A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、第1のエンドプレート104と、第2のエンドプレート106と、集電板18とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されている。集電板18は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。第1のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、第2のエンドプレート106は、集電板18の下側に配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、第1および第2のエンドプレート104,106、集電板18)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、第1のエンドプレート104から第2のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる貫通孔108を構成している。以下の説明では、貫通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、貫通孔108という場合がある。なお、後述するように、これらの貫通孔108は、特許請求の範囲におけるガス流路に相当するということができる。
各貫通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。
各ボルト22の軸部の外径は各貫通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各貫通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、金属により形成されており、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成する第1のエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成する第2のエンドプレート106の下側表面との間には、第1のガラスシール部52が介在している。ただし、ガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24と第2のエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された第1のガラスシール部52とが介在している。第1のガラスシール部52には、上述した各貫通孔108やガス通路部材27の本体部28の孔に連通する孔が形成されている。第1のガラスシール部52により、第1のガラスシール部52を挟んで配列方向に互いに隣り合う2つの導電性部材(例えば、ナット24と第1のエンドプレート104)が電気的に絶縁され、かつ、2つの導電性部材間のガスシール性が確保される。なお、ナット24および第1のエンドプレート104と、ナット24および第2のエンドプレート104と、第2のエンドプレート104およびガス通路部材27と、ガス通路部材27およびナット24とは、それぞれ、特許請求の範囲における第1の部材および第2の部材、一対の部材に相当する。また、第1のガラスシール部52は、特許請求の範囲におけるシール部に相当する。また、燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における接合構造体および電気化学反応セルスタックに相当する。
(エンドプレート104,106の構成)
第1および第2のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。第1のエンドプレート104は、配列方向に略直交する方向(例えばX軸負方向)に突出する第1の突出部14を備える。第1のエンドプレート104の第1の突出部14は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能する。
(集電板18の構成)
集電板18は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。集電板18は、配列方向に略直交する方向(例えばX軸正方向)に突出する第2の突出部16を備える。集電板18の突出部16は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
集電板18と第2のエンドプレート106との間には、第2のガラスシール部54と、マイカ等の絶縁材57とが介在している。絶縁材57には、上記各貫通孔108に対応する位置に孔が形成されており、この孔の内側に、第2のガラスシール部54が配置されている。第2のガラスシール部54には、上述した各貫通孔108に連通する孔が形成されている。第2のガラスシール部54により、第2のガラスシール部54を挟んで配列方向に互いに隣り合う2つの導電性部材である集電板18と第2のエンドプレート106とが電気的に絶縁され、かつ、集電板18と第2のエンドプレート106との間のガスシール性が確保される。なお、集電板18と第2のエンドプレート106とは、特許請求の範囲における第1の部材および第2の部材は、特許請求の範囲における一対の部材に相当する。また、第2のガラスシール部54は、特許請求の範囲におけるシール部に相当する。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図4および図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される貫通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。そのため、あるインターコネクタ150は、ある発電単位102における後述する空気極114に面する空気室166に面し、かつ、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における後述する燃料極116に面する燃料室176に面する。また、燃料電池スタック100は第1のエンドプレート104および集電板18を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極114および燃料極116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、少なくともZrを含んでおり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。すなわち、空気極側フレーム130は、配列方向に隣り合うセパレータ120とインターコネクタ150との間に配置されている。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
空気極側フレーム130における各貫通孔108の内側には、第3のガラスシール部56が配置されている。すなわち、空気極側フレーム130を挟んで隣り合うセパレータ120とインターコネクタ150との間には、各マニホールドを取り囲むように第3のガラスシール部56が配置されている。第3のガラスシール部56により、第3のガラスシール部56を挟んで配列方向に互いに隣り合う2つの導電性部材であるセパレータ120とインターコネクタ150とが電気的に絶縁され、かつ、セパレータ120とインターコネクタ150との間のガスシール性が確保される。なお、セパレータ120とインターコネクタ150とは、特許請求の範囲における第1の部材および第2の部材は、特許請求の範囲における一対の部材に相当する。また、第3のガラスシール部56は、特許請求の範囲におけるシール部に相当する。
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、集電板18の表面に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(または集電板18)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102の空気極側集電体134は、第1のエンドプレート104の表面に接触している。このように、空気極側集電体134は、空気極114とインターコネクタ150(または第1のエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、出力端子として機能する第1のエンドプレート104の第1の突出部14と集電板18の第2の突出部16とから、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
A−3.ガラスシール部52,54,56の構成:
本実施形態では、第1のガラスシール部52と第2のガラスシール部54と第3のガラスシール部56とは、いずれも、上下方向に平行な、少なくとも1つの断面が、次の第1条件から第3の条件の全てを満たす。
第1の条件:ガラスシール部52,54,56における特定の表面を含む第1の領域と、該特定の表面から離間し、第1の領域とは異なる第2の領域とが存在する。
第2の条件:第2の領域に含まれるガラスは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも1つの特定元素を含む。
第3の条件:第1の領域に含まれるガラスは、当該特定元素を含み、かつ、当該特定元素の含有率(wt% 以下、同じ)が第2の領域における特定元素の含有率より低い。
以下、第3のガラスシール部56の構成について具体的に説明する。なお、第1のガラスシール部52と第2のガラスシール部54との構成は、第3のガラスシール部56の構成と略同一であるため、説明を省略する。
図5に拡大して示すように、第3のガラスシール部56は、マニホールド側領域R1と、非マニホールド側領域R2とを含む(第1の条件)。マニホールド側領域R1は、第1のガラスシール部52のうち、燃料ガス導入マニホールド171に露出するマニホールド側表面56Aの全体を含む領域である。非マニホールド側領域R2は、第3のガラスシール部56のうち、マニホールド側表面56Aから離間し、マニホールド側領域R1とは異なる領域である。すなわち、マニホールド側領域R1は、燃料ガス導入マニホールド171に流れる燃料ガスFGに晒され、非マニホールド側領域R2は、燃料ガスFGに晒されない。
非マニホールド側領域R2に含まれるガラスは、主成分のSiO2(酸化ケイ素)と、Na(ナトリウム)と、K(カリウム)とB(ホウ素)とを含む(第2の条件)。マニホールド側領域R1に含まれるガラスは、非マニホールド側領域R2と同様、主成分のSiO2と、Naと、KとBとを含む。ただし、マニホールド側領域R1におけるNaの含有率は、非マニホールド側領域R2におけるNaの含有率より低い。また、マニホールド側領域R1におけるKの含有率は、非マニホールド側領域R2におけるKの含有率より低い。(第3の条件)。すなわち、第3のガラスシール部56では、燃料ガス導入マニホールド171に露出するマニホールド側表面56A付近の領域における特定元素(Na,K)の含有率は、マニホールド側表面56Aから離間した領域における特定元素(Na,K)の含有率より低い。さらに、マニホールド側領域R1の少なくとも一部は、結晶化している。マニホールド側領域R1の全体が結晶化していることが好ましい。マニホールド側領域R1は、特許請求の範囲における第1の領域に相当し、非マニホールド側領域R2は、特許請求の範囲における第2の領域に相当する。また、マニホールド側表面56Aは、特許請求の範囲における特定の表面に相当する。また、アルカリ金属であるNaおよびKは、特許請求の範囲における特定元素に相当する。
なお、第3のガラスシール部56の熱膨張率と、該第3のガラスシール部56に接触する導電性部材(例えばセパレータ120やインターコネクタ150)の熱膨張率との差は、極力小さいことが好ましい。温度変化による第3のガラスシール部56と導電性部材との熱膨張量の差に起因して第3のガラスシール部56と導電性部材とが剥離することを抑制するためである。例えば、第3のガラスシール部56に接触しているインターコネクタ150の熱膨張率が10(ppm/K)以上、12(ppm/K)であるフェライト系ステンレスにより形成されている場合、第3のガラスシール部56の熱膨張率は8(ppm/K)以上、12(ppm/K)以下であることが好ましい。ガラスの主成分である石英(SiO2)の熱膨張率は、6(ppm/K)程度であり、比較的に低い。そこで、熱膨張率の向上のために、上述したように、第3のガラスシール部56にはアルカリ金属やアルカリ土類金属が含まれている。第3のガラスシール部56の熱膨張率は、例えば、次の方法により特定することができる。まず、第3のガラスシール部56と同じ組成のガラスを所定温度で熱処理することで結晶化させ、所定の形状に切り出しした後に、一般的な熱膨張測定装置(TMA)を用いて昇温し、温度上昇とともにどれだけ膨張するかを測定する。これにより、第3のガラスシール部56の熱膨張率の値を特定することができる。
A−4.ガラスシール部52,54,56の形成方法:
ガラスシール部52,54,56の形成方法について、第3のガラスシール部56を例に挙げて説明する。まず、結晶化前のガラス粉末にバインダおよび溶媒を添加してペーストを作製する。作製したペーストを、一対の部材(セパレータ120とインターコネクタ150)の間に塗布して乾燥させ、軟化温度以上に加熱することによってガラスを溶融する。さらに、溶融したガラスを結晶化温度以上に加熱することによって安定な結晶を析出させる。ここで、結晶化する前の溶融したガラスの状態で、該ガラスに含まれる元素のマイグレーションを起こすことにより、マニホールド側表面56A付近の領域(マニホールド側領域R1)における特定元素(Na,K)の含有率を、マニホールド側表面56Aから離間した領域(非マニホールド側領域R2)における特定元素(Na,K)の含有率より低くすることができる。具体的には、結晶化前のガラスのマニホールド側表面56A側を水素雰囲気に晒しつつ、結晶化前のガラスを結晶化温度以上に加熱する。これにより、ガラスのマニホールド側表面56A側の領域(マニホールド側領域R1)を、特定元素の含有率を低減しつつ結晶化させることができる。なお、結晶の状態は、例えばX線回折分析による結晶構造解析等の公知の方法により確認することができる。
図6は、元素のマイグレーション後におけるガラスシール部のサンプルSPの断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像およびEDX(エネルギー分散型X線分析)の結果を示す説明図である。図6上段には、サンプルSPと、そのサンプルSPを上下方向で挟むように配置された一対のステンレス部材W1,W2との断面構成のSEM画像が示されている。図6下段には、サンプルSPのA部分に含まれるガラスの主成分のSiと、特定元素であるNaおよびKとのそれぞれのEDXの結果が示されている。左の図はSiの分析結果であり、中央の図はNaの分析結果であり、右図はKの分析結果である。EDXの結果では、明るい箇所ほど、分析対象の元素の濃度が高いことを意味する。なお、結晶化前のサンプルSPの組成は、SiO2(酸化ケイ素)(65wt%)、Al2O3(アルミナ)(7wt%)、B2O3(酸化ホウ素)(10wt%)、ZnO(酸化亜鉛)(5wt%)、Na2O(酸化ナトリウム)(8wt%)、K2O(酸化カリウム)(5wt%)である。
図6上段に示すように、サンプルSPは、2つのステンレス部材W1,W2に上下方向で挟まれており、2つのステンレス部材W1,W2の間に形成された隙間を第1の空間Q1と第2の空間Q2とに区画している。第1の空間Q1(サンプルSPの右側の空間)は水素雰囲気であり、第2の空間Q2(サンプルSPの左側の空間)は大気雰囲気である。このような雰囲気の中で、結晶化前のサンプルSPを結晶化温度以上に加熱することによりサンプルSPを形成した。図6の下段のEDXの結果によれば、サンプルSPの第1の空間Q1側では、第21の空間Q2側に比べて、NaおよびKが少ない。このことは、サンプルSPでは、水素雰囲気に露出している特定の表面付近におけるNaおよびKの含有率が、該特定の表面から離間した領域におけるNaおよびKの含有率より低いことを意味する。
A−5.性能評価:
ガラスの組成および上述の元素のマイグレーションの有無の少なくとも一方が互いに異なるガラスを含むサンプル(サンプル1〜4)を作成し、特定元素の放出抑制についての評価を行った。各サンプルは、フェライト系ステンレス板上にガラスが形成されたテストピースである。図7は、サンプルの性能評価結果を示す説明図である。
図7に示すように、サンプル1とサンプル2とは、ガラスの組成が互いに同じであり、具体的には、SiO2とB2O3とCaO(酸化カルシウム)とMgO(酸化マグネシウム)とを含む。ただし、サンプル1のガラスは、上述の元素のマイグレーションが意図的に行われた後のものであり、サンプル2では、元素のマイグレーションを行われていないものである。また、サンプル3とサンプル4とは、ガラスの組成が互いに同じであり、具体的には、SiO2とB2O3とNa2OとK2Oとを含む。ただし、サンプル3のガラスは、上述の元素のマイグレーションが意図的に行われた後のものであり、サンプル4では、元素のマイグレーションを行われていないものである。
本評価では、最も放出され易いBの放出について評価を行った。具体的には、アルミナ板の上にサンプルを配置し、該サンプルの上にLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)を塗布した積層体を作成し、その積層体を容器(図示せず)に入れて、その容器に蓋を閉めて容器内を密閉する。そして、積層体が収容された容器を、約800(℃)で約100時間放置した後に常温に戻す性能試験を行った。次に、性能試験の前後の積層体について、XRF分析(蛍光X線元素分析)を行うことによって、Bの放出量を特定した。
その結果、元素のマイグレーションが行われていないサンプル2,4では、Bの放出が検出された。具体的には、サンプル2では、性能試験の前のBの含有量に対する性能試験後のBの減少量の割合(以下、「B放出割合」という)が0.2(%)であり、サンプル4では、B放出割合は0.3(%)であった。一方、元素のマイグレーションが行われたサンプル1,3では、Bの放出が検出されなかった。具体的には、サンプル1,3のいずれも、B放出割合が0.1(%)未満(検出限界以下)であった。これらの評価結果によれば、ガラスに元素のマイグレーションを行わせてマニホールド側領域R1と非マニホールド側領域R2とを形成することにより、ガラスに含まれるBの放出を抑制することができることが分かる。また、Bは、アルカリ金属やアルカリ土類金属よりもガラスから放出され易い。このため、本性能評価は、ガラスに元素のマイグレーションを行わせてマニホールド側領域R1と非マニホールド側領域R2とを形成することにより、ガラスに含まれるアルカリ金属(Na,K)やアルカリ土類金属(Mg,Ca)の放出をも抑制することができるといえる。
A−6.本実施形態の効果:
本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガラスシール部52,54,56における特定の表面(マニホールド側表面56A)を含む第1の領域(マニホールド側領域R1)と、該第1の領域に対して特定の表面とは反対側に位置する第2の領域(非マニホールド側領域R2)とは、いずれも、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも1つの特定元素とガラスとを含む。また、第1の領域における特定元素の含有率は、第2の領域における特定元素の含有率より低い。これにより、単に非結晶のガラスを結晶化させた結晶化ガラスを用いる場合に比べて、ガラスシール部に含まれる特定元素が該特定の表面を介してガラスシール部の外部に放出されることを、より確実に抑制することができる。また、ガラスシール部と別の材料により形成されたコーティング膜を、ガラスシール部の特定の表面に形成することなく、ガラスシール部の外部への特定元素の放出を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、マニホールド側領域R1の少なくとも一部は、結晶化している。これにより、R1全体が非結晶である場合に比べて、ガラスシール部の外部への特定元素の放出を、より効果的に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、マニホールド側領域R1は、第3のガラスシール部56のうち、燃料ガス導入マニホールド171に露出するマニホールド側表面56Aの全体を含む領域である。すなわち、第3のガラスシール部56において燃料ガス導入マニホールド171に露出するマニホールド側表面56A全体を含む領域における特定元素の含有率が低くなっている。これにより、マニホールド側表面56A全体が、熱膨張率が相対的に低い材料(アルカリ金属等)によって形成された構造になるため、温度変化に対するガラスシール部の強度を向上させることができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、燃料電池スタック100における第1〜第3のガラスシール部52,54,56のそれぞれについて、少なくとも1つの断面が上述の第1から第3の条件の全てを満たすとしたが、これに限らず、第1〜第3のガラスシール部52,54,56の少なくとも1つについて、少なくとも1つの断面が上述の第1から第3の条件の少なくとも1つを満たさないとしてもよい。また、第1〜第3のガラスシール部52,54,56以外のシール部について、少なくとも1つの断面が上述の第1から第3の条件の全てを満たすとしてもよい。例えば、セパレータ120と電解質層112(単セル110)との間のシール対象箇所について、接合部124の代わりにガラスシール部を配置するとして、該ガラスシール部が、少なくとも1つの断面が上述の第1から第3の条件の少なくとも1つを満たすとしてもよい。この場合、セパレータ120および電解質層112(単セル110)が、特許請求の範囲における第1の部材および第2の部材、一対の部材に相当する。また、ガラスが特定元素を複数種類含む場合、複数種類の特定元素のうちの少なくとも1つの種類の元素について、上記第2の条件および第3の条件が満たされればよい。
また、上記実施形態では、各ガラスシール部52,54,56は、一対の部材の間に配置されていたが、これに限らず、ガラスシール部は、一対の部材に跨がるように配置されるとしてもよい。要するに、ガラスシール部は、一対の部材(第1の部材と第2の部材)の両方に接触していればよい。さらに、ガラスシール部は、露出する全表面について第1の領域(マニホールド側領域R1)が存在するとしてもよい。第1の領域は、熱膨張率が相対的に高いアルカリ金属等の含有率が低い。すなわち、ガラスシール部の表面全体は、熱膨張率が相対的に低い材料によって形成された構造になる。このため、ガラスシール部全体が温度変化に対して変形し難くなることによってガラスシール部の強度が向上する。
上記実施形態では、マニホールド側領域R1は、第1のガラスシール部52のうち、マニホールド側表面56Aの全体を含む領域であるとしたが、これに限定されず、マニホールド側領域R1は、マニホールド側表面56Aの一部だけを含む領域であるとしてもよい。このような構成でも、マニホールド側領域R1が、マニホールド側表面56Aの全体を含まない領域である場合に比べて、ガラスシール部の外部への特定元素の放出を抑制することができる。
上記実施形態では、特定元素として、NaおよびKを例示したが、これに限定されず、特定元素は、他のアルカリ金属(例えばLi(リチウム)、Cs(セシウム)等)でもよいし、アルカリ土類金属(例えばMg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム))でもよい。
上記実施形態では、第1の領域(マニホールド側領域R1)と第2の領域(非マニホールド側領域R2)とは、含有する元素が互いに同じであったが、これに限らず、第1の領域と第2の領域とは、少なくともガラスの主成分(SiO2)と、互いに同じ特定元素とを含んでいればよく、これら以外に、互いに異なる元素を含むとしてもよい。例えば、外部に露出する第1の領域だけにS(硫黄)またはSの化合物を含むとしてもよい。
上記実施形態では、マニホールド側領域R1が第3のガラスシール部56のマニホールド側表面56A側のみに存在したが、これに限らず、例えば、第3のガラスシール部56のマニホールド側表面56Aとは反対の表面側にもマニホールド側領域R1が存在するとしてもよい。なお、このような形態は、第3のガラスシール部56となる結晶化前のガラスに対して、該ガラスによって仕切られる2つの空間の両方を水素雰囲気とすることにより作成することができる。
上記実施形態では、ガラスシール部52,54,56の形成方法として、特定の表面側を水素雰囲気に晒す方法を例示したが、これに限定されず、例えば、結晶化前のガラスに電圧を印加する方法でもよい。結晶化前のガラスに電圧を印加することにより、プラスに帯電した特定元素をマイナス側(特定の表面側)に移動させることができる。また、結晶化前のガラスの特定の表面側を水素雰囲気にする方法でもよい。この場合、水素雰囲気に晒された表面側の領域に、マイナスに帯電した特定元素を移動させる、もしくは、プラスに帯電した特定元素を他の領域に移動させることができる。
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100の構成が、平板形の単セル110を複数備える構成であるが、本発明は、他の構成、例えば国際公開第2012/165409号に記載されているように、略円筒形の単セル110aを複数備える燃料電池スタック100aにも同様に適用可能である。図8は、変形例における燃料電池スタック100aの構成を概略的に示す説明図であり、図9は、図8のIX−IXの位置における燃料電池スタック100aの一部分のXZ断面構成を示す説明図である。図8に示す変形例における燃料電池スタック100aは、Z方向に互いに所定間隔をあけて並べて配置された複数の発電単位102aを備える。複数の発電単位102aは、隣り合う発電単位102a間に配置された集電部870を介して電気的に直列に接続されている。各発電単位102aは、扁平柱形状の外観を有し、電極支持体830と、単セル110aと、インターコネクタ810とを備える。単セル110aは、燃料極840と、電解質層850と、空気極860と、中間層900とを含む。なお、図8および図9に示す変形例におけるZ方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
電極支持体830は、略楕円形状の断面を有する柱状体であり、多孔質材料で形成されている。電極支持体830の内部には、柱状体の延伸方向に延びる複数の燃料ガス流路820が形成されている。燃料極840は、電極支持体830の側面の内、互いに平行な一対の平坦面の一方と、各平坦面の端部同士をつなぐ2つの曲面とを覆うように設けられている。電解質層850は、燃料極840の側面を覆うように設けられている。空気極860は、電解質層850の側面の内、電極支持体830の平坦面上に位置する部分を覆うように設けられている。ただし、電解質層850と空気極860との間には、中間層900が配置されている。また、中間層900と電解質層850との間には、中間層900と電解質層850との相互拡散により生成された固溶体層(図示せず)が存在する。インターコネクタ810は、燃料極840および電解質層850が設けられていない側の電極支持体830の平坦面上に設けられている。集電部870は、発電単位102aの空気極860と、その発電単位102aに隣り合う発電単位102aのインターコネクタ810とを電気的に接続する。燃料電池スタック100aは、さらに、燃料ガスFGが供給される内部空間を有するマニホールド950を備える。マニホールド950の天板952には、複数の開口部950Aが形成されており、複数の開口部950Aのそれぞれに各単セル110aの電極支持体830の下端部が挿入されている。そして、電極支持体830の外周面と開口部950Aとの間に、ガラスシール部960が介在している。ガラスシール部960により、ガラスシール部960を挟んで互いに隣り合う電極支持体830とマニホールド950との間のガスシール性が確保される。空気極860の外側に酸化剤ガスが供給され、マニホールド950を介して電極支持体830に形成された燃料ガス流路820に燃料ガスが供給され、所定の作動温度まで加熱されると、燃料電池スタック100aにおいて発電が行われる。
このような構成の燃料電池スタック100aにおいても、上記実施形態と同様に、少なくとも1つのガラスシール部960において、少なくとも1つの断面が、上述の第1条件から第3の条件の全てを満たすとしてもよい。例えば、ガラスシール部960は、マニホールド950の内部空間に露出するガラスシール部960の下面960Aを含む第1の領域と、該下面960Aから離間し、第1の領域とは異なる第2の領域とが存在する。第2の領域に含まれるガラスは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも1つの特定元素を含む。第1の領域に含まれるガラスは、特定元素を含み、かつ、特定元素の含有率が第2の領域における特定元素の含有率より低い、としてもよい。このような構成でも、ガラスシール部960の外部への特定元素の放出を抑制することができる。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各貫通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各貫通孔108とは別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、貫通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、貫通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおけるガラスシール部に本発明を適用することにより、ガラスシール部の外部への特定元素の放出を抑制することができる。
また、上記実施形態では、接合構造体として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解単セル)や高温(500℃以上)で使用されるガス配管のつなぎ目にも適用可能である。