JP2018188419A - 抗腫瘍活性、抗菌活性、および/または抗ウイルス活性を有し、副作用が低減された鉄キレート剤を含む医薬組成物 - Google Patents

抗腫瘍活性、抗菌活性、および/または抗ウイルス活性を有し、副作用が低減された鉄キレート剤を含む医薬組成物 Download PDF

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雄三 西田
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一弘 大森
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靖子 友野
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Abstract

【課題】本発明は、抗腫瘍活性、抗菌活性、および/または抗ウイルス活性を有し、副作用が低減された鉄キレート剤を含む医薬組成物を提供する。【解決手段】本発明は、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄と選択的に結合する鉄キレート剤を含む、がんまたは感染症を処置することに用いるための医薬組成物。【選択図】なし

Description

関連出願の参照
本願は、特願2017−094954号(出願日:2017年5月11日)の優先権を享受するものであり、その内容は全体が引用することにより本願明細書に組込まれる。
本発明は、抗腫瘍活性、抗菌活性、および/または抗ウイルス活性を有し、副作用が低減された鉄キレート剤を含む医薬組成物に関する。
がんとの戦いは、抗がん剤との戦いであるとも言われるほど化学療法においては副作用が大きいことが問題となっている。がんの治療において、鉄キレート剤が開発されている。血中鉄濃度を低下させることががん患者の予後の改善に繋がる可能性があると考えられているためである(非特許文献1〜3)。
鉄をキレートすることで抗菌作用が奏されることが知られ、鉄キレート剤を抗菌剤として用いる研究も進められている。
生体不安定鉄を選択的に除去するキレート剤が提案されている(特許文献1および2)。生体不安定鉄は、生体には不要とされるものであり、生体不安定鉄の除去によってがんや感染症を治療できるとは考えられていない。
WO2012/096183 WO2016/052488
Lee S. et al., J Cancer., 2016; 12, 7(8):957-964 Tingting H. et al., Saudi Med J., 2017; 38(3):268-275 Ji M. et al., Tumour Biol., 2014; 35(10): 10195-1019949 (4):1351-1359
本発明は、抗腫瘍活性、抗菌活性、および/または抗ウイルス活性を有し、副作用が低減された鉄キレート剤を含む医薬組成物を提供する。
本発明者らは、既存の鉄キレート剤は投与による副作用が多く、担がん患者での安全性も確立されていないことに着目し、既存の鉄キレート剤よりも安全性が高い新規キレート剤を開発した。具体的には、本発明者らは、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄と選択的に結合する鉄キレート剤が、抗腫瘍活性および抗菌活性を有することを明らかにし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明では以下が提供される。
(1)鉄キレート剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、
前記鉄キレート剤は、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジンから選択される基材と、−NH−CH2−結合を介して前記基材に結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、
水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
[式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、医薬組成物。
(2)高分子骨格が、キトサン骨格である、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)芳香族環が以下の構造を有する、上記(1)または(2)に記載の医薬組成物:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
(4)基材がグルコサミンである、上記(1)に記載の医薬組成物。
(5)芳香族環が以下の構造を有する、上記(4)に記載の医薬組成物:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
(6)RがHまたはOHであり、RおよびRがOHであり、RおよびRがHである、上記(5)に記載の組成物。
(7)前記鉄キレート剤が、以下の構造を有する上記(1)に記載の医薬組成物:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
(8)前記キレート剤が塩酸塩の形態である、上記(7)に記載の医薬組成物。
(9)R1〜R5のうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHおよびCOOHから選択される基を有する、上記(7)または(8)に記載の医薬組成物。
(10)R〜RがそれぞれOHであり、RおよびRがHであるか;または
がHであり、RおよびRのいずれか一方がOHであり他方がCOOHであり、RおよびRがHである、
上記(9)に記載の医薬組成物。
(11)鉄キレート剤を含む、抗菌剤であって、
前記鉄キレート剤は、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジンから選択される基材と、−NH−CH−結合を介して前記基材に結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、
水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
[式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、抗菌剤。
(12)上記(11)に記載の抗菌剤であって、基材がグルコサミンである、抗菌剤。
(13)上記(11)に記載の抗菌剤であって、
前記鉄キレート剤は、グルコサミンと、−NH−CH−結合を介してグルコサミンに結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
[式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、抗菌剤。
(14)芳香族環が以下の構造を有する、上記(12)または(13)に記載の抗菌剤:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
(15)RがHまたはOHであり、RおよびRがOHであり、RおよびRがHである、上記(14)に記載の抗菌剤。
(16)上記(11)〜(15)のいずれかに記載の抗菌剤であって、
前記抗菌剤は、S. mutansA. actinomycetemcomitansおよびP. gingivalisからなる群から選択される口腔細菌に対して用いるための抗菌剤である、抗菌剤。
(17)上記(15)に記載の抗菌剤であって、
前記抗菌剤は、S. mutansA. actinomycetemcomitansおよびP. gingivalisからなる群から選択される口腔細菌に対して用いるための抗菌剤である、抗菌剤。
(18)上記(11)に記載の抗菌剤であって、
前記抗菌剤は、S. mutansおよびP. gingivalisからなる群から選択される口腔細菌に対して用いるための抗菌剤であり、
前記鉄キレート剤は、基材としてキトサンを有する、抗菌剤。
(19)上記(11)〜(15)のいずれかに記載の抗菌剤であって、
前記抗菌剤は、黄色ブドウ球菌またはカンジダに対して用いるための抗菌剤であり、
前記鉄キレート剤は、高分子骨格としてキトサン骨格を有するものである、抗菌剤。
(20)上記(15)に記載の抗菌剤であって、
抗菌剤は、黄色ブドウ球菌に対して用いるための抗菌剤。
(21)上記(15)に記載の抗菌剤であって、
前記抗菌剤は、緑膿菌に対して用いるための抗菌剤。
(22)トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物。
(22A)上記(1)で定義された鉄キレート剤を含む、上記(22)に記載の医薬組成物。
(23)トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、抗菌剤。
(23A)上記(1)で定義された鉄キレート剤を含む、上記(23)に記載の抗菌剤。
(24)鉄キレート剤を含む、ウイルス感染症を処置することに用いるための医薬組成物であって、
前記鉄キレート剤は、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジンから選択される基材と、芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
[式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、医薬組成物。
(25)芳香族環が以下の構造を有する、上記(24)に記載の医薬組成物:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
(26)RがHまたはOHであり、RおよびRがOHであり、RおよびRがHである、上記(25)に記載の医薬組成物 。
(27)RおよびRがHであり、R〜RがそれぞれOH である、上記(25)に記載の医薬組成物。
(28)トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、ウイルス感染症を処置することに用いるための医薬組成物 。
図1Aは、本発明のキレート剤による抗腫瘍効果を示す図である。細胞としてはA549を用い、細胞生存率は、トリパンブルーにより確認した。 図1Bは、本発明のキレート剤による抗腫瘍効果を示す図である。細胞としてはA549を用い、細胞生存率は、XTT法により確認した。 図2は、本発明のキレート剤による抗腫瘍効果を示す図である。細胞としてはPLCを用い、細胞生存率は、トリパンブルーにより確認した。 図3は、本発明のキレート剤による抗腫瘍効果を示す図である。細胞としてはHCT116を用い、細胞生存率は、XTT法により確認した。 図4Aは、本発明のキレート剤がインビボで抗腫瘍効果を奏することを示す。 図4Bは、本発明のキレート剤投与後の体重変化の推移を示す。 図5Aは、本発明のキレート剤(試験区6)投与後の体重変化の推移を示す。 図5Bは、本発明のキレート剤(試験区9)投与後の体重変化の推移を示す。 図5Cは、本発明のキレート剤(試験区10)投与後の体重変化の推移を示す。 図6Aは、本発明のキレート剤がS.mutansに対して抗菌作用(細胞数低減作用)を奏することを示す。 図6Bは、本発明のキレート剤がS.mutansに対して抗菌作用(ATP活性阻害作用)を奏することを示す。 図7Aは、本発明のキレート剤がA.actinomycetemcomitansに対して抗菌作用(細胞数低減作用)を奏することを示す。 図7Bは、本発明のキレート剤がA.actinomycetemcomitansに対して抗菌作用(ATP活性阻害作用)を奏することを示す。 図8は、本発明のキレート剤がP. gingivalisに対して抗菌作用を奏することを示す。 図9は、本発明のキレート剤による抗腫瘍効果を示す。細胞としてはMCF−7を用い、細胞生存率は、XTT法により確認した。 図10は、本発明のキレート剤による抗腫瘍効果を示す。細胞としてはHSC−2を用い、細胞生存率は、XTT法により確認した。 図11Aは、本発明のキレート剤による腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果を示す。細胞としては、HSC−2を用い、細胞はTUNEL法により染色された。 図11Bは、本発明のキレート剤による腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果を示す。細胞としては、HCT116を用い、細胞はTUNEL法により染色された。 図11Cは、本発明のキレート剤による腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果を示す。細胞としては、A549を用い、細胞はTUNEL法により染色された。 図12は、本発明のキレート剤による腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果を示す。ウェスタンブロットは、細胞としてHSC−2、MCF−7およびA549を用い、細胞溶解物を図に表示された因子に対する抗体を用いて行われた。 図13Aは、本発明のキレート剤がインビボで抗腫瘍効果を奏すること、および抗腫瘍効果を奏する用量において体重減少作用が確認されないことを示す。 図13Bは、本発明のキレート剤がインビボで腫瘍細胞に対してアポトーシス誘導作用を有することを示す。 図14は、本発明のキレート剤がインビボで腫瘍細胞に対してアポトーシス誘導作用を有することを示す。 図15Aは、本発明のキレート剤がウイルス感染を阻害できることを示す。 図15Bは、トランスフェリン結合鉄と生体不安定鉄の両方をキレートするデスフェラールがウイルス感染を阻害できないことを示す。
発明の具体的な説明
本明細書では、「対象」とは、哺乳動物を意味し、特にヒトを含む霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ、またはヒツジであり得る。
本明細書では、「処置」とは、治療(治療的処置)と予防(予防的処置)とを含む意味で用いられる。本明細書では、「治療」とは、疾患若しくは障害の治療、治癒、防止若しくは、寛解の改善、または、疾患若しくは障害の進行速度の低減を意味する。本明細書では、「予防」とは、疾患もしくは病態の発症の可能性を低下させる、または疾患もしくは病態の発症を遅らせることを意味する。
本明細書では、「抗菌作用」とは、菌の増殖を抑制する作用、菌の増殖速度を低下させる作用、菌の増殖を停止させる作用、菌数を低減する作用、および菌を死滅させる作用を含む意味で用いられる。本明細書では、「抗菌剤」とは、抗菌用途に用いられる組成物を意味する。本明細書では、抗菌剤は対象に投与される場合には医薬組成物であり得る。
本明細書では、「抗ウイルス作用」とは、ウイルスの増殖を抑制する作用、ウイルスの増殖速度を低下させる作用、ウイルスの増殖を停止させる作用、ウイルス数を低減する作用、およびウイルスによる細胞への傷害作用を抑制する作用を含む意味で用いられる。
本明細書では、「治療上有効量」とは、疾患や状態を処置(予防または治療)するために有効な薬剤の量を意味する。治療上有効量の薬剤は、疾患または状態の症状の悪化速度を低下させること、前記症状の悪化を止めること、前記症状を改善すること、前記症状を治癒すること、または前記症状の発症または発展を抑制することが可能である。
本明細書では、「鉄キレート剤」とは、トランスフェリン結合鉄および生体不安定鉄の両方から鉄をキレートし得るキレート剤を含む意味で用いられる。本明細書では、「高分子鉄キレート剤」とは、鉄キレート部位が高分子骨格(例えばポリマー)に連結してなるキレート剤を意味する。本明細書では、「鉄キレート剤」には、鉄キレート剤の遊離体および薬学上許容可能なその塩が包含される。本明細書では、「鉄キレート剤」には、塩酸塩の形態であるものが含まれる。
本明細書では、「トランスフェリン結合鉄」とは、トランスフェリンに結合した鉄イオンを意味する。トランスフェリンは、鉄イオンを結合して各組織への鉄の輸送を担っている。細胞表面にはトランスフェリン受容体が存在し、鉄を結合したトランスフェリンが受容体に結合するとエンドサイトーシスによって細胞に取り込まれ、細胞内で鉄が放出されることで細胞に鉄が供給される。増殖の早い細胞では鉄の需要が大きく、栄養供給におけるトランスフェリンの重要性が高い。従って、近年では、がんの治療に、生体内の鉄をキレートする強力な鉄キレート剤を用いる治療法が試みられているが、これらのキレート剤は、トランスフェリン結合鉄および生体不安定鉄の両方を分け隔て無くキレートするものである。
本明細書では、「高分子」とは、IUPACの定義に従い「分子量が大きい分子で、分子量が小さい分子から実質的または概念的に得られる単位の多数回の繰り返しで構成した構造」を有する分子を意味する。高分子の平均分子量は、特に断りの無い限り、数平均分子量を意味する。本明細書では、高分子以外の分子を低分子と呼ぶ。
本明細書では、「生体不安定鉄」とは、トランスフェリンに結合していない鉄イオンを意味する。したがって、生体不安定鉄には、例えば、トランスフェリンと結合している鉄(トランスフェリン鉄錯体中の鉄イオン;トランスフェリン結合型鉄)、フェリチンとして肝臓・脾臓・骨髄に存在する貯蔵鉄、赤血球に含まれるヘム(鉄を持つポルフィリン錯化合物)4分子とグロビン(4本のポリペプチド鎖)1分子からなるヘモグロビン、筋肉中にあって酸素分子を代謝に必要な時まで貯蔵する色素タンパク質で1個のヘムを含むミオグロビンなどは含まれない。このような生体不安定鉄である鉄イオンは、通常、生体中では、遊離の状態ではなく、陰イオンと対になった形態や、アミノ酸・ペプチドとキレートを形成していると考えられる。陰イオンとしては、例えば、ヒドロキシイオン(OH-)やクエン酸などが結合した化合物などが考えられ、Fe3+・3(OH)、a hydroxy−citrate−(Cit)complex(FeCitOH)、などの形態が考えられる。生体不安定鉄は、細胞の生存には不要な鉄であると考えられているが、近年では、体に害をなすことが明らかとなっている。
本明細書では、「トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する」(以下、「生体不安定鉄選択的」ということがある)とは、キレート剤に対して用いられるときには、キレート剤がトランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して高い選択性を有する、または特異性を有することを意味する。「トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する」とは例えば、投与後にトランスフェリン結合鉄の80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上を維持しながらも、生体不安定鉄を30%以上、35%以上、40%以上、45%以上または50%以上吸着除去することができることを意味し得る。
本明細書では、「トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤」(以下「本発明の鉄キレート剤」ということがある)は、基材とキレート部とを有し、基材とキレート部とは生体内で非開裂性である結合(例えば、−NH−CH−結合)を介して連結されている。本発明の鉄キレート剤としては、特に限定されないが例えば、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジン並びにこれらのポリマー(例えば、ホモポリマー)からなる群から選択される基材と、−NH−CH−結合を介して該基材に結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(Ia):
[式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有している。第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置しており、この構造により生体不安定鉄選択的に鉄イオンをキレートすることができる。
1つの好ましい態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート部位は、オルト位に位置した2つの水酸基を有する芳香族環であり、鉄イオンとともに5角形の安定した配位構造を形成するように配位結合が形成される。例えば、ある態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート剤部位は、配位状態において下記式(Ib)の構造を有する。
1つの好ましい態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート部位は、2つの水酸基がオルト位にある限り、水酸基は3つ以上有する芳香族環でもよく、鉄イオンとともに5角形の安定した配位構造を形成するように配位結合が形成される。例えば、ある態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート剤部位は、配位状態において下記式(Ic)の構造を有する。
下記式(IV)にこのような鉄キレート部位を有する生体不安定鉄選択的高分子鉄キレート剤の配位状態の一例の構造を示す。化学式中、波線は高分子骨格を表す。高分子骨格の種類には直鎖型、分岐や側鎖を有するもの、あるいは三次元網目構造等様々な構造があるが、nは任意の整数であり、例えば100〜2,000,000、1,000〜1,000,000、または、2,000〜1,000,000であり得る。なお式中では、便宜的に高分子が完全な繰り返し構造を有するように図示されているが、高分子骨格にランダムに複数の鉄キレート部位が導入されたものを含む意味で図示されている(以下同様)。式(IV)に記載の鉄キレート剤は、好ましくは塩酸塩であり得る。
また別の好ましい態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート部位は、オルト位に位置した1つの水酸基と1つのカルボン酸基を有する芳香族環であり、鉄イオンとともに6角形の安定した配位構造を形成するように配位結合が形成される。例えば、ある態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート剤部位は、配位状態において下記式(Id)の構造を有する。
さらに別の好ましい態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート部位は、オルト位に位置した1つの水酸基と式(Ia)に示される官能基を有する芳香族環であり、生体不安定鉄を1つの5角形と1つの6角形から形成される安定した配位構造でキレートすることが可能となる。その配位構造の一例を下記の式(II)に示す。
さらに別の好ましい態様では、生体不安定鉄選択的鉄キレート部位は、1つの水酸基と、その両側のオルト位に位置した式(I)に示される2つの官能基を有する芳香族環であり、鉄キレート部位1つあたりにキレート出来る生体不安定鉄の量を増やすことが可能となる。このような生体不安定鉄選択的鉄キレート部位の配位状態の一例を下記の式(III)に示す。
高分子骨格とは、生体不安定鉄選択的鉄キレート部位として作用する芳香族環と共有結合を形成して担体として機能しうる高分子の分子を表す。本発明で好適に使用される高分子骨格には、例えば、(1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の公知の非水溶性高分子、(2)架橋して不溶化することの可能な、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等のアミノ基を有する水溶性高分子、ならびに(3)1級アミノ基を有する水不溶性天然高分子が挙げられる。
本発明の高分子キレート剤は、高分子骨格と、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I)に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置している芳香族環とが、直接−NH−CH−結合を介して結合している。上述の高分子骨格と芳香族環とが、直接−NH−CH−結合を介して結合していることにより、−NH−CO−結合や、−CO−O−結合と比較して、−NH−CH−結合そのものの耐加水分解性が優れるだけでなく、−NH−CH−結合は、−CH−あるいは−CH−CH−結合等と異なり、得られる高分子キレートとの親和性の高い親水性の溶媒中で均一に生成させることが可能なため、好ましい。ある態様では、本発明の高分子キレート剤は、高分子骨格がキトサンである。ある態様では、本発明の高分子キレート剤は、塩酸塩の形態である。ある態様では、本発明の高分子キレート剤は、高分子骨格がキトサンであり、塩酸塩の形態である。
本発明の高分子鉄キレート剤を製造するためには、まず、高分子骨格にアミノ基を導入するか、またはアミノ基を有する高分子骨格を用意する。本発明の高分子鉄キレート剤の基材としては、1級アミノ基を有する天然高分子、例えばキトサンが使用可能である。キトサンは、−NH−CH−結合を介して導入する鉄キレート部位が導入可能な1級アミノ基の数(高分子の単位重量あたりの1級アミノ基含有数)が多く、特に好ましく用いられ得る。
本発明の高分子鉄キレート剤は、ある態様では、水溶性であり、水溶性高分子骨格を出発材料として用いることができる。
次に、アミノ基を有するかまたはアミノ基を導入した上記の高分子骨格と、鉄キレート部位である芳香族環のアルデヒド誘導体とを反応させ、これを還元して、高分子骨格と芳香族環との間に−NH−CH−結合を形成させる。芳香族環のアルデヒド誘導体は、芳香族環上の、高分子と結合させるべき位置にアルデヒド基を有する化合物である。ある態様では、本発明の高分子キレート剤は、塩酸塩の形態である。ある態様では、本発明の高分子キレート剤は、基材がグルコサミン若しくはヒスチジンまたはこれらのオリゴマーであり、塩酸塩の形態である。
本発明の高分子鉄キレート剤は、例えば、次のようにして製造することができる。
1)5%酢酸とメタノールの混合溶媒中で、キトサンと2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒドを反応させることにより、キトサンのアミノ基と2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒドのアルデヒド基を反応させて、次に得られたゲル状の溶液に水素化ホウ素ナトリウムを結晶性沈殿が生成するまで徐々に加えることにより、得られた化合物を還元する。この反応により、キトサンと鉄キレート能を有する、2つの水酸基がオルト位に位置する芳香族環が、キトサン側から見て−NH−CH−結合を介して結合した高分子鉄キレート剤を得ることが出来る。
2)1)において、2,3,−ジヒドロキシベンズアルデヒドに代えて、N,N'−(2−ヒドロキシ−5−ホルミル−1,3−ジキシレン)ビス(N−(メチル)−グリシン)(Bruce P. Murch, et.al., J. Am. Chem. Soc., 1985, 107 (23), pp 6728-6729に記載の方法により、ホルムアルデヒド水溶液中でパラヒドロキシベンズアルデヒドとN−メチルグリシンを反応させることにより合成できる)を用いることにより、2個の鉄イオンを2つの5員環と、2つの6員環で捕捉することが可能な高分子鉄キレート剤を得ることが出来る(式(III)を参照)。
本発明の鉄キレート剤は、高分子である必要は無い。高分子以外の基材、例えば低分子基材(例えば、低分子の生体分子)に鉄キレート部位が導入されたキレート剤とすることができる。低分子の基材としては、例えば、グルコサミンおよびヒスチジンなどのアミノ基を有する生体分子、並びに2〜数個(例えば、2個)のこれらの分子が重合したオリゴマーが挙げられる。
本発明の鉄キレート剤は、例えば、基材にアミノ基を導入し、あるいは基材のアミノ基に対して鉄キレート部位である芳香族環のアルデヒド誘導体とを反応させ、これを還元して、高分子骨格と芳香族環との間に-NH-CH2-結合を形成させることで得ることができる。芳香族環のアルデヒド誘導体は、芳香族環上の、高分子と結合させるべき位置にアルデヒド基を有する化合物である。
本発明の鉄キレート剤は、生体不安定鉄選択的であり、生体不安定鉄の除去に特に好適に用いることができる。
本発明の鉄キレート剤が鉄イオンに配位した錯体(鉄錯体又は鉄キレート体)は、鉄イオンや鉄キレート剤の吸光波長とは異なる特徴的な吸収波長(吸光波長)を有している。
具体的には、本発明の鉄キレート剤の鉄イオンのキレート効果は、例えば、鉄イオンを含む溶液に、本発明の鉄キレート剤を添加し、反応(キレート反応)終了後、鉄キレート剤が呈する色調をキレート反応の前後で比較することで鉄イオンのキレート効果を確認することができる。
鉄イオンのキレートに際して用いられる鉄イオンを含む溶液やけん濁溶液の溶媒としては、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline: D-PBS(-))、純水(例えば、ミリポア(Millipore)社製の超純水製造装置「ミリQ(Milli-Q)」により作製された純水など;いわゆる「ミリQ水」)などを用いることができる。溶媒は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
鉄イオンの捕捉方法としては、本発明の鉄キレート剤を用いて鉄イオンを捕捉することができる。本発明の高分子鉄キレート剤は、生体不安定鉄(特に3価の鉄イオン)に対するキレート能が非常に高く、生体不安定鉄を選択的に捕捉し、系内の生体不安定鉄の量を効果的に低減させることができる。
本発明によれば、本発明の鉄キレート剤は、抗腫瘍効果を奏する。生体不安定鉄は、生体に不要と考えられている。しかし、実施例の結果は、生体不安定鉄の除去が抗腫瘍効果に繋がることを明らかにした。生体不安定鉄は、生体に対して悪影響を及ぼすため、生体不安定鉄の選択的除去は、生体不安定鉄による悪影響を低減できるだけでなく、がん患者においては抗腫瘍効果を導き、また、感染症患者においては感染症の治療効果を導く。
従って、本発明によれば、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物が提供される。
トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤としては、例えば、上記で説明した本発明の鉄キレート剤を用いることができる。
ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、芳香族環として以下式(Ie)の構造を有する鉄キレート剤とすることができる。
{式中、R〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}
ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、キトサン骨格を基材とする。ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、グルコサミンを基材とする。グルコサミンは水溶液中で閉環構造と開環構造との平衡状態であり得る。ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、ヒスチジンを基材とする。ある態様では、上記グルコサミンやヒスチジンは、単量体単位としてポリマーに組込まれていてもよい。
ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、以下の構造を有する鉄キレート剤とすることができる。
上記式(X)では、キトサン骨格に−NH−CH−結合を介して式(Ie)に示されるキレート部位が直接結合しているようすが示されている。上記式(X)では、キレート部位が連結した単量体単位と連結していない単量体単位とが記載上の便宜上規則正しく記載されているが、ランダムであってもよい。上記式(X)において、キトサンの単量体単位へのキレート部位の連結量は、化学量論的に調整することが可能であり、例えば、単量体単位の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、若しくは95%以上、または実質的に100%がキレート部位により修飾を受けていてよい。なお、式(X)の化合物は、好ましい態様では、塩酸塩の形態であり得る。上記式(X)において、キトサンの平均分子量は、例えば、2万〜8万、3万〜7万、または4万〜6万であり得る。
ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、下記化学式(If)に示されるcate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する。ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、キトサン骨格を基材とし、下記化学式に示されるcate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する。ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、ヒスチジンを基材とし、下記化学式に示されるcate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する。ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、グルコサミンを基材とし、下記化学式に示されるcate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する。これらの態様では、基材とキレート部位とは、−NH−CH−で連結されていてよい。
ここで上記式(If)のcate−2は、上記式(Ie)のRがOHであり、RまたはRがOHである場合であり、(If)のcate−3は、上記式(Ie)のR〜RがOHであるか、R〜RがOHである場合であり、(If)のcarb−2は、RがOHであり、RまたはRがCOOHである場合である。
ある態様では、本発明の鉄キレート剤は、式(X)においてキレート部位がcate−2であり得る。ある態様では、本発明の鉄キレート剤は、式(X)においてキレート部位がcate−3であり得る。本発明の鉄キレート剤は、式(X)においてキレート部位がcarb−2であり得る。
ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、下記式:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}であり得る。更なる態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、R〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHおよびCOOHから選択される基を有する。上記鉄キレート剤は、好ましくは酸付加塩(好ましくは塩酸塩)である。ある態様では、鉄キレート剤として、下記式:
{式中、
〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}を用いることができる。
ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、グルコサミンのN原子に−CH−を介して結合した芳香族環を有し、芳香族環は、下記式を有する:
{式中、R〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。また、ある態様では、上記医薬組成物に含まれる本発明の鉄キレート剤は、下記式:
{式中、R〜Rは上記で定義された通りである}であり得る。なお、式(VI)は、芳香族環(Ie)のRおよびRがHであり、基材がグルコサミンを含む態様である。ある態様では、RはH、RはOH、RはOHである。ある態様では、R〜RはOHである。上記鉄キレート剤は、好ましくは酸付加塩(好ましくは塩酸塩)である。ある態様では、鉄キレート剤として、下記式:
{式中、式中、R〜Rは上記で定義された通りである}を用いることができる。ある態様では、RはH、RはOH、RはOHである。ある態様では、R〜RはOHである。
上記医薬組成物は、特に限定されないが、がんの種類を問わず有効であり、例えば、肺がん、大腸がん、乳がん、卵巣がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮がん、口腔がん、上皮がん(例えば、扁平上皮がん)、および白血病などのがんに対して有効であり得る。
本発明によれば、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤は、抗菌作用を有する。従って、本発明によれば、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、抗菌剤(または細菌感染症を処置することに用いるための医薬組成物)が提供される。
本発明の抗菌剤においては、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤としては、本発明の鉄キレート剤を用いることができる。好ましい鉄キレート剤は、上記がんを処置することに用いるための医薬組成物において説明したのと同じ鉄キレート剤を用いることができる。
本発明の抗菌剤は、特に限定されないが例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、緑膿菌(P. aeruginosa)、カンジダ(C. albicans)、およびミュータンス連鎖球菌(S. mutans)、並びに、歯周病原細菌、例えば、ポリフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)およびアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(A. actinomycetemcomitans)に有効であり得る。この中で、S. mutansP. gingivalis、およびA. actinomycetemcomitansを総称して口腔細菌と呼ぶことがある。また、P. gingivalis、およびA. actinomycetemcomitansを総称して歯周病原細菌と呼ぶことがある。
特にキトサンを基材とする本発明の鉄キレート剤は、これらの細菌に対して強い抗菌作用を示す。特にキトサンを基材とする本発明の鉄キレート剤は、黄色ブドウ球菌やカンジダに対して強い抗菌作用を示す。
本発明によれば、黄色ブドウ球菌および/またはカンジダに感染した対象において黄色ブドウ球菌および/またはカンジダを処置することに用いるための医薬組成物(または、黄色ブドウ球菌および/またはカンジダに対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がキトサンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(好ましくはcate−2を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。ここで、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、黄色ブドウ球菌に感染した対象において黄色ブドウ球菌を処置することに用いるための医薬組成物(または、黄色ブドウ球菌に対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がキトサンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(好ましくはcate−2またはcarb−2を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、黄色ブドウ球菌に感染した対象において黄色ブドウ球菌を処置することに用いるための医薬組成物(または、黄色ブドウ球菌に対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がグルコサミンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(好ましくはcate−2またはcate−3を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、緑膿菌(P. aeruginosa)に感染した対象において緑膿菌感染を処置することに用いるための医薬組成物(または、緑膿菌に対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がグルコサミンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(好ましくはcate−3を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、カンジダに感染した対象においてカンジダを処置することに用いるための医薬組成物(または、カンジダに対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がキトサンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(好ましくはcate−2を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、カンジダに感染した対象においてカンジダを処置することに用いるための医薬組成物(または、カンジダに対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がグルコサミンであり、芳香族環が、cate−2を有する、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、黄色ブドウ球菌および/またはカンジダに感染した対象において黄色ブドウ球菌および/またはカンジダを処置することに用いるための医薬組成物(または、黄色ブドウ球菌および/またはカンジダに対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がヒスチジンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(好ましくはcate−2を有する)鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、歯周病原細菌(例えば、S. mutansまたはP. gingivalis)に感染した対象において歯周病原細菌を処置することに用いるための医薬組成物(または、歯周病原細菌に対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がキトサンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(例えば、cate−2を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、口腔細菌(例えば、S. mutansP. gingivalis、またはA. actinomycetemcomitans)、例えば、歯周病原細菌(例えば、P. gingivalisまたはA. actinomycetemcomitans)に感染した対象において口腔細菌を処置することに用いるための医薬組成物(または、口腔細菌に対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がグルコサミンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(例えば、cate−2またはcate−3を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、口腔細菌(例えば、S. mutansP. gingivalis、またはA. actinomycetemcomitans)、例えば、歯周病原細菌(例えば、S. mutansまたはP. gingivalis)に感染した対象において歯周病原細菌を処置することに用いるための医薬組成物(または、歯周病原細菌に対して用いるための抗菌剤)であって、
基材がヒスチジンであり、芳香族環が、cate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する(例えば、cate−3を有する)、鉄キレート剤を含む、医薬組成物(または抗菌剤)が提供される。好ましい態様では、基材とキレート部位とは−NH−CH−で連結されていてよい。
本発明によれば、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤は、 ウイルス感染を抑制し、ウイルスによる細胞の殺傷作用を抑制することができる。従って、本発明によれば、ウイルス感染症を処置すること、例えば、ウイルス感染症を予防または治療することに用いることができる。従って、本発明によれば、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、ウイルス感染症を予防または治療することに用いるための医薬組成物が提供される。本発明によれば、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤としては、好ましくは本発明のキレート剤を用いることができる。ある態様では、本発明のキレート剤としては、基剤と式(Ie)に示される芳香族環構造を有するキレート部位とを有する鉄キレート剤であり得る。ある態様では、基剤は、キトサン、グルコサミンおよびヒスチジンからなる群から選択される1以上であり得る。ある態様では、キレート部位は、式(If)で示されるcate−2、cate−3およびcarb−2から選択されるいずれかのキレート部位を有する。ある態様では、キレート部位は、cate−3を有する。ある態様では、基剤とキレート部位とは、−NH−CH−を介してまたは−NH−CH−で直接連結されていてもよい。
本発明のある態様では、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤は、基剤がグルコサミンおよびヒスチジンからなる群から選択される基剤であり、キレート部位がcate−3とすることができる。この態様では、基剤とキレート部位とは、非開裂性の結合で連結されていてもよい。ある態様では、基剤とキレート部位とは、−NH−CH−を介してまたは−NH−CH−で直接連結されていてもよい。
トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤が有効なウイルスは、例えば、インフルエンザウイルスであり得る。
本発明の医薬組成物または抗菌剤は、賦形剤を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物または抗菌剤は、非経口投与、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、および皮下投与に適した製剤であり得る。がんを処置するための医薬組成物は、腫瘍内投与に適した製剤とすることもできる。虫歯菌や歯周病原細菌に対して用いるための抗菌剤は、口腔内投与に適した製剤とすることもできる。
本発明の別の側面によれば、がんをその必要のある対象において処置する方法において用いるための本発明の鉄キレート剤が提供される。本発明の別の側面によれば、感染症をその必要のある対象において処置する方法において用いるための本発明の鉄キレート剤が提供される。
本発明の別の側面によれば、がんを処置することに用いるための医薬組成物の製造における、本発明の鉄キレート剤の使用が提供される。本発明の別の側面によれば、細菌感染症を処置することに用いるための医薬組成物の製造における、本発明の鉄キレート剤の使用が提供される。
本明細書において用いる場合、「・・・を含む(comprising)」との表現により表される態様は、「本質的に・・・からなる(essentially consisting of)」との表現により表される態様、ならびに「・・・からなる(consisting of)」との表現により表される態様を包含する。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書に参照として取り込まれる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1:トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択的なキレート剤の調製
本実施例では、WO2012/096183に開示された知見を基にして、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択的なキレート剤を調製した。なお、調製したキレート剤はすべて塩酸塩の形態であった。
具体的には、表1の基材に対して、表2のキレート剤部位を導入して、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択的なキレート剤をWO2012/096183およびWO2016/052488の記載の方法でそれぞれの基材のアミノ基にアルデヒド基を連結することで調製した。
基材から延びる各キレート部位の構造は以下の通りである。
具体的には、100mLの5%酢酸溶液(水/メタノール=1/1)に、600mgの3,4−ジハイドロキシベンズアルデヒドを溶かし、これに1.0gのダイキトサン(大日精化工業社製)を加えた。キトサンがすべて溶けた状態で、2.2gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えた。炭酸水素ナトリウムがすべて反応した後から、少しずつNaBHを加えた(〜2g程度)。その結果、少し黄色結晶をふくむ大量の白色沈殿が生じた。撹拌をしばらく続けた後、結晶をろ過した。メタノールで洗浄した後、結晶を100mLのメタノールに懸濁し、少しずつNaBHを加えた(〜0.5g程度)。完全に白色の結晶となってから、ろ過し、結晶をメタノールで十分に洗浄し、デシケーター中で乾燥させた。
得られた化合物(乾燥試料)を100mLエタノールに懸濁し、これに10mLの濃塩酸を加え、1時間撹拌した。結晶を吸引濾過し、エタノールで十分に洗って、真空中で乾燥させ、目的とする試験区1のキレート剤を得た。試験区2〜4のキレート剤も同様に調製した。
グルコサミン塩酸塩(和光純薬、2.15g、0.01モル)を等量のNaOHを含む水溶液(10mL)に溶かした。1.38g(0.01モル)の3,4−ジハイドロキシベンズアルデヒドを含む40mLのメタノール溶液を加え、さらにこれに少量のNaBH4(〜300mg)を加え、還元した。1時間放置後、溶液を希塩酸でpH〜4にして濃縮し、メタノールを加え数時間放置後、ろ過し、ろ液を濃縮してエタノールを加えた。白色沈殿として得られた結晶を真空で乾燥させ、試験区5のキレート剤とした。試験区6および7のキレート剤も同様に調製した。
400mgのNaOHを10mLの水に溶解させた。1.55gのL−ヒスチジン(東京化成)を添加し、50mLのメタノールを加えた。これとは別に1.54g(0.01モル)の2,3,4−トリハイドロキシベンズアルデヒドを含む30mLのメタノール溶液を調製し、上記ヒスチジンの溶液と混合した。得られた混合物に固体NaBHを少しずつ添加した。溶液が無色になったら、1モルの塩酸溶液を少しずつ添加してpH〜4に調整した。攪拌し、生じた白沈を濾別し、溶液を濃縮した(〜20mL)。溶液をろ過し、ろ液にエタノール(〜50mL)を添加し、生じた白沈をろ過して真空中で乾燥し、試験区10のキレート剤を得た。試験区8および9のキレート剤も同様に調製した。
実施例2:抗腫瘍効果の検討
実施例1で調製したキレート剤それぞれについて抗腫瘍効果を確認した。
ヒト肺がん細胞株A549、ヒト肝臓がん細胞株PLC、ヒト結腸腺がん細胞株HCT116のそれぞれに対して試験区1〜10のキレート剤の抗腫瘍効果を確認した。A549細胞またはPLC細胞を3000細胞/well、HCT116細胞を6000細胞/wellで播種して24時間後にウシ胎児血清(FBS)濃度を10%から1%に変更し、試験区1〜10の化合物それぞれを培地に導入した。48時間後にトリパンブルー法で、または、48時間後に培地を交換し、さらに24時間後にXTT法により細胞生存率を確認した。陽性対象としては、デフェロキサミンメシル酸塩(デスフェラール(商標))を用いた。結果は、図1A、1B、2および3に示される通りであった。
図1Aおよび1Bに示されるように、試験されたいずれの試験区のキレート剤もA549細胞株に対して濃度依存的に抗腫瘍効果を発揮することが分かった。また、図2に示されるように、いずれの試験区もPLC細胞株に対して濃度依存的に抗腫瘍効果を発揮することが分かった。さらに、図3に示されるように、いずれの試験区もHCT116細胞株に対して濃度依存的に抗腫瘍効果を発揮することが分かった。
さらに、上記の抗腫瘍効果の実験と同様に、ヒト乳がん細胞株MCF−7、およびヒト口腔内扁平上皮癌HSC−2のそれぞれに対して試験区6または10のキレート剤の抗腫瘍効果を確認した。その結果、試験区6および試験区10のキレート剤はそれぞれ、MCF−7(図9参照)に対しても、HSC−2(図10参照)に対しても濃度依存的に抗腫瘍効果を発揮することが分かった。
さらにまた、試験区6および10のキレート剤の腫瘍に対するアポトーシス誘導作用を確認した。まず、HSC−2細胞に対して培養液中に100μg/mLの試験区6のキレート剤または50μg/mLの試験区10のキレート剤を添加し、48時間反応させてからTUNEL Assayを行った。具体的には、MK500 in situ Apoptosis Detection Kit (タカラバイオ)を用いてTUNEL染色法でアポトーシス誘導を評価した。図11Aに示されるように、試験区6のキレート剤および試験区10のキレート剤の存在下では、アポトーシスを示す緑色に染色された細胞が確認され、これらのキレート剤ががん細胞に対してアポトーシス誘導作用を有することが明らかになった。
同様に、HCT116細胞に対する試験区6または10のキレート剤のアポトーシス誘導作用を確認した。試験区6のキレート剤は10μg/mLとし、試験区10のキレート剤は6.5μg/mLとして、細胞に対して添加し、48時間反応させてから上記と同様にTUNEL染色を行った。図11Bに示されるように、試験区6のキレート剤および試験区10のキレート剤の存在下では、アポトーシスを示す緑色に染色された細胞が確認され、これらのキレート剤ががん細胞に対してアポトーシス誘導作用を有することが明らかになった。
さらに、A549細胞に対する試験区6または10のキレート剤のアポトーシス誘導作用を確認した。試験区6のキレート剤は100μg/mLとし、試験区10のキレート剤は50μg/mLとして、細胞に対して添加し、48時間反応させてから上記と同様にTUNEL染色を行った。図11Cに示されるように、試験区6のキレート剤および試験区10のキレート剤の存在下では、アポトーシスを示す緑色に染色された細胞(FITC陽性細胞)が確認され、これらのキレート剤ががん細胞に対してアポトーシス誘導作用を有することが明らかになった。
試験区6および10のキレート剤で処理した各細胞の細胞溶解物をウェスタンブロットし、表示された抗体を用いて処理細胞におけるアポトーシス関連因子の増減を確認した。その結果、図12に示されるように、HSC−2細胞、MCF−7細胞、およびA549細胞のいずれにおいても、試験区6または10のいずれかで処理した場合には、PARP切断断片およびカスパーゼ3(Caspase 3)切断断片が確認され、濃度依存的にアポトーシスが誘導されていることが生化学的にも確認できた。
動物モデルを用いて抗腫瘍効果を確認した。具体的には、ヌードマウス(BALB/c nu/nu,6週齢:日本クレア)を準備し、ヒト肺癌細胞株(A549)を3×10/匹となるようにし調整し、これにマトリゲル(BD Biosciences)を1:1で混和して得られた混合物をマウスに投与して皮下腫瘍を作成した。皮下腫瘍作成1週間後からネガティブコントロール群(生理食塩水:4匹)、試験区9投与群(試験区9:3匹)、陽性対象群(デフェラシロクス: 3匹)に分けて経口で投与を行った。投与量はデフェラシロクスをヒトでの添付文書の相当量である20mg/kg/day(5回/週 投与)として、試験区9も同量で投与を行った。結果は、図4Aおよび4Bに示される通りであった。
図4Aに示される通り、試験区9投与群では、陽性対象群にほぼ同等の抗腫瘍効果を奏した。その一方で、試験区9投与群では、実験中に死亡したマウスはなく、また、図4Bに示されるように、体重にも大きな変化は認められなかった。
次に、HCT116細胞の 皮下移植モデルマウスに対する試験区6および10のキレート剤の抗腫瘍効果を確認した。マウスとしてはヌードマウス(BALB/c nu/nu,6週齢:日本クレア)を準備し、HCT116細胞を3×10/匹となるようにし調整し、これにマトリゲル(BD Biosciences)を1:1で混和して得られた混合物をマウスに投与して皮下腫瘍を作製した。投与量は200mg/kg/day(5回/週 投与)とした。その結果、図13Aに示されるように試験区10のキレート剤は、皮下移植されたHCT116細胞に対して抗腫瘍効果を発揮したが、試験区10のキレート剤投与群の体重の変化は観察されなかった。試験区10のキレート剤の投与群に対して皮下移植されたHCT116細胞の組織切片を作製し、ヘマトキシエオジン(HE)染色、および上述の通りの方法でTUNEL染色を行った。すると、図13Bに示されるように、試験区10のキレート剤投与群の組織の一部においてアポトーシスが誘導されていることを示すFITC由来の緑色の染色像が確認された。同様に、図14に示されるように試験区6のキレート剤は、皮下移植されたHCT116細胞に対して抗腫瘍効果を発揮し、特に試験区6のキレート剤による12日目における抗腫瘍効果は対照に対して有意であった。なお、試験区6のキレート剤投与群において投与による体重の変化は観察されなかった。
これらの結果から、本発明のキレート剤は、乳がん細胞などの乳がんや口腔内扁平上皮癌などの上皮癌に対して抗腫瘍効果を発揮することが示された。一方で、抗腫瘍効果を発揮する用量では、体重減少などの抗腫瘍剤投与の副作用は観察されなかった。
本実施例によれば、本発明のキレート剤は、既存の鉄キレート剤と同等の抗腫瘍性を発揮する一方で、副作用はほとんど観察されず、理想的な抗がん剤となり得る可能性が高いことが明らかになった。
実施例3:急性毒性試験
本実施例では、本願発明のキレート剤を経口または静脈投与し、その毒性を調べた。
(1)経口投与による毒性試験
7週齢のJCL:SDラットに対して、試験区6投与群(n=3)、試験区9投与群(n=3)、および試験区10投与群(n=3)それぞれに、200mg/kg体重または1000mg/kg体重の用量で各試験区のキレート剤を経口投与した。陰性対象群(生理食塩水投与;n=6)には、同量の生理食塩水を投与した。投与14日後に、生死の判別、体重の測定、身体的項目(呼吸、体温、行動等)を観察した。また、各群から採血し、右腎臓と肝臓を摘出した。結果は、図5A〜5Cおよび表4〜9に示される通りであった。
図5A〜5Cに示されるようにいずれの試験区のキレート剤を投与されたラットもその成長に大きな影響は認められなかった。また、腎臓と肝臓から薄層切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色により観察したところ、いずれの試験区のキレート剤投与群でも、組織学的な異常も観察されなかった。
上記表4〜9に示されるように、いずれの試験区のキレート剤を投与されたラットも、ネガティブコントロールとほとんど変わらない結果を示した。このことは、いずれの試験区のキレート剤も急性毒性を検出可能なレベルでは示さないことを意味する。
(2)静脈投与による毒性試験
6週齢のJcl:ICRマウスに対して、試験区6投与群(n=3)、試験区9投与群(n=3)、および試験区10投与群(n=3)それぞれに、300mg/kg体重の用量で各試験区のキレート剤を尾静脈投与した。陽性対象群(投与;n=4)には、デフェロキサミンメシル酸塩を300mg/kg体重の用量で尾静脈投与した。投与7日後に、生死の判別、身体的項目(呼吸、体温、行動等)を観察した。
その結果、デフェロキサミンメシル酸塩を投与した対象群では、投与直後に全てが死亡したが、いずれの試験区のキレート剤の投与群も7日間の生存が確認され、外見上は静脈注射部位以外には著変は認められなかった。
このように、本願発明のキレート剤は、生体に必要なトランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に選択的なキレート剤であり、生体毒性をほとんど示さないものであった。
実施例4:抗菌効果の評価
本実施例では、各種菌に対する抗菌作用を確認した。
(1)黄色ブドウ球菌、緑膿菌およびカンジダ
常法により各試験区のキレート剤の希釈系列を作成し、菌を接種して24時間後に菌の発育を確認することで、各試験区のキレート剤の最小育成阻止濃度を決定した。
菌としては、S. aureus(ATCC6538;黄色ブドウ球菌)、P. aeruginosa(ATCC9027;緑膿菌)およびC. albicans(ATCC10231;カンジダ)を用いた。
薬剤としては、陽性対照としてオキサシリン、バンコマイシンおよびデフェラシロクスを用いた。
結果は、表10に記載される通りであった。
表10に示されるように、黄色ブドウ球菌に対して、試験区1、2、4〜6および8は、抗菌作用を有することが明らかとなった。中でも、試験区1、2、4および6は、黄色ブドウ球菌に対して強い抗菌作用を示した。
また、緑膿菌に対して試験区6は、抗菌作用を示した。
さらにカンジダに対して、特に試験区2および5は、抗菌作用を示し、中でも試験区2はカンジダに対してとりわけ強い抗菌作用を示した。
さらに、口腔領域の菌に対する抗菌作用を確認した。
(2)Streptococcus mutans
まず、虫歯の原因菌である、S. mutans(ATCC25175)に対する抗菌性を検討した。TSB培地に酵母抽出物と各試験区のキレート剤を添加した液体培地を用いて37℃で18時間好気培養を行い、濁度を光学密度(OD570または595nm)から求めた。細胞活性の測定はATPアッセイキット(キッコーマン)を用いた。結果は、図6Aおよび6Bに示される通りであった。
図6AおよびBに示される通り、試験区1、5および6のキレート剤が上記虫歯の原因菌であるS. mutansに対して強い抗菌作用を示し、特に試験区6は非常に強い抗菌性を示した。
(3)Aggregatibacter actinomycetemcomitans
歯周病原細菌の一つであるA. actinomycetemcomitansの使用菌種はAaY4(ATCC)で、TSB培地に酵母抽出物と重炭酸ナトリウムと各試験区のキレート剤を添加した液体培地を用い、37℃で18時間嫌気培養(アネロパック・嫌気)を行った。濁度を吸光度で測定(OD570または595nm)し、細胞活性の測定:ATPアッセイキットで行った。結果は、図7Aおよび7Bに示される通りであった。
図7Aおよび7Bに示されるように、試験区5および6のキレート剤は、A. actinomycetemcomitansに対して強い抗菌作用を示した。
(4)Porphyromonas gingivalis
歯周病原細菌の一つであるグラム陰性桿菌のP. gingivalisの使用菌種はPg W83で、変法GAMブイヨン培地に各試験区のキレート剤を添加した液体培地を用い、37℃で18時間嫌気培養(アネロパック・嫌気)を行った。濁度を光学密度(OD595nm)から求めた。結果は、図8に示される通りであった。
図8に示されるように、試験区1、6および10のいずれもP. gingivalisに対して抗菌作用を示した。なお、試験区1について上記と同様にATPアッセイキットで細胞活性の測定を行ったところ、細胞活性の大幅な低下が確認できた。
上記の通り、本発明のキレート剤は、トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に選択性を有するキレート剤であり、生体に不要な鉄イオンをキレートするものである。しかしながら、本発明のキレート剤は、生体毒性がほとんど観察されない一方で、抗がん作用、抗菌作用を有した。
実施例5:抗ウイルス効果の検証
本実施例では、本発明のキレート剤が抗ウイルス作用を有するかを検討した。
ヒトインフルエンザウイルスをMDCK細胞(イヌ腎尿細管上皮細胞)に感染させ、ウイルスのMDCK細胞への感染の抑制効果 を確認した。具体的には、インフルエンザウイルスとしてはPR8 [A/PUERTORICO/8/34 (H1N1)]をTCID50=2.81×106/mLに調整し、ウイルス液と等量の試験区10のキレート剤(濃度:100μg/mL、250μg/mL、500μg/mL、または1000μg/mL)を混合して室温で30分静置した後に、MDCK細胞に上記で調製されたウイルス液を添加した。48時間後、細胞を観察し、培養皿底面に残存する生細胞(すなわち、非感染細胞) を顕微鏡下で観察した。結果は図16Aに示される通りであった。図16Aに示されるように、試験区10のキレート剤は、500μg/mLの濃度でウイルス感染の抑制効果が観察された。 他方で、同様に具体的には、インフルエンザウイルスとしてはPR8 [A/PUERTORICO/8/34 (H1N1)]をTCID50=2.81×106/mLに調整し、ウイルス液と等量のデスフェラール(濃度:500μg/mL、または1000μg/mL)を混合した場合には、図16Bに示されるようにウイルス感染の抑制効果は観察されなかった。
このことから、本発明のキレート剤は、抗ウイルス作用を有すること、特にウイルス感染から細胞を保護する効果を有することが明らかとなった 。このことから、本発明のキレート剤は、ウイルス感染症の予防(防除)および治療に用いることができると考えられる。 本発明のキレート剤は、トランスフェリン結合鉄をキレートせず、生体不安定鉄選択的であるため、副作用が少ないと考えられ、抗ウイルス剤として有用であると考えられる。

Claims (28)

  1. 鉄キレート剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、
    前記鉄キレート剤は、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジンから選択される基材と、−NH−CH−結合を介して前記基材に結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
    [式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
    に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、医薬組成物。
  2. 高分子骨格が、キトサン骨格である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 芳香族環が以下の構造を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物:
    {式中、
    〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
  4. 基材がグルコサミンである、請求項1に記載の医薬組成物。
  5. 芳香族環が以下の構造を有する、請求項4に記載の医薬組成物:
    {式中、
    〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
  6. がHまたはOHであり、RおよびRがOHであり、RおよびRがHである、請求項5に記載の医薬組成物。
  7. 前記鉄キレート剤が、以下の構造を有する請求項1に記載の医薬組成物:
    {式中、
    〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
  8. 前記キレート剤が塩酸塩の形態である、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 〜Rのうちいずれか1つがOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHおよびCOOHから選択される基を有する、請求項7または8に記載の医薬組成物。
  10. 〜RがそれぞれOHであり、RおよびRがHであるか;または
    がHであり、RおよびRのいずれか一方がOHであり他方がCOOHであり、RおよびRがHである、
    請求項9に記載の医薬組成物。
  11. 鉄キレート剤を含む、抗菌剤であって、
    前記鉄キレート剤は、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジンから選択される基材と、−NH−CH−結合を介して前記基材に結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
    [式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
    に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、抗菌剤。
  12. 請求項11に記載の抗菌剤であって、基材がグルコサミンである、抗菌剤。
  13. 請求項11に記載の抗菌剤であって、
    前記鉄キレート剤は、グルコサミンと、−NH−CH−結合を介してグルコサミンに結合した芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
    [式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
    に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、抗菌剤。
  14. 芳香族環が以下の構造を有する、請求項12または13に記載の抗菌剤:
    {式中、
    〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
  15. がHまたはOHであり、RおよびRがOHであり、RおよびRがHである、請求項14に記載の抗菌剤。
  16. 請求項11〜15のいずれか一項に記載の抗菌剤であって、
    前記抗菌剤は、S. mutansA. actinomycetemcomitansおよびP. gingivalisからなる群から選択される口腔細菌に対して用いるための抗菌剤である、抗菌剤。
  17. 請求項15に記載の抗菌剤であって、
    前記抗菌剤は、S. mutansA. actinomycetemcomitansおよびP. gingivalisからなる群から選択される口腔細菌に対して用いるための抗菌剤である、抗菌剤。
  18. 請求項11に記載の抗菌剤であって、
    前記抗菌剤は、S. mutansおよびP. gingivalisからなる群から選択される口腔細菌に対して用いるための抗菌剤であり、
    前記鉄キレート剤は、基材としてキトサンを有する、抗菌剤。
  19. 請求項11〜15のいずれか一項に記載の抗菌剤であって、
    前記抗菌剤は、黄色ブドウ球菌またはカンジダに対して用いるための抗菌剤であり、
    前記鉄キレート剤は、高分子骨格としてキトサン骨格を有するものである、抗菌剤。
  20. 請求項15に記載の抗菌剤であって、
    抗菌剤は、黄色ブドウ球菌に対して用いるための抗菌剤。
  21. 請求項15に記載の抗菌剤であって、
    〜RがOHであり、RおよびRがHであり、
    前記抗菌剤は、緑膿菌に対して用いるための抗菌剤。
  22. トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物。
  23. トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、抗菌剤。
  24. 鉄キレート剤を含む、ウイルス感染症を処置することに用いるための医薬組成物であって、
    前記鉄キレート剤は、高分子骨格、グルコサミンおよびヒスチジンから選択される基材と、芳香族環とを有し、芳香族環は、水酸基である一つないし二つの第一の官能基と、水酸基、カルボン酸基および式(I):
    [式中、Aは−CH、−CH−CH、−CH−C、−CH−CNまたは−CH−COOHであり、Bは−CH−COOHである]
    に示される官能基から選ばれる一つないし二つの第二の官能基とを有しており、第二の官能基は第一の官能基の少なくとも一方に対してオルト位に位置することを特徴とする、医薬組成物。
  25. 芳香族環が以下の構造を有する、請求項24に記載の医薬組成物:
    {式中、
    〜Rのうちいずれか1つはOHであり、前記OHとオルト位に少なくともOHまたはCOOHを有し、それ以外の基はH、OH、COOH、CH、および−N(CH)−CH−COOHから選択される基である。}。
  26. がHまたはOHであり、RおよびRがOHであり、RおよびRがHである、請求項25に記載の医薬組成物。
  27. およびRがHであり、R〜RがそれぞれOHである、請求項25に記載の医薬組成物。
  28. トランスフェリン結合鉄に対するよりも生体不安定鉄に対して選択性を有する鉄キレート剤を含む、ウイルス感染症を処置することに用いるための医薬組成物。
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