JP2018156040A - 偏差表示機 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため実際の演奏シーンでは何か基準となる楽音に対して各パートを受け持つ奏者が良く協和する楽音となるよう瞬時に発音する音高を調整できるような音程感覚を養成することが求められている。基準となる楽音は旋律であったり、伴奏のベース音であったりケースバイケースである。また旋律自体も楽団や指揮者の方針により、あるいは演奏する楽曲によりさまざまな音律に従い演奏されるため、基準となる楽音は一意に固定された音律により選択された周波数で規定されるということではない。重要なことは基準とする何らかの音高に対してそれと良く協和する音程をもった音高を目標として正確にイメージできること、そして自身が奏でる楽音がその音程を保つことのできるような音高となるよう耳で和音を確認しながら発音制御できるようになることである。
和音を和音構成音の音高という観点で見ると、各構成音の基本周波数比率ができるだけ単純な整数比率になることが良く協和する和音の条件であることが知られている。基準となる音(根音と呼ぶ)の3倍音や5倍音を基に音階音の音高を選ぶと主和音および属和音および下属和音が心地良く協和するように規定された音律として純正律がある。純正律にしたがって発音制御できる機能を持った鍵盤型機器から奏者が発音すべき音高の楽音を発生させ、その楽音を奏者の耳で確認するという形でこのような機器が音感養成支援に供される。
また楽音の音高が平均律で規定される各音名の基準音高に対してどの程度の偏差を持つか視覚的に表示する機能を提供する調律装置が奏者の発生する楽音の音高確認に利用されることもある。
また特許文献1には、和音を構成する音を発生したときにそれらの音高が最も良く協和するための音高と実際に発音された音高との差異を表示するような形で和音構成音を調律することにより和音練習を支援する調律装置が開示されている。
また前記鍵盤型機器は個人だけで使用する場合には、大きすぎて携帯性が悪く、高価であるということもあり、全体合奏練習をするときやパート練習をするとき等にのみ利用される場合が多い。
前記鍵盤型機器と同時に別途調律装置を使用する場合もある。調律装置は入力された楽音の音高を計測し、その結果を視覚的に表示することが可能であるが、音高を平均律に従ったゲージ上に表示する方法を採っており、例えば調律対象とする音高が純正律で規定される音高である場合に該音名に関して平均律で規定される音高との偏差をまず認識している必要がある。
平均律は1オクターブを12等分した音律であり、隣り合う音(半音)の周波数比は全て:1と規定しているのに対して、純正律は周波数の比が単純な整数比である純正音程のみを用いて規定しているため同一の音名であっても平均律における周波数と純正律における周波数は異なる。例えばA(ラ)=440Hzを基準として、純正律でCMajor(ハ長調)が規定されたとするとC(ド)の音は純正律では264Hzであるのに対して平均律では261.6Hzというように偏差がある。このように目指すべき音高と奏者の楽音音高との偏差を計測器の表示から正しく読み取るためには音律の知識等が必要とされた。
また特許文献1に提案されている方法は同時に又は連続して発音された複数の楽音を調律装置に入力することにより、和音の種類と和音の各構成音の基準音高を定めるような手順があるが、該和音の構成音のうちいずれかの楽音の音高が基準となって他の和音の構成音の基準音高が定まるので、まず基準となる音高は安定した形で該調律装置に入力されなければならない。しかしながら安定した音高を該調律装置に入力すること自体が習熟を要することであるため実際には基準そのものの設定が困難であり特に未だ音感訓練に不慣れな奏者の和音練習支援には不向きであった。
ここで調律対象となる基準音高は平均律以外の音律で設定される音高であってもよい。その場合前記第1の基準音高が平均律に従って規定されるとすればそれ以外の音律によって規定される前期第2の基準音高は第1の基準音高に対して所定量だけ偏差を持っているので、調律対象となっている前記第2の音の音高と前記第2の基準音高との偏差は、前期第2の基準音高と前記第1の基準音高との前記偏差に基づいて、補正して表示される。この表示により音律に関する詳細な知識がなくても目標とする音高と奏者自身が発音する楽音とのずれが感覚的に把握しやすくなる。
図1は本発明の第1実施形態に係る偏差表示機の機能ブロック図である。この偏差表示機は、偏差表示機から発生され、練習者自身が発音する音との協和度合いを確認される対象となる協和対象音を指定する協和対象音指定手段1と、楽音入力手段2と、基本周波数解析手段3と、基準音高選択手段4と、協和対象音発音手段5と、入力音高対基準音高比較手段6と、偏差表示手段7とを備えている。
協和対象音発音手段5からは前記第1の音として指定された周波数を基本周波数として持つ楽音がスピーカーを通して安定した音高で発音される。
奏者は前記スピーカーから発音される楽音を聴きながら、その楽音と協和させたい音高の楽音を偏差表示機に向かって発音する。前記奏者の発音する楽音は楽音入力手段2により前記偏差表示機に入力される。前記楽音入力手段2はマイクロフォンで音を電気信号に変換し、その電気信号は増幅回路、フィルタ回路を通して基本周波数解析手段3へと入力される。
一例をとれば、第1の音がC(ド)であれば第1の音と同一のC(ド)、第1の音よりちょうど1オクターブ高いC(ド)、G(ソ)、F(ファ)とE(ミ)、E♭(ミ♭)、A(ラ)、A♭(ラ♭)の楽音周波数が前記基準音高の候補となる。ここで基準音高選択手段4は前記基本周波数解析手段3によって一旦解析された前記入力楽音の基本周波数に最も近い楽音周波数を持つ音名を前記基準音高の候補から選択し、これを第1の基準音高として決定する。
次に本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態は、基準音高選択手段4の中であらかじめ前記第1の基準音高の候補として前記第1の音を基に複数の周波数ポイントを基準音高の候補として持っていた。前記周波数ポイントは第1の音と完全協和音程となる1度、8度、5度、4度の音程の楽音と、第1の音と不完全協和音程となる長3度、短3度、長6度、短6度の音程となる楽音の周波数を平均律にしたがって規定したものであった。
和音を和音構成音の音高という観点で見ると、各構成音の基本周波数比率ができるだけ単純な整数比率になることが良く協和する和音の条件であることが知られている。この考えに基づいて第1の音の周波数と第1の音と完全1度の音程をなす楽音周波数比率は1:1、第1の音と第1の音と完全8度の音程をなす楽音周波数比率は1:2、その他順次完全5度の場合は1:3/2、完全4度の場合は1:4/3、長3度の場合は1:5/4、短3度の場合は1:6/5、長6度の場合は1:5/3、短6度の場合は1:8/5となるように決定される。このように決定された各楽音の基準音高の周波数は平均律で規定される各楽音の基準音高の周波数に対して、各々所定量の偏差を持つ。前記偏差量を音程表示するための対数単位であるセントを用いて表すと、C(ド)を第1の音とした場合、完全1度、完全8度のC(ド)では「0セント」、完全5度のG(ソ)では「+2.0セント」、完全4度のF(ファ)では「−2.0セント」、長3度のE(ミ)では「−13.7セント」、短3度のE♭(ミ♭)では「+15.6セント」、長6度のA(ラ)では「−15.6セント」、短6度のA♭(ラ♭)では「+13.7セント」である。
尚、セントは上述のように音程を表示するための対数単位であり、12平均律では1オクターブをそれぞれ100セントの幅を持つ12の半音に分割している。ある2つの楽音の周波数比率をαとすると2つの楽音の音程は1200×Log2αセントで計算される。
この偏差表示はメーター等視覚的に認識し易い方法が採られる。一般に利用されている調律装置は平均律で規定される基準音高と測定された音高との偏差表示を採っており、仮に基準音高と測定された音高との偏差が0である場合には、第2図に示すようにメーターの振幅範囲の中心位置に指針が来るように表示される。ところが本実施形態のように調律対象となる音名の基準音高が平均律で規定される基準音高に対して基準音高偏差を持った基準音高である第2の基準音高と奏者により発音され偏差表示機に入力される楽音の周波数との偏差を表示する場合には、仮に第2の基準音高と測定された音高との偏差が0であったとしても、基準音高偏差の分だけ指針がメーター振幅範囲の中心からずれた位置を指し示すように表示されてしまい、正しい楽音を発生させているのか奏者が混乱をきたすおそれがある。本実施形態では、このような場合にはその基準音高偏差分だけ測定によって判明した偏差を補正した値に基づいてメーターに表示させる。このような表示方法によれば、第2の基準音高と測定された音高との偏差を第2図に示すようにメーター振幅範囲の中心位置を基準に表示させることが可能となる。
次に本発明の第3実施形態について説明する。ヒトに共通する感覚として、同一音名の音はオクターブが異なっても同種の音として認識される。実際に合奏の中では低音楽器、中音楽器、高音楽器がさまざまな音高で楽音を同時に発生し、和音を奏でる場合が多い。音域が広い範囲の中でそれぞれの楽音が協和し合うと音の厚みや、深みを表現することができるため奏者は各々のパートの役割を意識しながら、音高、音量、音質が最適になるよう発音制御する。その場合に1オクターブ以上の音程をもった楽音が協和するという状況も普通にあるため、上記のような状況下での協和音感の養成訓練を支援するために、偏差表示機に入力される楽音は所定の音域内の同一音名として扱う。
以上説明したように本実施形態によればハードウェアの規模を増大させることなく、音声信号処理の工夫のみによって1オクターブ以上の音程をもった楽音間でも協和音感の養成訓練支援が可能となり、より広い音域の楽音を対象とした練習に適用できる。なお、本実施形態においては所定音域を1オクターブとしたが、これに限られない。機器の規模とコストが許容する範囲において所定の音域を広くしてもよい。例えば所定の音域を2オクターブとしてもよい。
次に本発明の第4実施形態について説明する。奏者は前記スピーカーから発音される楽音を聴きながら、その楽音と協和させたい音高の楽音を偏差表示機に向かって発音する。前記奏者の発音する楽音は、楽音入力手段2により前記偏差表示機に入力される。前記楽音入力手段2としてピエゾ素子等の振動センサにより楽音発生する楽器の振動を電気信号に変換し、その電気信号を増幅回路、フィルタ回路を通して基本周波数解析手段3へと入力する。偏差表示機を使用する環境は練習者が発生する楽音以外の周囲の音があることも考えられる。また前記偏差表示機自身が発生する前記第1の音もあり、前記楽音入力手段のうち、楽音を集音する手段がマイクロフォンであると、解析対象とする音声以外の音声も共に電気信号に変換されるので、その後のフィルタ回路及び基本周波数解析手段3における信号解析方法の中で信号対雑音比率を向上させるような処理が必要となる場合もある。本実施形態のように前記楽音入力手段2としてまず振動センサにより楽音を集音すれば、きわめて信号対雑音比率の高い状態で解析対象となる音声信号を取り出すことが可能となる。
次に本発明の第5実施形態について説明する。偏差表示機はあらかじめ使用者によって指定された前記第1の音を発生しながら、奏者の発生する楽音を調律するという動作をする。この偏差表示機自身が発生する楽音そのものが、調律対象となる奏者の発生する楽音に混入して、前記楽音入力手段2に集音される可能性がある。本実施形態では前記フィルタ回路は前記第1の音として指定された周波数近傍では信号が一定割合減衰するような設定をされ、のちに前記電気信号が前記基本周波数解析手段3により基本周波数分析される際に前記スピーカーから発音される楽音が、前記楽音入力手段2で集音されて、調律対象となっている楽音に対応する電気信号に重畳された結果、一定の閾値を超えて前記入力楽音として分析対象となってしまうことを回避する。練習者が前記第1の音として指定された音と同一の音高の発音練習をしたい場合も考えられるので前記フィルタ回路は前記第1の音として指定された周波数では信号が一定割合減衰するような設定に留め、調律対象となっている楽音と前記スピーカーから発音される楽音とが重畳された結果、一定の閾値を超えることで、分析の対処となるような処理を行う。このような処理を行うことで、第1の音として指定された周波数でも調律対象音として意識的に入力された楽音に対して解析処理可能とする。
上述した実施形態においては偏差表示機から発生される楽音を聞きながら、奏者自身が楽音発生をし、2つの楽音の協和度合いを耳で確認しながら楽音発生の制御訓練をするものであったが、3和音の協和音感養成支援をすることもできる。
前記第1の音が指定され、奏者が偏差表示機に向かって自身の楽音発生をすると協和対象音と調律対象音の2つの楽音が選択される。この協和対象音と調律対象音とが同一音でなければ二和音が設定される。更にこの協和対象音と調律対象音の2つを含んで長三和音と短三和音、もしくは長三和音か短三和音のいずれかを構成することができる。図3にC(ド)とE(ミ)の二和音が選択されている場合にC(ド)―E(ミ)―G(ソ)の長三和音とA(ラ)−C(ド)―E(ミ)の短三和音が構成可能な例を示す。前記第1の音が偏差表示機から発音されるのに加え上述のように三和音を構成する3番目の音も同時に偏差表示機から発音されることにより、奏者は自身が発生している楽音も含め三和音の協和度合いを耳で確認しながら、心地良い協和音が実現できるような発音制御訓練ができる。図3の例のように2種類以上の三和音が構成可能な場合には、偏差表示機に和音切換スイッチ等の選択手段を設ければよい。
31…協和対象音、32…調律対象音、33…長三和音を構成する3番目の音、34…短三和音を構成する3番目の音
Claims (6)
- 異なる音高のうちから選択された一つの音高を第1の音として指定する指定手段と、
少なくとも前記第1の音を含む音を発音する発音手段と、
第2の音を集音する集音手段と、
を備え、
前記第1の音に対応づけて決定される、前記第2の音の音高に最も近い音名の基準音高である第1の基準音高と前記第2の音の音高との偏差を表示する、
ことを特徴とする偏差表示機。 - 前記第1の基準音高から決定され、前記第1の基準音高に対して所定量だけ偏差を持たせた音高である第2の基準音高と前記第1の基準音高との前記偏差に基づいて、前記第2の音の音高と前記第2の基準音高との偏差を補正して表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の偏差表示機。 - 前記第2の音の音高が所定の周波数範囲よりも低い場合は前記第2の音の音高が前記所定の周波数範囲内に入るまで2n倍することを繰り返して前記第1の基準音高を決定し、前記第2の音の音高が前記所定の周波数範囲よりも高い場合は前記第2の音の音高が前記所定の周波数範囲内に入るまで1/2n倍することを繰り返して前記第1の基準音高を決定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏差表示機。 - 前記第2の音のみを集音する第2の集音手段をさらに備え、前記第2の集音手段によって集音された前記第2の音に基づいて前記第1の基準音高を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のひとつに記載の偏差表示機。 - 前記集音手段により集音した楽音のうち少なくとも第1の音の周波数に基づいて、その周波数の信号を所定量減衰する信号弁別手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のひとつに記載の偏差表示機。 - 2音の間の偏差を表示する偏差表示方法であって、
異なる音高のうちから、一つの音高を第1の音として選択する手順と、
少なくとも前記第1の音を含む音を発音する発音手順と、
第2の音を集音する集音手順と、
前記第1の音に対応づけて決定される前記第2の音の音高に最も近い音名の基準音高である第1の基準音高と、前記第2の音の音高との偏差を表示する表示手順と、
からなる、2音の間の偏差を表示する偏差表示方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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