JP2018159070A - 接着剤、積層体及びその製造方法 - Google Patents

接着剤、積層体及びその製造方法 Download PDF

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悠介 深本
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真介 吉田
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容三 松川
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守雄 中谷
行壮 松野
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Abstract

【課題】気泡の侵入、接着剤の未硬化を抑制することができると共に、光透過性の低い部材の接着にも適用可能な接着剤を提供する。
【解決手段】本発明の接着剤は、(A)1分子あたり一つのエポキシ基を有する単官能エポキシ化合物と、(B)1分子あたり二つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤と、(D)アクリル系化合物と、(E)光ラジカル発生剤と、(F)単官能オキセタン化合物及び(H)多官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、接着剤、積層体、及び積層体の製造方法に関する。本発明は、詳しくは、紫外線等の活性エネルギー線の照射で硬化する光硬化性樹脂組成物を含む接着剤、この接着剤を含む積層体及びその製造方法に関する。
液晶パネル等の電子機器は、複数の部材を重ねて接着することで製造される積層体である。積層体の製造には、種々の接着剤が使用される。
接着剤の例には、フィルム状の光学透明接着剤(OCA:Optically Clear Adhesive)、光学透明樹脂(OCR:Optically Clear Resin)等が含まれる。
例えば特許文献1には、タッチパネルの製造過程において、基板とセンサとをOCAで接着することが開示されている。特許文献1では、OCAの粘着性によって基板とセンサとが接着される。
また特許文献2には、表示装置の製造過程において、透明タッチスイッチと液晶表示素子とを、紫外線硬化型の透明接着剤で接着することが開示されている。この場合、透明タッチスイッチと液晶表示素子との間に透明接着剤を配置してから、紫外線を照射して硬化させている。
特開2014−21968号公報 特開平09−274536号公報
しかしながら、特許文献1のように部材の接着にOCAを用いる場合には、図11に示すように、段差部50にフィルム状のOCA51を貼り付ける際に、空気を押し出すことができずに、段差部50とOCA51との間に気泡52が入り込むことがあった。
また特許文献2のように部材の接着に紫外線硬化型のOCRを用いる場合には、光透過率の低い部分56を有する部材53と部材54とをOCRの接着剤55で接着する際に、図12A及び図12Bに示すように、部分56で光57が遮られて、接着剤55の未硬化が生じて、接着不足及び樹脂漏れが生じることがあった。張り合わせ後、あるいは組立後に樹脂漏れが生じると、バックライト、筐体、回路基板等の部品が汚染されることがあった。また図13A及び図13Bに示すように、接着剤60の未硬化あると、部材58と部材59とを貼り合わせる際に、接着剤60のはみ出しが生じることがあった。設計した接着領域から接着剤がはみ出すと、筐体の接着に使用する領域を確保できないことがあった。上記のように気泡が侵入したり、樹脂漏れが生じたり、はみ出しが生じた製品は、不良品と判断されやすい。また、貼り合わせ後に紫外線を照射する必要があるため、光透過性が低い部材の接着に紫外線硬化型の接着剤を適用することができなかった。
本発明の目的は、気泡の侵入、接着剤の未硬化を抑制することができると共に、光透過性の低い部材の接着にも適用可能な接着剤と、この接着剤を含む積層体と、この接着剤を用いた積層体の製造方法とを提供することである。
本発明に係る一実施形態の接着剤は、(A)1分子あたり一つのエポキシ基を有する単官能エポキシ化合物と、(B)1分子あたり二つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤と、(D)アクリル系化合物と、(E)光ラジカル発生剤と、(F)単官能オキセタン化合物と(H)多官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、を含有する。
本発明に係る一実施形態の積層体は、前記接着剤の硬化物と、第一部材と、第二部材と、を含み、前記第一部材及び前記第二部材が、それぞれ前記硬化物で固着されている。
本発明に係る一実施形態の積層体の製造方法は、第一部材及び第二部材の少なくとも一方の上に、前記接着剤からなる未硬化の塗膜を配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記未硬化の塗膜に活性エネルギー線を照射する照射工程と、前記照射工程の後に、前記未硬化の塗膜を介して、前記第一部材及び前記第二部材を位置決めする位置決め工程と、前記位置決め工程の後に、前記未硬化の塗膜が完全硬化することで、前記第一部材と前記第二部材とをそれぞれ固着する硬化工程と、を含む。
本発明は、気泡の侵入、接着剤の未硬化を抑制することができると共に、光透過性の低い部材の接着にも適用可能な接着剤と、この接着剤を含む積層体と、この接着剤を用いた積層体の製造方法とを提供できる。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る接着剤の一例に活性エネルギー線を照射した直後の貯蔵弾性率及び損失弾性率の測定結果を示すグラフである。図1Bは、同上の接着剤の一例に活性エネルギー線を照射した後の貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフである。 図2Aは、同上の接着剤の塗膜を部材の上に配置する工程を示す概略の正面図である。図2Bは、同上の接着剤の塗膜を部材の上に配置する工程を示す概略の断面図である。 図3は、同上の接着剤の塗膜に活性エネルギー線を照射する工程を示す概略の断面図である。 図4Aは、同上の接着剤の塗膜から型枠を外す工程を示す概略の正面図である。図4Bは、同上の接着剤の塗膜から型枠を外す工程を示す概略の断面図である。 図5は、同上の接着剤の塗膜を介して複数の部材を貼り合わせる工程を示す概略の断面図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。 図7Aは、本発明の一実施形態に係る接着剤の塗膜を部材の上に配置する工程を示す概略の斜視図である。図7Bは、図7Aに示す仮想線の部分の拡大図である。 図8は、同上の接着剤の塗膜に活性エネルギー線を照射する工程を示す概略の斜視図である。 図9は、同上の接着剤の塗膜を介して複数の部材を貼り合わせる工程を示す概略の斜視図である。 図10は、本発明の一実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。 図11は、段差を有する部材の上にOCAを配置する場合を示す概略の断面図である。 図12Aは、光透過率が低い部分を有する部材をOCRで接着する場合を示す模式図である。図12Bは、図12Aに示す仮想線の部分の拡大図である。 図13Aは、OCRを介して複数の部材を貼り合わせる場合を示す概略の正面図である。図13Bは、図13Aに示す仮想線の部分の拡大図である。 図14は、本発明に係る積層体の一実施形態を示す断面図である。 図15A〜図15Gは、本発明に係る積層体の製造方法の一実施形態を示す概略図である。 図16は、積層体の製造装置の一例を示す概略図である。 図17A〜図17Fは、従来の積層体の製造方法の一例を示す概略図である。 図18は、本発明に係る表示装置の一実施形態を示す断面図である。 図19A〜図19Gは、本発明に係る表示装置において、カバーと液晶パネルとの接着工程の一例を示す概略図である。 図20は、従来の表示装置の一例を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
1.光硬化性樹脂組成物について
本実施形態の光硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、光が照射されることにより硬化する光硬化性樹脂組成物である。ここで、光とは活性化エネルギー線であって、紫外線を含み、可視光線を含んでいてもよい。
本明細書において、組成物(X)に対する光の照射中に進行する硬化反応を一次硬化という。また一次硬化から所定時間を経過後に開始され、且つ急峻に進行する硬化反応を二次硬化という。また一次硬化によって組成物(X)の貯蔵弾性率が損失弾性率より大きくなってから、二次硬化反応が開始されるまでの状態を一次硬化状態という。また二次硬化によって組成物(X)の接着力が1N/cm以上になった状態を二次硬化状態という。また二次硬化が終わり、組成物(X)が完全に硬化することを完全硬化という。また二次硬化の開始から完全硬化するまでの時間を硬化完了時間という。また組成物(X)の貯蔵弾性率が飽和した状態を完全硬化状態という。
組成物(X)は、(A)単官能エポキシ化合物(以下、(A)成分ともいう)、(B)多官能エポキシ化合物(以下、(B)成分ともいう)、(C)光カチオン発生剤(以下、(C)成分ともいう)、(D)アクリル系化合物(以下、(D)成分ともいう)、(E)光ラジカル発生剤(以下、(E)成分ともいう)、(F)単官能オキセタン化合物(以下、(F)成分ともいう)、(G)エラストマー(以下、(G)成分ともいう)、(H)多官能オキセタン化合物(以下、(H)成分ともいう)、及び(I)カップリング剤(以下、(I)成分ともいう)を含有している。
組成物(X)の一態様は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(E)成分と(F)成分とを必須とし、その他の成分は任意成分である。
組成物(X)の他の一態様は、(B)成分と(F)成分とを必須とし、その他の成分は任意成分である。
組成物(X)の他の一態様は、(B)成分と(C)成分と(I)成分とを必須とし、(A)成分又は(F)成分の少なくとも一方を必須とし、その他の成分は任意成分である。
以下、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、(H)成分、(I)成分について説明する。
1−1.(A)成分
(A)成分は、一分子あたり一つのエポキシ基を有する化合物である。換言すると(A)成分は、一分子内に一官能基のエポキシ基を有する化合物である。(A)成分は、組成物(X)に遅延硬化性を発揮させる。遅延硬化性とは、組成物(X)に光を照射した後、完全硬化するまでの時間が光の照射時間よりも長くなる性質のことを意味する。組成物(X)では、(B)成分及び(H)成分よりも(A)成分の重合が優先して進行し、(B)成分及び(H)成分の架橋によるゲル化が遅延するため、遅延硬化性を有することになる。
(A)成分は、一分子内にポリエーテル骨格を有する単官能エポキシ化合物(A1)(以下、(A1)成分ともいう)を含むことが好ましい。もちろん(A)成分は、一分子内にポリエーテル骨格を有さない単官能エポキシ化合物(A2)(以下、(A2)成分ともいう)を含んでいてもよい。尚、ポリエーテル骨格とは、下記式(1)に示す化学構造式を意味する。
Figure 2018159070
(式(1)において、Rは炭素数1〜30の炭化水素基であり、mは2〜60の整数である)。
式(1)において、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であることが好ましい。この場合、組成物(X)に光を照射してから完全に硬化するまでの時間を増加させることができる。
(A1)成分に含まれる化合物の例には、ポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノグリシジルエーテル、及びポリテトラメチレングリコールモノグリシジルエーテルが含まれる。(A)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含むことが好ましい。
(A2)成分に含まれる化合物の例には、アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ビフェニルグリシジルエーテル、グリコールグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド、及び脂肪酸グリシジルエステルが含まれる。(A)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含んでもよい。
また、(A)成分は、炭素−炭素二重結合を含まない、もしくはほとんど含まない化合物であることがより望ましい。炭素−炭素二重結合を有する化合物は、そのβ結合が熱及び光などで切断されやすく、この切断により、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなるためである。ここで、炭素−炭素二重結合をほとんど含まない化合物とは、構造内の二重結合が水素添加反応により処理され、その水添率が70%以上である化合物を指す。水添率が70%未満である化合物は、炭素−炭素二重結合が熱及び光などで切断され、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなるため、望ましくない。このような炭素−炭素二重結合をほとんど含まない化合物を用いることにより、組成物(X)及びその硬化物の変色を抑制することができる。炭素−炭素二重結合をほとんど含まない単官能エポキシ化合物としては、水素添加反応により処理された単官能エポキシ化合物が使用可能である。
1−2.(B)成分
(B)成分は、一分子あたり二つ以上のエポキシ基を有する化合物である。換言すると(B)成分は、一分子内に二官能基以上のエポキシ基を有する化合物である。
(B)成分は、一分子内にポリエーテル骨格を有する多官能エポキシ化合物(B1)(以下、(B1)成分ともいう)を含むことが好ましい。もちろん(B)成分は、一分子内にポリエーテル骨格を有さない多官能エポキシ化合物(B2)(以下、(B2)成分ともいう)を含んでもよい。特に(A)成分及び(B)成分がいずれもポリエーテル骨格を有する場合には、組成物(X)の硬化後に、ポリエーテル骨格部分のブリードアウト(組成物(X)の硬化物の表面へのポリエーテル骨格部分の染み出し及び浮き出し)を抑制できる。
(B1)成分に含まれる化合物の例には、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルが含まれる。(B)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含むことが好ましい。
(B2)成分に含まれる化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、アントラセン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、脂肪族ポリエーテル系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートが含まれる。(B)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含んでもよい。
(B)成分は、水素添加反応で処理された多官能エポキシ化合物(B3)(以下、(B3)成分ともいう)を含有することが好ましい。二重結合を有する多官能エポキシ化合物は、そのβ結合が熱及び光などで切断されやすく、この切断により、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなる。水素添加反応(「水添」という場合がある)とは、化合物の構造内に元来含まれる二重結合に対し、水素を付加させる還元反応であり、水添処理前の化合物の構造を残したまま、化合物の二重結合の数を低減させることができる。このため、水素添加反応により処理した化合物は、水添処理をしていない化合物と比較してβ結合が熱及び光などで切断されにくくなる。そこで、組成物(X)は、(B)成分として、水素添加反応(水添)で処理された、ほとんど二重結合を有さない(B3)成分を含有することが好ましく、これにより、組成物(X)及びその硬化物の変色を低減することができる。ここで、炭素−炭素二重結合をほとんど含まない化合物とは、構造内の二重結合が水素添加反応により処理され、その水添率が70%以上である化合物を指す。水添率が70%未満である化合物は、炭素−炭素二重結合が熱及び光などで切断され、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなるため、望ましくない。(B3)成分としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ポリブタジエン型エポキシ樹脂などの水素添加反応(水添)で処理された多官能エポキシ化合物を使用することが可能である。水添された原材料を用いることにより、水添前の組成物の物性を保持しつつ二重結合の含有量を少なくすることで二重結合の切断を生じにくくし、熱酸化劣化の発生を抑制し、黄変を少なくすることができる。
1−3.(C)成分
(C)成分は、紫外線、可視光等の光が照射されることによって、強酸性の化学種であるカチオン種を発生する化合物である。この化学種は、エポキシ基又はオキセタン環を開環自己重合させることができる。このため(C)成分は、エポキシ基又はオキセタン環を開環自己重合させるための開始剤である。(C)成分は、イオン性光酸発生剤を含んでもよく、非イオン性光酸発生剤を含んでもよく、これらの両方を含んでいてもよい。
イオン性光酸発生剤に含まれる化合物の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類、鉄―アレン錯体、チタノセン錯体、ヨウドニウム塩類、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類が含まれる。(C)成分はこれらのうち一種以上の化合物を含むことができる。(C)成分は、市販のイオン性酸発生剤を含んでもよい。市販のイオン性酸発生剤の例には、旭電化工業社製の商品名「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP170」等の「アデカオプトマー」シリーズ、サンアプロ製の商品名「CPI−210S」、「CPI−310B」、ゼネラルエレクトロニクス社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」等が含まれる。(C)成分は、これらのうち一種以上のイオン性光酸発生剤を含むことができる。これらのイオン性光酸発生剤のうち、「CPI−310B」はいわゆるボレート塩型の光カチオン発生剤であり、後述の(i)成分とボレート塩型の光カチオン発生剤とを併用することにより、被接着物の腐食をより抑制しやすくなる。
非イオン性光酸発生剤に含まれる化合物の例には、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドホスホナートが含まれる。(C)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含むことができる。
1−4.(D)成分
(D)成分は、アクリル樹脂の原料となるモノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれかである。換言すると(D)成分は、一分子内に一官能基以上の反応性アクリル基またはメタクリル基を有する化合物である。(D)成分に含まれる化合物の例には、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、及び分子内に反応性のアクリル基またはメタクリル基を含むポリマーが含まれる。これらの硬化物であるアクリル樹脂、メタクリル樹脂は一般的に耐候性が高く、変色を起こしにくいことが一般的に知られている。このような変色を起こしにくい成分の割合を増やすことで、組成物(X)の変色防止に寄与できる。
単官能アクリレート又は単官能メタクリレートに含まれる化合物の例には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ノルマルプロピルアクリレート、ノルマルプロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びメチオールアクリルアミドが含まれる。多官能アクリレート又は多官能メタクリレートに含まれる化合物の例には、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、デンドリマーアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレートが含まれる。分子内に反応性のアクリル基またはメタクリル基を含むポリマーの例には、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリル変性シリコーン、エポキシメタクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート、及びメタクリル変性シリコーンが含まれる。(D)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含んでもよい。
1−5.(E)成分
(E)成分は、紫外線、可視光等の光が照射されることによってラジカルを発生する化合物である。このラジカルは、アクリル系化合物をラジカル重合させることができる。換言すると(E)成分は、光ラジカル重合開始剤である。(E)成分は、特に限定されず、公知の光ラジカル重合開始剤を含むことができる。これら光ラジカル発生剤による硬化では一般的に腐食性が低いことが知られている。このような成分の割合を増やすことで、腐食性の少ない硬化物を得ることが可能となる。
(E)成分に含まれる化合物の例には、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、アルキルフェノン系、及びアシルフォスフィンオキサイド系の光ラジカル重合開始剤が含まれる。(E)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含んでもよい。
1−6.(F)成分
(F)成分は、一分子あたり一つのオキセタン環を有する化合物である。(F)成分は、組成物(X)に遅延硬化性を発揮させる。遅延硬化性とは、組成物(X)に光を照射した後、完全硬化するまでの時間が長くなる性質のことを意味する。組成物(X)では、(B)成分及び(H)成分よりも(F)成分の重合が優先して進行し、(B)成分及び(H)成分の架橋によるゲル化が遅延するため、遅延硬化性を有することになる。
(F)成分に含まれる化合物の例には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、などが含まれる。(F)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含むことができる。
1−7.(G)成分
(G)成分は、エラストマーである。エラストマーを含む組成物(X)は、エラストマーを含まない組成物(X)よりも、粘度を高くすることができる。またエラストマーを含まない組成物(X)の硬化物よりも、組成物(X)の硬化物の強度、弾性率、及び伸び率を制御することができる。これにより、組成物(X)の粘度を、塗布プロセスに適した範囲に調整することができる。また、組成物(X)の弾性率と伸び率を、貼り合わせる部材に応じた範囲に調整することができる。
エラストマーに含まれる化合物の例には、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、シリコーン系、アクリル重合物の高分子物質が含まれる。(G)成分は、これらのうち一種以上の高分子物質を含んでもよい。組成物(X)がエラストマーを含む場合、エラストマーの形態は、粒子状であってもよく、溶液状であってもよく、粒子状のエラストマーと溶液状のエラストマーとが併存していてもよい。
(G)成分は、水素添加反応で処理されたエラストマー(G2)(以下、(G2)成分ともいう)を含有することがより好ましい。二重結合を有するエラストマーは、そのβ結合が熱及び光などで切断されやすく、この切断により、組成物(X)及びその硬化物が変色(黄変)しやすくなる。そこで、組成物(X)は、(G)成分として、水素添加反応で処理された、二重結合をほとんど有さない(G2)成分を含有することが好ましく、これにより、組成物(X)及びその硬化物の変色を低減することができる。ここで、炭素−炭素二重結合をほとんど含まない化合物とは、構造内の二重結合が水素添加反応により処理され、その水添率が70%以上である化合物を指す。水添率が70%未満である化合物は、炭素−炭素二重結合が熱及び光などで切断され、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなるため、望ましくない。(G2)成分としては、水添ポリスチレン系エラストマー、水添ポリブタジエン系エラストマーなどの水素添加反応(水添)で処理されたエラストマーを使用することが可能である。水添された原材料を用いることにより、水添前の組成物の物性を保持しつつ二重結合の含有量を少なくすることで二重結合の切断を生じにくくし、熱酸化劣化の発生を抑制し、黄変を少なくすることができる。
1−8.(H)成分
(H)成分は、一分子あたり二つ以上のオキセタン環を有する化合物である。(H)成分は、組成物(X)の硬化急峻性を向上させる。硬化急峻性とは、組成物(X)の硬化速度(単位時間あたりの粘度上昇)が短時間で急激に上昇して、組成物(X)が完全硬化するまでの時間が速くなる性質のことを意味する。
(H)成分に含まれる化合物の例には、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシリケートなどが含まれる。(H)成分は、これらのうち一種以上の化合物を含むことができる。
また、(H)成分は、炭素−炭素二重結合を含まない、もしくはほとんど含まない化合物であることがより望ましい。炭素−炭素二重結合を有する化合物は、そのβ結合が熱及び光などで切断されやすく、この切断により、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなるためである。ここで、炭素−炭素二重結合をほとんど含まない化合物とは、構造内の二重結合が水素添加反応により処理され、その水添率が70%以上である化合物を指す。水添率が70%未満である化合物は、炭素−炭素二重結合が熱及び光などで切断され、組成物(X)及びその硬化物が変色(特に、熱酸化劣化による黄変)しやすくなるため、望ましくない。炭素−炭素二重結合をほとんど含まない多官能オキセタン化合物としては、水素添加反応により処理された多官能オキセタン化合物が使用可能である。炭素−炭素二重結合をほとんど含まないもしくは含まない多官能オキセタン化合物を用いると黄変を生じることなく、硬化急峻性を向上させることができる。
1−9.(I)成分
(I)成分は、カップリング剤である。(I)成分は、直鎖状炭素結合の炭素数が2以下の有機官能基を有するシランカップリング剤(以下、(i)成分ともいう)を含有している。(I)成分の全部が(i)成分であってもよいし、(I)成分の一部が(i)成分であって、他部が別のカップリング剤であってもよい。
(i)成分としては、下記構造式(i−1)及び(i−2)のものを例示することができる。
Figure 2018159070
(i)成分を含有する組成物(X)は、(i)成分の有機官能基の炭素数が少なくて分子鎖が短いため、電極等の被接着物の表面に密着した場合に、被接着物の表面に(i)成分が固着し、(A)成分と(B)成分などと結合するときに、非接着物表面上に(i)成分が密に並んで配置されると推察される。従って、(i)成分により被接着物の表面を保護することができ、光の照射で(C)成分により発生する強酸が被接着物に作用することを低減することができ、被接着物の腐食を抑制することができると考えられる。一方、有機官能基の長いカップリング剤では、結合の疎の部分より(C)成分により生じた強酸が被接着物の表面に侵入しやすいため、一定の効果があるにしても非接着物の腐食を抑制するには好ましくない。
1−10.その他の成分
組成物(X)は、必要に応じて、各種の樹脂、添加剤等を含んでもよい。
1−11.組成物(X)の調製
組成物(X)は、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、(H)成分、(I)成分及び必要に応じてその他の成分を所定の質量比で配合し、20℃以上100℃以下に調温した後、ディスパー等により均一になるまで攪拌することで得られる。この組成物(X)は、ほぼ透明であり、詳細には淡黄色である。
組成物(X)は、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、(H)成分,(I)成分を以下の割合で含有することができる。
(A)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0質量部以上40質量部以下、好ましくは1質量部以上30質量部以下である。
(B)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、10質量部以上95質量部以下、好ましくは15質量部以上70質量部以下である。
(C)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
(D)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0質量部以上70質量部以下、好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
(E)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
(F)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0質量部以上90質量部以下、好ましくは2質量部以上30質量部以下である。(F)成分の含有割合は5質量部以上であることが好ましく、5質量部以上90質量部以下であってもよい。
(G)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0質量部以上80質量部以下、好ましくは1質量部以上50質量部以下である。
(H)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下、好ましくは2質量部以上15質量部以下である。
(I)成分の含有割合は組成物(X)100質量部に対して、0.005質量部以上5質量部以下、好ましくは0.01質量部以上3質量部以下、さらに好ましくは0.02質量部以上1質量部以下である。0.005質量部未満では実用的な効果を得られず、また5質量部より多く過剰に配合すると樹脂の性情を大きく変えてしまう。特に1質量部以下であれば、基板表面の電極表面を覆うに十分な量であり、望ましい。
(A)成分及び(B)成分の合計と、(D)成分との質量比は、好ましくは5:95〜90:10の範囲内である。この場合、組成物(X)の塗膜に光が照射された際に、塗膜の形状を保持しつつ、粘着性を有し接着性を有さない一次硬化状態にすることができる。ここで、粘着性とは基材との空間を無くすことで基材と付着することができ、所定の力にて引きはがすことが可能であり、また再度付着することができ、初期と同様の付着力を有する機能を指す。また、接着性とは、基材と物理的かつ、もしくは化学的に密着し、一度引きはがすと密着性を失い、接着力が著しく低下(具体的には50%以下)する特性を指す。一次硬化により、塗膜の形状が保持されるため塗膜を形成した部材が搬送される時に部材上の塗膜が変形することを抑制することができ、また塗膜を介して複数の部材同士を貼り合わせる際に組成物(X)が接着部材からはみ出すことを抑制することができる。また、液体時に部材に塗布するため部材が曲面を有していても均一な塗膜を形成し、一次硬化により塗膜の形状を保持できるため、曲率の異なる部材どうしを一定膜厚で貼り合せることができる。
(A)成分と(B)成分と質量比は、好ましくは10:90〜70:30の範囲内であり、より好ましくは15:85〜60:40の範囲内であり、より更に好ましくは20:80〜50:50である。
一次硬化から二次硬化開始時までの時間、すなわち組成物(X)が一次硬化状態である時間は、各成分の配合量や種類等によって異なるが、組成物(X)に含まれる(B)成分及び(H)成分が少ないほど短くなり、(A)成分及び(F)成分が多いほど長くなる。一次硬化状態の時間が長い場合、組成物(X)により複数の部材(被接着物)同士を余裕をもって貼り合わせることができる。形状保持性と適度な粘着性を有することから、組成物(X)が他の部材に流れ出たり、容易に位置ずれが生じず、製造上非常に使いやすくなる。また複数の部材同士を貼り付けた後に組成物(X)の塗膜が硬化するため、部材の光透過率に影響されることなく複数の部材を接着することができる。また部材の光透過率に影響されないため、組成物(X)がより効率よく硬化し易い波長域の光によって組成物(X)を硬化させることができる。また組成物(X)の硬化状態、硬化時間等を均一に制御することができる。これにより二次硬化用の光源が不要となり、製造過程を単純化することができ、製造過程で部材変更が生じても、光の調整、確認等を行う必要がない。さらに遮光性の部材の接着にも適用することができ、部材の選択肢を増やすことが可能となる。また複数の部材同士を貼り合わせた後に、一次硬化状態で不具合が発見された場合には、複数の部材のそれぞれを分離して、一次硬化状態での不具合を修正してから再度貼り合わせる、いわゆるリワークが行いやすい。
(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対する、1分子中にポリエーテル骨格を有するエポキシ化合物の合計量(すなわち、単官能エポキシ化合物(A1)と多官能エポキシ化合物(B1)の合計量)は、好ましくは0.01質量部以上90質量部以下の範囲内であり、より好ましくは0.1質量部以上30質量部以下の範囲である。
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する、(C)成分の配合量は、0.01質量部以上であることが好ましい。この場合、カチオン重合反応が十分に行われず、組成物(X)の未硬化が生じることを抑制することができる。また(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する、(C)成分の配合量は10質量部以下であることが好ましい。この場合、カチオン重合反応の反応速度が速過ぎて、可使時間を確保できなくなること、及び組成物(X)の深部硬化性が低下することを抑制することができる。
(D)成分の合計100質量部に対する、(E)成分の配合量は、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下の範囲内である。(E)成分の配合量が0.01質量部未満であると、(D)成分の未硬化が生じて、硬化不良による樹脂漏れが生じることがある。また(E)成分の配合量が10質量部より多いと、組成物(X)が過剰硬化することにより、硬化物が脆くなることがある。
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する、(F)成分の配合量は、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下の範囲内である。この場合、組成物(X)の硬化時の粘度の上昇挙動をより急峻にすることができる。これにより、複数の部材を貼り合わせた後の完全硬化までの養生時間を短縮することができる。また複数の部材を貼り合わせた後の位置ずれをより抑制することができる。
また、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方がポリエーテル骨格を有することにより、カチオン重合反応の反応速度をより効果的に遅くすることができる。これにより、光の照射中に生じるラジカル重合反応と、照射後に所定時間経過してから進行するカチオン重合反応と、を時間的に分けることができる。
さらに(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方がポリエーテル骨格を有し、且つ(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対する(H)成分の配合量が0.1質量部以上30質量部以下の範囲内である場合、光の照射中に生じるラジカル重合反応と、照射後に所定時間経過してから進行する光カチオン反応と、を時間的に分けられると共に、所定時間経過後のカチオン重合反応の進行を急峻にすることができ、硬化完了時間を短くすることができる。
つまり、(A)成分及び(B)成分によって、組成物(X)への光の照射中にはラジカル重合反応によって組成物(X)が一次硬化状態となり、そして光の照射終了後の所定時間は、複数の部材同士を貼り合わせることが可能となる。この所定時間によって張り合わせ時間を十分に確保することができる。さらに貼り合わせ後には、(F)成分によって、カチオン重合反応が急峻に進行して組成物(X)が完全硬化に至る。硬化完了時間が短くなることにより、短時間での製品出荷が可能となる。その結果、工場工程内における仕掛かり在庫を特に少なく保つことができ、製造コストを低減することができる。
組成物(X)がエラストマー((G)成分)を含有する場合には、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対する、(G)成分の配合量は、好ましくは0.1質量部以上90質量部以下の範囲内である。この場合、組成物(X)、及び組成物(X)の硬化物に、種々の機能を付与することができる。例えば組成物(X)の粘度を工場の生産設備の機能に合わせて調整できる。また組成物(X)の硬化物の弾性率を調整することができるため、貼り合わせる部材の間に熱膨張差がある場合に必要となる組成物(X)の弾性率制御を行うことができる。
組成物(X)は、水素添加反応で処理されないで二重結合を有しない化合物の含有量が組成物(X)の100質量部に対して50質量部(50質量%)以上であることが好ましい。上述のように、二重結合を有する化合物は、組成物(X)及びその硬化物を変色させやすい。特に、熱酸化劣化による熱黄変が生じやすい。そして、二重結合を有しない化合物の含有量が多いほど、組成物(X)及びその硬化物が変色しにくいため、水素添加反応で処理されないで二重結合を有しない化合物が組成物(X)の100質量部に占める割合が50質量部以上であることが好ましい。さらに、組成物(X)は、水素添加反応(水添)で処理された化合物の含有量が組成物(X)の100質量部に対して20質量部(20質量%)以上であることがより好ましい。これにより、組成物(X)及びその硬化物が熱及び光などで変色するのを低減することができる。
2.組成物(X)の硬化特性
組成物(X)は、光の照射前は液状である。部材上に組成物(X)の塗膜を配置する際には、組成物(X)が部材の形状に追随するため、部材と塗膜との間に気泡が侵入することが抑制される。また組成物(X)は、光を照射しない限り、液状に保たれやすいため、保存安定性に優れ、熱硬化性樹脂のように冷所に保存することなく、常温で保存できる。
組成物(X)は、光の照射中に貯蔵弾性率が損失弾性率よりも高くなり、一次硬化状態となる。これにより、組成物(X)の流動性が低下するため、組成物(X)の塗膜の形状を保持することができる。このため、組成物(X)の塗膜が配置された部材を搬送する際には、塗膜の形状が保持されて、変形が抑制され、膜厚も保たれる。また塗膜を介して複数の部材同士を貼り合わせる際には、組成物(X)のはみ出しが抑制される。そして一次硬化状態の組成物(X)は粘着性を有するため、部材同士を最適な位置で固定して動きづらい状態に保つことができる。また任意の形状を有する塗膜を形成することもできる。例えば、型枠内に組成物(X)を配置してから組成物(X)に光を照射することによって、一次硬化状態の塗膜をシート状に形成してもよい。例えば、線状の塗膜を形成することによって、複雑な形状を有する部材の接着に適用してもよい。つまり組成物(X)は塗膜形成時は液体であるため、部材の形状に応じて、任意の形状で塗布することが可能であり、また光の照射によって任意の形状のまま硬化させて、接着させることが可能となる。
組成物(X)が一次硬化状態になる現象は、アクリル系化合物及び光ラジカル発生剤に由来する。本実施形態の組成物(X)が一次硬化状態になるメカニズムは以下の通りである。組成物(X)が光を吸収すると、瞬時に光ラジカル発生剤由来のラジカルが生成される。このラジカルと、アクリル系化合物とが反応することによって、アクリル系化合物のラジカル重合反応が生じる。このラジカル重合反応は急速に進行する。またラジカル重合反応は、光の照射中にのみ進行し、照射終了後にはラジカルが失活してラジカル重合反応が終了する。このため組成物(X)は、急速に粘度が上昇して、一次硬化状態となり、流動性が低下する。また組成物(X)中のアクリル系化合物の配合量が多過ぎると組成物(X)が完全硬化してしまう。このため組成物(X)に含まれるアクリル系化合物の量は、ラジカル重合反応によって、組成物(X)が完全硬化しない程度に含まれることが好ましい。また光の照射直後は、後述のエポキシ化合物が反応して光カチオン発生剤由来のカチオンが生成されるが、カチオン重合反応は(A)成分の単官能エポキシ化合物と、(B)成分の多官能エポキシ化合物によって、進行しにくい。
図1Aに、本実施形態の一例である組成物(X)に、光を照射した直後の組成物(X)の貯蔵弾性率(G‘Pa)及び損失弾性率(G“Pa)を、レオメーター(AntonPaar製のMCR−102)で測定した結果を示す。なお、「貯蔵」とは弾性体の性質を示し、「損失」とは粘性体の性質を示す。これによると、光の照射直後には、貯蔵弾性率(G‘Pa)が損失弾性率(G“Pa)よりも大きくなっている。すなわち、光照射直後の組成物(X)は、弾性体の性質の方が、粘性体の性質よりも大きくなっている。このような状態の組成物(X)は形状が保持されやすく、組成物(X)の塗膜の変形、貼り合わせ時の組成物(X)のはみ出し等を抑制できる。
組成物(X)は、光を照射してから所定時間は、形状保持可能な一次硬化状態に保たれ、粘着性を有しているが、接着性は有していない。また組成物(X)が完全硬化することによって固着された状態となる。すなわち組成物(X)は、遅延硬化性を有する。このため、組成物(X)は、光照射後に複数の部材同士を貼り合せる時間的な猶予があり、複数の部材同士を貼り合わせ可能な時間(可使時間)がある。このため、複数の部材同士を貼り合わせた後に、分離しやすく、リワークが行いやすい。一方でこの可使時間が長過ぎると、接着プロセスに多くの時間を要するため、生産性が低下する。生産プロセスに適した時間に硬化特性を設計できることがメリットとなる。更に、複数の部材同士を貼り合わせた後に、組成物(X)に熱等のエネルギーを追加で付与しなくても、部材を貼り合わせる前の光照射のみで組成物(X)の硬化反応が自発的に進行して、硬化を完了させることができる。例えば、遮光性の部材、光透過率が低い部材等を貼り合わせる場合であっても、組成物(X)の未硬化を抑制することができる。組成物(X)の遅延硬化性は、単官能エポキシ化合物((A)成分)及び単官能オキセタン化合物((F)成分)の少なくとも一方、多官能エポキシ化合物((B)成分)、及び光カチオン発生剤((C)成分)、に由来する。
図1Bに、本実施形態の一例である組成物(X)の、光照射後の経過時間に対する貯蔵弾性率(G‘Pa)の変化を、レオメーター(Anton Paar製のMCR−102)で測定した結果を示す。これによると、光の照射前は貯蔵弾性率が低く、組成物(X)は液状である。また光の照射直後から照射終了まで、一次硬化によって貯蔵弾性率が急激に上昇して、組成物(X)は一次硬化状態となり、粘着性が生じる。また光の照射終了時から一定時間は、貯蔵弾性率は一定に保たれる。すなわち、組成物(X)は一次硬化状態のまま維持される。その後、二次硬化によって貯蔵弾性率が急激に上昇し始める。貯蔵弾性率が急激に上昇する時期が二次硬化の硬化開始時間である。また貯蔵弾性率が急激に上昇して、組成物(X)の接着力が1N/cm以上になった状態が二次硬化状態である。すなわち、二次硬化によって組成物(X)の接着力が発現する。その後、貯蔵弾性率が飽和することによって、貯蔵弾性率の上昇が穏やかになり、組成物(X)が完全硬化がする。二次硬化の開始時間から完全硬化までの時間が硬化完了時間である。
組成物(X)が一次硬化状態である時間は、組成物(X)の組成、光の照射強度、及び組成物(X)の温度等によって変化する。すなわち、組成物(X)に光が照射されてから二次硬化が開始するまでの時間を、制御することができる。実際に組成物(X)で複数の部材を貼り合わせることを想定すると、温度25℃における雰囲気下で、50mJ/cm以上の照射量で波長365nmの光が照射された直後、5秒以上60分以内は一次硬化状態であり、その後、12時間以内に硬化することが好ましい。このような性状となるように、組成物(X)の組成などを調整することが好ましい。
組成物(X)が一次硬化状態である時間は、5秒未満であると複数の部材を貼り合せる猶予が少なく現実的でないが、60分を超えると、周辺の温度変化や人為的な要因も含め、複数の部材の位置ずれが生じる可能性が高くなり、また組成物(X)が完全硬化するまでに要する時間が長くなってしまう。また、硬化完了時間は、生産性の観点から、12時間以内が妥当と考えられるが、この時間が短いほどより好ましい。また、光の照射量は、50mJ/cm以上が妥当であるが、これ未満であると光の照射で発生するカチオン種の量が少なく、カチオン重合反応の停止、硬化不良等が生じる恐れがある。また、光の照射量が多いほど、カチオン重合反応が速くなり、組成物(X)が一次硬化状態である時間、及び硬化完了時間が短くなる。カチオン重合反応において、カチオン種の発生量と、光の照射量とは、正の相関関係がある。一方で、カチオン重合反応に光は関与せず、温度によって影響を受ける。このため、低温下ではカチオン重合反応が遅くなり、高温下ではカチオン重合反応が速くなる。この現象を応用し、低温で光照射することにより、組成物(X)が一次硬化状態である時間を長くすることができる。また、貼り合せ後に加熱することで養生時間を短縮できる。本実施形態の組成物(X)が遅延硬化性を示すメカニズムは以下のように推測される。
組成物(X)が光を吸収すると、光カチオン発生剤((C)成分)由来のカチオン種が生成される。このカチオン種が単官能エポキシ化合物((A)成分)及び単官能オキセタン化合物((F)成分)と反応することより、カチオン重合反応が開始される。(A)成分は、分子中に一つのエポキシ基を有することから、カチオン重合反応によって、三次元架橋することはない。(F)成分は、分子中に一つのオキセタン環を有することから、カチオン重合反応によって、三次元架橋することはない。このため、組成物(X)に光を照射してから一定時間の間は、(A)成分及び(F)成分のみが反応して、架橋反応は生じない。つまり、組成物(X)は完全硬化しない。このため、アクリル系化合物のカチオン重合反応によって一次硬化状態になった組成物(X)から、殆ど弾性率が上昇しない。このため、組成物(X)が一次硬化状態のまま維持されているように見える。その後、多官能エポキシ化合物((B)成分)及び多官能オキセタン化合物((H)成分)のカチオン重合反応が進行して、架橋反応が進行することによって、組成物(X)の弾性率が上昇していく。また、カチオン種が(B)成分及び(H)成分と反応することによっても、カチオン重合反応が生じる。(B)成分は、分子中に二つ以上のエポキシ基を有するため、カチオン重合反応によって、三次元架橋構造を形成する。また(H)成分は、分子中に二つ以上のオキセタン環を有するため、カチオン重合反応によって、三次元架橋構造を形成する。このため、組成物(X)に光を照射してから一定時間経過後に、組成物(X)が完全硬化する。
尚、遅延硬化性の挙動を示す組成物は、従来から存在している。しかしながら、従来の遅延硬化性組成物は、ポリエーテル系、チオエーテル系等の遅延硬化剤によって、光カチオン発生剤由来のカチオン種をトラップし、カチオン重合反応の開始時期を遅らせるものである。組成物(X)は、カチオン重合反応の開始時期ではなく、重合反応自体、すなわち成長反応を制御している点で、従来の遅延硬化性組成物とは異なっている。
また組成物(X)は、光が一度照射されると、上記のラジカル重合反応とカチオン重合反応とが開始されると共に、このカチオン重合反応が自発的に進行する。このため、組成物(X)に対する光の照射時間は一度でよく、短くてよく、組成物(X)が硬化するまで光を照射し続けなくてもよい。このため、組成物(X)を硬化させるにあたり、紫外線及び熱、または紫外線及び湿気のような複数の処理を施す必要がない。カチオン重合反応が自発的に進行するメカニズムは以下のように推測される。
組成物(X)に含まれる(A1)成分及び(B1)成分は、分子中にポリエーテル骨格を有する。このため、ポリエーテル骨格とカチオン種とが存在する場合には、ルシャトリエの原理に従い、遊離のカチオン種の濃度の応じて、ポリエーテル骨格とカチオン種との会合・遊離が起きる。すなわち、組成物(X)中にカチオン種が多く存在している場合には、平衡が会合側に傾き、遊離のカチオン種が減少する。一方、遊離のカチオン種が減少した場合には、平衡が遊離側に傾き、遊離のカチオン種が供給される。
一般的に、(C)成分が光を吸収すると、カチオン種が発生される。このカチオン種が(A)成分及び(F)成分と反応することで、カチオン重合反応が生じる。この際、カチオン種の量が多いとカチオン重合反応が早くなり、カチオン種の量が少ないと、カチオン重合反応が遅くなる。
組成物(X)に光を照射した直後には、(C)成分から多量のカチオン種が発生される。これらのカチオン種の一部は、(A)成分及び(F)成分のカチオン重合反応によって消費されるが、残りのカチオン種はポリエーテル骨格と会合する。カチオン重合反応が停止すると、組成物(X)中のカチオン種の量が低下するため、ポリエーテル骨格とカチオン種の遊離・会合の平衡は遊離側に傾き、組成物(X)中に新たなカチオン種が供給される。この新たなカチオン種によって、カチオン重合反応が継続される。その結果、組成物(X)に対する光の照射終了後も、カチオン重合反応が自発的に進行する。
またポリエーテル骨格とカチオン種の遊離・会合は、光の照射とは関係なく進行する。このため、光の照射終了後も、失活によるカチオン濃度低下に伴いカチオンが供給されるため、カチオン重合反応が進行する。その結果、組成物(X)は、光を照射後一定時間は一次硬化状態に保たれ、その後、光の照射や加熱を行わなずとも、硬化が完了する。組成物(X)は、光の照射直後に急激に粘度が上昇して一次硬化状態になるが、その後の粘度上昇はなだらかになり、組成物(X)が一次硬化状態である時間が長くなる。その結果、部材を接着するための時間(可使時間)を長く取ることができ、取り扱い性に優れる。
また組成物(X)は、(A1)成分及び(B1)成分を含むため、組成物(X)の硬化後もポリエーテル骨格部分がブリードアウト(組成物(X)の硬化物表面への染み出し及び浮き出し)を抑制することができる。仮に、ポリエーテル骨格を有するエポキシ化合物以外の化合物を採用した場合には、組成物(X)の硬化物にポリエーテル骨格を有する化合物が組み込まれにくくなり、硬化物の3次元網目構造からポリエーテル骨格を有する化合物が離脱しやすくなる。これにより、ポリエーテル骨格を有する化合物のブリードアウトが生じやすくなる。
また組成物(X)は、多官能オキセタン化合物((H)成分)を含有することによって、組成物(X)の二次硬化の硬化開始時の粘度上昇を急峻にすることができる。そのメカニズムは以下のように推測される。
エポキシ化合物のカチオン重合反応においては、カチオン種の連鎖移動によって、カチオン種が分子内部に移動して、反応が停止することがある。カチオン種の連鎖移動は、エポキシ化合物で起きやすいが、(H)成分では起きにくい。このため組成物(X)が(H)成分を含むことにより、連鎖移動によるカチオン重合反応の停止を抑制することができる。これにより、組成物(X)の粘度上昇を急峻にできる。つまり、組成物(X)が(A1)成分及び(B1)成分と(F)成分とを含むことによって、初期の粘度上昇をゆるやかにし、所定時間を一次硬化状態に保った後に、(H)成分によって急峻な粘度上昇を生じさせる。これにより可使時間を確保しつつ、その後の工程で作業可能な十分な接着強度を得られるまでの時間(硬化完了時間)をより短くすることができる。
上記のような組成物(X)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分、及び(H)成分の配合割合、種類等を変更することによって、所望の硬化特性(組成物(X)が一次硬化状態である時間及び硬化完了時間)を有するように制御することができる。
組成物(X)が一次硬化状態である時間は、組成物(X)の組成、光の照射強度、組成物(X)の温度等によって変化する。例えば光の照射量を多くする、または光照射時の温度を高くすることにより、カチオン重合反応の反応速度を速くすることができる。また光の照射量を少なくする、または光照射時の温度を低くすることにより、カチオン重合反応の反応速度を遅くすることができる。このため、光照射時の照射量、または光照射時の温度を調整することにより、組成物(X)が一次硬化状態である時間及び硬化完了時間を任意に調整することができる。また組成物(X)の粘弾性を測定することによって、組成物(X)が一次硬化状態である時間を所定範囲になるように設計することもできる。
また、組成物(X)が(D)成分および(E)成分からなるラジカル硬化性成分と(A)成分、(B)成分、(C)成分、(F)成分および(H)成分からなるカチオン硬化性成分を含む場合、ラジカル硬化性成分が多すぎるとカチオン硬化で必要となるカチオン種の反応が阻害され、十分な硬化が行われない問題が生じる。このため、ラジカル硬化性成分に対しカチオン硬化性成分の配合量を適宜調整する必要があり、カチオン硬化性成分の方が多くなるようにすることが好ましい。具体的には、カチオン硬化性成分とラジカル硬化性成分の質量比は55:45〜90:10であることが好ましい。また、(E)成分は光照射中のラジカル硬化性成分のラジカル重合でのみ機能するため、必要以上に添加することは好ましくない。(E)成分は(D)成分に対し0.5質量%以上5質量%以下を含むことが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であれば一次硬化にてラジカル重合反応によりラジカル硬化性成分を十分に反応せしめ、かつラジカル硬化性成分の反応を阻害することなく、二次硬化を所定の時間内に行うことが可能となる。この場合、カチオン硬化のみの場合に比べて光カチオン発生剤の含有量は少なくなることから電極腐食は少なくなる。しかしながら、反応過程において強酸は発生することからカップリング剤の添加、ボレート系光カチオン発生剤とカップリング剤との併用は電極腐食対策として非常に有効である。
本実施形態では、(A)成分を全く含まない場合にも(F)単官能オキセタン化合物を含有させることにより、効果的に遅延硬化性を付与することが可能である。これは、単官能エポキシ化合物に比べて、単官能オキセタン化合物の初期の反応速度が遅いことに起因する。これにより、光照射後の組成物(X)の粘度上昇を著しく抑えることが可能となり、光照射後も液体で貼り合わせることができる可使時間を長く保つことが可能となる。また、(A)成分や(B)成分のエポキシ成分がエーテル結合を含む場合には(F)単官能オキセタン化合物と合わせて一次硬化状態を非常に長く保つことが可能となる。さらに(H)多官能オキセタン化合物を併用することで、所定時間後に急激な粘度上昇を発生させ、完全硬化までの時間を短くすることが可能となる。つまり、(F)単官能オキセタン化合物と(H)多官能オキセタン化合物を組み合わせることで、効果的な遅延硬化性を付与することが可能となる。
また、(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含有しない場合には、一次硬化状態は形状保持性を有しないが、液体状を保ち、塗布部材に塗布樹脂の形状を保護するスペーサなどを付加することで、貼り合わせ時に一定の厚みを持たせて貼り合わせ、(H)多官能オキセタン化合物による急激な粘度上昇にてより短時間で完全硬化に至る遅延硬化性光硬化性樹脂組成物を得ることも可能である。しかし、この場合には貼り合わせ時には全くの液体状態であるため、貼り合わせ状態を保持するための治具や接着力が発現するまでの時間を要することになる。
しかしながら、(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含有する場合は、前述のように一次硬化状態を形成できるため、貼り合わせ時に形状保持と粘着性を有することが可能となり、完全硬化(二次硬化)までに一定以上の力が加わらなければ貼り合わせを維持することが可能であり、光ラジカル発生剤とアクリル系化合物にて一次硬化状態をつくり、粘着状態を保持したまま(F)単官能オキセタン化合物もしくは(A)単官能エポキシ化合物で二次硬化時間を遅延させ、(H)多官能オキセタン化合物にて急激な二次硬化を起こさせることにより完全硬化までの時間を制御することが可能となる。よって、(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含み、(F)単官能オキセタン化合物と(H)多官能オキセタン化合物を含む組成物(X)は貼合しやすく、リワークも可能で完全硬化までの時間を制御できるため、生産性の高いものである。
3.接着剤
組成物(X)は接着剤として使用することができる。特に、スマートフォンや携帯電話などに使用される光学系部材を接着する際の接着剤として使用することができる。組成物(X)は適宜の溶媒で希釈して接着剤を調製してもよい。また光学系部材ではないものを接着するときには組成物(X)の着色についてはそれほど考慮する必要はない。(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含み、(F)単官能オキセタン化合物と(H)多官能オキセタン化合物を含む接着剤においては、一度の光照射にて形状保持が可能で粘着性が発現し、その後、そのまま硬化するため、暗部や対候性処理を施して硬化のための光が届かない場所の接着などに非常に有用である。また光で硬化するため、温度をかけることができない部材への適応は特に有効である。
4.光硬化性樹脂組成物の態様
本実施形態の光硬化性樹脂組成物は、以下の態様を含む。
本実施形態に係る第1の光硬化性樹脂組成物は、光で硬化する光硬化性樹脂組成物であって、(B)多官能エポキシ化合物を10質量部以上95質量部以下、(F)単官能オキセタン化合物を5質量部以上90質量部以下で含有する。
本実施形態に係る第2の光硬化性樹脂組成物は、第1の態様において、さらに(H)多官能オキセタン化合物を含有し、前記(B)多官能エポキシ化合物と前記(H)多官能オキセタン化合物の各含有量の合計が10質量部以上95質量部以下である。
本実施形態に係る第3の光硬化性樹脂組成物は、第2の態様において、前記(H)多官能オキセタン化合物の含有量が1質量部以上30質量部以下である。
本実施形態に係る第4の光硬化性樹脂組成物は、第1乃至3のいずれか一つの態様において、前記(B)多官能エポキシ化合物が2官能エポキシ樹脂を含有する。
本実施形態に係る第5の光硬化性樹脂組成物は、第1乃至4のいずれか一つの態様において、さらに(D)アクリル系化合物を含有する。
本実施形態に係る第6の光硬化性樹脂組成物は、第5の態様において、さらに(A)単官能エポキシ化合物を含有し、前記(A)単官能エポキシ化合物と前記(B)多官能エポキシ化合物の各含有量の合計と、前記(D)アクリル系化合物の含有量との質量比が、5:95〜90:10である。
本実施形態に係る第7の光硬化性樹脂組成物は、光で硬化する光硬化性樹脂組成物であって、(A)単官能エポキシ化合物及び(F)単官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、(B)多官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤と、(I)カップリング剤とを含有し、前記(I)カップリング剤は、(i)直鎖状炭素結合の炭素数が2以下の有機官能基を有するシランカップリング剤を含有する。
本実施形態に係る第8の光硬化性樹脂組成物は、第7の態様において、前記(i)直鎖状炭素結合の炭素数が2以下の有機官能基を有するシランカップリング剤は、上記構造式(i−1)及び(i−2)で示されるシランカップリング剤の少なくとも1つを含有する。
本実施形態に係る第9の光硬化性樹脂組成物は、第7又は8の態様において、前記(i)直鎖状炭素結合の炭素数が2以下の有機官能基を有するシランカップリング剤の含有量が全量100質量部に対して0.01質量部以上である。
本実施形態に係る第10の光硬化性樹脂組成物は、第7乃至9のいずれか一つの態様において、前記(C)光カチオン発生剤が、ボレート塩型の光カチオン発生剤を含有する。
本実施形態に係る第11の光硬化性樹脂組成物は、光で硬化する光硬化性樹脂組成物であって、(A)単官能エポキシ化合物及び(F)単官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、(B)多官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤とを含有し、前記(B)多官能エポキシ化合物は、(B3)水素添加反応で処理された多官能エポキシ化合物を含有する。
本実施形態に係る第12の光硬化性樹脂組成物は、光で硬化する光硬化性樹脂組成物であって、(A)単官能エポキシ化合物及び(F)単官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、(B)多官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤と、(G)エラストマーとを含有し、前記(G)エラストマーは、(G2)水素添加反応で処理されたエラストマーを含有する。
本実施形態に係る第13の光硬化性樹脂組成物は、第12の態様において、前記(B)多官能エポキシ化合物は、(B3)水素添加反応で処理された多官能エポキシ化合物を含有する。
本実施形態に係る第14の光硬化性樹脂組成物は、第11乃至13のいずれか一つの態様において、さらに(H)多官能オキセタン化合物を含有する。
本実施形態に係る第15の光硬化性樹脂組成物は、第11乃至14のいずれか一つの態様において、さらに、前記(A)単官能エポキシ化合物、前記(F)単官能オキセタン化合物及び前記(H)多官能オキセタン化合物の少なくとも一つが、水素添加反応により処理された化合物を含有する。
本実施形態に係る第16の光硬化性樹脂組成物は、第11乃至15のいずれか一つの態様において、さらに(D)アクリル系化合物を含有する。
本実施形態に係る第17の光硬化性樹脂組成物は、第16の態様において、前記(A)単官能エポキシ化合物と前記(B)多官能エポキシ化合物の各含有量の合計と、前記(D)アクリル系化合物の含有量との質量比が、5:95〜90:10である。
本実施形態に係る第18の光硬化性樹脂組成物は、第11乃至17のいずれか一つの態様において、水素添加反応で処理されないで二重結合を有さない化合物の含有量が50質量%以上かつ、水素添加反応で処理された化合物の含有量が20質量%以上である。
5.積層体及びその製造方法の実施形態1
5−1.本実施形態の概要
本実施形態の積層体は、上記組成物(X)を含む接着剤の硬化物と、第一部材と、第二部材と、を含んでいる。前記第一部材及び前記第二部材が、それぞれ前記硬化物で固着されている。
本実施形態の積層体の製造方法は、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方の上に、前記接着剤からなる未硬化の塗膜を配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記未硬化の塗膜に活性エネルギー線(紫外線等)を照射する照射工程と、前記照射工程の後に、前記未硬化の塗膜を介して、前記第一部材及び前記第二部材を位置決めする位置決め工程と、前記位置決め工程の後に、前記未硬化の塗膜が完全硬化することで、前記第一部材と前記第二部材とをそれぞれ固着する硬化工程とを含んでいる。
また前記活性エネルギー線の照射によって、前記照射工程では、前記(D)成分及び前記(E)成分のラジカル重合反応によって、前記未硬化の塗膜が一次硬化状態になることが好ましい。また前記位置決め工程では、前記未硬化の塗膜が一次硬化状態に維持されることが好ましい。また前記硬化工程では、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び(F)成分のカチオン重合反応によって、前記未硬化の塗膜が完全に硬化することが好ましい。
本実施形態の積層体は、以下の方法によって製造されることが好ましい。
以下、図6に示す積層体1を製造する方法を、図2A〜図5を参照しながら説明する。この積層体1は、第一部材10と、第二部材11と、組成物(X)を含む接着剤の硬化物20とを含む。
5−2.接着剤の説明
本実施形態の接着剤は、活性エネルギー線の照射前は液状であり、部材の上に接着剤の塗膜を配置する際には、接着剤が部材の形状に追随するため、部材と塗膜との間に空気が侵入することを抑制することができる。
また接着剤の塗膜は、活性エネルギー線の照射中に貯蔵弾性率が損失弾性率よりも高くなり(一次硬化)、流動性が低下するため、接着剤の塗膜の形状を保持しやすく、部材を貼り合わせる際の塗膜の変形を抑制できる。これにより、接着剤のはみ出しを抑制することができる。また接着剤の塗膜を任意の形状にできるため、接着剤を複雑な形状を有する部材の貼り付けに適用できる。
また接着剤は、活性エネルギー線を照射してから所定時間経過後に硬化が開始され(二次硬化)、その後硬化が完了(完全硬化)するため、接着剤の塗膜を介して複数の部材同士を貼り合わせた後に、複数の部材同士が固着される。その結果、部材の光透過率に影響されることなく、複数の部材同士を固着でき、接着剤の未硬化による樹脂漏れを抑制できる。このため、樹脂漏れによる他の部品の汚染を抑制することができる。
また接着剤は、一度の活性エネルギー線の照射によって、上記の一次硬化、二次硬化、及び完全硬化を進めることができる。このため、接着剤を硬化させるにあたり、紫外線及び熱、または紫外線及び湿気のような複数の処理を施す必要がない。
5−3.配置工程
まず、第一部材10及び第二部材11の少なくとも一方の上に、接着剤からなる未硬化の塗膜12を配置する。すなわち塗膜12は、第一部材10の上に設けてもよく、第二部材11の上に設けてもよく、これら両方の上に設けてもよい。塗膜12は、第一部材10及び第二部材11の少なくとも一方の上に、接着剤を塗布することにより形成できる。接着剤の塗布量は、好ましくは5〜50mg/cmである。この場合、複数の部材を接着しやすく、且つ塗膜を十分に硬化させることができる。塗膜の形状は、特に限定されず、矩形であってもよく、線状であってもよい。図2A及び図2Bでは、第一部材10の上に型枠13を配置し、この型枠13内に接着剤を供給することにより、未硬化の塗膜12を形成している。
5−4.照射工程
配置工程の後、未硬化の塗膜12に活性エネルギー線を照射する。これにより、塗膜12が一次硬化状態になる。一次硬化状態の塗膜12は粘着性を有する。活性エネルギー線の光源14は、特に限定されないが、例えば紫外線ランプを使用することができる。活性エネルギー線の照射量は、好ましくは50〜30000mJ/cmの範囲内である。この場合、カチオン重合反応が途中で停止して、接着剤が十分に硬化しないことを抑制することができる。活性エネルギー線の照射時間は、温度、塗膜の厚み、照射量等の条件に応じて、適宜調整することが好ましい。図3では、型枠13内に配置された未硬化の塗膜12に対して、光源14から活性エネルギー線が照射されている。光源14は、図3に示す矢印の方向に移動しながら、塗膜12全体に活性エネルギー線を照射している。これにより、シート状の塗膜12が形成される。シート状の塗膜12であれば、ボタン穴、カメラ穴等が形成されたカバーパネル、あるいはフリーフォームと呼ばれる単純四画の形状ではない基材同士の接着に適用することができる。塗膜12が一次硬化状態になった後には、図4A及び図4Bに示すように、型枠13を取り外す。エラストマーなどにより粘度を調整し、塗布時の形状を一定時間保持できる場合は、塗布後すぐに活性エネルギーを照射することで、貼り合わせ時の厚みを制御することが可能である。
5−5.位置決め工程
照射工程の後、未硬化の塗膜12を介して、第一部材10と第二部材11とを貼り合わせる。この際、塗膜12は一次硬化状態に保たれているため、塗膜12の形状を保持しやすい。このため、第一部材10及び第二部材11の搬送時に、塗膜12が変形することを抑制することができる。また第一部材10及び第二部材11を貼り合わせる際に、接着剤がはみ出すことを抑制することができる。また第一部材10と第二部材11とを精度良く貼り付けることもできる。図5では、塗膜12を介して貼り合わせた第一部材10及び第二部材11が、真空チャンバー15内に配置されている。この状態で、真空チャンバー15内を減圧することによって、第一部材10及び第二部材11を密着させている。この場合、第一部材10と第二部材11との間に空気が侵入して、接着性が低下することを抑制することができる。第一部材10及び第二部材11の位置決めが終了してから、真空チャンバー15から第一部材10及び第二部材11を取り出す。
5−6.硬化工程
位置決め工程の後、塗膜12が完全硬化することで、第一部材10と第二部材11とが固着される。詳細には、一次硬化状態の塗膜12の粘度が急峻に上昇して硬化することにより、接着剤の硬化物20が形成され、この硬化物20によって第一部材10と第二部材11とが固着される。硬化工程では、紫外線の照射、熱、湿気等による追加の処理を行わずとも、塗膜12の硬化が自発的に進行する。すなわち、活性エネルギー線の照射は、位置決め工程以前に一度行うだけでよい。それ故、第一部材10及び第二部材11の形状、光透過率等に影響されることなく、第一部材10と第二部材11とを固着することができる。また樹脂漏れによる他の部品の汚染を抑制することができる。
上記配置工程、照射工程、位置決め工程、及び硬化工程によって、図6に示す積層体1が得られる。この積層体1は、第一部材10と、第二部材11と、接着剤の硬化物20とを含み、硬化物20によって第一部材10及び第二部材11が固着されている。
5−7.積層体の製造方法の具体例
図10に示す積層体1を製造する方法を、図7A〜図9を参照しながら説明する。この積層体1は、第一部材としてのカバーパネル16と、第二部材としての液晶パネル17と、組成物(X)を含む接着剤の硬化物30と、を含む。
まず図7Aに示すように、カバーパネル16の上に接着剤の塗膜18を配置する(配置工程)。詳細には、カバーパネル16の上に、ディスペンサー21によって接着剤を塗布することによって、塗膜18を形成する。図7Bに示すようにカバーパネル16は、その縁部に加飾印刷部160が形成され、この加飾印刷部160によって段差部161が構成されている。このため、塗膜18は段差部161上に設けられている。塗布時の接着剤は液状であるため、段差部161と塗膜18との間に、空気が侵入することを抑制することができる。
次に図8に示すように、塗膜18に活性エネルギー線を照射する(照射工程)。詳細には、カバーパネル16上の塗膜18に、光源22から活性エネルギー線を照射する。これにより、塗膜18が一次状態となり、粘着性を発現する。
次に図9に示すように、塗膜18を介して、カバーパネル16と液晶パネル17とを貼り合わせる(位置決め工程)。詳細には、図8に示すカバーパネル16を上下反転させた状態で、塗膜18を液晶パネル17とカバーパネル16とで挟むようにして、ローラー23で押しつけるようにして、カバーパネル16と液晶パネル17とを貼り合わせる。位置決め工程において、塗膜18は一次硬化状態に保たれているため、カバーパネル16の搬送時に塗膜18が変形することを抑制することができる。またカバーパネル16と液晶パネル17とを貼り合わせる際に、接着剤がはみ出すことを抑制することができる。
次に、塗膜18が完全硬化することで、カバーパネル16と液晶パネル17とを固着させる(硬化工程)。詳細には、一次硬化状態の塗膜18の粘度が急峻に上昇して硬化することにより、接着物の硬化物30が形成され、この硬化物30によってカバーパネル16と液晶パネル17とが固着される。上記の過程により、図10に示す積層体1が形成される。
積層体の実施例として、カバーパネルと液晶パネルとの積層体を例示したが、これに限られない。例えば、接着剤を液晶モジュールと筐体との貼り合わせに用いてもよい。液晶モジュール及び筐体は使用者が直接触り、視認するものであるため、液晶モジュールと筐体との貼り合わせの位置精度は、商品価値に影響を与える。
液体の接着剤で筐体と液晶モジュールとを貼り合わせる場合には、接着剤が任意に薄くなる、筐体と液晶モジュールとの高さ位置を均一に保つことができない、という問題がある。このため、従来は筐体の周囲に突起を設けることで、液晶モジュールと筐体の高さを均一にして、商品デザインを保っていた。これに対して本実施形態の接着剤は、塗布後に活性エネルギー線を照射することで形状を保持することができるため、接着剤の厚みを均一に保つことができ、筐体に余分な突起を形成することなく、商品デザインを保つことができる。すなわち、筐体の貼り合わせ部分に接着剤を塗布して線状の塗膜を形成し、上記と同様の照射工程によって塗膜を一次硬化状態にする。一次硬化状態のまま接着剤の形状が保持されるため、筐体に後液晶モジュールを貼り合わせても、接着剤の厚みを均一にすることができる。このため、接着剤が完全硬化することによって、筐体と液晶モジュールとを均一な高さで固着することができる。貼り合わせられる部材は、段差を有していてもよく、曲面を有していてもよい。また、筐体を補強するフレームと筐体との接着、液晶を保護するフレームと液晶との接着に、本実施形態の接着剤を適用してもよい。
6.積層体及びその製造方法の実施形態2
6−1.本実施形態の概要
本実施形態の積層体は、第一部材及び第二部材が接着部により接着された積層体である。前記接着部は第1接着剤の硬化物及び第2接着剤の硬化物を備える。前記第1接着剤は枠状に供給されるダム剤である。前記第2接着剤は前記枠状に供給された第1接着剤の内側に供給されるフィル剤である。前記第1接着剤及び前記第2接着剤は、活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までに所定の時間を有する遅延硬化性の光カチオン樹脂組成物を含んでいる。前記第1接着剤の活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間は、前記第2接着剤の活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間よりも短い。前記第1接着剤の硬化物及び前記第2接着剤の硬化物は、前記第一部材及び前記第二部材を貼り合わせる前に照射された活性エネルギー線により硬化したものである。
本実施形態の積層体の製造方法は、第一部材及び第二部材が接着部により接着された積層体の製造方法である。前記接着部は第1接着剤の硬化物及び第2接着剤の硬化物を備える。前記第1接着剤は枠状に供給されるダム剤である。前記第2接着剤は前記枠状に供給された第1接着剤の内側に供給されるフィル剤である。前記第1接着剤及び前記第2接着剤は、活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までに所定の時間を有する遅延硬化性の光カチオン樹脂組成物を含んでいる。前記第一部材と前記第二部材の少なくとも一方に、前記第1接着剤及び前記第2接着剤を供給した後、前記第1接着剤及び前記第2接着剤に活性エネルギー線を照射する。この後、前記第一部材と前記第二部材とを貼り合わせる。前記第1接着剤及び前記第2接着剤は前記活性エネルギー線の照射により硬化する。
また前記第1接着剤及び前記第2接着剤は前記活性エネルギー線の照射に加え昇温により硬化することが好ましい。
6−2.積層体の説明
図14に本実施形態の積層体200を示す。積層体200は第一部材211と第二部材212と接着部213とを備えて形成されている。積層体200は平板状の第一部材211と平板状の第二部材212と平板状の接着部213とが層状に重なって形成されている。積層体200は、例えば、スマートフォンや携帯電話などの携帯用電子端末の表示装置として形成されており、この場合、第一部材211は表示板201として形成され、第二部材212は透明板202として形成されている。
表示板201は文字や画像などを表示する機能を有し、バックライト214を備えた液晶パネルディスプレイや有機ELパネルディスプレイなどが用いられている。透明板202は表示板201をカバーして保護する機能を有し、ポリカーボネートやアクリル樹脂製などのプラスチック板やガラス板などが用いられている。積層体200は筐体220と組み立てられて携帯用電子端末230が形成される。この場合、表示板201は筐体220内の空間に収容され、透明板202は筐体220の開口を塞ぐようにして積層体200と筐体220とが組み立てられる。
第一部材211と第二部材212とは紫外線等の活性エネルギー線を透過しない。ここで「活性エネルギー線を透過しない」とは、組成物(X)を硬化させることが可能な活性エネルギー線の透過率が0〜5%であることを意味する。また第二部材212は可視光領域の光透過率が85〜100%である透明部122を備えており、これにより、第一部材211で表示された文字や画像などが透明部122を透して視認しやすい。また第二部材212は不透明部123を備えている。不透明部123は透明部122以外の部分であって、例えば、第二部材212の周端部に沿って設けられ、枠状に形成されている。不透明部123は可視光領域の光透過率が85%未満であり、好ましくは3%以下であり、不透明部123を透して第一部材211に表示された文字等や筐体220の内部を視認することはほとんどできない。不透明部123は加飾印刷層により形成することが可能である。
接着部213は第一部材211と第二部材212との間に設けられ、第一部材211と第二部材212とを接着して固定している。第一部材211と第二部材212は接着部213により互いに位置ずれしないように形成され、また互いに容易に剥離しないように形成されている。接着部213は第1接着剤131の硬化物131aと第2接着剤132の硬化物132aとで形成されている。
6−3.接着剤の説明
第1接着剤131と第2接着剤132とは、遅延硬化性の組成物(X)を含んでいる。組成物(X)は、紫外線等の活性エネルギー線の照射直後には液状であり、照射後所定時間経過後に硬化が完了(終了)するものが用いられる。第1接着剤131に含まれている組成物(X)と、第2接着剤132に含まれている組成物(X)とは、硬化開始時間が異なっている。従って、第1接着剤131と第2接着剤132に同時に活性エネルギー線を照射しても、第1接着剤131の活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間と、第2接着剤132の活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間とが異なる。例えば、第1接着剤131の活性エネルギー線の照射直後からの硬化開始までの時間は、第2接着剤132の活性エネルギー線の照射直後からの硬化開始までの時間よりも短く、前者は後者の半分以下とすることができる。第1接着剤131及び第2接着剤132において、活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間をゲル化時間という。また第1接着剤131及び第2接着剤132において、活性エネルギー線の照射直後からの硬化完了(硬化終了)までの時間を硬化完了時間という。
第1接着剤131と第2接着剤132に用いられる組成物(X)としては、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、(B)1分子中に1個のエポキシ基を有する単官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤とを含有している。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、(H)多官能オキセタン化合物又は(F)単官能オキセタン化合物、あるいは(H)多官能オキセタン化合物及び(F)単官能オキセタン化合物の両方を含んでいてもよい。また(A)成分、(B)成分、(C)成分、(F)成分、(H)成分に加えて、(G)エラストマーを含んでいてもよい。このような組成物(X)は遅延硬化性を有し、遅延硬化性の接着剤として使用可能である。なお、本実施形態の組成物(X)は、遅延硬化性を損なわない範囲において、必要に応じて、各種の樹脂、添加剤等の任意の成分が配合されていてもよい。
6−4.積層体の製造方法
図15A〜図15Gに積層体200の製造方法を示す。この製造方法では、第1接着剤131はダム剤として用いており、第2接着剤132はフィル剤として用いている。ダム剤は第一部材211又は第二部材212に枠状に供給され、枠状のダム剤の外側にフィル剤が漏れにくくするためのものであり、また第一部材211と第二部材212を枠状に接着するものである。フィル剤は枠状に供給されたダム材の内側において第一部材211と第二部材212の間の隙間を埋めて封止し、第一部材211と第二部材212をほぼ全面にわたって接着するものである。
まず、図15Aに示すように、載置台600に載置された第一部材211の上面に液状の未硬化の第1接着剤131を供給する。第1接着剤131の供給はディスペンサー601などの適宜の手段で行われる。また第1接着剤131は第一部材211の周端部に沿って線状に供給され、最終的に平面視で枠状のダム(堰)に形成される。
次に、図15Bに示すように、枠状に供給された第1接着剤131の内側において、第一部材211の上面に液状の未硬化の第2接着剤132が供給される。このとき、第一部材211の上面に供給された第2接着剤132が枠状の第1接着剤131で堰き止められて漏れ出さないようになっている。第2接着剤132の供給はディスペンサー602などの適宜の手段で行われ、第一部材211の上面全面に複数の線状の第2接着剤132が供給される。
次に、図15Cに示すように、第一部材211の上面に供給された第1接着剤131と第2接着剤132の両方に、ほぼ同時に、活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線の照射は紫外線発生機603などの適宜の手段が用いられる。第1接着剤131と第2接着剤132は遅延硬化性を有するため、活性エネルギー線(紫外線等)700の照射直後では硬化(ゲル化)が急激に進行せず、ほぼ液状を保った状態である。
次に、第一部材211と第二部材212のアライメント(位置合わせ)が行われる。すなわち、載置台600の上方で供給機604を回転するなどして行われる。これにより、載置台600に載置されている第一部材211と、供給機604に保持されている第二部材212との位置合わせが行われる。
次に、第一部材211と第二部材212の真空貼り合わせが行われる。この場合、図15Dに示すように、載置台600に載置された第一部材211と供給機508に保持された第二部材212とが、第1接着剤131と第2接着剤132を介して重ね合わされた後、真空チャンバー701内に設置される。そして、真空チャンバー701内を減圧にすることにより、第一部材211と第二部材212とを密着させて重ね合わせる。そして、第1接着剤131が増粘し、活性エネルギー線照射前より2倍以上の粘度となる。この真空貼り合わせにより、第1接着剤131はほぼ完全に硬化して硬化物131aが形成され、この硬化物131aで第一部材211と第二部材212とが接着される。このとき、第1接着剤131の硬化が進みやすい温度にまで昇温して、その硬化を促進しても良い。また第2接着剤132は枠状の硬化物131aの内側で略均一に広がるが、完全には硬化せず、液状又は粘度の低い状態である。従って、真空貼り合わせ直後においては、第一部材211と第二部材212は硬化物131aで位置ずれが抑えられる程度の仮固定された状態である。なお、未硬化の第1接着剤131及び未硬化の第2接着剤132はともに液状であるため、第一部材211と第二部材212の貼り合わせ面に凹凸があっても、隙間なく第一部材211と第二部材212の間に充填されやすい。
次に、図15Eに示すように、第一部材211と第二部材212とを真空貼り合わせしたものを作業者606が品質検査を行う。この品質検査により、硬化物131aや第2接着剤132に異物や気泡が混入されているなどの不良が検査される。良品と判断されたものは養生され、この養生により第2接着剤132が完全に硬化して硬化物132aが形成される。そして、硬化物131aと硬化物132aにより接着部213が形成され、第一部材211と第二部材212とが接着部213で本固定され、図15Fに示すように、積層体200が形成される。また、養生の際に、第2接着剤132の硬化が進みやすい温度にまで昇温して、その硬化を促進しても良い。一方、不良品と判断されたものは、図15Gに示すように、硬化物131aによる仮固定が外されて第一部材211と第二部材212とに分離される。そして、分離された第一部材211と第二部材212は再利用(リワーク)される。
本実施形態の積層体200の製造方法では、第1接着剤131と第2接着剤132とが遅延硬化性を有するため、活性エネルギー線を照射直後から所定の時間は硬化せず、可使時間が長い。従って、第一部材211に供給した第1接着剤131と第2接着剤132に活性エネルギー線を照射した後に、第一部材211と第二部材212とを貼り合わせ、その後、貼り合わせ前に照射した活性エネルギー線で第1接着剤131と第2接着剤132を硬化させることができる。よって、第一部材211と第二部材212とを貼り合わせた後に活性エネルギー線を照射する必要がほとんどなく、第一部材211と第二部材212とが活性エネルギー線を透過しにくい場合であっても貼り合わせ可能となり、また第一部材211と第二部材212とを貼り合わせた後に位置合わせが容易に行なえて、生産性を向上させることができる。
また第1接着剤131と第2接着剤132とはゲル化時間が異なるため、ゲル化時間が長い第2接着剤132は硬化しないで、ゲル化時間が短い第1接着剤131のみを硬化させることにより、第一部材211と第二部材212とを仮固定することができ、第一部材211と第二部材212との位置ずれが生じにくい状態で、品質検査などの後工程を行うことができる。しかも、品質検査で不良品が発見された場合は、仮固定のみを外すだけで第一部材211と第二部材212とを分離することができ、第一部材211と第二部材212の再利用を容易に行うことができる。
なお、上記では第一部材11に第1接着剤131と第2接着剤132を供給する場合を説明したが、これに限らず、第二部材212に第1接着剤131と第2接着剤132を供給するようにしてもよい。また、第1の接着剤が(D)アクリル樹脂を含む場合には活性エネルギーの照射により、粘着状態となることから、真空貼り合わせ直後の位置ずれはかなり抑えることが可能となる。さらに第2の接着剤も(D)アクリル樹脂を含む場合には活性エネルギーの照射により、粘着状態となることから、真空貼り合わせ直後の位置ずれはほぼ生じない。組成物(X)が(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含有する場合は、前述のように一次硬化状態を形成できるため、貼り合わせ時に形状保持と粘着性を有することが可能となり、完全硬化(二次硬化)までに一定以上の力が加わらなければ貼り合わせを維持することが可能であり、(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物にて一次硬化状態をつくり、粘着状態を保持したまま(F)単官能オキセタン化合物もしくは(A)単官能エポキシ化合物で二次硬化時間を遅延させ、(H)多官能オキセタン化合物にて急激な二次硬化を起こさせることにより完全硬化までの時間を制御することが可能となる。よって、(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含み、(F)単官能オキセタン化合物と(H)多官能オキセタン化合物を含む組成物(X)は貼合しやすく、リワークも可能で生産性の高いものである。さらに第1の接着剤に(D)アクリル樹脂を含む組成物(X)を適応した場合には、エポキシ成分とアクリル成分を含むため、第2の接着剤がエポキシ系でもアクリル系でも界面においてなじみやすく好適である。第1の接着剤と第2の接着剤は同質のものを選択することが界面での反応阻害などを生じにくいため好ましい。
6−5.従来の積層体の製造方法の説明
従来、液晶パネルなどの表示デバイスと、透明なカバーとを貼りあわせる積層体の製造装置が提案されている(例えば、特開2015−193004号公報参照)。図16は、積層体の製造装置の一例を示している。この製造装置500は、第1ステージ501、第2ステージ502、第3ステージ503、第4ステージ504を備えている。第1ステージ501、第2ステージ502、第3ステージ503、第4ステージ504は軸部505の周りを回転するように設けられている。
第1ステージ501は投入ステージである。第2ステージ502はアライメント及びダム形成ステージである。第3ステージ503はフィル剤供給ステージである。第4ステージ504は真空貼り合わせステージである。
第1ステージ501では製造装置500に貼り合わせる部材(ワーク)が作業者506等により投入される。例えば、表示デバイスなどの第一部材が載置台に載置され、カバーなどの第二部材が供給機に保持される。
第2ステージ502では第1ステージ501で投入された部材のアライメント(位置合わせ)とダムの形成が行われる。アライメントは、例えば、図17Aに示すように、載置台507の上方で供給機508を回転するなどして行われる。これにより、載置台507に載置された第一部材41と、供給機508に保持された第二部材42との位置合わせが行われる。次に、ダム剤が供給される。ダム剤は、例えば、液状の紫外線硬化性樹脂組成物であって、図17Bに示すように、ダム剤43がダム剤供給機509から載置台507上の第一部材41の貼り合わせ面(上面)に枠状に供給される。次に、ダム剤43が半硬化される。この場合、図17Cに示すように、第一部材41に供給されたダム剤43に紫外線照射機510から紫外線511が照射される。これにより、ダム剤43は後述のフィル剤44が漏れ出さない程度に、半硬化状態となる。
第3ステージ503では第2ステージ502後にフィル剤44が供給される。フィル剤44は、例えば、液状の紫外線硬化性樹脂組成物であって、図17Dに示すように、半硬化状態の枠状のダム剤43の内側において、フィル剤44がフィル剤供給機512から載置台507上の第一部材1の貼り合わせ面(上面)に供給される。
第4ステージ504では第3ステージ503後に真空貼り合わせが行われる。この場合、載置台507に載置された第一部材41と供給機508に保持された第二部材42とが、ダム剤43及びフィル剤44を介して重ね合わされた後、図17Eに示すように、真空チャンバー513内に設置される。そして、真空チャンバー513内を減圧した状態で、第一部材41と第二部材42とを密着させて重ね合わせる。
この後、第一部材41と第二部材42とを重ね合わせたものを作業者506が製造装置500から取り出し、品質検査を行う。そして、図17Fに示すように、品質検査後に第一部材41と第二部材42とを重ね合わせたものに紫外線照射機514から紫外線515を照射する。これにより、ダム剤43とフィル剤44とが全面的に完全硬化し、第一部材41と第二部材42とが接着されて貼り合わせられる。
上記の従来例では、第一部材41と第二部材42とを重ね合わせた後、第一部材41又は第二部材42を透過して紫外線をダム剤43とフィル剤44に照射する。このため、第一部材41又は第二部材42が紫外線を透過しにくい場合、例えば、第二部材42が紫外線吸収剤入りの樹脂カバーや黒枠印刷部を設けている場合では、第二部材42を透過して単位時間あたりに十分な量の紫外線を照射することが難しくなり、ダム剤43とフィル剤44の硬化不足が生じたり、ダム剤43とフィル剤44の硬化に長時間を要したりすることがあり、生産性が低くなるという問題があった。
一方、本実施形態は、上記6−1〜4のようにして、積層体の製造における生産性を向上させることができる。
7.表示装置の実施形態
7−1.本実施形態の概要
本実施形態の表示装置は、バックライトと液晶パネルとカバーとを備える。前記液晶パネルと前記カバーが接着部により接着されている。前記接着部は、前記バックライトからの光を通過させる光通過部と、前記光通過部よりも光が通過しにくい光抑制部とを備える。前記光抑制部は前記光通過部の側面を覆って設けられている。
本実施形態の表示装置において、前記光抑制部は、全光透過率が3%以下であることが好ましい。
本実施形態の表示装置において、前記光抑制部は、着色されていることが好ましい。
7−2.表示装置の説明
図18に本実施形態の表示装置830を示す。表示装置830は、例えば、スマートフォンや携帯電話などの携帯用電子端末に好適に使用される。表示装置830は、筐体820と、バックライト814と、液晶パネル811と、カバー812と、接着部813とを備えて形成されている。
筐体820は、底部821と周壁部822とを備えて断面略コ字状に形成されている。底部821と周壁部822とで囲まれる空間は収容部823として形成されており、収容部823は底部821と反対側に開口している。
バックライト814は平板状に形成されており、例えば、LED(light emitting diode)を備えて発光可能に形成されている。バックライト814は表示装置830の光源としての機能を有する。
液晶パネル811は平板状に形成されており、例えば、液晶層、偏光板、透明電極、カラーフィルタ、配向膜などを備えて形成されている。液晶パネル811は文字や画像などを表示する機能を有する。
カバー812は平板状に形成されており、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂製などのプラスチック板やガラス板などで形成されている。カバー812はほぼ全体が光通過可能な透明部922で形成されるが、カバー812の周端部の下面には不透明部923が形成されている。不透明部923は、カバー812の周端部の全周に沿って設けられ、枠状に形成されている。透明部922は可視光領域の光透過率が85〜100%であることが好ましい。不透明部923は可視光領域の光透過率が85%未満であり、好ましくは、3%以下である。この場合、不透明部923を透して液晶パネル811に表示された文字等や筐体820の内部を視認することはほとんどできない。不透明部923は加飾印刷層により形成することが可能である。
接着部813は平板状に形成されており、液晶パネル811とカバー812との間に設けられ、液晶パネル811とカバー812とを接着して固定している。液晶パネル811とカバー812は接着部813により互いに位置ずれしないように形成され、また互いに容易に剥離しないように形成されている。接着部813は光通過部932aと光抑制部931aとで形成されている。光通過部932aは光抑制部931aよりも透明性が高くて光が通過しやすい部分であり、可視光領域の光透過率が85〜100%であることが好ましい。光抑制部931aは光通過部932aよりも透明性が低くて光が通過しにくい部分であり、可視光領域の光透過率が85%未満であり、好ましくは、3%以下である。光抑制部931aは、接着部813の周端部の全周に沿って設けられ、枠状に形成されている。従って、光抑制部931aは、接着部813の全周にわたって、光通過部932aの側面(端面)を覆って設けられている。これにより、接着部813の周端面が光抑制部931aで形成されて、光が接着部813にその周端面から進入することがほとんど無くなる。光抑制部931aは、例えば、着色することにより、光の通過を低減することができる。つまり、バックライト814で発生した光が液晶パネル811を迂回して接着部813の周端部まで到達しない。光抑制部931aを着色するにあたっては、例えば、黒色の顔料や染料などの着色材を光抑制部931aに含有させることができる。前記着色材は可視光域の波長を選択的に遮蔽し、400nm以下の紫外光や700nm以上の赤外光を透過するものであってもよい。この場合は、山田化学工業(株)製の波長選択性光吸収材料を用いることが好ましい。より具体的には、銅ポルフィリン錯体、コバルトポルフィリン錯体、酸化鉄、酸化銅、金属フタロシアニン、アゾ色素などのうち所望の波長を吸収する材料を適宜組み合わせて使用すればよい。さらに、白色の酸化チタン、酸化亜鉛などを含有させることにより、接着部83の周端部に光が到達しないように光抑制部931aが光を反射するように構成されてもよい。
上記バックライト814は、筐体820の収容部823に収容され、底部821の表面(筐体820の開口の方に向く面)に設置されている。また液晶パネル811は筐体820の収容部823に収容され、バックライト814の表面(筐体820の開口の方に向く面)に設置されている。さらに接着部813は、筐体820の収容部823内において、液晶パネル811の表面(筐体820の開口の方に向く面)に形成されている。またカバー812は、筐体820の開口を塞ぐようにして設けられ、接着部813の表面(筐体820の開口の方に向く面)に密着している。このとき、カバー812の透明部922は接着部813の光通過部932aと重なっており、カバー812の不透明部923は接着部813の光抑制部931aの表面に位置している。カバー812の端部は筐体820の周壁部822の表面に位置している。
上記のような表示装置830は、矢印Xで示すように、バックライト814で発生した光が液晶パネル811と接着部813の光通過部932aとカバー812の透明部922とを順に通過することにより、液晶パネル811で表示された文字や画像などを正常に視認することができる。また矢印Yで示すように、バックライト814で発生した光が液晶パネル811を迂回して接着部813の周端面にまで到達しても、光抑制部931aにより接着部813の光通過部932aにまで進入することを抑制することができる。従って、表示装置830は光漏れの発生を低減して液晶パネル811で表示された文字や画像などが視認しやすい。なお、光漏れは、筐体820の周壁部822と、バックライト814の端面及び液晶パネル811の端面並びに接着部813の端面との間に、隙間825が形成されるために生じる。この隙間825は収容部823にバックライト814や液晶パネル811を収容しやすくするための空間(いわゆる遊び)であり、隙間825を通じてバックライト814で発生した光が接着部813の周端面にまで到達しやすくなっている。
7−3.接着剤の説明
上記の接着部813は種類の異なる二種類以上の接着剤で形成することができる。例えば、光抑制部931aは透明性の低い第1接着剤931の硬化物で形成され、光通過部932aは透明性を有する第2接着剤932の硬化物で形成されている。着色された光抑制部931aを形成されるために、第1接着剤931は黒色や白色の顔料や染料などの着色材を含有していてもよい。第2接着剤932は透明性の高い方が好ましい。
第1接着剤931と第2接着剤932とは、遅延硬化性の組成物(X)を含んでいる。組成物(X)は、紫外線等の活性エネルギー線の照射直後には液状であり、所定時間経過後に硬化が完了(終了)するものが用いられる。第1接着剤931に含まれている組成物(X)と、第2接着剤932に含まれている組成物(X)とは、硬化開始時間が異なっている。従って、第1接着剤931と第2接着剤932に同時に活性エネルギー線を照射しても、第1接着剤931の活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間と、第2接着剤932の活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間とが異なる。例えば、第1接着剤931の活性エネルギー線の照射直後からの硬化開始までの時間は、第2接着剤932の活性エネルギー線の照射直後からの硬化開始までの時間よりも短く、前者は後者の半分以下とすることができる。第1接着剤931及び第2接着剤932において、活性エネルギー線の照射直後から硬化開始までの時間をゲル化時間という。また第1接着剤931及び第2接着剤932において、活性エネルギー線の照射直後からの硬化完了(硬化終了)までの時間を硬化完了時間という。
第1接着剤931と第2接着剤932に用いられる組成物(X)としては、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、(B)1分子中に1個のエポキシ基を有する単官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤とを含有している。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、(H)多官能オキセタン化合物又は(F)単官能オキセタン化合物、あるいは(H)多官能オキセタン化合物及び(F)単官能オキセタン化合物の両方を含んでいてもよい。また(A)成分、(B)成分、(C)成分、(F)成分、(H)成分に加えて、(G)エラストマーを含んでいてもよい。このような組成物(X)は遅延硬化性を有し、遅延硬化性の接着剤として使用可能である。なお、本実施形態の光カチオン重合組成物は、遅延硬化性を損なわない範囲において、必要に応じて、各種の樹脂、添加剤等の任意の成分が配合されていてもよい。
7−4.表示装置の製造方法(液晶パネルとカバーの接着工程)
上記の液晶パネル811とカバー812は、筐体820と組み立てる前に接着部813で接着されている。すなわち、液晶パネル811とカバー812を接着部813で接着して積層体810を形成し、この積層体810をバックライト814や筐体820と組み立てて表示装置830を形成する。
図19A〜図19Gに液晶パネルとカバーの接着工程を示す。この接着工程では、第1接着剤931は枠状に供給されるダム剤として用いており、第2接着剤932は枠状に供給された第1接着剤931の内側に供給されるフィル剤として用いている。
まず、図19Aに示すように、載置台600に載置された液晶パネル811の上面に液状の未硬化の第1接着剤931を供給する。第1接着剤931の供給はディスペンサー601などの適宜の手段で行われる。また第1接着剤931は液晶パネル811の周端部に沿って線状に供給され、最終的に平面視で枠状のダム(堰)に形成される。
次に、図19Bに示すように、枠状に供給された第1接着剤931の内側において、液晶パネル811の上面に液状の未硬化の第2接着剤932が供給される。このとき、液晶パネル811の上面に供給された第2接着剤932が枠状の第1接着剤931で堰き止められて漏れ出さないようになっている。第2接着剤932の供給はディスペンサー602などの適宜の手段で行われ、液晶パネル811の上面全面に複数の線状の第2接着剤932が供給される。
次に、図19Cに示すように、液晶パネル811の上面に供給された第1接着剤931と第2接着剤932の両方に、ほぼ同時に、活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線の照射は紫外線発生機603などの適宜の手段が用いられる。第1接着剤931と第2接着剤932は遅延硬化性を有するため、活性エネルギー線700の照射直後では硬化(ゲル化)が急激に進行せず、ほぼ液状を保った状態である。
次に、液晶パネル811とカバー812のアライメント(位置合わせ)が行われる。すなわち、載置台600の上方で供給機604を回転するなどして行われる。これにより、載置台600に載置されている液晶パネル811と、供給機604に保持されているカバー812との位置合わせが行われる。
次に、液晶パネル811とカバー812の真空貼り合わせが行われる。この場合、図19Dに示すように、載置台600に載置された液晶パネル811と供給機604に保持されたカバー812とが、第1接着剤931と第2接着剤932を介して重ね合わされた後、真空チャンバー701内に設置される。そして、真空チャンバー701内を減圧にすることにより貼り合わせ面の気泡を抜きつつ、液晶パネル811とカバー812とを密着させて重ね合わせる。この真空貼り合わせ時に、第1接着剤931がほぼ完全に硬化して光抑制部931aが形成され、この光抑制部931aで液晶パネル811とカバー812とが接着される。このとき、光抑制部931aが硬化することで、貼り合わせ時の光抑制部931aの厚みを一定の状態で貼り合わせることが可能となる。硬化が進んでいない液体の状態であれば、貼り合わせ時に第1接着剤931が貼り合わせ面から押し出され、周囲に漏れ出すことがある。また第2接着剤932は枠状の光抑制部931aの内側で略均一に広がるが、完全には硬化せず、液状又は粘度の低い状態である。従って、真空貼り合わせ直後においては、液晶パネル811とカバー812は光抑制部931aで位置ずれが抑えられる程度の仮固定された状態である。なお、未硬化の第1接着剤931及び未硬化の第2接着剤932はともに液状であるため、液晶パネル811とカバー812の貼り合わせ面に凹凸があっても、隙間なく液晶パネル811とカバー812の間に充填されやすい。
次に、図19Eに示すように、液晶パネル811とカバー812とを真空貼り合わせしたものを作業者606が品質検査を行う。この品質検査により、光抑制部931aや第2接着剤932に異物や気泡が混入されているなどの不良が検査される。良品と判断されたものは養生され、この養生により第2接着剤932が完全に硬化して光通過部932aが形成される。そして、光抑制部931aと光通過部932aにより接着部813が形成され、液晶パネル811とカバー812とが接着部813で本固定され、図19Fに示すように、積層体810が形成される。一方、不良品と判断されたものは、図19Gに示すように、光抑制部931aによる仮固定が外されて液晶パネル811とカバー812とに分離される。そして、分離された液晶パネル811とカバー812は再利用(リワーク)される。
上記のように第1接着剤931と第2接着剤932とが遅延硬化性を有するため、活性エネルギー線を照射直後から所定の時間は硬化せず、可使時間が長い。また第1接着剤931と第2接着剤932の可使用時間の違いから、貼り合わせ時の厚みを確保することが可能となる。従って、液晶パネル811に供給した第1接着剤931と第2接着剤932に活性エネルギー線を照射した後に、液晶パネル811とカバー812とを貼り合わせ、その後、貼り合わせ前に照射した一度の活性エネルギー線で第1接着剤931と第2接着剤932を硬化させることができる。よって、液晶パネル811とカバー812とを貼り合わせた後に活性エネルギー線を照射する必要がほとんどなく、液晶パネル811とカバー812とが活性エネルギー線を透過しにくい場合であっても貼り合わせ可能となり、また液晶パネル811とカバー812とを貼り合わせた後に位置合わせが容易に行なえて、生産性を向上させることができる。
また第1接着剤131と第2接着剤132とはゲル化時間が異なるため、ゲル化時間が長い第2接着剤132は硬化しないで、ゲル化時間が短い第1接着剤131のみを硬化させることにより、液晶パネル811とカバー812とを厚み制御を行いつつ仮固定することができ、液晶パネル811とカバー812との位置ずれが生じにくい状態で、品質検査などの後工程を行うことができる。しかも、品質検査で不良品が発見された場合は、仮固定のみを外すだけで液晶パネル811とカバー812とを分離することができ、液晶パネル811とカバー812の再利用を容易に行うことができる。
なお、上記では液晶パネル811に第1接着剤931と第2接着剤932を供給する場合を説明したが、これに限らず、カバー812に第1接着剤931と第2接着剤932を供給するようにしてもよい。
また本実施の形態において、第1接着剤931にアクリル系化合物と光ラジカル発生剤とを含む光カチオン重合生成物であってもよい。この場合、活性エネルギー線(光エネルギー)が照射されると瞬時にラジカル反応が生じ、適度なゲル状態となる。このため、第1接着剤は半硬化状態となり、貼り合わせ時の厚みの制御が容易となる。また光などの活性エネルギー線の照射により光カチオン成分が遅延して反応が始まり、一定時間後に急峻な硬化を起こし完全硬化に至る。このことは貼り合わせ時に、厚みを制御した状態で貼り合わせ、光カチオン成分が硬化していない状態で仮固定し、その後、第2接着剤932の硬化により固定された積層体を得ることができる。よって貼り合わせ時間を十分に保ちつつ、貼り合わせた後の硬化を急峻に行うことで完全硬化までの時間を短くすることができ、短時間での製品出荷が可能となる。このことで、工場での仕掛かり在庫を極めて少なく保つことが可能となり、生産コストを引き下げることができる。
さらに本実施の形態において、第1接着剤931としてラジカル発生剤とアクリル系化合物からなるラジカル重合化合物を用いてもよい。この場合、光エネルギーの照射により、瞬時にラジカル重合が生じ、第1接着剤931は硬化する。しかしながら、大気中の酸素の影響により、光抑制部931aの表面は未硬化となりタックがある状態となる。このため、貼り合わせ時に、厚みを制御した状態で貼り合わせ、タック性による粘着で仮固定し、その後、第2接着剤932の硬化により固定された積層体を得ることができる。しかしながら、この場合、このままでは第1接着剤931は完全に硬化することはなく、信頼性が低い状態となってしまう。接着面の強度があまり必要でない場合や、第2接着剤932のみでもほぼ積層体が構成され、貼り合わせ厚みの制御のみの目的で、第1接着剤931を利用したい場合などは一度の光照射のみで積層体を得ることは可能である。第1接着剤931を完全に硬化する必要がある場合は貼り合わせ面側面方向から光を再度照射するなどの工程が必要となる。
7−5.従来の表示装置の説明
図20は表示装置300の一例を示している(特開2015−193004号公報参照)。この表示装置300は、バックライト314と液晶パネル311と透明なカバー312とを備えている。バックライト314と液晶パネル311は、一面が開口する筐体320内に収められており、カバー312は筐体320の開口を塞ぐようにして設けられている。バックライト314はLEDなどで形成されており、バックライト314の表面(筐体320の開口側に向く面)に液晶パネル311が設けられている。液晶パネル311は液晶層、偏光板、透明電極、カラーフィルタ、配向膜などを備えて形成されている。液晶パネル311の表面(筐体320の開口側に向く面)には透明な接着部313が設けられており、この接着部313により液晶パネル311の表面にカバー312が接着されている。そして、表示装置300は、バックライト314で発生した光が液晶パネル311と接着部313とカバー312とを順に通過することにより、文字や画像などを表示することができる。正常な光の進行を矢印Xで示す。
上記の従来例では、矢印Yで示すように、バックライト314で発生した光が液晶パネル311を迂回して接着部313にその側面から進入すること(いわゆる光漏れ)があり、文字や画像などが視認しにくくなる場合があった。なお、光漏れは筐体320の内部に隙間325が形成されるために、この隙間325に光が進入することにより発生する。
一方、本実施形態は、上記7−1〜4のようにして表示装置を製造するため、光漏れを低減して文字や画像などが視認しやすい表示装置を提供することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
1.実施例(P)
(1)接着剤の調製
プライミクス社製のホモディスパーを使用して、表1に示す割合で配合した各成分を均一に混合して、接着剤を調整した。尚、表1に示す各成分の詳細は以下の通りである。
・(A)−1:グリシジルエーテル
・(A)−2:クレジルグリシジルエーテル
・(A)−3:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
・(B)−1:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
・(B)−2:ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂
・(C):トリアリールスルホニウム塩
・(D)−1:ラウリルアクリレート
・(D)−2:1,9−ノナンジオールジアクリレート
・(E):1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
・(F):3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
・(G):液状イソプレンゴム
Figure 2018159070
(2)積層体の作製
積層体として、スマートフォン用のカバーパネルと、液晶パネルとを貼り合わせた。カバーパネルを第一部材として使用し、液晶パネルを第二部材として使用した。カバーパネルの寸法は、長辺が156mm、短辺79mm、厚みが1mmであった。カバーパネルの縁部には、厚み20μmの黒の加飾印刷が形成されていた。また液晶パネルの寸法は、長辺が135mm、短辺が77mm、厚みが0.4mmであった。そして、カバーパネルと液晶パネルとを、接着剤の硬化物で固着することによって、カバーパネルと液晶パネルとが平行に配置された積層板を製造した。
積層板を製造するにあたっては、上記と同様の配置工程と、照射工程と、位置決め工程と、硬化工程と、を順次行った。
配置工程では、カバーパネルの上に接着剤を塗布して、塗膜を形成した。接着剤の塗布量は1.56g/mであり、塗膜の厚みは150μmであった。
照射工程では、カバーパネル上に配置された塗膜に対して、紫外線を照射した。紫外線の光源として、UV−LED光源(浜松ホトニクス株式会社製、LC−L2、中心波長365nm)を使用した。紫外線の照度は1000mW/cmであり、照射時間は3秒間であり、合計の照射量は3000mJ/cmであった。紫外線の照射終了時には、塗膜は粘着性を有しており、流動性を失っていた。
位置決め工程では、紫外線照射後の塗膜を挟むようにして、カバーパネルと液晶パネルとを貼り合わせた。位置決め工程では、塗膜の形状が保持されていた。また位置決め工程において、カバーパネルと液晶パネルとを貼り合わせた際には、接着剤のはみ出し、接着剤の未硬化による樹脂漏れは生じなかった。
硬化工程では、貼り合わせたカバーパネルと液晶パネルとを100分間静置して、接着剤の塗膜を硬化させた。これにより、カバーパネルと液晶パネルとが固着された。硬化工程では、塗膜に未硬化の部分は生じなかった。
このようにして、第一部材であるカバーパネルと、第二部材である液晶パネルと、接着剤の硬化物とを含み、カバーパネルと液晶パネルとが接着剤の硬化物で固着された積層体が得られた。
2.実施例(Q)
[第1接着剤と第2接着剤の調製]
ディスパーを使用し、下記表2に示す配合組成(質量%)で各成分を均一に混合し、第1接着剤と第2接着剤を調製した。
Figure 2018159070
第1接着剤は、波長400nm以下の紫外線で硬化し、紫外線照射直後から硬化開始するまでの時間(ゲル化時間)は5分間であり、紫外線照射直後から硬化が完了するまでの時間は90分間であった。
第2接着剤は、波長400nm以下の紫外線で硬化し、紫外線照射直後から硬化開始するまでの時間(ゲル化時間)は15分間であり、紫外線照射直後から硬化が終了するまでの時間は90分間であった。
[積層体の製造]
積層体としてスマートフォンの表示装置を製造した。積層体は第一部材として表示板を使用し、第二部材として透明板を使用した。第一部材は液晶パネルであって、長辺の長さが130mm、短辺の長さが75mm、厚みが0.4mmであった。また第一部材は活性エネルギー線である波長400nm以下の紫外線を透過しないものであった。第二部材はポリカーボネート製の透明板であって、長辺の長さが140mm、短辺の長さが80mm、厚みが1mmであった。また第二部材は活性エネルギー線である波長400nm以下の紫外線を透過せず、可視光領域における光透過率が95%であった。そして、第一部材と第二部材とを上記第1接着剤と第2接着剤の硬化物からなる接着部で接着して固定することにより、第一部材と第二部材とが平行に配置された積層板を製造した。
積層板を製造するにあたっては、接着剤配置工程と照射工程と位置合わせ工程と貼り合わせ工程と養生工程とを順次行った。
接着剤配置工程では、第1接着剤を第一部材の上面に枠状に塗布した。第1接着剤の塗布幅は1mm、塗布量は289.7g/mとした。また枠状に塗布した第1接着剤の内側において、第一部材の上面に第二接着剤を複数本の線状に塗布した。第2接着剤の塗布幅は1mm、塗布量は144.9g/mとした。
照射工程では、第一部材の上面に塗布された第1接着剤及び第2接着剤に紫外線を同時に照射した。紫外線の光源としてはUV−LED光源(浜松ホトニクス株式会社製、LC−L2、中心波長365nm)を使用し、紫外線を100mW/cmの照度で30秒間照射し、合計3000mJ/cmの照射量とした。
位置合わせ工程では、照射工程後の第一部材の上方に第二部材を配置して第一部材と第二部材の位置合わせをした。この場合、第一部材の接着剤塗布面と第二部材の下面とが対向するようにし、第一部材と第二部材とを平行に配置した。
貼り合わせ工程では、位置合わせ工程後、未硬化の接着剤を介して第一部材と第二部材とを重ねて60秒間真空貼り合わせをした。この工程で第1接着剤の硬化が完了し、第2接着剤が未硬化であり、第一部材と第二部材とが第1接着剤の硬化物で仮固定された。
養生工程では、貼り合わせた第一部材と第二部材とを10分間静置して第2接着剤の硬化が完了した。
このようにして第1接着剤及び第2接着剤の硬化物である接着部で第一部材と第二部材とが接着されて固定された積層体が得られた。
積層板を製造するにあたって上記以外に次のような手法を用いてもよい。
上記と同様に接着剤配置工程と照射工程と位置合わせ工程と貼り合わせ工程と養生工程とを順次行った。
接着剤配置工程では、第1接着剤を第一部材の上面に枠状に塗布した。第1接着剤の塗布幅は1mm、塗布量は289.7g/mとした。また枠状に塗布した第1接着剤の内側において、第一部材の上面に第二接着剤を複数本の線状に塗布した。第2接着剤の塗布幅は1mm、塗布量は144.9g/mとした。また、塗布時の温度を室温(25℃)よりも低い20℃とし、接着剤もあらかじめ冷却を行った。
照射工程では、第一部材の上面に塗布された第1接着剤及び第2接着剤に紫外線を同時に照射した。紫外線の光源としてはUV−LED光源(浜松ホトニクス株式会社製、LC−L2、中心波長365nm)を使用し、紫外線を100mW/cmの照度で30秒間照射し、合計3000mJ/cmの照射量とした。
位置合わせ工程では、照射工程後の第一部材の上方に第二部材を配置して第一部材と第二部材の位置合わせをした。この場合、第一部材の接着剤塗布面と第二部材の下面とが対向するようにし、第一部材と第二部材とを平行に配置した。
貼り合わせ工程では、位置合わせ工程後、未硬化の接着剤を介して第一部材と第二部材とを重ねて60秒間真空貼り合わせをした。この際、第1接着剤が塗布された箇所の温度を室温より高く、60℃に加温した。この工程で第1接着剤の硬化が完了し、第2接着剤が未硬化であり、第一部材と第二部材とが昇温による第1接着剤の硬化物でより短時間で仮固定された。
養生工程では、貼り合わせた第一部材と第二部材とを10分間静置して第2接着剤の硬化が完了した。養生工程にて第1、第2の接着剤を60℃に加温した。これにより第2の接着剤もより短時間でスムーズに硬化した。
このようにして硬化時に塗布時よりも高い温度に加温を用いることで第1接着剤及び第2接着剤の硬化物である接着部で第一部材と第二部材とがより短時間で接着されて固定された積層体が得られた。
3.実施例(R)
(実施例R1)
[第1接着剤と第2接着剤の調製]
ディスパーを使用し、下記表3に示す配合組成(質量%)で各成分を均一に混合し、第1接着剤と第2接着剤を調製した。
Figure 2018159070
第1接着剤は、紫外線照射直後から硬化開始するまでの時間(ゲル化時間)は5分間であり、紫外線照射直後から硬化が完了するまでの時間は15分間であった。また第1接着剤の硬化物(光抑制部)の可視光領域における光透過率が3%であった。
第2接着剤は、紫外線照射直後から硬化開始するまでの時間(ゲル化時間)は15分間であり、紫外線照射直後から硬化が終了するまでの時間は30分間であった。また第2接着剤の硬化物(光通過部)の可視光領域における光透過率が95%であった。
[積層体の製造]
液晶パネルは、長辺の長さが130mm、短辺の長さが75mm、厚みが0.4mmであった。また液晶パネルは紫外線を透過しないものであった。カバーはポリカーボネート製の透明板であって、長辺の長さが140mm、短辺の長さが80mm、厚みが1mmであった。またカバーは耐候性処理により紫外線を透過せず、カバーの透明部は可視光領域における光透過率が95%であり、カバーの不透明部は可視光領域における光透過率が0%であった。そして、液晶パネルとカバーとを上記第1接着剤と第2接着剤の硬化物からなる接着部で接着して固定することにより、液晶パネルとカバーとが平行に配置された積層板を製造した。
積層板を製造するにあたっては、接着剤配置工程と照射工程と位置合わせ工程と貼り合わせ工程と養生工程とを順次行った。
接着剤配置工程では、第1接着剤を液晶パネルの上面に枠状に塗布した。第1接着剤の塗布幅は1mm、塗布量は289.7g/mとした。また枠状に塗布した第1接着剤の内側において、液晶パネルの上面に第二接着剤を複数本の線状に塗布した。第2接着剤の塗布幅は1mm、塗布量は144.9g/mとした。
照射工程では、液晶パネルの上面に塗布された第1接着剤及び第2接着剤に同時に紫外線を照射した。紫外線の光源としてはUV−LED光源(浜松ホトニクス株式会社製、LC−L2、中心波長365nm)を使用し、紫外線を100mW/cmの照度で30秒間照射し、合計3000mJ/cmの照射量とした。
位置合わせ工程では、照射工程後の液晶パネルの上方にカバーを配置して液晶パネルとカバーの位置合わせをした。この場合、液晶パネルの接着剤塗布面とカバーの下面とが対向するようにし、液晶パネルとカバーとを平行に配置した。
貼り合わせ工程では、位置合わせ工程後、未硬化の接着剤を介して液晶パネルとカバーとを重ねて60秒間真空貼り合わせをした。この工程で第1接着剤が完全に硬化し、第2接着剤が未硬化であり、液晶パネルとカバーとが第1接着剤の硬化物で仮固定された。
養生工程では、貼り合わせた液晶パネルとカバーとを30分間静置して第2接着剤を完全硬化させた。
このようにして第1接着剤及び第2接着剤の硬化物である接着部で液晶パネルとカバーとが接着されて固定された積層体(図1参照)が得られた。
(実施例R2)
実施例R1において、着色材の「ソルベントブラック」の代わりに、酸化チタンを配合した。その他の構成は実施例R1と同様にして積層体を得た。
(比較例R1)
実施例R1において、着色材の「ソルベントブラック」を配合しなかった。その他の構成は実施例R1と同様にして積層体を得た。
実施例R1及びR2、比較例R1で得られた積層体について、液晶パネルに表示された文字及び画像の視認性、並びに液晶パネルへのバックライトの光漏れについて評価した。結果を表4に示す。
Figure 2018159070
実施例R1では、液晶パネルに表示された文字及び画像が明確に読み取れて視認性が良好であった。また実施例R1では液晶パネルへのバックライトの光漏れがほとんどなく、良好であった。
実施例R2では、実施例R1に比べて、視認性及び光漏れの性能がやや小さくなるものの、実用上問題ない程度の視認性及び光漏れの性能を有していた。
比較例R1では、視認性が実施例R2と同程度であるが、液晶パネルへのバックライトの光漏れが生じた。
なお、実施例R1では、着色材にソルベントブラックを用いたが、これに限らず、光を遮蔽できるカーボンブラックなども使用可能である。また、実施例R2で使用した酸化チタン及び酸化亜鉛といった反射率の高い材料を同量含むことで、第1接着剤の光透過性を低下させ、光漏れを防ぎ、表示面の光量を増加させて、視認性を上げることが可能となる。
また本実施例ではソルベントブラックやカーボンブラックを用いて光透過性を低下させて光漏れを防いだが、可視光域の光のみ透過性を低下させることでも視認性の向上を図ることができる。この場合、第1接着剤に銅ポルフィリン錯体、Coフタロシアニンを等量含有させればよい。
4.実施例(S)
[1.組成物(X)の調製]
プライミクス社製のディスパーを使用して、表5に示す質量割合で配合した各成分を均一に混合して、組成物(X)を調整した。尚、表5に示す各成分の詳細は以下の通りである。
・(A2−1):グリシジルエーテル
・(A2−2):クレジルグリシジルエーテル
・(B1):ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
・(B2):ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂
・(B3):水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・(C−1):トリアリールスルホニウム塩
・(C−2):トリアリールスルホニウムボレート塩
・(D−1):ラウリルアクリレート
・(D−2):1,9−ノナンジオールジアクリレート
・(E):1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
・(F):2−エチルヘキシルオキセタン
・(G1):液状イソプレンゴム(水添なし)
・(G2):水添ポリブタジエンゴム
・(H−1):3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
[2.評価]
「遅延時間」
遅延硬化性の指標として、室温25℃雰囲気下で紫外線照射後の粘度変化を用いて遅延時間を測定した。UV照射型レオメータ(株式会社アントンパール・ジャパン製、MCR−100)を用いて表1に記載した各実施例および比較例の組成物の紫外線照射前の粘度と照射後の粘度変化を測定した。紫外線の光源としてはUV−LED光源(浜松ホトニクス株式会社製、LC−L2、中心波長365nm)を使用し、紫外線を100mW/cmの照度で5秒間照射し、合計500mJ/cmの照射量とした。
遅延時間は、液状の光カチオン重合組成物への紫外線照射直後から光カチオン重合組成物の粘度が50000Pa・sに達するまでの時間とした。これは流動性がほとんど失われ、貼り合せが不可能になる粘度が50000Pa・s程度であるためである。この遅延時間が15秒以下では貼り合せるための猶予が少なく、60分以上であれば、部材の位置ずれが起こる可能性が高くなる。
また、光ラジカル発生剤とアクリル系化合物を含む場合は、光照射において一次硬化状態となり、粘着性が生じる。その後、光カチオン重合組成成分の硬化が生じ、粘度が50000Pa・sの二次硬化状態となる。この場合、一次硬化は光照射中のみで生じ、一定の弾性を持ち、粘着生を持ち、粘度が50000Pa・sとなるまでを遅延時間として示した。光ラジカル発生剤を含む場合の遅延時間は60分以上に長くなる場合があるが、一次硬化状態を持つことから、その状態での貼り合わせと粘着性による取り回しが可能であるため可使用時間は長く、治具などで保持するいわゆる養生時間は比較的短くなる。
「変色」
2枚のガラス板とスペーサーを用い、樹脂部分の厚みが1mmになるようにガラス板の間に組成物(X)を挟み込んだ。これに活性エネルギー線を3000mJ/cm照射し、その後室温で1日養生することで試験片を作成した。
上記方法で作成した試験片を95℃の恒温槽に投入し、所定時間放置後、変色の測定を行った。
以上の操作で変色を測定し、以下の評価をした。
A:変色がないもの
B:変色は軽度であるが、実用上問題があるもの
C:変色が生じるもの
D:変色が大きいもの
[3.結果]
光ラジカル発生剤とアクリル系化合物を含まない実施例S1〜S4においては光照射後は液体状を示し、硬化までに遅延時間を生じた。
(A)成分を含まない実施例S1においては、エーテル骨格含有の(B)多官能エポキシ化合物と(F)単官能オキセタン化合物を含むことで、硬化に2時間以上を要した。エーテル骨格を有さない(B)多官能エポキシ化合物を含有する実施例S2では、硬化までに2時間を要した。
次に、(F)単官能オキセタン化合物の配分を調整し、エポキシ含有量を増加させたところ、実施例S3,S4のように60分以内の硬化が可能となった。またエーテル骨格を少量含むことで硬化までの時間を長くすることができた。
一方、(E)光ラジカル発生剤と(D)アクリル系化合物を含む実施例S5においては、光照射後に1次硬化状態で粘着体となり、硬化までの60分間は粘着性を有した。
実施例S6,S7では、水添のエポキシ、エラストマーを含有することで変色を押さえつつ60分以内の硬化が可能となった。
Figure 2018159070
5.実施例(T)
[1.組成物(X)の調製]
プライミクス社製のディスパーを使用して、表6、7に示す質量割合で配合した各成分を均一に混合して、組成物(X)を調整した。尚、表6、7に示す各成分の詳細は以下の通りである。
・(A):ラウリルアルコールグリシジルエーテル
・(B−1):ポリブタジエン型エポキシ樹脂
・(B−2):ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
・(B−3):水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
・(C−1):トリアリールスルホニウム・特殊リン系アニオン塩
・(C−2):トリアリールスルホニウムボレート塩
・(D):ラウリルアクリレート
・(E):1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
・(F):2−エチルヘキシルオキセタン
・(G):水添ポリブタジエンゴム
・(H):3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン
・(i1):ビニルトリエトキシシラン(構造式(i−1)参照)
・(i2):2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(構造式(i−2)参照)
・(i3):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(構造式(i−3)参照)
・(i4):3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(構造式(i−4)参照)
Figure 2018159070
[2.評価]
「抵抗値変化」
ITO(酸化インジウム錫:Indium Tin Oxide)からなる櫛形電極を基板の表面に形成し、櫛形電極を覆うようにして基板の表面に各実施例および各比較例の光硬化性樹脂組成物を塗布した。次に、光硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させて試験体を作製した。紫外線の光源としてはUV−LED光源(浜松ホトニクス株式会社製、LC−L2、中心波長365nm)を使用し、紫外線を100mW/cmの照度で5秒間照射し、合計500mJ/cmの照射量とした。この後、試験体に直流電圧10Vを印加した状態で温度60℃、湿度80%の高温高湿条件下に300時間放置した。
そして、高温高湿条件下に放置する前と後で櫛形電極の抵抗値の変化を計測した。抵抗値を測定する際には直流電圧10Vを印加し、その際流れる電流値を計測した。高温高湿条件下に放置する前の抵抗値(初期値)に対して、放置後の抵抗値が一桁以上変化したものに×を付し、一桁未満の変化である場合には○を付した。
なお、試験体の櫛形電極には保護膜などは付加されていないが、実際の製品などでは耐腐食性を向上させるために、電極材料表面に耐腐食、絶縁膜Siなど誘電体をコーティングすることもある。この場合、電極の腐食のリスクはかなり低減される。
「外観変化」
上記の高温高湿条件下に放置する前と後において、光硬化性樹脂組成物の硬化物の外観の変化を目視で確認した。そして、変化なし、着色あり、消失の評価を行った。
[3.結果]
表6に示すように、比較例T1のカップリング剤がない状態では、光カチオン発生剤C−1より発生する強酸種により電極が消失し、抵抗値の変化も非常に大きくなった。また、有機官能基の長いカップリング剤を含む比較例T2、比較例T3においても比較例T1と同様に電極が消失し、抵抗値の変化も非常に大きくなった。有機官能基の炭素数が少なくて分子鎖が短いカップリング剤を含む実施例T1、および実施例T2においては、電極の外観変化がなく、抵抗値の変化も認められなかった。
次に、カップリング剤の配合量を変えた実施例T3、T4において電極の着色は見られるものの、カップリング剤量が0.017%のもので抵抗値変化が小さく、一定の効果を示した。カップリング剤量が0.003%以下になると抵抗値の変化も大きく、実用には耐えないと考えられる。
次に、表7に示すように、光カチオン発生剤をいわゆるボレート系のものに変更したところ、カップリング剤が含まれない比較例T4では電極は消失せず、着色する状態となった。これは、ボレート系の光カチオン発生剤の酸イオン分子がそれ以外のものに比べて大きく、硬化物内を移動しにくいために、基材表面の電極への接触が少なくなり酸化されにくくなるためと考えらる。しかしながら、カップリング剤がない状態では抵抗値の変化が大きく実用には堪えない。また、有機官能基の長いカップリング剤を含む比較例5,6においても電極は消失せず、着色する状態となった。しかしながら、抵抗値の変化が大きく実用には堪えない。有機官能基の炭素数が少なくて分子鎖が短いカップリング材を含む実施例T5,T6においては、電極外観の変化もなく、抵抗値の変化もなく非常に良好な状態であった。比較例T5,T6の結果と合わせて考えると、ボレート系の光カチオン発生剤と分子鎖が短いカップリング剤を組み合わせることは、電極腐食に対して非常に有効で信頼性が高いことがわかる。
本実施例においては、エポキシ化合物と光カチオン発生剤を含むものを実施例として示した。これは、成分に光ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)とアクリル系化合物を含む場合、これらからは電極腐食を引き起こす強酸成分を発生しない。つまり光カチオン発生剤から発生する強酸の影響がカップリング剤により抑制される効果は十分に示されている。
光カチオン発生剤、エポキシ化合物、光ラジカル発生剤、アクリル系化合物にカップリング剤を含む実施例T7では、電極腐食は全く観測されず抵抗値変化も著しく小さかった。
本実施例で示した物質は一例であってこれに限定されるものではない。本実施例は光カチオン発生剤から発生する強酸からカップリング剤にて有効に電極などの腐食性物質を保護することを開示している。加えて腐食性の少ないボレート系材料(ボレート塩型の光カチオン発生剤)とカップリング剤を併用することによって、電極腐食に対するリスクを大きく低減可能である。特に光照射後も貼り合わせもしくはリワーク可能であり、所定時間後に硬化することを特徴とする光カチオン発生剤を含む材料において、適応できる部材選択を増やすことが可能となる。
Figure 2018159070
Figure 2018159070
6.実施例(U)
[1.組成物(X)の調製]
プライミクス社製のディスパーを使用して、表8に示す質量割合で配合した各成分を均一に混合して、組成物(X)を調整した。尚、表8に示す各成分の詳細は以下の通りである。
・(A2−1):アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数は10〜15、二重結合なし)
・(A2−2):クレジルグリシジルエーテル(二重結合あり)
・(B1):ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(水添処理なし)
・(B2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添処理なし)
・(B3):水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添処理あり)
・(C):トリアリールスルホニウム塩
・(D−1):ラウリルアクリレート
・(D−2):1,9−ノナンジオールジアクリレート
・(E):1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
・(F):2−エチルヘキシルオキセタン
・(G1)ポリブタジエンゴム(水添処理なし)
・(G2):水添ポリブタジエンゴム(水添処理あり)
・(H−1):3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(二重結合なし)
・(H−2):キシリレンビスオキセタン(二重結合あり)
[2.評価]
「変色」
2枚のガラス板とスペーサーを用い、樹脂部分の厚みが1mmになるようにガラス板の間に組成物(X)を挟み込んだ。これに活性エネルギー線を3000mJ/cm照射し、その後室温で1日養生することで試験片を作成した。
上記方法で作成した試験片を95℃の恒温槽に投入し、所定時間放置後、変色の測定を行った。
変色度合いは黄色度(YI)により評価した。測定にはコニカミノルタ社製CM−5を用いた。
以上の操作で変色を測定し、以下の評価をした。
A:変色がないもの
B:変色は軽度であるが、実用上問題があるもの
C:変色が生じるもの
D:変色が大きいもの
[3.結果]
水素添加反応により処理された多官能エポキシ化合物やエラストマーを含有する実施例U1〜U5では変色が少なくなった。特に、多官能エポキシ化合物とエラストマーの両方が水素添加反応により処理されたものである場合は、変色がより少なくなり、さらに二重結合を含む単官能エポキシ化合物を含有せず、二重結合を含まない単官能エポキシ化合物を使用した場合は変色がより少なくなった。
Figure 2018159070
以上述べた本実施形態から明らかなように、第一の態様に係る接着剤は、(A)1分子あたり一つのエポキシ基を有する単官能エポキシ化合物と、(B)1分子あたり二つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、(C)光カチオン発生剤と、(D)アクリル系化合物と、(E)光ラジカル発生剤と、(F)単官能オキセタン化合物及び(H)多官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、を含有する。
これにより接着剤は、活性エネルギー線の照射前は液状であり、部材の上に接着剤の塗膜を配置する際には、接着剤が部材の形状に追随するため、部材と塗膜との間に空気が侵入することを抑制することができる。また接着剤の塗膜は、活性エネルギー線の照射中に貯蔵弾性率が損失弾性率よりも高くなり、流動性が低下するため、接着剤の塗膜の形状を保持しやすく、部材の貼り合わせる際の塗膜の変形を抑制できる。これにより、接着剤のはみ出しを抑制することができる。また接着剤の塗膜を任意の形状にできるため、接着剤を複雑な形状を有する部材の貼り付けに適用できる。また接着剤は、活性エネルギー線が照射してから所定時間経過後に硬化が開始され、その後硬化が完了するため、接着剤の塗膜を介して複数の部材同士を貼り合わせた後に、複数の部材同士が固着される。その結果、部材の光透過率に影響されることなく、複数の部材同士を固着でき、接着剤の未硬化による樹脂漏れを抑制できる。このため、樹脂漏れによる他の部品の汚染を抑制することができる。また接着剤は、一度の活性エネルギー線の照射によって、上記の一次硬化、二次硬化、及び完全硬化を進めることができるため、接着剤を硬化させるにあたり、紫外線及び熱、または紫外線及び湿気のような複数の処理を施す必要がない。
第二の態様に係る接着剤は、第一の態様において、前記(A)成分が、ポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノグリシジルエーテル、及びポリテトラメチレングリコールモノグリシジルエーテルからなる群から選択される一種以上の化合物を含み、前記(B)成分は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される一種以上の化合物を含む。
この場合、(A)成分及び(B)成分がいずれもポリエーテル骨格を有するため、接着剤の硬化後に、ポリエーテル骨格部分のブリードアウトを抑制できる。
第三の態様に係る接着剤は、第一又は第二の態様において、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計と、前記(D)成分の質量比が、5:95〜90:10の範囲内である。
これにより、接着剤の塗膜に活性エネルギー線が照射された際に、塗膜の形状を保持しつつ、接着性を有さず、粘着性を有する一次硬化状態にすることができる。これにより、部材の搬送時に部材上の塗膜が変形することを抑制することができ、また塗膜を介して複数の部材同士を貼り合わせる際に接着剤がはみ出すことを抑制することができる。また、曲率の異なる部材を一定膜厚で貼り合せることができる。
第四の態様に係る積層体(1)は、第一から第三のいずれか一つの態様に係る接着剤の硬化物(20)と、第一部材(10)と、第二部材(11)と、を含み、前記第一部材(10)及び前記第二部材(11)が、それぞれ前記硬化物(20)で固着されている。
これにより積層体(1)は、気泡の侵入、接着剤の未硬化等による不良が抑制され、且つ第一部材(10)及び第二部材(11)の光透過率が低い場合にも、第一部材(10)と第二部材(11)とが十分に接着させられる。
第五の態様に係る積層体(1)の製造方法は、第一部材(10)及び第二部材(11)の少なくとも一方の上に、第一から第三のいずれか一つの態様に係る接着剤からなる未硬化の塗膜(12)を配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記未硬化の塗膜(12)に活性エネルギー線を照射する照射工程と、前記照射工程の後に、前記未硬化の塗膜(12)を介して、前記第一部材(10)及び前記第二部材(11)を位置決めする位置決め工程と、前記位置決め工程の後に、前記未硬化の塗膜(12)が完全硬化することで、前記第一部材(10)と前記第二部材(11)とをそれぞれ固着する硬化工程と、を含む。
これにより、接着剤の塗膜(12)の形状を維持しやすく、且つ気泡の侵入、接着剤の未硬化を抑制することができ、更に第一部材(10)及び第二部材(11)の光透過性が低い場合であっても、第一部材(10)と第二部材(11)とを十分に接着させることができる。
第六の態様に係る積層体(1)の製造方法は、第五の態様において、前記活性エネルギー線の照射によって、前記照射工程では、前記(D)成分及び前記(E)成分のラジカル重合反応によって、前記未硬化の塗膜(12)が一次硬化状態になり、前記位置決め工程では、前記未硬化の塗膜(12)が一次硬化状態に維持され、前記硬化工程では、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び(F)成分のカチオン重合反応によって、前記未硬化の塗膜(12)が完全に硬化する。
これにより、複数の部材を貼り合わせる際の接着剤のはみ出しを抑制できると共に、光透過性の低い部材の接着に適用することができ、更に接着剤の塗膜(12)を任意の形状とすることができ、複雑な部材の接着にも適用することができる。
1 積層体
10 第一部材
11 第二部材
12 塗膜
20 硬化物

Claims (6)

  1. (A)1分子あたり一つのエポキシ基を有する単官能エポキシ化合物と、
    (B)1分子あたり二つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、
    (C)光カチオン発生剤と、
    (D)アクリル系化合物と、
    (E)光ラジカル発生剤と、
    (F)単官能オキセタン化合物及び(H)多官能オキセタン化合物の少なくとも一方と、
    を含有する、
    接着剤。
  2. 前記(A)成分は、ポリエチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノグリシジルエーテル、及びポリテトラメチレングリコールモノグリシジルエーテルからなる群から選択される一種以上の化合物を含み、
    前記(B)成分は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される一種以上の化合物を含む、
    請求項1に記載の接着剤。
  3. 前記(A)成分及び前記(B)成分の合計と、前記(D)成分の質量比が、5:95〜90:10の範囲内である、
    請求項1又は2に記載の接着剤。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の接着剤の硬化物と、
    第一部材と、
    第二部材と、を含み、
    前記第一部材及び前記第二部材が、それぞれ前記硬化物で固着されている、
    積層体。
  5. 第一部材及び第二部材の少なくとも一方の上に、請求項1から3のいずれか一項に記載された接着剤からなる未硬化の塗膜を配置する配置工程と、
    前記配置工程の後に、前記未硬化の塗膜に活性エネルギー線を照射する照射工程と、
    前記照射工程の後に、前記未硬化の塗膜を介して、前記第一部材及び前記第二部材を位置決めする位置決め工程と、
    前記位置決め工程の後に、前記未硬化の塗膜が完全硬化することで、前記第一部材と前記第二部材とをそれぞれ固着する硬化工程と、
    を含む、
    積層体の製造方法。
  6. 前記活性エネルギー線の照射によって、
    前記照射工程では、前記(D)成分及び前記(E)成分のラジカル重合反応によって、前記未硬化の塗膜が一次硬化状態になり、
    前記位置決め工程では、前記未硬化の塗膜が一次硬化状態に維持され、
    前記硬化工程では、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び(F)成分又は(H)成分のカチオン重合反応によって、前記未硬化の塗膜が完全に硬化する、
    請求項5に記載の積層体の製造方法。
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