JP2018170160A - 端子付き電線およびワイヤハーネス - Google Patents

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中山 弘哲
Hirotetsu Nakayama
弘哲 中山
泰 木原
Yasushi Kihara
泰 木原
信昭 酒井
Nobuaki Sakai
信昭 酒井
正和 小澤
Masakazu Ozawa
小澤  正和
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Furukawa Electric Co Ltd
Furukawa Automotive Systems Inc
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Abstract

【課題】 サーマルショックで歪応力が生じても、防食材に割れの起点となる破断が発生しない端子付き電線およびワイヤハーネスを提供する。【解決手段】 端子付き電線10には、温度変化に対する耐久性が求められる。例えば、120℃×30分と−40℃×30分のサイクルを500サイクル繰り返すサーマルショック試験において、破損等がなく、品質を維持する必要がある。特に、高温時に可塑性が悪化し、特に低温時において、割れが生じるおそれがある。サーマルショック試験後において、前述したような割れが生じないようにするためには、サーマルショック試験後における−40℃における防食材17の引張破断伸びが30%以上であることが望ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、被覆導線と端子とが接続される端子付き電線およびワイヤハーネスに関するものである。
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、電気導電性に優れた銅系材料からなる電線が使用されている。特に、自動車分野においては、車両の高性能化、高機能化が急速に進められており、車載される各種電気機器や制御機器が増加している。したがって、これに伴い、使用される端子付き電線も増加する傾向にある。
一方、環境問題が注目される中、自動車の軽量化が要求されている。したがって、ワイヤハーネスの使用量増加に伴う重量増加が問題となる。このため、従来使用されている銅線に代えて、軽量なアルミニウム電線が注目されている。
ここで、このような電線同士を接続する際や機器類等の接続部においては、接続用端子が用いられる。しかし、アルミニウム電線を用いた端子付き電線であっても、接続部の信頼性等のため、端子部には、電気特性に優れる銅が使用される場合がある。このような場合には、アルミニウム電線と銅製の端子とが接合されて使用される。
しかし、異種金属を接触させると、標準電極電位の違いから、いわゆる電食が発生する恐れがある。特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいため、接触部への水の飛散や結露等の影響により、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、接続部における電線と端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、更には断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
このため、電線と端子との接続部を樹脂部材で被覆する方法が提案されている。例えば、圧着部内に電線の端部を挿入した後、該圧着部をかしめ加工により圧着して電線と端子とを接続し、接続部が、防食材料である樹脂部材で被覆される(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−120282号公報
しかしながら、端子付き電線が加熱または冷却によって急激な温度変化にさらされると、電線被覆や端子、導線などとの線膨張係数の違いにより、防食材に冷熱サイクルによる熱収縮の繰り返しによる応力が生じる。また、温度変化による樹脂の可塑剤の抜けなどによる応力も生じる。
特に、電線被覆部の剥ぎ取り際では、端子付き電線の外径がハウジングに収まる大きさに制約されることから、防食材を薄くする必要があり、薄い部分に応力が集中しやすい。また、過酷な温度環境下では、これらの応力により、防食材に亀裂が発生し、成長し、最終的に割れに至るおそれがある。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、サーマルショック試験で歪応力が生じても、防食材に割れの起点となる破断が発生しにくい端子付き電線およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
前述した目的を達成するために第1の発明は、被覆導線と端子とが接続される端子付き電線であって、前記被覆導線は、被覆部と、前記被覆部の先端から露出する導線とを具備し、前記端子の圧着部は、前記導線が圧着される導線圧着部と、前記被覆部が圧着される被覆圧着部とを具備し、少なくとも前記被覆圧着部よりも先端側を覆うように防食材が配置されており、120℃×30分と−40℃×30分のサイクルを500サイクル繰り返すサーマルショック試験後の−40℃における前記防食材の引張破断伸びが30%以上であることを特徴とする端子付き電線である。
また、前記サーマルショック試験後の前記防食材に対して、−40℃における引張伸びが30%となる引張応力を、前記サーマルショック試験後の前記被覆部に対して、−40℃においてかけた際に、前記被覆部の引張伸びが1%以上であることが望ましい。
また、前記サーマルショック試験後の前記防食材の−40℃における縦弾性率が、前記サーマルショック試験後の前記被覆部の−40℃における縦弾性率以下であることが望ましい。
前記サーマルショック試験後の前記防食材の−40℃におけるデュロメータ硬度が、前記サーマルショック試験後の前記被覆部の−40℃におけるデュロメータ硬度以下であることが望ましい。
また、前記被覆部が、軟質PVCであってもよい。
また、前記導線が露出する前記被覆部の先端において、前記被覆部を覆う前記防食材の厚みが、前記端子の厚みの0.2倍以上であることが望ましい。
前記導線が露出する前記被覆部の先端において、前記被覆部を覆う前記防食材の厚みが、前記被覆部の厚みの0.1倍以上であることが望ましい。
第1の発明によれば、120℃×30分と−40℃×30分のサイクルを500サイクル繰り返すサーマルショック試験後の−40℃における防食材の引張破断伸びが30%以上であるため、サーマルショック試験後の、特に低温での防食材の引張破断伸びが大きく、サーマルショックで歪応力が生じた場合にも、防食材に割れの起点となる破断が発生しない。
また、サーマルショック試験後の防食材に対して、−40℃における引張伸びが30%となる引張応力を、サーマルショック試験後の被覆部に対して、−40℃においてかけた際に、被覆部の引張伸びが1%以上であれば、被覆部の引張伸びが大きいことから、被覆部が伸びて防食材に加わる応力が小さくなり、防食材が割れにくくなる。
また、サーマルショック試験後の防食材の−40℃における縦弾性率が、サーマルショック試験後の被覆部の−40℃における縦弾性率以下であれば、熱収縮によって防食材に加わる応力が小さくなり、防食材が割れにくくなる。
また、サーマルショック試験後の防食材の−40℃におけるデュロメータ硬度が、サーマルショック試験後の被覆部の−40℃におけるデュロメータ硬度以下であれば、防食材が柔らかいため、応力が分散し、防食材が割れにくくなる。
また、被覆部が、高い柔軟性を有する軟質PVCであれば、被覆部が伸びて防食材に加わる応力が小さくなり、防食材が割れにくくなる。
また、導線が露出する被覆部の先端において、被覆部を覆う防食材の厚みが、端子の厚みの0.2倍以上であれば、被覆部の剥ぎ取り際における防食材の厚みが確保されるので、被覆部と防食材との界面に亀裂が生じても、導線が露出することがない。
同様に、導線が露出する前記被覆部の先端において、被覆部を覆う防食材の厚みが、被覆部の厚みの0.1倍以上であれば、被覆部の剥ぎ取り際における防食材の厚みが確保されるので、被覆部と防食材との界面に亀裂が生じても、導線が露出することがない。
第2の発明は、第1の発明のいずれかの端子付き電線が複数本束ねられたことを特徴とするワイヤハーネスである。
第2の発明によれば、第1の発明のいずれかの端子付き電線を複数本束ねてワイヤハーネスとすることにより、第1の発明と同様の効果が得られる。
本発明によれば、サーマルショックで歪応力が生じても、防食材に割れの起点となる破断が発生しない端子付き電線およびワイヤハーネスを提供することができる。
端子付き電線10を示す斜視図。 端子付き電線10を示す断面図。 図2のA部拡大図。 (a)〜(d)は被覆部15の変形に伴う防食材17への応力を示す図で、(a)は、定常状態を示す図、(b)は、高温時に被覆部15が膨張した状態を示す図、(c)は、低温時に被覆部15が収縮した状態を示す図、(d)は、(c)の状態で防食材17と被覆部15との間に割れが生じた状態を示す図。 鉛筆硬度を測定する方法を示す図。 端子付き電線10の試験方法を示す図。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、端子付き電線10を示す斜視図であり、図2は断面図である。なお、図1は、防食材17の一部を透視した図である。端子付き電線10は、端子1と被覆導線11が接続されて構成される。端子1は、オープンバレル型であり、銅もしくは黄銅などの銅合金あるいはそれらにスズなどがめっきされたものが使用される。端子1には被覆導線11が接続される。
被覆導線11は、アルミニウム線またはアルミニウム合金線である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。すなわち、被覆導線11は、被覆部15と、その先端から露出する導線13とを具備する。導線13は、例えば、複数の素線が撚り合わせられた撚り線である。また、被覆部15は、例えば軟質PVCである。
端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片を有する。端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入されて接続される。なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて例えば雄型端子の挿入タブを設けてもよいし、丸型端子のようなボルト締結部を設けても良い。
圧着部5は、被覆導線11と圧着される部位であり、圧着前においては、端子1の長手方向に垂直な断面形状が略U字状のバレル形状を有する。端子1の圧着部5は、被覆導線11の先端側に被覆部15から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9とからなる。
なお、導線圧着部7の内面の一部には、周方向に、図示を省略したセレーションが設けられる。このようにセレーションを形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
被覆導線11の先端は、被覆部15が剥離され、内部の導線13が露出する。被覆導線11の被覆部15は、端子1の被覆圧着部9によって圧着される。また、被覆部15が剥離されて露出する導線13は、導線圧着部7により圧着される。導線圧着部7において、導線13と端子1とが電気的に接続される。なお、被覆部15の端面は、被覆圧着部9と導線圧着部7の間に位置する。
本発明では、少なくとも、被覆部15から露出する導線13が、防食材17で覆われる。すなわち、少なくとも被覆圧着部9よりも先端側の被覆部15および導線13が防食材17によって被覆され、導線13は、防食材17によって外部に露出しない。防食材17は、例えば、シリコーンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレートなどの紫外線硬化樹脂である。
図3は、図2のA部拡大概念図である。前述したように、防食材17は、被覆圧着部9の先端から露出する被覆導線11を覆うように設けられる。ここで、被覆部15の先端部の、導線13の露出部との境界部において、防食材17の厚み(図中D)が薄くなる。これは、例えば、端子をハウジングに収めるため、防食材17の厚みを薄くする必要があるためである。
この際、被覆部15の先端部において、被覆部15を覆う防食材17の厚みは、端子1の厚み(例えば図の厚さB。より正確には、圧着部5以外の部位における端子1の厚み)の0.2倍以上であることが望ましい。また、同様に、導線13が露出する被覆部15の先端における被覆部15を覆う防食材17の厚みが、被覆部15の厚み(例えば図の厚さE)の0.1倍以上であることが望ましい。防食材17の厚みが薄くなると、後述するサーマルショック試験時に、割れが防食材17の外面に生じるおそれがあるためである。
次に、サーマルショック試験について説明する。例えば自動車等に用いられる端子付き電線10には、温度変化に対する耐久性が求められる。例えば、120℃×30分と−40℃×30分のサイクルを500サイクル繰り返すサーマルショック試験において、破損等がなく、品質を維持する必要がある。
このようなサーマルショック試験によれば、端子付き電線10を構成する各部材の線膨張係数の差によって、各部材間の界面で応力が生じる。このため、この繰り返しの応力に耐える必要がある。また、材料によっては、高温時に、可塑剤の抜けが生じる場合がある。このような場合には、高温時に可塑性が悪化し、特に低温時において、割れが生じるおそれがある。
図4(a)〜図4(d)は、前述した被覆部15の先端部近傍において、繰り返しの応力によって防食材17に割れが生じる状態を示す概念図である。図4(a)は、常温時における被覆部15と防食材17を示す図である。ここで、前述したように、被覆部15は、例えば軟質PVCであり、防食材17は、例えばシリコーンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレートなどの紫外線硬化樹脂である。この場合、防食材17の線膨張係数よりも、被覆部15の線膨張係数が大きい。
このため、高温時には、図4(b)に示すように、防食材17に対して被覆部15の膨張量が大きくなる。例えば、上部を基準とすれば、被覆部15は、防食材17に対して、下方向に膨張する。このため、被覆部15と接触する防食材17には、下方向の引張応力が発生する(図中F)。
一方、低温時には、図4(c)に示すように、防食材17に対して被覆部15の収縮量が大きくなる。例えば、上部を基準とすれば、被覆部15は、防食材17に対して、上方向に収縮する。このため、被覆部15と接触する防食材17には、上方向の圧縮応力が発生する(図中G)。
このような繰り返しの応力を受けると、図4(d)に示すように、特に低温時における弾性変形量が小さくなる条件において、防食材17と被覆部15との間に割れが生じるおそれがある。この際、防食材17の厚みが十分でないと、このような割れが生じた際に、割れが外面にまで伝播し、防食性を悪化させる恐れがある。したがって、防食材17の厚みは、前述したように、所定値以上であることが望ましい。
なお、サーマルショック試験後において、前述したような割れが生じないようにするためには、サーマルショック試験後における−40℃における防食材17の引張破断伸びが30%以上であることが望ましい。低温時の引張破断伸びが十分に大きければ、割れが生じにくい。ここで、防食材17の引張破断伸びは、防食材17と同じ材質の200μm厚さのシート状の硬化物を用い、上記サーマルショック試験後に、JIS K6251に準じて測定される。
なお、防食材17の材質としては、常温で引張破断伸びが100%以上であることが望ましい。常温での引張破断伸びは、前述した200μm厚さの試験材を用いて、JIS K6251に準じて25℃における引張破断伸びを測定することで得ることができる。
また、サーマルショック試験後の防食材17に対して、−40℃における引張伸びが30%となる引張応力を、サーマルショック試験後の被覆部15に対して、−40℃においてかけた際に、被覆部15の引張伸びが1%以上であるが望ましい。測定方法は、まず、前述したサーマルショック試験後の防食材17の試験片の引張破断伸び測定時に、−40℃における引張破断伸びが30%となる際の引張応力を測定する。次に、被覆部15の材質の試験片で、同様のサーマルショック試験を行い、−40℃において、前述した引張応力を付与し、その際の引張伸びを測定し、この値が1%以上となればよい。
このように、サーマルショック試験後の低温時において、被覆部15の変形が容易であれば、被覆部15の変形によって、防食材17に加わる応力を低減することができる。このため、防食材17の割れの発生を抑制することができる。
また、同様に、サーマルショック試験後の防食材17の−40℃における縦弾性率は、サーマルショック試験後の被覆部15の−40℃における縦弾性率以下であることが望ましい。すなわち、前述したサーマルショック試験後の被覆部15および防食材17のそれぞれの試験片について、−40℃における縦弾性率を測定し、防食材17の縦弾性率の方が小さいことが望ましい。
このように、サーマルショック試験後の低温時において、防食材17が、被覆部15に対して容易に変形することで、防食材17に加わる応力を低減することができる。このため、防食材17の割れの発生を抑制することができる。
また、同様に、サーマルショック試験後の防食材17の−40℃におけるデュロメータ硬度が、サーマルショック試験後の被覆部15の−40℃におけるデュロメータ硬度以下であることが望ましい。すなわち、前述したサーマルショック試験後の被覆部15および防食材17のそれぞれの試験片について、−40℃におけるデュロメータ硬度を測定し、防食材17のデュロメータ硬度の方が小さいことが望ましい。
なお、デュロメータ硬度の測定に際し、JISK6253−3に記載のデュロメータ硬度計は、針が2.5mm(タイプAMは1.25mm)であり、試験片は、厚さ6mm、(タイプAMは2mm)などの規定があるが、本実施形態では、例えば0.2mm厚さの試験片を用い、それぞれの試験片を同一条件で評価した結果を比較することで、測定することができる。
また、デュロメータ硬度に代えて、鉛筆硬度試験を行い、上記条件の鉛筆硬度を比較してもよい。図4は、鉛筆硬度試験装置20を示す図である。鉛筆硬度試験は、JIS K 5600−5−4:1999(塗料一般試験方法:引っかき硬度(鉛筆法))で規定される鉛筆硬度試験方法に基づいて行われる。
鉛筆硬度試験装置20は、車輪22を有する本体部21と、当該本体部21に取り付けられる鉛筆23とを備えている。本体部21は、鉛筆23を所定の角度を維持するように保持し、車輪22を介して所定の速度で走行する走行体である。鉛筆23は、芯部24を有する。
例えば、防食材17の硬度を測定する場合には、本体部21の走行面と同一面に防食材17が露出するように配置し、本体部21が走行して、芯部24が防食材17の表面に押し当てられた際に、当該防食材17の表面に傷(損傷)が付くかどうかで評価する。この際、防食材17の表面に損傷が存在しない、最も堅い芯部24の鉛筆硬度(6B(柔らかい)、5B、4B、……、4H、5H、6H(硬い))で、硬度が評価される。
このように、前述したサーマルショック試験後の被覆部15および防食材17のそれぞれの試験片について、−40℃における鉛筆硬度を測定し、防食材17の鉛筆硬度の方が小さいことが望ましい。
このように、サーマルショック試験後の低温時において、防食材17を軟らかいものとすることで、防食材17に加わる応力が分散し、防食材17の割れの発生を抑制することができる。
ここで、このような被覆部15と防食材17の各物性は、それぞれ、ポリマーの種類、重合度、可塑剤、充填剤などの配合量を適宜変更することで、調整することができる。
なお、引張破断伸びや縦弾性率などを評価する引張試験は、−40℃の恒温槽内で行うが、−40℃においてデュロメータ硬度や鉛筆硬度試験を行う場合には、試験片等を−40℃に維持した後、恒温槽等から試験片等を取り出して、所定時間以内に試験を行うことで評価してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、防食材17によって、端子1と被覆導線11との接続部を覆うため、効率良く防食効果を得ることができる。また、サーマルショック試験後の低温時における防食材17の引張破断伸びが十分高いため、防食材17の割れを抑制することができる。なお、前述した実施形態では、防食材17の線膨張係数よりも、被覆部15の線膨張係数が大きい場合を説明したが、防食材17の線膨張係数よりも、被覆部15の線膨張係数が小さくても、上述したように、サーマルショック試験後の低温時における防食材17の引張破断伸びが十分高ければ、防食材17の割れが、外面にまで伝播して止水性が悪化することを抑制することができる。
また、サーマルショック試験後の低温時における被覆部15の引張伸びが十分高いため、被覆部15が変形して防食材17にかかる応力を低減することができる。このため、防食材17の割れを低減することができる。
また、サーマルショック試験後の低温時における防食材17の縦弾性率が被覆部の縦弾性率以下であるため、防食材17への応力が分散されて防食材17にかかる応力を低減することができる。同様に、サーマルショック試験後の低温時における防食材17の硬度が被覆部の硬度以下であるため、防食材17への応力が分散されて防食材17にかかる応力を低減することができる。
また、被覆部15の先端における防食材17の厚みが、所定以上であるため、防食材17の割れが外面に伝播しにくい。
なお、本発明にかかる端子付き電線10を複数本束ねてワイヤハーネスとして使用することもできる。
各種条件の防食材が塗布された端子付き電線を製造し、サーマルショック試験後の防食材の割れの有無を目視にて評価した。なお、被覆導線は、2.5sqサイズとした。サーマルショック試験は、120℃×30分〜−40℃×30分を500サイクルとした。各種条件および評価結果を表1に示す。
Figure 2018170160
防食材の引張破断伸び(表中*1)は、防食材と同一材質の0.2mm厚のシートを作成し、サーマルショック試験後の−40℃において、JIS K6251に準じて評価した。また、防食材の30%引張応力(表中*2)は、前述した引張破断伸びを測定する際に、引張伸びが30%となる際の応力を求めた。防食材の厚みt1(表中*3)は、端子付き電線の被覆部先端部(被覆除去部との境界部)における最小厚みである。
被覆部の引張伸び(表中*4)は、被覆部と同一材質の0.2mm厚のシートを作成し、前述したサーマルショック試験後の−40℃における防食材の引張伸びが30%となる際の応力を、サーマルショック試験後の被覆部のシートに−40℃において付与し、その際の引張伸びを求めた。
被覆部の厚みt2は、端子付き電線の被覆部の厚み(圧着部以外の部位における厚み)である。また、端子の厚みt3は、端子付き電線の端子の板厚(圧着部以外の部位における板厚)である。
耐サーマルショック性の評価は、サーマルショック試験実施後の端子付電線の各サンプルについて、外観観察で防食材に割れがないものを「○」とし、わずかなヒビはあっても導線が露出しないものを「△」とし、割れにより導線が露出したものを「×」とした。
No.1〜No.8は、サーマルショック試験後の−40℃における防食材の引張破断伸びが30%以上であるため、サーマルショック試験後の防食材の外観観察において、導線が露出するような貫通する割れが発生しておらず、耐サーマルショック性は合格であった。
一方、No.9は、サーマルショック試験後の−40℃における防食材の引張破断伸びが30%以下であるため、サーマルショック試験後の防食材の外観観察において、割れが発生し、耐サーマルショック性は不合格であった。
また、No.7と、No.10およびNo.11とを比較すると、No.7は、前述したサーマルショック試験後の−40℃における防食材の引張伸びが30%となる際の応力を、サーマルショック試験後の−40℃における被覆部のシートに付与した際の引張伸びが1%以上であるため、耐サーマルショック性は合格であったが、No.10、No.11は、同引張伸びが1%未満であったため、耐サーマルショック性が不合格であった。
また、No.7と、No.12およびNo.13とを比較すると、No.7は、防食材の厚みが、被覆部の厚みの10%以上であるため、耐サーマルショック性は合格であったが、No.12、No.13は、防食材の厚みが、被覆部の厚みの10%未満であるため、耐サーマルショック性が不合格であった。特に、No.13は、防食材の厚みが、被覆部の厚みの10%未満であるため、耐サーマルショック性が不合格であった。
次に、各端子付き電線について、塩水浸漬腐食試験を行った。図6は、試験方法を示す図である。まず、水槽31に塩水33を貯留し、端子付き電線10(端子1)を浸漬した後、端子−電線間の抵抗変動を測定することで評価を行った。塩水33の濃度は、NaCl3.0±0.5%とした。また、端子1の浸漬深さは300±10mmとした。また、水没時間は24時間とし、水没後60±5℃で、95±5%RH雰囲気に48時間の環境(いわゆる湿熱環境)で放置した後に、抵抗を測定し、塩水浸漬前の抵抗と比較した。なお、抵抗変動が、1.5mΩ以下のものを合格とした。
No.1〜No.8は、抵抗変動が1.5mΩ以下であり合格であったが、No.9〜No.13は、抵抗変動が1.5mΩを超え、不合格であった。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………端子
3………端子本体
5………圧着部
7………導線圧着部
9………被覆圧着部
10………端子付き電線
11………被覆導線
13………導線
15………被覆部
17………防食材
20………鉛筆硬度試験装置
21………本体部
22………車輪
23………鉛筆
31………水槽
33………塩水

Claims (8)

  1. 被覆導線と端子とが接続される端子付き電線であって、
    前記被覆導線は、被覆部と、前記被覆部の先端から露出する導線とを具備し、
    前記端子の圧着部は、前記導線が圧着される導線圧着部と、前記被覆部が圧着される被覆圧着部とを具備し、
    少なくとも前記被覆圧着部よりも先端側を覆うように防食材が配置されており、
    120℃×30分と−40℃×30分のサイクルを500サイクル繰り返すサーマルショック試験後の−40℃における前記防食材の引張破断伸びが30%以上であることを特徴とする端子付き電線。
  2. 前記サーマルショック試験後の前記防食材に対して、−40℃における引張伸びが30%となる引張応力を、前記サーマルショック試験後の前記被覆部に対して、−40℃においてかけた際に、前記被覆部の引張伸びが1%以上であることを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
  3. 前記サーマルショック試験後の前記防食材の−40℃における縦弾性率が、前記サーマルショック試験後の前記被覆部の−40℃における縦弾性率以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
  4. 前記サーマルショック試験後の前記防食材の−40℃におけるデュロメータ硬度が、前記サーマルショック試験後の前記被覆部の−40℃におけるデュロメータ硬度以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の端子付き電線。
  5. 前記被覆部が、軟質PVCであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の端子付き電線。
  6. 前記導線が露出する前記被覆部の先端において、前記被覆部を覆う前記防食材の厚みが、前記端子の厚みの0.2倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の端子付き電線。
  7. 前記導線が露出する前記被覆部の先端において、前記被覆部を覆う前記防食材の厚みが、前記被覆部の厚みの0.1倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の端子付き電線。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかに記載の端子付き電線が複数本束ねられたことを特徴とするワイヤハーネス。
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