JP2018161474A - 眼内レンズ押出補助具および眼内レンズ挿入ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】術者にとって移動部材の固着を解除する操作がより簡易になり、移動部材の固着が解除されたことが感覚的にわかりやすい眼内レンズ押出補助具を提供する。
【解決手段】眼内レンズ押出補助具を、眼内レンズ押出部材を有する眼内レンズ挿入器具と接続する筒状部材である本体部と、本体部の一端に設けられた後端部を含み、本体部内に流体を供給する開口を有する流体供給部と、供給される流体の圧力で移動して眼内レンズ押出部材を押圧移動する第1の移動部と、供給される流体の圧力で移動する第2の移動部とを有し、第2の移動部は第2の移動部を手動で移動させる操作部を有し、第2の移動部は操作部によって第1の移動部の本体部に対する固着を解除する解除位置まで移動可能であり、第2の移動部は本体部内における第1の移動部と第2の移動部との間の領域に流体を供給する流路を有し、第1の移動部は領域に供給される流体の圧力で移動する構成とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、眼内レンズ押出補助具および眼内レンズ挿入ユニットに関する。
白内障治療においてヒト混濁水晶体を置換して屈折を補正するために水晶体の代用として挿入される眼内レンズが実用に供されている。白内障治療における眼内レンズ挿入手術においては、例えば角膜、強角膜などの縁に数ミリの切開の創口(切開創)が作成され、超音波乳化吸引術などにより水晶体が粉砕されて切開創から取り除かれた後、眼内レンズ挿入器具により眼内レンズが挿入および固定される。そして、近年においては、眼内レンズ挿入器具による眼内レンズの眼内への挿入を補助する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特開2004−261263号公報 特表2012−505066号公報
上記の技術では、眼内レンズ挿入器具に眼内レンズ押出補助具を接続し、眼内レンズ押出補助具内を摺動するパッキンなどの移動部材を、眼内レンズ挿入器具の眼内レンズ押出用のプランジャーに対して押圧移動させることで、プランジャーが操作される。また、眼内レンズ押出補助具内には、移動部材の摺動を促す潤滑剤が塗布されていることがある。しかし、眼内レンズ押出補助具の長期保管に伴い、移動部材が眼内レンズ押出補助具内で固着する可能性がある。
移動部材が眼内レンズ押出補助具内で固着した場合の対応策として、例えば眼内レンズ押出補助具に供給される空気の流路を切り替えることで、空気から移動部材に働く力を変化させて眼内レンズ押出補助具内での移動部材の固着を解除する方法がある。しかし、この場合、空気の流路を切り替える操作が必要になったり、流路切り替えの誤操作が生じる可能性があったりするため、移動部材の固着を解除する作業が複雑になる可能性がある。また、術者は、空気を通じて移動部材の固着を解除するため、移動部材の固着が解除されたことが感覚的にわかりにくい可能性もある。
本件開示の技術は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、術者にとって移動部材の固着を解除する操作がより簡易になり、移動部材の固着が解除されたことが感覚的にわかりやすい眼内レンズ押出補助具を提供することである。
本件開示の眼内レンズ押出補助具は、眼内レンズを押圧して眼内に押し出す眼内レンズ押出部材を有する眼内レンズ挿入器具と接続する筒状部材である本体部と、本体部の一端に設けられた後端部を含み、本体部内に流体を供給する開口を有する流体供給部と、本体部内に設けられ、供給される流体の圧力で移動して眼内レンズ押出部材を押圧移動する第1の移動部と、本体部内に設けられた第2の移動部とを有し、第2の移動部は、第2の移動部を手動で移動させる操作部を有し、前記操作部によって第1の移動部の本体部に対する固着を解除する解除位置まで移動可能であり、第2の移動部は、本体部内における第1の移動部と第2の移動部との間の領域に流体を供給する流路を有し、第1の移動部は、領
域に供給される流体の圧力で移動する。これにより、術者は、第1の移動部が本体部に固着している場合に、第2の移動部を手動で移動して第1の移動部の固着を解除することで、流体による第1の移動部の安定した移動を行うことができる。さらに、第1の移動部は、第1の移動部の本体部に対する固着を解除する解除位置より前方まで移動可能であってもよい。
また、第2の移動部は、上記領域に供給される流体の圧力で移動し、上記の眼内レンズ押出補助具は、当該領域に供給される流体の圧力で移動する第2の移動部の移動を抑止する抑止部をさらに有し、第1の移動部および第2の移動部は、本体部を摺動して移動し、第1の移動部の本体部に対する摺動抵抗は、第2の移動部の本体部に対する摺動抵抗よりも大きくしてもよい。
また、本体部の前後方向において、第2の移動部の中心軸が、本体部の第2の移動部が移動する空間の中心軸と略一致するようにしてもよい。また、第2の移動部は、後端部に対して摺動する軸部を有してもよい。また、本体部の前後方向における軸部の長さは、第2の移動部が解除位置まで移動したときに、軸部の一端が後端部から所定長さ延伸する長さとすることができる。また、第2の移動部は、流路と流体を搬送するチューブとを接続するチューブ接続部を有し、後端部の開口の口径を、チューブの外径より小さくしてもよい。また、第2の移動部と後端部とを接続し、第2の移動部を後端部側に引き寄せる弾性部材をさらに設けてもよい。また、第1の移動部は、本体部の内径よりも小さい外径を有する円環状のベース部と、ベース部よりも後端部側に位置し後端部側に向かって拡径して本体部の内周面に当接する円環状のシール部と、を有するシール部材を有するように構成してもよい。また、シール部材はリップパッキンであってもよい。
さらに、本件開示の眼内レンズ押出補助具を、眼内レンズを押圧して眼内に押し出す眼内レンズ押出部材を有する眼内レンズ挿入器具と接続する筒状部材である本体部と、本体部の一端に設けられた後端部を含み、本体部内に流体を供給する開口を有する流体供給部と、本体部内に設けられ、供給される流体の圧力で移動して眼内レンズ押出部材を押圧移動する第1の移動部と、を有し、第1の移動部は、本体部の内径よりも小さい外径を有する円環状のベース部と、ベース部よりも後端部側に位置し後端部側に向かって拡径して本体部の内周面に当接する円環状のシール部と、を有するシール部材を有する構成としてもよい。さらに、上記の本体部と眼内レンズ挿入器具とが一体的に接続されている眼内レンズ押出補助具を有する眼内レンズ挿入ユニットを形成してもよい。
本件開示の技術によれば、術者にとって移動部材の固着を解除する操作がより簡易になり、移動部材の固着が解除されたことが感覚的にわかりやすい眼内レンズ押出補助具を提供することができる。
図1(a)および図1(b)は、一実施形態における眼内レンズ挿入システムの構成の一例を示す図である。 図2(a)および図2(b)は、一実施形態における眼内レンズの構成の一例を示す図である。 一実施形態におけるノズル本体の構成の一例を示す図である。 図4(a)および図4(b)は、一実施形態における位置決め部材の構成の一例を示す図である。 図5(a)および図5(b)は、一実施形態におけるプランジャーの構成の一例を示す図である。 図6(a)〜6(c)は、一実施形態における移動部材の構成の一例を示す図である。 一実施形態における移動部材の移動状態の一例を示す図である。 一実施形態における図7に示す状態に続く移動部材の移動状態の一例を示す図である。 一実施形態における図8に示す状態に続く移動部材の移動状態の一例を示す図である。 一実施形態における図9に示す状態に続く移動部材の移動状態の一例を示す図である。 一実施形態における図10に示す状態に続く移動部材の移動状態の一例を示す図である。 一実施形態における移動部材の別の例を示す図である。 一実施形態における眼内レンズ押出ユニットの一例を示す図である。 一変形例における眼内レンズ押出補助具の一例を示す図である。 図14に例示する眼内レンズ押出補助具を示す部分拡大図である。 一変形例における眼内レンズ押出補助具の別の例を示す図である。 図16に例示する眼内レンズ押出補助具を示す部分拡大図である。 変形例における眼内レンズ押出補助具におけるパッキンの最大静止摩擦力および摺動抵抗の大きさの測定結果の一例を示す図である。 変形例における眼内レンズ押出補助具におけるパッキンの最大静止摩擦力および摺動抵抗の大きさの測定結果の別の例を示す図である。 図20(a)〜20(c)は、図18、19における測定結果を示すグラフである。 一変形例における眼内レンズ押出補助具のさらに別の例を示す図である。 一変形例における眼内レンズ押出補助具のさらに別の例を示す図である。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に本実施形態に係る眼内レンズ挿入システム100の概略構成を示す。眼内レンズ挿入システム100は、眼内レンズ挿入器具1、眼内レンズ押出補助具20、チューブ40、移動部材90を有する。図1(a)は眼内レンズ挿入器具1のステージ蓋部13を開蓋した場合の眼内レンズ挿入システム100の平面図、図1(b)は眼内レンズ挿入器具1のステージ蓋部13を閉蓋した場合の眼内レンズ挿入システム100の側面図を示している。眼内レンズ挿入器具1は、器具本体としてのノズル本体10と、眼内レンズの押出部材としてのプランジャー30と、眼内レンズの収納部としてのステージ部12およびステージ蓋部13とを有する。眼内レンズ押出補助具20は、ノズル本体10に取り付けられ、眼内レンズの押し出しを補助する。
眼内レンズ挿入器具1のノズル本体10は、断面略矩形の筒状に形成されており片側の端部は大きく開口し(以下、大きく開口した側を後端部10bという。)、別の側の端部には細く絞られたノズル部15と先端部10aを備える。図1(b)に示すように、先端部10aは斜めに開口している。プランジャー30は、ノズル本体10に挿入され往復運動可能である。
以下の説明において、ノズル本体10の後端部10bから先端部10aへ向かう方向を前方向、その逆方向を後方向、図1(a)において紙面手前側を上方向、その逆方向を下方向、図1(b)において紙面手前方向を左方向、その逆方向を右方向とする。また、この場合、上側は後述するレンズ本体2aの光軸前側に、下側はレンズ本体2aの光軸後側に、前側はプランジャー30による押圧方向前側に、後側はプランジャー30による押圧方向後側に相当する。
ノズル本体10の後端部10b付近には、板状に迫り出し、術者がプランジャー30をノズル本体10の先端側に押し込む際に指を掛けることが可能なホールド部11が一体的に設けられている。また、ノズル本体10におけるノズル部15の後側には、眼内レンズ2をセットするステージ部12が設けられている。このステージ部12は、ステージ蓋部13を開蓋することでノズル本体10の上側が開放されるようになっている。また、ステージ部12には、ノズル本体10の下側から位置決め部材50が取り付けられている。この位置決め部材50によって、使用前(輸送中)においてもステージ部12内で眼内レンズ2が安定して保持されている。
眼内レンズ挿入器具1においては、製造時に、ステージ蓋部13が開蓋し位置決め部材50がステージ部12に取り付けられた状態で、眼内レンズ2がステージ部12に、光軸前側が上になるようにセットされる。そして、ステージ蓋部13を閉蓋させた後出荷され、販売される。術者は、眼内レンズ押出補助具20の係合板部20hの貫通孔20iにノズル本体10のホールド部11を挿通させて、眼内レンズ押出補助具20とホールド部11とを係合する。図1(b)に示すように、本実施形態ではノズル本体10のホールド部11が上下方向に延伸しているため、係合板部20hは、ノズル本体10に取り受けられた状態の眼内レンズ押出補助具20において上下方向に一対設けられている。
そして、術者は、ステージ蓋部13を閉蓋したままで位置決め部材50を取り外し、その後眼内レンズ押出補助具20に供給される流体を用いてパッキン20cを移動させ、パッキン20cによりプランジャー30がノズル本体10の先端側に移動される。なお、パッキン20cは、流体の圧力で移動して眼内レンズ押出部材を押圧移動する第1の移動部の一例である。これにより、プランジャー30によって眼内レンズ2が押圧され、眼内レンズ2はノズル部15まで移動された後、先端部10aより眼球内に放出される。なお、眼内レンズ挿入器具1におけるノズル本体10、プランジャー30、位置決め部材50はポリプロピレンなどの樹脂の素材で形成される。ポリプロピレンは医療用機器において実績があり、耐薬品性などの信頼性も高い素材である。また、本実施形態における眼内レンズ挿入器具1は、出荷前に眼内レンズ2が眼内レンズ挿入器具1にあらかじめセットされたプリセットタイプであるが、術者自身が術前に眼内レンズ2を眼内レンズ挿入器具1にセットするいわゆるセパレートタイプであってもよい。
眼内レンズ押出補助具20において、筒状部材20aとパッキン20cと移動部材90とで囲まれる領域は、密閉空間となっている。なお、筒状部材20aが本体部の一例である。以下の説明において、筒状部材20aにより囲まれる空間のうち、パッキン20cと移動部材90とで挟まれる領域を第1の領域20fとし、パッキン20cを境界としてノズル本体10に挿入されたプランジャー30側の領域を第2の領域20gとする。
また、ホールド部11の両端にはノッチ11aが設けられている。このため、眼内レンズ押出補助具20の係合板部20hがホールド部11に一度取り付けられると、係合板部20hとホールド部11との係合はノッチ11aによって解除されない。なお、係合板部20hとホールド部11との係合が解除されない構成であれば、ノッチ11aはホールド部11の代わりにあるいはホールド部11に加えて係合板部20hに設けてもよい。なお、眼内レンズ押出補助具20がノズル本体10に取り付けられる際は、第2の領域20gが密閉空間にならないように、眼内レンズ押出補助具20とノズル本体10の接続箇所に少なくとも1つの開口構造を設ける必要がある。なぜならば、眼内レンズ押出補助具20とノズル本体10の取付前に第2の領域20gに存在する空気が圧縮されないよう、パッキン20cが移動するに伴い、外部に排出させる必要があるためである。
後端部20dは、筒状部材20aの内部の領域と外部の領域とを連通する開口20eを
有する。また、移動部材90が、開口20eを筒状部材20aの前後方向に挿通するように設けられる。なお、移動部材90が、流体の圧力で移動する第2の移動部の一例である。移動部材90は、術者の手などによって筒状部材20aを前後方向に移動されてパッキン20cの固着を解除する部材である。移動部材90の構成や動作の詳細については後述する。後端部20dの前側は筒状部材20aの後端と接続されている。
移動部材90の後端には、移動部材90を前後方向に貫通する開口90aが設けられており、開口90aにチューブ40の先端が接続されている。さらに、チューブ40の後端には、眼内レンズ押出補助具20の第1の領域20f内に流体を供給するための流体供給源(図示せず)が接続される。チューブ40は流体供給源からの流体を搬送する。なお、流体供給源の例としては、圧縮空気を供給するためのコンプレッサーや冷温水を供給するためのポンプなどが挙げられる。本実施例において、流体供給源からは、圧縮空気がチューブ40に供給される。
図2は、本実施形態に係る眼内レンズ2の概略構成を示した図である。図2(a)は平面図、図2(b)は側面図を示す。なお、図2(a)と図2(b)との間では、眼内レンズ2の向きは対応していない。眼内レンズ2は、レンズ本体と支持部が同じ材質で一体成型されているいわゆるワンピース型で、レンズの材質は可撓性の樹脂材料である。眼内レンズ2は、所定の屈折力を有するレンズ本体2aと、レンズ本体2aに連結された、レンズ本体2aを眼球内で保持するための長尺平板状の2本の支持部2bとを備える。また、レンズ本体2aおよび支持部2bとは、接合部2dを介して互いに接続されている。なお、本実施形態における眼内レンズ2は、ワンピース型として説明するが、レンズ本体と支持部が別部材で形成されているスリーピース型であってもよい。
本実施形態において、眼内レンズ挿入器具1において、2つの支持部2bのうちの一方の支持部2bが、レンズ本体2aの後側、他方の支持部2bがレンズ本体2aの前側に配置されるように、眼内レンズ2がステージ部12にセットされる。なお、レンズ本体2aの前側に配置される支持部を前方支持部、レンズ本体2aの後側に配置される支持部を後方支持部とする。
本実施形態における眼内レンズ2は、支持部2bにシボ加工が施されている。これにより、プランジャー30による眼内レンズ2の押圧移動の際に、眼内レンズ2の姿勢を安定させることができる。具体的には、例えばプランジャー30によって眼内レンズ2が押圧移動されるときに、支持部2bとノズル本体10の内周面との間に適度な摩擦力が生じることで眼内レンズ2がノズル本体10内で回転しないように防止することができる。また、支持部2bにシボ加工が施されていることで、眼内レンズ2がノズル本体10内で折り畳まれるときに、支持部2bがレンズ本体2aに張り付くことを防止することもできる。
図3にはノズル本体10の平面図を示す。前述のようにノズル本体10においては、眼内レンズ2はステージ部12にセットされる。そして、その状態でプランジャー30によって眼内レンズ2が押圧されて先端部10aから放出される。なお、ノズル本体10の内部にはノズル本体10の外形の変化に応じて断面形状が変化する貫通孔10cが設けられている。そして、眼内レンズ2が放出される際は、眼内レンズ2は、ノズル本体10内の貫通孔10cの断面形状の変化に応じて変形して折り畳まれた状態となり、患者の眼球に作成された切開創に入り易い形に変形した上で放出される。
また、ノズル本体10の先端部10aは、ノズル部15の上側の領域が下側の領域より前側になるように斜めにカットされた形状となっている。なお、この先端部10aの斜めにカットされた形状については、左右方向から見て直線的に斜めにカットされていてもよいし、外側に膨らみを持つように、すなわち曲面形状となるように斜めにカットされてい
てもよい。
ステージ部12には、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径より僅かに大きな幅を有するステージ溝12aが形成されている。ステージ溝12aの前後方向の寸法は、眼内レンズ2の両側に延びる支持部2b、2bを含む最大幅寸法よりも大きく設定されている。また、ステージ溝12aの底面によってセット面12bが形成されている。セット面12bの上下方向位置は、ノズル本体10の貫通孔10cの底面の高さ位置よりも上方に設定されており、セット面12bと貫通孔10cの底面とは底部斜面10dによって連結されている。
ステージ部12とステージ蓋部13とは一体に形成されている。ステージ蓋部13はステージ部12と同等の前後方向の寸法を有している。ステージ蓋部13は、ステージ部12の側面がステージ蓋部13側に延出して形成された薄板状の連結部14によって連結されている。連結部14は中央部で屈曲可能に形成されており、ステージ蓋部13は、連結部14を屈曲させることでステージ部12に上側から重なり閉蓋することができる。
ステージ蓋部13において、閉蓋時にセット面12bと対向する面には、ステージ蓋部13を補強し、眼内レンズ2の位置を安定させるためにリブ13aおよび13bが設けられている。また、プランジャー30の上側のガイドとして案内突起13cが設けられている。また、ステージ蓋部13には眼内レンズのノズル内の移動をスムーズにするためのヒアルロン酸などの粘弾性物質を注入する注入穴16が設けられている。ステージ蓋部13の外側には、注入穴16の外周の一部が盛り上がっている突起部17が設けられている。突起部17は、注入される注射器の針を注入穴16にガイドして粘弾性物質を注入しやすくする機能を有する。
ステージ部12のセット面12bの下側には、位置決め部材50が取外し可能に設けられている。図4に、位置決め部材50の概略構成を示す。図4(a)は位置決め部材50の平面図を示し、図4(b)は位置決め部材50の左側面図を示している。位置決め部材50はノズル本体10と別体として構成されており、一対の側壁部51、51が連結部52で連結された構造とされている。それぞれの側壁部51の下端には、外側に向けて延出して広がる保持部53、53が形成されている。
そして、側壁部51、51の内側には、上側に突出した一対の第1載置部54、54が形成されている。さらに、第1載置部54、54の上端面における外周側には、第1位置決め部55、55が突出して形成されている。第1位置決め部55、55の内側どうしの離隔長さは、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
また、側壁部51、51の内側には、上側に突出した一対の第2載置部56、56が形成されている。第2載置部56、56の上面の高さは、第1載置部54、54の上面の高さと同等になっている。さらに、第2載置部56、56の上面において外側の部分には、第2載置部56、56の左右方向の全体にわたって上側にさらに突出する第2位置決め部57、57が形成されている。第2位置決め部57、57の内側どうしの離隔長さは、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
さらに、側壁部51、51の内側には、眼内レンズ2の支持部2bのうち前方支持部の一部が載置される第3載置部58が形成されている。さらに、第3載置部58から上側にさらに突出する第3位置決め部59が形成されている。第3位置決め部59には前方支持部の一部が当接する。そして、側壁部51、51の内側には、眼内レンズ2の支持部2bのうち後方支持部の一部が載置される第4載置部60が形成されている。さらに、第4載
置部60から上側にさらに突出する第4位置決め部61が形成されている。第4位置決め部61には後方支持部の一部が当接する。
なお、図4(b)に示すように、第4載置部60および第4位置決め部61の上面の高さは、第1〜3載置部および第1〜3位置決め部の上面の高さよりも低くなるように設けられている。一方、側壁部51、51の外側には、位置決め部材50を取り外す際に不必要な回転を防止するための回転防止壁部62が設けられている。
ノズル本体10のセット面12bには、厚さ方向にセット面12bを貫通するセット面貫通孔12cが形成されている。セット面貫通孔12cの外形は、位置決め部材50の第1〜4載置部および第1〜4位置決め部を上側から見た形状に対し僅かに大きな略相似形状とされている。そして、位置決め部材50がノズル本体10に取り付けられる際には、第1〜4載置部および第1〜4位置決め部が、セット面12bの下側からセット面貫通孔12cに挿入され、セット面12bの上側に突出する。
そして、眼内レンズ2がセット面12bにセットされる際には、レンズ本体2aの外周部底面が、第1載置部54、54および第2載置部56、56の上面に載置される。また、レンズ本体2aは第1位置決め部55、55および第2位置決め部57、57によって水平方向(セット面12bに水平な方向)に対して位置規制される。さらに、眼内レンズ2の2本の支持部2bがそれぞれ第3載置部58、第4載置部60の上面に載置される。また、2本の支持部2bは、それぞれ第3位置決め部59、第4位置決め部61によって水平方向に対して位置規制される。
次に、図5(a)および図5(b)に、プランジャー30の概略構成を示す。プランジャー30は、ノズル本体10よりもやや大きな前後方向長さを有している。そして、円柱形状を基本とした先端側の作用部31と、矩形ロッド形状を基本とした後端側の挿通部32とから形成されている。そして、作用部31は、円柱形状とされた円柱部31aと、円柱部31aの左右方向に広がる薄板状の扁平部31bとを含んで構成されている。
作用部31の先端部分には、切欠部31cが形成されている。この切欠部31cは、図5(a)に示すように、作用部31の上方向に開口し左右方向に貫通する溝状に形成されている。また、図5(b)に示すように、切欠部31cの先端側の溝壁は作用部31の先端側に行くに連れて上方に向かう傾斜面で形成されている。一方、挿通部32は、全体的に概略H字状の断面を有しており、その左右方向および上下方向の寸法は、ノズル本体10の貫通孔10cよりも僅かに小さく設定されている。また、挿通部32の後端には、上下左右方向に広がる円板状の押圧板部33が形成されている。
挿通部32の前後方向の中央より先側の部分には、挿通部32の上側に向けて突出し、プランジャー30の素材の弾性により上下に移動可能な爪部32aが形成されている。そして、プランジャー30がノズル本体10に挿入された際には、ノズル本体10の上面において厚さ方向に設けられた図3に示す係止孔10eと爪部32aが係合し、このことにより初期状態におけるノズル本体10とプランジャー30との相対位置が決定される。なお、爪部32aと係止孔10eの形成位置は、係合状態において、作用部31の先端が、ステージ部12にセットされた眼内レンズ2のレンズ本体2aの後側に位置し、レンズ本体2aの後側の支持部2bを切欠部31cが下方から支持可能な場所に位置するよう設定されている。
上記のように構成された眼内レンズ挿入器具1の眼内レンズ2の収納前においては、プランジャー30がノズル本体10に挿入されて初期位置に配置される。また、上記の通り、位置決め部材50が、セット面12bの下方からノズル本体10に取り付けられる。こ
れにより、位置決め部材50の第1載置部54および第2載置部56がセット面12bに突出した状態に保持される。
そして、眼内レンズ2のレンズ本体2aが支持部2bをノズル本体10の前後方向に向けた状態で第1載置部54および第2載置部56の上面に載置され位置決めされる。この状態において、眼内レンズ2の後側の支持部2bの一部がプランジャー30の切欠部31cに挟まれ、その底面によって支持された状態となる。
眼内レンズ2がステージ部12にセットされた後、眼組織に作成された切開創にノズル本体10の先端部10aが挿入される。ここで、先端部10aは斜めの開口形状を有しているので、切開創への挿入を容易に行なうことができる。そして、切開創にノズル部15が挿入された後に、眼内レンズ押出補助具20に流体が供給され、流体によって移動されるパッキン20cの移動に伴って、プランジャー30の押圧板部33がノズル本体10の先端側に押し込まれる。これにより、セット面12bにセットされた眼内レンズ2のレンズ本体2a外周にプランジャー30の作用部31の先端部が当接し、プランジャー30によって眼内レンズ2が先端部10aに向けて案内される。
次に、図6を参照しながら、移動部材90の構成および動作について説明する。図6(a)は、図1の眼内レンズ挿入器具1の部分拡大図である。また、図6(b)は、移動部材90の一例を示す斜視図である。また、図6(c)は、移動部材90の摺動部90eの一例を示す斜視図である。
移動部材90は、フランジ90c、中空円筒形状の軸部90d、円環形状の摺動部90eを有する。一例としてフランジ90c、軸部90d、摺動部90eは、ポリプロピレンなど眼内レンズ押出補助具20と同じ樹脂素材で形成される。
フランジ90cは、前後方向に所定の厚みを有し、術者がフランジ90cを把持することができる。フランジ90cは、軸部90dの後端に一体または別体に設けられている。フランジ90cには、チューブ40の先端と接続する開口90aが設けられている構成を示したが、チューブ40の先端にコネクタを備え、フランジ90cが前記コネクタと接続可能なコネクタ形状となるよう構成してもよい。また、フランジ90cの外周面は、軸部90dの外周面よりも、移動部材90の中心軸AXから離れた位置に位置する。このため、術者が移動部材90を手動で移動する際に、フランジ90cを把持しやすい。なお、中心軸AXは、フランジ90c、軸部90d、摺動部90eの中心軸でもある。
図6に例示する移動部材90では、フランジ90cの全周にわたって外周面が軸部90dの外周面よりも中心軸AXから離れた位置に位置しているが、フランジ90cの少なくとも一部の外周面が、軸部90dの外周面よりも中心軸AXから離れた位置に位置していればよい。また、本実施形態では、摺動部90eが筒状部材20a内に配置された状態において、摺動部90eの中心軸AXが筒状部材20aの中心軸BXと一致する。ここで、中心軸BXは、筒状部材20aの摺動部90eが移動する空間の中心軸である。このため、摺動部90eと筒状部材20aの内周面との間に隙間が生じにくくなり、流体供給源から第1の領域20fに供給される空気によって摺動部90eが押されて筒状部材20a内を移動する際に、摺動部90eと筒状部材20aの内周面との隙間から空気が漏れ出る現象が発生しにくくなる。
さらに、軸部90dは、前後方向に所定長さを有している。なお、軸部90dは、第2の移動部を手動で移動させる操作部の一例である。軸部90dは、後端部20dの開口20eに挿通されており、後端部20dに対して前後方向に移動可能に設けられている。軸部90dの中空部90fは、フランジ90cの開口90aと連通している。本実施形態に
おいて、軸部90dは、後端部20dの開口20eの内周面を摺動可能に設けられている。これにより、軸部90dと後端部20dの開口20eとの間に隙間がある場合に比べて移動部材90の傾きが生じにくくなり、軸部90dの前後方向の移動がより安定することで術者による移動部材90の移動がよりスムーズになると期待できる。
また、軸部90dの前後方向における所定長さは、摺動部90eがパッキン20cの固着を解除する解除位置まで移動したときに、軸部90dの一端が後端部20dから所定長さ延伸するように設定されている。ここで、解除位置とは、摺動部90eがパッキン20cに当接する位置である。また、所定長さとは、術者が後端部20dから延伸する軸部90dを把持可能と想定される長さである。したがって、移動部材90がフランジ90cを有さず、軸部90dと摺動部90eとで形成されている場合でも、移動部材90によってパッキン20cと筒状部材20aの内周面との固着を解除した際に、軸部90dの後端が後端部20dに収納される位置まで移動して術者が軸部90dを把持できない現象が生じにくくなる。また、上記の軸部90dと開口20eにおける摺動の安定性の観点から、開口20eの前後方向における長さは、軸部90dの上下方向の径より大きくするのが好ましく、さらに好適には2倍以上にするのが好ましい。
摺動部90eは、眼内レンズ押出補助具20の筒状部材20aの内周面を前後方向に摺動可能に設けられている。摺動部90eには、軸部90dの中空部90fおよび筒状部材20a内の第1の領域20fとそれぞれ連通する開口90bが設けられている。したがって、流体供給源から供給される圧縮空気は、チューブ40を通って、移動部材90の開口90aからフランジ90c、軸部90d、摺動部90eを通り、開口90bから第1の領域20fに流入する。なお、筒状部材20aの後端部20dと移動部材90の開口90aとが、本体部の一端に設けられた後端部を含み、本体部内に流体を供給する開口を有する流体供給部の一例である。
また、摺動部90eには、筒状部材20aの内周面に当接する外周面に凹部90gが設けられている。そして、凹部90gには弾性体であるOリング90hが嵌め入れられている。Oリング90hは、筒状部材20aの内周面に当接している。このため、Oリング90hから筒状部材20aの内周面に対する接触圧力が生じ、これによって移動部材90の静止状態および移動状態において、第1の領域20fに流入した空気が後端部20d側に漏れ出にくくなる。なお、凹部90gおよびOリング90hの数は1つに限られない。
さらに、摺動部90eには、移動部材90が筒状部材20a内を移動する際にパッキン20cと当接する凸部90iが設けられている。凸部90iは、摺動部90eのパッキン20cと対向する面に設けられた円環形状の凸状部材である。ただし、凸部90iは、図6(c)に示す形状に限らず、摺動部90eのパッキン20cと対向する面の少なくとも一部分に設けられた任意の形状の凸状部材であればよく、また、第1の領域20fがパッキン20cと開口90bの密着により2つの領域に分断されることを回避するために開口90bと開通する凹形状を設けてもよい。凸部90iは、摺動部90eがパッキン20cに当接するときに、チューブ40から移動部材90の流路を経由して送られる流体の圧力がパッキン20cの面全体に加わるようパッキン20cと摺動部90eの密着を防ぐために設けられている。
次に、本実施形態における、筒状部材20aに対する移動部材90の移動について、図7〜11に示す例を参照しながら説明する。図示する例における前提として、パッキン20cが眼内レンズ押出補助具20の筒状部材20aの内周面に固着していると想定する。また、パッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する摺動抵抗は、移動部材90の摺動部90eに設けられたOリング90hの筒状部材20aの内周面に対する摺動抵抗よりも大きいと想定する。なお、パッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する押圧力と
Oリング90hの筒状部材20aの内周面に対する押圧力を調整することで、上記の摺動抵抗をそれぞれ決めることができる。
パッキン20cが筒状部材20aの内周面に固着している場合、流体供給源からの空気を第1の領域20fに流入しても、流入した空気によってパッキン20cを移動することができない可能性がある。また、パッキン20cの固着が解除されるまで空気を流入する場合、第1の領域20fに流入される空気の量は、パッキン20cが筒状部材20aの内周面に固着していない場合よりも多くなり、空気によるパッキン20cの押圧力も大きくなる。この結果、パッキン20cの固着が解除された直後に、パッキン20cが筒状部材20aの前方向に、術者が意図しない速度で移動する可能性がある。本実施形態では、以下に説明するように、移動部材90が、パッキン20cの筒状部材20aに対する固着を解除する解除位置まで移動可能である。さらに、第1の移動部は、第1の移動部の本体部に対する固着を解除する解除位置より前方まで移動可能であってもよい。このため、パッキン20cが筒状部材20aの内周面に固着している場合でも、空気が第1の領域20fに流入される前に、術者が移動部材90によってパッキン20cの固着を手動で解除することができる。
図7に、流体供給源からの空気を第1の領域20fに流入する前の眼内レンズ挿入器具と眼内レンズ押出補助具の状態の一例を示す。図7に示す状態は、パッキン20cが筒状部材20aの内周面に固着しており、術者が移動部材90を移動する前の状態である。移動部材90は、摺動部90eが後端部20dに当接した状態で位置決めされている。本実施形態では、後端部20dが移動部材90の後ろ方向への移動を制限するストッパとなる。なお、後端部20dが、第2の移動部の移動を抑止する抑止部の一例である。また、筒状部材20aの内周面に突起を設けるなど、移動部材90のストッパを後端部とは別に設けてもよい。
術者は、移動部材90のフランジ90cを把持し、移動部材90を筒状部材20aの前方向に向かって押す。このとき、軸部90dは、後端部20dに対して前方向に移動し、摺動部90eは、Oリング90hが筒状部材20aの内周面に当接した状態を維持した状態で、筒状部材20aの内周面を前方向に摺動する。そして、摺動部90eの凸部90iが、パッキン20cに当接する。
術者は、移動部材90をさらに筒状部材20aの前方向に向かって押すことで、パッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する固着が解除される。パッキン20cは、固着が解除された後、移動部材90の移動とともに筒状部材20aの前方向に移動する。図8に、移動部材90によってパッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する固着が解除された状態の一例を示す。図8に示す状態では、フランジ90cが後端部20dに当接しているため、移動部材90をさらに筒状部材20aの前方向に移動できない。このように後端部20dがフランジ90cの移動のストッパとなることで、移動部材90によってパッキン20cの固着が解除された後に移動部材90が前方向に移動し続けないようにすることができる。すなわち、パッキン20cがプランジャー30に当接してプランジャー30を移動させないようにすることができる。また、軸部90dを長くした場合には、プランジャー30を任意の位置まで前方向に押すことができる。
なお、摺動部90eの移動長さは軸部90dの中心軸AX方向の長さによって決まる。軸部90dの長さは、パッキン20cが筒状部材20aの内周面に対して固着すると考えられる位置やパッキン20cとプランジャー30の押圧板部33との位置関係などに基づいて適宜決定することができる。また、パッキン20cの固着が解除された後は、術者は、フランジ90cが後端部20dに当接するまで移動部材90を移動させる必要はない。
移動部材90によってパッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する固着が解除された後に、術者は移動部材90の操作を終了し、眼内レンズ挿入システム100を操作して流体供給源から筒状部材20aへの空気の供給を開始する。流体供給源により供給される空気は、チューブ40から、移動部材90の開口90a、中空部90f、開口90bを経由して摺動部90eとパッキン20cの間の第1の領域20fに流入する。なお、移動部材90の開口90a、中空部90f、開口90bが、第1の移動部と第2の移動部との間の領域に流体を供給する流路の一例である。空気が第1の領域20fに供給されるにつれて、パッキン20cおよび移動部材90に対する空気の押圧力が大きくなっていく。
本実施形態では、Oリング90hの摺動抵抗よりもパッキン20cの摺動抵抗の方が大きい。このため、空気が第1の領域20fに供給され続けたときに、摺動部90eがパッキン20cよりも先に移動を開始する。したがって、図9に示すように、パッキン20cは静止状態を維持し、摺動部90eは後端部20dに向かって移動する。そして、図10に示すように、摺動部90eは後端部20dに当接して静止する。
図10に示す状態で空気が第1の領域20fに供給され続けると、パッキン20cに対する空気の押圧力がパッキン20cの摺動抵抗より大きくなる結果、パッキン20cが筒状部材20aの前方向に向かって移動を開始する。そして、図11に示すように、パッキン20cは、第1の領域20fに供給される空気からの押圧力によって移動してプランジャー30に当接し、さらにプランジャー30を筒状部材20aの前方向に移動する。これにより、プランジャー30によって眼内レンズ2をノズル本体10の先端部10aに移動することができる。
本実施形態では、パッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する摺動抵抗は、摺動部90eの筒状部材20aの内周面に対する摺動抵抗よりも大きい。このため、パッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する固着が解除された後、流体供給源からの空気によって摺動部90eが移動して後端部20dに当接してからパッキン20cの移動が開始する。このように本実施形態の眼内レンズ押出補助具によれば、移動部材90の移動とパッキン20cの移動の順序付けができるため、術者は、摺動部90eが後端部20dに当接したことを確認してから、パッキン20cによってプランジャー30を移動して眼内レンズ2の押し出し操作に移ることができる。また、パッキン20cの移動中に移動部材90が移動するとパッキン20cからプランジャー30に加わる押圧力が安定しないことが懸念されるが、本実施形態によればそのような懸念はない。なお、ここでは移動部材90の移動とパッキン20cの移動の順序付けについて記載したが、移動部材90を前方向に押す操作を終えた位置で、眼内レンズ押出補助具20と移動部材90が固定できるようにするための接続部がそれぞれに設けられている構造としてもよい。
以上が本実施形態に関する説明であるが、上記の眼内レンズ挿入器具などの構成は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想と同一性を失わない範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記の説明では移動部材90の摺動部90eにパッキン20cに当接する凸部90iが設けられているが、凸部90iを設けない構成としてもよい。この場合、術者が移動部材90によりパッキン20cの固着を解除した後、移動部材90を後端部20d側に移動させて摺動部90eとパッキン20cとの間に隙間を生じさせればよい。
また、上記の実施形態において、移動部材90にフランジ90cが設けられていない場合に、後端部20dの開口20eの口径がチューブ40の外径より小さくなるように、後端部20dの開口20eを形成してもよい。これにより、上記のように移動部材90が移動されるときに、移動部材90に接続されたチューブ40が後端部20dに当接し、移動部材90が必要以上に前方向に移動しないようにすることができる。
さらに、上記の実施形態において、図12に示すように摺動部90eを後端部20dに引き寄せる引張コイルばね90jを設けてもよい。引張コイルばね90jが設けられていることで、移動部材90によってパッキン20cの筒状部材20aの内周面に対する固着が解除された後に、摺動部90eは引張コイルばね90jの弾性によって後端部20d側に引き戻される。このため、上記の実施形態では、空気を第1の領域20fに流入することで摺動部90eを後端部20d側に移動させたが、図10に示す眼内レンズ押出補助具の場合は、流体供給源からの空気を用いることなく摺動部90eを後端部20d側に移動させることができる。なお、引張コイルばね90jのばね定数は、摺動部90eの移動長さなどに基づいて適宜決定することができる。また、パッキン20cの固着が解除された後に摺動部90eを後端部20d側に移動させることができれば、引張コイルばね90jの代わりに圧縮コイルばねなどの弾性を有する種々の部材を用いることができる。
また、上記の実施形態では、眼内レンズ押出補助具20の係合板部20hがホールド部11に取り付けられることで、眼内レンズ押出補助具20と眼内レンズ挿入器具1とが接続されるが、図13に一例を示すように眼内レンズ押出補助具200の一端、すなわち後端部20dが設けられている端部とは反対側の端部が眼内レンズ挿入器具1のホールド部11と一体的に接続された眼内レンズ押出ユニット300を形成してもよい。なお、眼内レンズ押出ユニット300の各構成要素は上記の実施形態と同じであるため、各構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
以下に、上記の実施形態の変形例を2例示す。なお、以下の説明においても、上記の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図14に、第1の変形例に係る眼内レンズ挿入器具1の部分拡大図を示す。本変形例では、上記の眼内レンズ押出補助具200の代わりに眼内レンズ押出補助具400が用いられる。図14に示すように、眼内レンズ押出補助具400において、上記のパッキン20cの代わりに、移動部材500が用いられる。
図15に、眼内レンズ押出補助具400の部分拡大図を示す。図15に示すように、移動部材500は、移動部材90の凸部90iと当接する略平板状の第1の当接部500aとプランジャー30と当接する略平板状の第2の当接部500bを有する。また、移動部材500は、中心軸AX、BXの延伸方向において第1の当接部500aと第2の当接部500bとの間に、移動部材500の外周面を周回するように形成された凹部500cを有する。そして、凹部500cにはリップパッキン500dが嵌め入れられている。本変形例におけるリップパッキンとは、移動部材と筒状部材の内周面との間を密閉する機能を有するパッキンであり、パッキン断面形状に隙間を設けて、そのしめしろ分の変形により筒状部材の内周面との固着力が低減される特徴を有するパッキンである。
図15に示すように、リップパッキン500dは、中心軸AX、BXの延伸方向において、先端側に筒状部材20aの内径よりも小さい外径を有する円環状のベース部500eを有する。また、リップパッキン500dは、ベース部500eよりも後端部20d側に位置する円環状のシール部500fを有する。シール部500fは、中心軸AX、BXの延伸方向において、後端部20d側に向かって拡径して筒状部材20aの内周面と当接するように形成されている。このようにリップパッキン500dが構成されていることで、パッキン20cを使用する場合に比べて、筒状部材の内周面との固着力を低減しつつ、流体供給源から供給される流体による移動部材500の移動がより安定することが期待できる。図15に示すリップパッキン500dは、中心軸AX、BX方向の断面が略U字形のいわゆるUパッキンであるが、断面形状がその他の形状であるリップパッキンが用いられてよい。
本変形例では、図14、15に示すように、移動部材500が眼内レンズ押出補助具400内に収容された状態において、リップパッキン500dが筒状部材20aの内周面に当接する。これにより、リップパッキン500dは、第1の領域20fに供給された空気などの流体が移動部材500と筒状部材20aの内周面との間の空間を通って第2の領域20gに移動することを防止するシール部材として機能する。
また、図16に、第2の変形例に係る眼内レンズ挿入器具1の部分拡大図を示す。本変形例では、上記の眼内レンズ押出補助具200、400の代わりに眼内レンズ押出補助具600が用いられる。図16に示すように、眼内レンズ押出補助具600において、上記のパッキン20c、移動部材500の代わりに、移動部材700が用いられる。
図17に、眼内レンズ押出補助具600の部分拡大図を示す。図17に示すように、移動部材700は、移動部材90の凸部90iと当接する略平板状の第1の当接部700aとプランジャー30と当接する略平板状の第2の当接部700bを有する。また、移動部材700は、中心軸AX、BXの延伸方向において第1の当接部700aと第2の当接部700bとの間に、移動部材700の外周面を周回するように形成された凹部700cを有する。なお、凹部700cは、図17に示すように、中心軸AX、BXに平行な面による断面において、略L字型の溝として形成されている。そして、凹部700cにはリップパッキン700dが嵌め入れられている。
さらに、図17に示すように、リップパッキン700dは、中心軸AX、BXの延伸方向において、先端側に筒状部材20aの内径よりも小さい外径を有する円環状のベース部700eを有する。また、リップパッキン700dは、ベース部700eよりも後端部20d側に位置する円環状のシール部700fを有する。シール部700fは、中心軸AX、BXの延伸方向において、後端部20d側に向かって拡径して筒状部材20aの内周面と当接するように形成されている。このようにリップパッキン700dが構成されていることで、リップパッキン500dと同様に、パッキン20cを使用する場合に比べて、筒状部材の内周面との固着力を低減しつつ、流体供給源から供給される流体による移動部材700の移動がより安定することが期待できる。
また、図18、19は、各パッキンを上記の眼内レンズ押出補助具にそれぞれ組み付けた状態で、2時間放置した場合(図18)と2.5日間放置した場合(図19)において、フォースゲージを用いてパッキンを物理的に移動させつつパッキンの最大静止摩擦力(N)(図中「固着解除に要する力」)と摺動抵抗の大きさ(N)を測定した結果を示す。図14〜17は、リップパッキン500d、700dを模式的に例示する図であるが、一例として、第1の変形例におけるリップパッキン500dとしてはAPHパッキン(CU2341Z0、NOK社製)を用いることができ、第2の変形例におけるリップパッキン700dとしてはCPHパッキン(CC0020C0、NOK社製)を用いることができる。なお、図18、19において、「APH」のパッキンは、リップパッキン500dとしてAPHパッキン(CU2341Z0、NOK社製)を用いた場合のパッキンを示し、「CPH」のパッキンは、リップパッキン700dとしてCPHパッキン(CC0020C0、NOK社製)を用いた場合のパッキンを示し、「汎用50ml」のパッキンは、上記の実施形態のパッキン20cに汎用注射筒パッキン(容量50ml、テルモ社製)を用いた場合のパッキンを示す。
また、図20(a)〜20(c)は、当該測定における各パッキンについての経過時間と最大静止摩擦力(N)および摺動抵抗の大きさ(N)との関係を例示するグラフである。図20(a)は汎用50mlのパッキンを用いた場合、図20(b)は移動部材500を用いた場合、図20(c)は移動部材700を用いた場合のグラフを示す。なお、図20の各グラフにおいて、経過時間が0〜5秒の間に示すピークの値が最大静止摩擦力を表
し、ピーク後の値がパッキンの移動に伴う摺動抵抗の大きさを表す。
図18〜20に例示する結果から分かるように、リップパッキン500d、700dを用いる場合、汎用的なパッキンを用いる場合よりも固着を解除するために要する力が小さい。すなわち、流体供給源から眼内レンズ押出補助具に空気を供給する場合、パッキンの固着を解除するための空気圧が小さくてよいため、リップパッキン500d、700dを用いる構成の方が、汎用的なパッキンを用いる構成よりも、パッキンの固着解除後における移動部材の移動がより緩やかになり、眼内レンズの押し出しがより安定することが期待できる。
なお、リップパッキン500dとしてAPHパッキンを用いた場合の移動部材500は、リップパッキン700dとしてCPHパッキンを用いた場合の移動部材700に比べて幅寸法が薄いため、プランジャー30を押す際の負荷により、筒状部材20a内において傾きやすく、空気漏れが生じる可能性があることが考えられる。また、図17に示すように、凹部700cにおいて、第1の当接部700aとリップパッキン700dとの間に空間700gが設けられている。このため、流体供給源から第1の領域20fに供給された空気は空間700gに流入する。そして、リップパッキン700dのシール部700fは、空間700gに流入した空気によって筒状部材20aの内周面側に押圧される。この結果、シール部700fと筒状部材20aとの接触面積が大きくなり、第1の領域20fと第2の領域20gの密閉性が高まる。したがって、図15に示すリップパッキン500dを用いる移動部材500に場合に比べて、移動部材700の方が、筒状部材20a内において傾きが生じにくく、空気漏れが生じる可能性も低いと考えられる。
このように上記の変形例によれば、眼内レンズ押出補助具のパッキン20cを移動部材500、700に変更するだけで、他の構成要素は変更することなく、より好適なパッキンの固着解除および眼内レンズの押し出しを達成できると考えられる。
さらに、上記の実施形態の変形例に係る眼内レンズ押出補助具の一例を、図21、22に示す。図21に例示する眼内レンズ押出補助具800は、上記の眼内レンズ押出補助具400から移動部材90を削除し、チューブ40を筒状部材20aの後端部20dに接続したものである。また、図22に例示する眼内レンズ押出補助具900は、上記の眼内レンズ押出補助具600から移動部材90を削除し、チューブ40を筒状部材20aの後端部20dに接続したものである。眼内レンズ押出補助具800、900においても、チューブ40から第1の領域20fに供給された流体によって、筒状部材20aの内周面に対する移動部材500、700の固着を解除することができる。また、本体部の内周面に当接可能でありかつ本体部の内周面に対して摺動可能に設けられたリップパッキン500d、700dを使用することで、上記の通り、汎用的なパッキン20cを使用する場合に比べて、筒状部材20aの内周面に対する固着の解除に要する流体の圧力が小さくなる。このため、汎用的なパッキン20cを使用する場合よりも眼内レンズ押出補助具800、900を使用する場合の方が、術者によるチューブ40から第1の領域20fへの流体の供給量のより細かな調整に応じて移動部材の固着を解除できる点で、移動部材の固着が解除されたことが術者によりわかりやすくなると言える。
1 眼内レンズ挿入器具
2 眼内レンズ
10 ノズル本体
20、200 眼内レンズ押出補助具
20c パッキン
90 移動部材
90c フランジ
90d 軸部
90e 摺動部
90h Oリング
90j 引張コイルばね
300 眼内レンズ押出ユニット

Claims (11)

  1. 眼内レンズを押圧して眼内に押し出す眼内レンズ押出部材を有する眼内レンズ挿入器具と接続する筒状部材である本体部と、
    前記本体部の一端に設けられた後端部を含み、前記本体部内に流体を供給する開口を有する流体供給部と、
    前記本体部内に設けられ、前記供給される流体の圧力で移動して前記眼内レンズ押出部材を押圧移動する第1の移動部と、
    前記本体部内に設けられた第2の移動部と、
    を有し、
    前記第2の移動部は、前記第2の移動部を手動で移動させる操作部を有し、
    前記第2の移動部は、前記操作部によって前記第1の移動部の前記本体部に対する固着を解除する解除位置まで移動可能であり、
    前記第2の移動部は、前記本体部内における前記第1の移動部と前記第2の移動部との間の領域に前記流体を供給する流路を有し、
    前記第1の移動部は、前記領域に供給される前記流体の圧力で移動する
    ことを特徴とする眼内レンズ押出補助具。
  2. 前記第2の移動部は、前記領域に供給される前記流体の圧力で移動し、
    前記眼内レンズ押出補助具は、前記領域に供給される前記流体の圧力で移動する前記第2の移動部の移動を抑止する抑止部をさらに有し、
    前記第1の移動部および前記第2の移動部は、前記本体部を摺動して移動し、
    前記第1の移動部の前記本体部に対する摺動抵抗は、前記第2の移動部の前記本体部に対する摺動抵抗よりも大きい
    ことを特徴とする請求項1に記載の眼内レンズ押出補助具。
  3. 前記本体部の前後方向において、前記第2の移動部の中心軸が、前記本体部の前記第2の移動部が移動する空間の中心軸と略一致する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の眼内レンズ押出補助具。
  4. 前記第2の移動部は、前記後端部に対して摺動する軸部を有する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の眼内レンズ押出補助具。
  5. 前記本体部の前後方向における前記軸部の長さは、前記第2の移動部が前記解除位置まで移動したときに、前記軸部の一端が前記後端部から所定長さ延伸する長さである、ことを特徴とする請求項4に記載の眼内レンズ押出補助具。
  6. 前記第2の移動部は、前記流路と前記流体を搬送するチューブとを接続するチューブ接続部を有し、
    前記後端部の前記開口の口径が、前記チューブの外径より小さい
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の眼内レンズ押出補助具。
  7. 前記第2の移動部と前記後端部とを接続し、前記第2の移動部を前記後端部側に引き寄せる弾性部材をさらに有する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の眼内レンズ押出補助具。
  8. 前記第1の移動部は、前記本体部の内径よりも小さい外径を有する円環状のベース部と、前記ベース部よりも前記後端部側に位置し前記後端部側に向かって拡径して前記本体部の内周面に当接する円環状のシール部と、を有するシール部材を有し、
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の眼内レンズ押出補助具。
  9. 前記シール部材はリップパッキンである、ことを特徴とする請求項8に記載の眼内レンズ押出補助具。
  10. 眼内レンズを押圧して眼内に押し出す眼内レンズ押出部材を有する眼内レンズ挿入器具と接続する筒状部材である本体部と、
    前記本体部の一端に設けられた後端部を含み、前記本体部内に流体を供給する開口を有する流体供給部と、
    前記本体部内に設けられ、前記供給される流体の圧力で移動して前記眼内レンズ押出部材を押圧移動する第1の移動部と、
    を有し、
    前記第1の移動部は、前記本体部の内径よりも小さい外径を有する円環状のベース部と、前記ベース部よりも前記後端部側に位置し前記後端部側に向かって拡径して前記本体部の内周面に当接する円環状のシール部と、を有するシール部材を有する
    ことを特徴とする眼内レンズ押出補助具。
  11. 前記本体部と前記眼内レンズ挿入器具とが一体的に接続されている請求項1から10のいずれか一項に記載の眼内レンズ押出補助具を有する眼内レンズ挿入ユニット。
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