従来のサーマルヘッドは、第1突出部が、被覆部材よりも隆起部に近い方に位置していなかった。そのため、被覆層は、第1突出部よりも隆起部側に、平坦な上面が位置することとなる。それゆえ、記録媒体の終端が第1突出部を通過すると、記録媒体の終端は、被覆層の平坦な上面に接触しながら搬送されることとなる。そのため、記録媒体の終端が、被覆層の上面に貼りついてしまい、記録媒体が被覆層から剥離しにくい問題があった。
本開示のサーマルヘッドは、記録媒体を被覆層から効率よく剥離させることができ、記録媒体の搬送をスムーズに行うことができる。以下、本開示のサーマルヘッドおよびそれを用いたサーマルプリンタについて、詳細に説明する。
本開示のサーマルヘッドは、発熱部上に位置する保護層と、記録媒体等との接触圧を良好に保つとともに、発熱部上に位置する保護層と記録媒体との接触状態が変化しにくく、精細な印画を行うことができる。以下、本開示のサーマルヘッドおよびそれを用いたサーマルプリンタについて、詳細に説明する。
<第1の実施形態>
以下、サーマルヘッドX1について図1〜9を参照して説明する。図2では、保護層25、被覆部材29、被覆層27、フレキシブル配線基板5(以下、FPC5と称する)、およびコネクタ31を省略して一点鎖線で示している。図4〜9では、わかりやすいように、縦横比を縦:横=1:5で示している。図5〜7は、従来のサーマルヘッドX101における記録媒体Pの搬送状態を示している。図8は、サーマルヘッドX1における記録媒体Pの搬送状態を示している。なお、図5〜8では、記録媒体Pの搬送方向Sを図示しており、搬送方向Sは副走査方向と同一である。また、図5〜9ではプラテンローラ50の中心をGで示している。
サーマルヘッドX1は、放熱板1と、ヘッド基体3と、FPC5と、接着部材14と、コネクタ31とを備えている。なお、放熱板1、FPC5、接着部材14、およびコネクタ31は必ずしも備える必要はない。
放熱板1は、ヘッド基体3の熱を放熱するために設けられている。ヘッド基体3は、外部から電圧が印加されることにより、記録媒体P(図5参照)に印画を行う機能を有する。接着部材14は、ヘッド基体3と放熱板1とを接着している。FPC5は、ヘッド基体3に電気的に接続されている。コネクタ31は、FPC5に電気的に接続されている。
放熱板1は、直方体形状である。放熱板1は、例えば、銅、鉄またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、ヘッド基体3で発生した熱のうち、印画に寄与しない熱を放熱する機能を有している。
ヘッド基体3は、主走査方向に長く形成されており、平面視して、長方形状である。ヘッド基体3は、基板7上にサーマルヘッドX1を構成する各部材が設けられている。ヘッド基体3は、外部より供給された電気信号に従い、記録媒体Pに印画行う機能を有する。
接着部材14は、放熱板1上に配置されており、ヘッド基体3と放熱板1とを接合している。接着部材14としては、例えば、両面テープ、あるいは樹脂性の接着剤を用いることができる。
FPC5は、ヘッド基体3に電気的に接続されており、副走査方向において、ヘッド基体3に隣り合うように設けられている。FPC5にはコネクタ31が電気的に接続されている。それにより、FPC5を介して、ヘッド基体3は外部と電気的に接続される。
コネクタ31は、複数のコネクタピン8と、ハウジング10とを有している。コネクタ31は、FPC5の端部に電気的に接続されるとともに、FPC5の下方に配置されている。ハウジング10は、複数のコネクタピン8を収容している。
図1〜3を用いて、ヘッド基体3およびFPC5を構成する各部材について説明する。
ヘッド基体3は、基板7と、蓄熱層13と、電気抵抗層15と、共通電極17と、個別電極19と、接続電極21と、接続端子2と、導電部材23と、駆動IC11と、被覆部材29と、保護層25と、被覆層27とを有している。なお、これらの部材は、必ずしもすべて備えていなくてもよい。また、ヘッド基体3は、これら以外の部材を備えていてもよい。
基板7は、放熱板1上に配置されており、平面視して、矩形状である。基板7は、第1面7fと、第2面7gとを有している。第1面7fは、第1長辺7aと、第2長辺7bと、第1短辺7cと、第2短辺7dとを有している。第2面7gは、第1面7fと反対側に位置している。第1面7f上にヘッド基体3を構成する各部材が設けられている。第2面7gは、放熱板1側に設けられており、接着部材14を介して放熱板1に接合されている。基板7は、例えば、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
基板7の第1面7f上に蓄熱層13が設けられている。蓄熱層13は、下地部13aと、隆起部13bとを有している。下地部13aは、基板7の第1面7fの全面にわたって設けられている。隆起部13bは、下地部13aから基板7の上方へ向けて突出して隆起している。言い換えれば、隆起部13bは、基板7の第1面7fから遠ざかる方向に突出している。
隆起部13bは、基板7の第1長辺7aに隣り合うように配置され、主走査方向に沿って延びている。隆起部13bの断面が略半楕円形状であることにより、発熱部9上に形成された保護層25が、印画する記録媒体Pに良好に接触する。すなわち、隆起部13bが、下地部13aから上方に突出していることから、記録媒体Pの搬送を引き回すことなく、保護層25上に円滑に接触させることができる。下地部13aの基板7からの高さは50〜160μmとすることができ、隆起部13bの下地部13aからの高さは30〜60μmとすることができる。
蓄熱層13は、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積する。そのため、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くすることができ、サーマルヘッドX1の熱応答特性を高めることができる。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板7の第1面7fに塗布し、これを焼成することで形成される。隆起部13bは、下地部13aを印刷塗布、焼成した後に、ガラスペーストを印刷塗布、焼成して作製することができる。なお、隆起部13bをエッチングにより形成してもよい。
電気抵抗層15は、蓄熱層13の上面に設けられており、電気抵抗層15上には、共通電極17、個別電極19、および接続電極21が形成されている。共通電極17と個別電極19との間には、電気抵抗層15が露出した露出領域が形成されている。電気抵抗層15の露出領域は、図2に示すように、蓄熱層13の隆起部13b上に列状に配置されており、各露出領域が発熱部9を構成している。なお、電気抵抗層15は、各種電極と蓄熱層13との間に必ずしも設ける必要はなく、共通電極17と個別電極19とを電気的に接続するように、例えば、共通電極17と個別電極19との間のみに設けてもよい。
複数の発熱部9は、説明の便宜上、図2では簡略化して記載しているが、例えば、100dpi〜2400dpi(dot per inch)等の密度で配置される。電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、発熱部9に電圧が印加されたときに、ジュール発熱によって発熱部9が発熱する。
共通電極17は、主配線部17aと、副配線部17bと、リード部17cとを備えている。共通電極17は、複数の発熱部9と、コネクタ31とを電気的に接続している。主配線部17aは、基板7の第1長辺7aに沿って延びている。副配線部17bは、基板7の第1短辺7cおよび第2短辺7dのそれぞれに沿って延びている。リード部17cは、主配線部17aから各発熱部9に向かって個別に延びている。
複数の個別電極19は、発熱部9と駆動IC11との間を電気的に接続している。また、複数の発熱部9は、複数の群に分かれており、各群の発熱部9と各群に対応して設けられた駆動IC11とが、個別電極19によって電気的に接続されている。
複数の接続電極21は、駆動IC11とコネクタ31との間を電気的に接続している。各駆動IC11に接続された複数の接続電極21は、異なる機能を有する複数の配線で構成されている。
これらの共通電極17、個別電極19、および接続電極21は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。
接続端子2は、共通電極17および接続電極21をFPC5に接続するために、第1面7fの第2長辺7b側に設けられている。接続端子2は、後述するFPC5の外部端子に対応して設けられている。
接続端子2上には、導電部材23が設けられている。導電部材23としては、例えば、はんだ、あるいはACP(Anisotropic Conductive Paste)等を例示することができる。なお、導電部材23と接続端子2との間にNi、Au、あるいはPdによるめっき層(不図示)を設けてもよい。なお、導電部材23は必ずしも設けなくてもよい。
上記のヘッド基体3を構成する各種電極は、各々を構成するAl、Au、あるいはNi等の金属の材料層を蓄熱層13上に、スパッタリング法等の薄膜成形技術によって順次積層した後、積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成することができる。なお、ヘッド基体3を構成する各種電極は、同じ工程によって同時に形成することができる。
駆動IC11は、図2に示すように、複数の発熱部9の各群に対応して配置されているとともに、個別電極19と接続電極21とに接続されている。駆動IC11は、各発熱部9の通電状態を制御する機能を有している。駆動IC11としては、内部に複数のスイッチング素子を有するスイッチングICを用いることができる。
保護層25は、発熱部9、共通電極17および個別電極19の一部を被覆しており、被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは印画する記録媒体Pとの接触による摩耗から保護するためのものである。
保護層25は、導電性を有する無機材料により形成されており、例えば、TiN、TiCN、SiC、SiO2、SiON、SiN、TaNあるいはTaSiOにより形成することができる。保護層25の厚みは、例えば、2〜15μmとすることができる。保護層25は、例えば、スパッタリング法、あるいはイオンプレーティング法により形成することができる。
基板7上には、共通電極17、個別電極19および接続電極21を部分的に被覆する被覆層27が設けられている。被覆層27は、被覆した領域を、大気との接触による酸化、あるいは大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。被覆層27は、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはシリコーン系樹脂等の樹脂材料により形成することができる。
駆動IC11は、個別電極19および接続電極21に接続された状態で、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂からなる被覆部材29によって封止されている。被覆部材29は、主走査方向に延びるように設けられており、複数の駆動IC11を一体的に封止している。
図3に示すように、FPC5は、ベース基板5aと、配線導体5bと、カバー基板5cとを有している。ベース基板5aは、平面視して矩形状であり、FPC5の外形と同形状である。配線導体5bは、ベース基板5a上に設けられており、エッチングによりパターニングされている。配線導体5bは、端部に外部端子を有しており、外部端子は、ヘッド基体3の端子2に電気的に接続されている。カバー基板5cは、配線導体5bを覆うようにベース基板5a上に設けられており、外部端子は、カバー基板5cから露出している。
コネクタ31のコネクタピン8は、FPC5を貫通するように設けられている。それにより、コネクタピン8と配線導体5bとが電気的に接続されている。なお、コネクタピン8は、半田などによりFPC5と電気的に接続されていてもよい。
次に、図4〜9を用いてサーマルヘッドX1の保護層25、被覆層27、および被覆部材29について詳細に説明する。図4,9は、発熱部9を通り、基板7の厚み方向および副走査方向に沿った断面の断面図である。
保護層25は、発熱部9を覆うように設けられており、発熱部9および隆起部13bを被覆するように設けられている。そのため、保護層25の表面の断面形状は、上方に突出した円弧状となっている。保護層25の第1頂点25aは、発熱部9上に位置しており、
記録媒体Pと接触可能に設けられている。すなわち、記録媒体Pは、第1頂点25aに接触しながら搬送される。
被覆部材29は、第2突出部30を有している。また、被覆部材29は、第3頂点29aと、側面29bと、縁29cとを有している。第2突出部30は、基板7から上方に向けて突出しており、第2突出部30の最も高い部位が、第3頂点29aとなっている。被覆部材29の断面形状は、上方に突出した半楕円形状となっている。縁29cは、被覆部材29のうち最も隆起部13b側に位置しており、被覆層27上に設けられている。側面29bは、隆起部13b側に位置しており、第3頂点29aと縁29cとの間に設けられている。第3頂点29aおよび側面29bは、記録媒体Pと接触可能に設けられている。すなわち、記録媒体Pは、第3頂点29aおよび側面29bに接触しながら搬送される。
被覆層27は、副走査方向において、保護層25と被覆部材29との間に位置しており、第1突出部28を有している。第1突出部28は、被覆部材29よりも隆起部13bに近い方に位置している。第1突出部28は、隆起部13b側の端部に向けて、下地部13aからの高さが低くなっている。
第1突出部28は、基板7の厚み方向および副走査方向に沿った断面の断面図において、被覆層27の他の部位に比べて基板7から上方に向けて突出した部分であり、突出した部分の近傍に位置し、高さが連続的に変化する部分まで含む概念である。
第1突出部28(被覆層27)は、第2頂点27aと、縁27bと、側面27cとを有している。第1突出部28の最も高い部位が、第2頂点27aとなっている。縁27cは、副走査方向において、隆起部13bと離間した状態で位置しており、被覆層27のうち最も隆起部13b側に位置している。側面27bは、隆起部13b側に位置しており、第2頂点27aと縁27cとの間に設けられている。第2頂点27a、側面27b、および縁27cは、高さが連続的に変化している。言い換えると、側面27bは、基板7の厚み方向に傾斜しており、側面27bは、隆起部13b側に向かうにつれて下地部13aからの高さが低くなっている。
第1突出部28(より詳細には、第2頂点27aおよび側面27b)は、記録媒体Pと接触可能に設けられている。すなわち、記録媒体Pは、第1突出部28と接触しながら搬送される。
図4に示すように、保護層25の第1頂点25aの下地層13aからの高さをA(以下、Aと称する)、第1突出部28の第2頂点27aの下地層13aからの高さをB(以下、Bと称する)、第2突出部30の第3頂点29aの下地層13aからの高さをC(以下、Cと称する)、第1突出部28の第2頂点27aから発熱部9の中心までの副走査方向の距離をE1(以下、E1と称する)、第2突出部30の第3頂点29aから発熱部9の中心までの副走査方向の距離をE2(以下、E2と称する)として、以下、説明する。
サーマルヘッドX1は、A<B<2.5A、かつ10A<E1<30Aの関係性を有している。また、3E1<E2<6E1の関係性を有している。また、3B<C<9Bの関係性を有している。なお、これらの関係性は必ずしも有していなくてもよい。
Aは、例えば、40〜70μmとすることができる。Bは、例えば、50〜80μmとすることができる。Cは、例えば、260〜380μmとすることができる。また、E1は、例えば、700〜1100μmとすることができる。また、E2は、例えば、3500〜4000μmとすることができる。
ここで、図5〜7を用いて従来のサーマルヘッドX101の記録媒体Pの搬送状態について説明する。図5は、記録媒体Pが被覆部材29に接触しながら搬送されている状態を示している。図6は、図5より記録媒体Pの搬送状態が進んでおり、記録媒体Pが被覆層27に接触しながら搬送されている状態を示している。図7は、図6より記録媒体Pの搬送状態が進んでおり、記録媒体Pが被覆層27に接触しながら搬送されている状態を示している。
サーマルヘッドX101は、被覆層127が第1突出部128を有している。第1突出部128は、被覆部材129よりも隆起部113bに近い方に位置しておらず、中央部に位置している。そのため、被覆層127は、第1突出部128よりも隆起部113b側に、平坦な上面127cが位置することとなる。第1突出部128は、記録媒体Pに接触可能に設けられており、搬送される記録媒体Pと接触する。
図5に示すように、記録媒体Pは、被覆部材129の第3頂点129aと接触しながら搬送される。記録媒体Pの終端(端部)が第3頂点129aを通過すると、記録媒体Pの終端は、側面129bに接触しながら搬送されることとなる。この際に、被覆部材129の側面129bは、発熱部109に向かうにつれて低くなっているため、保護層125の第1頂点125aへ搬送される記録媒体Pの傾きは、搬送されるにつれて徐々に水平に近づくこととなる。
図6に示すように、さらに記録媒体Pの搬送が進むと、記録媒体Pは、被覆部材129の側面129bから離れて、被覆層127の第1突出部128と接触しながら搬送されることとなる。
そして、図7に示すように、記録媒体Pの終端が第1突出部128を通過すると、記録媒体Pの終端は、被覆層127の平坦な上面127cに接触しながら搬送されることとなる。そのため、記録媒体Pの終端は、被覆層127の上面127cに貼りついてしまい、被覆層127から剥離しにくい問題があった。
これに対して、サーマルヘッドX1は、第1突出部28は、被覆部材29よりも隆起部13bに近い方に位置し、被覆層27の端部に向けて、下地部13aからの高さが低くなっている。そのため、第1突出部28を通過した記録媒体Pは、平坦な上面に接触することなく、側面27bに接触することとなる。その結果、記録媒体Pと側面27bとの接触状態を小さくすることができ、記録媒体Pを被覆層27から効率よく剥離させることができる。
また、図7に示すように、記録媒体Pの終端が、第1突出部28を通過した後には、保護層125の第1頂点125aへ搬送される記録媒体Pの傾きは、発熱部9に向かうにつれて高くなるように変化する。すなわち、記録媒体Pは、保護層125の第1頂点125aに向けて搬送されるにつれて、記録媒体Pの傾きは、搬送方向Sの下流側が低くなる傾きから、搬送方向Sの下流側が高くなる傾きへ変更されることとなる。その結果、保護層125の第1頂点125aと、記録媒体Pとの接触状態が、変化することとなり、印画にムラが生じる問題があった。
これに対して、サーマルヘッドX1は、副走査方向において、第1突出部28が、被覆部材29よりも隆起部13bに近い方に位置している。そのため、図8に示すように、第2突出部30の第3頂点29aを通過した記録媒体Pは、第1突出部28の第2頂点27aに接触しながら搬送されることとなる。
それゆえ、記録媒体Pの傾きが、搬送方向Sの下流側が低くなる傾きから、搬送方向S
の下流側が高くなる傾きへ変更されることがなく、記録媒体Pの傾きが大きく変化することはない。その結果、保護層25の第1頂点25aと、記録媒体Pとの接触状態が変化しにくくなり、印画にムラが生じる可能性を低減することができる。
また、第1突出部28が、被覆部材29よりも隆起部13bに近い方に位置していることにより、記録媒体Pの終端が、第2頂点27aに接触し終わった後に、側面27bに接触しながら搬送されることとなる。そして、被覆層27の側面27bが傾斜しているため、記録媒体Pの搬送の傾きの変化を小さくすることができる。
図9には、基板7の厚み方向および副走査方向に沿った断面において、第1仮想線VL1、第2仮想線VL2、第3仮想線VL3、および第4仮想線VL4が一点鎖線にて示されている。第1仮想線VL1は、保護層25の第1頂点25aと第1突出部28の第2頂点27aとを結ぶ線分である。第2仮想線VL2は、保護層25の第1頂点25aと第2突出部30の第3頂点29aとを結ぶ線分である。第3仮想線VL3は、第1突出部28の第2頂点27aと被覆層27の隆起部13b側の縁27cとを結ぶ線分である。第4仮想線VL4は、第2突出部30の第3頂点29aと被覆部材29の隆起部13b側の縁29cとを結ぶ線分である。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、基板7の厚み方向および副走査方向に沿った断面において、第1仮想線VL1の傾きが、第2仮想線VL2の傾きよりも小さくてもよい。このような構成を有するときには、記録媒体P(図8参照)の搬送が進むにつれて、記録媒体Pの傾きを水平(保護層25の第1頂点25aにおける接線方向)に近づけることができ、記録媒体Pと保護層25の第1頂点25aとの接触状態が変化しにくくなる。
また、本実施形態のサーマルヘッドX1では、基板7の厚み方向および副走査方向に沿った断面において、第3仮想線VL3の傾きが、第4仮想線VL4の傾きよりも小さくてもよい。このような構成を有するときには、精細な印画を行うことができる。
すなわち、発熱部9の近くに位置する被覆部材29の側面29b(第3仮想線VL3)の傾きが、発熱部9の遠くに位置する第1突出部28の側面27b(第4仮想線VL4)の傾きよりも小さくなっている。
それにより、記録媒体Pの終端付近を印画する場合において、記録媒体Pの搬送中の傾きが、急激に変化しにくくなり、保護層25の第1頂点25aを通過する際の記録媒体Pの接触状態が変化しにくくなる。その結果、精細な印画を行うことができる。
なお、第1仮想線VL1〜第4仮想線VL4の傾きとは、第1仮想線VL1〜第4仮想線VL4と、水平面とのなす角を示している。第1仮想線VL1〜第4仮想線VL4の傾きは、例えば、図9に示すように、サーマルヘッドX1を、発熱部9を通過するように、基板7の厚み方向および副走査方向に沿って切断し、切断面を観察することによって測定できる。その際は、下地層13aの上面を水平面とみなせばよい。
また、基板7の厚み方向および副走査方向に沿った断面において、保護層25の第1頂点25aは、発熱部9上に位置する部位のうち最も高くに位置する部位である。第1突出部28の第3頂点29aは、被覆層27のうち最も高くに位置する部位である。第2突出部30の第3頂点29aは、被覆部材29のうち最も高くに位置する部位である。これらの高さは、接触式あるいは非接触式の表面粗さ計を用いて測定することができる。なお、上記、切断面を観察して測定してもよい。
次に、サーマルヘッドX1を有するサーマルプリンタZ1について、図10を参照しつつ説明する。
本実施形態のサーマルプリンタZ1は、上述のサーマルヘッドX1と、搬送機構40と、プラテンローラ50と、電源装置60と、制御装置70と、取付部材80と、給紙ユニット90とを備えている。サーマルヘッドX1は、サーマルプリンタZ1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、サーマルヘッドX1は、搬送方向Sに直交する方向である主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
搬送機構40は、駆動部(不図示)と、搬送ローラ47とを有している。搬送機構40は、感熱紙、インクが転写される受像紙等の記録媒体Pを、サーマルヘッドX1の複数の発熱部9上に位置する保護層25上を通過するように図10の矢印S方向に搬送するためのものである。
駆動部は、搬送ローラ47を駆動させる機能を有しており、例えば、モータを用いることができる。搬送ローラ47は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体45aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材45bにより被覆して構成することができる。なお、記録媒体Pが、インクが転写される受像紙等の場合は、記録媒体PとサーマルヘッドX1の発熱部9との間に、記録媒体Pとともにインクフィルム(不図示)を搬送する。
プラテンローラ50は、記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に位置する保護層25上に押圧する機能を有する。プラテンローラ50は、主走査方向に沿って延びるように配置され、記録媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持固定されている。プラテンローラ50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aを、ブタジエンゴム等からなる弾性部材50bにより被覆して構成することができる。
電源装置60は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電流および駆動IC11を動作させるための電流を供給する機能を有している。制御装置70は、上記のようにサーマルヘッドX1の発熱部9を選択的に発熱させるために、駆動IC11の動作を制御する制御信号を駆動IC11に供給する機能を有している。
給紙ユニット90は、複数の記録媒体Pを収容している。給紙ユニット90に収容された記録媒体Pは、一枚ずつ搬送ローラ47により搬送され、サーマルヘッドX1によって印画される。
そして、サーマルプリンタZ1は、プラテンローラ50によって記録媒体PをサーマルヘッドX1の発熱部9上に押圧しつつ、発熱部9上を通過するように記録媒体Pを搬送機構40によって搬送する。そして、サーマルプリンタZ1は、電源装置60および制御装置70によって発熱部9を選択的に発熱させることにより、記録媒体Pに所定の印画を行う。
<第2の実施形態>
図11を用いて、第2の実施形態に係るサーマルヘッドX2について説明する。なお、サーマルヘッドX1と同一の部材については同一の符号を付し、説明を省略する。また、プラテンローラ250の中心をGで示している。
サーマルヘッドX2では、プラテンローラ250とサーマルヘッドX2との位置が、サーマルヘッドX1と構成が異なっている。より詳細には、平面視して、プラテンローラ2
50の中心Gが、発熱部9の中心よりも第1突出部28側に設けられている。
平面視して、副走査方向において、プラテンローラの中心Gから発熱部9の中心までの距離はE3(以下、E3と称する)である。サーマルヘッドX1は、A<E3<4Aとの関係性を有している。なお、必ずしもA<E3<4Aの関係性を有さなくてもよい。E3は、例えば、50〜150μmとすることができる。
保持部材32は、副走査方向において、被覆部材29に隣り合うように設けられている。保持部材32は、被覆部材29よりも発熱部9から遠い側に配置されており、一部が被覆部材29に乗り上げるように設けられている。そのため、被覆部材29は、被覆層27と保持部材32とにより挟みこまれるように設けられている。保持部材32は、例えば、エポキシ樹脂、あるいはシリコーン樹脂等の樹脂により形成することができる。
本実施形態のサーマルヘッドX2では、平面視して、副走査方向において、プラテンローラ250の中心Gが、発熱部9の中心よりも被覆層27の第1突出部28側に設けられていてもよい。このような構成を有するときには、プラテンローラ250の中心Gが発熱部9の中心の上にある場合に比べて、プラテンローラ250と記録媒体Pとが接触し始める位置が、被覆層27の第1突出部28側に位置することとなる。その結果、記録媒体Pがプラテンローラ250の搬送に追従しやすくなる。それゆえ、記録媒体Pを保護層25の第1頂点25aに、効率よく搬送することができる。
また、平面視して、プラテンローラ250の中心Gが、発熱部9の中心と第1突出部28との間に配置されている。それにより、保護層25の第1頂点25aと、第1突出部28の第2頂点27aとにより、プラテンローラ250に押圧された記録媒体Pを支えることができる。その結果、記録媒体Pの搬送を安定化させることができる。
本実施形態のサーマルヘッドX2では、副走査方向において、被覆部材29に隣り合うように配置された保持部材32を有しており、被覆部材29が、保持部材32と被覆層27との間に配置されている。
このような構成を有するときには、被覆部材29の変形を抑えることができる。すなわち、被覆部材29は、記録媒体Pが搬送される際に、第3頂点29aおよび側面29bに記録媒体Pが接触することとなるが、被覆部材29が被覆層27および保持部材32により挟持されることにより、被覆部材29の変形を抑えることができる。
以上、複数の実施形態を用いて説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、サーマルヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1を示したが、これに限定されるものではなく、サーマルヘッドX2をサーマルプリンタZ1に用いてもよい。また、複数の実施形態であるサーマルヘッドX1〜X2を組み合わせてもよい。
また、電気抵抗層15を薄膜形成することにより、発熱部9の薄い薄膜ヘッドを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、各種電極をパターニングした後に、電気抵抗層15を厚膜形成した厚膜ヘッドに適用してもよい。
第1突出部28の高さおよび位置、第2突出部30の高さおよび位置、プラテンローラの中心の位置と印画の関係を調査する目的で、以下の実験を行った。
基板7に蓄熱層13となるガラスペーストを塗布し、焼成した後にエッチングを行い、
下地部13aおよび隆起部13bが形成された基板7を準備する。下地部13aの厚みは150μm、隆起部13bの厚みは40μmとした。
次に、共通電極17、個別電極19、および接続電極21等の各種電極を基板7に形成し、スパッタリング法によりSiNの保護層25が10μmとなるように成膜した。保護層25の第1頂点25aの下地層13aからの高さAは、50μmとなるように形成した。
次に、表1に示す値になるように、被覆層27を形成した。次に、被覆層27が成膜された基板7に駆動IC11を搭載した後、表1に示す値になるように、被覆部材29を形成してサーマルヘッドを作製した。そして、作製したサーマルヘッドを、プラテンローラ50とともに筐体に組み込みサーマルプリンタを作製し、以下に示す走行試験を行った。
試料No.1〜22のサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタに、記録媒体としてインクレスのカードメディアを用いて、1つのサーマルヘッドごとに3枚ずつ印画を行った。印画されたメディアを確認し、3枚のいずれにも濃度ムラや印画かすれが生じていないものを表1の印画結果の欄に◎と記載した。3枚のいずれかに濃度ムラや印画かすれが生じたものを表1の印画結果の欄に○と記載した。
また、3枚のいずれにも印画の立ち上がりにかすれが生じていないものを表1の熱応答特性の欄に◎と記載した。3枚のいずれかに印画の立ち上がりにかすれが生じたものを表1の熱応答特性の欄に○と記載した。
なお、参考として、第1突出部28を被覆部材29よりも隆起部13bに近い方に設けずに、被覆層27の中央部に設けたサーマルヘッドも作製し、上記の実験を行った。
試料1〜22のサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタの全てにおいて、印画結果が○または◎となっており、従来のサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタと比較して、濃度ムラや印画かすれが生じにくくなっており、精細な印画を行えることが確認できた。
これに対して、参考として、第1突出部28を被覆層27の中央部に設けたサーマルヘッドでは、3枚のいずれにも濃度ムラが生じていた。