以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
[射出成形機の概略構成]
まず図1及び図2を参照して、本実施形態のベースとなる射出成形機2の全体の概略構成について説明する。なお、図1、図2などにおいて、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向である。型締装置が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機2の幅方向である。
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機2の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機2の型締時の状態を示す図である。図1〜図2に示すように、射出成形機2は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレームFrとを有する。以下、射出成形機2の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1〜図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
操作画面は、射出成形機2の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機2の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
[射出成形ユニット]
図3及び図4を参照して、本実施形態に係る射出成形ユニット1について説明する。図3は、実施形態に係る射出成形ユニット1の概略構成を示す側面図である。図4は、実施形態に係る射出成形ユニット1の概略構成を示す平面図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る射出成形ユニット1は、図1及び図2を参照して説明した射出成形機2と、この射出成形機2に連結される追加射出ユニット3と、射出成形機2と追加射出ユニット3とを連結する連結部35とを備える。追加射出ユニット3には、射出成形機2の射出装置300とは別の追加射出装置31が搭載されている。追加射出ユニット3は、手動または自動で移動可能であり、連結部35を介して射出成形機2と連結可能に構成されている。射出成形ユニット1は、射出成形機2の射出装置300と、追加射出ユニット3の追加射出装置31とを組み合わせて用いることにより、二材成形を行うことができる。
追加射出ユニット3は、図3に示すように、追加射出装置31と、追加移動装置32と、搬送部33と、を有する。
追加射出装置31は、射出装置300と同様に、射出成形機2の金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填することができる。追加射出装置31の基本的な構成は、上述した射出装置300の構成と同様である。本実施形態では、追加射出装置31は、金型の側面に対して金型の開閉方向と直交する水平方向から成形材料を充填する位置に配置され、射出装置300とは異なる他の成形材料を金型に充填する。
追加移動装置32は、追加射出装置31を一方向に進退させる。追加移動装置32の基本的な構成は、上述した移動装置400の構成と同様である。本実施形態では、追加移動装置32は、追加射出装置31を金型の開閉方向と直交する水平方向に移動させる。追加移動装置32は、この追加移動装置32から伸縮自在に外部に延びるピストンロッド34を有し、ピストンロッド34の先端部が連結部35を介して射出成形機2に連結され、追加移動装置32がピストンロッド34の伸縮に応じて追加射出装置31を進退させるよう構成される。ピストンロッド34は、油圧シリンダの一部である。油圧シリンダは、追加射出装置31に固定されるシリンダ本体と、シリンダ本体の内部を第1室と第2室とに区画するピストンと、ピストンと共に移動するピストンロッド34とを有する。ピストンロッド34は、シリンダ本体の内部の第1室を貫通し、シリンダ本体の外部に突出する。ピストンロッド34の突出部分の長さを、ピストンロッド34の突出長さと呼ぶ。ピストンをシリンダ本体の内部で進退させると、ピストンロッド34の突出長さが伸縮する。ピストンロッド34の突出長さの伸縮に応じて追加射出装置31が進退する。追加移動装置32は、ピストンロッド34を射出成形機2に対して固定した状態において、移動装置400と同様に、金型装置10に対し追加射出装置31のノズルを押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせるノズルタッチ機構としても機能する。
搬送部33は、追加射出装置31及び追加移動装置32を搭載して、搬送する台車である。搬送部33は、例えば車輪を有し、手動または自動で移動可能である。追加射出ユニット3が射出成形機2と連結する際には、搬送部33は、射出成形機2のY軸方向の一方の側部に隣接して、追加射出装置31のノズルが金型装置10へ向くように配置される。これにより、追加射出装置31が金型の開閉方向と直交する水平方向から金型に成形材料を充填できる位置にて、追加射出ユニット3が連結部35を介して射出成形機2に固定される。なお、本実施形態では、追加射出ユニット3は、射出成形機2のY軸負方向側(反操作側)の側部に配置されているが、射出成形機2のY軸正方向側(操作側)の側部に配置される構成でもよい。
連結部35は、追加射出装置31を、金型の開閉方向にスライド可能に、かつ、開閉方向の任意の位置に固定可能とされる。連結部35は、例えば図3に示すように、射出成形機2のフレームFrから上方に突設された土台36の上に設置され、追加射出ユニット3のピストンロッド34の先端部と連結されている。
ピストンロッド34は、金型の開閉方向(X軸方向)及びピストンロッド34の伸縮方向(Y軸方向)に直交する鉛直方向(Z軸方向)の曲げを許容可能に構成される。例えば図3に示すように、ピストンロッド34は、長手方向の途中で分断される二つの部材で構成され、これらの二部材がピン固定されている。ピン34Aは、金型開閉方向(X軸方向)に沿って二部材を貫通している。これにより、ピストンロッド34は、スライド方向の曲げに対しては頑強となる一方で、鉛直方向の曲げに対しては、ピン34Aの接合部が適宜回転することによって曲げモーメントを減少させ、振動伝達を抑制できる。
図5は、射出成形機2と追加射出ユニット3との連結部35の構造の一例を示す斜視図である。図6は、図5に示す連結部35の分解斜視図である。図7は、図5中の係合部37の水平断面を示す斜視図である。図7の水平断面は、係合部37のねじ棒37Aの軸心を通る水平面による係合部37の切断面である。
図5〜図7に示すように、連結部35は、ピストンロッド34の先端部に設けられる係合部37と、係合部37を金型開閉方向にスライド可能に係合するスライドレール38とを有する。スライドレール38は、詳しくは後述するが、上側部材38Aと下側部材38Bとを有する。上側部材38Aと下側部材38Bとの間には、型開閉方向に平行な直方体状のスリット38Cが形成される。
係合部37は、図7に示すように、ねじ棒37Aと、このねじ棒37Aが貫通する第1部材37Bと、ねじ棒37Aを介して第1部材37Bと間隔をあけて取り付けられる第2部材37Cとを有する。ねじ棒37Aの長手方向一端部には第2部材37Cが取り付けられ、ねじ棒37Aの長手方向他端部にはレバー39が取り付けられる。レバー39を回転させると、ねじ棒37Aが回転する。
ねじ棒37Aは、上側部材38Aと下側部材38Bとの間に形成されるスリット38CをY軸方向に貫通する。スリット38Cの幅(Z軸方向寸法)は、ねじ棒37Aの外径よりも僅かに大きい。
第1部材37Bは、例えば、直方体状のブロック部37Baと、ブロック部37Baを基準としてスライドレール38側に設けられる押さえ部37Bbとを有する。押さえ部37Bbは、スライドレール38に近づくほど上下両側に張出すように等脚台形柱状に形成され、上側部材38Aおよび下側部材38Bの両方にまたがって当接される。第1部材37Bにはねじ棒37Aよりも大径のストレート穴が貫通形成されており、そのストレート穴にねじ棒37Aが挿通される。
第2部材37Cは、例えば、円柱状に形成され、上側部材38Aおよび下側部材38Bの両方にまたがって当接される。第2部材37Cにはねじ穴が設けられており、そのねじ穴にねじ棒37Aが螺合される。
第1部材37B及び第2部材37Cは、相互の対向する端部に対向面37E,37Fをそれぞれ有する。これらの対向面37E,37F同士は平行に配置されている。図5、図6に示すように、これらの対向面37E,37Fの間隙37Gの部分がスライドレール38に嵌りこむことによって、係合部37はスライドレール38と係合する。
スライドレール38は、図5に示すように、係合部37の第2部材37Cと第1部材37Bとの間隙37Gを上下方向から挟持することによって、係合部37を図5に矢印Aで示す金型開閉方向に沿ってスライド可能に連結している。スライドレール38は、係合部37の間隙37Gに上方から嵌合される上側部材38Aと、下方から嵌合される下側部材38Bとを有する。上側部材38Aは、図6に示すように回動可能であり、上側部材38Aを下側部材38Bから離間する方向に回動させることにより、係合部37をスライドレール38に簡易に脱着できるよう構成されている。下側部材38Bは、射出成形機2のフレームFrから上方に突設された土台36に固定されている(図3参照)。
また、第1部材37Bを貫通するねじ棒37Aは、第2部材37Cと接続する側と反対側の端部にて、ピストンロッド34の先端部に設けられる凹部34Bに嵌っている。凹部34Bは、ピストンロッド34の延在方向、及び、ねじ棒37Aの延在方向に沿って設けられている。
このようにピストンロッド34の凹部34Bと、係合部37のねじ棒37Aとが嵌合し、かつ、係合部37の第1部材37Bと第2部材37Cとの間隙37Gがスライドレール38に嵌合することによって、図5に示すように、ピストンロッド34が係合部37を介してスライドレール38にスライド可能に連結されている。これにより、追加移動装置32のピストンロッド34を介して追加射出ユニット3が、射出成形機2に連結される。
また、係合部37は、第2部材37Cを回り止めした状態でレバー39を回転させることによって、第2部材37Cに対してねじ棒37Aをさらに締めて、第2部材37Cを第1部材37B側へ接近させ、第2部材37Cと第1部材37Bとの間隙37Gを狭くできる。これにより、第1部材37B及び第2部材37Cが、間隙37Gに嵌合されているスライドレール38をより強固に挟持するようになり、係合部37がスライドレール38に固定された状態となる。したがって、本実施形態では、レバー39が、係合部37とスライドレール38とを固定する固定部として機能する。
尚、第2部材37Cの形状は円柱状には限られない。第2部材37Cの形状が角柱状であると、第2部材37Cをレンチなどの工具に嵌めやすく、第2部材37Cの回り止めを実施しやすい。
連結部35を図5〜図7のような構造とすると、レバー39の回転操作のみで、係合部37をスライドレール38に固定させた状態と、係合部37をスライドレール38に沿って移動可能な状態とを容易に切り替えることができる。これにより、追加射出装置31を金型開閉方向にスライドさせる際に、特別な工具を用いることなく対応できる。また、スライドレール38の上側部材38Aを回動させることで、係合部37をスライドレール38に簡易に脱着できるので、例えば追加射出ユニット3を射出成形機2から取り外して他の射出成形機の場所まで移動させて取り付けたい場合など、追加射出ユニット3の移動の際にも特別な工具を用いることなく対応できる。
本実施形態に係る射出成形ユニット1の効果を説明する。本実施形態の射出成形ユニット1は、金型に成形材料を充填する射出装置300を有する射出成形機2と、金型に成形材料を充填する追加射出装置31を有する追加射出ユニット3と、射出成形機2と追加射出ユニット3とを連結する連結部35と、を備える。追加射出ユニット3の追加射出装置31は、金型の側面に対して金型の開閉方向と直交する水平方向から成形材料を充填する位置に配置される。連結部35は、追加射出装置31を、金型の開閉方向にスライド可能に、かつ、開閉方向の任意の位置に固定可能とされる。
単一の射出装置を備える射出成形機に別の射出装置を追加して二材成形を行う従来の手法では、一旦別の射出装置を設置した後に金型を変える際、例えば金型の開閉方向の寸法が異なる場合や、追加射出装置のノズル位置と金型の注入口の位置とがずれる場合など、追加射出装置の再度の位置決めが必要な場合には、追加射出装置を取り外し、再度位置決めをしてから再び追加射出装置を射出成形機に取り付ける必要があった。このため、追加射出装置の取り付けの際に時間がかかり、段取り時間が長いという問題があった。
これに対して本実施形態の射出成形ユニット1では、上記構成により射出成形機2と追加射出ユニット3との連結部35が、追加射出装置31を金型開閉方向にスライド可能に射出成形機2と連結するので、金型が変わって金型開閉方向に注入口がずれた場合でも、射出成形機2と追加射出ユニット3とを連結したままで追加射出ユニット3の追加射出装置31の位置決めを行うことができる。これにより、金型が変わるたびに追加射出ユニット3を射出成形機2から取り外す必要がなくなるので、追加射出装置31の取り付けに要する時間を短縮できる。
また、本実施形態の射出成形ユニット1では、追加射出ユニット3は、追加射出装置31を金型の開閉方向と直交する方向に移動させる追加移動装置32を有する。追加移動装置32は、伸縮自在に外部に延びるピストンロッド34を有し、ピストンロッド34の先端部が連結部35を介して射出成形機2に連結され、追加移動装置32がピストンロッド34の伸縮に応じて追加射出装置31を進退させるよう構成される。追加移動装置32のピストンロッド34は、金型の開閉方向及びピストンロッド34の伸縮方向に直交する方向(鉛直方向)の曲げを許容可能に構成される。
この構成により、射出成形機2または追加射出ユニット3の一方で振動が発生した場合でも、唯一の連結部分であるピストンロッド34にて振動を吸収できるため、他方に振動が伝達するのを好適に防止できる。
また、本実施形態の射出成形ユニット1では、射出成形機2と追加射出ユニット3との連結部35は、ピストンロッド34の先端部に設けられる係合部37と、係合部37を金型の開閉方向にスライド可能に係合するスライドレール38と、係合部37とスライドレール38とを固定する固定部としてのレバー39と、を有する。
この構成により、射出成形機2に設置されるスライドレール38に、追加射出ユニット3側と連結される係合部37を係合することで、射出成形機2に対して追加射出ユニット3を金型開閉方向にスライド可能であり、かつ、開閉方向の任意の位置に固定可能とすることができる。
本実施形態に係る射出成形ユニット1の効果を、別の観点から説明する。本実施形態の射出成形ユニット1は、金型に成形材料を充填する射出装置300を有する射出成形機2と、金型に成形材料を充填する追加射出装置31を有する追加射出ユニット3と、射出成形機2と追加射出ユニット3とを連結する連結部35と、を備える。追加射出ユニット3の追加射出装置31は、金型の側面に対して金型の型開閉方向(本実施形態ではX軸方向)と直交する水平方向(本実施形態ではY軸方向)から成形材料を充填する位置に配置される。
連結部35は、射出成形機2に対し固定されるベース部38と、追加射出ユニット3に対し固定される係合部37と、ベース部38に対する係合部37のX軸方向における位置を変更可能に、ベース部38に対し係合部37を固定する固定部39とを有する。ベース部38はX軸方向に平行なスリット38Cを形成し、係合部37はベース部38のスリット38CをY軸方向に貫通する。
本実施形態によれば、金型の変更により金型のY軸方向端面に形成される注入口がX軸方向にずれた場合に、ベース部38を射出成形機2から取外したり、係合部37を追加射出ユニット3から取外したりすることなく、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整が可能である。従って、金型が変わるたびにベース部38を射出成形機2から取外したり、係合部37を追加射出ユニット3から取り外す必要がなくなるので、追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整に要する作業時間を短縮できる。
本実施形態のベース部38は、係合部37をX軸方向にスライド可能に係合するスライドレールである。係合部37は、ベース部38のスリット38Cに嵌め込まれた状態で、スリット38Cに沿ってX軸方向に移動可能である。従って、係合部37をベース部38のスリット38Cから抜き出すことなく、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施でき、その位置調整に要する作業時間をより短縮できる。
本実施形態の係合部37は、ベース部38のスリット38CをY軸方向に貫通するねじ棒37Aと、ねじ棒37Aが貫通する第1部材37Bと、第1部材37BとY軸方向に間隔をあけてねじ棒37Aに取り付けられる第2部材37Cとを有する。固定部39は、第1部材37Bと第2部材37Cとでベース部38をY軸方向両側から挟持することにより、ベース部38に対し係合部37を固定する。第1部材37Bと第2部材37Cとでベース部38をY軸方向両側から挟持するため、ベース部38に対する係合部37の固定を安定化することができる。
本実施形態の追加射出ユニット3は、追加射出装置31をY軸方向に移動させる追加移動装置32を有する。追加移動装置32は伸縮自在に外部に延びるピストンロッド34を有し、ピストンロッド34の先端部が連結部35を介して射出成形機2に連結される。追加移動装置32は、ピストンロッド34の伸縮に応じて追加射出装置31を進退させるよう構成される。係合部37は、ピストンロッド34の先端部に設けられる。係合部37と追加射出装置31とを追加移動装置32によって連結したまま、追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施でき、その位置調整に要する作業時間をより短縮できる。
本実施形態のピストンロッド34は、X軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向の曲げを許容可能に構成される。この構成により、射出成形機2または追加射出ユニット3の一方で振動が発生した場合でも、途中の連結部分であるピストンロッド34にて振動を吸収できるため、他方に振動が伝達するのを好適に防止できる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
上記実施形態では、射出成形機2と追加射出ユニット3との連結部35が、射出成形機2のフレームFrに設置される構成を例示したが、射出成形機2と追加射出ユニット3とを連結できればよく、射出成形機2のフレームFr以外の部分に連結部35を設置してもよい。例えば、連結部35を射出成形機2の固定プラテン110、金型装置10、タイバー140に設置することもできる。
また、上記実施形態では、射出成形機2と追加射出ユニット3との連結部35の具体的な構成として、射出成形機2に設置されるスライドレール38に、追加射出ユニット3側と連結される係合部37を係合する構成を例示したが、射出成形機2に対して追加射出ユニット3を金型開閉方向にスライド可能であり、かつ、開閉方向の任意の位置に固定可能であれば、連結部35は他の構成でもよい。
また、上記実施形態では、係合部37をベース部38のスリット38Cから抜き出すことなく、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施するが、後述の変形例のように、係合部37をベース部38のスリット38Cから抜き出したうえで、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施してもよい。
図8は、射出成形機と追加射出ユニットとの連結部の構造の変形例を示す斜視図である。図9は、図8に示す連結部の分解斜視図である。図10は、図8中の係合部の水平断面を示す斜視図である。以下、本変形例と上記実施形態との相違点について主に説明する。
本変形例の第2部材37Cは、上記実施形態の第2部材37Cとは異なり、ねじ棒37Aに対し垂直な直方体状に形成される。第2部材37Cにはねじ穴が設けられており、そのねじ穴にねじ棒37Aが螺合される。ねじ棒37Aに対し第2部材37Cを回転させることにより、第2部材37Cの長手方向をZ軸方向(図9の実線参照)とX軸方向(図9の二点鎖線参照)とに切り替えることができる。
ベース部38のスリット38Cから係合部37を引き抜く場合、先ず、第2部材37Cの長手方向をX軸方向にする。このとき、第2部材37CのZ軸方向寸法は、スリット38CのZ軸方向寸法よりも短い。次いで、搬送部33(図3参照)をY軸方向に移動させるか、または、ピストンロッド34の突出長さを縮めると、ピストンロッド34の先端部が後退する。これにより、ピストンロッド34の先端部に設けられた係合部37が後退し、係合部37の第2部材37Cがベース部38のスリット38Cから引き抜かれる。この状態で、搬送部33をX軸方向に移動させることにより、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施できる。
射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整の後、搬送部33をY軸方向に移動させるか、または、ピストンロッド34の突出長さを伸ばすと、ピストンロッド34の先端部が前進する。これにより、ピストンロッド34の先端部に設けられた係合部37が前進し、係合部37の第2部材37Cがベース部38のスリット38Cに挿入される。第2部材37Cがスリット38Cに挿入されるように、第2部材37Cの長手方向はX軸方向とされる。第2部材37CのZ軸方向寸法は、スリット38CのZ軸方向寸法よりも短い。
その後、第2部材37Cの長手方向をX軸方向からZ軸方向に切り替える。これにより、第2部材37CのZ軸方向寸法がスリット38CのZ軸方向寸法よりも長くなる。次いで、第2部材37Cを回り止めした状態でレバー39を回転させることによって、第2部材37Cに対してねじ棒37Aを締めて、第2部材37Cを第1部材37B側へ接近させ、第2部材37Cと第1部材37Bとの間隙37Gを狭くする。これにより、第1部材37Bと第2部材37Cがベース部38をY軸方向両側から強固に挟持するようになり、係合部37がスライドレール38に固定された状態となる。このとき、第2部材37CのZ軸方向寸法はスリット38CのZ軸方向寸法よりも長く、第2部材37Cは上側部材38Aおよび下側部材38Bの両方にまたがって当接される。
以上説明したように本変形例によれば、係合部37をベース部38のスリット38Cから抜き出したうえで、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施することができる。尚、本変形例においても、上記実施形態と同様に、係合部37をベース部38のスリット38Cから抜き出すことなく、射出成形機2に対する追加射出ユニット3のX軸方向における位置調整を実施することも可能である。
本変形例において、ベース部38の上側部材38Aは、回動不能とされてもよい。ベース部38の上側部材38Aを回動させなくても、ベース部38のスリット38Cから係合部37を抜き出すことができる。追加射出ユニット3を射出成形機2から取り外して他の射出成形機の場所まで移動させて取り付けたい場合など、追加射出ユニット3の移動の際にも特別な工具を用いることなく対応できる。
ピストンロッド34に第1部材37Bが固定され、第1部材37Bにはねじ穴が形成され、そのねじ穴にねじ棒37Aが螺合されてもよい。ねじ棒37Aの一端には、第2部材37Cが固定される。ねじ棒37Aの他端に設けられるレバー39を回転させると、第1部材37Bに対する第2部材37Cの相対位置を変えることができ、第1部材37Bと第2部材37Cとの間隙37Gを狭くしたり広げたりすることができる。従って、ベース部38に対する係合部37の固定と、その固定の解除とを実施できる。また、レバー39を回転させると、第2部材37Cの長手方向を変えることができ、第2部材37Cの向きをベース部38のスリット38Cの向きに合わせることができる。その後、ベース部38のスリット38Cから係合部37(詳細には第2部材37C)を抜き出すことができ、追加射出ユニット3を射出成形機2から取り外すことができる。