JP2018183132A - 植物の特性を増強する方法 - Google Patents

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【課題】遺伝子組み換え技術によることなく、植物の特性を増強する新たな技術を提供することにある。【解決手段】植物組織を凍結する凍結工程と、凍結された植物組織を解凍する解凍工程と、解凍された植物組織から植物を発生させる発生工程により植物を処理する。【選択図】図5

Description

本発明は、遺伝子操作によらずに植物の特性を増強する方法に関する。
人類は古来より品種改良手法により有利な性質を有する植物を作出してきた。従来の品種改良法は一定の特性を固定するために長い年月を要するものであったが、世代促進技術の登場により、固定に要する時間を短縮することが可能となっている。しかし、世代促進技術によっても固定には数年を要するという問題があった。そこで、固定の作業を必要としない葯培養などのバイオテクノロジーが開発されている。
また、有利な特性を有する植物を作出する方法として、遺伝子組み換え技術が知られている。遺伝子組み換え技術により、除草剤耐性作物、害虫抵抗性作物、耐病性作物、保存性を増大させた作物が作出されている。
一方、ある特定の処理を施すことで突然変異を誘発し、植物の特性を増強する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ガンマ線照射と染色体倍加処理を行なう工程を含む耐寒性を付与する品種改良方法が開示されている。
また、遺伝子配列に変更を加えることなく、植物の特性を制御する方法が考案されている。例えば、特許文献2には、植物の栄養成長期において、栽培環境中に起因する塩類ストレス、寡照ストレス、強光ストレス、乾燥ストレス、過湿ストレス、高温ストレス、低温ストレス、栄養ストレス、重金属ストレス、病害ストレス、酸素欠乏ストレス、オゾンストレス、COストレス、強風ストレスなどのストレス処理をかけることで、植物の次世代における開花時期を制御する方法が開示されている。
ところで、日本のほとんどの地域は温帯に属し、北海道や東北地方は亜寒帯(冷帯)に属する。そのため、亜熱帯〜熱帯地域で栽培されているような日本の気候での栽培に適していない作物については、輸入に頼っている状況にある。
特開2006−25632号公報 特開2016−182094号公報
上述したとおり、亜熱帯〜熱帯地域で栽培されているような作物については、温帯〜寒帯での栽培に適していない場合がほとんどであり、温帯〜寒帯地域においてはこのような作物を輸入する必要がある。しかし、輸入作物については、大規模栽培を実現するために農薬が大量に使用されていたり、輸入のために燻蒸処理のような化学的な処理がなされていたりする場合があり、人体に有害なものが多い。また、このような処理がなされていないものについては高価であり、手軽に入手できないことが多い。
このような状況から、亜熱帯〜熱帯地域で栽培されている作物を気温の低い温帯〜寒帯で栽培可能にする技術が望まれている。
一方、植物種によっては播種から収穫まで数年を要するものが多くあり、このような植物種の栽培に関しては投資の回収に課題が生じることがある。
このような問題から、植物の成長速度を促進する技術が望まれている。
上に述べたとおり、植物の成長速度や耐寒性を増強する技術が望まれている。この解決手段として品種改良手法を採用することには、達成までに長期間を要するという問題がある。また、葯培養技術は植物種間における培養に難易があることが問題である。そして、遺伝子組み換え技術については遺伝子プールの汚染問題があり、また、突然変異の誘導法には目的達成の不確実性が高いという問題がある。
また、遺伝子配列に変更を加えることなく、植物の成長速度と環境順応特性を増強する技術は知られていない。
このような問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、遺伝子組み換えによることなく、植物の特性を増強する新たな技術を提供することにある。
上記課題をする本発明は、植物組織を凍結する凍結工程と、凍結された植物組織を解凍する解凍工程と、解凍された植物組織から植物を発生させる工程と、を含む植物の特性増強方法である。
本発明の特性増強方法によれば、特に植物の成長特性及び/又は耐寒性を増強することができる。
また、本発明の好ましい形態では、前記凍結工程における凍結時最低温度が−20℃以下である。
凍結時最低温度を−20℃以下とすることにより、より植物の特性を増強することができる。
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程において、0.5℃/日以下の速度で温度降下させながら前記植物組織を凍結する。
このように緩慢に温度降下をさせることにより、解凍工程後の植物組織の生存率を向上させることができ、本発明の方法の効率を向上させることができる。
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程の期間が180日以上である。
上記期間をかけて植物組織を凍結することによって、植物の特性の増強効果を向上させることができる。
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程において、糖類水溶液中に浸漬した状態で前記植物組織を凍結する。
このような形態とすることによって、解凍工程後の植物組織の生存率を向上させることができ、本発明の方法の効率を向上させることができる。
本発明の好ましい形態では、前記糖類がトレハロースである。
トレハロースを用いることによって、解凍工程後の植物組織の生存率をより向上させることができる。
また、本発明は上述の方法を用いることによって、特性が増強された植物、この植物より得られる、接ぎ木のための穂木として用いられる植物組織及びこれが穂木として接ぎ木された植物、並びに、これら植物より得られる、該植物とは独立した植物個体を発生可能な植物組織(種子を除く)にも関する。
また、本発明は、植物の特性の増強遺伝子の探索方法であって、
上述の方法によって植物を処理する工程と、
前記処理を受けていない植物と比較して、前記処理を受けた植物において高い発現量を示すRNAを同定する工程と、を含むことを特徴とする、探索方法にも関する。
また、本発明は、上述の方法による処理を受けていない植物と比較して、該処理を受けた植物において高い発現量を示すRNAを指標として、
被験物質を適用した植物における前記RNAの発現量が、前記被験物質を適用していない植物における前記RNAの発現量に比して高いときに、該被験物質を植物の特性の増強因子としてスクリーニングすることを特徴とする、植物の特性の増強因子のスクリーニング方法にも関する。
本発明によれば、植物の特性の増強因子を簡便にスクリーニングすることができる。
本発明によれば、数年に及ぶ品種改良法や、遺伝子組み換え法によることなく、特性が増強された植物を得ることができる。特に本発明によれば植物の成長特性及び/又は耐寒性を増強することができる。
凍結解凍処理を行ったパパイヤと未処理のパパイヤの発芽後30日後における写真。 凍結解凍処理を行ったパパイヤと未処理のパパイヤの発芽後45日後における写真。 凍結解凍処理を行ったパパイヤと未処理のパパイヤの発芽後60日後における写真。 凍結解凍処理を行ったパパイヤと未処理のパパイヤの発芽後3か月後における写真。 凍結解凍処理を行ったパパイヤと未処理のパパイヤの収穫期における写真。 凍結解凍処理を行ったパイナップルと未処理のパイナップルを栽培し、経時的に観察した様子を表す写真。最下段の写真は発芽後1年におけるパイナップルである。 凍結解凍処理を行い栽培したバナナの写真である。 凍結解凍処理を行い栽培したコーヒーノキの写真である。
本発明の特性増強方法は、特に限定されず全ての植物種に適用可能であるが、例えばパパイヤ科(Caricaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、バショウ科(Musaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、フトモモ科 Myrtaceae、カタバミ科(Oxalidaceae)、クワ科(Moraceae)、アオイ科(Malvaceae)、アカネ科(Rubiaceae)、クスノキ科(Laureaceae)、トケイソウ科(Passifloraceae)、ムクロジ科(Sapindaceae)、フクギ科(Clusiaceae)、カキノキ科(Ebenaceae)、ミカン科(Rutaceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、ヤシ科(Arecaceae)、サボテン科(Cactaceae)、バラ科(Rosaceae)に属する植物への適用を例示することができる。
より具体的には、パパイヤ属(Carica)、アナナス属(Ananas)、バショウ属(Musa)、ラカンカ属 Siraitia、バンジロウ属(Psidium)、ゴレンシ属(Averrhoa)、イチジク属(Ficus)、カカオ属(Theobroma)、コーヒーノキ属(Coffea)、ニッケイ属(Cinnamomum)、トケイソウ属(Passiflora)、レイシ属(Litchi)、フクギ属(Garcinia)、カキノキ属(Diospyros)、カシロミア属(Casimiroa)、バンレイシ属(Annona)、ナツメヤシ属(Phoenix)、ヒモサボテン属(Hylocereus)、サクラ属(Cerasus)に属する植物などを例示することができる。
本発明の特性増強方法は、植物組織を凍結する凍結工程を含む。
凍結工程に供する植物組織としては、植物より得られる、該植物とは独立した植物個体を発生可能な植物組織が好ましく例示できる。
植物は全能性を有するため、植物のどの部位であっても「植物より得られる、該植物とは独立した植物個体を発生可能な植物組織」に該当するが、具体的には、植物の種子、根、芽、茎、葉、花弁などを例示でき、好ましくは種子、根及び芽を挙げることができる。
凍結工程に供する際にこれら組織は、そのまま凍結してもよいし、一部を切除し、切片の形態で凍結してもよい。
凍結工程においては、植物組織を液体に浸漬した状態で凍結することが好ましい。植物組織を浸漬する液体としては、DMSO(ジメチルスルホキシド)、グリセリン、エチレングリコール、糖類などの水溶液からなる凍害防御剤を用いることが好ましい。中でも糖類水溶液、特にトレハロース水溶液を用いることが好ましい。
凍結工程における凍結時最低温度の上限は、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下、さらに好ましくは−40℃以下、さらに好ましくは−50℃以下、さらに好ましくは−55℃以下である。
また、凍結時最低温度の下限は、好ましくは−200℃以上、より好ましくは−150℃以上、さらに好ましくは−100℃以上、さらに好ましくは−80℃以上、さらに好ましくは−70℃以上、さらに好ましくは−65℃以上である。
凍結工程においては急速に凍結時最低温度に降下させるのではなく、緩慢に温度降下させることが好ましい。温度降下の速度は、解凍後の生存率の観点から、好ましくは0.8℃日/以下、より好ましくは0.6℃日/以下、より好ましくは0.5℃/日以下、さらに好ましくは0.3℃/日以下、さらに好ましくは0.2℃/日、さらに好ましくは0.1℃/日である。
このように緩慢に温度降下させる場合には、凍結工程においてはプログラムフリーザーを用いることが好ましい。
凍結工程の期間の下限は、好ましくは100日以上、より好ましくは120日以上、さらに好ましくは150日以上、さらに好ましくは160日以上、さらに好ましくは180日/以上である。
なお、「凍結工程の期間」とは、植物組織の温度降下を開始した時点から、解凍工程を開始するまでの期間である。
解凍工程における解凍方法は特に制限されない。凍結状態の植物組織を常温に放置することで自然解凍してもよいし、凍結状態の植物組織を流水ですすぎながら解凍してもよい。
本発明の特性増強方法は、このようにして解凍された植物組織から植物を発生させる発生工程を含む。
凍結工程及び解凍工程に供した植物組織が植物の種子である場合には、これを常法に従い播種し、植物個体を発生させることができる。
凍結工程及び解凍工程に供した植物組織が種子以外の植物部位である場合には、これをそのまま土壌や培地に移し発芽させてもよいし、また、細かく細断し常法に従い細胞培養を行い、カルス誘導、不定胚誘導、不定芽誘導を行うことで、植物個体を発生させることができる。
上述した凍結工程、解凍工程及び発生工程を経て発生した植物は、その特性が増強されている。
より具体的には、本発明の特性増強方法によれば植物の成長速度や耐寒性を顕著に増強することができる。
すなわち、熱帯〜亜熱帯地域でしか栽培できないような植物であっても、本発明の特性増強方法を適用することで、温帯〜寒帯地域において栽培できるようになる。
ところで、カビの一種であるFusarium oxysporum f. sp. cubenseを病原体とするバナナの感染症である新パナマ病は、マレーシア、フィリピン、台湾およびアフリカ諸国のバナナ栽培に損害を与え、近年は中国、インドネシア、オーストラリア、ヨルダン、モザンビーク、中米諸国にも被害を広げている。
このカビ菌は亜熱帯〜熱帯地域において感染被害をもたらすが、温帯〜寒帯地域においては、その最適気温から外れるため拡大しない。
したがって、本発明の特性増強方法によりバナナの耐寒性を増強し、これを温帯〜寒帯において栽培すれば、新パナマ病の脅威にさらされることなく、安定してバナナを供給することができる。
その他、本発明の特性増強方法の好ましい形態によれば、耐暑性、高地順応特性及び低地順応特性などの環境順応特性を増強することができる。つまり、本発明の特性増強方法によれば、温帯〜寒帯地域でしか栽培できないような植物であっても、熱帯〜亜熱帯地域での栽培に順応させること、並びに、高地で栽培されている植物を低地での栽培に順応させること、また、その逆も可能である。
また、本発明の特性増強方法の好ましい形態によれば、植物の豊産性や耐病害虫性や根腐れ耐性も増強することができる。
本発明の特性増強方法はさらに好ましくはスクリーニング工程を含んでいてもよい。
すなわち、植物組織として種子を用いる場合には、複数の種子を凍結工程、解凍工程、発生工程に供し、それぞれについて発芽−栽培し、それらの中から優れた特性を有する株をスクリーニングしてもよい。
また、植物組織として種子以外を用いる場合には、凍結工程、解凍工程、発生工程に供した後に発生した複数の芽、カルス、不定胚、不定芽から植物個体を発生させ、それらの中から優れた特性を有する株をスクリーニングしてもよい。
本発明の特性増強方法の適用を受けた植物から、有性生殖以外の方法により得た次世代の植物は、増強された特性を引き継ぐ。したがって、本発明の特性増強方法により特性が増強された植物を得ることができれば、その植物より得られる、該植物とは独立した植物個体を発生可能な種子以外の植物組織(子株等)から発生した次世代以降の子孫も増強された特性を有する。
また、本発明の特性増強方法の適用を受けた植物は、接ぎ木の穂木として利用した場合であっても、増強された特性を発揮する。
本発明の特性増強方法による処理を受けた植物は、同処理を受けていない植物と比較して、細胞内で発現しているRNAの量が顕著に増加する。このRNA量の顕著な増加が、特性増強の要因であると言える。つまり、本発明の特性増強方法を適用することにより植物細胞内で発現量が増加するRNAをコードしている遺伝子は、植物の特性の増強遺伝子であるということができる。
したがって、本発明の特性増強方法を適用することにより植物細胞内で発現量が増加するRNAを解析し、同定することで、植物の特性の増強遺伝子の探索を行うことが可能である。
すなわち、本発明は、上述の特性増強方法によって植物を処理する工程と、
前記処理を受けていない植物と比較して、前記処理を受けた植物において高い発現量を示すRNAを同定する工程と、を含む、植物の特性の増強遺伝子の探索方法にも関する。
本発明の探索方法におけるRNAを同定する工程は常法により行うことができる。例えば、マイクロアレイやRNAシーケンスなどのトランスクリプトーム解析によって、本発明の特性増強方法による処理を受けた植物において高い発現量を示すRNAを同定することができる。
また、上で述べた通り、本発明の特性増強方法を適用した植物において発現量が上昇するRNAが、特性増強の要因であるから、当該RNAを指標とすれば、植物の特性増強因子をスクリーニングすることができる。
すなわち、本発明は、被験物質を適用した植物における前記RNAの発現量が、被験物質を適用していない植物における前記RNAの発現量に比して高いときに、この被験物質を植物の特性増強因子としてスクリーニングする方法にも関する。
植物の特性増強の要因となっているRNAの発現量の確認は、ノザンブロッティングやリアルタイムPCRなどの常法により行うことができる。
<試験例1>パパイヤの特性増強
パパイヤの種子をトレハロース水溶液に浸漬した状態で、プログラムフリーザー内に静置し凍結した。凍結は0.5℃/日の温度降下速度で180日間かけて緩慢に行い、凍結時最低温度が−60℃となるように行った。
凍結したパパイヤの種子を流水ですすぐことにより解凍し、これを播種し栽培した。なお、栽培地域は日本の岡山県である。
図1〜5に、凍結解凍処理を受けた種子と未処理の種子の成長を経時的に観察した結果を示す。
図1〜5に示すように、上述の凍結解凍処理を受けたパパイヤは、未処理のパパイヤと比較して著しく成長速度が向上していることが確認できた。この結果は、本発明の特性増強方法によれば、植物の成長特性を増強できることを示している。
また、パパイヤはメキシコ南部から西インド諸島を原産とし、熱帯の国々で栽培されている植物であるが、耐寒性に乏しい性質がある。しかし、凍結解凍処理を受けたパパイヤは、育成地が温帯に属する岡山県であるにも関わらず、図1〜5に示すように問題無く成長した。この結果は、本発明の特性増強方法によれば、植物の耐寒性を増強できることを示している。
また、図5に示すように、凍結解凍処理を受けたパパイヤは未処理のパパイヤと比較して多くの果実が実った。この結果は、本発明の特性増強方法によれば、植物の豊産性を増強できることを示している。
本試験例においては、農薬を用いていないが、病害虫の被害を受けることなくパパイヤを栽培することができた。また、本試験例と同様の方法により凍結解凍処理したパパイヤを、農薬を用いずに大規模に栽培した場合であっても、病害虫の被害を受けることなく栽培することができた。この結果は、本発明の特性増強方法によれば、植物の耐病害虫性を増強できることを示している。
また、凍結解凍処理を受けたパパイヤには根腐れに対する耐性が認められた。この結果は、本発明の特性増強方法によれば、植物の根腐れ耐性を増強できることを示している。
<試験例2>パイナップルの特性増強
パイナップルの種子を試験例1と同様の方法により凍結解凍処理し、これを播種し栽培した。図6〜8に、同時に播種し栽培した、凍結解凍処理を受けたパイナップルと、凍結解凍処理を受けていないパイナップルの成長を経時的に記録した写真を示す。
図6に示すように、試験例1におけるパパイヤと同様、パイナップルにおいても凍結解凍処理による成長特性及び耐寒性の増強が確認できた。
<試験例3>バナナの特性増強(1)
バナナの子株の根を輪切りにし、これを試験例1と同様の方法により凍結解凍した。凍結解凍後の子株の根を細断し、この断片化した生長細胞塊を培地上で培養し発芽させた。ある程度成長した苗を土壌に移し栽培を行った。なお、栽培は日本の岡山県で行った。
その結果、苗を植えてから約9か月で、実が収穫可能な状態にまで成長した(図7)。通常、バナナは苗を植えてから収穫可能な状態となるまでに早くても1年を要するところ、この結果は凍結解凍処理によりバナナの成長速度を著しく向上させることができることを示している。
また、バナナもパパイヤ同様、亜熱帯〜熱帯原産であり、通常、温帯では実をつけないところ、本試験例では温帯に属する日本の岡山県においても栽培し、実を収穫することができた(図7)。
この結果は、凍結解凍処理によりバナナの耐寒性を増強することができることを示している。
<試験例4>バナナの特性増強(2)
バナナの株元から生えたわき芽を切り取り、葉と根を切り落とし、タケノコ状に加工した。これを試験例1と同様の方法により凍結解凍した。解凍後のわき芽を鉢に植えた。その後、茎は腐り消失したが、新芽が発芽することを確認した。この新芽を栽培したところ、試験例3と同様に、成長速度と耐寒性が増強されたバナナを得ることができた。
<試験例5>コーヒーの特性増強
台湾の台南市で栽培されているコーヒーノキの種子を試験例1と同様の方法で凍結解凍処理し発芽させ、日本の岡山県にて栽培した(図8)。その結果、凍結解凍処理を受けたコーヒーノキは、同処理を受けていない台南市で栽培されている同体のコーヒーノキと比較して、3〜40%の成長速度の促進が観察された。
この結果は、凍結解凍処理によりコーヒーノキの成長速度を向上させることができることを示している。
また、台湾の台南市よりも気温の低い日本の岡山県において問題なく成長が見られることから、凍結解凍処理によりコーヒーノキの耐寒性を向上させることができることを示している。
<試験例6>その他の植物種の特性増強
下に列挙する植物の種子を試験例1と同様の方法により凍結解凍処理し、処理後の植物組織から植物個体を発生させ栽培した。
羅漢果、グアバ、スターフルーツ、いちじく、カカオ、セイロンシナモン、パッションフルーツ、ライチ、マンゴスチン、ブラックサポテ、ホワイトサポテ、棘葉シュガーアップル、デーツ椰子、レッドドラゴンフルーツ、アーモンド
その結果、上に列挙した何れの植物種においても、凍結解凍処理により成長特性及び耐寒性の増強が確認された。
この結果は、本発明の特性増強方法は全ての植物種について有効であることを示している。
<試験例7>分子生物学的解析
上記試験例において凍結解凍処理により特性が増強されたパパイヤ、バナナ、パッションフルーツ、グアバフルーツについて、同処理を受けていない植物を比較対象としてトランスクリプトーム解析を行った。その結果、何れの植物においても凍結解凍処理を受けることにより、mRNAの発現量が32〜38倍程度向上することがわかった。
この結果は、成長特性や耐寒性に関する増強遺伝子の発現が、凍結解凍処理により顕著に向上することを示している。
つまり、凍結解凍処理により向上したmRNAを解析することにより、成長特性や耐寒性などの植物の特性の増強遺伝子を同定できることを示している。
また、この結果は、上記増強遺伝子の転写産物であるmRNAを指標とすることで、成長特性や耐寒性などの植物の特性の増強因子をスクリーニングできることを示している。
本発明は農作物の生産技術に適用できる。

Claims (14)

  1. 植物組織を凍結する凍結工程と、凍結された植物組織を解凍する解凍工程と、解凍された植物組織から植物を発生させる発生工程と、を含む植物の特性増強方法。
  2. 植物組織(種子を除く)を凍結する凍結工程と、凍結された植物組織を解凍する解凍工程と、解凍された植物組織から植物を発生させる発生工程と、を含む植物の特性増強方法。
  3. 植物の成長特性及び/又は耐寒性の増強方法であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の特性増強方法。
  4. 前記凍結工程における凍結時最低温度が−20℃以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の特性増強方法。
  5. 前記凍結工程において、0.5℃/日以下の速度で温度降下させながら前記植物組織を凍結することを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の特性増強方法。
  6. 前記凍結工程の期間が180日以上であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の特性増強方法。
  7. 前記凍結工程において、糖類水溶液中に浸漬した状態で前記植物組織を凍結することを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の特性増強方法。
  8. 前記糖類がトレハロースであることを特徴とする、請求項に記載の特性増強方法。
  9. 請求項1〜の何れか一項に記載の方法を適用することにより、成長特性及び/又は耐寒性が増強された植物を生産する方法
  10. 請求項に記載の植物より得られる、接ぎ木のための穂木として用いられる植物組織。
  11. 請求項10に記載の植物組織が穂木として接ぎ木された植物。
  12. 請求項9に記載の生産方法により生産された植物又は請求項11に記載の植物を栽培する工程を含む、該植物とは独立した植物個体を発生可能な植物組織(種子を除く)を生産する方法
  13. 植物の特性の増強遺伝子の探索方法であって、
    請求項1〜の何れか一項に記載の方法によって植物を処理する工程と、
    前記処理を受けていない植物と比較して、前記処理を受けた植物において高い発現量を示すRNAを同定する工程と、を含むことを特徴とする、探索方法。
  14. 請求項1〜の何れか一項に記載の方法による処理を受けていない植物と比較して、該処理を受けた植物において高い発現量を示すRNAを指標として、
    被験物質を適用した植物における前記RNAの発現量が、前記被験物質を適用していない植物における前記RNAの発現量に比して高いときに、該被験物質を植物の特性の増強因子としてスクリーニングすることを特徴とする、植物の特性の増強因子のスクリーニング方法。

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