JP2018180676A - 早期火災検知システムおよび早期火災検知方法 - Google Patents
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その火災を早期に検知するために、トンネルの側壁面等に所定間隔ごとに火災検知器が配備されており、火災を検知した場合には自動車用トンネルを管理する管理センタ等に発報する。火災を検知した火災検知器のトンネル内での位置が既知であるため、トンネル内の火災箇所が概ね把握できる仕組みとなっている。
例えば、赤外線カメラ式の火災検知器がある。火災の炎から放射される光を受光素子によって検出し、受光素子で基準値以上の光を検出した場合に火災と検知する。
また、例えば、監視カメラを利用した火災検知器もある(特許文献1参照)。自動車用トンネルに配備されている監視カメラを利用してトンネル内の画像を撮像し、その画像データに基づいて火災を検出する。
我が国のトンネルでは火災から放射される赤外線を検知する火災検知システムが既に広く採用されており、その火災検知時間は30秒とされている。
しかし、赤外線カメラによる検知システム構築には大きなコストがかかることが問題である。トンネルは数百mから数キロにおよぶことがあり、多数の赤外線カメラを設置しなければ確実は火災検知はできない。
温度検知センサを利用した火災検知器は、温度センサによって設置個所の温度上昇を検出し、その検出した温度が基準値以上の場合に火災と検知するものである。
代表的な温度検知センサとしては、ヨーロッパで広く採用されている温度センサケーブルを利用したものがある。既にヨーロッパでは温度ケーブルセンサが広く採用されており使用実績がある。温度センサケーブルは、ケーブル内部に一定間隔(標準5mまたは8m)で組み込まれた半導体温度センサの測定データから火点の位置を特定することができるものである。従来の火災報知器が50m間隔で設置されていたが、温度センサケーブルは5mきざみであるので、より精密な火災制御ができる。
このように、従来の温度ケーブルセンサを用いた火災検知にはアルゴリズムも提供されており、欧州で普及しているシステムによれば火災発生から1分以内に高い精度で検知することができるものとなっている。
図11に示すように、特開2004−152134号公報に記載された火災検知システムでは、ケーブルは光ファイバーケーブルとなっている。光ファイバー上に温度センサが所定間隔毎に設けられ、さらに、トンネル内を撮像する撮像手段が設けられている。このように、特開2004−152134号公報に記載された火災検知装置では、温度センサによる温度データのみならず、画像データの2種類の検出データを利用して火災発生時の現象である熱、炎、煙の3つの観点から火災の状況を把握し、火災検知を行うものとされている。
上記したように、ヨーロッパなどで普及している温度ケーブルセンサを用いた火災検知システムは実績もあり有効なものである。
しかし、我が国のトンネルでは火災から放射される赤外線を検知する火災検知システムが広く採用されており、その火災検知時間は30秒とされている。
上記したように、ヨーロッパなどで普及している温度ケーブルセンサを用いた従来の火災検知システムは火災発生から1分程度で火災検知が可能なものであり、火災発生から30秒以内の検知というものはシステム仕様としては十分に担保されていない。そのために、温度ケーブルセンサを用いつつ、火災検知速度の高速化が求められる。しかし、図11に示したように、温度センサがケーブルに内蔵されているため時定数が大きく、単独の温度センサごとの温度上昇の検出のみでは小規模な火災の30秒以内という早期検出は難しいと考えられる。
火災検知精度の向上策の1つは、第1の所定時間に比べて短い第2の所定時間を設定する。その秒数は限定されないが、例えば、第1の所定時間が30秒間であり、第2の所定時間が10秒間から20秒間、例えば10秒とする。
制御部が空間積分判定処理ステップとして火点包含センサ群の第1の所定時間の温度変化の総和である空間積分値が第2のしきい値を超えていることに加えて、火点包含センサ群の第2の所定時間の温度変化の総和である空間積分値が第4のしきい値を超えている場合に空間積分判定の充足と判断する。
このように、空間積分判定処理ステップでの充足確認を追加した上で、空間積分判定処理ステップと検証処理ステップの両方で充足が成立した場合に、時間積分検知処理ステップに基づく火点センサの仮定を正しいと検証する。
制御部が検証ステップにおいて、中央集中割合が第3のしきい値を超えていることに加えて、火点包含センサ群の第1の所定時間の温度変化の総和に占める火点隣接センサ群の第1の所定時間の温度変化の総和の割合が第5のしきい値を超えている場合に、検証ステップの充足と判断する。
このように、検証処理ステップでの充足確認を追加した上で、空間積分判定処理ステップと検証処理ステップの両方で充足が成立した場合に、時間積分検知処理ステップに基づく火点センサの仮定を正しいと検証する。
図1は、本発明の早期火災検知システム100の構成例を示す図である。
図1に示すように、早期火災検知システム100は、温度検出センサ110、温度検出センサケーブル120、制御部130を備えて構成となっている。
それぞれの温度センサ123は、設置個所の温度を計測し、それら温度計測データが設置個所データ、つまり、空間的な拡がりと紐付けられ、制御装置130へと送信される。
制御部130に搭載された火災発生の推定処理は、各々の温度検出センサ124ごとの時間積分値の大きさと、時間積分値の大きさから火点に最も近い火点センサと仮定された温度検出センサ123を含む前後にわたる所定数の温度検出センサ群からなる火点包含センサ群の空間積分値の大きさと、空間積分値に占める火点センサと仮定された温度検出センサ124の検出値の大きさから計算した集中割合の3つの計算結果から火災の発生を推定するものである。
制御部130は、まず、各々の温度検出センサ123ごとの時間積分値の大きさに基づいて、火災発生の可能性のある個所を推測する。
なお、後述するように、本発明の早期火災検知システム100は、早期火災検知のため、時間積分を行う時間の範囲、つまり第1の所定期間を短く収める代わりに、火災でないのに火災発生の候補として挙がってしまうものを他の評価方法を複数組み合わせて排除してゆく。
この30秒間にわたり、各々の温度検出センサ123の測定結果の時間積分値を求め、その中で第1のしきい値を超えたものを選出する。
ここで、第1のしきい値の設定であるが、トンネルの大きさ(横幅)、トンネルの高さ、トンネルの長さ、季節、時刻、天候、交通量、など、火災発生時の温度上昇の積分値に与える要素が複数あるため、それら諸条件を踏まえて設定する必要がある。
ここでは、以下のトンネル火災実験を行い、第1のしきい値を設定する。
開口面積1m2、容量12リットルの火皿を用いて、断面積70m2のトンネル壁面上部に温度センサケーブル(温度検知センサ間隔4m)を取り付けて疑似火災実験を行った。本実験では、発煙の少ないノルマルヘプタンを用いた。ノルマルヘプタン12リットルの熱量はガソリン10リットルの熱量に相当する。
疑似火災の火点となる火皿の設置場所は、温度検出センサの番号13直下でトンネル中央(センターライン上)となるよう調整した。ここで、疑似火災の火点位置に最も近い温度検出センサを「火点センサ」と略記することがある。
図3に示すように、初めは穏やかに温度が上昇してゆき、300秒程度に達するとそれ以上の温度上昇はほぼ無くなりほぼ一定の温度を維持している。図3を見ると、火点センサ近辺に大きなピークが見られ、離れた位置ではそれほど温度は上昇していないことが分かる。このことから火点センサ近辺の温度上昇は他の場所より卓越しているため、温度センサケーブル120を用いた火災検知の妥当性が認められる。
図4は、疑似火災の温度上昇のパターンと、火災ではない別の要因にて30秒の間の積分値が0.4℃に達してしまったパターンにおける、火点センサを含む近辺の温度検出センサの積分値を並べた図である。
両者とも開口面積71m2、長さ2990mのトンネルで得たデータである。図4の図中のかっこ内はセンサ番号である。
図4(a)に示すように、点火後60秒経過すると、明確なピークが見て取れるため、火災検知に充分な温度上昇が得られていると言える。そのため、もし、時間積分を行う時間の範囲、つまり第1の所定期間を60秒と仮定できれば、第1のしきい値は3度や4度とすれば良いことが分かる。しかし、上記したように、第1の所定期間を30秒とする場合、図4(a)に示すように、ピークが小さく、わずか0.5度程度しかないことが分かる。
しかし、30秒経過後の火災検知を達成するために、30秒間の温度検出センサ110の温度上昇の積分値が0.3℃を超えたときに火災検知とみなした場合、図4(a)に示すように、疑似火災の場合のパターンもあれば、図4(b)に示すように、火災が発生していない他の要因による温度上昇のパターンも火災とみなしてしまうおそれがあることが分かる。
図4の2つのパターンを見比べると、火災パターンの場合、下記の特徴が見られ、以下の特徴にてパターン分けができそうであることが分かる。
(特徴1)火点センサである温度検出センサ110の温度上昇が、他の温度検出センサ110より卓越している。
(特徴2)火点センサを含む前後の温度検出センサ群(火点包含センサ群)が空間的な拡がりを持って温度上昇がみられる。
(特徴3)火点センサを含む近接の温度検出センサ群(火点隣接センサ群)の温度上昇が卓越している.
(特徴4)火点センサから離れた他の温度検出センサ110の温度変化はほとんどない。
上記した4つの特徴のいずれか、またはそれらの組み合わせにより、火災検知と仮定したものが火災パターンであるか否かを判定する。
この数式3が、上記の(特徴1)を算出する数式である。
一例として、各々の温度検出センサ110について、直近30秒間の温度変化の積分値を求め、その値が0.3℃を超えれば特徴1が満たされたと判断し、該当する温度検出センサ110を火点センサの候補として注目する。
kステップ時における対象センサ組に含まれる個センサの温度変化の空間和を以下の数式6と表現できる。
これは、上記した(特徴2)を確認する数式である。
これらのいずれかまたは双方が成立すれば特徴2が充足されたものとする。
火災を仮定した場合、火点に最も近い火点センサの温度検出センサ110は、いわば火点の中央付近のピークが現れるはずであり、その火点センサのみの積分値と、火点センサを含む前後5個ずつの11個にわたる火点包含センサ群の空間積分値との比率を検証すれば、ピーク値が出ているのか否かが確認できる。ここでは、例えば、その比率が数式9に示すように、第3のしきい値が0.3以上あることを条件とする。
また、上記したように、火点センサと仮定した温度検出センサ110のみがピーク値を持つが、隣接するすぐ隣の温度検出センサ110が他よりも低い場合、火点センサと仮定した温度検出センサ110のみが異常値を示しており、火点とするような中心のエネルギー放射が見られないと考えることができる。つまり、火点センサの前後1つずつ、つまり3個の火点隣接センサ群の空間積分値と、火点センサを含む前後5個ずつの11個にわたる火点包含センサ群の空間積分値との比率を検証すれば、中央に火点とするような中心のエネルギー放射が見られることが検証できる。
次に、上記得た各式を用いて、火災時のパターンと非火災時のパターンを適用し、火災検知処理のシミュレーションを行ってみる。
以下、トンネル火災実験データを制御部130に与えた。
この例では、温度検出センサ番号10〜20番に関する或る時間から10秒間の時間積分値データ、30秒間の時間積分値データとなっている。
時間積分検知処理ステップにおいて検出される、温度検出センサ(No.15)およびその前後の温度検出センサ((No.14およびNo.15))の30秒間の温度上昇(時間積分値)を図6に示す。サンプル時間は1秒である。
図6は、或る時刻から火点センサの30秒間の温度変化の積分値と、その両側の30秒間の温度変化の積分値およびと、さらに火点包含センサ群の平均温度の30秒間の温度変化の積分値を示す図である。
図6に示す各々の時間積分値を得た制御部130は、時間積分検知処理ステップにおいて、15番における温度検出センサ110を火点センサとして仮定する。
図7に示すように、制御部130は、火点センサを15番と仮定し、火点包含センサ群を火点センサを含む前後5個(合計11個)のセンサ群である10番〜20番と設定し、火点隣接センサ群を14番から16番と設定する。
空間積分判定処理ステップは、火点包含センサ群の10秒間の空間積分値の大きさが第2のしきい値を超えているか、または、火点包含センサ群の30秒間の空間積分値の大きさが第3のしきい値を超えているかをチェックする。
この例では、火点包含センサ群の11個のセンサの10秒間の空間積分値の判定も、30秒間の空間積分値の判定も、両方充足されていることが分かる。
制御部130は、図7のように設定された各々の温度検出センサで30秒間得られているデータから15番における火災発生の仮定を検証する。
火災発生から10秒経過後から13秒経過後まで、両方の検知処理が充足されているが、14秒経過後から16秒経過後は、2番目の検証である比率R3(k,15)が充足されていないが、17秒から19秒まで再び比率R3(k,15)が充足され、また、20秒から21秒は比率R3(k,15)が充足されず、再び22秒から28秒まで充足されている。
1番目の検証である比率R1(k,15)は、23秒の時刻のデータを除き、10秒経過から30秒まで充足されている。
この例では、検証処理ステップでの充足が確認されたのでこの時点で警報を発報する。
以上より、1m2火皿を用いた燃焼実験において,30秒以内での火災発生検知を実現している。
早期火災検知アルゴリズムは,充分に温度が上昇しない状態で火災を判定するため、頻繁に誤報を発する懸念がある.その対策として,検証処理ステップで2つの検証1、2が導入されている。
検証処理ステップを適用しない場合、図9の左側に示すように、数式4のみの時間積分値のみの火災検知では誤報数は90であった。図9の2番目に示すように検証処理ステップの検証1を適用すると誤報数は2、図9の3番目に示すように検証2を適用すると誤報数が1に減少した。図9の4番目に示すように検証処理ステップの検証1、2の両方を適用すると誤報がなくなる。この分析により、本発明の早期火災検知処理ステップは期待どおり機能していると言える。
110 温度検出センサ
120 温度検出センサケーブル
130 制御部
Claims (8)
- トンネル内の火災を検知する火災検知システムであって、
所定間隔ごとに温度検出センサが配置され、前記トンネルの長手方向に沿って敷設され、前記トンネル内において前記所定間隔ごとに温度を検出する温度検出センサ群と、
各々の前記温度検出センサごとの第1の所定期間における時間積分値の大きさと、
前記時間積分値の大きさから火点に最も近い火点センサと仮定された前記温度検出センサを含む周辺の所定数の前記温度検出センサ群からなる火点包含センサ群の空間積分値の大きさと、
前記空間積分値に占める前記火点センサと仮定された前記温度検出センサの検出値の大きさから計算した集中割合の大きさの3つの計算結果から火災の発生を推定する制御部を備えた早期火災検知システム。 - 前記制御部による、前記時間積分値の大きさに基づく計算処理ステップが、各々の前記温度検出センサのうち前記時間積分値が第1のしきい値を超えているものを前記火点センサと仮定する時間積分検知処理ステップであり、
前記制御部による、前記空間積分値の大きさに基づく計算処理ステップが、前記火点包含センサ群の前記第1の所定時間の温度変化の総和である前記空間積分値が第2のしきい値を超えている場合に、前記時間積分検知処理ステップに基づく前記火点センサの仮定が正しいと判定する空間積分判定処理ステップであり、
前記制御部による、前記中央集中割合の大きさに基づく計算処理ステップが、前記中央集中割合が第3のしきい値を超えている場合に、前記時間積分検知処理ステップに基づく前記火点センサの仮定を正しいと検証する検証処理ステップであることを特徴とする請求項1に記載の早期火災検知システム。 - 前記第1の所定時間に比べて短い第2の所定時間を設定し、
前記制御部が、前記空間積分判定処理ステップとして、前記火点包含センサ群の前記第1の所定時間の温度変化の総和である空間積分値が前記第2のしきい値を超えていることに加えて、前記火点包含センサ群の前記第2の所定時間の温度変化の総和である空間積分値が第4のしきい値を超えている場合に前記空間積分判定の充足と判断し、
前記空間積分判定処理ステップと前記検証処理ステップの両方で充足が成立した場合に、前記時間積分検知処理ステップに基づく前記火点センサの仮定を正しいと検証することを特徴とする請求項2に記載の早期火災検知システム。 - 前記火点センサと仮定された前記温度検出センサを含む周辺の所定数の前記温度検出センサ群からなり、その構成する前記温度検出センサの数が、前記火点包含センサ群を構成する前記温度検出センサの数より少ないものを火点隣接センサ群とし、
前記制御部が、前記検証ステップにおいて、前記中央集中割合が第3のしきい値を超えていることに加えて、前記火点包含センサ群の前記第1の所定時間の温度変化の総和に占める前記火点隣接センサ群の前記第1の所定時間の温度変化の総和の割合が第5のしきい値を超えている場合に、前記検証ステップの充足と判断し、
前記空間積分判定処理ステップと前記検証処理ステップの両方で充足が成立した場合に、前記時間積分検知処理ステップに基づく前記火点センサの仮定を正しいと検証することを特徴とする請求項2または3に記載の早期火災検知システム。 - 前記第1の所定時間が30秒間であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の早期火災検知システム。
- 前記第2の所定時間が10秒間から20秒間のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の早期火災検知システム。
- 前記火点包含センサ群の数が11個であり、前記火点隣接センサ群の数が3個であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の早期火災検知システム。
- トンネル内の火災を検知する火災検知方法であって、
所定間隔ごとに温度検出センサが配置され、前記トンネルの長手方向に沿って敷設され、前記トンネル内において前記所定間隔ごとに温度を検出する温度検出センサ群を用い、
各々の前記温度検出センサごとの第1の所定期間における時間積分値の大きさと、
前記時間積分値の大きさから火点に最も近い火点センサと仮定された前記温度検出センサを含む周辺の所定数の前記温度検出センサ群からなる火点包含センサ群の空間積分値の大きさと、
前記空間積分値に占める前記火点センサと仮定された前記温度検出センサの検出値の大きさから計算した集中割合の大きさの3つの計算結果から火災の発生を推定することを特徴とする早期火災検知方法。
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