JP2018177868A - 含フッ素重合体被膜の製造方法 - Google Patents

含フッ素重合体被膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】含フッ素重合体を含む組成物を基材に塗布した後、高温の熱処理をせずに、基材に含フッ素重合体が密着した成形品を製造する方法を提供する。【解決手段】テトラフルオロエチレンに基づくモノマー単位とエチレンに基づくモノマー単位を有する含フッ素重合体と、1個のカルボニル基を有する炭素数6〜10の脂肪族化合物とを含有する含フッ素共重合体組成物を基材に塗布した後、塗膜に紫外線を照射して基材に密着させる被膜の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、含フッ素重合体被膜の製造方法に関する。
フッ素樹脂は、耐溶剤性、低誘電性、低表面エネルギー性、非粘着性、耐候性等に優れていることから、汎用のプラスチックスでは使用できない種々の用途に用いられている。中でもエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、E/TFE共重合体とも記す。)は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐候性、低摩擦性、低誘電特性、透明性等に優れるフッ素樹脂であることから、耐熱電線用被覆材料、ケミカルプラント用耐食配管材料、農業用ビニルハウス用材料、金型用離型フィルム等の幅広い分野に用いられている。
しかし、E/TFE共重合体は、一般に溶剤に不溶でコーティングによる被膜形成等ができないため、その成形方法は、押出成形、射出成形、粉体塗装等の溶融成形に限られていた。
このように溶解性の低いE/TFE共重合体を溶液化する技術については、1個のカルボニル基を有する炭素数6〜10の脂肪族炭化水素化合物を溶媒として、E/TFE共重合体の融点以下の温度で溶液状態にする技術(例えば特許文献1)が公知であり、E/TFE共重合体の溶液を塗布することで、塗膜を形成することが可能である。
しかしながら、E/TFE共重合体の被膜と基材の密着性が必ずしも十分で無いという問題があった。基材との密着性を改良するため、接着性官能基を有するE/TFE共重合体も公知であるが、基材との密着性を得るためにはE/TFE共重合体と基材を融点以上に加熱し、溶融状態で接触させる必要があった(例えば特許文献2)。よって、プラスチックの基材にE/TFE共重合体の被膜を密着させるため、基材にE/TFE共重合体の塗膜を成形して高温で熱処理すると、成形品が溶融して変形してしまう等の課題があった。
国際公開第2011/002041号 特開2016−49764号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、含フッ素重合体を含む組成物を基材に塗布した後、高温の熱処理をせず、基材に含フッ素重合体が密着した成形品を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する、含フッ素重合体被膜を成形する製造方法を提供する。
[1]含フッ素重合体と、1個のカルボニル基を有する炭素数6〜10の脂肪族化合物とを含有する含フッ素重合体組成物を基材に塗布した後、塗膜に紫外線を照射して基材に密着させる被膜の製造方法。
[2]前記含フッ素重合体がテトラフルオロエチレンに基づくモノマー単位とエチレンに基づくモノマー単位を有する、[1]に記載の製造方法。
[3]前記含フッ素重合体が接着性官能基を有する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記基材が、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリスルホン、ポリフエニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリフェニレンエーテル、熱硬化性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂からなる群から選ばれる1種である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]紫外線の照度が1〜500μW/cmである、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]紫外線照射をする基材の温度が、基材の融点以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8][1]〜[7]のいずれかの製造方法を用いて含フッ素重合体で基材を被覆して成形品を得る、成形品の製造方法。
本発明によれば、含フッ素重合体を含む組成物を基材に塗布した後、塗膜に紫外線を照射して被膜を基材に密着させることができるので、高温による熱処理をすることなく、基材を含フッ素重合体で被覆した成形品を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明で用いる含フッ素共重合体組成物(以下、本発明の組成物とも記す。)に含まれる含フッ素重合体としては、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEとも記載する)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)など各種フッ素樹脂が挙げられる。中でも、
テトラフルオロエチレンに基づくモノマー単位(以下、TFE単位とも記す。)とエチレンに基づくモノマー単位(以下、E単位とも記す。)を有するETFEが好ましい。
ETFEとしては、TFE単位およびE単位のモル比[TFE/E]が、好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは65/35〜40/60、最も好ましくは60/40〜40/60のものが挙げられる。
ETFEは、基材との密着性を得るため、接着性官能基(以下、官能基(I)とも記す。)を有するETFE(以下、ETFE(1)とも記す。)が好ましい。ETFE(1)は、単量体の重合の際に、官能基(I)を有する単量体を共重合させる、官能基(I)をもたらす連鎖移動剤や重合開始剤を使用して単量体を重合させる、等の方法で製造できる。
官能基(I)を有する単量体としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基またはイソシアネート基を有する単量体が好ましい。カルボニル基含有基としては、酸無水物基およびカルボキシ基が好ましい。具体的には、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸等のカルボキシ基を有する単量体、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等の酸無水物基を有する単量体、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、エポキシアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
官能基(I)をもたらす連鎖移動剤としては、カルボキシ基、エステル結合、水酸基等を有する連鎖移動剤が好ましい。具体的には、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
官能基(I)をもたらす重合開始剤としては、ペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル等の過酸化物系重合開始剤が好ましい。具体的には、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
ETFE(1)の製造方法としては、官能基(I)を有する単量体を共重合させることにより、その単量体単位を有する共重合体を製造して、ETFE(1)とすることが好ましい。また、官能基(I)を有する単量体としては、IAH、NAH、CAHが好ましい。
ETFE(1)において、官能基(I)を有する単量体に基づくモノマー単位(以下、I単位とも記す。)の含有量は、ETFEの全モノマー単位に対して0.01〜5モル%であり、0.03〜3モル%であることが好ましく、0.05〜1モル%であることがより好ましい。
各単位が上記範囲内であると、ETFE(1)は、耐薬品性、耐熱性に優れる。E単位が上記範囲であると、耐薬品性、耐熱性が優れる。I単位が上記範囲であると、ETFE(1)は、他の層との接着性に優れる。
なお、I単位は1種を単独で使用しても2種以上併用しても構わない。2種以上併用した場合は、その合計が上記範囲であるのが好ましい。
ETFE(1)は、TFE単位、E単位およびI単位の他に、その他の単量体に基づくモノマー単位(以下、D単位とも記す。)を含んでいてもよい。その他の単量体としては、CF=CFCl、CF=CHなどのフルオロエチレン類(ただし、TFEを除く。);CF=CFCF(以下、HFPとも記す。)、CF=CHCFなどのフルオロプロピレン類;CFCFCH=CH、CFCFCFCFCH=CH、CFCFCFCFCF=CH、CFHCFCFCF=CHなどの炭素数が2〜12のフルオロアルキル基を有する(ポリフルオロアルキル)エチレン類;Rf(OCFXCF)mOCF=CF(式中Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、Xは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基、mは、0〜5の整数を表す。)、CF=CFCFOCF=CF、CF=CF(CFOCF=CFなどのペルフルオロビニルエーテル類;CHOC(=O)CFCFCFOCF=CFやFSOCFCFOCF(CF)CFOCF=CFなどの、容易にカルボン酸基やスルホン酸基に変換可能な基を有するペルフルオロビニルエーテル類;プロピレンなどの炭素数3個のC3オレフィン、ブチレン、イソブチレンなどの炭素数4個のC4オレフィン、4−メチル−1−ペンテン、シクロヘキセン、スチレン、α−メチルスチレン等のオレフィン(ただし、エチレンを除く。)類、酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、酢酸アリル等のアリルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル等のシアノ基含有単量体類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のクロロオレフィン類などが挙げられる。これらの共単量体(コモノマー)は、単独でまたは2種以上組み合わせ使用してもよい。
ETFE(1)がD単位を含有する場合は、その含有割合は、ETFEの全モノマー単位に対して、通常は50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは0.2〜15モル%である。
ETFEの容量流速(以下、Q値という。)は、0.1〜200mm/秒が好ましく、1〜100mm/秒がより好ましく、5〜50mm/秒が最も好ましい。Q値は、ETFEの溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。Q値は、島津製作所製フローテスターを用いて、樹脂の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときのETFEの押出し速度である。この範囲にあると、ETFEは、溶媒に対する溶解性、機械的強度に優れる。
本発明のETFEの融点としては、特に限定されないが、溶解性、強度等の点から、好ましくは120℃〜275℃、より好ましくは150℃〜265℃、最も好ましくは、170℃〜260℃である。
ETFEの製造方法としては、TFE、エチレンと、さらに任意に含んでいてもよいその他の単量体とを通常の方法で共重合させたものを用いることが可能である。重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等が挙げられる。
本発明の組成物におけるETFEの含有量は、特に制限されるものではないが、これを用いて成形物を得る際の成形性の観点から、組成物全量に対して0.1〜80質量%であることが好ましい。例えば、本発明のETFEを用いて被膜を得る場合、該組成物におけるETFEの含有量は、組成物全量に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が最も好ましい。前記含有量がこの範囲にあると被膜作製におけるコーティング時等の取り扱い性に優れ、ETFEからなる均質な被膜を基材表面に得ることができる。
本発明の組成物は、1個のカルボニル基を有する炭素数6〜10の脂肪族化合物(以下、カルボニル基含有脂肪族化合物、とも記す。)を含む。前記カルボニル基含有脂肪族化合物は、後述の製造方法で説明する通り、上記含ETFEを溶解または分散して組成物とする役割を有する。上記カルボニル基含有脂肪族化合物は、室温において液体であることが好ましい。カルボニル基含有脂肪族化合物の融点は230℃以下であることが好ましい。
本発明の組成物における、1個のカルボニル基を有する炭素数6〜10の脂肪族化合物の具体例としては、特許文献1の[0040]〜[0044]に記載された環状ケトン、鎖状ケトン等のケトン類、鎖状エステル、グリコール類のモノエステル等のエステル類およびカーボネート類からなる群から選ばれる1種以上が、好ましく挙げられる。これらのうちでも、本発明の組成物における上記カルボニル基含有脂肪族化合物としては、鎖状ケトン、環状ケトンがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カルボニル基含有脂肪族化合物のさらに具体的な例としては、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソプロピルケトン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−オクタノン、3−オクタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2−ノナノン、5−ノナノン、ジイソブチルケトン、2−デカノン、3−デカノン等が挙げられる。
なお、本発明の組成物は、組成物としての機能を損なわない限りにおいて、上記カルボニル基含有脂肪族化合物とそれ以外の有機溶媒(以下、他の有機溶媒とも記す。)、例えば、芳香族化合物、カルボニル基を含まない脂肪族化合物等から選ばれる1種以上とを組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。本発明の組成物は、必須成分であるETFEおよびカルボニル基含有脂肪族化合物に加えて、任意成分として上記他の有機溶媒を含有してもよい。
本発明の組成物に、他の有機溶媒としては、特に制限されないが、混合するカルボニル基含有脂肪族化合物とETFEの溶解温度において相溶する有機溶媒であることが好ましい。他の有機溶媒として、具体的には、ベンゾニトリル、アセトフェノン、ニトロベンゼン、安息香酸メチル等の芳香族化合物、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフロオロプロポキシ)ペンタン等のエーテル類が好ましく挙げられる。また、本発明の組成物が、他の有機溶媒を含有する場合、その混合割合は、カルボニル基含有脂肪族化合物/他の有機溶媒(質量比)として、9/1〜1/9が好ましく、5/5〜3/7がより好ましい。混合溶媒を用いると、成形物からの溶媒の乾燥速度を制御することが容易となる。
本発明の組成物において、カルボニル基含有脂肪族化合物、または、他の有機溶媒との混合溶媒(以下、カルボニル基含有脂肪族化合物または他の有機溶媒を含む混合溶媒を、必要に応じて「カルボニル基含有脂肪族化合物等の溶媒」という。)の含有量は、特に制限されるものではないが、これを用いて成形物を得る際の成形性の観点から、組成物全量に対して20〜99.9質量%であることが好ましい。例えば、本発明の組成物を用いてETFE被膜を得る場合、該組成物におけるカルボニル基含有脂肪族化合物または上記カルボニル基含有脂肪族化合物等の溶媒の含有量は、組成物全量に対して70〜99.9質量%が好ましく、90〜99.5質量%がより好ましく、95〜99質量%が最も好ましい。前記含有量がこの範囲にあると被膜作製におけるコーティング時等の取扱い性に優れ、ETFEからなる均質な被膜を得ることができる。
本発明の組成物は、ETFEおよびカルボニル基含有脂肪族化合物を必須成分として含有し、他の有機溶媒を任意成分として含有するが、さらに必要に応じてその他任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。このような任意成分として、たとえば、酸化防止剤、紫外線安定剤、架橋剤、滑剤、可塑剤、増粘剤、充填剤(フィラー)、強化剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。また、本発明の効果を損なわないこれらの任意成分の含有量としては、組成物全量に対して30質量%以下の含有量を挙げることができる。
本発明の組成物が含有する上記各種成分を用いて本発明の組成物を製造する製造方法について以下に説明する。
本発明で用いる組成物は、前記含フッ素重合体と前記カルボニル基含有脂肪族化合物を混合することで製造できる。組成物は含フッ素重合体が溶解していてもよく、分散していてもよい。混合は常温で行ってもよく加熱して行ってもよい。
本発明の組成物の製造方法としては、前記含フッ素重合体を、その融点以下の温度で、前記カルボニル基含有脂肪族化合物に溶解する工程を有する製造方法が好ましい。溶解する温度は、用いる含フッ素重合体の融点より30℃以上低い温度であることがより好ましい。
本発明における含フッ素重合体の融点は、最も高いもので概ね275℃であることから、上記溶解する温度としては、230℃以下がより好ましく、200℃以下が特に好ましい。また、この溶解工程の温度の下限としては、0℃が好ましく、20℃がより好ましい。前記溶解工程の温度が0℃未満では、充分な溶解状態が得られない場合があり、230℃を超える温度では、実際作業を行う上で、容易に実行できないことがある。温度がこの範囲にあると、溶解作業が容易に実行できる。
前記溶解工程において、温度以外の条件は特に限定されるものではなく、通常は常圧下に実施することが好ましい。沸点が溶解工程の温度より低い場合等には、耐圧容器中で、少なくとも自然発生圧力以下、好ましくは3MPa以下、より好ましくは2MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下の条件下、最も好ましくは常圧以下の条件下で溶解する方法が挙げられるが、一般的には、0.01〜1MPa程度の条件下で溶解を実施することができる。
溶解時間は、本発明の組成物における前記含フッ素重合体の含有量や該含フッ素重合体の形状等に依存する。用いる含フッ素重合体の形状は、溶解時間を短くする作業効率の点でいえば、粉末状のものが好ましいが、入手のし易さ等からペレット状等、その他の形状のものを用いることも可能である。
前記溶解工程における溶解の手段は特別なものではなく、一般的な方法によればよい。例えば、組成物に配合する各成分の必要量を秤量し、用いる含フッ素重合体の融点以下の温度、好ましくは、0〜230℃の温度でこれら成分を均一に混合して前記含フッ素重合体を前記脂肪族化合物に溶解させればよく、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸または二軸押出機等の一般的な撹拌混合機を用いて、前記溶解を実施することが効率の点で好ましい。加圧下に溶解する場合には、攪拌機付きオートクレーブ等の装置を用い、攪拌翼の形状としては、マリンプロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼等が用いられる。
本発明の製造方法は、ETFEを基材に密着させるものである。基材としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等。)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリスルホン、ポリフエニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリフェニレンエーテル、熱硬化性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂が好ましい。
また、該プラスチック材料には、該プラスチック材料をマトリックスとしてカーボンブラック、各種のエラストマー成分、ガラス繊維、カーボン繊維等が含まれていてもよい。
本発明の製造方法によれば、基材にETFEを含む組成物を塗布した後、塗膜に紫外線を照射することでETFEの被膜(以下、ETFE被膜とも記す。)が基材に密着する。ETFE被膜が基材に密着する機構は、必ずしも明確ではないが、紫外線によって基材に二重結合や含酸素官能基が生成し、ETFEに含まれる接着性官能基と反応することや静電気的な引力が生成すると推定される。
ETFE被膜が、基材との十分な密着性を発現するには、照射する紫外線の照度は1〜500μW/cmが好ましく、10〜200μW/cmの範囲にすることがより好ましい。紫外線量が前記範囲内であれば、ETFEと基材の密着性が良好であり、紫外線でETFEおよび基材が過度に分解される等の不具合が起こらないので好ましい。
紫外線を照射する基材の温度は、基材の融点以下であることが好ましく、融点より20℃以上低い温度以下であることがより好ましく、融点より40℃以上低い温度以下であることが最も好ましい。本発明のETFE被膜と基材は紫外線で良好な密着性が得られるため、基材が溶融するほどの高温にする必要が無い。紫外線照射する基材の温度は、基材の融点以下であれば特に制限はないが、下限温度は0℃以上が好ましく、20℃以上が好ましい。
本発明の製造方法は、ETFE組成物を基材へ塗布する、または、基材をETFE組成物に浸漬する等の方法によりETFE塗膜を製造することが好ましい。
本発明の製造方法としては、組成物を基材に塗布後、基材の融点以下の温度で乾燥(溶媒を除去)する方法が挙げられる。
組成物の塗布に用いる方法としては、特別なものではなく、一般的に用いられる方法を用いることができる。このような塗布方法として、例えば、グラビアコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング、静電塗装、刷毛塗り、スクリーン印刷、ロールコーティング、スピンコーティングなどの方法が挙げられる。
本発明の製造方法の一つの態様は、前記組成物に含まれるETFEの融点が基材の融点よりも低い場合は、組成物を基材に塗布し、乾燥して溶媒を除去し、UVを照射し、その後、成形品をETFEの融点以上、基材の融点以下の温度で加熱することで、基材上に緻密で平坦なETFE被膜を得ることができる。
上記基材上に製造されるETFE被膜の膜厚は、目的に応じて自由に選択することができる。組成物として、濃度の高い分散液を用いれば、膜厚の大きい被膜が得られ、濃度の低い分散液を用いれば、膜厚の小さい被膜を得ることができる。また、塗布工程を複数回繰り返して行うことで、より膜厚の大きい被膜を得ることもできる。このようにして得られる被膜の膜厚は、0.01μm〜1000.0μmが好ましく、0.1μm〜100.0μmがより好ましく、0.5μm〜50.0μmが最も好ましい。
本発明の基材がETFE被膜で被覆された成形品は、フィルム、シート、ホース、チューブ、管、継手、バルブ等の形状である。
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[融点]
示差走査熱量計(SII株式会社製、DSC−7020)を用い、試料約5mgを乾燥空気流通下に300℃で10分保持した後、100℃まで10℃/分の降温速度で降温し、続いて10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温したときの結晶融解ピークの頂点に対応する温度を融点とした。
[ETFE−1の組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析で求めた。
〔合成例1〕
内容積1.3Lの、攪拌機及びジャケットを備えたステンレス製重合槽を真空引きした後、CFCHOCFCFHの822g、CH=CH(CFFの3.2g、メタノールの1.65gを仕込み、重合槽内部を攪拌しながらHFPの350g、TFEの118g、Eの2.9gを仕込んだ後、ジャケットに温水を流して重合槽内温を66℃にした。この時の重合槽内圧力1.56MPaGであった。内温が安定してからtert−ブチルペルオキシピバレートの5質量%CFCHOCFCFH溶液の5.4mLを圧入し、重合を開始した。重合中、内圧が1.56MPaGで一定になるよう、TFE/E=54/46モル比の混合ガスを添加した。併せて重合中に添加されるTFE/E混合ガスが5g消費される毎にCH=CH(CFFの7.1質量%、無水イタコン酸の1.3質量%CFCHOCFCFH溶液の2mLを添加した。反応開始から347分後、TFE/E=54/46モル比の混合ガスの70gを添加したところで重合槽を冷却し、重合を終了した。
そして、重合槽から残モノマーガスを大気圧までパージし、スラリーを内容積2Lの容器に移し、スラリーと同体積の水を加え、加熱しながら重合媒体、残モノマーと含フッ素共重合体とを分離した。得られたポリマーを120℃のオーブンで乾燥し、白色粉末状のETFE−1を得た。
ETFE−1の220℃における容量流速は14mm/秒、組成はTFE/E/HFP/CH=CH(CFF/無水イタコン酸=49.1/41.6/7.8/1.0/0.5モル%、融点は195℃であった。
[実施例1]
1リットルの攪拌機付きガラス製反応容器に、ETFE−1の6g、ジイソプロピルケトン(東京純薬工業株式会社製)の594gを仕込み、気相部を窒素置換した。次に、400rpmで撹拌しながら容器を150℃まで昇温し、1時間撹拌したのち室温まで冷却し、分散液であるETFE組成物―1を得た。
ETFE組成物―1を、60℃に加熱した厚さ3mmの塩素化塩化ビニル樹脂の板に塗布し、ETFE−1の塗膜で被覆された塩素化塩化ビニル樹脂を得た。続いて、ETFE−1の塗膜に紫外線を50分間照射した。紫外線は紫外線ランプ(セン特殊光源株式会社製、SUV40U(L)、UV照度90μW/cm、UV強度9W)を二本用いて、窒素雰囲気下で行った。
紫外線照射した後に、ETFE−1の被膜を爪で擦っても被覆は容易に剥離せず、基材に密着していることが確認された。
[比較例1]
紫外線を照射しない以外は実施例1と同様にして、ETFE−1の塗膜で被覆された塩素化塩化ビニル樹脂の板を作製した。紫外線を照射していないETFE−1の塗膜を爪で擦ったところ、剥離してしまい、十分に密着していないことが分かった。
本発明の製造方法により、容易にETFE被膜を基材に密着させることができる。本発明で得られる、ETFEで被覆された成形品は、基材表面にETFEの撥水撥油性、低摩擦性、耐薬品性、電気特性を付与されており、化学産業や電子部品等に応用することが可能である。

Claims (8)

  1. 含フッ素重合体と、1個のカルボニル基を有する炭素数6〜10の脂肪族化合物とを含有する含フッ素重合体組成物を基材に塗布した後、塗膜に紫外線を照射して基材に密着させる被膜の製造方法。
  2. 前記含フッ素重合体が、テトラフルオロエチレンに基づくモノマー単位とエチレンに基づくモノマー単位を有する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記含フッ素重合体が接着性官能基を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記基材が、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリスルホン、ポリフエニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリフェニレンエーテル、熱硬化性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂からなる群から選ばれる1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 紫外線の照度が1〜500μW/cmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 紫外線照射をする基材の温度が、基材の融点以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法を用いて含フッ素重合体で基材を被覆して成形品を得る、成形品の製造方法。
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