以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図1を参照して、本実施形態に係る車線変更判定装置の構成を説明する。車線変更判定装置は、物体検出装置1と、自車位置推定装置2と、地図取得装置3と、コントローラ20とを備える。
物体検出装置1は、自車両に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、自車両の周囲の物体を検出する、複数の異なる種類の物体検出センサを備える。物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両の周囲における物体を検出する。物体検出装置1は、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び駐車車両を含む静止物体を検出する。例えば、物体検出装置1は、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートを検出する。
自車位置推定装置2は、自車両に搭載された、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど自車両の絶対位置を計測する位置検出センサを備える。自車位置推定装置2は、位置検出センサを用いて、自車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両の位置、姿勢及び速度を計測する。
地図取得装置3は、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図取得装置3が取得する地図情報には、車線の絶対位置や車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。地図取得装置3は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図取得装置3は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
コントローラ20は、物体検出装置1及び自車位置推定装置2による検出結果及び地図取得装置3による取得情報に基づいて、自車両が走行する車線に他車両が車線変更するか否かを判定する。コントローラ20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、車線変更判定装置として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、車線変更判定装置が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって車線変更判定装置が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
コントローラ20は、複数の情報処理回路として、検出統合部4と、物体追跡部5と、地図内位置演算部6と、情報処理部10aと、情報処理部10bと、車線変更判定部16とを備える。更に、情報処理部10aは、過去軌跡取得部7と、中心距離算出部8と、横速度取得部9と、閾値設定部11とを備える。情報処理部10bは、車線特定部12と、意図予測部13と、軌道予測部14と、尤度算出部15とを備える。
検出統合部4は、物体検出装置1が備える複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
物体追跡部5は、検出統合部4によって検出された物体を追跡する。具体的に、物体追跡部5は、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体を追跡する。なお、異なる時刻に出力された物体の挙動は、コントローラ20内のメモリに記憶され、後述する軌道予測の際に用いられる。
地図内位置演算部6は、自車位置推定装置2により得られた自車両の絶対位置、及び地図取得装置3により取得された地図データから、地図上における自車両の位置及び姿勢を推定する。
過去軌跡取得部7は、物体検出装置1によって検出された物体の過去の軌跡(時系列の位置変化)を取得する。
中心距離算出部8は、物体検出装置1によって検出された物体の中心から、この物体が走行する走行車線の中心線までの距離を算出する。
横速度取得部9は、物体検出装置1によって検出された物体の横速度を取得する。
閾値設定部11は、自車両が走行する走行車線に対して物体が車線変更するか否か判定するための閾値を設定する。詳しくは後述する。
車線特定部12は、物体追跡部5から取得した物体情報や、地図内位置演算部6によって推定された自己位置を用いて、地図上における自車両及び物体の走行車線を特定する。
意図予測部13は、車線特定部12から取得した走行車線に関する情報や道路構造に基づいて、物体が進む可能性があるすべての候補車線を予測する。例えば、物体が走行している走行車線が1車線道路の場合、物体が進む可能性がある候補車線は1つとなる。一方、物体が走行している走行車線が2車線道路の場合、物体が進もうとする候補車線は、そのまま走行車線を直進する車線と、走行車線に隣接する車線の2つがある。意図予測部13は、予測した候補車線を軌道予測部14に出力する。
軌道予測部14は、意図予測部13が予測した候補車線を用いて、物体がその候補車線に進んだ場合の走行軌道を予測する。軌道予測部14は、予測した走行軌道を尤度算出部15に出力する。
尤度算出部15は、軌道予測部14が予測した走行軌道を用いて、物体がその走行軌道に沿って走行する可能性(確率)を算出する。本実施形態では、物体が、予測された走行軌道に進む可能性を尤度とよぶ。尤度は、物体の位置や横速度などによって時々刻々と変化するものである。尤度算出部15は、所定時間における尤度の変化量も算出する。
車線変更判定部16は、閾値設定部11によって設定された閾値と、尤度算出部15によって算出された尤度の変化量とを用いて、尤度の変化量が閾値を超えた場合に物体が自車両が走行する走行車線に車線変更すると判定する。なお、自車両が走行する走行車線を、以下では単に自車走行車線とよぶ。
次に図2及び図3を参照して、車線変更判定方法の一例について説明する。図2の時刻T1のシーンは、3車線道路において、自車両30が右側車線を走行しており、自車両30の左後方に位置する他車両31が中央車線を走行しているシーンである。物体検出装置1が他車両31を検出すると、意図予測部13は、道路構造に基づいて他車両31が進む可能性がある候補車線を予測する。図2に示すシーンでは、意図予測部13は、他車両31が進む可能性がある候補車線として、直進車線、右側車線、左側車線の3つの車線を予測する。
続いて、図2に示すように軌道予測部14は、他車両31が予測した3つの候補車線に進んだ場合の走行軌道60,61,62を予測する。走行軌道60は、右側車線に車線変更する軌道である。走行軌道61は、そのまま直進する軌道である。走行軌道62は、左側車線に車線変更する軌道である。次に、尤度算出部15は、各時刻T1,T2,T3における尤度を算出する。ここで、図3を参照して尤度について説明する。図3に示すグラフG1,G2,G3はそれぞれ、図2に示す走行軌道60,61,62に対応する。つまり、図3に示すグラフG1は、図2に示すシーンにおいて、他車両31が右側車線に車線変更する尤度Lの変化量を示す。同様に、図3に示すグラフG2は、他車両31がそのまま直進する尤度Lの変化量を示し、グラフG3は、他車両31が左側車線に車線変更する尤度Lの変化量を示す。図3の時刻Tにおいて、尤度LはグラフG2がもっとも高い。これは、時刻T1においては、他車両31はそのまま直進する尤度がもっとも高いと判断されたことを意味する。尤度算出部15は、例えば、走行車線における他車両31の位置や他車両31の横速度などを用いて尤度Lを算出する。図2の時刻T1において、他車両31が走行車線の中心を走行していて、かつ他車両31の横速度がほとんどない場合、尤度算出部15によって算出される尤度は、図3の時刻T1に示す尤度となる。なお、走行車線における他車両31の位置とは、自車走行車線に対する他車両31の位置でもよく、他車両31が走行する走行車線に対する位置でもよい。なお、他車両31が走行する車線を、以下では単に他車走行車線とよぶ。
続いて図2の時刻T2に示すように、他車両31が右側車線に少し侵入してきた場合、中央車線の中心線に対する他車両31の位置は右側にずれ、他車両31の横速度も右方向に大きくなる。よって、尤度算出部15は、図3に示すように、他車両31が右側車線に車線変更する可能性が高くなったと判断し、尤度を上昇させる(グラフG1)。反対に、尤度算出部15は、他車両31が中央車線をそのまま直進する可能性や、左側車線に車線変更する可能性は低くなったと判断し、これらの尤度を減少させる(グラフG2、グラフG3)。図3に示す尤度の変化量ΔLは、時刻T1から時刻T2までのグラフG1の尤度Lの変化量である。車線変更判定部16は、尤度の変化量ΔLと、閾値設定部11によって設定された閾値を比較し、尤度の変化量ΔLが閾値を超えた場合に他車両31が右側車線(自車走行車線)に車線変更すると判定する。例えば、図3に示すように、時刻T2における尤度の変化量ΔLが閾値THと同じであったとすると、他車両31が時刻T2に示す位置からさらに右側車線に侵入した際に、尤度の変化量ΔLが閾値THを超えることになる。このとき、車線変更判定部16は、他車両31が自車走行車線に車線変更すると判定する。なお、尤度の変化量ΔLと閾値THとの比較において、車線変更判定部16は、尤度の変化量ΔLが閾値TH以上となった場合に他車両31が自車走行車線に車線変更すると判定してもよい。この場合、車線変更判定部16は、時刻T2において他車両31が自車走行車線に車線変更すると判定することになる。
次に、図4のフローチャートを参照して、車線変更判定装置の一動作例について説明する。
ステップS101において、物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両の周囲における物体(例えば、他車両)を検出する。ステップS102に処理が進み、検出統合部4は、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各他車両に対して一つの検出結果を出力する。そして、物体追跡部5が、検出及び統合された各他車両を追跡する。
ステップS103に処理が進み、自車位置推定装置2は、位置検出センサを用いて、自車両の絶対位置を計測する。ステップS104に処理が進み、地図取得装置3は、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。ステップS105に処理が進み、地図内位置演算部6は、ステップS103で計測された自車両の絶対位置、及びステップS1045で取得された地図データから、地図上における自車両の位置及び姿勢を推定する。
ステップS106に処理が進み、閾値設定部11は、自車走行車線に対して他車両が車線変更するか否か判定するための閾値THを設定する。ステップS107に処理が進み、意図予測部13は、他車両が進む可能性があるすべての候補車線を予測する。ステップS108に処理が進み、軌道予測部14は、ステップS107で予測された候補車線に他車両が進んだ場合の走行軌道を予測する。ステップS109に処理が進み、尤度算出部15は、ステップS108で予測された走行軌道を用い、他車両がその走行軌道に沿って走行する尤度Lを算出する。例えば、尤度算出部15は、自車走行車線に対する他車両の位置や他車両の横速度などを用いて尤度Lを算出する。例えば、他車両の位置が自車走行車線に近づくほど、他車両が自車走行車線に車線変更する尤度Lは高くなり、他車両の位置が自車走行車線から離れるほど、他車両が自車走行車線に車線変更する尤度Lは低くなる。ただし、これに限定されない。尤度Lは、位置だけでなく、横速度などを含めて算出されるからである。
ステップS110に処理が進み、車線変更判定部16は、尤度の変化量ΔLが閾値THを超えたか否かを判定する。尤度の変化量ΔLが閾値THを超えた場合は、ステップS111に処理が進み、車線変更判定部16は、他車両が自車走行車線に車線変更すると判定する。一方、尤度の変化量ΔLが閾値を超えていない場合は、処理はステップS109に戻る。
以上説明したように、本実施形態に係る車線変更判定装置によれば、以下の作用効果が得られる。
車線変更判定装置は、物体(例えば、他車両)の動きを連続的に検出し、他車両が自車走行車線(第1走行車線)に車線変更する尤度Lを算出する。そして、車線変更判定装置は、所定時間における尤度の変化量ΔLを算出し、尤度の変化量ΔLが閾値THを超えた場合に他車両が車線変更すると判定する。車線変更判定装置は、尤度の変化量ΔLが閾値THを超えない場合は、他車両は車線変更しないと判定する。これにより、車線変更判定装置は、車線変更の誤判定を抑制できる。
なお、閾値設定部11が設定する閾値THは、実験やシミュレーションを通じて求めることができるが、以下に示す方法を用いて求めることもできる。以下では、閾値THの設定方法について詳細に説明する。
[変形例]
図5を参照して、本実施形態の変形例について説明する。変形例1では、車線変更判定装置が車線変更時間算出部17をさらに備える。
車線変更時間算出部17は、物体検出装置1によって検出された物体(例えば、他車両)が自車走行車線に車線変更する際に必要な時間を算出する。車線変更する際に必要な時間を、以下では単に車線変更時間という場合がある。車線変更時間算出部17は、自車走行車線に対する他車両の位置や他車両の横速度などを用いて車線変更時間を算出する。なお、本実施形態において、車線変更時間とは、車線変更開始から、車線変更完了までの時間である。
次に、図6及び7を参照して車線変更時間を用いた閾値の一設定方法について説明する。
図6に示すように、自車両30の左前方を他車両31が走行している場合、他車両31が進もうとする候補車線は、走行車線をそのまま直進する車線と、走行車線に隣接する右側車線(自車走行車線)の2つがある。他車両31が自車走行車線に車線変更する場合、複数の走行軌道が考えられる。複数の走行軌道とは、図6に示す走行軌道60,61,62である。走行軌道61は、一般的な車線変更の軌道である。他車両31が走行軌道61に沿って車線変更する場合、車線変更時間は例えば、3秒である。なお、この3秒という数字は、一般に車線変更に要する時間やデータベース、学習データなどから求めることができるが、あくまでも例示であり3秒に限定されるものではない。例えば、車線変更時間は、車線幅が広ければ4秒でもよく、車線幅が短ければ2秒でもよい。また、他車両31の属性(スポーツカーやトラック)によって車線変更時間を変更してもよい。また、走行軌道60は、走行軌道61より早く車線変更する軌道である。一方、走行軌道62は、走行軌道61より遅く車線変更する軌道である。換言すれば、走行軌道60は、車線変更時間が短い軌道であり、走行軌道62は、車線変更時間が長い軌道である。閾値設定部11は、走行軌道60,61,62に応じて、つまり車線変更時間の長さに応じて、閾値を設定する。この点について図7を参照して説明する。図7に示すグラフG1,G2,G3はそれぞれ、図2に示す走行軌道60,61,62に対応する。
図7に示すように、閾値設定部11は、走行軌道61に対して閾値THを設定し、走行軌道60に対して閾値TH1を設定し、走行軌道62に対して閾値TH2を設定する。これらの閾値は、閾値TH1<閾値TH<閾値TH2という関係を有する。グラフG2の閾値THは、一般的な車線変更時間に基づく閾値である。一般的な車線変更時間に基づく閾値を、以下では基準閾値THとよぶ。閾値設定部11は、走行軌道60に対して基準閾値THより小さい閾値TH1を設定し、走行軌道62に対して基準閾値THより大きい閾値TH2を設定する。このように閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、適切に車線変更を判定することができる。すなわち、他車両31が走行軌道60に沿って自車走行車線に車線変更する場合、車線変更時間は短いため、より早く車線変更の有無を判定する必要がある。そこで、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値TH1を設定する。これにより、尤度の変化量ΔLが閾値TH1を超えるまでの時間が短縮され、車線変更判定部16は、車線変更の判定を早期に行うことができる。また、車線変更時間が短いということは、他車両31の位置変化や横速度変化が急であることを意味し、図7に示すように単位時間における尤度の変化量ΔLの上昇量も高くなる。尤度の変化量ΔLが一旦上昇を始めると、そのまま上昇を続ける傾向にある。そのため、車線変更時間が所定時間より短い場合は、閾値を小さくして車線変更の判定を早期に行ったとして、他車両31は車線変更する可能性が高いため車線変更の精度を保つことができる。つまり、車線変更判定部16は、車線変更の誤判定を抑制しながら、早期に車線変更の判定を行うことができる。
また、他車両31が走行軌道62に沿って自車走行車線に車線変更する場合、車線変更時間は長いため、閾値設定部11は、基準閾値THより大きい閾値TH2を設定する。車線変更時間は長いということは、他車両31の位置変化や横速度変化が緩やかであることを意味し、図7に示すように単位時間における尤度の変化量ΔLの上昇量も緩やかになる。そのため、車線変更時間が所定時間より長い場合は、閾値を大きくして車線変更の判定することにより、車線変更判定部16は、精度よく車線変更の判定することができる。
なお、図6に示す走行軌道60,61,62の内、どの軌道に沿って他車両31が自車走行車線に車線変更するかについては、閾値設定部11は、尤度の変化量ΔLに基づいて予測することができる。例えば、閾値設定部11は、単位時間における尤度の変化量ΔLが大きい場合は、車線変更時間が短いと判定し、他車両31が走行軌道60に沿って自車走行車線に車線変更すると予測する。このとき、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値TH1を設定する。一方、閾値設定部11は、単位時間における尤度の変化量ΔLが小さい場合は、車線変更時間が長いと判定し、他車両31が走行軌道62に沿って自車走行車線に車線変更すると予測する。このとき、閾値設定部11は、基準閾値THより大きい閾値TH2を設定する。
また、閾値設定部11は、自車両30の走行環境に応じて閾値を変更してもよい。図8Aに示すように、自車走行車線において、自車両30の前方に他車両32(先行車両)が走行している場合、他車両31が走行軌道61(一般的な車線変更の軌道)に沿って車線変更すると、他車両31と他車両32が接触するおそれがある。この場合、他車両31は、走行軌道61より短い時間で車線変更できる走行軌道60に沿って車線変更すると考えられる。閾値設定部11は、単位時間における尤度の変化量ΔLが大きい場合は、車線変更時間が短いと判定し、他車両31が走行軌道60に沿って自車走行車線に車線変更すると予測する。換言すれば、閾値設定部11は、単位時間における尤度の変化量ΔLが大きい場合は、他車両31が自車両30と他車両32との間に車線変更する意図があると判定する。そして、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値TH1を設定する。これにより、車線変更判定部16は、車線変更の誤判定を抑制しながら、早期に車線変更の判定を行うことができる。
また、図8Bに示すように、他車両31が走行する走行車線において、他車両31の前方に低速の他車両32が走行している場合、物体追跡部5は、他車両31と他車両32とのTTC(Time To Collision)を算出する。TTHが所定値(TTCth)より小さい場合、または他車両31が大きく減速していない場合は、他車両31は他車両32との接触を回避するため、早めに車線変更することが考えられる。閾値設定部11は、単位時間における尤度の変化量ΔLが大きい場合は、車線変更時間が短いと判定し、他車両31が走行軌道60に沿って自車走行車線に車線変更すると予測する。そして、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値TH1を設定する。これにより、車線変更判定部16は、車線変更の誤判定を抑制しながら、早期に車線変更の判定を行うことができる。なお、TTCthは、予め実験やシミュレーションを通じて求めることができる。
次に、図9のフローチャートを参照して、車線変更時間を用いた閾値の一設定方法について説明する。
ステップS201において、閾値設定部11は、基準閾値THを設定する。基準閾値THとは、一般的な車線変更時間の際に用いる閾値である。ステップS202,S203に処理が進み、物体検出装置1は、自車両30の周囲の混雑情報を取得する。混雑が発生している場合、処理はステップS209に進み、混雑が発生していない場合、処理はステップS204に進む。
ステップS204において、車線変更時間算出部17は、物体検出装置1によって検出された物体(例えば、他車両)が自車走行車線に車線変更する際に必要な時間を算出する。車線変更時間算出部17は、他車両の位置、横速度、ヨー角などを用いて車線変更時間を算出する。ステップS205に処理が進み、閾値設定部11は、ステップS204で算出された車線変更時間と基準時間を比較する。基準時間とは、一般的な車線変更時間であり、図6で説明したように例えば3秒である。車線変更時間が基準時間より短い場合、処理はステップS206に進み、車線変更時間が基準時間以上の場合、処理はステップS207に進む。
ステップS206において、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。車線変更時間が基準時間より短いということは、他車両は急に車線変更してくる可能性があることを意味する。したがって、このように閾値を小さくすることにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。その後、処理はステップS215に進み、閾値設定部11は、設定した閾値を車線変更判定部16に出力する。
ステップS207において、閾値設定部11は、ステップS204で算出された車線変更時間と基準時間を比較する。車線変更時間が基準時間より長い場合、処理はステップS208に進み、車線変更時間が基準時間に等しい場合、処理はステップS212に進む。ステップS208において、閾値設定部11は、基準閾値THより大きい閾値を設定する。車線変更時間が基準時間より長いということは、他車両はゆっくり車線変更してくる可能性があることを意味する。したがって、このように閾値を大きくすることにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を適切に行うことができる。その後、処理はステップS215に進む。ステップS212において、閾値設定部11は、基準閾値THを変更しない。車線変更時間が基準時間に等しいため、基準閾値THを変更しなくても車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定をできるからである。その後、処理はステップS215に進む。
ステップS209において、物体検出装置1は、自車走行車線の前方において、先行車両が走行しているか否かを判定する。先行車両が走行している場合、処理はステップS210に進み、先行車両が走行していない場合、処理はステップS211に進む。ステップS210において、車線変更時間算出部17は、他車両が自車両と先行車両との間に車線変更する際に必要な時間を算出する。その後、処理はステップS205に進む。
ステップS211において、物体検出装置1は、他車両が走行する走行車線において、他車両の前方に低速の先行車両が走行しているか否かを判定する。先行車両が走行している場合、処理はステップS213に進み、先行車両が走行していない場合、処理はステップS212に進む。ステップS213において、物体追跡部5は、他車両と先行車両とのTTCを算出する。TTCがTTCthより小さい場合、処理はステップS206に進み、TTCがTTCth以上の場合、処理はステップS212に進む。TTCに応じて閾値を変更することにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を適切に行うことができる。
以上説明したように、本実施形態に係る車線変更判定装置の変形例によれば、以下の作用効果が得られる。
車線変更判定装置は、物体(例えば、他車両)の動きを連続的に検出し、検出した他車両の位置に基づいて、他車両が自車走行車線に車線変更する際に必要な時間を算出する。そして、車線変更判定装置は、算出した車線変更時間に基づいて閾値を設定する。これにより車線変更判定装置は、他車両の車線変更時間に合った適切な車線変更判定ができる。具体的には、車線変更時間が短い場合、他車両の車線変更時間に合わせて自車両が急動作を必要とする可能性が高くなるため、車線変更の判定を適切なタイミングで行う必要がある。本実施形態では、車線変更時間に基づいて閾値を設定するため、車線変更判定装置は、車線変更時間が短い場合に合った適切なタイミングで車線変更の判定を下すことができる。
また、車線変更判定装置は、車線変更時間が短いほど閾値を小さくする。上述したように、車線変更時間が短い場合、他車両の車線変更時間に合わせて自車両が急動作を必要とする可能性が高くなるため、車線変更の判定を適切なタイミングで行う必要がある。本実施形態では、車線変更時間が短いほど閾値を小さくするため、車線変更時間が短い場合であっても、車線変更判定装置は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。また、車線変更時間が長い場合は、閾値が大きくなるため、他車両が車線変更すると判定するまでの時間を長くすることができる。このため、車線変更判定装置は、車線変更の判定に使用する尤度Lを適切に算出できるようになり、車線変更の判定精度を向上させることができる。
また、車線変更判定装置は、車線変更時間が所定値(例えば3秒)より短い場合に、閾値を小さくする。車線変更時間が短いということは、他車両の位置変化や横速度変化が急であることを意味し、図7に示すように単位時間における尤度の変化量ΔLの上昇量も高くなる。尤度の変化量ΔLが一旦上昇を始めると、そのまま上昇を続ける傾向にある。そのため、車線変更時間が所定値より短い場合、車線変更判定装置が閾値を小さくして車線変更の判定を早期に行ったとして、他車両は車線変更する可能性が高いため、車線変更の精度を保つことができる。
また、車線変更判定装置は、自車両の前方に先行車両が走行している場合、他車両が自車両と先行車両との間へ車線変更するか否かを判定する。そして、車線変更判定装置は、他車両が自車両と先行車両との間へ車線変更すると判定した場合、閾値を小さくする。他車両が、自車両と自車両の先行車両との間へ車線変更する場合、一旦車線変更を開始した後は、車線変更を継続する可能性が高い。また、他車両が車線変更しない場合は、尤度の変化量ΔLが所定の上昇を見せることは少ない。したがって、車線変更判定装置は、閾値を小さくしたとしても、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。
なお、変形例1では車線変更時間について、車線変更開始から、車線変更完了までの時間と説明した。例えば、図10Aに示すように、車線変更時間とは、他車両31が位置P1から、位置P2まで移動するまでの時間として定義できる。位置P1及びP2において、他車両31は走行車線の中心線40上に位置するものとする。ところで、図10Bに示すように、自車走行車線において、駐車車両33,34,35が存在している場合、他車両31は、位置P2において、駐車車両35との接触を回避するために中心線40より左側を走行する可能性がある。そこで、図10Bに示すように、他車両31が位置P1から位置P2まで移動するまでの時間を車線変更時間としてもよい。図10Bに示すシーンの車線変更時間は、一般的な車線変更時間より短くなるため、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。これにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。
また、図11Aに示すように、自車両30と接触する可能性がある位置まで移動する際に要する時間を車線変更時間としてもよい。図11Aに示すように、他車両31が位置P1から位置P2まで進み、かつ自車両30が他車両31より高速で移動している場合、接触点50で自車両30と他車両31が接触する可能性がある。そこで、図11Aに示すように、他車両31が位置P1から位置P2まで移動するまでの時間を車線変更時間としてもよい。図11に示すシーンの車線変更時間は、一般的な車線変更時間より短くなるため、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。これにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。さらに、自車両30は、他車両31との接触を回避できる。同様に、図11Bに示すように、他車両31が位置P1から位置P2まで進み、かつ自車両30が他車両31より高速で移動している場合、接触点50で自車両30と他車両31が接触する可能性がある。そこで、図11Bに示すように、他車両31が位置P1から位置P2まで移動するまでの時間を車線変更時間としてもよい。車線変更判定部16は、他車両31が走行区分線(例えば白線)を跨ぎ終える前に、他車両31が自車走行車線に車線変更すると判定することができる。
次に、図12〜図15を参照して、交差点における閾値の一設定方法について説明する。
図12に示すように、交差点の内側に他車両32が存在している場合、他車両32が交差点の内側で車線変更する可能性は低い。そこで、閾値設定部11は、他車両32に対して基準閾値THより大きい閾値を設定する。他車両32の尤度の変化量ΔLが基準閾値THより大きい閾値を超えない限り、車線変更判定部16は、他車両32が車線変更しないと判定する。よって、このように閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、他車両32の車線変更の誤判定を抑制できる。
また、図12に示すように、交差点の外側に他車両31が存在している場合、閾値設定部11は、他車両31から交差点までの距離に応じて閾値を設定する。具体的には、図12に示すように、他車両31から交差点までの距離が所定距離D以下の場合、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。他車両31から交差点までの距離が所定距離D以下の場合、他車両31が右折のために車線変更する可能性が高いため、他車両31が一旦車線変更を開始した後は、そのまま車線変更を続ける可能性が高い。したがって、閾値設定部11が閾値を小さくしたとしても、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。なお、所定距離Dは、特に限定されないが例えば50mである。また、交差点の内側は、特に限定されないが、例えば横断歩道(図示しない)で囲まれた領域や、停止線(図示しない)で囲まれた領域である。交差点の外側とは、交差点の内側を除いた交差点周辺の領域である。なお、閾値設定部11は、他車両31から交差点までの距離の代わりに、自己位置が交差点付近か否かを判定し、自己位置が交差点付近と判定した場合に、閾値を小さくしてもよい。
また、図13に示すように、他車両31が、自車走行車線から2車線離れた車線を走行している場合、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。一般的に、2車線以上離れた走行車線から車線変更(ダブルレーンチェンジ)する場合、他車両31はそのまま自車走行車線に車線変更してくる可能性が高い。そのため、2車線以上離れた走行車線から他車両31の車線変更意図を検出した場合は閾値を小さくすることにより、車線変更判定部16は、適切なタイミングで車線変更の判定を行うことできる。
また、図14,図15に示すように、他車両31が自車走行車線から2車線離れた車線を走行している場合、閾値設定部11は、他車両31の横速度やヨー角を用いて、閾値を設定してもよい。他車両31が自車走行車線にダブルレーンチェンジするのではなく、自車走行車線の隣接車線(中央車線)に車線変更する場合、他車両31は隣接車線において姿勢をまっすぐにする必要がある。図14と図15を比較した場合、図15に示すシーンでは、図14に示すシーンよりも、姿勢をまっすぐにするために、より大きな操舵が必要となる。これは、図15の他車両31の横速度またはヨー角が大きいことを意味し、他車両31が自車走行車線にダブルレーンチェンジする可能性が高いことを意味する。よって、閾値設定部11は、他車両31の横速度またはヨー角が大きい場合は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。これにより、車線変更判定部16は、適切なタイミングで車線変更の判定を行うことできる。なお、図13〜図15に示すシーンにおいて、他車両31から交差点までの距離が所定距離D以下の場合、閾値設定部11はさらに閾値を小さくしてもよい。
次に、図16のフローチャートを参照して、交差点における閾値の一設定方法について説明する。なお、図16に示すS301,S304,S308,S311,S312は、それぞれ図9に示すS201,S208,S206,S212,S215と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
ステップS302において、物体検出装置1は、交差点付近に物体(例えば、他車両)が存在するか否かを検出する。交差点付近に他車両が存在する場合、処理はステップS303に進み、交差点付近に他車両が存在しない場合、処理は待機する。ステップS303において、交差点の内側に他車両が存在している場合、処理はステップS304に進み、閾値設定部11は、その他車両に対して基準閾値THより大きい閾値を設定する。このように閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、他車両32の車線変更の誤判定を抑制できる。一方、交差点の内側に他車両が存在しない場合、すなわち、交差点の外側に他車両が存在している場合、処理はステップS305に進み、物体追跡部5は、他車両から交差点までの距離を算出する。
ステップS306に処理が進み、他車両から交差点までの距離が所定距離D以下の場合、処理はステップS307に進み、所定距離Dより大きい場合、処理はステップS305に戻る。ステップS307において、物体追跡部5は、他車両が走行する走行車線が自車走行車線と2車線以上離れているか否かを判定する。他車両が走行する走行車線が自車走行車線と2車線以上離れていない場合、つまり、他車両が自車走行車線の隣接車線を走行している場合、処理はステップS308に進む。一方、他車両が走行する走行車線が自車走行車線と2車線以上離れている場合、処理はステップS309に進み、車線変更判定部16は、他車両が車線変更中か否かを判定する。例えば、車線変更判定部16は、他車両の位置、横速度、ヨー角などを用いて、他車両の尤度の変化量ΔLが閾値を超えた場合に、車線変更中と判定する。他車両が車線変更中と判定された場合、処理はステップS310に進み、閾値設定部11は、他車両の横速度が所定値以上か否かを判定する。他車両の横速度が所定値以上であれば、他車両が自車走行車線にダブルレーンチェンジする可能性が高いことを意味する。よって、閾値設定部11は、他車両の横速度が所定値以上の場合、基準閾値THより小さい閾値を設定する。なお、閾値設定部11は、横速度の他にヨー角に基づいて閾値を設定してもよい。ステップS309において、他車両が車線変更中と判定されない場合、またはステップS310において、他車両の横速度が所定値より小さい場合、処理はステップS311に進む。
以上説明したように、車線変更判定装置は、自己位置を検出し、自己位置が交差点付近か否かを判定する。そして、車線変更判定装置は、自己位置が交差点付近と判定した場合に、閾値を小さくする。一般的に、他車両が交差点付近で車線変更する場合、右左折や合流、分流に伴った車線変更となり、加えて、交差点付近で車線変更が不要な場合、他車両が車線変更のような挙動を見せることは少ない。交差点付近においては、他車両が一旦車線変更を開始した後は、そのまま車線変更を続ける可能性が高い。したがって、閾値を小さくしたとしても、車線変更判定装置は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を早期に行うことができる。なお、交差点付近とは、交差点の内側を除いた交差点周辺の領域である。
また、車線変更判定装置は、自車走行車線から2車線以上離れた走行車線からの他車両の車線変更を検出した場合、閾値を小さくする。一般的に、2車線以上離れた走行車線から車線変更する場合、そのまま自車走行車線に車線変更(ダブルレーンチェンジ)してくる可能性が高い。2車線以上離れた走行車線からの他車両の車線変更を検出した場合に閾値を低くすることにより、車線変更判定装置は、2車線以上離れた走行車線から車線変更する他車両に対して、適切なタイミングで自車走行車線に車線変更するか否か判定を行うことができる。
次に、図17A〜図20を参照して、過去軌跡を用いた閾値の一設定方法について説明する。図17Aに示す距離ΔDは、中心線40から他車両31の中心までの距離を示すものであり、距離ΔDの符号は自車走行車線に向かう方向をプラス、自車走行車線から離れる方向をマイナスとする。以下の図においても同様である。
図17Aに示すように、過去軌跡取得部7によって他車両31の過去軌跡70が取得されている場合、閾値設定部11は、過去軌跡70を用いて閾値を設定する。なお、過去軌跡70は、他車両31の中心を通る軌跡である。図17Aに示すように、過去軌跡70から、他車両31は、中心線40より左側を所定距離走行していることがわかる。この場合、他車両31は次の分岐点で左折する可能性が高い。このように、他車両31が、中心線40より左側(距離ΔD<0)を所定距離以上走行している場合、閾値設定部11は、図18に示すように、基準閾値THより大きな閾値を設定する。
また、図17Bに示すように、過去軌跡70から、他車両31は、中心線40より右側を所定距離走行していることがわかる。この場合、他車両31は自車走行車線に車線変更する可能性が高い。このように、他車両31が、中心線40より右側(距離ΔD>0)を所定時間走行している場合、閾値設定部11は、図18に示すように、基準閾値THより小さい閾値を設定する。
このように、車線変更判定装置は、他車両31が、自車走行車線に隣接する走行車線(第2走行車線)を走行する場合、他車両31の過去軌跡70から他車両31の位置を連続的に検出し、他車両31の位置に応じて閾値を設定する。一般的に、車両が走行車線を走行する際、走行車線内を走行する位置には傾向がある(例えば、右寄り、左寄り、真ん中等)。そのため、自車走行車線に対する他車両31の位置に基づいて車線変更を判定する場合、車線変更判定装置は、他車両31が走行する位置の傾向に基づいて閾値を設定することにより、他車両31に応じた適切なタイミングで車線変更するか否か判定を行うことができる。
なお、他車両31の過去軌跡70が取得できない場合、閾値設定部11は次のように閾値を設定することができる。例えば、図19Aに示すように、他車両31の過去軌跡が取得できず、所定のタイミングで他車両31を偶然検出した場合、他車両31がこれから進む方向及び挙動は複数考えられる。例えば、他車両31はまっすぐ走行するケース、他車両31は現在走行中の車線の左側に隣接する左側車線(図示せず)から車線変更してきて姿勢をまっすぐにしようとしているケース、他車両31は左側車線から車線変更してきて、かつ自車走行車線にダブルレーンチェンジしようとしているケース、などである。なお、図19Aに示す矢印は、他車両31は現在走行中の車線の左側に隣接する左側車線から車線変更してきて姿勢をまっすぐにしようとしている軌道である。図19Aに示すシーンでは、他車両31は中心線40より左側に位置しているが、図19Bに示すように、中心線40より右側に位置する場所において他車両31が偶然検出される場合もある。図19Bにおいても図19Aと同様に、他車両31がこれから進む方向及び挙動は複数考えられる。例えば、他車両31はまっすぐ走行するケース、他車両31が自車走行車線に車線変更しようとしているケース、などである。なお、図19Bに示す矢印は、他車両31が自車走行車線に車線変更しようとしている軌道である。
図19A及び図19Bの場合、閾値設定部11は、図20に示すように、距離ΔD及び他車両31の横速度Vyに応じて閾値を設定する。横速度Vyは、第1横速度Vth1、第2横速度Vth2、及び第3横速度Vth3と比較する。これらの横速度は、第1横速度Vth1<第2横速度Vth2<第3横速度Vth3という関係を有する。
図20に示すグラフG10は、他車両31の横速度Vyが第1横速度Vth1より小さい場合を示す。グラフG10の場合、他車両31の横速度Vyは第1横速度Vth1より小さいため、距離ΔD<0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより大きな閾値を設定する。一方、距離ΔD>0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。
図20に示すグラフG11は、他車両31の横速度Vyが第1横速度Vth1より大きく、かつ第2横速度Vth2より小さい場合を示す。グラフG11の場合、他車両31の横速度Vyは第1横速度Vth1より大きいため、距離ΔD<0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより大きな閾値を設定する。このとき、閾値設定部11は、グラフG10よりは小さい閾値を設定する。横速度Vyが第1横速度Vth1より大きいにもかかわらず、他車両31が距離ΔD<0の領域に位置しているということは、他車両31は車線の中心に戻ろうと操舵している場合が考えられるからである。一方、距離ΔD>0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。このとき、閾値設定部11は、グラフG10よりも小さい閾値を設定する。横速度Vyが第1横速度Vth1より大きく、かつ他車両31が距離ΔD>0の領域に位置しているということは、他車両31が自車走行車線に車線変更する可能性が高いからである。
図20に示すグラフG12は、他車両31の横速度Vyが第2横速度Vth2より大きく、かつ第3横速度Vth3より小さい場合を示す。グラフG12の場合、他車両31の横速度Vyは第2横速度Vth2より大きいため、距離ΔD<0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THと同じ閾値を設定する。横速度Vyが第2横速度Vth2より大きく、かつ他車両31が距離ΔD<0の領域に位置しているということは、他車両31が車線の中心に戻ろうと操舵している場合と、他車両31が自車走行車線に車線変更する場合の両方が考えられるからである。そこで、閾値設定部11は、車線変更判定の誤判定を抑制しつつ、適切なタイミングで車線変更を判定するために、基準閾値THと同じ閾値を設定する。一方、距離ΔD>0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。このとき、閾値設定部11は、グラフG11よりも小さい閾値を設定する。横速度Vyが第2横速度Vth2より大きく、他車両31が距離ΔD>0の領域に位置しているということは、他車両31が自車走行車線に車線変更する可能性が高いからである。
図20に示すグラフG13は、他車両31の横速度Vyが第3横速度Vth3より大きい場合を示す。グラフG13の場合、他車両31の横速度Vyは第3横速度Vth3より大きいため、距離ΔD<0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。横速度Vyが第3横速度Vth3より大きく、かつ他車両31が距離ΔD<0の領域に位置しているということは、他車両31は現在走行中の車線の左側に隣接する左側車線から車線変更してきて、さらに自車走行車線にダブルレーンチェンジする可能性が高いからである。グラフG13において距離ΔDがマイナスから0に近づくにつれて閾値が上昇する理由は、他車両31がダブルレーンチェンジではなく車線の中心に戻ろうと操舵している場合が考えられるからである。グラフG13では、他車両31の横速度Vyが第3横速度Vth3より大きく、かつ他車両31が自車走行車線から離れているほど、閾値設定部11は、閾値を小さくする。一方、距離ΔD>0の領域では、閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。このとき、閾値設定部11は、グラフG12よりも小さい閾値を設定する。横速度Vyが第3横速度Vth3より大きく、他車両31が距離ΔD>0の領域に位置しているということは、他車両31が自車走行車線に車線変更する可能性が高いからである。以上説明したように、他車両31の過去軌跡が取得できない場合でも、他車両31の横速度Vyに応じて閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を適切に行うことができる。
次に、図21のフローチャートを参照して、過去軌跡を用いた閾値の一設定方法について説明する。なお、図21に示すS401,S407,S408,S410は、それぞれ図9に示すS201,S208,S206,S215と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
ステップS402において、中心距離算出部8は、他車両の位置から他車両が走行する走行車線の中心線までの距離を算出する。ステップS403に処理が進み、過去軌跡取得部7は、他車両の過去軌跡を取得する。ステップS404に処理が進み、過去軌跡取得部7は、取得した過去軌跡が所定距離以上か否かを判定する。換言すれば、過去軌跡取得部7は、過去軌跡が所定時間以上取得できているか否かを判定する。
ステップS405において、中心距離算出部8は、ステップS402で算出した中心線までの距離ΔDがマイナスか否かを判定する。距離ΔDがマイナスである場合、他車両が、中心線より左側を走行しているため、ステップS407において閾値設定部11は、基準閾値THより大きな閾値を設定する。なお、中心線より左側とは、中心線より右側と比較して、自車走行車線から遠い位置をいう。一方、距離ΔDがプラスである場合、他車両が、中心線より右側を走行しているため、ステップS408において閾値設定部11は、基準閾値THより小さい閾値を設定する。なお、中心線より右側とは、中心線より左側と比較して、自車走行車線に近い位置をいう。このように、他車両の過去軌跡から他車両の位置を連続的に検出し、他車両の位置に応じて閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、車線変更の判定を適切に行うことができる。
ステップS406において、横速度取得部9は、他車両の横速度を取得する。処理はステップS409に進み、閾値設定部11は、ステップS406で取得された横速度に基づいて閾値を設定する。このように他車両の過去軌跡が取得できない場合でも、他車両の横速度に基づいて閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保ちつつ、他車両のダブルレーンチェンジなどを適切に判定することできる。
次に、図22A及び図22Bを参照して、自己位置の検出精度に応じた閾値の一設定方法について説明する。
本実施形態では、自己位置を推定する際に、GPSを用いると説明した。GPSを用いる場合、GPS衛星の検出数に応じて位置精度が変化する。一般的に、GPS衛星を多く検出できれば、自己位置は精度よく推定できると考えられる。しかし、常にこの理論が成り立つとは限らない。そこで、本実施形態では、GPS衛星の検出数に加え、自車計画経路と地図上の自己位置との距離差を用いて、地図上の自己位置のずれを検出し、この自己位置のずれに応じて閾値を設定する。なお、本実施形態では、GPS衛星を4つ検出できれば、自己位置を精度よく推定できると説明するが、GPS衛星の検出数は例示であり、これに限定されるものではない。
図22Aに示すシーンは、自車位置推定装置2によって検出されたGPS衛星の数が4つの場合を示す。自車位置推定装置2は、予め設定された自車計画経路80と、地図上の自己位置81の距離差を比較する。自車計画経路80とは、例えばナビゲーション装置によって設定された目的地までの経路であり、車線の中心線を通る経路である。図22Aに示すように、自車計画経路80と、地図上の自己位置81の距離差はゼロである。このように、取得されたGPS衛星情報が4つであり、かつ自車計画経路80と、地図上の自己位置81との距離差がゼロである場合は、地図上の自己位置のずれはなく、自車位置推定装置2によって推定された自己位置は精度がよいものとなる。自己位置の検出精度が高いということは、他車両31及び他車両32の過去軌跡70及び71も精度よく検出できていることを意味する。そこで、図22Aに示すように自己位置の検出精度が高い場合、閾値設定部11は、他車両31及び他車両32の過去軌跡70及び71に基づいて閾値を設定する。例えば、他車両31の過去軌跡70のばらつき度合いは少ないため、閾値設定部11は、他車両31に対して基準閾値THを設定する。一方、図22Aに示すように、他車両32の過去軌跡71のばらつき度合いは、他車両31の過去軌跡70のばらつき度合いより大きい。この場合、閾値設定部11は、他車両32に対して基準閾値THより大きい閾値を設定する。所定のふらつきがある他車両32は、車線変更しないにもかかわらず単に自車走行車線に近づくことがある。そのため、他車両32が車線変更するか否かを精度よく判定する必要がある。そこでばらつき度合いが大きい場合は、大きな閾値を設定することにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保つことができる。
図22Bに示すシーンも、図22Aと同様に、自車位置推定装置2によって取得されたGPS衛星情報が4つの場合を示す。自車位置推定装置2は、自車計画経路80と、地図上の自己位置81の距離差を所定値と比較する。図22Bに示すように、自車計画経路80と、地図上の自己位置81の距離差ΔHが所定値以上である場合、取得されたGPS衛星情報が4つであるものの、地図上の自己位置にずれが発生しており、自車位置推定装置2によって推定された自己位置は、図22Aと比較し精度が低いものとなる。自己位置の検出精度が低い場合、過去軌跡70及び71の検出精度も低くなる可能性がある。そこで、閾値設定部11は、過去軌跡70及び71のばらつき度合いを算出し、ばらつき度合いに応じて閾値を設定する。例えば、図22Bに示すように、他車両31の過去軌跡70のばらつき度合いは所定値より小さいため、閾値設定部11は、他車両31に対して基準閾値THより大きい閾値を設定する。一方、図22Bに示すように、他車両32の過去軌跡71のばらつき度合いは所定値以上であるため、閾値設定部11は、他車両32に対して、他車両31に設定した閾値より大きい閾値を設定する。このように自己位置の検出精度が低い場合は、他車両31,32の検出精度も低いことが考えられるため、閾値設定部11は過去軌跡70及び71のばらつき度合いに応じて閾値を設定する。これにより、車線変更判定部16は、車線変更の判定精度を保つことができる。なお、自己位置の精度が低いか否かは、検出したGPS衛星の数や、自車計画経路と自己位置との距離差を用いて判定したが、これに限られない。例えば、地図精度が低い場合や、白線の認識率が低い場合に、自己位置の検出精度が低いと判定してもよい。
次に、図23のフローチャートを参照して、自己位置の検出精度に応じた閾値の一設定方法について説明する。なお、図23に示すS501,S507,S511,S512は、それぞれ図9に示すS201,S208,S212,S215と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
ステップS502において、自車位置推定装置2は、GPS衛星を検出する。処理はステップS503に進み、ステップS502で検出されたGPS衛星の数が所定値(例えば、3つ)以下の場合、処理はステップS504に進む。検出されたGPS衛星の数が所定値以下の場合、自己位置の検出精度は低いと考えられるため、他車両の過去軌跡の検出精度も低い可能性がある。そこで、ステップS504において、閾値設定部11は、他車両の過去軌跡のばらつき度合いを算出する。
処理はステップS506に進み、閾値設定部11は、ステップS504で算出したばらつきが所定値以上か否かを判定する。他車両の過去軌跡のばらつき度合いが所定値より小さい場合、ステップS507において、閾値設定部11は、基準閾値THより大きい閾値を設定する。一方、他車両の過去軌跡のばらつき度合いが所定値以上の場合、ステップS508において、閾値設定部11は、ステップS507で設定した閾値よりも大きな閾値を設定する。
ステップS505において、自車位置推定装置2は、例えばナビゲーション装置から自車計画経路を取得する。処理はステップS509に進み、自車位置推定装置2は、自車計画経路と、地図上の自己位置の距離差を算出する。処理はステップS510に進み、ステップS509で算出された距離差が所定値以上の場合、処理はステップS506に進む。一方、ステップS509で算出された距離差が所定値より小さい場合、処理はステップS511に進み、閾値設定部11は、過去軌跡に基づいて閾値を設定する。
以上説明したように、車線変更判定装置は、他車両の過去軌跡(走行軌跡)を取得し、過去軌跡に所定のふらつきがある場合は、閾値を大きくする。所定のふらつきがある他車両は、車線変更しないにもかかわらず単に自車走行車線に近づくことがある。そのため、他車両が車線変更するか否かを精度よく判定する必要がある。車線変更判定装置は、所定のふらつきがある他車両に対して閾値を大きくするため、所定のふらつきがある場合でも車線変更するか否かの判定精度を保つことができる。
また、車線変更判定装置は、自己位置を検出し、検出した自己位置の精度が低い場合は、閾値を大きくする。自己位置の精度が低い場合は、他車両の位置の検出精度が低い場合がある。そのため、例えば、他車両が自車走行車線から離れているにもかかわらず、自車走行車線に近いと判定して、他車両が車線変更しようとしていると誤判定するおそれがある。そこで、車線変更判定装置は、自己位置の検出精度が低い場合は閾値を大きくする。これにより、車線変更判定装置は、自己位置の検出精度が低い場合でも他車両が車線変更するか否かの判定精度を保つことができる。
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
本実施形態では、閾値設定部11は基準閾値THを設定し、様々な状況に基づいて基準閾値THより小さい閾値や、大きい閾値を設定したが、必ずしも基準閾値THを設定する必要はない。他車両の位置、横速度、ヨー角や自車周囲の状況などを総合的に判定し、その都度適切な閾値を設定してもよい。また、本実施形態では、直線道路を用いて説明したが、カーブにおいても適用できる。また、他車両が車線変更する可能性は、上昇する場合と減少する場合とがあるが、本実施形態では上昇する場合のみを対象としている。よって、尤度の変化量ΔLは、尤度の上昇変化量である。
本実施形態では、他車両の車線変更判定の判定結果を用いて、自車両の自動運転制御や運転支援制御を実行することができる。自動運転制御や運転支援制御では、自車両の挙動、例えば、車線内で走行する位置、軌跡、速度、加速度、回転角速度、それらの経時変化(プロファイル)などの制御を実行する。本実施形態においては、車線変更判定の誤判定を抑制することができる為、自車両においては走行環境に沿った適切な制御を実行することができるようになる。例えば、他車両の車線変更を判定した場合に、事前に(早いタイミングで)自車両を他車両と反対方向に寄せる、事前に減速するなど、急加減速、急操舵を抑制することができるため、自車両の乗員に与える違和感を抑制することができるようになる。
なお、上述の実施形態の各機能は、1または複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理回路は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。