JP2018170932A - 電力変換装置、電力変換システム - Google Patents

電力変換装置、電力変換システム Download PDF

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Abstract

【課題】インバータの出力抑制時のハンチング現象を抑制する。【解決手段】電力変換装置10において、インバータ13は、直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を負荷5または系統4へ供給する。制御回路14、15は、インバータ13を制御する。制御回路14、15は、出力抑制事由の発生によりインバータ13の出力を低下させる際の第1の傾きより、出力抑制事由の消滅によりインバータ13の出力を上昇させる際の第2の傾きを緩く制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置、電力変換システムに関する。
現在、系統連系される分散型電源には、電源ソースとして太陽電池、燃料電池、定置型蓄電池、車載蓄電池などがある。系統に連系する分散型電源システムの代表的な構成として、単一の分散型電源を使用してDC−DCコンバータ、直流バス及びインバータを介して系統連系する構成と、複数の分散型電源を使用してそれぞれのDC−DCコンバータ、共通の直流バス及び1つのインバータを介して系統連系する構成がある(例えば、特許文献1参照)。
後者において、複数のDC−DCコンバータと1つのインバータが1つの筐体内に設置される構成と、少なくとも1つのDC−DCコンバータと1つのインバータが分離された筐体内に設置される構成がある。
また、物理的に1つの筐体内にDC−DCコンバータとインバータが設置される構成であっても、制御的にはDC−DCコンバータとインバータが別々の制御装置(例えば、マイコン)により独立に制御されることもある。このようなDC−DCコンバータとインバータが物理的もしくは制御的に分離された分散型電源システムでは、それぞれの電力変換部間の調整を行う必要がある。
例えば、太陽電池と定置型蓄電池を組み合わせた分散型電源システムにおいて、系統電圧の上昇、インバータ部品温度の上昇、遠隔出力指令の受信、逆潮流電力の検出などの事象に対して、インバータの放電電力を抑制する制御方式が用いられる場合がある。この制御方式では、インバータの出力抑制を開始した直後、直流バスの電圧が上昇する。DC−DCコンバータは直流バスの電圧上昇から、インバータが出力抑制中であると判断し、直流バスの電圧が所定の電圧以上に上昇しないように、直流バスへの放電電力を抑制する。
特開2015−122906号公報
上記の制御方式では、上記事象が収まり一定時間が経過すると、インバータは出力抑制を解除する。しかしながら解除直後に、直流バスに蓄えられていた電力と、DC−DCコンバータの放電電力の合成電力がインバータに入力され、それに応じてインバータの出力電力が上昇し、再び系統電圧が上昇し、再びインバータ出力の抑制機能が働くというハンチング現象が発生する可能性がある。ハンチング現象は、インバータ出力の安定性欠如に繋がり、インバータの電力変換効率の低下にも繋がる。
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、インバータの出力抑制時のハンチング現象を抑制する電力変換装置、電力変換システムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を負荷または電力系統へ供給するインバータと、前記インバータを制御する制御回路と、を備える。前記制御回路は、出力抑制事由の発生により前記インバータの出力を低下させる際の第1の傾きより、前記出力抑制事由の消滅により前記インバータの出力を上昇させる際の第2の傾きを緩く制御する。
本発明によれば、インバータの出力抑制時のハンチング現象を抑制することができる。
本発明の実施の形態に係る電力変換システムを説明するための図である。 図2(a)、(b)は、直流バスの電圧の状態を模式的に描いた図である。 インバータの出力抑制時の電流制御の一例を示す図である。 インバータの出力抑制時の電流制御の応用例を示す図である。
図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換システム1を説明するための図である。電力変換システム1は、第1電力変換装置10及び第2電力変換装置20を備える。第1電力変換装置10は太陽電池2用のパワーコンディショナシステムであり、第2電力変換装置20は蓄電部3用のパワーコンディショナシステムである。図1では、太陽電池2用のパワーコンディショナシステムに、蓄電部3用のパワーコンディショナシステムを後付けした例を示している。
太陽電池2は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する発電装置である。太陽電池2として、シリコン太陽電池、化合物半導体などを素材にした太陽電池、色素増感型(有機太陽電池)等が使用される。太陽電池2は第1電力変換装置10と接続され、発電した電力を第1電力変換装置10に出力する。
第1電力変換装置10は、DC−DCコンバータ11、コンバータ制御回路12、インバータ13、インバータ制御回路14、及びシステム制御回路15を備える。システム制御回路15は、逆潮流電力計測部15a、指令値生成部15b、及び通信制御部15cを含む。DC−DCコンバータ11とインバータ13間は直流バス40で接続される。コンバータ制御回路12とシステム制御回路15間は通信線41で接続され、両者の間で所定のシリアル通信規格(例えば、例えばRS−485規格、TCP−IP規格)に準拠した通信が行われる。
DC−DCコンバータ11は、太陽電池2から出力される直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バス40に出力する。DC−DCコンバータ11は例えば、昇圧チョッパで構成することができる。
コンバータ制御回路12はDC−DCコンバータ11を制御する。コンバータ制御回路12は基本制御として、太陽電池2の出力電力が最大になるようDC−DCコンバータ11をMPPT(Maximum Power Point Tracking) 制御する。具体的にはコンバータ制御回路12は、太陽電池2の出力電圧および出力電流である、DC−DCコンバータ11の入力電圧および入力電流を計測して太陽電池2の発電電力を推定する。コンバータ制御回路12は、計測した太陽電池2の出力電圧と推定した発電電力をもとに、太陽電池2の発電電力を最大電力点(最適動作点)にするための指令値を生成する。例えば、山登り法に従い動作点電圧を所定のステップ幅で変化させて最大電力点を探索し、最大電力点を維持するように指令値を生成する。DC−DCコンバータ11は、生成された指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
インバータ13は双方向インバータであり、直流バス40から入力される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を商用電力系統(以下、単に系統4という)に接続された配電線50に出力する。当該配電線50には負荷5が接続される。またインバータ13は、系統4から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バス40に出力する。直流バス40には、平滑用の電解コンデンサ(不図示)が接続されている。
インバータ制御回路14はインバータ13を制御する。インバータ制御回路14は基本制御として、直流バス40の電圧が第1閾値電圧を維持するようにインバータ13を制御する。具体的にはインバータ制御回路14は、直流バス40の電圧を検出し、検出したバス電圧を第1閾値電圧に一致させるための指令値を生成する。インバータ制御回路14は、直流バス40の電圧が第1閾値電圧より高い場合はインバータ13のデューティ比を上げるための指令値を生成し、直流バス40の電圧が第1閾値電圧より低い場合はインバータ13のデューティ比を下げるための指令値を生成する。インバータ13は、生成された指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
蓄電部3は、電力を充放電可能であり、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等を含む。蓄電部3は第2電力変換装置20と接続される。
第2電力変換装置20は、DC−DCコンバータ21及びコンバータ制御回路22を備える。コンバータ制御回路22と、第1電力変換装置10のシステム制御回路15は通信線42で接続され、両者の間で所定のシリアル通信規格に準拠した通信が行われる。
DC−DCコンバータ21は、蓄電部3と直流バス40の間に接続され、蓄電部3を充放電する双方向コンバータである。コンバータ制御回路22はDC−DCコンバータ21を制御する。コンバータ制御回路22は基本制御として、システム制御回路15から送信されてくる指令値をもとにDC−DCコンバータ21を制御して、蓄電部3を定電流(CC)/定電圧(CV)で充電/放電する。例えばコンバータ制御回路22は、放電時においてシステム制御回路15から電力指令値を受信し、当該電力指令値を蓄電部3の電圧で割った値を電流指令値として、DC−DCコンバータ21に定電流放電させる。
操作表示装置30は、第1電力変換装置10のユーザインターフェイスであり、室内の所定の位置に設置される。操作表示装置30は例えば、タッチパネルディスプレイで構成することができ、ユーザに所定の情報を提供すると共に、ユーザからの操作を受け付ける。操作表示装置30とシステム制御回路15は通信線43で接続され、両者の間で所定のシリアル通信規格に準拠した通信が行われる。なお操作表示装置30とシステム制御回路15の間は無線で接続されてもよい。
以上の回路構成において、インバータ13の出力電力を抑制する必要がある場合が発生する。主な出力抑制事由として、インバータ13から系統4への逆潮流の発生、系統電圧の設定電圧を超える上昇、遠隔出力指令の受信、インバータ13内の部品の設定温度を超える温度上昇、インバータ13の定格電力を超える電力上昇、インバータ13の定格電流を超える電流上昇が挙げられる。
蓄電部3からの放電中に、日射変動により太陽電池2の発電量が増加した場合、又は負荷5の消費電力が低下した場合、系統4への逆潮流電力が発生し、売電状態になることがある。日本では系統連系規程により蓄電システムから、蓄電池の定格容量の5%以上の電力を500msを超えて系統4へ逆潮流することが禁止されている。従って、蓄電部3が接続された電力変換システム1において逆潮流が検出された場合、500ms以内に逆潮流を抑える必要がある。
また日本では2015年1月の再生可能エネルギー固定価格買取制度の改正により、新たに系統に連系する太陽光発電と風力発電の設備に遠隔出力制御システムの導入が義務付けられている。システム制御回路15は、電力会社などの系統運用機関から外部ネットワーク(例えば、インターネット又は専用線)を介して、系統4への出力電力量と出力タイミングに関する指示を受信する。
インバータ13の出力電力を抑制する方法として、太陽電池2のDC−DCコンバータ11の出力電力を抑制する方法、蓄電部3のDC−DCコンバータ21の出力電力を抑制する方法、インバータ13の出力電力を抑制する方法がある。太陽電池2のDC−DCコンバータ11の出力電力を抑制する方法は、太陽電池2の発電量を無駄にすることに繋がる。従って太陽電池2のDC−DCコンバータ11の出力抑制は最後に実行すべき制御である。
逆潮流が検出された場合、蓄電部3からの放電を停止すればよいため、蓄電部3のDC−DCコンバータ21の出力電力を抑制する方法が最も直截的な制御である。しかしながら、第2電力変換装置20が第1電力変換装置10から分離され、系統4から離れた位置に設置されている場合、逆潮流の検出から蓄電部3のDC−DCコンバータ21の出力抑制までにタイムラグが発生しやすくなる。
図1に示した構成では、第1電力変換装置10の逆潮流電力計測部15aが、配電線50に設置されたCTセンサ(不図示)の計測値をもとに逆潮流の発生を検出する。第2電力変換装置20のコンバータ制御回路22は、システム制御回路15から通信線42を介して逆潮流の検出情報を受信する。通信線42は、第1電力変換装置10と第2電力変換装置20を繋ぐ直流バス40に這わせて設置されることが多く、この構成では通信線42は直流バス40からノイズの影響を受ける。また二値の電圧を使用したデジタル通信では、1ビットを表す単位期間を短くするほどノイズに弱くなる性質があり、基本的に通信速度を上げるほどビット誤りが発生しやすくなる。
従って第1電力変換装置10が逆潮流を検出し、出力抑制を指示する通信データを生成し、通信線42を介して第2電力変換装置20に送信する方法では、系統連系規程に定められる時限(500ms)を遵守できない可能性がある。またノイズにより通信データの内容が途中で変わってしまう可能性もある。
そこで先にインバータ13の出力電力を抑制し、後から蓄電部3のDC−DCコンバータ21の出力電力を抑制する方法が考えられる。上述のようにインバータ制御回路14は基本制御として、直流バス40の電圧が第1閾値電圧を維持するようにインバータ13を制御する。出力抑制をすべき場合は、インバータ制御回路14は優先制御として、出力抑制制御を実行する。具体的にはインバータ制御回路14は、インバータ13の出力が指令値生成部15bにより生成された指令値(具体的には上限電流値または上限電力値)を超えないようにインバータ13を制御する。出力抑制中は、直流バス40の電圧を第1閾値電圧に維持するように制御するバス電圧の安定化制御は停止する。
インバータ13の出力抑制が開始した時点では、太陽電池2のDC−DCコンバータ11及び/又は蓄電部3のDC−DCコンバータ21の出力抑制は開始していない。従ってインバータ13の出力電力に対してインバータ13の入力電力が過多となり、直流バス40の電圧が上昇する。より具体的には直流バス40に接続された電解コンデンサに電荷が蓄積されていく。
上述のようにコンバータ制御回路22は基本制御として、蓄電部3からDC−DCコンバータ21への放電量またはDC−DCコンバータ21から蓄電部3への充電量が、システム制御回路15から送信されてくる指令値になるようにDC−DCコンバータ21を制御する。さらにコンバータ制御回路22は優先制御として、直流バス40の電圧が第2閾値電圧を超えないようにDC−DCコンバータ21を制御する。この制御は、システム制御回路15から送信されてくる指令値に出力を合わせる制御に対して優先する。第2閾値電圧は第1閾値電圧より高い値に設定される。
上述のようにコンバータ制御回路12は基本制御として、太陽電池2の出力電力が最大になるようDC−DCコンバータ11をMPPT制御する。さらにコンバータ制御回路12は優先制御として、直流バス40の電圧が第3閾値電圧を超えないようにDC−DCコンバータ11を制御する。この制御は、MPPT制御に対して優先する。第3閾値電圧は第2閾値電圧より高い値に設定される。
第1閾値電圧は、直流バス40の定常時の電圧に設定される。系統電圧がAC200Vの場合、第1閾値電圧は例えば、DC280V〜360Vの範囲に設定される。第2閾値電圧は例えば390V、第3閾値電圧は例えば410Vに設定される。インバータ13の出力抑制により直流バス40の電圧が上昇し、直流バス40の電圧が第2閾値電圧に到達すると蓄電部3のDC−DCコンバータ21によるバス電圧の上昇抑制制御が発動する。直流バス40の電圧上昇のエネルギーが、蓄電部3のDC−DCコンバータ21による上昇抑制エネルギーより大きい場合は、直流バス40の電圧がさらに上昇する。直流バス40の電圧が第3閾値電圧に到達すると太陽電池2のDC−DCコンバータ11によるバス電圧の上昇抑制制御が発動する。
図2(a)、(b)は、直流バス40の電圧の状態を模式的に描いた図である。図2(a)は、定常時の直流バス40の電圧の状態を示している。定常時の直流バス40の電圧は、インバータ13により第1閾値電圧に維持される。図2(b)は、インバータ13の出力抑制時の直流バス40の電圧の状態を示している。通常、出力抑制中の直流バス40の電圧は、蓄電部3のDC−DCコンバータ21により第2閾値電圧に維持される。
図2(b)に示す状態からインバータ13の出力抑制が解除されると、インバータ13は直流バス40の電圧を第1閾値電圧に維持する制御に復帰する。具体的にはインバータ13の出力のリミット値(上限値)が、インバータ13の定格出力値に戻される。この状態では、突発的な事由が発生しない限り、インバータ13の出力がリミット値に到達することはなく、直流バス40の電圧安定化制御のみが働く状態になる。
インバータ13の出力抑制が解除されると、インバータ13は直流バス40の電圧を、第2閾値電圧から第1閾値電圧に低下させるために電解コンデンサに蓄積された電荷をいっきに放出しようとする。これにより、インバータ13の出力電力が上昇し、再び出力抑制事由が発生し、再び直流バス40の電圧が上昇する。その後、出力抑制事由が消滅すると、インバータ13は再び電解コンデンサに蓄積された電荷をいっきに放出し、インバータ13の出力電力が上昇する。即ち、ハンチング現象が発生する。
このハンチング現象を抑制するために本実施の形態では、出力抑制事由の発生によりインバータ13の出力を低下させる際の第1の傾きより、当該出力抑制事由の消滅によりインバータ13の出力を上昇させる際の第2の傾きの方が緩くなるように制御する。
図3は、インバータ13の出力抑制時の電流制御の一例を示す図である。図3に示す例では、インバータ13の抑制電流のリミット値(上限値)は定常時において、インバータ13の定格出力電流値に設定されている。即ち、定常時に突発的な事由により直流バス40の電圧が上昇しても、インバータ13の出力電流は定格出力電流値で上昇が止まるように設定されている。
出力抑制事由が発生すると、インバータ制御回路14はインバータ13の出力を第1の傾きS1で低下させる。第1の傾きS1は、単位時間あたりの抑制量[A/ms]で規定される。第1の傾きS1は例えば、インバータ13が定格出力値で放電中に抑制を開始してから抑制が完了するまでの時間が、規格値に収まるように設定される。
例えば、太陽電池2が3.5kWを発電し、蓄電部3が2.0kWを放電し、インバータ13が5.5kWを負荷5に供給している状態を考える。この状態から負荷5が解列され、負荷5の消費電力が0.0Wになった場合、インバータ13の5.5kWの出力電力が系統4に逆潮流される。この場合、500ms以内に逆潮流を止めなければ、インバータ13を系統4から解列しなければならず、解列中は太陽電池2の発電が停止するため経済的損失となる。この例において、第1の傾きS1を0.011(=5.5/500)[kW/ms]に設定すれば、系統連系規程を満たすことができ、インバータ13を解列せずに済む。
なお、逆潮流の発生以外の出力抑制事由の場合、必ずしも系統4への出力電力を0.0Wまで低下させる必要がない場合もある。その場合、インバータ13の定格出力値と目標電力値との差分を、抑制を完了させる時間で割ることにより、単位時間あたりの抑制量[A/ms]を算出する。例えば、遠隔出力指令による出力抑制の場合、抑制を完了させる時間は秒オーダ又は分オーダとなり、逆潮流発生による出力抑制の場合と比較して、第1の傾きS1は緩くなる。
なお、インバータ13の出力は電流値で抑制してもよいし、電力値で抑制してもよい。電流値を使用する場合、抑制解除時の出力過多による過電流を抑制することができる。電力値を使用する場合、系統電圧が変化した場合でも正確に出力抑制を行うことができる。例えば、系統電圧上昇時の抑制など、出力抑制に応じて系統電圧が変化してしまうことがある。なお、インバータ13の出力を電流値と電力値の両方で抑制してもよい。
出力抑制事由が消滅すると、インバータ制御回路14はインバータ13の出力を第2の傾きS2で上昇させる。第2の傾きS2は、単位時間あたりの抑制解除量[A/ms]で規定される。第2の傾きS2は、第1の傾きS1より緩やかに設定される。第2の傾きS2は例えば、インバータ13の定格出力値及びDC−DCコンバータ21の定格出力値にもとづき決定される。
例えば、インバータ13の定格出力電力値が5kW、DC−DCコンバータ21の定格出力電力値が3kWの場合において、DC−DCコンバータ21のみが定格出力値で放電中(インバータ13は3kWで出力中)に抑制が開始された場合を考える。なお太陽電池2は発電を停止しているとする。この状態でインバータ13の出力抑制が解除されると、DC−DCコンバータ21は再び定格出力値で放電し、インバータ13はDC−DCコンバータ21の放電電力に合わせて、直流バス40に接続された電解コンデンサに蓄積された電荷を放電する。これにより、インバータ13は抑制解除直後に最大5kWを放電する。
このように、インバータ13の出力抑制解除の直後は、DC−DCコンバータ21の出力電力に対してインバータ13の出力電力が過大になる。上記の例では2.0kW(=5kW−3kW)過大になる。第2の傾きS2は、この過大となる電力量を考慮して設定される。具体的には第2の傾きS2は、過大となる電力量が大きいほど抑制解除時間が長くなるように設定される。抑制解除時間は抑制解除を開始してから、インバータ13の出力電流または出力電力のリミッタ値を定常時のリミッタ値に復帰させるまでの時間である。これにより、インバータ13の出力電力を、再び出力抑制機能が発動しないように放電することができる。
なお、実際に過大となる電力量は、第1閾値電圧と第2閾値電圧の差分と電解コンデンサの容量に依存する。従って第2の傾きS2を、第1閾値電圧と第2閾値電圧の差分と電解コンデンサの容量を考慮して決定してもよい。また第2の傾きS2を、インバータ13が出力抑制を開始する際の直流バス40の電圧と、インバータ13が出力抑制を解除する際の直流バス40の電圧の差分に基づき決定してもよい。当該差分が大きいほど第2の傾きS2を緩く設定する。
図4は、インバータ13の出力抑制時の電流制御の応用例を示す図である。図4に示すように、図3に示した第1の傾きS1及び/又は第2の傾きS2は可変に設計されてもよい(S1、S1a、S1b、S2、S2a、S2b参照)。第1の傾きS1及び/又は第2の傾きS2を可変とすることで、系統4または負荷5の状況に応じて抑制速度を遅めたり、抑制解除速度を速めたりすることができる。例えば、容量の大きい系統4ほど抑制解除速度を速めることができる。また負荷5の消費電力が大きいほど抑制解除速度を速めることができる。反対に系統4の容量が小さい場合、または負荷5の消費電力が小さい場合、抑制解除速度を遅くする必要がある。
また、出力抑制事由の種別に応じて、第1の傾きS1及び/又は第2の傾きS2を変えてもよい。例えば、出力抑制事由が温度上昇や系統電圧上昇の場合、即時的な出力抑制および出力抑制解除は要求されない。これに対して上述したように逆潮流発生の場合、即時的な出力抑制が要求される。また系統4の停電により出力抑制していた場合、停電復帰後は、系統連系規程により定められたFRT(Fault Ride Through)要件により、即時的な出力抑制解除が要求される。このように抑制開始の要因に対して要求復帰時限が異なるが、第1の傾きS1及び/又は第2の傾きS2を可変にすることにより、柔軟に対応することができる。
以上説明したように本実施の形態によれば、第2の傾きS2を第1の傾きS1より緩く設定することにより、出力抑制解除時にインバータ13の出力が過大となり、再度抑制されてしまうハンチング現象を抑えることができる。
第1の傾きS1は、インバータ13の定格出力値を、所定の時間内に所定の電力値まで抑制できる値に設定される。これにより、例えば遠隔出力指令を受信した際、速やかに指令を満足する電力抑制を行うことができる。また、負荷5の開放などにより逆潮流が発生した際にも、系統連系規程に適合する時限内に電力抑制を行うことができる。
第2の傾きS2は、DC−DCコンバータ21の定格出力値に基づいて設定される。DC−DCコンバータ21から直流バス40に出力される電力が過大であるほど、抑制解除時に出力過多となる可能性が高くなる。従ってDC−DCコンバータ21が出力する電力に応じて、インバータ13は出力抑制を解除すればよい。
本実施の形態のように第1電力変換装置10と第2電力変換装置20が別筐体に設置されている場合、DC−DCコンバータ21の出力電流または出力電力を、通信を用いて指定する必要がある。インバータ13の出力抑制を解除する際にインバータ13の出力が過大になるのは、直流バス40の電圧が目標値(第1閾値電圧)に対して、大きく上方に乖離している場合である。言い換えると、直流バス40の電圧が目標値となるように最大限放電してしまうため、インバータ13の出力が過大になる。インバータ13が出力抑制を開始する際の直流バス40の電圧と、出力抑制を解除する際の直流バス40の電圧との差分に基づき第2の傾きS2を決定すれば、直流バス40に接続されるDC−DCコンバータが複数であったり、DC−DCコンバータ21がインバータ13から分離されていても、インバータ13側で独立して電力を制御することができる。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
図1では、インバータ制御回路14とシステム制御回路15を分離して描いているが、それぞれが別のマイクロコンピュータで実現されてもよいし、1つのマイクロコンピュータで実現されてもよい。また上述の実施の形態では、第1電力変換装置10と第2電力変換装置20が別の筐体に設置される例を説明した。この点、第1電力変換装置10と第2電力変換装置20が1つの筐体に設置されつつ、システム制御回路15とコンバータ制御回路22が通信線42で接続される構成例も本発明の一実施の形態に含まれる。
また上記実施の形態では、第1電力変換装置10に太陽電池2が接続される例を説明した。この点、太陽電池2の代わりに、風力発電装置、マイクロ水力発電装置など、再生可能エネルギーを用いた他の発電装置が接続されてもよい。
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
[項目1]
直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を負荷(5)または電力系統(4)へ供給するインバータ(13)と、
前記インバータ(13)を制御する制御回路(14、15)と、を備え、
前記制御回路(14、15)は、出力抑制事由の発生により前記インバータ(13)の出力を低下させる際の第1の傾きより、前記出力抑制事由の消滅により前記インバータ(13)の出力を上昇させる際の第2の傾きを緩く制御することを特徴とする電力変換装置(10)。
これによれば、インバータ(13)の抑制解除時に出力が過大となり、再度抑制されてしまうハンチング現象を抑制することができる。
[項目2]
前記第1の傾きは、前記インバータ(13)の定格出力と、出力抑制を完了させるべき時限に基づき決定されることを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、系統連系規程により要求される規則を遵守することができる。
[項目3]
前記インバータ(13)の直流側は直流バス(40)を介して、所定の直流電源(3)の出力を制御するDC−DCコンバータ(21)に接続されており、
前記第2の傾きは、前記DC−DCコンバータ(21)の定格出力と、前記インバータ(13)の定格出力に基づき決定されることを特徴とする項目1または2の記載の電力変換装置(10)。
これによれば、インバータ(13)の抑制解除時に出力が過大となり、再度抑制されてしまうことを防止することができる。
[項目4]
前記インバータ(13)の直流側は直流バス(40)を介して、所定の直流電源(3)の出力を制御するDC−DCコンバータ(21)に接続されており、
前記インバータ(13)と前記DC−DCコンバータ(21)は別々の筐体に設置されており、
前記第2の傾きは、前記インバータ(13)が出力抑制を開始する際の前記直流バス(40)の電圧と、前記インバータ(13)が出力抑制を終了する際の前記直流バス(40)の電圧との差分に基づき決定されることを特徴とした項目1または2に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、インバータ(13)の抑制解除時に出力が過大となり、再度抑制されてしまうことを防止することができる。
[項目5]
前記制御回路(14、15)は、出力抑制事由が発生したとき前記インバータ(14)の出力電流または出力電力を抑制することを特徴とする項目1から4のいずれかに記載の電力変換装置(10)。
これによれば、過電流または過電力を防止することができる。
[項目6]
前記制御回路(14、15)は、前記第1の傾きの値および前記第2の傾きの値の少なくとも一方を変更可能であることを特徴とする項目1から5のいずれかに記載の電力変換装置(10)。
これによれば、状況に応じて柔軟な出力抑制制御が可能となる。
[項目7]
前記制御回路(14、15)は、出力抑制事由の種類に応じて、前記第1の傾きの値および前記第2の傾きの値の少なくとも一方を変えることを特徴とする項目6に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、出力抑制事由の種類に応じた柔軟な出力抑制制御が可能となる。
[項目8]
直流バス(40)から供給される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を負荷(5)または電力系統(4)へ供給するインバータ(13)と、
前記インバータ(13)を制御する制御回路(14、15)と、
所定の直流電源(3)の出力を制御し、当該出力を前記直流バス(40)に供給するDC−DCコンバータ(21)と、を備え、
前記制御回路(14、15)は、出力抑制事由の発生により前記インバータ(13)の出力を低下させる際の第1の傾きより、前記出力抑制事由の消滅により前記インバータ(13)の出力を上昇させる際の第2の傾きを緩く制御することを特徴とする電力変換システム(1)。
これによれば、インバータ(13)の抑制解除時に出力が過大となり、再度抑制されてしまうハンチング現象を抑制することができる。
1 電力変換システム、 2 太陽電池、 3 蓄電部、 4 系統、 5 負荷、 10 第1電力変換装置、 11 DC−DCコンバータ、 12 コンバータ制御回路、 13 インバータ、 14 インバータ制御回路、 15 システム制御回路、 15a 逆潮流電力計測部、 15b 指令値生成部、 15c 通信制御部、 20 第2電力変換装置、 21 DC−DCコンバータ、 22 コンバータ制御回路、 30 操作表示装置、 40 直流バス、 41,42,43 通信線、 50 配電線。

Claims (8)

  1. 直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を負荷または電力系統へ供給するインバータと、
    前記インバータを制御する制御回路と、を備え、
    前記制御回路は、出力抑制事由の発生により前記インバータの出力を低下させる際の第1の傾きより、前記出力抑制事由の消滅により前記インバータの出力を上昇させる際の第2の傾きを緩く制御することを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記第1の傾きは、前記インバータの定格出力と、出力抑制を完了させるべき時限に基づき決定されることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記インバータの直流側は直流バスを介して、所定の直流電源の出力を制御するDC−DCコンバータに接続されており、
    前記第2の傾きは、前記DC−DCコンバータの定格出力と、前記インバータの定格出力に基づき決定されることを特徴とする請求項1または2の記載の電力変換装置。
  4. 前記インバータの直流側は直流バスを介して、所定の直流電源の出力を制御するDC−DCコンバータに接続されており、
    前記インバータと前記DC−DCコンバータは別々の筐体に設置されており、
    前記第2の傾きは、前記インバータが出力抑制を開始する際の前記直流バスの電圧と、前記インバータが出力抑制を終了する際の前記直流バスの電圧との差分に基づき決定されることを特徴とした請求項1または2に記載の電力変換装置。
  5. 前記制御回路は、出力抑制事由が発生したとき前記インバータの出力電流または出力電力を抑制することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
  6. 前記制御回路は、前記第1の傾きの値および前記第2の傾きの値の少なくとも一方を変更可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電力変換装置。
  7. 前記制御回路は、出力抑制事由の種類に応じて、前記第1の傾きの値および前記第2の傾きの値の少なくとも一方を変えることを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。
  8. 直流バスから供給される直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を負荷または電力系統へ供給するインバータと、
    前記インバータを制御する制御回路と、
    所定の直流電源の出力を制御し、当該出力を前記直流バスに供給するDC−DCコンバータと、を備え、
    前記制御回路は、出力抑制事由の発生により前記インバータの出力を低下させる際の第1の傾きより、前記出力抑制事由の消滅により前記インバータの出力を上昇させる際の第2の傾きを緩く制御することを特徴とする電力変換システム。
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