JP2018155745A - 分離剤、並びに当該分離剤を用いた標的分子の分離方法及びクロマトグラフィー用カラム - Google Patents
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Abstract
Description
担体への官能基の導入は、通常は担体の多孔性の有無に関わらず、担体表面に直接、又はスペーサーと称される比較的分子量の小さな化合物を介して行われる。
分離剤の分離対象物の吸着量は、分離対象物の分子量が小さい場合には、担体を多孔質構造として比表面積を高くすることで増大させることが可能である。
しかしながら、タンパク質のように分離対象物の分子量が大きい場合には、多孔質構造を発達させた担体では細孔径が小さくなることから、分離対象物が細孔内部に拡散できない、又は拡散速度が低いためクロマトグラフィー法を用いる場合に流速を上げると分離対象物の細孔内部への拡散が充分に行われない、等の理由から、動的吸着量が低くなる問題があった。
加えて、担体表面のタンパク質との相互作用を適切に制御することで、種々のタンパク質の中から目的の分離対象物を精度よく分離できるような分離性能の向上も求められている。その目的で、イオン交換相互作用を有する分離剤(イオン交換分離剤)が多用される。中でも、イオン交換分離剤において、動的吸着容量が大きいだけでなく、分離対象物の細孔内拡散が良好で、かつ、非特異的な疎水吸着も抑えられた分離剤が求められている。
[水分含有率の測定方法]
直径3cmのガラスフィルター上に試料を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上、1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。
式(2)中、R6は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、アルデヒド基又はエポキシ基を表す。
式(3)中、R7は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。)
(a)標的分子を含む溶液を[1]〜[11]のいずれかに記載の分離剤に接触させて、標的分子を分離剤に吸着させる工程
(b)[1]〜[11]のいずれかに記載の分離剤から標的分子を溶離する工程
本発明の分離剤は、多孔性粒子と、前記多孔性粒子に結合したイオン交換基を含む分離剤であって、水銀圧入法で測定される比表面積が、65m2/g以上であることを特徴とする。
試料(測定対象の分離剤又は多孔性粒子)を内径1cm、長さ30cmのガラスカラムに充填し、液体クロマトグラフ(LC)で水を0.5mL/minで通液する。分子量分布500万〜4000万のデキストラン試薬の0.1質量%水溶液、及びエチレングリコール試薬の1質量%水溶液を調製し、それぞれ0.1mLを前記ガラスカラムに注入し、それぞれの溶出時間を測定する。それらの溶出時間から、下記式により空孔率を求める。
(空孔率)=((エチレングリコール溶出体積)−(デキストラン溶出体積))/((カラム容積)−(デキストラン溶出体積))
直径3cmのガラスフィルター上に試料(測定対象の分離剤又は多孔性粒子)を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上、1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。
また、本発明の分離剤の多孔性粒子は架橋合成高分子よりなることが好ましい。
測定原理上、DBCのほうがSBCよりも小さい値になるので、DBC/SBCの好ましい範囲としては、0.1以上0.99以下、更に好ましくは0.5以上0.9以下、更に好ましくは0.6以上0.85以下である。
分離剤を水湿潤状態として1体積部をチューブに秤取し、これに50体積部の濃度2.5mg/mLのヒトガンマグロブリン水溶液(和光純薬試薬)を加えて室温で3〜5時間攪拌しヒトガンマグロブリンを吸着させる。吸着前後の上澄み液の吸光度を測定し、別途作成した検量線より抗体の静的吸着量(SBC)を決定する。分離剤量と抗体溶液との比率、抗体の濃度、緩衝液の種類、pH、通液速度は測定対象に応じて適宜変更可能である。また、抗体以外のタンパク質にも同じように適用できる。タンパク質の例示としては、ラクトフェリン、インシュリン、リゾチーム、アルブミン、低分子化抗体、ペプチド類、ラクトグロブリン、トランスフェリン、トリプシンインヒビター、ペプシン、である。
マウスポリクローナルIgG抗体の吸着量やヒトガンマグロブリンの吸着量が小さいと、目的とするヒト抗体の吸着量も低下するものと考えられている。
抗体の動的吸着量(DBC)の測定方法の例は以下の通りである。
分離剤粒子を内径5mm、長さ100mmのカラムに充填し、濃度1mg/mlとしたヒトガンマグロブリン(和光純薬試薬)の酢酸緩衝液(pH6)を通液する。カラム流出液の吸光度が原液の吸光度の10%に達するまで通液し、その通液量をもとに動的吸着容量を算出する。得られた値は粒子1mLあたりの吸着容量に換算する。
カラムの大きさや抗体の濃度、緩衝液の種類、pH、通液速度は測定対象に応じて適宜変更可能である。また、抗体以外のタンパク質にも同じように適用できる。
本発明の分離剤で用いられる多孔性粒子(以下、「本発明に係る多孔性粒子」、又は単に「多孔性粒子」と記載する場合がある。)は、架橋合成高分子からなる多孔性粒子であることが好ましく、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位を2種以上含む重合体で構成される多孔性粒子であることがより好ましい。
本発明に係る多孔性粒子は、イオン交換基、好ましくはイオン交換基を含む合成高分子鎖を固定する担体であり、クロマトグラフィーの使用条件における耐久性と機械的強度を有する。また、共有結合によってイオン交換基を含む合成高分子鎖を共有結合で固定化できるための反応性官能基を有していることが好ましい。
このような多官能性単量体としては、例えばジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等の芳香族ポリビニル化合物、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、グリセロールジ(メタ)アクリル酸エステル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリカルボン酸ポリビニルエステル類、ポリカルボン酸ポリアリルエステル類、ポリオールポリビニルエーテル類、ポリオールポリアリルエーテル類、ブタジエン、メチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル等のポリビニル化合物が挙げられ、より具体的にはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
この中でもビニル基を2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体は好適な多官能性単量体の一つである。
その他の単量体として、例えば、スチレン系単量体としては、スチレン、エチルスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、クロロスチレン等の単量体;(メタ)アクリル系単量体として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリルのようなニトリル類などが例示できる。
また、上述の(メタ)アクリレート以外の架橋性単量体として、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、4−エポキシ−1−ブテンなどが挙げられる。
構成単位(a):90質量%以上30質量%以下、
構成単位(b):10質量%以上70質量%以下、
であり、より好適には、
構成単位(a):60質量%以上40質量%以下、
構成単位(b):40質量%以上60質量%以下、
である。
なお、「架橋合成高分子を構成する官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位の合計重量」は、官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構造単位を2種以上含む重合体が、構成単位(a)及び構成単位(b)のみからなる場合には、「エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位(a)」と「ビニル基を2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位(b)」の合計重量である。
また、構成単位(a)及び構成単位(b)以外に、他の構造単位を含む場合は、「エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位(a)」、「ビニル基を2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位(b)」及び「他の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体由来の構成単位」の合計重量である。
多孔性粒子に共有結合でイオン交換基を含む合成高分子鎖を結合させる処理としては、多孔性粒子表面に残存するエポキシ基及び/又はアミノ基等の共有結合性官能基を介して、イオン性官能基を有する合成高分子を付加させるグラフト処理などが挙げられる。
ここで、イオン性官能基とは、何らかのイオン性を有する官能基であり、なかでもイオン交換基であることが好ましく、例えば、カルボキシメチル基等のカルボキシル基、ホスホノエチル基等のホスホノアルキル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、2−メチルプロパンスルホン酸基等のスルホアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基等の各種アルキルアミノ基、ピリジン基等が挙げられ、好ましくはカルボキシル基、スルホプロピル基、2−メチルプロパンスルホン酸基が挙げられる。
イオン交換基を含む合成高分子鎖は、これらのイオン交換基の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
なお、ここで天然ポリマーではなく、合成ポリマーを用いるのは、合成ポリマーの方が天然ポリマーよりも純度が高く、多孔性粒子への固定化反応を制御し易い、また大量製造に適する、天然物由来のウイルス混入の懸念が無い、などの理由による。
導入された官能基は、固体核磁気共鳴法(固体NMR)や赤外分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、元素分析などにより分析することができる。また、酸やアルカリなどによる滴定によっても官能基の導入を確認することができる。
式(2)中、R6は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、アルデヒド基又はエポキシ基を表す。
式(3)中、R7は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。)
上記式(2)で表されるモノマーとしては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩等の1種又は2種以上が挙げられ、これらのうちスチレンスルホン酸塩が好ましく、p−スチレンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
上記式(3)で表されるモノマーとしては、ビニルフェニルメタンスルホン酸、ビニルフェニルエタンスルホン酸、ビニルフェニルプロパンスルホン酸、ビニルフェニルブタンスルホン酸等の1種又は2種以上が挙げられ、これらのうちビニルフェニルメタンスルホン酸、ビニルフェニルプロパンスルホン酸、ビニルフェニルブタンスルホン酸が好ましく、4−ビニルフェニルメタンスルホン酸がより好ましい。
特に、本発明では、イオン性水溶性ポリマーの製造原料として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等を有するモノマー(「モノマーA」と称す場合がある。)と、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のアルコール性水酸基を有するモノマー(「モノマーH」と称す場合がある。)とをモル比A/Hが1/100〜100/1となるように用いることが吸着量向上の観点から好ましい。
付加率={(W1−W0)/W0}×100
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の分離剤においては、イオン交換基を含む合成高分子鎖以外にも、多孔性粒子の表面に結合する側鎖があってもよく、例えば表面親水化処理や表面疎水化処理を実施して、親水性又は疎水性の側鎖を導入してもよい。
親水化処理を行うことで、粒子の水への分散性向上や、疎水性を有する物質の非特異的な吸着が抑制される。
表面親水化の指標としては、後述する非特異吸着量などにて評価できる。
疎水化処理を行うことで、疎水性を有する物質の吸着を促進することができる。一般的な逆相クロマトグラフィーの評価条件において、分離対象の保持を強くすることができるため、疎水性の高い物質を分離する際などには有用である。
表面疎水化の指標としては、ジプロピルフタレートのような疎水性物質の保持時間として評価できる。
本発明の分離剤は、上述のイオン交換基を含む合成高分子鎖を、架橋構造を有する合成高分子からなる多孔性粒子に共有結合で固定化することにより製造される。
本発明の分離剤に係る架橋合成高分子からなる多孔性粒子を得るための方法は、例えば、特公昭58−058026号公報に開示されているような方法を用い、上述の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(及びその他の単量体)を、懸濁重合や乳化重合させることによって行うことができる。原料となる単量体については、架橋合成高分子の構造単位として上述したため、ここでの説明を省略する。また、これらの単量体の重合における使用量は、多孔性粒子を構成する架橋合成高分子における構造単位が目的とする割合になるように調整される。
好適な単量体の種類や割合等についても架橋合成高分子の構造単位として上述したため、ここでの説明を省略する。
例えば、多孔性粒子の平均粒子径は、懸濁重合の操作条件、例えば、上記の各種原料単量体の種類・量の選択、乳化剤及び/又は保護コロイド剤の種類・量の選択、及び撹拌の強度(撹拌回転数等)、その他を調節すること等により、適宜制御することができる。
芳香族系多孔質化剤の場合は、重合時の相分離が良好なため、細孔が形成されやすく、架橋度が低くても細孔容積が充分で比表面積や水分含有量、空孔度の良好な多孔性粒子を得ることが出来る。原料となる単量体の合計重量に対する多官能性単量体の割合で示される架橋度の好適な範囲は10質量%以上、90質量%以下、より好ましくは40質量%以上、70質量%以下である。
一方、脂肪族多孔質化剤の場合は、単量体と多孔質化剤、ならびに重合で生成する架橋合成高分子と多孔質化剤との相溶性が良好である。この場合、細孔を発達させる手段として、架橋剤の量が少ない場合には多孔質化剤の量は少なめに設定し、緩やかに相分離を進行させると良い。一方、架橋度が高い場合には、多孔質化剤の量を増やすことで、発達した細孔の多孔質架橋粒子を得ることが出来る。
芳香族系多孔質化剤を使う場合、架橋度50質量%以上、70質量%以下が好ましく、その場合の多孔質化剤の添加量の好適範囲は、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、150重量部以上、200重量部以下である。
脂肪族系多孔質化剤を使う場合、架橋度10質量%以上、40質量%以下の領域では、多孔質化剤の添加量の好適範囲は、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、100重量部以上、150重量部以下である。この場合、架橋度のより好適な範囲は20質量%以上、40質量%以下である。
脂肪族系多孔質化剤を使う場合、架橋度40質量%以上、70質量%以下の領域では、多孔質化剤の添加量の好適範囲は、架橋合成高分子の原料となる単量体の総量を100重量部とした時に、150重量部以上、300重量部以下である。
多孔性粒子へのイオン交換基を含む合成高分子鎖の固定化方法は、特に制限はないが、以下のような方法(第1の態様、第2の態様)が好適である。なお、以下において、イオン交換基を有する合成高分子を「イオン性水溶性ポリマー」として説明する。
また、第2の態様の方法としては、スペーサーとしてアミノ酸(アミンカルボン酸)類を用い、そのアミノ基部位と架橋合成高分子のエポキシ基とを反応させた上で、他の末端のカルボキシル基によってイオン性水溶性ポリマーのアミノ基と反応させる方法や、スペーサーとしてジアミンやジオールと(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のジグリシジル化合物を逐次的に用いて、架橋合成高分子のエポキシ基とジアミン又はジオールの一方の末端を結合させ、他の末端にジグリシジル化合物の一方のエポキシ基を結合させて、残る末端のエポキシ基をイオン性水溶性ポリマーと結合させる方法などが挙げられる。
固定化反応の温度は4〜100℃程度が好ましい。温度が高くなると樹脂やイオン性水溶性ポリマーが劣化することがあり、一方温度が低いと反応に長時間を要することとなる。
上述の通り、イオン性水溶性ポリマーの固定化密度は、分離剤1リットル当たり1gより大きいことが好ましい。またその上限は特に限定されないが、通常50g/L以下である。
より好ましい固定化密度としては、樹脂1mL当たり0.05〜50μ(エポキシ)当量が挙げられる。
なお、末端基としてエポキシ基を持つスペーサーを有する多孔性粒子に含まれるエポキシ基の含有量は以下のようにして測定できる。
多孔性粒子5gを水湿潤状態でフラスコに量りとり、1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液を100mL添加する。フラスコを密栓し、100rpmで5時間撹拌し、発生したNaOHをフェノールフタレイン指示薬を用いて、0.1Nの塩酸で滴定する。
生成したNaOH量に基づいて樹脂(多孔性粒子)のエポキシ基含有量を算出する。
また、上記のように固定化反応を行った後、多孔性粒子側に残存する反応性官能基は、後処理により不活性化しておくことが好ましい。不活性化せずに残った反応性官能基は、徐々にイオン交換基を含む合成高分子鎖のイオン交換基と反応し、分離剤のイオン交換容量を低下させたり、選択率を悪化させたりする場合がある。
また、架橋構造を有する合成高分子の多孔性粒子を用いた上記分離剤を該保管媒体中で保管した時に、該分離剤の膨潤度が適切になり、かつ該分離剤に対する保管媒体への親和性が良好である。したがって細菌類の繁殖が抑制する効果や細孔内に固定されたイオン性水溶性ポリマーの保存安定性が良くなる効果が発現するので好ましい。より好ましいエタノールの濃度は10〜30質量%、さらに好ましい濃度は15〜25質量%である。
本願発明の分離剤は、イオン交換基を含む合成高分子鎖がイオン交換基を有するため、タンパク質、特に抗体を標的分子としたイオン交換分離剤として、これらの分離に好適に使用することができる。
(a)標的分子を含む溶液を上記の分離剤に接触させて、標的分子を分離剤に吸着させる工程
(b)前記標的分子を吸着した分離剤から該標的分子を溶離する工程
このような方法により、上記のような各種タンパク質を選択性良く分離することが可能である。
なお、略号としては、以下のものを用いた。
GMM:グリシジルメタクリレート
EGDMM:エチレングリコールジメタクリレート
MIBK:4−メチル−2−ペンタノン
ADVN:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
[測定・評価方法]
<細孔容積、細孔半径>
水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の多孔性粒子を用い、島津製作所製水銀ポロシメーターで試料の細孔容積、細孔半径を測定した。細孔容積、細孔半径をそれぞれ縦軸、横軸とした細孔の分布を示すヒストグラムにより、細孔容積の合計が最も多い部分の細孔半径を最頻度半径とした。なお、多孔性粒子の細孔物性はイオン交換基を含む合成高分子鎖の固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の細孔容積、細孔半径と分離剤の細孔容積、細孔半径とは、同一とみなす。
水銀圧入法による比表面積は、水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の多孔性粒子を用い、島津製作所製水銀ポロシメーターにより0.06MPaから410MPaの範囲で測定を行った。圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、円柱状と仮定した細孔の比表面積をWashburnの式に基づいて算出した。なお、多孔性粒子の細孔物性はイオン交換基を含む合成高分子鎖の固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の比表面積と分離剤の比表面積とは、同一とみなす。
直径3cmのガラスフィルター上に測定対象の多孔性粒子を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続した。得られたケーキを0.9g以上、1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量(乾燥後の秤量値および乾燥前の秤量値)とから水分含有率を算出した。なお、多孔性粒子の細孔物性はイオン交換基を含む合成高分子鎖の固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の水分含有量と分離剤の水分含有量とは、同一とみなす。
水湿潤状態の多孔性粒子を、減圧乾燥器で約10〜100mmHg下、50℃にて3〜24時間乾燥させ、得られた乾燥状態の多孔性粒子を再度水に漬けて水湿潤状態にした後、島津微小圧縮試験装置(MCT−W500型)、圧子50μm板、負荷速度2.4mN/secで平均粒径30〜60μmの粒子を選び、圧縮試験を行った。なお、多孔性粒子の細孔物性はイオン交換基を含む合成高分子鎖の固定の有無で有意に変化しないため、本発明の分離剤において、多孔性粒子の10%圧縮強度と分離剤の10%圧縮強度とは、同一とみなす。
JIS K7117−1に従って、単一円筒型回転粘度計(スピンドルタイプ、B型粘度計)を使用し、300mLトールビーカにイオン性水溶性ポリマーの水溶液を入れ、ガード無しで測定した。標準ロータのM1ロータを使用し、所定の補正係数を掛けた値を粘度とした。測定は23℃で行い、20質量%濃度のイオン性水溶性ポリマー水溶液について測定した。
(ヒトガンマグロブリン)
分離剤粒子を内径5mm、長さ100mmのカラムに充填し、濃度1mg/mlとしたヒトガンマグロブリン(和光純薬試薬)の酢酸緩衝液(pH6)を通液した。カラム流出液の吸光度が原液の吸光度の10%に達するまで通液し、その通液量をもとに動的吸着容量を算出した。得られた値は粒子1mLあたりの吸着容量に換算した。得られた動的吸着容量を以下の指標で評価した。
A:100mg/mL以上
B:70mg/mL以上100mg/mL未満
C:70mg/mL未満
(リゾチーム)
分離剤粒子を内径7mm、長さ26mmのカラムに充填し、濃度5mg/mlとしたリゾチーム(試薬)の20mMリン酸水素ナトリウム緩衝液(pH7.0)を通液した。カラム流出液の吸光度が原液の吸光度の10%に達するまで通液し、その通液量をもとに動的吸着容量を算出した。得られた値は粒子1mLあたりの吸着容量に換算した。得られた動的吸着容量を以下の指標で評価した。
A:120mg/mL以上
B:100mg/mL以上120mg/mL未満
C:100mg/mL未満
<製造例1>
ポリビニルアルコール(日本合成化学製)を溶解し2質量%とした水1000重量部中に、グリシジルメタクリレート(和光純薬製)60重量部、エチレングリコールジメタクリレート(和光純薬製)40重量部,2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1重量部(和光純薬製)、及び4−メチル−2−ペンタノン(和光純薬製)250重量部の混合物を室温下で加え、窒素流通雰囲気で撹拌して懸濁状態とした。このとき、撹拌速度を調整して液滴の平均直径が約60μmになるようにした。この懸濁液を70℃に昇温し、窒素流通雰囲気で3時間反応させた。冷却後、得られた架橋合成高分子からなる多孔性粒子を水洗後、メタノール洗浄し、乾燥、分級して目的とする多孔性粒子Iを得た。
重合工程でのモノマーの仕入組成量、多孔質化剤の種類と量、開始剤の使用量、浴比(水(ポリビニルアルコールを溶解した水)/モノマーの重量比)を表1のとおり変更し、製造例5〜7においては重合反応中の窒素流通をしなかったこと以外は、製造例1と同様にして、それぞれ製造例2〜7の多孔性粒子II〜VIIを得、細孔物性(細孔半径、細孔容積、比表面積)を乾燥状態で測定した。また、得られた粒子を水湿潤状態にして、水分含有量および10%圧縮強度を測定した。
<イオン性水溶性ポリマーの合成>
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸70重量部、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド50重量部、水460重量部、および開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド1重量部を混合し、70℃で重合を行い、イオン性水溶性ポリマーの水溶液を得た。ここで、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの比率(モル比)はA/Hで示され、2/3であった。得られたイオン性水溶性ポリマーの粘度は、792mPa・sであった。
上記製造例1で得られた多孔性粒子Iを5重量部、水を20重量部、上記イオン性水溶性ポリマーの水溶液を25重量部、47質量%硫酸を10重量部加えて混合し、50℃で6時間反応させた。その後降温して粒子を濾過、水洗し、目的の分離剤を得た。
実施例1の分離剤について、動的吸着量(DBC)の評価を行った。分離剤の評価結果を表3に示す。
用いる多孔性粒子を表3のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして、目的の分離剤を得、同様に動的吸着量(DBC)の評価を行った。分離剤の評価結果を表3に示す。
Claims (16)
- 多孔性粒子と、前記多孔性粒子に結合したイオン交換基を含む分離剤であって、
水銀圧入法で測定される比表面積が、65m2/g以上である、分離剤。 - 水銀圧入法で測定される細孔半径が、100Å以上である、請求項1に記載の分離剤。
- 水銀圧入法で測定される比表面積が、200m2/g以下である、請求項1又は2に記載の分離剤。
- 水銀圧入法で測定される細孔容積が、0.4mL/g以上、1.5mL/g以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の分離剤。
- 下記の測定方法で測定される水分含有率が、55質量%以上、90質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の分離剤。
[水分含有率の測定方法]
直径3cmのガラスフィルター上に試料を10g入れ、100mmHg以下の減圧条件で水を濾別しそのまま減圧を5分間継続する。得られたケーキを0.9g以上、1.1g以下の範囲になるように精秤し、精秤したケーキを乾燥機で恒量まで乾燥させたときの減量とから水分含有率を算出する。 - 体積平均粒子径が、1μm以上、1000μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離剤。
- 湿潤状態での見掛密度が、500g/L以上、1000g/L以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分離剤。
- 前記多孔性粒子に結合したイオン交換基が、イオン交換基を有する合成高分子鎖である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分離剤。
- 分離剤1リットルあたりの前記イオン交換基を有する合成高分子鎖の固定化密度が、1gより大きい、請求項8に記載の分離剤。
- 前記イオン交換基を有する合成高分子鎖を構成する水溶性ポリマーを20質量%の濃度で含む水溶液の23℃での粘度が1mPa・s以上、1000mPa・s以下である、請求項8又は9に記載の分離剤。
- 前記イオン交換基を有する合成高分子鎖が、下記式(1)〜(3)で表されるモノマーのいずれかに由来する構造単位を含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の分離剤。
式(2)中、R6は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、アルデヒド基又はエポキシ基を表す。
式(3)中、R7は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基を表す。) - 以下の工程(a)及び工程(b)を含むことを特徴とする標的分子の分離方法。
(a)標的分子を含む溶液を請求項1〜11のいずれか1項に記載の分離剤に接触させて、標的分子を分離剤に吸着させる工程
(b)請求項1〜11のいずれか1項に記載の分離剤から標的分子を溶離する工程 - 標的分子が、免疫グロブリンの少なくとも一部又はこれらの化学変性物である、請求項12に記載の標的分子の分離方法。
- 標的分子が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体或いはこれらの化学変性物である、請求項12又は13に記載の標的分子の分離方法。
- 標的分子が、免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部を含む融合タンパク質又はこれらの化学変性物である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の標的分子の分離方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の分離剤を含み、少なくとも1つの容器を備える、クロマトグラフィー用カラム。
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