突き当てられることによって、端子ホルダ60に対して端子7を高精度で位置決め可能となる。また端子7圧着時に端子7が長手方向に伸びようとしてその先端面が位置決め部68を押すと、位置決め部68が付勢部70の付勢力に抗して保持部66から離間する。このため、端子7が長手方向に伸びることが可能となる。これらより、端子7の位置決め精度の向上を図ることを可能にしつつ、圧着時に端子7が長手方向に沿って伸びることを許容することができる。
また、1つの端子圧着装置10によって2つの端子7の圧着動作を同時に行う場合に、端子ホルダ60が同時に圧着される2つの端子7を位置決めしつつ保持可能である。特に、1つの端子圧着装置10によって2つの端子7の圧着動作を同時に行う場合であって、各端子7が単体で供給される場合、長手方向に沿った位置決め態様としては、位置決め部68に突き当てる態様が有効である。この場合でも、端子7圧着時に端子7が伸びようとした場合、付勢部70の付勢力に抗して伸びることが可能となる。
また、端子圧着装置10が人力によって作動するタイプ、特に手でもって作業するいわゆるハンドツールタイプである場合でも、端子7の位置決め精度の向上を図ることを可能にしつつ、圧着時に端子7が長手方向に沿って伸びることを許容することができる。
また、支持治具90によって電線3を支持しておくことによって、長手方向に沿った電線3の位置決め精度の向上を図ることができる。
{第2実施形態}
次に、第2実施形態に係る端子ホルダ160およびこれを備える端子圧着装置110について説明する。図13は、第2実施形態に係る端子圧着装置110を示す側面図である。図14は、第2実施形態に係る端子圧着装置110を示す平面図である。なお、本実施の形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態は、端子圧着装置110が駆動部によって駆動するタイプである事例である。従ってここでは端子圧着装置110は、ハンドツール本体部20に替えて駆動用本体部120を備える。
駆動用本体部120は、フレーム122と、駆動部130とを備える。さらにここでは、駆動用本体部120は、ステージ124と、ガイド部126とを備える。本実施形態に係る端子圧着装置110において、端子ホルダ160及び金型は、駆動用本体部120に取付けられる上側ユニット140及び下側ユニット150の一構成要素とされている。
駆動部130は、金型における上型42及び下型52を接近離間方向に相対移動させる。ここでは駆動部130は、駆動源132と伝達機構とを備える。駆動源132は、フレーム122に固定されている。駆動源132は、シリンダ又はモータ等のアクチュエータによって構成されている。伝達機構は、駆動源132の駆動力を上型42に伝達し、上型42を下型52に対して往復移動させる。伝達機構は上側ユニット140に連結されるラム部材134及びラム部材134と駆動源132との間に介在しラム部材134を往復動させる図示省略のカム機構等によって構成される。
なお、上側ユニット140においても上型42は、上記上型ガイド部44と同様の上型ガイド部(図示省略)にガイドされる。また、上型42の上面には、下型52に対する上型42の位置を調節可能な上記調節部の調節シャフトの側面が当接される。調節シャフトの側面は例えば中心に対して徐々に径が変わる渦巻状に形成される。これにより、調節シャフトを回転させることによって、調節シャフトの中心と上型42の上面との間隔を調節可能となり、もって、下型52に対する上型42の位置を調節可能とされる。
ステージ124は、方形板状に形成され、フレーム122に固定される。ステージ124は、上側ユニット140の下方に位置する。ステージ124の上面に、下側ユニット150が支持される。またステージ124の上面にはガイド部126が固定される。
下側ユニット150は、下型152と、端子ホルダ160と、支持治具装着部180とを含む。下側ユニット150のうち支持治具装着部180は、上型42に対して電線3の長手方向にスライド移動可能に設けられている。ここでは、支持治具装着部180は、下型152および端子ホルダ160と一体に連結されているものとして説明する。従ってここでは、下型152および端子ホルダ160が支持治具装着部180と一体となって上型42に対して電線3の長手方向にスライド移動可能とされる。もっとも、端子ホルダ160が上型42に対して電線3の長手方向にスライド移動可能であることは必須の構成ではない。さらに、下型152が上型42に対して電線3の長手方向にスライド移動可能であることは必須の構成ではない。
なお、図15に示すように、端子ホルダ160についての主な変更点としては、基体162が略直方体状に形成されており、ステージ124に載置しやすくされている点が挙げられる。また、基体162の上面162bにおいて面取り状の傾斜するガイド面62eに替えて第1平坦面62cよりも凹む第3平坦面162eが形成されている。
下型152の主な変更点としては、突部55が省略された形状に形成されている点が挙げられる。
また支持治具装着部180は、2つの大きさの異なる直方体181a、181bが並ぶような形状に形成され、大きい直方体181aの上面に支持治具190が支持されている。また、小さい直方体181bの先端に下型52が連結されている。この際、大きい直方体181aの上面には、支持治具190に形成された凹部198に収まる凸部183が突設されている。当該凸部183及び凹部198は、上記凸部98及び凹部83に替わり、支持治具190と支持治具装着部180との位置決めを図るためのものである。図18に示す例では、凸部183及び凹部198は、電線3の長手方向に沿って2つ設けられている。もっとも凸部183及び凹部198は、電線3の幅方向に沿って2つ設けられていてもよい。また、支持治具装着部180は、作業者が支持治具装着部180を移動させる際に把持する操作する操作部185を備えている。操作部185は例えば、U字棒状に形成されて、大きい直方体181aの側面に突設されている。
この際、上記支持治具90と支持治具装着部80とは磁石を用いて固定していたが、ここでは、支持治具190と支持治具装着部180とは、ロック部186とロック受部199とによって固定されている。ロック部186とロック受部199とは一方が支持治具90に固定され、他方が支持治具装着部80固定される。例えば係るロック部186及びロック受部199としては、いわゆるスナップ錠のようなロック機構を採用することが考えられる。
図16は、支持治具190を示す分解斜視図である。支持治具装着部180に装着される支持治具190の主な変更点は、第2部材194が第2部材94よりも長尺とされている点が挙げられる。この際、第1溝195は、第1溝195と異なり、第2部材194の長手方向中間部の位置までしか延びていない。第2溝96は、第2溝96と同様に第2部材94の一端から他端まで全体に亘って延びている。また、上述したように第2部材94には凸部98に替わり凹部198が形成されている。なおこここでは凹部198は貫通孔状に形成されているが有底に形成されていてもよい。さらに、第2部材94にはロック受部199が形成されている。
ガイド部126は、支持治具装着部180の移動、ここでは支持治具装着部180を含み一体となって移動する下側ユニット150の移動を規制する。特にここではガイド部126は下側ユニット150の移動方向を一方向に規制する。下側ユニット150は、当該方向において第1の位置と第2の位置との間で往復移動可能に支持されている。第1の位置は、図13、図14に示すように、下型152が上型42の真下に位置する位置である。下側ユニット150がこの位置にある状態で、圧着動作が行われる。第2の位置は、図17、図18に示すように、下型152が上型42から離れた位置である。下側ユニット150がこの位置にある状態で、端子ホルダ160に対する端子7のセット及び電線3を支持した支持治具190の支持治具装着部180に対するセットが行われるとよい。これにより、端子7のセット及び電線3を支持する支持治具190のセットを行う際に上側ユニット140が、特に上型42が邪魔になることを抑制できる。係るガイド部126は、ここではU字状に形成され、ステージ124上面に固定されている。
<動作>
次に、端子圧着装置110を用いた端子7圧着動作例について説明する。
まずは、図17及び図18に示すように、下側ユニット150を第2位置に引き出す。この状態で、端子7を端子圧着装置110に固定された端子ホルダ160にセットする。具体的には、開閉操作部75を操作して、抜止部72を開状態にした状態で、2つの端子7を端子収容凹部63aに挿し込む。そして、端子7の先端面を位置決め部68に突き当てつつ、抜止部72を閉状態にして抜止部72の先端を相手側接続部9の後端に引っ掛ける。これにより端子7が端子圧着装置110に高精度に位置決めされてセットされた状態となる。つまり、端子7が端子ホルダ160にセットされると、端子7のうち端子ホルダ160に保持された相手側接続部9から延出する圧着部8は下型152に載置されるか、下型152に対して僅かに上方に浮いた位置に位置するようになる。
次に、電線3を端子圧着装置110にセットする。
電線3を端子圧着装置110にセットするに当たりまずは、支持治具190に電線3をセットする。具体的には、支持治具190において第1部材91と第2部材194とは予め合体状態にある。この状態で、ツイスト電線2の先端において露出する2つの電線3を、撚りをほどいたうえで第1部材91の各溝部93aに挿入する。また、ツイスト電線2における中間部を第2部材194の第2溝196に挿入する。これにより、支持治具190への電線3のセットが完了する。
支持治具190への電線3のセットが完了したら次に、電線3がセットされた支持治具190を端子圧着装置110に装着する。具体的には、支持治具装着部180の上面に突設された凸部183を、支持治具190の第2部材194に形成された凹部198に収める。これにより、電線3の端部が圧着部8における底部に載置されるか、圧着片の間に収まる範囲内で底部に対して僅かに上方に浮いた位置に位置するようになる。この状態で、支持治具装着部180に設けられたロック部186を第2部材194に設けられたロック受部199にロックする。これにより、支持治具190のセットが完了となる。
端子7を端子ホルダ160にセットすると共に、電線3がセットされた支持治具190を支持治具装着部180に装着したら、下側ユニット150を第1位置に押し込む。これにより端子圧着装置110への端子7及び電線3のセットが完了する。この状態では、上型42と下型152との間に端子7の圧着部8が位置すると共に、圧着部8における底部と上型42との間に電線3が位置する状態となる。この状態になったら、作業者は駆動部130を駆動して圧着動作を開始する。
具体的には、作業者は、圧着開始スイッチをオンにするなどして、駆動部130を駆動させる。この際、駆動部130は、一往復、つまり一サイクル分駆動するように構成されている。より詳細には、例えば、ラム部材134は上死点近傍で停止しており、圧着開始スイッチがオンになることによって、駆動源132の駆動力を受けて下死点に向けて下降する。ラム部材134が上死点から下死点に移行する途中で上型42が端子7の圧着部8と当接する。ラム部材134の移行が進むにつれ、圧着部8の変形が進行する。そして、ラム部材134が下死点に達することによって、上型42と下型152とによる圧着部8及び電線3のプレスが完了し、圧着部8が所望の形状に変形した状態となる。
この変形に際し、端子7が長手方向に伸びようとすると、端子7の先端面が位置決め部68を押圧する。位置決め部68は、この押圧力を受けて付勢力に抗して保持部66から離間移動する。これにより、端子7は長手方向に伸びることが可能とされる。この端子7の伸びに関しては、上記端子圧着装置10と同様である。
下死点に達したラム部材134はそのまま上死点に向けて移行する。そして、ラム部材134が上死点に達した状態で駆動部130の駆動が停止する。
駆動部130の駆動が停止したら、端子付電線1を取り出す。具体的には、作業者は下側ユニット150を第2位置に引き出す。この状態で、端子ホルダ160における抜止部72を開状態にしつつ、端子付電線1がセットされた支持治具190を支持治具装着部180から外す。そして、支持治具190から端子付電線1を取り外すことによって、図1に示すような端子付電線1を得ることができる。
本態様によると、駆動部130によって作動する端子圧着装置110の場合でも、端子7の位置決め精度の向上を図ることを可能にしつつ、圧着時に端子7が長手方向に沿って伸びることを許容することができる。
また、支持治具190によって圧着時に電線3を支持することによって、電線3の位置決め精度の向上を図ることができる。
また、支持治具装着部180がスライド移動可能であることによって、特にここでは、下側ユニット150がスライド移動可能であることによって、端子ホルダ160へ人手で端子7を供給する際に、支持治具装着部180を上型42に対して長手方向に移動した状態で供給することによって、供給作業が容易となる。
{変形例}
これまで、端子ホルダ60、160が2つの端子7を保持するものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば、端子ホルダ60、160は、1つの端子7を保持するものであってもよい。この場合、端子7の圧着対象の電線3は1本が単独で存在するものであってもよいし、上記ツイスト電線2のように複数本で一体的に存在するものであってもよい。端子ホルダ60、160が1つの端子7を保持し、圧着対象の電線3が複数本で一体となって存在する場合、当然のことながら複数の電線3に対して1本ずつ順に端子7が圧着される。また例えば、端子ホルダ60、160は、3つ以上の端子7を保持するものであってもよい。
またこれまで保持部66が端子7の周囲を囲うように構成されているものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば、保持部は、端子7をチャック可能なチャック部であってもよい。また保持部は、端子7の周囲を囲う場合でも蓋部64が省略されて3方を囲うように構成されていてもよい。
またこれまで1つの位置決め部68が複数の端子7の先端に突き当て可能であるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば、1つの端子7の先端に突き当て可能な位置決め部が複数設けられていてもよい。
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。