JP2018167423A - 導電性積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】通常の水添加により得られたITO膜よりも、さらに結晶性を低下させたITO膜を有する導電性積層体を得ること。【解決手段】樹脂基材の少なくとも一方の面上に実質的に同一組成の酸化スズ添加酸化インジウムからなる透明導電層を有する導電性積層体であって、前記透明導電層は、厚さ方向に水素原子濃度が変化し、厚さ方向の中央部において水素原子濃度の極大を有し且つ水素原子濃度の極大値と最小値との差が1.0×1017atoms/cc以上である、導電性積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性積層体に関する。また、当該導電性積層体を含むタッチパネルデバイス、及び当該タッチパネルデバイスを含むディスプレイデバイスに関する。
フラットパネルディスプレイや太陽発電モジュールの製造分野においては、透明導電膜として酸化インジウム及び酸化スズを主成分とするITO(Indium Tin Oxide)膜が広く用いられている。ITO膜は、真空蒸着法、スパッタリング法等によって成膜され、スパッタリング法では、ITOで構成されたスパッタリングターゲットが使用される場合が多い。
上記したITO膜は、環境信頼性や抵抗値の観点から、結晶化したものを利用する場合が多い。その一方で、結晶性を抑制し、結晶化度を低下させたほうが望ましい場合がある。例えば、十分に結晶化したITO膜は、シュウ酸などの弱酸に対して溶解性が低く、エッチングするに際しては塩酸や硫酸等の強酸をエッチング液しか用いることができず、生産プロセスにおいて選択肢が狭まることになる。
そこで、ITOのスパッタリング時に、アルゴン等のスパッタガスに水蒸気を混合すること(水添加という。)で、結晶性の抑制されたITO膜を成膜する手法が知られている(特許文献1参照)。
特開平2−163363号公報
しかしながら近年において、ITO膜の結晶性のさらなる低下が求められている。
例えば、タッチパネルの大画面化に伴いITO膜の低抵抗化が求められているが、低抵抗化のためにITO膜厚を厚くすると、ITO膜は膜厚を厚くするほど結晶性が高くなる傾向にあることから、上記特許文献1のように水添加によって結晶性を抑制したITO膜であっても、常温で放置した際に固相での結晶化が進行し、エッチング不良を引き起こすことがある。
そこで本発明は、通常の水添加により得られたITO膜よりも、さらに結晶性を低下させたITO膜を有する導電性積層体を得ることを目的とする。
発明者らが鋭意検討した結果、樹脂基材上に成膜したITOからなる透明導電層(以下、ITO膜という場合がある。)であって、ITO膜に対して二次イオン質量分析を実施し、検出された水素原子濃度を厚さ方向にプロットした場合に、ITO膜の厚さ方向中央部において少なくとも1つの極大を有するようなITO膜とすることで、アニール処理を施しても結晶化しにくくなることを見出した。
この理由は定かではないが、以下のように予想される。まず、樹脂基材を下地に用いてITO膜を成膜すると、樹脂基材からの有機成分や水分などのアウトガスがITO膜中の特に基材に近い領域で多く取り込まれると推定される。そのため、アモルファスITO膜が固相成長によって結晶化をする際には、アウトガス等の不純物を多く含んだ基材近傍よりも、ITO膜表層から優先的に進行すると想定される。また、このように一方向から結晶化が進行するように制限したITO膜において、水素原子濃度が極端に多い領域付近が存在する場合、結晶化の進行がその領域に差し掛かったとき、結晶化を阻害する水素原子が急増することによって、それまでとは異なる結晶化の様式をとる必要が生じ、水素原子濃度が単一である場合と比較して結晶化に要するエネルギーが増えるため、結晶化速度が極端に遅くなると予想され、結果としてITO膜の結晶性が低下すると推測される。
すなわち本発明は、以下の構成を具備するものである。
1.樹脂基材の少なくとも一方の面上に実質的に同一組成の酸化スズ添加酸化インジウムからなる透明導電層を有する導電性積層体であって、前記透明導電層は、厚さ方向に水素原子濃度が変化し、厚さ方向の中央部において水素原子濃度の極大を有し且つ水素原子濃度の極大値と最小値との差が1.0×1017atoms/cc以上である、導電性積層体。
2.上記樹脂基材を構成する樹脂が、ポリエステル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂である、上記1に記載の導電性積層体。
3.上記樹脂基材と上記透明導電層との間に硬化樹脂層を有する、上記1または2に記載の導電性積層体。
4.上記1〜3の何れか1に記載の導電性積層体を含むタッチパネルデバイス。
5.上記4に記載のタッチパネルデバイスを含むディスプレイデバイス。
本発明によれば、より結晶性が低下したITO膜を有する導電性積層体を得ることができる。
ITO膜の厚さ方向(深さ方向に同じ。)におけるIn強度プロファイルを示す一例である。 ITO膜の厚さ方向(深さ方向に同じ。)におけるH濃度プロファイルを示す一例である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<樹脂基材>
本発明の導電性積層体で用いられる基材は、上述したアウトガスの観点から、樹脂基材であれば特に限定しないが、生産性や性能の観点から、光学分野で使用されているような耐熱性に優れた有機高分子フィルムが好ましい。また、透明性が求められる用途においては、透明樹脂基材、好ましくは透明有機高分子フィルムを用いればよい。
本発明における樹脂基材を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であることができ、取扱い性の観点からは熱可塑性樹脂が好ましい。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミドに代表されるアミド系樹脂ー、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ系樹脂や上記ポリマーのブレンド物等があげられる。特に、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂であると、透明導電層中の水素原子濃度の態様をより好ましい態様とすることができるため好ましい。かかるメカニズムは明確ではないが、これら樹脂は適度に水を含有していることや、スパッタリング等の加工温度において適度な透湿性を示すこと等が影響していると推定される。ポリエステル系樹脂の中でもポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
樹脂基材の膜厚は適宜に決定しうるが、強度や取り扱い性等の点より一般的には10μm以上500μm以下程度であり、20μm以上300μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましい。
<透明導電層>
本発明において、透明導電層は、酸化スズ添加酸化インジウム(ITO)からなるITO膜である。ITO膜に含有される酸化スズの含有量は、ITO膜の重量を基準として20重量%以下が好ましい。20重量%を超えると水蒸気導入如何に関わらずアニール処理後も結晶化しないため、好ましくない。
透明導電層の膜厚は、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、更に好ましくは15nm以上、200nm以下である。ITO膜は、膜厚が薄いほど結晶化しにくくなる傾向にあり、膜厚が10nm未満では結晶化が非常に困難となる傾向にあるものの、反面、導電性が得難くなる傾向にある。また、1000nm以上だと、結晶性が高くなる傾向にあり、また、ITO膜を結晶化したとしても、その後、応力がかかった際にクラックが入りやすくなる傾向にある。
本発明におけるITO膜は、その厚さ方向に水素原子濃度が変化し、厚さ方向の中央部において水素原子濃度の極大を有する。ここで、かかる水素原子濃度の測定は、2次イオン質量分析法(SIMS)のダイナミック・モードを用いる。また、「中央部」とは、ITO膜における外側表面および樹脂基材側表面から各々5nm(50Å)の厚みの部分を除いた部分のことを指す。
ここで、ITO膜の外側表面および樹脂基材側表面は、SIMSによるITO膜の厚さ方向におけるIn強度プロファイルから求める。図1にかかるプロファイルの一例を示す。なお、図1ではここで説明する厚みの換算をしていないので留意されたい。外側表面について、プロファイルの中央から厚さ0の方向に、適切に細かい測定間隔でIn強度の変化を見て、10%の変化(10%のIn強度の減少)があれば、その直前の位置をITO膜の外側表面とする。樹脂基材側表面も同様にして、プロファイルの中央から深い方向にIn強度の変化をみて、10%の変化(10%のIn強度の減少)があれば、その直前の位置をITO膜の樹脂基材側表面とする。別途、断面TEM写真からITO膜厚を求めておき、外側表面とした位置を膜厚0nmとし、樹脂基材側表面とした位置をITO膜厚の値となるようにする。なお、測定点の間隔は、In強度プロファイル全体において90〜100点取れる間隔とする。
また、「極大」は以下のように定義する。すなわち、上記した測定間隔をもとに厚さ方向にHの2次イオン質量分析を行い、ITO膜中においてある測定点の値を前後10点と比較したときに、その測定点が最大となっているとき、その点を極大とみなす。また、水素に関しては、あらかじめ標準試料を測定し、SIMS測定におけるピーク強度と試料の濃度の関係を算出することで、強度プロファイルから濃度プロファイルへの変換を実施する。
本発明におけるITO膜における水素原子濃度の厚さ方向の濃度プロファイルの一例を図2に示す。図2は、ITO膜の中央部において、水素原子濃度が、表層付近から連続的に増加していき、極大を示し、再び減少する傾向を表わしている。なお、中央部を決定するに当たっては、上記で説明したIn強度プロファイルによる厚みの換算をするが、図2ではかかる厚みの換算をしていないので留意されたい。
水素原子濃度は、存在する水分子の量を表わしている。従い、ITO膜の厚さ方向中央部に水素原子濃度の極大を有するということは、水分子が、ITO膜中に均一に存在していたり、ITO膜の表面だけに偏在したりしているのではなく、ITO膜の厚さ方向中央部に比較的多く存在していることを表わしている。そして、このような水分子の存在の態様とすることによって、ITO膜の結晶性をより優れたレベルで抑制することができる。なお、水分子の存在の態様には、水添加の方法が影響しているが、従来の水添加の方法では本発明のようにITO膜の厚さ方向中央部に比較的多く水分子が存在する態様にはならず、厚さ方向中央部において極大を有していないほぼ単一な水素原子濃度分布となる。
また、上記水素原子濃度の極大は、厚さ方向中央部に2以上あってもよい。
ITO膜における水素原子濃度の極大値と最小値との差は、1.0×1017atoms/cc以上である。ここで極大値は、上述の方法で求めた極大における水素原子濃度の値である。最小値は、ITO膜の厚さ方向中央部において、最小の水素原子濃度の値である。差が上記範囲にあることで、厚さ方向中央部に十分な量の水分子が存在することとなり、高い結晶化抑制の効果が得られる。上記差が小さいと、厚さ方向中央部に存在する水分子が少ないということとなり、結晶化抑制の向上効果が低くなる。かかる観点から極大値と最小値との差は、好ましくは5.0×1017atoms/cc以上、より好ましくは1.0×1018atoms/cc以上、さらに好ましくは1.0×1019atoms/cc以上、特に好ましくは1.5×1019atoms/cc以上である。また、ITO膜の厚さ方向中央部における水素原子濃度の最小値は、1.0×1017atoms/cc以上であることが好ましく、これによって結晶化抑制の向上効果を高くすることができる。かかる最小値が1.0×1017atoms/cc未満では、結晶化抑制の向上効果が低い。
本発明において上述のような水素原子濃度の態様は、実質的に同一組成のITO膜内で考慮される。ここで「実質的に同一組成」とは、酸化スズ濃度の差が1.5atoms/cc以下であることを意味する。かかる差は好ましくは1.0atoms/cc以下であり、理想的には0atoms/ccである。すなわち、酸化スズ濃度の差が大きい場合は異なるITO膜を有する態様とみなし、酸化スズ濃度の差が小さい場合は同じITO膜である態様とみなし、本発明は後者の場合においてその結晶性を低減しようというものである。なお、実質的に同一組成のITO膜と実質的に同一組成ではないITO膜とを有するような場合は、実質的に同一組成のITO膜において上述した水素原子濃度の態様かどうかを見ればよい。
<透明導電層の製造方法>
本発明は、ITO膜において上述のような特定の水素原子濃度の態様を有するものであるが、以下、本発明におけるITO膜の成膜方法の一例について説明する。
本発明におけるITO膜は、透明性及び電気特性が良好な導電性積層体を得られる点、生産性の面で有利である点、大面積基材に対して膜厚分布が均一なITO膜を形成することができる点等から、ロール・ツー・ロール方式のスパッタリング法で形成することが好ましい。スパッタリング法で成膜するに際しては、真空槽中の圧力(背圧)を一旦1.3×10−4Pa以下とし、次いで水蒸気及び不活性ガス及び酸素を導入して形成することが好ましい。このようにすることで、真空槽中に残留し、且つITO膜の特性に影響を与えることが懸念される分子種の影響を低減できる。かかる圧力は、特に好ましくは5×10−5Pa以下であり、更に好ましくは2×10−5Pa以下である。
水分圧を決定するときには、差動排気型のインプロセスモニターを用いても良い。または、ダイナミックレンジが広く、0.1Pa以下の圧力下においても計測が可能な四重極質量分析計を用いても良い。
また、導入される不活性ガスとしては、例えばHe、Ne、Ar、Kr、Xeを用いることができ、原子量の大きな不活性ガスほど形成されるITO膜へのダメージが少なく表面平坦性が向上すると言われている。しかし、コスト面から考えてArが好ましい。この不活性ガスには、ITO膜中に取り込まれる酸素濃度を調整するために、分圧に換算して1.3×10−4Paから7×10−2Paの酸素を添加しても構わない。さらに、酸素の他にO、N、NO、NH等を目的に応じて用いることができる。
本発明を達成するための手段には様々な方法が考えられるが、ロール・ツー・ロール方式で複数のカソードを用いて水蒸気を導入する成膜方法が好ましい。具体的には、まず、複数のカソードを、基材の搬送経路上に、基材の搬送方向に適度な間隔をあけて、基材と対面になるように設置する。次に、各カソード近傍から不活性ガス等とともに水蒸気を導入しながら、基材を搬送させてスパッタリングを行う。この方式で行うと、生産効率を落とすことなく、ITO膜中に水素原子濃度が高い領域を作製することができる。この理由は以下のように推測される。ロール・ツー・ロール方式のスパッタリングでは、基材はカソードの端側の対面から搬送されていき、徐々に中央付近に差し掛かり、カソードの反対側の端側から出ていくことになるが、一般的にスパッタリングでは、カソードの中央付近において成膜速度が早く、端部のほうが遅い。また、成膜速度が早いほうが膜中に不純物が取り込まれにくく、反対に遅いほうが不純物が取り込まれやすい。以上のことから、基材が搬送されてからカソードの中央付近に差し掛かるにつれて、不純物として取り込まれる水蒸気から生じる水素原子の取り込み量は減少していくが、カソードの端のほうに向かうにつれて水素原子の取り込み量が多くなる。そして、ロール・ツー・ロール方式で上述のように基材の搬送経路に複数のカソードを設置することで、成膜速度の早い部分と遅い部分を交互に経由することになり、結果として水素原子の取り込み量に大小が生じ、ITO膜中の厚さ方向中央部に水素原子濃度の高い部分を作製することが可能となる。本方式において、1Passで成膜することが好ましい。1つのカソードを用いて巻き返し等の技術を使用して複数回経由する成膜方法は、生産効率上好ましくないし、また、過度に不純物(水素原子以外のものも含む。)が取り込まれ易くなる傾向にあり、導電性が低下する等の影響が生じ易くなる傾向にある。
水蒸気の分圧は、1.0×10−4Pa以上であることが好ましく、4.0×10−4Pa以上であることがより好ましく、6.0×10−4Pa以上であることがさらに好ましい。水蒸気の分圧が低いと、ITO膜中に取り込まれる水素原子の量が少なくなり、所望の発明品が得られない可能性がある。
<硬化樹脂層>
本発明においては、樹脂基材と透明導電層との間に硬化樹脂層を有することが好ましい。硬化樹脂層によって、その上に形成される透明導電層との密着性の向上、樹脂基材の各種耐久性の向上、樹脂基材のガスバリア能の向上ができる。また、用途に応じて、これら機能をさらに奏することを目的として、複層形成しても良い。さらに、発明者らが検討した結果、硬化樹脂層があることによって、本発明の効果がさらに顕著になることを確認した。この理由は定かではないが、ITO膜を成膜する過程において、硬化樹脂層から水分を含有するアウトガスが一部発生することによって、ITO膜の結晶化阻害を助長すると考えられる。
使用する樹脂としては、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂等の硬化型樹脂が挙げられる。かかる硬化型樹脂としては、アクリル系硬化型樹脂、ウレタン系硬化型樹脂、エポキシ系硬化型樹脂、シリケート系硬化型樹脂、フェノキシ系硬化型樹脂等の樹脂成分が挙げられる。また、有機物と無機物との複合材料を使用しても良い。具体的には、樹脂成分とアルミナ、シリカ、マイカ等の無機粒子との混合物を使用することができる。また、金属アルコキシドを混合してもよい。
硬化樹脂層の膜厚は、0.1μm以上、7μm未満であることが好ましい。膜厚が厚すぎる場合には、例えば紫外線硬化樹脂が酸素による影響で硬化不足となりやすいなど、十分な硬度が得られない等の問題が生じる場合がある。反対に膜厚が薄すぎる場合には、硬化型樹脂の硬化収縮が樹脂基材を撓ませ、カールが発生し易くなる傾向にある。
硬化樹脂層の形成には、多くの場合、コーターを用いた塗布法や、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法等が用いられる。
<金属化合物層>
本発明の導電性積層体は、硬化樹脂層と透明導電層の間に、好ましくは膜厚が0.1nm以上、10nm未満の極薄膜の金属化合物層を更に有していてもよい。極薄膜ならば、樹脂基材や硬化樹脂層から出るアウトガスを阻害することなく、発明に特に影響を与えない。金属化合物層を構成する成分としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物が挙げられる。
これらの金属化合物層は、公知の手法にて形成することが可能であり、例えばDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、パルスレーザーデポジション法等の物理的形成法(PVD)等を用いることができるが、大面積に対して均一な膜厚の金属化合物層を形成するという工業生産性に着目すると、DCマグネトロンスパッタリング法が好ましい。なお、上記物理的形成法(PVD)のほかに、化学気相堆積法(CVD)、ゾルゲル法などの化学的形成法を用いることもできるが、膜厚制御の観点からはやはりスパッタリング法が好ましい。
スパッタリングに用いるターゲットは金属ターゲットを用いることが望ましく、反応性スパッタリング法を用いることが広く採用されている。これは、金属化合物層として用いる元素の酸化物が絶縁体であることが多く、金属化合物ターゲットの場合DCマグネトロンスパッタリング法が適応できないことが多いからである。また、近年では、2つのカソードを同時に放電させ、ターゲットへの絶縁体の形成を抑制するような電源が開発されており、擬似的なRFマグネトロンスパッタリング法を適応できるようになってきている。
<用途>
本発明の導電性積層体は、エッチング特性に優れる利点を活かし、透明樹脂基材を用いることで透明導電性積層体とし、タッチパネルデバイスの電極として用いることができる。かかるタッチパネルデバイスは、例えばディスプレイデバイスに用い、タッチパネルディスプレイデバイスとすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
<各種物性の測定及び評価方法>
(1)ITO膜の厚み
サンプルを2mm×2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で面方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。得られた断面につき、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から透明導電膜の厚みを求めた。
(2)ITO膜の結晶性の状態
ITO膜の結晶性の状態の評価は、リガク製X線回折装置Ultima 4を用いて行った。薄膜試料台を用い、X線入射角を2°に固定し、2θ軸のみを走査することにより導電層のX線回折パターンを検出した。X線はCu Kα(波長:154.2pm)を用い、管電圧40kV、管電流300mA、ゴニオメータRINT Ultimaシリーズ用試料水平ゴニオメータ、発散スリット0.2mm、散乱スリット及び受光スリットはopenとし、走査モードは連続モードを用い、スキャンスピード5.000°/min、スキャンステップ0.020°で測定を行った。本評価を、成膜後から23℃、相対湿度55%RHで1日放置後および90日放置後のサンプルについて、それぞれ130℃600分間熱処理後とかかる熱処理前とで測定を実施し、熱処理後のITO膜に由来するピークの高さを100とし、それに対する熱処理前のITO膜に由来するピークの高さの比を求め、下記基準により評価した。
◎:0.2以下
○:0.2を超え、0.3以下
×:0.3を超える
本発明においては、上記比が小さいほど結晶性が低いといえ、好ましい。
(3)SIMS測定
水素原子濃度の極大値の数および極大値と最小値の値の差の算出は、二次イオン質量分析装置(IMS−6f Magnetic Sector SIMS、CAMECA)を利用して行った。前記二次イオン質量分析法実験は、下記条件で実施した。
一次イオン条件:Cs+イオン、5keV
二次イオン極性:負
尚、ITO膜の厚さスケールは、前述したように、断面TEM写真によるITOの膜厚と、上記と同様に測定したSIMSによるInの強度プロファイルから校正した。また、水素濃度は、あらかじめ標準試料を測定することで、測定した強度プロファイルを濃度プロファイルへと変換した。
[実施例1]
(硬化樹脂層の形成)
樹脂基材として厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製OFW)を用い、その一方の面に下記の硬化樹脂液をグラビアコーティングにより塗工し、60℃で1分間乾燥した後、紫外線を積算光量220mJ/cm照射して硬化させることにより、厚さ3μmの硬化樹脂層を形成した。
(硬化樹脂液)
紫外線硬化樹脂として、ウレタンアクリレート(東亜合成化学製「アロニックス」M405)と、ラジカル系光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア」 184)をウレタンアクリレート100重量部に対し、ラジカル系光重合開始剤が5重量部となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)へ溶解し硬化樹脂液を調合した。硬化樹脂液の固形分はMIBK100重量部に対し、20重量部であった。
(透明導電層の形成)
DCマグネトロンスパッタリング法により、In−Sn−Oからなる焼結ターゲットを2つ用い、ロール・ツー・ロール方式で、上記硬化樹脂層を有する樹脂基材の硬化樹脂層のうえに、8重量%の酸化スズを含むITO膜を膜厚30nmで成膜し、透明導電性積層フィルムを得た。スパッタリングの条件は、成膜雰囲気中の水分圧が8.0×10−4Paであり、Ar分圧が4.0×10−1Paであり、酸素分圧が3.0×10−3Paであり、フィルム搬送速度は4m/分であり、ターゲット放電電力密度は10kw/mであり、成膜時のスパッタターゲット直上のフィルム張力が150N/mであり、成膜時の樹脂基材の温度が−20℃であった。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[実施例2]
使用する基材を厚み100μmのポリカーボネートフィルム(帝人株式会社製「ピュアエース」)に変更した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[実施例3]
使用する基材を厚み100μmのポリシクロオレフィンフィルム(日本ゼオン製「ZEONOR」)に変更した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[実施例4]
透明導電層の形成時に、使用するカソードの本数を3本に変更した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[実施例5]
使用する基材に硬化樹脂層を塗工しないこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[実施例6〜8]
透明導電層の形成時に、スパッタリング装置において、水分圧を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[実施例9]
透明導電層の形成を、切り出したフィルムをガラス上にポリイミドテープで固定し、ベルトコンベアを用いたシート・ツー・シート方式で、固定したガラスと一緒にフィルムを搬送し、成膜を実施した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[比較例1]
透明導電層の形成時に、使用するカソードの本数を1本に変更した以外は実施例1と同様にして、明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[比較例2]
使用する基材を厚み500μmの無アルカリガラス(日本電気硝子株式会社製「OA-10G」)に変更し、透明導電層の形成をベルトコンベアを用いたシート・ツー・シート方式で実施した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
[比較例3]
透明導電層の形成時に、スパッタリング装置において、水分圧を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層フィルムを得た。作製した透明導電性積層フィルムの特性を表1に示す。
Figure 2018167423
PET:ポリエチレンテレフタレート
PC:ポリカーボネート
COP:ポリシクロオレフィン
本発明の導電性積層体は、結晶性が抑制され、例えばエッチングに供する用途など結晶化があまり進行しない方が好ましい用途等において好適に用いられ、その産業上の利用可能性は高い。

Claims (5)

  1. 樹脂基材の少なくとも一方の面上に実質的に同一組成の酸化スズ添加酸化インジウムからなる透明導電層を有する導電性積層体であって、前記透明導電層は、厚さ方向に水素原子濃度が変化し、厚さ方向の中央部において水素原子濃度の極大を有し且つ水素原子濃度の極大値と最小値との差が1.0×1017atoms/cc以上である、導電性積層体。
  2. 上記樹脂基材を構成する樹脂が、ポリエステル系樹脂またはポリカーボネート系樹脂である、請求項1に記載の導電性積層体。
  3. 上記樹脂基材と上記透明導電層との間に硬化樹脂層を有する、請求項1または2に記載の導電性積層体。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の導電性積層体を含むタッチパネルデバイス。
  5. 請求項4に記載のタッチパネルデバイスを含むディスプレイデバイス。
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