JP2018161665A - 鍛伸材の製造方法 - Google Patents
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前述の熱間鍛造のうち、棒状に鍛伸するラジアル鍛造と称される方法がある。このラジアル鍛造にて前述のNi基超耐熱合金を鍛伸する場合、鍛伸用素材を加熱炉から取り出して、ラジアル鍛造機に取付け、鍛伸を開始するまでの時間で鍛伸用素材の温度が低下してしまい、熱間鍛造(鍛伸)が困難となりやすく、また、所望の微細結晶粒が得られないとう問題があった。この問題に対して、例えば、本願出願人による特開2001−79633号公報(特許文献1)には、鍛伸用素材を耐熱セラミック繊維質材料で被覆し、該被覆した層の外周を金属材料で包囲して加熱炉で加熱し、昇温後該加熱炉から取り出してそのまま四面鍛造加工を施す熱間四面鍛造加工方法の発明がある。また、特開平1−254337号公報(特許文献2)には、加熱炉から取り出された円柱状の鍛伸用素材を4面鍛造機に導入し、該被鍛造材の軸方向に対して直角方向の4つの方向から金敷により同時に求心的に圧下して、該被鍛造材をスエージング(鍛伸)により細径化する鍛造方法において、加熱炉から取り出された直後の被鍛造材を、金属製の円筒状外套または耐熱性セラミック繊維質材料よりなる保熱シートによって被覆して保熱する鍛造方法の発明がある。
また、特許文献1のように、セラミック繊維質材料を被覆した鍛伸用素材を加熱炉で所定の温度まで加熱しようとすると、セラミック繊維質材料の断熱効果によって、所定温度までの昇温時間は長くなるという欠点がある。しかも、難加工性材のNi基超耐熱合金の加熱温度は約1000℃程度となるため、セラミック繊維質材料に加えて、更に金属材料で包囲すると所定温度までの昇温時間が長くなり過ぎる。
また、特許文献2のように、鍛伸用素材を加熱炉から取り出した後に金属製の円筒状外套または耐熱性セラミック繊維質材料よりなる保熱シートによって被覆する方法では、保熱シートの取り付けまでに時間を要し、鍛伸開始する頃にはかなりの温度低下を生じることになる。また、加熱された鍛伸用素材は、前記の通り約1000℃の高温であるため、被覆作業には安全上の問題が懸念される。
本発明の目的は、セラミック繊維質材料を用いることなく、鍛伸用素材の温度を高温に保ち、ラジアル鍛造によって得られる鍛伸材の結晶粒の微細化を達成することができる鍛伸材の製造方法を提供することである。
すなわち本発明は、ラジアル鍛造用の鍛伸用素材の表面をセラミックス粉末層で被覆する被覆工程と、前記セラミックス粉末層で被覆した鍛伸用素材を鍛伸温度に加熱する加熱工程と、前記加熱した鍛伸用素材を周方向に回転しつつ、4方向から押圧することで前記鍛伸用素材を長手方向に伸長する操作を繰返す熱間鍛伸工程と、を含み、前記セラミックス粉末層がセラミック繊維質材料を含まない、鍛伸材の製造方法である。
好ましくは、前記セラミックス粉末層の厚さが50〜1000μmである鍛伸材の製造方法である。
また、本発明においては、前記鍛伸用素材をNi基超耐熱合金とすると良い。
また、ラジアル鍛造中の中間鍛伸材を略四角柱とする方法もあるが、略四角柱とすると長手方向に角部が形成される。この角部は優先的に温度低下するため、本発明では、例えば、各パス終了後の長手方向に垂直な断面の形状が略八角形以上の略円形状として、局所的に優先して冷却されるような形状とはしないものとする。
以下に本発明を詳しく説明する。なお、鍛伸前の素材を「鍛伸用素材」、鍛伸中の中間素材を「中間鍛伸材」、鍛伸終了後の成形品を「鍛伸材」として記す。
先ず、ラジアル鍛造用の鍛伸用素材を準備する。前述のように、例えば鍛造用素材の長手方向に垂直な断面が矩形の四角柱のような形状であると、加熱炉から鍛伸用素材を取り出して鍛伸開始までに角部から優先的に冷却が生じるおそれがあるため、用いる鍛伸用素材の長手方向に垂直な断面形状は、例えば、八角形、十六角形等の略円形か、或いは円形のものを準備すると良い。
用意した鍛伸用素材の表面にセラミックス粉末層(以下、単に粉末層と記す)を塗布する。粉末層は、鍛伸用素材を加熱炉から取り出して、ラジアル鍛造機を用いて鍛伸を開始するまでの時間における温度低下を防止するだけでなく、鍛伸の初期段階においても鍛伸中間材の表面に残留して、温度低下を防止するものである。なお、本発明で言う「粉末層」とは、例えば、ジルコニアやアルミナ、炭化ケイ素などのセラミックス材料を溶剤、例えば水と混合したものである。尚、従来技術のセラミック繊維質材料が含まれたものは本発明の対象外である。
図1(a)や図1(b)に示すように、粉末層2で鍛伸用素材1の表面を被覆する。被覆は室温で行っても良いし、例えば、鍛伸用素材を200℃前後に予熱してから被覆しても良い。被覆の方法としては、塗布、噴霧、浸漬等、公知の方法で差し支えない。また、被覆する場所は、少なくともラジアル鍛造機に備えられた金型が接触して打撃される部分に被覆する。被覆する粉末層の厚さは50〜1000μmであることが好ましい。これは、粉末層の厚さが過度に薄いと前記の粉末層による保温効果が低くなるだけでなく、中間鍛伸材に表面疵が発生しやすくなったり、鍛伸材表面近傍の結晶粒の粗大化が生じやすくなる。一方、粉末層の厚さが過度に厚いと加工発熱によって中間鍛伸材の温度が過度に上昇し、鍛伸材に結晶粒の粗大化を生じやすくなるためである。好ましい粉末層の厚さの下限は200μmであり、好ましい粉末層の厚さの上限は400μmである。
なお、粉末層の厚さの測定は、機械式または電磁式または渦電流式の接触型膜厚計を使用して測定することができる。厚さの測定範囲は、粉末層で被覆した場所の全域を測定するのは時間がかかり過ぎるので、例えば、粉末層で被覆した鍛伸用素材の任意の場所を円周方向に40〜60°ピッチで各角度の位置で3〜4箇所ずつ、計18〜36箇所程度測定し、その平均で求めれば良い。
前記の粉末層で被覆した鍛伸用素材を鍛伸温度に加熱する。加熱温度は鍛伸用素材の材質によって、900〜1200℃の範囲で適切な温度を選択すると良い。例えば、鍛伸用素材の材質が“鋼材”であれば、その加熱温度はおおよそ900〜1200℃であれば良い。また、鍛伸用素材の材質が“Ni基超耐熱合金”であれば、その加熱温度はおおよそ950〜1200℃の範囲であれば良い。何れの材質であっても、過度に加熱温度が低いと変形抵抗が大きくなって鍛伸が困難となったり、疵の発生や割れ等の欠陥が発生する。また、過度に加熱温度が高いと結晶粒粗大化等の問題が生じる。例えば、718合金であれば、加熱温度は950〜1050℃であれば良い。
前記の加熱した鍛伸用素材は、加熱炉からマニピュレータ等を用いて、ラジアル鍛造機に搬送され、次いで、ラジアル鍛造機に備えられた把持治具で把持し、鍛伸用素材を周方向に回転しつつ、全長にわたって4方向から押圧することで鍛伸用素材を長手方向に伸長する操作を繰返す。なお、鍛伸用素材または中間鍛伸材の長手方向の一方端面から他端面側に鍛伸するまでを1パスと呼ぶ。
粉末層で被覆された鍛伸用素材は粉末層の保温効果によって鍛伸用素材の表面付近の温度低下はおおよそ22℃/min以内に抑制することができる。また、適切な粉末層の厚さによって、鍛伸初期段階においては、打撃を加えられた中間鍛伸材表面に粉末層が残留し、鍛伸中の中間鍛伸材の温度低下を抑制する。なお、鍛伸後期においては、粉末層の残留は無くて良く、鍛伸によって粉末層が適当に剥離できる条件で鍛伸を行えば良い。例えば、圧下回数を60〜240回/分、1パス当たりの減面率を1〜50%、前記被鍛造材の挿入側での送り速度を2〜10m/分の範囲とするのがよい。各パス終了後の中間鍛伸材の長手方向に垂直な断面形状は略円形である。もし、鍛伸後期においても粉末層の残留が認められる場合は、例えば、ワイヤーブラシなどにより強制的に残留する粉末層を除去しても良い。中間鍛伸材の長手方向に垂直な断面形状が略円形であること、ラジアル鍛造時に中間鍛伸材が周方向に回転することを利用して、例えば、周方向の半分の表面にワイヤーブラシを接触可能に配置しておけば、鍛伸工程を中断することなく、残留する粉末層を除去できる。
また、前記した「鍛伸初期」、「鍛伸後期」とは、トータルのパス回数の概ね半数までのパスを「鍛伸初期」と呼び、それ以降が「鍛伸後期」である。
本発明では上述した方法により、鍛伸時には鍛伸用素材の温度を高温に保つことができるため、鍛伸が容易となり、必ずしも再加熱を行うことなく、微細な結晶粒を有する鍛伸材とすることができる。また、4方向から押圧できるラジアル鍛造機を用いれば、鍛伸工程が短時間のうちに終了するため、難加工性材のNi基超耐熱合金の鍛伸に好適である。
また、従来技術のようにセラミック繊維質材料を用いることがないため、所定の鍛伸温度までの昇温時間を比較的短時間とすることができ、作業環境の劣化もない。また、鍛伸材の結晶粒を微細化することができるだけなく、温度低下により材料が硬化する前に鍛造を終了することができ、鍛造時の加圧力も抑えることも可能である。
その後、鍛伸用素材を加熱炉に挿入し、鍛伸温度の1010℃に加熱した。
前記の加熱した鍛伸用素材を加熱炉からマニピュレータを用いて、ラジアル鍛造機に搬送し、次いで、ラジアル鍛造機に備えられた把持治具で把持し、鍛伸用素材を周方向に回転しつつ、全長にわたって4方向から押圧することで全長を伸長する操作を繰返すラジアル鍛造を行った。ラジアル鍛造の条件は、本発明例及び比較例共に同一条件とし、圧下回数を70〜150回/分、1パス当たりの減面率を12〜19%、前記被鍛造材の挿入側での送り速度を2〜5m/分の範囲で各パスで条件を変化させて4パス実施した。
以上のことから、本発明を適用した鍛伸材は、結晶粒を微細化することができることがわかる。
2 粉末層
Claims (3)
- ラジアル鍛造用の鍛伸用素材の表面をセラミックス粉末層で被覆する被覆工程と、
前記セラミックス粉末層で被覆した鍛伸用素材を鍛伸温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱した鍛伸用素材を周方向に回転しつつ、4方向から押圧することで前記鍛伸用素材を長手方向に伸長する操作を繰返す熱間鍛伸工程と、
を含み、
前記セラミックス粉末層がセラミック繊維質材料を含まないことを特徴とする鍛伸材の製造方法。 - 前記セラミックス粉末層の厚さが50〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の鍛伸材の製造方法。
- 前記鍛伸用素材がNi基超耐熱合金であることを特徴とする請求項1または2に記載の鍛伸材の製造方法。
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