JP2018179517A - 水素・酸素濃度計測装置、水素・酸素濃度計測システム、水素・酸素濃度計測方法及び水素・酸素濃度計測プログラム - Google Patents

水素・酸素濃度計測装置、水素・酸素濃度計測システム、水素・酸素濃度計測方法及び水素・酸素濃度計測プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】一体で水素濃度及び酸素濃度の両方を計測・監視することができる水素・酸素濃度計測装置、水素・酸素濃度計測システム、水素・酸素濃度計測方法及び水素・酸素濃度計測プログラムを提供する。【解決手段】被監視雰囲気中の水素を吸蔵して増加する水素吸蔵素子14の抵抗値、被監視雰囲気の温度及び被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度CH2を導出する水素濃度導出部31と、酸素の透過率の異なる被覆材22で被覆された温度検知素子17からの検出温度Tの差異、水素濃度CH2及び全圧に基づいて酸素濃度CO2を導出する酸素濃度導出部36と、を備える。【選択図】 図3

Description

本発明の実施形態は、原子力発電所の格納容器内の水素濃度及び酸素濃度の計測技術に関する。
原子力発電所における格納容器内の雰囲気中の水素濃度及び酸素濃度を計測・監視するシステムとして格納容器内雰囲気モニタ(CAMS:Containment Atmospheric Monitoring System)が知られている。
CAMSを含む原子力発電所内の各機器は、所定の設計基準事故の環境下での正常動作条件を満たすように設計されている。
ところで、東日本大震災時の福島第一原子力発電所のように、設計基準事故を超える過酷な環境になる事故は、過酷事故と呼ばれる。
過酷事故時には、温度は200℃以上、圧力は1MPa程度に上昇することがある。
このような過酷事故時には、炉心損傷による水−ジルコニウム反応で発生する水素、及び水の放射線分解で発生する水素・酸素の濃度を計測・監視する必要がある。
従来、水素濃度及び酸素濃度を測定するためには、それぞれ専用の検出器が用いられていた。
特開2013−19751号公報
原子力発電所などの大型プラントでは、保守管理などの観点から、機器の点数を減らすことが望まれる。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、一体で水素濃度及び酸素濃度の両方を計測・監視することができる水素・酸素濃度計測装置、水素・酸素濃度計測システム、水素・酸素濃度計測方法及び水素・酸素濃度計測プログラムを提供することを目的とする。
本実施形態に係る水素・酸素濃度計測装置は、被監視雰囲気中の水素を吸蔵して増加する水素吸蔵素子の抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出する水素濃度導出部と、酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出する酸素濃度導出部と、を備える。
本実施形態に係る水素・酸素濃度計測システムは、被監視雰囲気中の水素を吸蔵して抵抗値が増加する水素吸蔵素子と、前記被監視雰囲気の全圧を測定する圧力センサと、前記被監視雰囲気の温度の上昇とともに抵抗値が増加する2以上の温度検知素子と、2以上の前記温度検知素子をそれぞれ異なる分子透過率の材料で被覆する被覆材と、前記水素吸蔵素子及び前記温度検知素子の周辺温度を制御する温度制御部と、前記水素吸蔵素子の前記抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出する水素濃度導出部と、前記温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出する酸素濃度導出部と、を備える。
本実施形態に係る水素・酸素濃度計測方法は、被監視雰囲気中の水素を吸収して増加する水素吸蔵素子の抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出するステップと、酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出するステップと、を含む。
本実施形態に係る水素・酸素濃度計測プログラムは、コンピュータに、被監視雰囲気中の水素を吸蔵して増加する水素吸蔵素子の抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出するステップ、酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出するステップ、を実行させる。
本発明により、一体で水素濃度及び酸素濃度の両方を計測・監視することができる水素・酸素濃度計測装置、水素・酸素濃度計測システム、水素・酸素濃度計測方法及び水素・酸素濃度計測プログラムが提供される。
水素・酸素濃度計測システムが適用された原子炉格納容器の概略構成図。 第1実施形態に係る水素・酸素濃度計測システムが備える検出器の概略構成図。 第1実施形態に係る水素・酸素濃度計測システムの模式図。 (A)被監視雰囲気の水素及び酸素の割合、及び温度を変化させたときの水素吸蔵素子の抵抗変化率の推移を示す図、(B)被監視雰囲気の水素及び酸素の割合及び温度を変化させたときの検出温度の推移を示す図。 第1実施形態に係る水素・酸素濃度計測方法のうち水素濃度計測方法を示すフローチャート。 第1実施形態に係る水素・酸素濃度計測方法のうち水素濃度計測方法を示すフローチャート。 第2実施形態に係る水素・酸素濃度計測システムの概略構成図。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、水素・酸素濃度計測システム10(以下、単に「計測システム10」という)が適用された原子炉格納容器11の概略構成図である。
通常、原子力発電所の運転時には原子炉格納容器11の内部には窒素が封入されて、その雰囲気の組成は概ね窒素が100%、水素が0%、酸素が0%の割合に維持される。
このように密閉された有限の閉空間では、水素及び酸素の発生が、内部雰囲気の水素濃度及び酸素濃度を変化させる。
計測システム10は、例えばこのような原子炉格納容器11の内部空間等、原子力発電所内であって水素濃度及び酸素濃度の監視が行われる場所に設置される検出器12と、この検出器12を原子炉格納容器11の外部から制御するとともに水素濃度及び酸素濃度を算出する制御部30と、を備えるものである。
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態に係る計測システム10が備える検出器12の概略構成図である。
第1実施形態に係る計測システム10の検出器12は、図2に示されるように、被監視雰囲気が充満する原子炉格納容器11(図1)の内部に、水素吸蔵素子14、圧力センサ16及び2以上の温度検知素子17(17a,17b)が設置される。
水素吸蔵素子14及び2本の温度検知素子17は、例えばアルミナ等で構成される巻回筒18に巻きつけられた金属線材である。
これら水素吸蔵素子14及び温度検知素子17は、制御部30(図1)から通電されて、その抵抗値が抵抗測定部19(19a〜19c)(図3)で測定される。
これらの素子14,17が巻回された巻回筒18は、温度制御部35(図3)が接続されたヒータ21で包囲されて、400℃程度以下の範囲で温度制御される。
通常時は、水素吸蔵素子14が水素濃度によらず水素の吸着及び放出を可逆的に継続することを可能にする温度である240℃〜320℃程度、特に300℃程度に維持される。
なお、図示は省略するが、巻回筒18の周囲には、ヒータ21で調整した温度を維持する保温材や、ヨウ素フィルタ、筐体等が、いずれも通気性や防爆性を維持して配置される。
よって、被監視雰囲気の成分は、検出器12の内外で同一に維持される。
また、図2の検出器12は一例であり、例えば、ヒータ21をチップ状にして、このチップの表面に水素吸蔵素子14及び温度検知素子17を形成させてもよい。
水素吸蔵素子14は、パラジウム(Pd)等、被監視雰囲気中の水素を吸蔵することで抵抗値が増加する素子である。
Pdは、触媒作用によって、その表面に接触した水素分子Hを水素原子Hに解離させる。
この水素原子Hが、Pdの結晶格子の空隙に進入し自由電子を散乱させることで、Pdの抵抗値を増加させる。
この抵抗増加は水素濃度導出部31で利用される次式(1)で表される。
つまり、水素濃度CH2は、Pdの抵抗値変化ΔRPd、水素を吸蔵していないときのT℃におけるPdの抵抗値RTPd、被監視雰囲気の全圧P及び被監視雰囲気の検出温度Tの関数になる。
ただし、PH2:水素分圧(kPa)、P:被監視雰囲気の全圧(kPa)、ΔRPd/RTPd(≡ΔR/R):抵抗変化率、α(=約1265.6),β,γ:校正により決定されるパラメータ、T:被監視雰囲気の絶対温度(K)である。
これらの要素のうち、Pdの抵抗値変化ΔRPd及びT℃における抵抗値RTPdは、水素吸蔵素子14で測定される。
また、被監視雰囲気の全圧Pは圧力センサ16、被監視雰囲気の検出温度Tは温度検知素子17(17a,17b)で抵抗値として測定される。
なお、パラメータα、β及びγは、製造過程などに起因する検出器12の機械的特性や、設置環境などで決定されるものである。
パラメータα、β及びγは、計測システム10の校正試験などによって規定される。
ところで、この水素吸蔵素子14は、ケイ素酸化物等、酸素の透過率の低い素材で構成される厚さ50〜150nm程度の被覆層32で被覆される。
上述したように、水素吸蔵素子14は触媒作用を有するので、水素分子Hとともに酸素分子Oをも酸素原子Oに解離させて水素原子Hとの結合反応を促進してしまう。
水素吸蔵素子14の表面におけるこの結合反応によって、水素が消費されて水素濃度CH2が低下する。
そこで、水素吸蔵素子14を被覆層32で被覆して、酸素の透過率を水素に対して極小さくすることで、酸素の存在によって発生する誤差を低減させる。
温度検知素子17(17a,17b)は、水素吸蔵素子14の近傍に設置されて、被監視雰囲気の温度の上昇とともに抵抗値が増加する素子である。
温度検知素子17は、例えばプラチナ等、長期安定性に優れ、水素吸蔵素子14と同等の水素及び酸素に対する触媒能力を有する金属が望ましい。
温度検知素子17(17a,17b)は、水素吸蔵素子14の周辺に2つが配置される。
温度検知素子17もまた、被覆材22(22a,22b)で被覆される。
変動温度検知素子17aには、水素及び酸素を僅かに透過させる酸化ケイ素等が微透過被覆材22aとして使用される。
また、基準温度検知素子17bには、気体をほとんど透過させないアモルファス状のガラスなどが不透過被覆材22bとして使用される。
つまり、被覆材22(22a,22b)は、2つの温度検知素子17(17a,17b)で水素及び酸素の透過率の異なるものが使用される。
この透過率の差異を利用して、後に詳述するように酸素濃度CO2が導出される。
なお、素子の冗長性の観点から、配置される水素吸蔵素子14の個数は2以上、温度検知素子17の個数は3以上であってもよい。
また、図3は、第1実施形態に係る計測システム10の模式図である。
水素吸蔵素子14、温度検知素子17(17a,17b)は、図3に示されるように、抵抗測定部19(19a〜19c)を介して制御部30の内部の水素・酸素計測装置40(以下、単に「計測装置40」という)に接続される。
計測装置40は、主に、水素濃度導出部31と、酸素濃度導出部36と、で構成される。
具体的には、水素吸蔵素子14は、水素抵抗測定部19aを介して水素濃度導出部31に接続される。
また、温度検知素子17(17a,17b)は、変動抵抗測定部19b及び基準抵抗測定部19cを介して計測装置40内の温度変換部24に接続される。
変動抵抗測定部19b及び基準抵抗測定部19cで計測された抵抗値は、温度変換部24でそれぞれ温度情報(検出温度T)に変換される。
温度変換部24はパラメータ決定部37(37a,37b)、検出温度Tを水素濃度導出部31及び温度差算出部38に送る。
また、圧力センサ16は、計測装置40内の圧力受付部39を介して、受け付けた被監視雰囲気の気圧である全圧Pをパラメータ決定部37(37a,37b)、水素濃度導出部31及び酸素濃度導出部36に送る。
水素濃度導出部31は、送られてくる水素吸蔵素子14の抵抗変化率ΔR/R、被監視雰囲気の検出温度T、及び全圧Pを用いて上式(1)から水素濃度CH2を導出する。
ここで、図4(A)は、被監視雰囲気の水素及び酸素の割合、及び温度を変化させたときの水素吸蔵素子14の抵抗変化率ΔR/Rの推移を示す図である。
まず、温度を300℃に設定したときの、(I)窒素100%の場合、(II)窒素90%・水素10%の場合、及び(III)窒素85%・水素10%・酸素5%の場合における抵抗変化率ΔR/Rについて説明する。
(I)窒素100%の状態から(II)窒素90%・水素10%の状態になると、水素10%が発生した分だけ、水素吸蔵素子14の抵抗変化率ΔR/Rが増加する。
しかし、ここで、(III)酸素が5%含まれていると、水素が10%のままでも水素吸蔵素子14の抵抗変化率ΔR/Rが僅かに低下する。
この低下は、被覆層32が発生した酸素を完全に遮蔽することができないために、水素吸蔵素子14の表面に到達した水素と酸素とが反応することに起因する。
つまり、水素吸蔵素子14の触媒作用に促進されて、水素が水素吸蔵素子14の表面で酸素と結合することで、水素が消費されることによると考えられる。
この抵抗変化率ΔR/Rの減少によって、導出される水素濃度CH2に誤差が発生する。
そこで、ヒータ21の制御温度を350℃程度に増加させる場合を考える。
制御温度を350℃に設定したときの、(IV)窒素90%・水素10%の場合、及び(V)窒素85%・水素10%・酸素5%の場合における抵抗変化率ΔR/Rについて説明する。
(II)と同様の成分割合である(V)窒素90%・水素10%では、抵抗変化率ΔR/Rは、(II)よりも多少増加する。
この(V)における抵抗変化率ΔR/Rは減少する。
また、(IV)水素10%を維持したまま酸素5%になった場合、(V)における抵抗変化率ΔR/Rに(II)と(III)との間でみられた抵抗変化率ΔR/Rの低下はほとんど発生しない。
(IV)と(V)とに差異が発生しなかったのは、温度の上昇によって水素分子Hと酸素分子Oとの運動エネルギーの差が顕著になり、被覆材22を透過する水素分子数と酸素分子数との差の割合が300℃のときと比較して拡大するためである。
つまり、この透過分子数の相対的な減少によって、水素吸蔵素子14の表面において酸素と結合して消費される水素の相対量が減少したため、この表面における水素濃度CH2が維持されたと考えられる。
つまり、温度を350℃程度に引き上げることで、水素濃度CH2の測定精度を低下させていた(III)の抵抗変化率の低下を防止することができる。
なお、高精度な水素計測をする場合、水素吸蔵素子14の周辺温度が350℃程度にすることが好適であるが、340℃以上であれば有意に精度を向上させることができる。
図3に戻って説明を続ける。
温度変換部24の2つの検出温度Tは、温度差算出部38で差分ΔTが算出される。
酸素濃度導出部36は、この差分ΔT及び水素濃度導出部36で導出した水素濃度CH2を用いて、次式(2)で酸素濃度CO2を導出する。
O2 = ζ・ΔT・CH2 (2)
なお、パラメータζは校正試験などによって規定されるパラメータである。
ここで、図4(B)は、被監視雰囲気の水素及び酸素の割合及び温度を変化させたときの検出温度Tの推移を示す図である。
ヒータ21を300℃で制御している場合、(VI)窒素100%の状態と、(VII)窒素90%で、水素10%の状態とでは2つの温度検知素子17(17a,17b)による温度測定結果に有意な差は発生しない。
しかし、(VIII)酸素が発生すると、変動温度検知素子17aにより測定される温度が増加する。
これは、微透過被覆材22aを有する変動温度検知素子17aの表面における微量の水素と酸素との反応熱により変動温度検知素子17aの抵抗値が増加するためである。
一方、不透過被覆材22bを有する温度検知素子17の表面には水素も酸素も到達しないため反応熱は発生しない。
よって、温度検知素子17で測定される温度は、(VIII)に示されるように一定のままとなり、温度検知素子17(17a,17b)のそれぞれにより測定される温度に差異が発生する。
この温度差ΔTは水素濃度CH2及び酸素濃度CO2に依存するため、酸素濃度導出部36は上式(2)で酸素濃度CO2を算出することができる。
導出された酸素濃度CO2及び水素濃度CH2は、例えば表示部42に表示されて、作業員に監視される。
このように計測装置40によれば、検出温度Tを酸素濃度CO2及び水素濃度CH2の両方で使用するとともに、導出された水素濃度CH2を用いて酸素濃度CO2を導出することで、1つの検出器12で水素濃度CH2及び酸素濃度CO2の両方を測定することができる。
また、制御温度を350℃程度に引き上げることで、水素濃度CH2の検出精度を向上させることができる。
次に、第1実施形態に係る水素・酸素濃度計測方法を図5及び図6のフローチャートを用いて説明する(適宜図2及び図3を参照)。
まず、水素濃度計測方法について図5を用いて説明する。
まず、校正ガスを用いた試験などによりパラメータα、β及びγの値を取得する(S10)。
TPdは検出温度Tの関数になる。また、パラメータα、β及びγは、検出温度T及び全圧Pの関数になる。
被監視雰囲気に水素が10%で酸素5%発生すると(S11)、水素分子Hが被覆層32を透過して水素吸蔵素子14に到達する一方、酸素分子Oは被覆層32で大半が遮断され水素吸蔵素子14に到達しない。
ただし、被覆層32を透過した僅かな酸素分子Oが水素吸蔵素子14の触媒作用によって、水素分子Hと結合する(S12)。
この結果、水素吸蔵素子14の周辺の水素濃度が減少する(S13)。
通常精度で測定する場合は(S14:NO)、ヒータ21の温度を約300℃に設定する(S15)。
水素吸蔵素子14は、約300℃の高温であれば水素原子Hを可逆的に吸蔵して、水素濃度に応じて、その抵抗変化率ΔR/Rを増加させる(S16)。
この抵抗変化率ΔR/Rは、水素抵抗測定部19aで読み取られて、水素濃度導出部31に送られる。
また、温度に応じた基準温度検知素子17bの抵抗変化率ΔR/Rが基準抵抗測定部19cで測定されて温度変換部24に送られて、検出温度Tに変換される(S17)。
基準抵抗測定部19cに基づく検出温度Tは、水素濃度導出部31及び水素パラメータ決定部37aに送られる。
また、圧力センサ16で計測された被監視雰囲気の全圧Pも、水素濃度導出部31及び水素パラメータ決定部37aに送られる(S18)。
水素パラメータ決定部37aは、送られてくる被監視雰囲気の全圧P及び検出温度T(検出温度T)に基づいてRTPd及びパラメータα、β及びγを特定する(S19)。
水素濃度導出部31は、これらRTPd及びパラメータα、β及びγ及び、被監視雰囲気の検出温度T及び全圧Pと、水素吸蔵素子14の抵抗変化率ΔR/Rとを用いて式(1)から従来精度の水素濃度CH2を導出する(S20:END)。
一方、水素濃度CH2を高精度で測定する場合(S14:YES)、ヒータ21の温度を350℃に設定する(S21)。
ヒータ21の温度が従来よりも高くなることで、被監視雰囲気を構成する各気体の運動エネルギーが増加する。
この結果、被覆材22を透過して水素吸蔵素子14に到達する水素分子Hの数量が増加する(S22)。
水素分子Hと比較して分子量の大きい酸素分子Oの水素吸蔵素子14への到達数は、水素分子Hと比較して相対的に低下する(S23)。
つまり、水素吸蔵素子14の表面での水素原子Hの全量に対する酸素原子Oと水素原子Hとの結合量が相対的に減少する(S24)。
この結果、酸素分子Oによる水素吸蔵素子14の抵抗変化率ΔR/Rへの影響が低減される(S25)。
その後は、通常精度の水素濃度CH2の測定手順S16〜S19と同様に、水素濃度を導出(S26〜S31:END)。
なお、酸素分子Oによる水素吸蔵素子14の抵抗値への影響が低減されているので、このとき導出される水素濃度CH2は高精度である。
次に、酸素濃度計測方法について図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、水素及び酸素が発生していない環境下でパラメータζを特定する(S31)。
パラメータζは、被監視雰囲気の検出温度T及び全圧Pの関数として特定される。
水素が10%,酸素が5%発生すると(S32)、水素分子H,酸素分子Oは、微透過被覆材22aを僅かに透過する(S33)。
よって、温度検知素子17の表面に到達した水素分子H及び酸素分子Oが温度検知素子17の触媒作用によって、結合反応を発生させて発熱する。
この結果、変動温度検知素子17aの抵抗変化率ΔR/Rが増加する(S34)。
一方、不透過被覆材22bは、水素分子H、酸素分子Oを透過させない(S35)。
よって、基準温度検知素子17bの抵抗値は、酸素分子Oの影響を受けずに被監視雰囲気の検出温度Tと正確に対応するものになる(S36)。
よって、温度変換部24において変換された2つの温度検知素子17(17a,17b)の抵抗値に基づく検出温度Tには、水素濃度CH2及び酸素濃度CO2の濃度に応じた差異が発生することになる。
酸素濃度導出部36は、この温度差ΔT、水素濃度導出部31で導出した水素濃度CH2及び全圧Pを用いて式(2)から酸素濃度CO2を導出する(S37:END)。
なお、式(2)において、ζは、取得された全圧P及び基準温度検知素子17bによる検出温度Tに基づいて、酸素パラメータ決定部37bで決定される。
また、導出された酸素濃度CO2及び水素濃度CH2は、例えば表示部42に表示されて作業員に監視される。
なお、以上の動作は、プログラムに沿ってコンピュータで実行してもよい。
例えば、制御部30は、CPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、或いはHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、を具備するコンピュータとして構成することができる。
この場合、図3に示す各部のうち、温度変換部24、圧力受付部39、水素濃度導出部31、酸素濃度導出部36、水素パラメータ決定部37a及び酸素パラメータ決定部37bの機能は、記憶装置に記憶された所定のプログラムをプロセッサが実行することによって実現することができる。
また、このようなソフトウェア処理に換えて、ASIC(Application Specific Integration Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現することもできる。
また、制御部30は、ソフトウェア処理とハードウェアによる処理を組み合わせて実現することもできる。
以上のように、第1実施形態に係る水素・酸素濃度計測システム10によれば、検出温度Tを酸素濃度CO2及び水素濃度CH2の両方で使用するとともに、導出された水素濃度CH2を用いて酸素濃度CO2を導出することで、一体で水素濃度CH2と酸素濃度CO2との両方を測定・監視することができる。
また、一体で水素濃度CH2と酸素濃度CO2との両方を測定・監視することができるので、プラントを構成する部品点数を少なくすることができる。
さらに、計測システム10によれば、酸素の存在下においても、高精度で水素濃度を測定することができる。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る水素・酸素濃度計測システム10の概略構成図である。
第2実施形態に係る計測装置40は、図7に示されるように、水素計測の測定モードを高精度と通常精度とで切り替える測定モード切替部46を備える。
第1実施形態で述べたように高精度の水素濃度測定をする場合、ヒータ21の温度を通常精度より50℃程度高い350℃程度にする必要がある。
よって、例えば、2つの温度検知素子17の抵抗値に差異がなく、酸素が発生していないと認められる場合や、高精度な測定が要求されていない場合は、通常精度で測定するほうが好ましい場合もある。
そこで、高精度な測定が必要な場合に、測定モード切替部46から温度制御部35に指令を発信して測定モードを切り替える。
指令を受信した温度制御部35は、ヒータ21の制御温度を350℃に変更する。
測定モード切替部46は、表示部42からの作業員の手動入力による指令を受けて測定モードを切り替えてもよい。
また、例えば温度差算出部38に接続されて、温度差算出部38で算出された温度差ΔTが温度差算出部38の保持する所定の閾値を超えた場合に、測定モードを切り替えてもよい。
なお、測定モード機能を有すること以外は、第2実施形態は第1実施形態と同じ構造及び動作手順となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
このように、第2実施形態に係る計測システム10によれば、第1実施形態の効果に加え、測定モードを切り替えることができるので、エネルギー消費などを加味した最適な精度で測定することができる。
以上述べた少なくとも一つの実施形態の計測装置40によれば、検出温度Tを酸素濃度CO2及び水素濃度CH2の両方で使用するとともに、導出された水素濃度CH2を用いて酸素濃度CO2を導出することで、一体で水素濃度CH2と酸素濃度CO2との両方を測定・監視することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…酸素濃度計測システム(計測システム)、40…水素・酸素計測装置(計測装置)、11…原子炉格納容器、12…検出器、14…水素吸蔵素子、16…圧力センサ、17(17a,17b)…温度検知素子、18…巻回筒、19(19a〜19c)…抵抗測定部、19a(19)…水素抵抗測定部、19b(19)…変動抵抗測定部、19c(19)…基準抵抗測定部、21…ヒータ、22(22a,22b)…被覆材(微透過被覆材,不透過被覆材)、24…温度変換部、30…制御部、31…水素濃度導出部、32…被覆層、35…温度制御部、36…酸素濃度導出部、37(37a,37b)…パラメータ決定部(水素パラメータ決定部,酸素パラメータ決定部)、38…温度差算出部、39…圧力受付部、42…表示部、46…測定モード切替部、CH2…水素濃度、CO2…酸素濃度、P…被監視雰囲気の全圧、RTPd…Pdの温度Tにおける抵抗値、T…検出温度、ΔRPd…抵抗値変化、ΔT…温度差、α〜γ,ζ…パラメータ。

Claims (8)

  1. 被監視雰囲気中の水素を吸蔵して増加する水素吸蔵素子の抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出する水素濃度導出部と、
    酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出する酸素濃度導出部と、を備えることを特徴とする水素・酸素濃度計測装置。
  2. 前記被監視雰囲気の計測時の前記水素吸蔵素子及び前記温度検知素子の周辺温度を240℃以上に維持する温度制御部を備える請求項1に記載の水素・酸素濃度計測装置。
  3. 前記温度制御部は、周辺温度を340℃以上に維持可能である請求項2に記載の水素・酸素濃度計測装置。
  4. 水素計測の測定モードを高精度と通常精度とで切り替える測定モード切替部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水素・酸素濃度計測装置。
  5. 被監視雰囲気中の水素を吸蔵して抵抗値が増加する水素吸蔵素子と、
    前記被監視雰囲気の全圧を測定する圧力センサと、
    前記被監視雰囲気の温度の上昇とともに抵抗値が増加する酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された2以上の温度検知素子と、
    2以上の前記温度検知素子をそれぞれ異なる分子透過率の材料で被覆する被覆材と、
    前記水素吸蔵素子の前記抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出する水素濃度導出部と、
    前記温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出する酸素濃度導出部と、を備えることを特徴とする水素・酸素濃度計測システム。
  6. 前記水素吸蔵素子は、水素と比較して酸素の透過率の低い被覆層で被覆される請求項5に記載の水素・酸素濃度計測システム。
  7. 被監視雰囲気中の水素を吸蔵して増加する水素吸蔵素子の抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出するステップと、
    酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出するステップと、を含むことを特徴とする水素・酸素濃度計測方法。
  8. コンピュータに、
    被監視雰囲気中の水素を吸蔵して増加する水素吸蔵素子の抵抗値、前記被監視雰囲気の温度及び前記被監視雰囲気の全圧に基づいて水素濃度を導出するステップ、
    酸素の透過率の異なる被覆材で被覆された温度検知素子からの検出温度の差異、前記水素濃度及び前記全圧に基づいて酸素濃度を導出するステップ、を実行させることを特徴とする水素・酸素濃度計測プログラム。
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