JP2018172241A - サイアロンセラミックス及びその製造方法 - Google Patents

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尚志 吉岡
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要 末原
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Abstract

【課題】適度な硬度を有すると共に、硬さクリープ耐性にも優れたサイアロンセラミックスの提供。【解決手段】β-サイアロン相、ガラス相及び任意にα-サイアロン相を含むサイアロンセラミックスであって、α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対するα-サイアロン相の重量百分率が15%を超えない範囲で、α-サイアロン相を含んでいてもよく、前記サイアロンセラミックスの断面積に現れるガラス相の占める面積百分率が6〜10%であり、前記サイアロンセラミックスの断面の6.5μm×14.5μmの領域内に2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子が10個以上存在し、前記2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子の平均アスペクト比が3.5以上であり、前記ガラス相及び前記任意のα-サイアロン相構成粒子が重希土類元素を含み、任意に軽希土類元素を含んでもよい、ことを特徴とするサイアロンセラミックス、及びその製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、シリコンアルミニウム酸窒化物[サイアロン(SiAlON)]セラミックス材料及びその製造方法に関する。
物体に応力が持続的に作用することにより、時間経過と共に該物体の歪みが増大する現象を、クリープ(creep)変形と呼ぶ。かかるクリープ現象について、巨視的な部材の伸びを示す一般的なクリープ現象のほか、高硬度の圧子を材料に押し込んだ際に観察される「硬さクリープ」が知られており、構造用材料等の材料分野で盛んに研究されていた。しかし、硬さクリープについては、実際の構造用材料の特性を示すパラメータとしての有用性を十分に見出すことができなかったため、近年では研究は下火となっている.
特許第4971194号公報 特許第5629843号公報 特許第4191268号公報
日本金属学会誌 第63巻 第6号(1999)760−769
しかし、本発明者らは金属切削工具、特に金属切削工具に用いられるセラミックス材料について、高温ビッカース硬度等の硬度のみならず、クリープ変形に対する強度である硬さクリープ耐性、特に応力指数nを制御することが重要であることに気が付いた。すなわち、金属切削における切削工具の摩擦,摺動においては高温が伴う。たとえば、切削速度500m/minを超える超高速切削においては,刃先温度は1000℃以上となる。このような状況で金属の連続切削が行われている場合,刃先には応力がかかり続ける。この場合,硬さの絶対値よりも、長時間の応力負荷に対する変形が刃先寿命に影響を及ぼす.すなわち、刃先摩耗は、ゆっくりとした変形(クリープ)により刃先が本来の形状からずれ、工具先端が物理的にもぎ取られることにより生じると考えられる(図1参照)。
そこで、本願発明の課題は、高温ビッカース硬度等の硬度を好適に維持しつつ、クリープ変形に対する強度である硬さクリープ耐性にも優れるセラミックス材料(サイアロンセラミックス)の特定組成及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、下記本発明の第一の態様において、高温での摩擦や摺動が生じる、金属切削等の用途に用いられるサイアロンセラミックスについて、適度な硬度を有すると共に、硬さクリープ耐性にも優れた特徴的な組成を明らかにすることができた。そして、下記本発明の第二の態様において、サイアロンセラミックス製造時の原料組成を制御することで、前記の優れた特徴を有するサイアロンセラミックスの製造方法を見出した。
すなわち、本発明の第一の態様は、
β-サイアロン相、ガラス相及び任意のα-サイアロン相を含むサイアロンセラミックスであって、
α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対する重量百分率として15%を超えない範囲でα-サイアロン相を含んでいてもよく、
前記サイアロンセラミックスの断面に現れるガラス相の占める面積百分率が6〜10%であり、
前記サイアロンセラミックスの断面の6.5μm×14.5μmの領域内に2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子が10個以上存在し、
前記2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子の平均アスペクト比が3.5以上であり、
前記ガラス相及び前記α-サイアロン相構成粒子は重希土類元素を含み、任意に軽希土類元素を含んでもよい、
ことを特徴とするサイアロンセラミックスである。
また、本発明の第二の態様は、
(I)42〜54モル%の窒化珪素(Si34)、26〜46モル%の窒化アルミニウム(AlN)、9〜22モル%の酸化アルミニウム(Al23)、1.8〜3.4モル%の重希土類酸化物及び任意に0〜2.1モル%の軽希土類酸化物を、合計100モル%となるように含み、前記窒化珪素(Si34)のモル数に対する、前記重希土類酸化物及び前記軽希土類酸化物中の全希土類元素のモル数の比の百分率が、7.0%〜10.0%である原料粉末混合物を準備する工程と、
(II)前記原料粉末混合物を溶媒または分散剤の共存下、粉砕混合する工程と、
(III)前記粉砕混合した原料粉末混合物を乾燥する工程と、
(IV)前記乾燥した原料粉末混合物をプレス成形後、焼結する工程と、
を含むこと特徴とする、サイアロンセラミックスの製造方法である。
本発明によれば、良好な高温ビッカース硬さを維持しつつ、高い硬さクリープ耐性を示すサイアロンセラミックスを提供することができる。
クリープ変形によるセラミック工具の摩耗を説明する図である。すなわち、図1(a)はクリープ変形のない状態、図1(b)はクリープ変形のある状態を図示する。 ビッカース圧子の形状と押込み厚さを説明する図である。 サイアロンセラミックス(実施例4及び比較例1)の高温ビッカース硬さ試験において、高温ビッカース硬さを保持時間に対してプロットした図である。 高温ビッカース硬さ試験の圧痕サイズを速度論的に解析することにより、サイアロンセラミックス(実施例4及び比較例1)の硬さクリープ耐性の応力指数nを見積もる方法を説明する図である。ここで、縦軸は圧子の押込み深さ(メートル)の自然対数、横軸は押込み時間(秒)の自然対数である。 実施例1のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 実施例2のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 実施例3のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 実施例4のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 実施例5のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 実施例6のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 比較例1のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。 比較例2のサイアロンセラミックスの微細組織を示す走査電子顕微鏡写真(倍率:1万倍)である。
[1]本発明の第一の態様について
本発明の第一の態様は、β-サイアロン相、ガラス相及び任意のα-サイアロン相を含むサイアロンセラミックスを対象とし、少なくとも以下の5つの要件:
(i)α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対する重量百分率として15%を超えない範囲で、α-サイアロン相を任意に含んでいてもよく、
(ii)前記サイアロンセラミックスの断面積に現れるガラス相の占める面積百分率が6〜10%であり、
(iii)前記サイアロンセラミックスの断面の6.5μm×14.5μmの領域内に2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子が10個以上存在し、
(iv)前記2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子の平均アスペクト比が3.5以上であり、
(v)前記ガラス相及び前記任意のα-サイアロン相構成粒子は重希土類元素を含み、任意に軽希土類元素を含んでもよい、
との要件を満たす。
本態様のサイアロンセラミックスは、適量を超えては存在しないα-サイアロン相構成粒子と、十分に発達した棒状のβ-サイアロン相構成粒子と、これら粒子間に適量のガラス相が存在し、良好な高温ビッカース硬さを維持しつつ、高い硬さクリープ耐性を示す。
(1−1)
本発明の第二の態様で詳しく説明するが、サイアロンセラミックスは原料金属酸化物粉末を焼結することによって得ることができ、β-サイアロン相、ガラス相及び任意のα-サイアロン相が主要構成成分として含まれる。
原料組成や焼結条件によっては、さらに12H-サイアロン、15R-サイアロン、21R-サイアロン等のポリタイプサイアロンが含まれる場合もある。もっとも、高温時の耐摩耗性の観点からは,断面観察において実質的にβ-サイアロン相、ガラス相及び任意のα-サイアロン相で構成されており、X線回折法による分析においてもβ-サイアロン相及び任意のα-サイアロン相以外のポリタイプサイアロン相は検出されないことが望ましい。なお、本願明細書に記載の実施例においては、X線回折法によるポリタイプサイアロンは実質的には検出されなかった(1重量%未満)。
(1−2)
β-サイアロン相とは、下式(1):
Si6-zAlzz8-z 式(1)
(ここで、0≦z≦4)
の化学構造を有するβ-サイアロンの粒子(β-サイアロン相構成粒子)により構成される相をいい、β-サイアロンはβ-窒化珪素(β-Si34)と類似の結晶形を有する。
(1−3)
さらに、ガラス相とは、焼結後に無定形相として存在する相をいう。このガラス相は原料粉末の焼結時には液相として存在し、焼結して得られるサイアロンセラミックスの緻密化に寄与する。後記(2−1)でも説明するように、主原料である窒化珪素(Si34)の表面にあるシリカ(SiO2)と焼結助剤との焼結時の反応により液相が生成する。
なお、サイアロンセラミックス断面の走査電子顕微鏡写真(図5〜図12参照)において、ガラス相は、黒く観察される粒子の間隙を埋める白い部分として観察できる。
また、ガラス相中の重希土類元素あるいは任意の軽希土類元素の存在は、(エネルギー分散型X線分析)の方法により検出することができる。
(1−4)
α-サイアロン相とは、下式(2):
x(Si,Al)12(O,N)16 式(2)
(ここで、0≦x≦2、Mは侵入型固溶元素)
の化学構造を有するα-サイアロンの粒子(α-サイアロン相構成粒子)により構成される相をいい、α-サイアロンはα-窒化珪素(α-Si34)と類似の結晶形を有する。
そして、本態様における侵入型固溶元素Mは希土類元素であるが、本態様の侵入型固溶元素Mの少なくとも一部には、重希土類元素が含まれる[前記要件(v)参照]。そして、本発明の第二の態様で説明するが、本態様にいう侵入型固溶元素Mは、原料金属酸化物中に含まれる希土類酸化物(重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物)に由来する。
重希土類元素とは、イットリウム族元素とも呼ばれ、希土類元素の中でもその水酸化物の塩基性が比較的弱い元素である。具体的には、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、及びランタノイド元素に属する9元素[原子番号の低い方から高い方の順に、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)]の、合計11元素を意味する。この中でも、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)がより好ましい。
また、本態様の侵入型固溶元素Mには、上記重希土類元素に加えて、軽希土類元素が含まれていてもよい。
ここで、軽希土類元素とは、セリウム族元素とも呼ばれ、希土類元素の中でもその水酸化物の塩基性が最も強い一群の元素である。具体的には、ランタノイド元素に属するランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)の6元素を意味する。この中でも、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)がより好ましい。
なお、α-サイアロン相中の重希土類元素あるいは任意の軽希土類元素の存在は、(エネルギー分散型X線分析)の方法により検出することができる。
(1−5)
α-サイアロン相は、α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対する重量百分率(以下、「α/(α+β)率」と呼ぶこともある)として15%を超えない量で、本態様のサイアロンセラミックス中に任意に含まれていてもよい[要件(i)]。かかる重量百分率は、実施例の[物性測定]において説明するが、X線回折装置を用いた回折データを解析することによって見積もることができる。
一般にα-サイアロン相は、サイアロンセラミックスの硬さ(ビッカース硬度等)を向上させる。かかる観点からは、α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対する重量百分率として7%以上含まれることが好ましい。
なお、サイアロンセラミックス断面の走査電子顕微鏡写真(図5〜図12参照)において、α-サイアロン相構成粒子は、比較的薄い黒に着色された粒子として観察され、その平面形状も板状である。
(1−6)
ガラス相は、サイアロンセラミックスの断面積に現れる面積百分率として6〜10%の量で含まれる[要件(ii)]。かかる面積百分率は、実施例の[物性測定]において説明するが、走査電子顕微鏡を用いて見積もることができる。
ガラス相は特に、サイアロンセラミックスの高温特性に影響を及ぼす。後記(2−1)でも説明するように、原料粉末混合物からサイアロンを焼結により製造する際に、適量の液相として存在し、β-サイアロン相構成粒子の成長、及びそのアスペクト比の増加に寄与する。かかる観点から面積百分率として少なくとも6%含まれる。さらに、本願発明ではガラス相に希土類元素を含むので比較的融点が高く、ガラス相が比較的多く含まれていても高温(たとえば1000℃以上)における強度は比較的維持される。もっとも、高温における強度向上に最も寄与するのはアスペクト比の高いβ-サイアロン相構成粒子であることから、ガラス相の面積百分率の上限として10%までとしている。
(1−7)
β-サイアロン相は、本態様のサイアロンセラミックス中の第一の主構成成分であり、β-サイアロン粒子の棒状構造により、サイアロンセラミックスの破壊靭性を向上させることができる。かかる観点からは、β-サイアロン相構成粒子の数が多いほど、またβ-サイアロン相構成粒子のアスペクト比が大きいほど好ましい。サイアロンセラミックスの断面の6.5μm×14.5μmの領域内に2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子が10個以上、好ましくは12個以上、より好ましくは14個以上存在すること[要件(iii)]、及び2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子の平均アスペクト比が3.5以上であること、好ましくは3.9以上であること[要件(iv)]の要件もかかる観点から規定されたものである。
これらのパラメータの測定については、実施例の[物性測定]において説明する。ここで、β-サイアロン相構成粒子の最大径とは、走査電子顕微鏡写真により観察される粒子の平面形状を通過する直線を考え、そのような直線のうち、該粒子の平面を最も長く通過する直線の長さを意味する。
なお、サイアロンセラミックス断面の走査電子顕微鏡写真(図5〜図12参照)において、β-サイアロン相構成粒子は、比較的濃い黒に着色された粒子として観察され、その平面形状も棒状である。
(1−8)
本態様のサイアロンセラミックスは、高い硬さクリープ耐性(応力指数nが少なくとも25以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上)を示す。硬さクリープ耐性はサイアロンセラミックスの特性を示すパラメーターとしてあまり注目されなかったため、これまで十分な検討がされていなかった。
本態様のサイアロンセラミックスが、高い硬さクリープ耐性が発現するのは微細組織中に,周辺組織に認められる粒子より粗大な棒状のβ-サイアロン粒子が多数含まれることによる。すなわち、1100℃以上の高温でセラミックスに応力を生じさせた場合、粒子間のガラス相が軟化し粒子間の相対位置を変えながらゆっくりとした変形が生じようとする。しかし、セラミックス中に棒状の耐熱性を有するβ−サイアロン相構成粒子が存在すると、このβ−サイアロン相構成粒子がピン止めと同様の機能を果たして、前記の変形を鈍化させていると考えられる.
[2]本発明の第二の態様について
本態様は、本発明の第一の態様のサイアロンセラミックスを製造する方法に相当する。サイアロン焼結体の形成過程においては、希土類元素は可能性として、任意のα-サイアロン相の形成に寄与する部分と、ガラス相に残留する部分とがあり、その比率が他の原料である窒化珪素,窒化アルミニウム,酸化アルミニウム(さらに窒化珪素粉末表面に自然に存在する酸化ケイ素)のバランスで変化してしまうため制御がそれほど容易とはいえない。
本態様は、少なくとも以下の4つの工程(I)〜(IV):
(I)42〜54モル%の窒化珪素(Si34)、26〜46モル%の窒化アルミニウム(AlN)、9〜22モル%の酸化アルミニウム(Al23)、1.8〜3.4モル%の重希土類酸化物及び任意に0〜2.1モル%の軽希土類酸化物を、合計100モル%となるように含み、前記窒化珪素(Si34)のモル数に対する前記重希土類酸化物と前記軽希土類酸化物中の全希土類元素のモル数との比の百分率が、7.0%〜10.0%である原料粉末混合物を準備する工程;
(II)前記原料粉末混合物を溶媒または分散剤の共存下、粉砕混合する工程;
(III)前記粉砕混合した原料粉末混合物を乾燥する工程;及び
(IV)前記乾燥した原料粉末混合物をプレス成形後、焼結する工程;
を含むことによって、サイアロンセラミックスの相構成等を制御する。
(2−1)
工程(I)はサイアロンセラミックスを製造するための原料混合物を特定の組成範囲で準備する工程である。得られるサイアロンセラミックス焼結体における、β-サイアロン相と任意のα-サイアロン相との重量比率や、ガラス相の含有率は、原料混合物の組成範囲に大きく影響される。
ここで、窒化珪素(Si34)は焼結セラミックスを形成するための主原料であり、その他の窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al23)、重希土類酸化物及び任意成分である軽希土類酸化物[本発明の第一の態様の前記[1]の要件(v)に関連]は焼結助剤に相当する。
すなわち、後の工程である工程(IV)において、焼結助剤は窒化珪素(Si34)の粒子内に固溶して、β-サイアロン相及び任意のα-サイアロン相を形成する。
他方で、焼結助剤は、後の工程である工程(IV)において、窒化珪素(Si34)の表面に存在するシリカ(SiO2)と反応して液相を形成し、焼結後はガラス相として残存する[本発明の第一の態様の前記[1]の要件(ii)に関連]。
ここで、焼結助剤としての希土類酸化物(重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物)は、ガラス相の形成及び前記(1−2)にいう侵入型固溶元素Mとなって任意のα-サイアロン相の形成に関与する[本発明の第一の態様の前記[1]の要件(i)に関連]。
また焼結中の前記液相が適量存在することは、β-サイアロン相構成粒子の棒状粒子の成長促進や該棒状粒子のアスペクト比向上に有利に働くものと考えられる[本発明の第一の態様の前記[1]の要件(iii)(iv)に関連]。焼結中の液相は、焼結後はサイアロンセラミックス中のガラス相となることから、液相の量を制御することにより、焼結後のサイアロンセラミックス中のガラス相の量を制御することができる。そして、窒化珪素(Si34)、酸化アルミニウム(Al23)及び窒化アルミニウム(AlN)の間の比率を固定した場合、窒化珪素(Si34)に対する希土類酸化物(重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物)の量を調節することで、β-サイアロン相に対するα-サイアロン相や液相の割合を制御できるものと考えられる。すなわち、希土類酸化物の添加によりβ-サイアロンではなく別の結晶相であるα-サイアロンが形成されやすくなり、また、β-サイアロン相という結晶相の形成が妨げられることで液相が形成されやすくなると考えられる。すなわち、窒化珪素(Si34)に対する希土類酸化物(重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物)の量を調節することで、β-サイアロン相に対するα-サイアロン相や液相の割合を制御できるものと考えられる。すなわち、希土類酸化物の添加によりβ-サイアロンではなく別の結晶相であるα-サイアロンが形成されやすくなり、また、β-サイアロン相という結晶相の形成が妨げられることで液相が形成されやすくなると考えられる。
また、用いる希土類酸化物(重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物)中の重希土類酸化物の割合を増やすことで、α-サイアロン相がより形成されやすくなる。重希土類元素は、軽希土類元素に比べてイオン半径が小さい傾向があり、少ない量でも窒化珪素中に固溶しやすくαサイアロン相となりやすいからである。
このように、本願発明の所望のサイアロンセラミックスを得る上で、希土類酸化物により提供される希土類元素が重要な働きをしている。すなわち、一部の希土類元素はα-サイアロン相における侵入型固溶元素Mとなり、任意のα-サイアロン相生成に寄与する。また一部の希土類元素はガラス相に固溶し,ガラス相の融点などの熱的性質や,他物質との反応性に寄与する。またさらに焼結時の液相に存在することでβ-サイアロン相の粒成長、特にβ-サイアロン相は棒状に延伸するところ、そのアスペクト比や粒成長を変化させる。
かかる観点から、本願発明においては、窒化珪素(Si34)のモル数に対する重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物中の希土類元素の全モル数の比の百分率を、好ましくは7.0%〜10.0%、より好ましくは8.0%〜10.0%に調節するのが、適量のガラス相の形成、及びβ-サイアロン相の粒成長や高いアスペクト比の点で好ましい。
また、適量のα-サイアロン相を得る観点からは、さらに希土類酸化物(重希土類酸化物及び任意の軽希土類酸化物)中の希土類元素の全モル数に対する重希土類酸化物中の重希土類元素のモル数の百分率が、50%〜100%であることが好ましく、75%〜100%であることがより好ましい。
これにより、得られるサイアロンセラミックスの良好な高温ビッカース硬さ(たとえば1100℃の環境においてビッカース硬さ600HV程度)と高い硬さクリープ耐性(たとえば応力指数nが25以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上)に寄与できる。
さらに、本願発明では、α/(α+β)率制御の観点から、原料粉末混合物中に含まれるアルミナと窒化アルミナの合計モル数に対する窒化アルミニウムのモル数の比の百分率が60〜75%であることが好ましい。
また、高温時の耐摩耗性の観点からは、ポリサイアロン相はできるだけ存在しない方が好ましく、サイアロンの断面積に現れる、β-サイアロン相、ガラス相及び任意のα-サイアロン相の面積百分率を向上させる観点からは、原料粉末混合物中に含まれるアルミニウム原子のモル数に対する珪素原子のモル数の比が、0.9〜1.2であることが好ましく、0.9〜1.1であることがより好ましい。また、このパラメーターは、主原料である窒化珪素(Si34)の量に対する、焼結助剤である窒化アルミニウム(AlN)及び酸化アルミニウム(Al23)の量を反映するものであるから、このパラメータを制御することでも、液相の割合を調節することができる。
(2−2)
なお、主原料である窒化珪素(Si34)は、α-窒化珪素相及びβ-窒化珪素相の合計重量に対するα-窒化珪素相の重量百分率が90%以上であることが、焼結性向上の観点で好ましい。なお、α-窒化珪素相の重量百分率(以下、窒化珪素について、単にα-相率と呼ぶ場合がある。)はX線回折により測定することができる。
また、重希土類酸化物とは、イットリウム族元素の酸化物である。具体的には、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、及びランタノイド元素に属する9元素[原子番号の低い方から高い方の順に、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)]の、合計11元素の酸化物を意味する。この中でも、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の酸化物がより好ましい。
さらに軽希土類元素とは、セリウム族元素の酸化物である。具体的には、ランタノイド元素に属するランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)の6元素の酸化物を意味する。この中でも、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)の酸化物がより好ましい。
(2−3)
工程(II)は、工程(I)で準備した原料粉末混合物を、溶媒または分散剤の共存下、粉砕混合する工程である。
溶媒としてはエタノール、その他公知の分散剤を用いることができる。
また、粉砕メディアとしては、従来公知の任意の装置を用いることができるが、窒化珪素ボールを加え転動ミルで混合を行うことが、混合粉の均一性と汚染防止の点で好ましい。
(2−4)
工程(III)は、工程(II)で得られた粉砕混合した原料粉末混合物を乾燥する工程である。
乾燥には、従来公知の任意の装置を用いることができるが、スプレードライにより乾燥を実施することが成形体の均一性の点で好ましい。
(2−5)
工程(IV)は、工程(III)で得られた乾燥した原料粉末混合物をプレス成形後、焼結する工程である。
焼結条件としては、雰囲気炉中の窒素雰囲気下、0.1〜0.9MPaの圧力、1800℃程度の温度で数時間程度で焼結を行うことが好ましい。
[実施例1]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm)、窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm)、アルミナ粉末(平均粒径約0.3μm)及びイットリア粉末(平均粒径約3μm)を63:16:14:7の重量比に混合した。モル%比に換算すると、53.5:32.5:11.4:2.6(合計100.0モル%)である。得られた固相混合物を、固相となる該混合物の重量と同重量のエタノールに溶解させ、さらに2重量%(前記固相混合物100g当たり2g添加)の凝固剤(ポリビニルアセタール樹脂)を加え、固相混合物重量の2.5倍の窒化ケイ素ボール(φ5mm)とともに横置き回転ミルを用いて約100rpmにて10時間以上混合した。得られたスラリーを窒素気流中で噴霧乾燥した後、成形圧約60MPaで錠剤形(直径約17mm,厚さ10mm)に成形して焼結を行った.焼結は約9気圧に加圧した窒素中で1800℃、4時間以上保持することで行った。断面の微細組織を図5に示す。
[実施例2]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm)、窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm)、アルミナ粉末(平均粒径0.3μm)、イットリア粉末(平均粒径約3μm)及び酸化ランタン粉末(平均粒径約3μm)を63:16:14:5:2の重量比に混合した。モル%比に換算すると、53.6:32.6:11.5:1.8:0.5(合計100.0モル%)である。得られた混合物に対して、実施例1と同様の工程でサイアロンセラミックスを焼結した。断面の微細組織を図6に示す。
[実施例3]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm)、窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm)、アルミナ粉末(平均粒径約0.3μm)、イットリア粉末(平均粒径約3μm)及び酸化セリウム粉末(平均粒径約3μm)を63:16:14:5:2の重量比に混合した。モル%比に換算すると、53.3:32.4:11.4:1.8:1.0(合計99.9モル%)である。得られた混合物に対して、実施例1と同様の工程でサイアロンセラミックスを焼結した。断面の微細組織を図7に示す。
[実施例4]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm)、窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm),アルミナ粉末(平均粒径約0.3μm)、イットリア粉末(平均粒径約3μm)及び酸化プラセオジム粉末(平均粒径約3μm)を63:16:14:5:2の重量比に混合した。モル%比に換算すると、53.6:32.6:11.5:1.8:0.2(合計99.7モル%)である。得られた混合物に対して、実施例1と同様の工程でサイアロンセラミックスを焼結した。断面の微細組織を図8に示す。
[実施例5]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm),窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm),アルミナ粉末(平均粒径約0.3μm),イットリア粉末(平均粒径約3μm),酸化ネオジム粉末(平均粒径約3μm)を63:16:14:5:2の重量比に混合した。モル%比に換算すると、53.6:32.6:11.5:1.8:0.5(合計100.0モル%)である。得られた混合物に対して、実施例1と同様の工程でサイアロンセラミックスを焼結した。断面の微細組織を図9に示す。
[実施例6]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm)、窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm)、アルミナ粉末(平均粒径約0.3μm)、イットリア粉末(平均粒径約3μm)及び酸化サマリウム粉末(平均粒径約3μm)を63:16:14:5:2の重量比に混合した。モル%比に換算すると、53.6:32.6:11.5:1.8:0.5(合計100.0モル%)である。得られた混合物に対して、実施例1と同様の工程でサイアロンセラミックスを焼結した。断面の微細組織を図10に示す。
[比較例1]
窒化珪素粉末(α相率91%以上,平均粒径約0.7μm)、窒化アルミニウム粉末(平均粒径約1.1μm)、アルミナ粉末(平均粒径約0.3μm)及びイットリア粉末(平均粒径約3μm)を 70:12.5:12:5.5の重量比に混合した。モル比に換算すると、61.5:26.3:10.1:2.1(合計100.0モル%)である。得られた混合物に対して、実施例1と同様の工程でサイアロンセラミックスを焼結した。断面の微細組織を図11に示す。
[比較例2]
市販の工具用サイアロンセラミックス(ケナメタル製KYS30)について試作品と同様の評価を行った。詳細な組成は不明だが,希土類としてはイッテルビウムを検出した.断面の微細組織を図12に示す。
[物性測定]
上記で得られた実施例1〜6及び試験例1、2のサイアロンセラミックスについて、以下の各種物性を測定した。
(高温ビッカース硬さ)
ビッカース硬さ(HV)は、圧子を測定面に押し付けたときの窪みの表面積を荷重で除して得た商を基礎にして硬さの大小を決めるものである。より具体的には、荷重の大きさをP(Kg重)、窪みの正方形の対角線長さをd(mm)とした場合に、
下式(3):
HV=1.854P/d2(Kg/mm2) (3)
で与えられる。
そして、高温ビッカース硬さは、高温顕微硬度計ニコンQM−2を用い、真空下、1100℃にて立方晶窒化ホウ素(cBN)圧子(ビッカース圧子)を用いて測定した(荷重:1kg重、保持時間:10秒)。保持時間以外はJISR1623に準じる。
(硬さクリープ耐性)
高温顕微硬度計ニコンQM−2を用い、真空下、1100℃にて立方晶窒化ホウ素(cBN)圧子(ビッカース圧子)を用いて、圧子の押込み時間を10秒から480秒まで変化させ,圧痕形状から硬さクリープ挙動を測定した(荷重:1kg重)。
硬さクリープ耐性の評価は、下式(4):
u=[2A2nt(F/E)nexp(−Qc/RT)+u0 2n1/2n (4)
u:圧子の押込み深さ
0:押込みクリープの定常状態が始まるときの圧子の押し込み深さ
2:材料定数
n:応力指数
t:押込み時間
F:荷重
E:ヤング率
Qc:クリープの活性化エネルギー
R:気体定数
T:試験温度
を基礎にして、応力指数nを見積もることによって行う。すなわち、u>>u0の場合、上式(4)は、押し込みクリープ曲線(圧子の押し込み深さu vs.押込み時間t)を両対数グラフに書き直すと1本の直線になることを示すことができ、このときの直線部分の勾配s(=[∂ln t/∂ln u]T)が1/2nに等しいことから、下式(5)により求めることができる(非特許文献1参照)。
n=(1/2)[∂ln t/∂ln u]T (5)
この応力指数nが大きいほどクリープによる変形が小さいといえる。
なお、圧子の押込み深さuは、押し込まれたビッカース圧子の測定試料表面における対角線長dにより求めることができる(図2参照)。より具体的には図2では、下式(6):
u=(d/2)cos45°tan22° (6)
により求めることができる。また、測定に用いた高温硬度試験器は圧子の変位をリアルタイムに測定できないため、各押し込み時間経過時に出来る圧痕形状と,圧子の形状から押込み深さuを算出した。そして、圧子の押込み深さu(メートル)の自然対数(ln u)を押込み時間t(秒)の自然対数(ln t)に対してプロットし、得られる直線の傾きsを求めた。
図4には一例として、実施例4と比較例1の押し込みクリープ曲線の自然対数プロットにより得られる直線を示す。ここで、求めるべき直線の勾配s(=[∂ln t/∂ln u]T)は、図4の直線の勾配s’の逆数に相当する。このため、実施例4の方が比較例1よりも応力指数nが大きいことがわかる。これは図3において、押込み時間の増加に伴う高温ビッカース硬度の低下率が、比較例1に比べ実施例4の方が小さいことに対応する。
(α/(α+β)率)
α-サイアロン相(α-SiAlON)とβ-サイアロン相(β-SiAlON)の重量比率は、リガク製X線回折装置によるCuKα線を用いた2θが5°〜70°の回折データを元に、同装置付属のPDXL2ソフトのRIR法により決定した。
(ガラス相の面積百分率)
走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズS−4800)により1万倍の画像をランダムに5視野(それぞれ6.5μm×14.5μm)取得し,画像処理ソフト イメージプロを用いて二値化処理により試料表面に現れるガラス相の面積を測定し、その数平均を採用した。
なお、観察したサイアロン断面は、ダイヤモンド砥粒による切断砥石で切断後、エメリー紙,ダイヤモンドペーストで機械研磨し,イオンミリング装置でフラットミリングした面を用いた。
(β-サイアロン粒子数)
走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズS−4800)により1万倍の画像をランダムに5視野(それぞれ6.5μm×14.5μm)取得し,画像処理ソフト イメージプロを用いて二値化処理により、6.5μm×14.5μmの観察視野中に現れる最大径2μm以上のβ-サイアロン粒子の数平均を求めた。
なお、観察したサイアロン断面は、前記ガラス相の面積百分率の測定と同様に作製したサイアロン断面につき、スパッタによりプラチナを1.5nm被覆して観察した。
(β-サイアロン粒子の平均アスペクト比)
走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズS−4800)により1万倍の画像をランダムに5視野(それぞれ6.5μm×14.5μm)取得し,画像処理ソフト イメージプロを用いて二値化処理により、6.5μm×14.5μmの観察視野中に現れる最大径2μm以上のβ-サイアロン粒子の平均アスペクト比を求めた。
なお、各β-サイアロン粒子のアスペクト比は粒子の断面を楕円に近似して、その短軸長さに対する長軸長さの比として求めた。なお楕円近似の方法としては、粒子断面の最長径を楕円長軸として採用した後、等しい断面積になるように短軸の長さを決めることにより行った。
また、観察したサイアロン断面は、前記β-サイアロン粒子数の測定と同様にして作製した。
(測定結果)
得られた物性を以下の表1に示す。
なお、実施例1〜6及び比較例1,2の原料組成は以下の表2のとおりである。
実施例1〜6及び比較例1の原料組成において、窒化珪素のモル数に対する、希土類酸化物を希土類元素に換算したモル数の百分率R1(%)を計算した。
また、実施例1〜6及び比較例1の原料組成において、重希土類酸化物及び軽希土類酸化物中の希土類元素の全モル数に対する重希土類酸化物中の重希土類元素のモル数の百分率R2(%)を計算した。
さらに、実施例1〜6及び比較例1の原料組成において、珪素原子のモル数に対するアルミニウム原子のモル数の比R3を計算した。
さらに、実施例1〜6及び比較例1の原料組成において、アルミナ及び窒化アルミニウムの合計モル数に対する窒化アルミニウムのモル数の比R4を計算した。
計算結果を表3に示す。
(考察)
窒化珪素のモル数に対する希土類酸化物中の希土類元素のモル数の百分率R1(%)について、比較的高い値(9.7〜8.6%)を採る実施例1〜6は、比較的低い値(6.6%)を採る比較例1と比較すると、硬さクリープ耐性においては、その大きさを示す応力指数はかなり高い(34.2〜47.2 vs.18.4)。実施例1〜6で得られるサイアロンのガラス相面積百分率が試験例1と比べて比較的高い値(9.2〜6.1%vs.5.0%)をとっていることから、焼結時の液相がより適量で存在し、β-サイアロン相構成粒子の粒子成長及びアスペクト比増大が助長されたのではないかと考えられる。
他方、高温ビッカース硬さで比較すると、実施例1〜6で得られるサイアロンセラミックスは、比較例1に比べてやや硬度が劣るものの、748〜659(HV)の十分な硬度を有している。これは実施例1〜6のサイアロンセラミックスのα/ (α+β)率が、試験例1のそれよりも低いものの適節な範囲(14.4〜7.0%)にあることに対応していると考えられる。
また、実施例1では、他の実施例と比べて特にα/ (α+β)率が高くなっているが、これは希土類元素中の重希土類元素の割合が他の実施例とは異なり100%(すなわち軽希土類元素なし)となっていることも一因と考えられる。
また、実施例2と実施例3とでは、α/ (α+β)率やガラス相面積百分率が類似の値を示すにも拘わらず、硬さクリープ耐性を示すn値の値がかなり異なっているのは、高温ビッカース硬さ(HV)の相違が影響していると考えられる。すなわち、CeO2を含む実施例3の方が、La23を含む実施例2よりも高温ビッカース硬さ(HV)が高くなり〈実施例3:712HV、実施例2;613HV)、これがβ-サイアロン相構成粒子の成長し易さに影響を与えたと考えられる。

Claims (7)

  1. β-サイアロン相、ガラス相及び任意のα-サイアロン相を含むサイアロンセラミックスであって、
    α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対する重量百分率として15%を超えない範囲で前記α-サイアロン相を含んでいてもよく、
    前記サイアロンセラミックスの断面積に現れるガラス相の占める面積百分率が6〜10%であり、
    前記サイアロンセラミックスの断面の6.5μm×14.5μmの領域内に2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子が10個以上存在し、
    前記2μm以上の最大径を有するβ-サイアロン相構成粒子の平均アスペクト比が3.5以上であり、
    前記ガラス相及び前記任意のα-サイアロン相構成粒子は重希土類元素を含み、任意に軽希土類元素を含んでもよい、
    ことを特徴とするサイアロンセラミックス。
  2. 前記α-サイアロン相及びβ-サイアロン相の合計重量に対するα-サイアロン相の重量百分率が7%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のサイアロンセラミックス。
  3. 高温ビッカース硬度(1100℃、荷重1kg重、保持時間10秒)が少なくとも600HV以上であり、硬さクリープ耐性の応力指数nが25以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のサイアロンセラミックス。
  4. (I)42〜54モル%の窒化珪素(Si34)、26〜46モル%の窒化アルミニウム(AlN)、9〜22モル%の酸化アルミニウム(Al23)、1.8〜3.4モル%の重希土類酸化物及び任意に0〜2.1モル%の軽希土類酸化物を、合計100モル%となるように含み、前記窒化珪素(Si34)のモル数に対する前記重希土類酸化物と前記軽希土類酸化物中の全希土類元素のモル数との比の百分率が、7.0%〜10.0%である原料粉末混合物を準備する工程と、
    (II)前記原料粉末混合物を溶媒または分散剤の共存下、粉砕混合する工程と、
    (III)前記粉砕混合した原料粉末混合物を乾燥する工程と、
    (IV)前記乾燥した原料粉末混合物をプレス成形後、焼結する工程と、
    を含むこと特徴とする、サイアロンセラミックスの製造方法。
  5. 前記原料粉末混合物中に含まれるアルミニウム原子のモル数に対する珪素原子のモル数の比が、0.9〜1.2であることを特徴とする、請求項4に記載のサイアロンセラミックスの製造方法。
  6. 前記重希土類酸化物及び前記軽希土類酸化物中の希土類元素の全モル数に対する前記重希土類酸化物中の重希土類元素のモル数の百分率が、50%〜100%であることを特徴とする、請求項4または5に記載のサイアロンセラミックスの製造方法。
  7. 前記原料粉末混合物中に含まれるアルミナと窒化アルミニウムの合計モル数に対する窒化アルミニウムのモル数の比の百分率が60〜75%であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載のサイアロンセラミックスの製造方法。
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