JP2013214439A - 端子付き被覆電線およびその製造方法、ならびにワイヤーハーネス - Google Patents
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Abstract
【課題】高い防食性能を有する端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】端子付き被覆電線10は、導体18を絶縁被覆20で被覆してなる被覆電線12と、被覆電線12の端末において露出する露出導体18Aに接続される端子14と、を備える。露出導体18Aと端子14とを電気的に接続する電気接続部19が、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルの硬化により形成され、JIS K6253に規定する方法により測定したD硬度が90以下である硬化皮膜16により被覆されている。
【選択図】図1
【解決手段】端子付き被覆電線10は、導体18を絶縁被覆20で被覆してなる被覆電線12と、被覆電線12の端末において露出する露出導体18Aに接続される端子14と、を備える。露出導体18Aと端子14とを電気的に接続する電気接続部19が、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルの硬化により形成され、JIS K6253に規定する方法により測定したD硬度が90以下である硬化皮膜16により被覆されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、端子付き被覆電線およびその製造方法、ならびにワイヤーハーネスに関する。
従来から、自動車等に配索するワイヤーハーネスを構成する電線としては、加工性に優れたタフピッチ銅の軟質材からなる電線素線を複数本撚り合わせた撚線または単芯線からなる芯線を、絶縁性材料からなる絶縁被覆層で被覆した被覆電線が用いられている。これらの電線の端末においては、絶縁被覆層を皮剥ぎすることで芯線を露出させた露出芯線(露出導体)に銅合金等からなる端子が接続される。電線に接続された端子はコネクタに挿入され係止される。
ワイヤーハーネスは、端子が接続された電線を複数本集束して、テープ巻きにより結束するか、丸チューブ、コルゲートチューブあるいはプロテクタで外装した状態にして自動車などに配索される。
このようなワイヤーハーネスを、例えばエンジンルームのような被水領域や、高温となりやすい車室等に配索した場合、水や熱の影響を受けて、電線の芯線と端子とが接触状態で電気的に接続される電気接続部において錆が発生しやすくなる。
そこで、電線の芯線と端子との電気接続部における腐食を防止するために、例えば、特許文献1においては、電線端末に接続した端子を挿入するコネクタに防錆用グリースを注入する方法が提案されている。
近年、車両の軽量化という観点から、ワイヤーハーネスを構成する電線材料についても軽量化が求められている。このような要請から、電線導体の材料として、軽量で電気伝導性に優れたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の電線を用いることが検討されている。
端子としては、電気特性に優れた銅または銅合金材料からなるものを用いるのが一般的である。そのため、銅または銅合金製の端子と、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の電線の芯線とが接触する電気接続部では、異種金属の接触による腐食が発生することがある。このような腐食は、電線と端子が相違する金属材料から構成されている場合には、同じ材料から構成されている場合よりも発生しやすい。そのため、電気接続部における腐食を確実に防ぐことのできるような防食対策が必要となる。
しかしながら、上記特許文献1において提案されているグリースは、コネクタ内に密に注入しないと水の侵入を十分に防止することができない。防食効果を高めようとして、グリースの充填量を上げようとすると、本来防食の不要なところまでグリースが塗布されてしまうことになり、過度に充填すると、コネクタや電線のべたつきを招き、取り扱い性を低下させることとなる。このような事情から、グリース等の代替品となる高い防食性能を有する防食剤により防食処理を行うことが求められている。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、高い防食性能を有する端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
上記課題を解決するものとして本発明は、導体を絶縁被覆で被覆してなる被覆電線と、前記被覆電線の端末において露出する露出導体に接続される端子と、を備え、前記露出導体と前記端子とを電気的に接続する電気接続部が、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルの硬化により形成され、JIS K6253に規定する方法により測定したD硬度が90以下である硬化皮膜により被覆されている端子付き被覆電線である。
また、本発明は、導体を絶縁被覆で被覆してなる被覆電線と、前記被覆電線の端末において露出する露出導体に接続される端子と、を備える端子付き被覆電線の製造方法であって、前記露出導体、および前記端子の前記露出導体と接続される部分のうちの少なくとも一方に、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルを塗布する塗布工程を経た後、前記露出導体に前記端子を圧着して接続する圧着工程を実行し、前記圧着工程の実行後に、前記プラスチゾルを硬化させて、JIS K6253に規定する方法により測定したD硬度が90以下の硬化皮膜を形成する硬化工程を実行する端子付き被覆電線の製造方法である。
本発明においては、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルが防食剤として用いられるので、グリースと比較すると塗布しやすい。また、本発明においては、防食性能を付与したい部分である電気接続部が、JIS K6253に規定の方法により測定したD硬度(以下、単に「D硬度」ともいう)が90以下のプラスチゾルの硬化皮膜で覆われている。
プラスチゾルの硬化皮膜は電線被覆材として用いられる塩化ビニル等と同等以上の物性を有している。特に、D硬度が90以下の硬化皮膜は、適度な柔軟性を有し、端子や露出導体との密着性に優れている。その結果、本発明によれば、防錆グリースなどの従来品を使用するよりも、塗布性がよく防食性能に優れたプラスチゾルにより、高い防食性能を付与された端子付き被覆電線およびその製造方法を提供することができる。
さらに本発明の製造方法によれば、端子を露出導体に圧着する圧着工程よりも前にプラスチゾルを塗布する塗布工程を実行するので、必要なところのみをプラスチゾルの硬化皮膜で覆うことができる。
本発明の端子付き被覆電線において、導体はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる素線を含み、端子は、銅または銅合金製材料からなる構成とするのが好ましい。
このような構成とすると、導体と端子の材料が相違する場合でも腐食の発生を防止できる。さらに、このような構成によれば、被覆電線を軽量化することができる。
このような構成とすると、導体と端子の材料が相違する場合でも腐食の発生を防止できる。さらに、このような構成によれば、被覆電線を軽量化することができる。
また、本発明は、前記端子付き被覆電線あるいは、前記製造方法により得られる端子付き被覆電線を備えるワイヤーハーネスである。
本発明によれば、塗布性がよく防食性能に優れたプラスチゾルにより、高い防食性能を付与された端子付き被覆電線を備えるワイヤーハーネスを提供することができる。
本発明によれば、塗布性がよく防食性能に優れたプラスチゾルにより、高い防食性能を付与された端子付き被覆電線を備えるワイヤーハーネスを提供することができる。
本発明によれば、高い防食性能を有する端子付き被覆電線およびワイヤーハーネスを提供することができる。
<実施形態1>
以下、本実施形態の端子付き被覆電線10およびワイヤーハーネスについて詳細に説明する。
(端子付き被覆電線10)
本実施形態の端子付き被覆電線10について説明する。
以下、本実施形態の端子付き被覆電線10およびワイヤーハーネスについて詳細に説明する。
(端子付き被覆電線10)
本実施形態の端子付き被覆電線10について説明する。
図1および図2に示すように、端子付き被覆電線10は、導電性材料からなる導体18の外周に絶縁被覆20が被覆されてなる被覆電線12と、被覆電線12の導体18の端末に接続された端子14とを備える。
被覆電線12の端末では、絶縁被覆20が剥離除去されて導体18が露出しており、この露出した導体18(露出導体18A)の端末に端子14が接続されている。導体18は、複数本の素線18aが撚り合わされてなる撚線からなる。このような構成の場合、撚線は、1種の金属素線より構成されていても良いし、2種以上の金属素線より構成されていてもよい。また、撚線は、金属素線以外に、有機繊維よりなる素線などを含んでいても良い。ここで、1種の金属素線より構成されるとは、撚線を構成する全ての金属素線が同じ金属材料からなることをいい、2種以上の金属素線より構成されるとは、撚線中に互いに異なる金属材料よりなる金属素線を含んでいることをいう。撚線中には、被覆電線12を補強する補強線(テンションメンバ)等が含まれていてもよい。
撚線を構成する金属素線の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、もしくはこれらの材料に各種メッキが施された材料などを例示することができる。また、補強線として機能する金属素線の材料としては、銅合金、チタン、タングステン、ステンレスなどを例示することができる。また、補強線として機能する有機繊維としては、ケブラーなどを挙げることができる。
撚線を構成する金属素線としては、軽量化の観点からアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる素線を含むものが好ましい。
絶縁被覆20の材料としては、例えば、ゴム、ポリオレフィン、PVC、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。絶縁被覆20の材料中には、適宜、各種添加剤が添加されていても良い。添加剤としては、難燃剤、充填剤、着色剤等を挙げることができる。
端子14は、図1に示すように、図示しない相手側端子と接続されるタブ状の接続部14Cと、接続部14Cの基端より延設形成され、被覆電線12の端末において露出する露出導体18Aを加締める一対のワイヤバレル14A,14Aと、ワイヤバレル14A,14Aよりさらに延設形成され、被覆電線12の端末の絶縁被覆20を加締める一対のインシュレーションバレル14B,14Bとを備えている。
端子14の母材材料としては、一般的に用いられる黄銅の他、各種銅合金や銅などを挙げることができる。端子14の表面の一部(例えば接点)もしくは全体に、錫、ニッケル、金などの各種金属によりメッキが施されていてもよい。
端子14と、被覆電線12の端末において露出している露出導体18Aとが接触状態に接続される電気接続部19は、プラスチゾルの硬化により形成される硬化皮膜16により覆われている。
具体的には、硬化皮膜16が、端子14の接続部14Cの基端と導体18の先端との境界より図1における手前側から、端子14のインシュレーションバレル14B,14Bと絶縁被覆20との境界より後方側の領域(ニ点鎖線で囲んだ領域)を覆っている。つまり、端子14の接続部14Cの基端と導体18の先端との境界、露出芯線18A、端子14のワイヤバレル14A,14Aとインシュレーションバレル14B,14B、およびインシュレーションバレル14B,14Bと絶縁被覆20との境界は硬化皮膜16により覆われている。
さて、硬化皮膜のJIS K6253に規定する方法により測定したD硬度は90以下である。プラスチゾルの硬化により形成される硬化皮膜16は電線被覆材として用いられる塩化ビニル等と同等以上の物性を有しているが、D硬度が90以下であると、適度な柔軟性を有し、端子14や露出導体18Aとの密着性に優れている。D硬度が90を超えると硬化皮膜16の硬度が高くなりすぎて密着性が低下してしまう。
硬化皮膜16の厚さは、適宜調整すれば良いが、0.01mm〜0.1mmの範囲内であるのが好ましい。硬化皮膜16の厚さが厚すぎると、端子14をコネクタへ挿入し難くなり、硬化皮膜16の厚さが薄すぎると、防食効果が低下しやすくなる。
硬化皮膜16を形成するために用いるプラスチゾルは、塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填材、顔料、安定剤等の配合材からなる流動性のある高粘度のペースト状物である。プラスチゾルには、物性を損なわない範囲で添加材や他のポリマーが添加されていてもよい。
プラスチゾルに含まれる塩化ビニル樹脂としては、特に制限はないが、乳化重合法、またはマイクロサスペンジョン重合法(微懸濁重合法)等の重合法により製造されるものを用いることができる。塩化ビニル樹脂の平均重合度は、1100〜1700であるのが好ましく、塩化ビニル樹脂の平均粒子径は、0.1μm〜数μmであるのが好ましい。
プラスチゾルに含まれる可塑剤としては、特に制限はないが、例えば、ジ−2−エチルへキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリ−2−エチルへキシルホスフェート等のリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル、ジ−2−エチルへキシルセバケートなどのセバシン酸エステル、ジ−2−エチルへキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル、トリ−2−エチルへキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル、ポリエステル系可塑剤等を用いることができる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよく、また、クエン酸エステル、グリコール酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤等の二次可塑剤を併用してもよい。
プラスチゾルに含まれる充填材としては、特に制限はないが、例えば炭酸カルシウム、クレー、タルク、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
プラスチゾルに含まれる安定剤としては、特に制限はないが、例えば鉛系、バリウム系、亜鉛系等の安定剤を単独もしくは2種以上併用してもよい。安定剤としては環境問題の観点から、非鉛系のものが好ましい。
プラスチゾルには、上記の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を配合してもよい。他の成分としては例えば、酸化チタンや、酸化亜鉛等の顔料等があげられる。
本実施形態におけるプラスチゾルの硬化方法としては、一般的なプラスチゾルの硬化方法と同様に熱硬化法が実行されるが、プラスチゾルを加熱する媒体に関して特に制約はない。
(端子付き被覆電線10の製造方法)
本実施形態の端子付き被覆電線10の製造方法について説明する。まず、端子14の母材となる金属板材をプレスして端子片(図示せず)を作製しておき、被覆電線12については端末において、絶縁被覆20を剥離して導体18を露出させておく。
本実施形態の端子付き被覆電線10の製造方法について説明する。まず、端子14の母材となる金属板材をプレスして端子片(図示せず)を作製しておき、被覆電線12については端末において、絶縁被覆20を剥離して導体18を露出させておく。
次に、プラスチゾルを、導体18と端子14とを接続する電気接続部19(端子の露出導体と接続される部分)の表面(図1および図2における上側の面)に塗布する(塗布工程)。詳しくは、本実施形態においては、プラスチゾルを、絶縁被覆20の端末の表面と、インシュレーションバレル14B,14Bの表面と、ワイヤバレル14A,14Aの表面と、露出導体18Aの表面と、端子14の接続部14Cの基端の表面とに塗布する。
プラスチゾルを塗布するにあたっては、滴下、塗布、押出などの方法を用いることができる。また、プラスチゾルを塗布するにあたっては、必要に応じ、加熱冷却等を行ってもよい。
塗布工程を実行した後、被覆電線12の端末において露出する露出導体18Aに端子14のワイヤバレル14A,14Aを圧着し、被覆電線12の端末において絶縁被覆20により覆われている部分に端子14のインシュレーションバレル14B,14Bを圧着する(圧着工程)。
圧着工程の実行した後に、プラスチゾルを塗布した端子付き被覆電線10を加熱して硬化皮膜16を形成する(硬化工程)。硬化工程における加熱条件は、被覆電線12の絶縁被覆20の耐熱温度等を考慮すると、加熱温度を150℃〜170℃とし、加熱時間を10分〜15分程度とするのが好ましい。硬化工程を経ると、図2に示すように、導体18と端子14との電気接続部19の表面に硬化皮膜16が形成される。
なお、電気的な接続に影響を与えないのであれば、端子14のワイヤバレル14A,14Aから突出するタブ状の接続部14C,14Cの裏面側(電線載置面とは反対側の面)、ワイヤバレル14A,14Aおよびインシュレーションバレル14B,14Bの裏面側にもプラスチゾルを塗布して硬化皮膜16を形成しても良い。
プラスチゾルは、硬化後は固化するので、取り扱いの際にべたつくおそれもなく、プラスチゾルを塗布した部分に長期にわたって硬化皮膜16を定着させることができる。その結果、本実施形態の端子付き被覆電線10においては、長期にわたり防食効果を維持することができる。
(ワイヤーハーネス)
本実施形態のワイヤーハーネスは、本実施形態の端子付き被覆電線10を含み、複数本の被覆電線を束ねたものから構成される。ワイヤーハーネスにおいては、ハーネス中に含まれる被覆電線のうちの一部が本実施形態の端子付き被覆電線10であってもよいし、全てが本実施形態の端子付き被覆電線10であってもよい。
本実施形態のワイヤーハーネスは、本実施形態の端子付き被覆電線10を含み、複数本の被覆電線を束ねたものから構成される。ワイヤーハーネスにおいては、ハーネス中に含まれる被覆電線のうちの一部が本実施形態の端子付き被覆電線10であってもよいし、全てが本実施形態の端子付き被覆電線10であってもよい。
ワイヤーハーネスにおいて、複数本の被覆電線は、テープ巻きにより結束されていても良いし、あるいは、丸チューブ、コルゲートチューブ、プロテクタ等の外装部品により外装されていてもよい。
本実施形態のワイヤーハーネスは、自動車等の車両に配索されるものとして好適であり、特に、被水領域のエンジンルームや車内に配索されるものとして好適である。このような場所では、熱および水の影響を受けやすいため、導体18と端子14との電気接続部19に錆が発生しやすくなるが、本実施形態のワイヤーハーネスは、本実施形態の端子付き被覆電線10を備えるので、導体18と端子14との電気接続部19における錆の発生を効果的に抑えることができる。
(本実施形態の作用および効果)
本実施形態においては、防食性能を付与したい部分である電気接続部19が、電線被覆材として用いられる塩化ビニル等と同等以上の物性を有し、適度な柔軟性を有し、端子14や露出導体18Aとの密着性に優れた硬度(D硬度が90以下)のプラスチゾルの硬化皮膜16で覆われている。また、本実施形態によれば、ワイヤーハーネスは、高い防食性能を付与された端子付き被覆電線10を備える。
本実施形態においては、防食性能を付与したい部分である電気接続部19が、電線被覆材として用いられる塩化ビニル等と同等以上の物性を有し、適度な柔軟性を有し、端子14や露出導体18Aとの密着性に優れた硬度(D硬度が90以下)のプラスチゾルの硬化皮膜16で覆われている。また、本実施形態によれば、ワイヤーハーネスは、高い防食性能を付与された端子付き被覆電線10を備える。
その結果、本実施形態によれば、防錆グリースなどの従来品を使用するよりも、塗布性がよく防食性能に優れたプラスチゾルにより、高い防食性能を付与された端子付き被覆電線10とその製造方法、およびワイヤーハーネスを提供することができる。
さらに本実施形態の製造方法によれば、端子14を露出導体18Aに圧着する圧着工程よりも前にプラスチゾルを塗布する塗布工程を実行するので、必要なところのみをプラスチゾルの硬化皮膜16で覆うことができる。
<実施例>
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
1.被覆電線の作製
ポリ塩化ビニル(重合度1300)100質量部に対して、可塑剤としてジイソノニルフタレート40質量部、充填剤として重炭酸カルシウム20質量部、安定剤としてカルシウム亜鉛系安定剤5質量部をオープンロールにより180℃で混合し、ペレタイザーにてペレット状に成形することにより、ポリ塩化ビニル組成物を調製した。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
1.被覆電線の作製
ポリ塩化ビニル(重合度1300)100質量部に対して、可塑剤としてジイソノニルフタレート40質量部、充填剤として重炭酸カルシウム20質量部、安定剤としてカルシウム亜鉛系安定剤5質量部をオープンロールにより180℃で混合し、ペレタイザーにてペレット状に成形することにより、ポリ塩化ビニル組成物を調製した。
次いで、50mm押出機を用いて、上記得られたポリ塩化ビニル組成物を、アルミ合金線を7本撚り合わせたアルミニウム合金撚線よりなる導体(断面積0.75mm)の周囲に0.28mm厚で押出被覆した。これにより被覆電線(PVC電線)を作製した。
2.端子付き被覆電線の作製
1.で作製した被覆電線の端末を皮剥ぎして導体を露出させた後、自動車用として汎用されている黄銅製のオス形状の端子(タブ幅0.64mm)を被覆電線の端末に加締め圧着した。
1.で作製した被覆電線の端末を皮剥ぎして導体を露出させた後、自動車用として汎用されている黄銅製のオス形状の端子(タブ幅0.64mm)を被覆電線の端末に加締め圧着した。
次いで、被覆電線の露出導体と端子との電気接続部に、下記の各種のプラスチゾルを塗布した後、150℃で10分加熱して、露出導体および端子のバレルをプラスチゾルの硬化皮膜により被覆した。これにより、端子付き被覆電線を作製した。なお、各種のプラスチゾルは、厚さが0.05mmとなるように塗布した。各種プラスチゾルの硬化により得られる硬化皮膜のD硬度をJIS K6253に規定する方法により測定して示した。
(実施例1)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、SH108、D硬度62]
(実施例2)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、RK107D、D硬度73]
(比較例1)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、ES−28A、D硬度95]
(比較例2)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、HT−27N、D硬度94]
(実施例1)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、SH108、D硬度62]
(実施例2)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、RK107D、D硬度73]
(比較例1)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、ES−28A、D硬度95]
(比較例2)
PVCプラスチゾル[(株)コバヤシ製、HT−27N、D硬度94]
3.評価方法
硬化皮膜を形成した各端子付き被覆電線について、防食性能の評価を以下の方法により行った。
(1)防食性能
ASTM B117に規定される腐食試験(35℃雰囲気中で5重量%の塩水噴霧)を96時間実施し、試験終了後の端子と電線の導体間の定電圧定電流抵抗を測定した(測定条件:20±5mV、10±0.5mAを通電)。
抵抗値が10mΩ未満であった場合を「○」とし、10mΩ以上であった場合を「×」とし、結果を表1に示した。
硬化皮膜を形成した各端子付き被覆電線について、防食性能の評価を以下の方法により行った。
(1)防食性能
ASTM B117に規定される腐食試験(35℃雰囲気中で5重量%の塩水噴霧)を96時間実施し、試験終了後の端子と電線の導体間の定電圧定電流抵抗を測定した(測定条件:20±5mV、10±0.5mAを通電)。
抵抗値が10mΩ未満であった場合を「○」とし、10mΩ以上であった場合を「×」とし、結果を表1に示した。
(2)結果と考察
表1の結果から、比較例1および2においては、プラスチゾルを用いたが、その硬化皮膜のD硬度が90を超えており本発明の規定外であるため、防食性能が劣っていた。
これに対し、実施例1および2の端子付き被覆電線は、黄銅製の端子とアルミニウム合金製の撚線からなる導体を備える被覆電線とを備えており、電気接続部においては銅とアルミニウムという異種金属が接触しているにもかかわらず、プラスチゾルの硬化皮膜が十分に密着しており、優れた防食性を有していた。
これらの結果から、本発明によれば、端子付き被覆電線に優れた防食性能を付与することができるということがわかった。
表1の結果から、比較例1および2においては、プラスチゾルを用いたが、その硬化皮膜のD硬度が90を超えており本発明の規定外であるため、防食性能が劣っていた。
これに対し、実施例1および2の端子付き被覆電線は、黄銅製の端子とアルミニウム合金製の撚線からなる導体を備える被覆電線とを備えており、電気接続部においては銅とアルミニウムという異種金属が接触しているにもかかわらず、プラスチゾルの硬化皮膜が十分に密着しており、優れた防食性を有していた。
これらの結果から、本発明によれば、端子付き被覆電線に優れた防食性能を付与することができるということがわかった。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、端子付き被覆電線10の端子14として、タブ状の接続部14Cを有するオス端子の例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、メス端子や音叉端子などであってもよい。また、端子14は、インシュレーションバレル14Bを有しないで、ワイヤバレル14Aのみで圧着されるものであってもよい。さらに、導体12と端子14との接続方法としては、バレルによる圧着に限られず、圧接、抵抗溶接、超音波溶接、ハンダ付け等の方法であっても良い。
(2)また、上記実施形態においては、撚線よりなる導体18が示されているが、導体18は単芯線であっても良い。
(3)上記実施例では端子付き被覆電線10として、黄銅製の端子14とアルミニウム合金製の撚線からなる導体を備えるものを示したが、黄銅製の端子と銅または銅合金製の導体とを備える端子付き被覆電線であってもよい。
(4)上記実施形態では、塗布工程を圧着工程の前に実行する製造方法について示したが、塗布工程は、実施例で説明したように、被覆電線12の端末に端子14(ワイヤバレルおよびインシュレーションバレル)を圧着して、導体18と端子14とを接続した後に実行してもよい。塗布工程を圧着工程の実行後に行うとプラスチゾルを均一に塗布することができ、硬化皮膜を均一なものとすることができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、端子付き被覆電線10の端子14として、タブ状の接続部14Cを有するオス端子の例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、メス端子や音叉端子などであってもよい。また、端子14は、インシュレーションバレル14Bを有しないで、ワイヤバレル14Aのみで圧着されるものであってもよい。さらに、導体12と端子14との接続方法としては、バレルによる圧着に限られず、圧接、抵抗溶接、超音波溶接、ハンダ付け等の方法であっても良い。
(2)また、上記実施形態においては、撚線よりなる導体18が示されているが、導体18は単芯線であっても良い。
(3)上記実施例では端子付き被覆電線10として、黄銅製の端子14とアルミニウム合金製の撚線からなる導体を備えるものを示したが、黄銅製の端子と銅または銅合金製の導体とを備える端子付き被覆電線であってもよい。
(4)上記実施形態では、塗布工程を圧着工程の前に実行する製造方法について示したが、塗布工程は、実施例で説明したように、被覆電線12の端末に端子14(ワイヤバレルおよびインシュレーションバレル)を圧着して、導体18と端子14とを接続した後に実行してもよい。塗布工程を圧着工程の実行後に行うとプラスチゾルを均一に塗布することができ、硬化皮膜を均一なものとすることができる。
10…端子付き被覆電線
12…被覆電線
14…端子
16…(プラスチゾルの)硬化皮膜
18…導体
18A…露出導体
19…電気接続部
20…絶縁被覆
12…被覆電線
14…端子
16…(プラスチゾルの)硬化皮膜
18…導体
18A…露出導体
19…電気接続部
20…絶縁被覆
Claims (5)
- 導体を絶縁被覆で被覆してなる被覆電線と、前記被覆電線の端末において露出する露出導体に接続される端子と、を備え、
前記露出導体と前記端子とを電気的に接続する電気接続部が、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルの硬化により形成され、JIS K6253に規定する方法により測定したD硬度が90以下である硬化皮膜により被覆されている端子付き被覆電線。 - 前記導体はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる素線を含み、前記端子は、銅または銅合金製材料からなる請求項1に記載の端子付き被覆電線。
- 請求項1または請求項2に記載の端子付き被覆電線を備えるワイヤーハーネス。
- 導体を絶縁被覆で被覆してなる被覆電線と、前記被覆電線の端末において露出する露出導体に接続される端子と、を備える端子付き被覆電線の製造方法であって、
前記露出導体、および前記端子の前記露出導体と接続される部分のうちの少なくとも一方に、塩化ビニル樹脂を含むプラスチゾルを塗布する塗布工程を経た後、前記露出導体に前記端子を圧着して接続する圧着工程を実行し、
前記圧着工程の実行後に、前記プラスチゾルを硬化させて、JIS K6253に規定する方法により測定したD硬度が90以下の硬化皮膜を形成する硬化工程を実行する端子付き被覆電線の製造方法。 - 請求項4に記載の端子付き被覆電線の製造方法により得られる端子付き被覆電線を備えるワイヤーハーネス。
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JP2012084614A JP2013214439A (ja) | 2012-04-03 | 2012-04-03 | 端子付き被覆電線およびその製造方法、ならびにワイヤーハーネス |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018063762A (ja) * | 2016-10-11 | 2018-04-19 | 古河電気工業株式会社 | 端子付き電線の製造方法、端子付き電線 |
CN110462936A (zh) * | 2017-03-27 | 2019-11-15 | 古河电气工业株式会社 | 连接结构体 |
EP3125369B1 (en) * | 2014-03-24 | 2021-04-21 | Furukawa Electric Co., Ltd. | Wire harness, connection method between covered conducting wire and terminal, and wire harness structure body |
-
2012
- 2012-04-03 JP JP2012084614A patent/JP2013214439A/ja active Pending
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