JP2018164453A - 腸内フローラ用可食性組成物 - Google Patents

Abstract

【課題】腸内フローラ（細菌叢）を健康にし多様性を増加させてヒトの健康を得る。
【解決手段】腸内フローラが食べる天然食物繊維成分であって且つ当該成分をヒトが安定して摂取可能な味覚、風味を備えた天然食物繊維成分及びエンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）、ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１）、及びラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６の熱水抽出物（死菌体）よりなる。好ましくは、チコリ根抽出物、その他、果実等の食物繊維を均一に混和した粉末状又は顆粒状に製造したものを主成分とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、腸内フローラ（腸内細菌叢）用の可食性組成物に関するものである。

食生活の欧米化の浸透により脂肪や砂糖の摂取量が増えた反面野菜の消費量が激減し、腸内フローラが食する食物繊維の摂取量は５０年前の半分以下となっている。
また、病院や、歯科医院などで多用される抗生物質は、体内に残留し、腸内フローラにダメージを与え、食用のウシ、ブタ、ブロイラー等に使われる抗生物質、食品添加物、農薬、水道水の塩素成分等も、腸内フローラにダメージを与えている状況がある。
食品添加物は、その種類によっては、ヒトにとって無害でも、腸内細菌にとっては、ダメージを与えるものもある。

その結果、人の糞便量も減少し、腸内フローラも糞便量の減少した分だけ減少すると共に上述したダメージを受けて腸内環境が悪化している状況がある。
食生活の変化は、同時に動脈硬化、心臓病、糖尿病等のいわゆる生活習慣病を増加させ、高齢化と共に、医療費を増加させている。

他方で、腸内フローラに関する研究が進行し、解明が進められている （非特許文献１）。例えば、
１ 肥満は、必ずしもオーバーカロリーが原因ではなく、脂肪細胞の肥大化により生じる。腸内細菌は、肥満を解消させる短鎖脂肪酸を生成するが、上述したように食生活の欧米化等により腸内細菌自体が劣化しているために、短鎖脂肪酸の生成能が低下し、肥満患者は増え続ける一方である。
又、腸内フローラが生成する短鎖脂肪酸は、腸の細胞を刺激して、膵臓からインスリンの分泌を働きかけるインクレチンというホルモンの分泌を促すが、腸内フローラの劣化は、短鎖脂肪酸の生成量を減少させるため、インスリンの分泌量が少なくなり、糖尿病の原因となる。

２ 腸内細菌の劣化に伴う短鎖脂肪酸の生成量の減少は、腸管のバリヤー層の劣化につながり、腸管に隙間（漏れる腸）を生じさせる。この腸管の隙間から腸内の有害な細菌、毒素が腸管外部へ放出される。腸管外に漏れ出した毒素等に対し白血球等のマクロファージが炎症性サイトカインを分泌するなどして反応し、全身が軽い炎症状態となる。
炎症状態となった細胞組織付近でインスリンの働きが低下する為、糖尿病の原因となる。
３ 肥満により腸内細菌の一つであるアリアケ菌が急増する。アリアケ菌は、細胞を老化（正常細胞に修復不可能なほど大きなDNAダメージが生じた場合に，細胞周期チェックポイント機構が恒常的に活性化することで誘導される不可逆的な細胞増殖停止状態）させ、肝臓ガン、乳ガン、食道ガン等の癌を誘発物質であるＤＣＡ（deoxycholic acid）を体内に増加させる。

４「エクオール」は、大豆成分（イソフラボン）を腸内細菌が食べて生成する物質であり、肌の健康を保つ物質でもあり、女性ホルモンと似た働きをしめすが、これを生成する腸内フローラを持つヒト（日本人の約半分に常在）が年々減少してる。「エクオール」は、エストロゲン受容体と結合するため、過剰に分泌されたエストロゲンによる乳腺の刺激を抑制し、乳ガンになる確率を低くするが、エクオールが減少すると、エストロゲン受容体にエストロゲンが結合した数が増加する為、乳腺を過剰に刺激し、乳ガンになる可能性が高まると考えられている。又「エクオール」は男性ホルモンであるテストステロンが活性化してジヒドロテストステロンとなることを抑制し、 ジヒドロテストステロン過多を防止すると共に、
ジヒドロテストステロンと結合して、アンドロゲン受容体と結合することを抑制することから、前立腺ガンの原因となるアンドロゲンを抑制する作用がある。
「エクオール」の減少により、前立腺ガンも同様に高まると考えられている。
５．腸内フローラの劣化により、生成される短鎖脂肪酸が減少し、アレルギーの原因となる免疫細胞（白血球T細胞）が暴走する。
即ち、未成熟の白血球Ｔ細胞は、酪酸（短鎖脂肪酸）により制御性白血球Ｔ細胞（Ｔレグ細胞）に変化する。Ｔレグ細胞は、成熟した白血球Ｔ細胞の活動を抑制し、白血球Ｔ細胞の過剰反応（暴走）を抑制するが、腸内フローラの劣化に伴い、短鎖脂肪酸の生成量が減少することで、Ｔレグ細胞に変化する白血球Ｔ細胞も減少するため、白血球Ｔ細胞の活動が制御不能となって暴走しアレルギーや自己免疫疾患が増える。
６．漏れる腸になると、腸壁の間隙から、毒素、有害菌が腸管外へ漏れ出す為、腸管外の毒素等に対し白血球等のマクロファージが炎症性サイトカインを分泌するなどして反応し、全身が軽い炎症状態となる。この炎症状態が長く続くことにより白血球等のマクロファージが過敏となり、今まで攻撃にまで至らなかったいわゆる異物を貪食するなどして攻撃し始め、結果として異物の溶解消化が不十分で死んだ白血球等のマクロファージが堆積して動脈硬化の原因となる。

７．腸内フローラは、神経細胞が刺激信号の伝達において使用される神経伝達物質を生成している。神経伝達物質には、心身の安定、意志及び向上心等を司る「セロトニン」「ドーパミン」等が含まれている。
腸内フローラが生成した神経伝達物質は、迷走細胞を介して脳を直接的に刺激することから、腸内フローラの劣化に伴い神経伝達物質の生成量が減り、うつ病等の精神疾患の原因となる。
又、腸内細菌が作る毒素４ＥＰＳ（4-エチルフェニル硫酸）が漏れ腸等により血中に含まれることで、自閉症を発症、深刻化させる可能性が高くなると考えられる。
腸内フローラは、その生成物質により脳を支配していると考えられる。

８．ヒトの遺伝子が２万３０００個と、ミジンコ、マウス等とさほど変わらない量であるのに対し、腸内に常在する腸内フローラは、１２００万個の遺伝子を有しており、ヒト生命活動に必要な代謝産物の９９％が腸内フローラにより産生されている。

９．腸内フローラは、ヒトがつくることができない血液凝固成分であるビタミンKを合成生成する。腸内フローラの劣化は、血液凝固成分の生成量を減少させるため、止血処置が困難になる可能性がある。
１０．腸内フローラは、赤血球を形成する葉酸、ビタミンＢ１２を生成し、ヒトの生命活動を担っている。腸内フローラの劣化は、葉酸、ビタミンＢ１２の生成量を減少させて血球形成能を低下させるため、脳貧血、精神疾患を引き起こす可能性がある。
等々が見いだされるに至った

特開昭６１−５０２２号公報には、腸内細菌叢と生体活動との関係について示され、エンテロコッカスフェカリスの死菌体にエンテロコッカスラクトバチルス、ビフィドバクテリウムといった人に有益な腸内細菌の増殖効果があることが記載されている。特開昭６１−５０２２号公報及びその当時の関連する学術発表により生菌のように取り扱いが煩雑で、医薬品でしか提供ができないそれまでの腸内細菌の取り扱いがより身近なものとなる。
特開平３−１５１８５４号公報には、オリゴ糖及び可溶性食物繊維の混合物に、腸内細菌の有害菌Clostridium属、及びEscherichia属 を低減させることが示されている。
特開２０１２−１１１７７１号公報には、部分加水分解グアーガム（ＰＨＧＧ）を含み、第２の可溶性繊維が、フルクトオリゴ糖（ＦＯＳ）を含むプレバイオテイクス能を向上させた食品又は医薬品としての食物繊維製剤が開示されている。

特表2016-505533には、全粒穀物、豆類、ナッツ、ピーナッツ、コーン（例えば、イエローコーン、ホワイトコーン、レッドコーン、パープルコーン、等の漢方に使用される場合がある食材としての第1の組成物、ゴーヤからなる第2の組成物、及びこれらの発酵物からなる第3の組成物のうち、第1〜第３の組成物から選ばれる食材により形成される有益な腸内微生物叢を増進し、日和見病原体を阻害する腸内細菌叢改善組成物がしめられている。

特表2011-501940には、粘性化性水溶性繊維、非粘性化性水溶性繊維、及び非水溶性繊維の三元混合物を含有することでビフィズス菌（ビフィドバクテリウム属）の菌数を増大させ、病原菌（大腸菌群、サルモネラ菌など）の菌数を低減させる食品組成物が開示されている。
特開2 0 0 5 - 1 5 4 3 8 8号公報には、フラクトース分子がβ − ２ ， １ 結合で環状に結合して構成される環状イヌロオリゴ糖であるシクロフラクタンを有効成分とする腸内機能改善剤が開示されている。

又、特開２００７−３２０３４６号公報には、エンテロコッカスフェカリス、ラクトバチルスロイテリー及びホエー、根昆布、その他の天然食材粉末との組み合わせにより、有用菌の増殖と有害菌の低減を行うことが記載されている。

特表2014-513965号公報には、フラクトオリゴ糖、難消化性デキストリン、及びポリデキストロース等の食物繊維組成物により、大腸内での食物繊維の発酵期間を長くして、快適な便通を実現することが開示されている。
非特許文献２には、ラクトースとイヌリンを20 g/日、その後増量し、19日間の摂取を行ったところ腸内細菌環境と便通の改善が示されている。非特許文献３には、イヌリン含有シリアル の摂取により、糞便のｐＨが低下したことが記載されている。
特開２０１６−１７２７６１号公報は、非特許文献１と同様に、イヌリン、難消化性デキストリン、ラクチュロース,等を含む組成物による便通改善について記載されている。

特開昭６１−５０２２号公報 特開平３−１５１８５４号公報 特開２０１２−１１１７７１号公報 特表２０１６−５０５５３３号公報 特表２０１１−５０１９４０号公報 特開２００５−１５４３８８号公報 特開２００７−３２０３４６号公報 特表２０１４−５１３９６５号公報 特開２０１６−１７２７６１号公報

腸内フローラ１０の真実 ＮＨＫスペシャル取材班著、主婦の友社 Effects of inulin and lactose on fecal microflora, microbial activity, and bowel habit in elderly constipated persons.,Kleessen B1, et.al.,Am J Clin Nutr. 1997 May;65(5):1397-402. Effect of consumption of a ready-to-eat breakfast cereal containing inulin on the intestinal milieu and blood lipids in healthy male volunteers.,Brighenti F1, Casiraghi MC, Canzi E, Ferrari A.,Eur J Clin Nutr. 1999 Sep;53(9):726-33.

上述した様に腸内フローラの科学的解明が進み、上記技術文献、技術的報告等で示すように腸内細菌叢の改善を行う提案や、様々な食物繊維を成分とする健康食品が提案されるにいたっているが、腸内フローラの多様性を増加させるような提案は、未だに存在しない。
腸内フローラの多様性とは、例えば腸内細菌の種類の多さ、を示す。「増加」とは、例えば腸内細菌の増殖、活性化などを行うことを示し、排便量を増加させたり、腸内フローラの劣化により過去に失われた腸内フローラの機能であって、必要とする又は、必要とする可能性がある機能を再び取り戻すことを含む場合もある。
腸内細菌の働きは、未解明な機能を有する細菌も多いが、本発明で示す多様性は、短鎖脂肪酸、エクオール等の有用性のある物質を生成する腸内細菌の種類及びこれらの腸内細菌が形成する腸内フローラの増加を示すことが好ましい場合もある。又、一般に有害菌Clostridium属、及びEscherichia属とされている腸内細菌であっても、ヒトにとって一定の役割を備えた腸内細菌も数多く存在していることから、有害菌、有用菌、日和見菌が共存した状態でその増加を腸内細菌の多様性と示す場合もある。
その他、腸内フローラの多様性は、有益な腸内細菌の種類の多さを示す場合や、有害菌、有用菌及び日和見菌のバランスがとれた状態を示す場合もある。

本願発明は、上記に鑑みてなされたもので今般解明が進む腸内細菌と、ヒトとの関係について鋭意研究した結果、
ヒトが腸内フローラを生かしている、という人間中心の所謂「天動説」ではなく、腸内フローラが人間を生かしている、即ち、腸内フローラの健康を作り出して初めてヒトの健康が守られるという腸内フローラが中心の所謂「地動説」に基づくべきであるとの知見に至り本発明に到達した。
本発明は腸内細菌が食べる物を主成分としながら、ヒトが安定的に又は、抵抗なく食することができる食物繊維状物及び／又は腸内細菌熱水抽出物よりなる可食性組成物（食品）を提供することを実現する。
腸内細菌、及び腸内フローラが食べる物とは、食物繊維状物が例示される。
本発明で示す腸内フローラは、腸内細菌の集まりであるが、その機能性を説明する場合は、腸内細菌単体の機能性を示す。
食物繊維状物とは、食物繊維単体又は、食物繊維を含む天然又は合成の食材を例示する。 食材は、天然又は天然由来のものが、腸内細菌及び腸内フローラが多様性を増加させ、有効な生成物を多く生成する点で好ましい。
食物繊維には、水溶性食物繊維、非水溶性食物繊維の何れもが含まれる。
又、本発明で示す食物繊維には、合成食物繊維、天然由来の食物繊維の何れか一方又は両方が含まれるが、合成された食物繊維は、天然由来の食物繊維が備える機能、成分が欠けていたり、体内での消化吸収が十分でないものがあり、腸内細菌及び腸内フローラにとって、好ましい食べ物（資化物）ではない場合があることから、天然由来の食物繊維が好ましい場合がある。

本発明における食物繊維について、より具体的には、例えば腸内細菌が腸管で発酵吸収する組成物、即ち腸内細菌の食べ物（資化する物）であって、腸内細菌が、短鎖脂肪酸を生成する為の成分を可食性組成物とすることで、腸内細菌の多様性を増加させることができる。
短鎖脂肪酸を生成する食べ物としては、例えば天然由来のイヌリンが例示されるが、チコリ、菊芋、ごぼう、にら等から精製抽出されたものや、チコリ根、菊芋、ごぼう、にらの原材料成分からイヌリンを所定量（例えば７０％以上）含有する天然抽出物が、本来の天然由来の食物繊維能を十分に備えており、より安価に入手できる点でより好ましい。

尚、短鎖脂肪酸を生成する食べ物だけでは、ヒトが安定的に食することが困難な場合は、更に味覚、食感を整える果汁、蜂蜜、果実由来の食物繊維を含有することが好ましい。
この場合の、果実に係る食物繊維についても、天然の食物繊維と同様に腸内フローラの多様性を増加させることができ、全体として、腸内フローラに適した資化組成物とすることができる。
安定的とは、毎日、一定間隔等で食することの他、単発であっても、食することができ、再び食することが可能であると思える程度も含まれる。
尚、食品添加物等、腸内細菌の劣化因子はなるべく用いないことが好ましいことから、苦みやその他の食材自体の独特な食感、味覚がある場合、より均一な成分の混和、造粒をすることで、ヒトにとっても安定的に食することが可能となる。

腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は、上述の通り、脂肪細胞の肥大化を阻止して肥満を解消することから、肥満によって生じる肝臓ガン、乳ガン、食道ガンなどの予防や、制御性Ｔ細胞の産生能を高めて、アレルギーの原因となる白血球Ｔ細胞の暴走を抑制したり、腸のバリア機能を向上させ、漏れ腸を防止する。
漏れ腸は、上述の通り、腸内細菌の劣化に伴い、腸内細菌の短鎖脂肪酸産生能が低下することで、腸のバリア機能が低下して腸管に隙間ができることで、この隙間から、血中等へ有害な細菌や毒素が漏れ出す。漏れ出した血中の毒素や細菌に対し、白血球、マクロファージが攻撃を行う為、全身が軽い炎症状態となり、インスリンの活性を阻害したり、腸の細胞を刺激することで分泌されるインクレチンが減少し、インスリンの分泌量が減って糖尿病の原因となると共に貪食による攻撃の結果、白血球等の死骸が血管内に堆積して、動脈硬化の原因となる。

又、肥満は、腸内細菌の一つであるガンを誘発させる可能性が高いアリアケ菌を増加させる。
そこで、本発明は、腸内細菌を健康にし、多様性を増加させることで、短鎖脂肪酸の産生を促進させるような、腸内細菌の食べ物を含む可食性組成物を提供することを実現した。
短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、これらのエステル、これらの塩からなり、主に腸内フローラによって生成されるが、本発明は、腸内フローラにおける短鎖脂肪酸の生成量を補う目的で別途添加する場合もある。

短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌の食べ物（資化組成物）としては、例えば上述のようにイヌリンが示され、天然のイヌリンを含む素材としては、チコリ、菊芋、ごぼう、にら等が示される。
特にチコリ根の抽出物が、天然由来のイヌリンを多く含むものであって、合成されたイヌリンに比べ、吸収性、機能性が優れている点で好ましい。一般に合成した食物繊維は、吸着能が、天然のものと比べて、強い場合があり、ヒトに必要なミネラルを体外へ排出してしまうなどのリスクがあることから天然由来のイヌリンを用いることが好ましい場合もある。

更に本発明は、腸内フローラの賦活を行うための主に腸内細菌が食する物質を、ヒトが、安定的に摂取可能とする形態で提供することで、腸内フローラの多様性の増加を実現する。
本発明は、腸内フローラの多様性を増加させるために、全重量に対し、チコリ根粉末及び菊芋粉末を 全重量に対し２５〜７０％（好ましくは、４０％〜５０％） 果実成分（実施例１，２）１０〜５０％（好ましくは、２５％〜４０％）、燕麦、造粘剤であって且つ食物繊維であるグアーガム、及び腸内細菌死菌末を含むことが例示される。
造粘剤として使用しているグアーガムは、更に食物繊維として機能するその他の天然ガム等を餅苛ことが好ましい。
チコリ根抽出物は、水溶性食物繊維であるイヌリンが多く含まれ、糞便の排出効率の増加に適当である。

チコリは、ハーブ系の野菜であり、その抽出の程度によっては、ラクチュピリン等の苦み成分や風味、香りに特徴があることから、腸内細菌にとっては、好ましいとしても、ヒトが安定的に摂取する為には、緩和する等の工夫が必要となるが、本発明は、これらを粉末化した後、果実粉末を加え、均一的な混和と、造粒を行う手法により、苦み等の天然由来の独自の味覚を和らげてヒトが安定的に食することが可能な組成物を提供することができる。均一的に混和する手段としては、流動層造粒手法が好ましく、造粒成分の均一性が良好でしかも苦みがなくまろやかで安定的に食することが可能な粉末食品が形成できる。

イヌリンには、砂糖を原材料にもちいた酵素合成法による合成イヌリンや、チコリー菊芋等から抽出した天然由来のイヌリンが存在するが、合成イヌリンは、安価で、純度が高い反面、その製造工程の特性から天然由来のものからすると食物繊維としての成分が不足し、胃腸内での消化吸収が悪いとされていることから腸内細菌に資化され難い面があると考えられる。これに対し天然由来のイヌリンは、天候、収穫量に影響を受けたり、品質が安定しない場合があるが、イヌリン本来の成分が維持でき、しかも体内での吸収が良いことから、腸内細菌による資化に優れているものと考えられる。

しかしながら天然イヌリンの中でも、菊芋由来のイヌリンは、菊芋自体にイヌリンを分解する成分が含まれているため、長期間の保存に向いていないことから、腸内細菌に資化され、その多様性を増加させる成分として、チコリ根抽出物が好適である。天然素材を利用し、サプリメント的な食材形態を形成するには、天然素材がもつ、味覚、臭覚を制御する必要がある。この制御は、おおよそ添加物によって、抑えることができるが、食品用の添加物の中には、腸内細菌に対しダメージを与える場合があり、逆の効果となることもあることからなるべく添加物の使用を抑えることが好ましい。

そこで、均一成分、均一粒径となる造粒手段を用いることで、いわゆる天然由来の味、におい等を抑えることができ、ヒトであっても安定的に食することができる食品が製造可能となるのである。
尚、短鎖脂肪酸の生成能を向上させる天然由来の食物繊維の他、β−グルカン、フルクタン、アルビノキシラン、コンニャクグルコマンナン、ヘミセルロース（大豆多糖類 米ぬか、玄米 トウモロコシ外皮）,ポリデキストロース、リグニン、ハイメトキシペクチン オリゴ糖：ラフィノース、スタキオース（ガラクトオリゴ糖）フラクトオリゴ糖、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、フコイダン（めかぶ、昆布、モスク等の海草類）、水溶性大豆多糖類、プルラン、等の食物繊維が、腸内フローラの多様化を増加させることから、ヒトが安定的に食する可食性組成物に含まれても良い。

本発明は、腸内細菌に有効な食物であって、ヒトが安定的に食することができる好ましくは天然由来の食物繊維状物及びエンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）、ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１）、及びラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６の熱水抽出物（死菌体）を含む可食性組成物により、腸内フローラの多様性を増加させることで、ヒトの健康を実現する。

腸内フローラが食し、腸内フローラを健康にして（活性を高めて）多様性を回復的に増加させる成分であって、当該成分をヒトが安定的に摂取可能な構成であればよく、更には、腸内細菌の食べ物であって、ヒトに有益な短鎖脂肪酸を生成するものが好ましい。

本実施例では、チコリ、チコリ根抽出物、菊芋等の食物繊維成分を腸内細菌が好んで食する自然の食物繊維とヒトが安定的に食することができる程度の味覚を備えた果実等の食物繊維の両方を組み合わせた可食性組成物とすることが好ましい。

本発明におけるチコリ、チコリ根抽出物又は菊芋は、イヌリンを多く含み、腸内細菌により食され、短鎖脂肪酸に分解される。菊芋は、イヌリンを分解する成分が含まれるため、有効量のイヌリンを確保することは、精製抽出を行う必要があり、天然性を欠く場合もあることから、チコリ根抽出物が、腸内細菌の食べ物として好適である。
イヌリンは、水と接触することで、膨潤したゲル状物となる過程で、糖を取り込むことから、体内では、糖の吸収を抑えることができる。
従って、イヌリンの量を実施例でしめす様に４ｇ以上と多くすることで、食品としての味覚の幅を広くすることができ、ヒトが摂取しやすく、毎日の摂取を可能とすることができる。

尚、本発明の実施形態としてイヌリン含有の天然食材を主成分として示したが、その他、大麦、燕麦、グアーガム、その他の増粘多糖類、グルコマンナン、ペクチン、ヘミセルロース、リグニン、アルギン酸、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、難消化性澱粉、フコイダン（めかぶ）、水溶性大豆多糖類、プルラン及びこれらの分解物等の水溶性食物繊維を含む天然食材及びその抽出物を用いても良く、更にヒトが安定して食することができる味覚、風味、食感を実現するための風味調整用食物繊維材料を組み合わせて造粒物を形成しても良い。

風味調整用は、必ずしも風味を調整するだけでなく、腸内フローラの多様性の増加を実現するものが好ましく、又、腸内フローラの多様性を増加させる上述した食物繊維を含有する天然食材単体を、造粒粉末加工した可食性組成物であっても、ヒトが安定して食することができるものであれば、良い場合もあり、好適な場合もある。

本発明における腸内細菌熱水抽出物は、エンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）、ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１）、及びラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６の熱水抽出物（死菌体）を示す。これらは、例えば、特開昭６１−５０２２号公報、特開２００７−３２０３４６号公報に記載されているように、有用菌の増殖能が示されており、天然の食物繊維との組み合わせにおいて、腸内細菌の多様性を更に増加させることを可能とする。
熱水抽出手法としては、特開昭６１−５０２２号公報等に示される手法が例示される。

食品の形態としては、均一な粒径で、しかも均一な成分の混和ができる流動層造粒手法を用いた粉末を、更に顆粒としたり、カプセル状、糖衣状、水溶液状、にしてもよい。
更にふりかけ、清涼飲料、ビスケット、せんべい等に加工してもよい。
エンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）、及びラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１）は、特許生物寄託センターにそれぞれの寄託番号に基づいて寄託されている。

本発明の実施例を表１に示す。
表１で示す実施例１は、チコリ根抽出物（イヌリン９０％）を全重量％に対して２０％、菊芋５．２％、オーツ麦（燕麦）６％、グアーガム３％、リンゴ、マンゴー、バナナ等の食物繊維を含む果実成分３２％等からなる粉末を、流動層造粒手法で均一な粉末化を行うことで、チコリ固有の苦みを取り除き、腸内細菌が食する食物であって、ヒトが安定的に食することができる可食性組成物を製造する。

流動層造流装置を用いてバインダーに食物繊維でもあるグアーガム（全重量に対して３％）を用いて、これをスプレー噴射させながら、造粒室内の原材料粉末の下側から、熱風を吹き付けて、場合によっては、回転板上で粒子を流動化させながら造粒し、粒径及び成分が均一な粉末又は顆粒を形成する。
この造粒手法は、チコリ根抽出物、果実成分等を均一に混和して更に均一の粒径をもつ粉末又は顆粒を製造することから、チコリ根特有の味覚等を緩和して、ヒトでも食しやすい可食性組成物を形成する。
１回に表１の実施例で示す成分を含む可食性組成物粉末１０ｇ、１日１回〜５回、好ましくは３回を目安に食するこれを継続することで、排便量が増え、腸内フローラの多様性を回復的に増加させ、腸内細菌の健康と共にヒトの健康を実現する。

本実施例では、イヌリンとして、チコリ根抽出物を用いたが、菊芋抽出物、その他ゴボウ、ニラから抽出したものであっての良い場合もあるが、腸内細菌の資化に好ましく、しかも多様性を増加させて、排便量を増やす為に合成の食品添加物を極力使用せず、摂取量をある程度多くする（1日 １０g〜３０ｇ）こと、継続的使用の為に製品の安定性が維持できることが好ましいことから、チコリ根抽出物が、イヌリン含有量が多く、しかも腸内細菌及び腸内フローラにとって好ましい。
尚、チコリは、苦み成分を持つことから、微細粉末化した後、流動層造粒手法でその他の果実等の甘みをもつ食物繊維成分と均一に混和することで、苦みがまろやかになり、食品添加物を抑えながら腸内細菌の資化に資することができると共にヒトも継続的に接収可能となる健康食品となる。

表１の実施例２は、実施例１に比べ、チコリ根抽出物がおおよそ２倍の量となっている。
これら粉末を医薬品の製造に用いられる流動層造粒手法を用いて、成分が均一な状態を形成して、腸内細菌の食べ物を苦み等を抑えてヒトが継続的に食するに適当な味覚の安定化を得ることが可能となる。

これらの成分を粉末化して調整された粉末又は顆粒の食品１０ｇ（実施例１）を一回の摂取量とし、（そのまま食するか、牛乳、水等に溶かして飲む）１日３回から５回程度摂取する。相当量のイヌリン等の食物繊維をヒトが食することから、腸内に届いたこれら天然由来のイヌリン含有食材等を腸内細菌叢が食することで短鎖脂肪酸を生成すると共に排便量を増加させ腸内フローラの活性が向上させることで短鎖脂肪酸の効果が発揮されるが、実施例１で示す成分を、均一な粒径と成分となる粉末、顆粒末状にした食品についての官能試験（被験者１０名）の結果では、多少甘みがあるものの、チコリ固有の苦み、風味が抑えられていて、まろやかな食感を備えているとの回答が8名と多く、継続的に又は、食することに抵抗が無い食品として評価するものも半数以上であった。又、便通の改善、及び回数についても、7名から８名のヒトが排便回数が増加したとの回答が得られた。

実施例3

大麦（胚乳） ２０ ％
グアーガム ３ ％
果汁成分粉末（食物繊維） ６０ ％
エンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）２．８２％
ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１） ０．２％
ラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６ ０．１％
その他 （はちみつ粉末等） １３．８８％
１００％

実施例４

大豆胚軸抽出物（エキス）粉末 １０ ％
グアーガム ３ ％
果汁成分粉末（食物繊維） ７０ ％
エンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）２．８２％
ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１） ０．２％
ラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６ ０．１％
その他 （はちみつ粉末等） １３．８８％
１００％

実施例３は、食物繊維として大麦をもちいたものであり、果汁繊維、その他の成分は、実施例１，２と同様、バナナ、リンゴ、マンゴ等の果実繊維、その他として、蜂蜜等が示
される。
エンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）、ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１）、及びラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６の熱水抽出物（死菌体）は、上述の通り有用常在菌の増殖能を備えていることから、腸内に常在する腸内細菌の多様性をより高める機能を有する。

1回の摂取量としては、１０ｇから３０ｇ／１包 を１日３回摂取することが好ましいが、体質等を考慮して摂取することが好ましい。
大麦（胚乳部分）は、水溶性食物繊維βーグルカンを多く含み、イヌリンと同様に、腸内細菌の多様性を増加させる機能を有し、糞便量を増加させる。

大麦（胚乳）粉末は、 大麦胚乳部分を分離したものが好ましく、大麦粉を温水抽出、固形分離して得られた抽出物粉末、又は、気流分級又は篩にかけて分離抽出する。
大麦の他、実施例１，２と同様に燕麦（オーツ麦）を用いてもよい。
当該製法は、大麦粉末、果汁成分粉末等をグアーガムを用いて流動層造粒手法を用いて、均一な成分及び粒径をもつ粉末又は顆粒にする。
以上の実施例は、粉末状、又は顆粒状に形成したものを示したが、更に、 錠剤状、 棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、その他の食品形態で製造しても良いが、少なくとも、粉末状にした後、これらの形態に変更することが好ましい。

天然由来性が大きい大麦（胚乳）抽出物粉末を多く含むことで生じる大麦本来の雑味をやわらげ、ヒトも安定的、継続的に食することが可能となる。
実施例４は、腸内でエクオールを産出する原料となるイソフラボンを多く含む大豆胚軸抽出物粉末を１０％〜５０％程度含有する。大豆胚軸抽出物には、苦み、えぐみ等があることから、これを緩和し、味覚、食感を整えるため、食品添加物をなるべく使用せず、果汁成分等の食物繊維成分を更に調整添加した粉末を、混和し、流動層造粒手法により、均一な粒径と成分を備えた粉末、又は顆粒を形成する。

大豆胚軸抽出物も胚軸そのものから比べれば、苦み等は緩和されるが、ヒトが安定して食する為には、更に苦み等が抑えられたまろやかな食感となることが好ましい。
本実施例の様に、果実食物繊維との混和粉末を更に均一な粒径、均一な成分とすることで、味覚がまろやかになり継続的に食することが可能となる。

摂食試験

便秘症状を示すと共に、アトピー、その他の疾患治療を行っていた２０名について、表１の実施例２で示す成分を有する粉末状食品を、毎日（１回１０ｇを複数回）、食したその後の便通について、21人にアンケートを行った。
アンケートの回答結果では、２１人中２０人に、摂食開始後、便通があり、しかも排便量、排便回数が多く、便の状態もクリーム状、バナナ状で、排便が良好な形態であった。また、何れの被験者も、継続的に食しており、支障はなかった。又、摂食開始後、疾患についても、悪化することはなく、良好な便通と同様に良好な方向に向かった。便通が向上した２０人について、具体的排便状況等を表２に示した。
１回に４ｇ以上のイヌリン（チコリ根由来）及び腸内細菌死菌体を含む粉末状の食品を、通常の加工食品として１日1回以上 継続して、食することを可能とした。

本発明は、腸内フローラが食べる（資化する）に適した食物繊維及びエンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（寄託番号Ｐ−２０７３９）、ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（寄託番号Ｐ−２０７４１）、及びラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６の熱水抽出物（死菌体）を含む可食性組成物を、ヒトが摂取しやすい形態で提供することで、ヒトの体内での腸内フローラの多様性の増加を行うことができることから、新しい健康食品を提供する。

Claims (10)

1. 腸内細菌が食する成分であって且つ当該成分をヒトが安定的に摂取可能な食物繊維状物よりなる腸内細菌用可食性組成物。
2. エンテロコッカスフェカリスＡＤ１０１（Ｐ−２０７３９）、ラクトバチルスロイテリＡＤ３０２（Ｐ−２０７４１）、及びラクトバチルスアシドフィルスＡＤ２０６の熱水抽出物を更に含む請求項１に記載の腸内細菌用可食性組成物。
3. 前記食物繊維状物が、腸内細菌により短鎖脂肪酸を生成可能とする請求項１に記載の腸内細菌用可食性組成物
4. 前記食物繊維状物が、イヌリン、βーグルカン、レシチン、フルクタン、グアーガム、イソフラボンから選ばれた１乃至複数である請求項１に記載の腸内細菌用可食性組成物。
5. 前記食物繊維状物が、ごぼう、にら、菊芋、チコリ、大麦、燕麦、グアーガム、大豆胚軸よりなる天然穀物素材粉末又は抽出物粉末及びバナナ、リンゴ、マンゴー、桃の果実粉末である請求項１に記載の腸内フローラ用可食性組成物。
6. 前記食物繊維状物が、フコイダン、フラクトオリゴ糖、アラビノキシラン、ヘミセルロース、レバン、大豆オリゴ糖、コンニャクグルコマンナンであって、天然食品から抽出したものから選ばれる請求項１に記載の腸内細菌用可食性組成物。
7. 前記食物繊維状物には、天然由来のガラクトオリゴ糖、フコオリゴ糖、マンノオリゴ糖、キシロオリゴ糖、シアリルオリゴ糖等のオリゴ糖組成物、フルクタン、ガラクタン、フコイダン、アラビナン、キシラン、キサンタン、ガラクツロナン、Ｎ-グリカン、Ｏ−グリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、キシログルカン、アラビノガラクタン、アルギナート、カラギーナン、ガラクトマンナン、アラビノキシラン、グリコリピドグリカン、グリコプロテイングリカン、及びプロテオグリカンから選ばれた１乃至複数が含まれた天然食材、又は天然食材を抽出した抽出物が含まれる請求項１に記載の腸内細菌用可食性組成物。
8. 酢酸、プロピオン酸、酪酸、これらのエステル、これらの塩を更に添加する請求項１，２に記載の腸内細菌用可食性組成物。
9. 前記食物繊維状物がチコリ根抽出物が全体重量の２５〜５０重量％ 菊芋が２〜５重量％、大麦又は燕麦が５重量％、果実果汁及び粉末が１５〜３０重量％、腸内細菌熱水抽出物粉末が３〜５重量％であって、これを均一に混合し粒状化又は粉末化して得られる請求項１、２に記載の腸内フローラ用可食性組成物を含有する健康食品及び製造方法。
10. 前記食物繊維状物が、流動層造粒により均一に混和した粉末状、顆粒状、固形状、液状のいずれかである請求項１に記載の腸内細菌用可食性組成物。