JP2018188909A - 地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物、地盤強化用締固め材及びその製造方法並びにそれを用いた地盤強化方法 - Google Patents

地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物、地盤強化用締固め材及びその製造方法並びにそれを用いた地盤強化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 中性の地盤に圧入しても周辺地盤を中性に維持できるとともに、地盤への圧入が可能で、且つ、圧入後に速やかに固結する地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物、当該締固め材、及びそれを用いた地盤強化方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも石膏と骨材を含む、地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物である。また、少なくとも石膏、骨材及び水を含む地盤強化用締固め材であって、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下であり、強度発現を前記石膏、骨材及び水の混合完了時から24時間以内に完了する前記締固め材である。また、前記の締固め材を静的圧入締固め工法等を用いて地盤に形成した削孔に圧入して固結塊を造成し、周囲地盤を圧縮して地盤の密度を増大させる地盤強化方法である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、地盤の密度を増加させて地盤強化を図る地盤強化用締固め材及びその製造方法並びにそれを用いた地盤強化方法に関する。また、その地盤強化用締固め材を作製するにあたり、地上で水を混合させて当該締固め材を作製する前のプレミックス組成物にも関する。
軟弱な砂質土地盤では、地震が起きると過剰間隙水圧が発生し、土粒子が流動化し、地盤の支持力が一時的に消失する「液状化現象」が発生する。かかる液状化現象の防止対策として種々の地盤強化技術が開発され、実用に供されている(例えば非特許文献1)。
そのひとつに「締固め工法」と称される(「密度増大工法」とも称される)ものがあり、その代表的なものに「静的圧入締固め工法」がある。当該工法は、動的エネルギー(打撃や振動)を与えることなく、静的な力(ポンプ圧送による静的圧入)で締固めを行う工法である。具体的には、締固め材を地盤中に圧入して固結塊を造成し、この固結塊による締固め効果で周辺地盤を圧縮し、地盤の密度を増大(本明細書では、単に「密度増大」とも称する)させて地盤強化している(例えば特許文献1)。
静的圧入締固め工法(例えばコンパクショングラウチング工法)に用いられる締固め材には、固化材、骨材及び水を混合したものが用いられる。従って、締固め材の混合完了時の性状は、湿潤状態のモルタル状又はスラリー状(セメントペースト状)である。固化材とは締固め材に固結性能(自己硬化性)を付与する成分であり、セメント系や石灰系の材料が広く用いられている(例えば特許文献1、2)。また、固化材として酸化マグネシウムを用いることも提案されている(特許文献3)。
なお、静的圧入締固め工法以外にも、各種の注入工法(薬液注入、セメント系注入、ジェットグラウトなど)も知られている。薬液注入では、注入材が土粒子間へ浸透し固化(浸透固結)する。セメント系注入では、地盤内でセメントグラウトが脈状に固化(脈状固結)する。ジェットグラウト(排出半置換)では、固化材と土粒子を高圧噴射により強制的に撹拌混合しソイルモルタル状の固結体を形成する。薬液注入工法などの注入工法の地盤強化原理は「固化」であり、静的圧入締固め工法の地盤強化原理の「密度増大」とは全く異なる。一般的に、地盤強化原理として「固化」を利用する液状化対策工法は「固化工法」又は「固結工法」と称され、地盤強化原理として「密度増大」を利用する「密度増大工法」又は「締固め工法」と呼ばれる工法とは技術的に区別されている(例えば非特許文献1)。なお、静的圧入締固め工法(例としてコンパクショングラウチング工法)を他の工法と対比して図1に示す。
また、締固め材に特殊石灰(硬焼生石灰)、水砕スラグ(又はセメント)、石膏及び砂を混合した乾燥状態の粒状材料又は粉体状材料を用いる「特殊石灰杭工法」がある(特許文献4)。当該工法は、スパイラル付きのケーシングを回転貫入しながら、その中に粒状又は粉体状(乾燥状態)の締固め材を投入し、ケーシングを引き抜きながら締固め材を地盤中にパイル状に残置させるものである。この乾燥状態の締固め材が地下水を吸水し、水和反応によって膨張する。この膨張圧によって周辺地盤を圧縮し、締固めを行う工法である。他方、静的圧入締固め工法では、地上で水を添加して材料と混練させることによって作製されるモルタル状(湿潤状態)の締固め材を地盤に圧入して固結塊を造成し、この固結塊による締固め効果で周辺地盤を圧縮し、地盤の密度を増大させて地盤を強化させる工法である。そのため、静的圧入締固め工法は締固め材をポンプ圧送による静的な力で地盤を締固めるのに対し、特殊石灰杭工法は締固め材が地下水を吸収して水和反応で膨張し、この膨張圧で地盤を締固めるという違いがある。つまり、特殊石灰杭工法は、静的圧入締固め工法と同じく密度を増大させて周辺地盤を締固める「静的締固め工法」のひとつで「密度増大工法」に分類されるが、使用する締固め材料の性状や締固め原理が全く異なる。
他にも、水分を多量に含有する汚泥に添加混合して固化させることにより汚泥を再利用可能なものとすることのできる土質改良剤として石膏を用いることが提案されている(特許文献5)。この技術は、汚泥と混合することで汚泥中の水分を石膏で速やかに吸水して固化するという、汚泥そのものの改質を行う技術であり、静的圧入締固め工法に代表される締固め工法のように地盤強化原理として「密度増大」を利用する技術とは根本的に異なる。
「液状化対策工法の分類と工法概要」公益社団法人 土木学会 建設技術研究委員会 建設技術体系化小委員会(2012年4月)
特開平6−108449号公報 特開2013−159916号公報 特開2005−105740号公報 特開平10−280382号公報 特開2001−335778号公報
静的圧入締固め工法で一般的に用いられる固化材であるセメント系や石灰系の材料は、強アルカリ性を呈する。そのため、このような固化材を成分として含む締固め材を中性域の地盤に圧入すると、施工周辺の地盤もアルカリ性を示すようになり、植生や微生物等の生態系に悪影響を及ぼすという問題がある。特に、港湾や海岸、又は河川や湖沼などの水域又はその周辺で施工する場合、周辺地盤や水域のpH9を超えるアルカリ化は、その水質汚染による水生生物等の生態系へ及ぼす悪影響が特に大きい。
特許文献3で固化材としての使用が提案されている酸化マグネシウムは、セメントに比べて飽和水溶液のpH値は低いものの高アルカリ性の材料である。また、締固め材が固結して形成される固結塊の強度は、酸化マグネシウムの量に比例する。従って、ある程度高強度が求められる地盤改良工事では、必要な強度の発現に充分な量の酸化マグネシウムを用いると、周辺地盤がアルカリ化してしまうという問題がある。しかも、酸化マグネシウムの価格は、セメントのような一般的な固化材と比べて10倍以上とかなり高い。また、最近では材料の安定供給が困難となっており、入手までに多くの時間を要するといった問題がある。
また、上述のセメント系や石灰系、酸化マグネシウム系の固化材は、固化や強度発現が緩やかで1週間から1ヶ月以上、強度が上昇しつづける。これらを用いた締固め材も、地盤に圧入後に1週間から1ヶ月以上にわたって強度が上昇しつづけて、最終的に所望の強度に達する。つまり最終強度発現が遅い。そのため、例えば以下のような問題がある。
・事前試験において、改良体の最終強度を見積もるのに長時間を要する。
・圧入完了から材齢期間(強度発現が完了するまでの養生期間)経過後に標準貫入試験を実施して地盤改良効果の確認を行う必要があるが、その確認に長期間を要する。そのため、上部工等の施工が開始できない。
・供用中の施設(滑走路等)など、施設を使用しない時間帯での施工(夜間施工等)で対応後早急に再供用が必要な場合の対策として適用できない。
・固結するまでの流動性状の時間が長く、水中下もしくは水際の施工において、締固め材や固化材が水中に流出したり、地下水に浸透したりすることがある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、中性の地盤に圧入しても周辺地盤を中性に維持できるとともに、地盤への圧入が可能で、且つ、圧入後に速やかに固結する地盤強化用締固め材及びそれを用いた地盤強化方法を提供することを目的とする。ここで、本発明で言う「地盤強化」とは、地盤強化原理として「密度増大」を利用するものを意味する。
また、本明細書で言う「中性」とは、特に記述が無い限り、pH5.8以上8.6以下の範囲内を意味する。これは、環境省で定められる一律排水基準(具体的には、「水質汚濁防止法第3条第1項」関連としての一般項目(有害物質以外の項目)である「排水基準を定める省令(昭和46年総理府令第35号別表第二)」に準ずる。)の水素イオン濃度許容限度範囲(海域以外の公共用水域に排出されるもの)に整合する。
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、少なくとも所定量の石膏と骨材を含むプレミックス組成物を水と混合させることによって地盤強化用締固め材を作製すると、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下であり、強度発現が前記石膏、骨材及び水の混合完了時から24時間以内に完了する地盤強化用締固め材が提供できること等を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) 少なくとも石膏と骨材を含み、前記骨材100質量部に対して前記石膏1〜30質量部を含んでなる、地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物である。
(2) 更に、前記骨材100質量部に対して固化遅延材0.1〜3.0質量部を含む、(1)の組成物である。
(3) 前記固化遅延材が中性である、(2)の組成物である。
(4) 少なくとも石膏、骨材及び水を含む地盤強化用締固め材であって、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下であり、強度発現が前記石膏、骨材及び水の混合完了時から24時間以内に完了する地盤強化用締固め材である。
(5) 更に固化遅延材を含み、強度発現開始が石膏、骨材、水及び固化遅延材の混合完了時から30分以降である、(4)の締固め材である。
(6) 強度発現完了後の一軸圧縮強度が40〜500kN/mである、(4)又は(5)の締固め材である。
(7) 骨材と、前記骨材100質量部に対して、石膏1〜30質量部と水10〜30質量部を少なくとも含む、締固め材である。
(8) 更に、前記骨材100質量部に対して固化遅延材0.1〜3.0質量部を含む、(7)の締固め材である。
(9) 前記固化遅延材が中性である、(5)又は(8)の締固め材である。
(10) 前記中性固化遅延材がクエン酸塩である、(9)の締固め材である。
(11) 前記締固め材が、更に鉄化合物を含む、(4)〜(10)のいずれかの締固め材である。
(12) 前記鉄化合物が石膏に含まれる、(11)の締固め材である。
(13) (1)〜(3)のいずれかの組成物と水とを混合して地盤強化用締固め材を製造する方法である。
(14) (4)〜(12)のいずれかの締固め材を地盤に形成した削孔に圧入して固結塊を造成し、周囲地盤を圧縮して地盤の密度を増大させ地盤を強化する地盤強化方法である。
本発明の地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物を利用して、水と混合させて当該締固め材を作製すれば、その締固め材は、強度発現後もpHが5.8以上8.6以下であるため、中性の地盤に圧入しても周辺地盤を中性に維持でき、植生や微生物や水生生物等の生態系に悪影響を与える周辺地盤のアルカリ化を回避できる。そのため、本発明の締固め材によれば、地盤強化における環境適合性を高めることができる。更に、本発明の締固め材を利用して静的圧入締固め工法のような締固め工法による地盤強化方法を実施すると、低強度で中性の使用済み締固め材(廃泥)が得られるため、従来法ではアルカリ性であったために産業廃棄物として処分されていた使用済み締固め材(廃泥)を残土として再利用することができる。このため、産業廃棄物処理費用を低減することができる。更に石膏系固化材の費用が酸化マグネシウム系に比べて安価で、安定供給が可能であることから材料費を低減することができ、経済的効果も得られる。
また、本発明の締固め材は、その強度発現が、石膏、骨材及び水の各材料の混合を完了した時から約24時間以内に完了するので、地盤への圧入が可能で、且つ、圧入後に速やかに固結してその機能を発揮することができる。
更に固化遅延材も混合することにより、強度発現の開始を必要に応じて遅らせる(例えば、石膏、骨材、水及び固化遅延材の混合完了時から30分以降にする)こともできる。
また、本発明の締固め材によれば、強度発現完了後の一軸圧縮強度を40〜500kN/mとすることができる。40kN/m以上の一軸圧縮強度を有するため、地震時に固化した締固め材自体の液状化は発生しない。このため、液状化対策工法として適用することができる。更に、500kN/m以下の一軸圧縮強度を有するため、低強度材としての使用に好適であるという効果も得られる。低強度材としての使用に好適なので、当該締固め材を用いた地盤改良後にその上部施設の建て替え工事等を行う際、杭等を打設するときの弊害とならずに施工することができ、撤去費用が不要となる。更に、500kN/m以上の高強度の材料を使用した場合、地震時に固化した締固め材部分に地震波が集中し、上部構造物に対する悪影響が発生することがあるが、本発明の低強度材料では地震波の集中を防ぐことができる。
本発明によれば、例えば以下のような付随的効果も得られる。
・事前試験において最終強度を短期間で見積もることができるため、短期間での設計が可能となる。
・最終強度発現までの時間を短くすることができるため、地盤改良効果確認試験実施までの時間短縮が図れ、速やかに上部工施工にとりかかることも可能となり、工事全体の工期短縮が可能となる。
・圧入後に速やかに固結させることができるので、水中下もしくは水際の施工における締固め材の水中への流出を低減できる。
コンパクショングラウチング工法を他の工法と対比して示す概念図 配合骨材の粒度分布図 静的圧入締固め工法の施工態様の概略図 実験で用いた配合骨材の粒度分布図
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、少なくとも石膏と骨材を含む、地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物であって、前記骨材100質量部に対して前記石膏1〜30質量部を含んでなる組成物である。
ここで「プレミックス組成物」(本明細書では、「プレミックス材」とも称する)とは、少なくとも石膏、骨材及び水を含む地盤強化用締固め材を作製するにあたり、地上で水を混合させて当該締固め材を作製する前の、その材料となる石膏と骨材とを含む組成物を意味する。骨材と石膏の配合量は、骨材100質量部に対して石膏を1〜30質量部とする。これは、その後、水を混合させて締固め材を作製した際に、骨材100質量部に対する石膏量が1質量部以上であると、地盤強化用締固め材として充分な強度を示すことになり、30質量部以下であると、強度が必要以上に高くなることが無く経済的であるからである。
この「プレミックス組成物」には、必要に応じて固化遅延材を含めてもよい。固化遅延材を含める場合、石膏、骨材、固化遅延材の各材料の配合順序に特に制限はないが、先に石膏と固化遅延材を混合してから骨材を混合させるのが、石膏と固化遅延材の均等な混合という観点から好ましい。この固化遅延材の配合量は、骨材100質量部に対して0.1〜3.0質量部とするのが好ましい。これは、骨材に対する固化遅延材が0.1質量部以上であると、骨材や石膏の各材料とともに混合し水を添加して締固め材を作製したときに、急激な固化を抑止でき、そのため、地盤への充分な圧入時間を確保することが可能であり、また、3.0質量部以下であると、経済的だからである。
また、本発明の別の実施形態は、少なくとも石膏、骨材及び水を含む地盤強化用締固め材であって、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下であり、強度発現が前記石膏、骨材及び水の混合完了時から24時間以内に完了する地盤強化用締固め材である。この際に使用する石膏と骨材は、個別に加えてもよいが、予め両者が配合されている前記プレミックス組成物として一緒に提供してもよい。水は、石膏と骨材を混合してから、配合するのが好ましい。水の配合方法については特に制限はなく、石膏と骨材を含む混合物に水を加えてもよいし、水に石膏と骨材を含む混合物を加えてもよい。
本発明で言う「地盤強化用締固め材」とは、固化材を含んでいることから自己硬化性を有し、地盤中にポンプにより強制的に圧入された際に塊を形成し、この固結塊による締固め効果で周辺地盤を圧縮強化して地盤の密度を増大させる機能を有する材料のことである。ポンプによる強制圧入により密度を増大させるため、地盤強化用締固め材自体が膨張する性能(自己膨張性)は必要としない。本発明による「地盤強化用締固め材」は、通常、静的圧入締固め工法で使用する地盤強化用締固め材のことを指すが、この静的圧入締固め工法で使用する地盤強化用締固め材は、スラリー状やモルタル状の性状を呈しており、ポンプによる圧送が可能なものである。
一方、特殊石灰杭工法で使用する締固め材は、硬焼生石灰が地下水を吸水し、水和反応によって膨張する自己膨張性の材料である。この膨張による締固め効果で周辺地盤を圧縮して密度を増大させる。静的圧入締め工法と特殊石灰杭工法は、いずれも密度増大工法に分類されるが、締固め材の性状及び締固め原理が異なる。
例えば、静的圧入締固め工法で使用する自己膨張性のない締固め材(本発明)を特殊石灰杭工法で使用しても、地盤を圧縮し密度を増大させることができないので、改良効果が期待できない。反対に、特殊石灰杭工法で使用する自己膨張性を有する材料を静的圧入締固め工法で使用すると、水を添加して材料を混合することになるため、地盤圧入前に硬焼生石灰が吸水し、水和反応によって膨張する。このため、注入管及び注入ホース内で締固め材が膨張して詰まり、圧送不能又は圧入不能となる。また、締固め材作製時に水を添加し、吸水・膨張が完了するまで混練した場合、締固め材が固化した状態となるため、ポンプによる圧送ができなくなる。更に水を混練しない乾燥状態の締固め材を適用した場合は、流動性が全くないため、ポンプによる圧送ができない。
以上の理由から静的圧入締固め工法の施工上、特殊石灰杭工法で使用する硬焼石灰等の自己膨張性のある材料は適用できない。
従って、本発明による「地盤強化用締固め材」は、特殊石灰杭工法で使用される地盤強化用締固め材のような、水を含まない粉体状又は粒状といった乾燥状態で地中に圧入し、地下水を吸水する形態の締固め材とは異なるものである。
本発明の締固め材は、その中の固化材成分として石膏を使用するものであり、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下になる。これにより、中性の地盤に圧入しても周辺地盤を中性に維持することができ、植生や微生物や水生生物等の生態系に悪影響を与える周辺地盤のアルカリ化を回避できる。そのため、本発明の締固め材は環境適合性が高い。
本明細書において、pH試験は地盤工学会基準JGS 0211−2009(土懸濁液のpH試験方法)に基づいて行い、非乾燥試料に、試料の乾燥質量に対する水の質量比が5となるように水を加え、撹拌懸濁後30分以上、3時間以内静置したものを試料液として、ガラス電極式pH計にて25℃で測定することで求める。
強度発現完了とは、締固め材の一軸圧縮試験で測定される強度において、ある時点の強度に対し、その時点から更に48時間後の強度の上昇が20%以内となっていることを意味する。一軸圧縮試験の方法及び強度の算出は、JIS A 1216:2009に基づいて行う。
本発明の締固め材は、強度発現が石膏、骨材及び水の全材料の混合が完了した時から24時間以内に完了する。通常、撹拌しながら前記材料の全ての混合を完了させるのが好ましい。すなわち、締固め材作製後24時間時点での一軸圧縮試験で測定される強度に対し、その測定から48時間後(=石膏、骨材及び水の全材料混合完了時から72時間後)の強度の上昇が20%以内である。後述の実施例からも明らかなように、本発明の締固め材は、公知の締固め材と比較して強度発現完了が早い。このため、本発明の締固め材は、地盤への圧入が可能で、且つ、圧入後に速やかに固結してその機能を発揮できる。そのため、前述のように、短期間での設計、工事全体の工期短縮が可能といった効果も得られる。
本発明の締固め材は、その中の固化材成分として石膏と、更にその固化を遅延させる成分として固化遅延材を使用することにより、強度発現開始を石膏、骨材、水及び固化遅延材の全材料の混合完了時から30分以降とすることができる。すなわち、締固め材作製後30分以上経過してから固結が開始し、それまでの間は充分な流動性を維持する締固め材とすることができる。そのため、プラントや圧送ホース、圧入管などの施工設備の中で締固め材が固結してしまうことを避けることができる。また、本発明の締固め材は施工条件に応じて固結時間の調整が可能であり、強度発現開始を上記混合完了時から1時間以降とすることもできる。ただし、強度発現開始を遅くすると強度発現完了時間も長くなるため、強度発現開始は上記混合完了時から5時間以内とすることが好ましい。
強度発現開始時間は、ビカー針装置凝結時間測定器を用い、JIS R 9112を参考に測定することができる。具体的には、作製した締固め材を金属円筒型に流し込んで供試体とし、測定器の標準針が供試体の底から1mmの高さに止まるようになるまでの時間を言う。時間ゼロ点は石膏、骨材、水及び固化遅延材の混合完了時とする。ビカー針装置凝結時間測定器の標準針は、長さ45mm/直径2mmの金属針でその頭を平らに切ったものを用い、これとともに降下するものの全質量は300gとする。
本発明の締固め材は、強度発現完了後の一軸圧縮強度を40〜500kN/mとすることができ、いわゆる低強度材としての使用に好適である。セメント系材料を固化材として用いた従来の締固め材では、一軸圧縮強度が500kN/mを容易に超えてしまい強度が高すぎるため、構造物直下での施工後の当該構造物の建て替え等の時に、杭打ち工法の選定等で工法が限定されたり、杭を打設する前に締固め材を除去する必要があるなどの問題があった。一方、本発明の締固め材はその一軸圧縮強度を500kN/m以下とすることができるため、本材を用いた地盤改良後にその上部施設の建て替え工事等を行う際の工法の制限をなくすことができる。また、本発明の締固め材は、その一軸圧縮強度を40kN/m以上とすることができるため、締固め材それ自体が液状化することもなく、低強度材として好適に用いることができる。セメント系や酸化マグネシウム系の固化材として用いた従来の締固め材では、締固め工法に必要な前記範囲の強度を発現させようとするとアルカリ性になってしまう。このように、本発明の締固め材は、中性域でありながら、締固め材として地盤に圧入して固結塊としたときに周辺地盤を圧縮するのに充分な強度を持たせることができ、pH中性域での配合設計の自由度が高い。本発明の締固め材の強度発現完了後の一軸圧縮強度は、40〜500kN/mの範囲にすることができ、40〜300kN/mの範囲であると好ましく、100〜300kN/mの範囲であることがより望ましい。
本発明の締固め材は、固化材、骨材及び水を少なくとも含み、当該固化材は石膏を含む。また、本発明の締固め材は、必要に応じて固化遅延材を含む。
骨材は、固結塊となったときにその骨格をなす材料であり、固結時の過熱や収縮を抑制する機能も有する。骨材には特に制限は無く、公知の骨材を用いることができる。本発明の効果が得られる範囲で目的に応じて任意の種類、量を選択することができる。具体的には、砂利、砂、砕石、砕砂、シルト、粘土、スラグ骨材、人工軽量骨材、再生骨材等及びこれらの組み合わせが挙げられる。特に珪砂や市販のトチクレー(登録商標)を用いると固結時の過熱や収縮が更に抑制されるという理由で好ましい。
骨材の粒度は、特定の粒径に分布が集中していないことが好ましい。これにより、後述の静的圧入締固め工法の施工の際に締固め材を地盤に圧入したときに、浸透や脈状に注入されることが避けられ、圧入点付近で地盤を押し広げて固結し易くなるとともに、圧送ホースや注入管等の配管での脱水や閉塞が起こりづらくなる。特に、粒径加積曲線が図2の上限及び下限のラインの間にあるとより好ましく、上限及び下限のラインに概ね平行であることが更に好ましい。粒径加積曲線は、JIS A 1204(土の粒度試験方法)により求めることができる。
固化材とは締固め材に固結性能を付与する成分である。本発明では、固化材とは石膏からなるもの、或いは石膏を含むものを言うが、石膏を含むものである場合、石膏を主成分とする固化材を用いることが好ましい。「石膏を主成分とする」とは、固化材のうち、80質量%以上が石膏であることを意味する。90質量%以上が石膏であると好ましい。
本発明の組成物又は締固め材に含まれる固化材の成分のうち、石膏以外のものとしては、本発明の目的を達成できる範囲で、セメント、石灰、酸化マグネシウム及び有機系吸収剤等を任意成分として単独で或いは組み合わせて用いることも可能である。
石膏は、それ自体中性である。従って、中性の地盤に圧入しても周辺地盤を中性に維持できるため、植生や微生物や水生生物等の生態系に周辺地盤のアルカリ化による悪影響を与えることがなく、環境適合性が高い。また、配合量によらず中性を維持することができるので、配合量を調整することにより固結塊の強度を任意に調整することができ、pH中性域での配合設計の自由度が高く幅広い施工対象に用いることができる。
石膏とは、具体的には、硫酸カルシウム(CaSO)を主成分とする化合物を言うが、中でも水と化学反応する焼石膏を用いるのが好ましい。焼石膏は、半水石膏(化学式CaSO・0.5HO)及び/又はIII型無水石膏(CaSO)で表される化合物を指す。また、二水石膏(CaSO・2HO)やII型無水石膏(CaSO)を用いてもよい。これらの石膏には炭酸カルシウム(CaCO)などが一部含まれていてもよい。焼石膏として商業的に知られているものとしては、例えば、石原産業株式会社製のジプサンダー(登録商標)が挙げられる。
石膏の形状や比表面積には特に制限は無く、任意の物を用いることができる。特に、薄片状の粒子形状で且つBET比表面積が2〜70m/gの焼石膏であると、水との接触面積を大きくすることができるので好ましい。
本発明の締固め材に石膏を主成分とする固化材を用いる場合は、固化遅延材を併用することが好ましい。ここで、固化遅延材は石膏の固化を遅らせることができる材料であり、固化遅延材の配合量を調整することで、締固め材の固結時間を制御することができることはすでに説明したとおりである。これにより、圧入作業中には固結せずに流動性を持ち、且つ、圧入後に速やかに固結してその機能を発揮できる。そのため、前述のように、施工設備内での締固め材の固結を防止可能で、且つ、短期間での設計、工事全体の工期短縮が可能といった効果も得られる。
固化遅延材には特に制限は無く、公知の固化遅延材を任意に用いることができる。具体的には、金属塩、カルボン酸及びカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1つの成分が挙げられる。金属塩としては、例えば、硫酸カリウム及び硫酸アルミニウムが挙げられる。カルボン酸及びカルボン酸塩としては、例えば、クエン酸、グルコン酸ソーダ、L−酒石酸から選ばれるカルボン酸或いはこれらのカルボン酸塩が挙げられる。
本発明では、特に中性の固化遅延材が好ましい。固化材としての石膏と中性固化遅延材とを併用することにより、締固め材を中性に維持し易くなる。また、配合量に関係なく中性を維持できることから、締固め材の固結時間の制御範囲を更に広げることが可能になる。中性固化遅延材としては例えば、カルボン酸塩が挙げられる。中でもクエン酸塩が好ましく、クエン酸三ナトリウムがより好ましい。上述のとおり、中性とはpHが5.8以上8.6以下であることを言う。pHは、測定試料に対して、その試料に対する水の質量比を10となるよう水を添加して撹拌し、撹拌後5分静置したものを試料液として、ガラス電極式pH計にて測定を行って求める。
本発明の締固め材では、その固化材成分の石膏と、骨材と、水とを、骨材100質量部に対して、石膏を1〜30質量部と水を10〜30質量部で含むものが好ましく、更に固化遅延材を含む場合は、当該骨材100質量部に対して、固化遅延材を0.1〜3.0質量部で含むものが好ましい。そのため、本発明の締固め材を作製するにあたり、石膏と骨材を含むプレミックス組成物を用いる場合には、水を配合する際に、骨材100質量部に対して石膏が1〜30質量部となる配合比を有する上記プレミックス組成物を用いるのが好ましい。固化遅延材も含むプレミックス組成物を用いる場合には、更に骨材100質量部に対して固化遅延材を0.1〜3.0質量部で含むプレミックス組成物を用いるのが好ましい。
骨材100質量部に対する石膏の好ましい量は、前述のとおり1〜30質量部である。骨材100質量部に対する石膏量が1質量部以上であると、地盤強化用締固め材として充分な強度を示し、30質量部以下であれば、強度が必要以上に高くなることが無く、経済的である。骨材100質量部に対する石膏量は、3〜30質量部とするとより好ましく、10〜30質量部とすると更に好ましい。
また、骨材100質量部に対する固化遅延材の好ましい量は、前述のとおり0.1〜3.0質量部である。骨材に対する固化遅延材が0.1質量部以上であると、各材料を混合して締固め材としたときに急激な固化を抑止でき、地盤への充分な圧入時間を確保することができる。多くても問題はないが、3.0質量部以下であれば経済的である。更に、石膏100質量部に対して固化遅延材は、0.7〜12質量部であるのが好ましいが、中でも1〜12質量部であると、締固め材の地盤への圧入時間と強度発現速度のバランスの観点からより好ましい。
また、石膏は、一般的に、水が多いと柔らかくなり、固まる速度も遅い。他方、水が少ないと硬くなり、固まる速度も速い。このため、水の配合量は、強度や固化速度に影響を与える。このような観点から、本発明の締固め材における水の含有量は、骨材100質量部に対して10〜30質量部であることが好ましい。
本発明の締固め材は、上記したような成分を混合して調製することができる。混合する順序について、石膏、骨材、必要に応じて固化遅延材の配合順序には特に制限は無いが、固化遅延材を配合する場合、石膏と固化遅延材を先に混合するのが好ましい。このようにすると、石膏と固化遅延材がより均等に混合され、固化遅延のムラがなくなるからである。水は、石膏、骨材、必要に応じて固化遅延材の混合品に、圧入作業の直前に混合するのが好ましい。
本発明の締固め材を用いた地盤強化方法として静的圧入締固め工法を実施するにあたり、石膏、骨材、必要に応じて固化遅延材とを配合したプレミックス材の状態で供給することが可能であり、直前に水と混合して締固め材を調製し、地盤への圧入に供することができる。この方法はセメント系や酸化マグネシウム系などの従来の締固め材と同様であり、簡単に置き換えが可能であり、従来と同様の機械設備を使用することができる。また、従来と同様の手順で施工ができることから、水域に近い箇所のみの適用など、施工エリアごとの使い分けができる。
本発明の締固め材は、鉄化合物を含有してもよい。鉄化合物は硫化水素を吸着して固定化することができるため、有害な硫化水素が発生する地盤に適用したときに、その地盤を無害化することができる。含有される鉄化合物としては、含水酸化鉄、酸化鉄、水酸化鉄など種々の化合物が挙げられる。鉄化合物を含有する場合、その含有量をFeとして計算したときに焼石膏の質量を基準として0.2〜50質量%とすれば、硫化水素の固定化機能を充分有効に発揮できる。固化速度の点から鉄化合物の含有量は、より好ましくは0.6〜30質量%、更に好ましくは0.6〜10質量%である。鉄化合物を含有させことによる副次的な効果として、その土壌での生物の生育に良好な結果をもたらすことができる。
鉄化合物は、石膏に含まれているのが好ましい。これにより、締固め材の各材料の混合において、鉄成分の締固め材への均一な混合が容易となる。
次に、本発明の他の実施形態としては、前述の締固め材を地盤に形成した削孔に圧入して固結塊を造成し、周囲地盤を圧縮して地盤の密度を増大させる地盤強化方法がある。本発明の地盤強化方法について、以下に説明する。
本発明の実施形態である地盤強化方法の施工態様の一例の概略を、図3に示す。本方法では、図示しないボーリングマシンを用いて、ロッド状の注入管11を複数本継ぎ足しながら所定深度まで削孔し、孔内に当該注入管を臨ませる。所定深度まで削孔したら、貫入状態の注入管11に注入管リフト装置13をセットするとともに、当該注入管を流量圧力監視装置15、圧送ホース19を介して特殊注入ポンプ21に接続する。特殊注入プラント23で調製された本発明の第1の発明の締固め材は、特殊注入ポンプ21で強制圧送され、圧送ホース19、流量圧力監視装置15、注入管11を介して地盤中に圧入される。締固め材の圧入工程では、締固め材の圧送と注入管11のステップアップとを繰り返す。通常、注入管は、1mにつき3ステップずつ、ステップアップさせる。
地盤中に圧入された締固め材は、その低い流動性のため土中で迷走や浸透することなく所定の位置で固結する。従って、上述した特殊注入ポンプによる締固め材の圧送と、注入管のステップアップとを繰り返すことにより、図示するような締固め材から成る球根状の固結体1が連続的に造成される。そして、この固結体1の体積増加により周辺地盤を圧縮し、地盤の密度を増大させることで液状化地盤を非液状化地盤へと改良することができる。
施工の際に使用されずに余った締固め材は、次回以降の施工の際に骨材として締固め材に配合することで再利用が可能である。具体的には、余った締固め材と骨材、石膏、水、必要に応じて固化遅延材とを混合し、締固め材として使用することができる。
静的圧入締固め工法を実施すると、ロス(具体的には、圧送ホースなどに利用出来ずにロスとして残ってしまう締固め材)や設備洗浄による使用済み締固め材(本明細書では、これらを「廃泥」と称する)が発生する。従来の締固め材を用いた場合、このような廃泥はアルカリ性を示すため、産業廃棄物として処分され、別途費用が発生していた。本発明の締固め材を使用したときに発生する廃泥は中性であり、且つ、低強度であるため、残土として再利用することができ、廃棄物削減、コスト低減の面からも有益である。
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施し得る。
実験1
骨材、固化材、固化遅延材をビニール袋に入れ、混合した。この混合物を3L容器に移し、更に所定量の水を加え、ヘラにて泥濘状になるまで混練し、締固め材(実施例1〜8、比較例1〜6)を作製した。骨材には市販の珪砂とトチクレー(登録商標)を配合して用いた。この骨材の粒度分布を、JIS A 1204に従って測定したところ図4の通りであり、図2の粒径加積曲線の上限及び下限のラインの間であった。固化材には表1に記載の固化材のいずれかを用いた。各試料の材料の配合は表2の通りとした。実施例1〜8の固化遅延材には市販のクエン酸三ナトリウム(pH=8.3)を用いた。石膏には、ジプサンダー(登録商標)(石原産業製,比表面積30m/gの薄片状半水石膏、硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)含有量94質量%、酸化鉄含有量1.8質量%)を用いた。なお、締固め材の作製は、概ね容積が2Lとなるようにして行った。また、表2中において、実施例1〜8の固化材の配合比に関しては、そこに含まれる硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)成分換算の値も括弧書で併記した。作製した締固め材はφ50mm×100mmのモールドに詰め、水分が蒸発しないようラップでシールし、後述の評価を行うまで養生した。
(評価1) 一軸圧縮強度
作製から24時間後、72時間後、120時間後、168時間後の締固め材の一軸圧縮強度を測定し、24時間後から72時間後までと、120時間後と72時間後までと、168時間後と120時間後までの強度の上昇率を算出し、強度発現完了時間を決定した。具体的には、算出した各経過時間における強度の上昇率が20%以内となった場合に強度発現が完了したと評価し、20%を超える場合には未完了であると評価した。一軸圧縮試験の方法及び強度の算出は、JIS A 1216:2009に基づいて行った。試験機には篠原製作所製一軸圧縮試験機を用いた。試験片の寸法はφ50mm×100mmとした。結果を表3に示す。
石膏を固化材として用いた実施例1〜8の締固め材は、締固め材作製後24時間時点での一軸圧縮試験で測定される強度に対し、材料混合後72時間(=前測定から48時間後)の強度の上昇率が20%以内であり、24時間の時点で強度発現が完了している。一方、比較例1〜6の締固め材は、24時間の時点でいずれも強度発現が完了していない。このことから、本発明の締固め材は強度発現完了時間が短いことがわかる。なお、石膏の配合量が2質量部と少ない実施例1でも、締固め材作製から24時間後には、低強度材としての使用が可能な50kN/mで強度発現完了が認められ、実施例2〜8に至っては、同期間において、低強度材として好ましい100〜500kN/mの範囲内で強度発現完了が認められた。更に、後述するとおり、実施例15〜17における締固め材作製後24時間時点での一軸圧縮試験で測定される強度の結果(表8)も踏まえると、本実施例によれば、締固め材作製から24時間後には、40kN/m〜500kN/mの範囲内で強度発現完了が認められることがわかった。
(評価2)pH
作製から24時間後、72時間後、120時間後、168時間後の締固め材のpHを地盤工学会基準JGS 0211−2009に従い測定した。試料液は、非乾燥試料に、試料の乾燥質量に対する水の質量比が5となるように水を加え、撹拌して懸濁させた後、30分以上、3時間以内静置して調製した。測定にはガラス電極式pH計を用いた。結果を表4に示す。
石膏を固化材として用いた実施例1〜8の締固め材はいずれも、強度発現完了後のpHが7.7程度と中性を示し、その後も同程度の中性域のpHを維持していることがわかった。酸化マグネシウムを固化材として用いた比較例1〜3の締固め材は、pH=10程度のアルカリ性を示すことがわかった。また、セメントを固化材として用いた比較例4〜6の締固め材は、いずれも強度発現完了には至っていないうえ、いずれの測定時でもpH=11以上のアルカリ性を示すことがわかった。このことから、本発明の締固め材は配合量によらず中性を維持できることがわかった。
実験2
骨材、固化材、固化遅延材をビニール袋に入れ、混合した。500mLのPP(ポリプロピレン)容器に所定量の水を入れ、そこに前記混合物を1分間かけて投入した。φ15mmの撹拌棒で、110rpmで1分間撹拌し、締固め材を作製した。各試料の材料の配合は表5の通りとした。各材料は実験1と同じものを用いた。なお、表5中において、表2中の実施例3、6、7、8の固化材の配合比に加え、実施例9〜14の固化材の配合比に関しても、そこに含まれる硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)成分換算の値を括弧書で併記した。また、固化遅延材の配合比と固化材の配合比との比についても、固化材の配合比を硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)成分換算の値で評価したものを括弧書で併記した。
(評価3)強度発現開始時間測定
表5中の各実施例に示す配合比(質量部)で、上述のとおりに、各材料を撹拌しながら全て混合することにより締固め材の作製を完了させた後、すみやかに前記締固め材を金属円筒型(上底φ75mm、下底φ85mm、高さ40mm)に流し込み、上部をヘラですり切り、測定試料とした。各試料に対し、特定時間でビカー針を挿入し、強度発現開始時間を測定した。ビカー針装置凝結時間測定器には凝結試験器(丸菱科学機械製作所製)を用い、標準針は、長さ45mm/直径2mmの金属針でその頭を平らに切ったもの、これとともに降下するものの全質量は300gとした。強度発現開始時間のゼロ点は、撹拌しながら前記材料の全ての混合を完了した時点とし、測定器の標準針が供試体の底面から1mmの高さで止まるようになるまでの時間を強度発現開始時間とした。結果を表6に示す。(表中、「−」は、外観がスラリー状を呈し、固結開始の兆候が観察されなかったため測定しなかったこと、又は固結完了したため測定しなかったことを示す。)
固化材に対する固化遅延材の配合量の割合を調整することにより、強度発現開始時間を制御できることがわかった。概ね、固化遅延材を固化材に対して1質量%以上配合することで強度発現開始時間を30分以上とすることができ、3質量%以上配合することで強度発現開始時間を1時間以上とすることができた。また、実施例1,2,4,5についても同様の方法で強度発現開始時間を測定した結果、実施例3と類似の挙動を示し2〜3時間で強度発現が開始することを確認した。なお、実施例9〜14の締固め材はいずれも、pHが7.5〜8.0の中性を示し、強度発現が、石膏、骨材、水及び固化遅延材の混合完了時から24時間以内に完了しており、一軸圧縮強度が200〜350kN/mであった。
実験3
骨材、固化材、固化遅延材をビニール袋に入れ、混合した。この混合物に更に所定量の水を加え、ミキサー5分間混練し、締固め材(実施例15〜17)を作製した。骨材には市販の珪砂とトチクレー(登録商標)を配合して用いた。この骨材の粒度分布を、JIS A 1204に従って測定したところ図4の通りであり、図2の粒径加積曲線の上限及び下限のラインの間であった。固化材には表1に記載の固化材のいずれかを用いた。各試料の材料の配合は表7の通りとした。実施例15〜17の固化遅延材には市販のクエン酸三ナトリウム(pH=8.3)を用いた。石膏には、ジプサンダー(登録商標)(石原産業製,比表面積30m/gの薄片状半水石膏、(硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)量)含有量94質量%、酸化鉄含有量1.8質量%)を用いた。なお、締固め材の作製は、概ね容積が3Lとなるようにして行った。また、表7中において、実施例15〜17の固化材の配合比に関しては、そこに含まれる硫酸カルシウム1/2水和物(CaSO・1/2HO)成分換算の値も括弧書で併記した。作製した締固め材はφ50mm×100mmのモールドに詰め、水分が蒸発しないようラップでシールし、後述の評価を行うまで養生した。
(評価4) 一軸圧縮強度に対する液状化強度比
作製から24時間後に、締固め材の一軸圧縮強度を算出した。一軸圧縮試験の方法及び強度の算出は、JIS A 1216:2009に基づいて行った。試験片の寸法はφ50mm×100mmとした。
更に、固化した締固め材の液状化強度を確認するため、作製から24時間後に、締固め材の液状化強度比を算出した。液状化強度比は、地盤工学会基準 JGS−0541の繰返し非排水三軸試験に基づいて行った。試験片の寸法はφ50mm×100mmとした。これらの結果を表8に示す。一般的にN値が25以上あれば大規模地震でも液状化しないと言われている。ここで、飽和土壌の液状化条件として知られている液状化強度比と補正N値との関係を示す図(日本建築学会(編集)による「建築基礎構造設計指針」、丸善株式会社(発売元)、昭和63年1月25日(第1版発行)の図4.5.1)によれば、その図の5%せん断ひずみ振幅曲線において補正N値が25のときの液状化強度比は0.44程度となっている。このことから、表8の何れの結果も締固め工法により当該液状化対策を行った地盤と同程度以上の液状化強度を有していることが認められた。
以上の結果から、一軸圧縮強度が約40kN/m以上あれば、地震が発生した場合でも固化した締固め材料自体が液状化しないことが認められた。
本発明によれば、固化材として石膏を用いた地盤強化用締固め材であって、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下であり、強度発現が24時間以内に完了する締固め材を提供することができることから、静的圧入締固め工法等を用いて、地盤への圧入が可能で、且つ、圧入後に速やかに固結することができる。このようなことから、軟弱な砂質土地盤の液状化現象等の防止対策としての産業上の利用可能性がある。

Claims (14)

  1. 少なくとも石膏と骨材を含み、前記骨材100質量部に対して前記石膏1〜30質量部を含んでなる、地盤強化用締固め材に用いるプレミックス組成物。
  2. 更に、前記骨材100質量部に対して固化遅延材0.1〜3.0質量部を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記固化遅延材が中性である、請求項2に記載の組成物。
  4. 少なくとも石膏、骨材及び水を含む地盤強化用締固め材であって、強度発現完了後のpHが5.8以上8.6以下であり、強度発現が前記石膏、骨材及び水の混合完了時から24時間以内に完了する地盤強化用締固め材。
  5. 更に固化遅延材を含み、強度発現開始が石膏、骨材、水及び固化遅延材の混合完了時から30分以降である請求項4に記載の締固め材。
  6. 強度発現完了後の一軸圧縮強度が40〜500kN/mである請求項4又は5に記載の締固め材。
  7. 骨材と、前記骨材100質量部に対して、石膏1〜30質量部と水10〜30質量部を少なくとも含む、地盤強化用締固め材。
  8. 更に、前記骨材100質量部に対して固化遅延材0.1〜3.0質量部を含む、請求項7に記載の地盤強化用締固め材。
  9. 前記固化遅延材が中性である、請求項5又は8に記載の締固め材。
  10. 前記中性固化遅延材がクエン酸塩である、請求項9に記載の締固め材。
  11. 前記締固め材が、更に鉄化合物を含む、請求項4〜10のいずれかに記載の締固め材。
  12. 前記鉄化合物が石膏に含まれる、請求項11に記載の締固め材。
  13. 請求項1〜3のいずれかの組成物と水とを混合して地盤強化用締固め材を製造する方法。
  14. 請求項4〜12のいずれかの締固め材を地盤に形成した削孔に圧入して固結塊を造成し、周囲地盤を圧縮して地盤の密度を増大させ地盤を強化する地盤強化方法。

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