JP2018154591A - 膜分離と蒸留を組み合わせた濃縮方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】膜分離装置と蒸留塔を組み合わせ、炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物からアルケン及び/又はアルカンを濃縮する濃縮方法であって、前記原料混合物を膜分離装置に供給しアルケンを膜透過させて回収するとともに、膜未透過混合物を蒸留塔に供給し、塔頂からの蒸気を前記原料混合物の供給路に循環供給し、塔底からアルカンを回収することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
そのような生産過程では、プロピレンはプロパンと分離して濃縮する必要があり、また、エチレンはエタンと分離して濃縮する必要がある。そのような同炭素数のアルケン(プロピレン、エチレン等)とアルカン(プロパン、エタン等)を含む混合物からアルケンを分離、濃縮するには、従来、蒸留塔が用いられているが、その際、多量のエネルギーが消費されることが知られている。
一方、1段又は2段の膜分離装置と蒸留塔とをハイブリッド化したものは、原料ガス中のプロピレン濃度が高い場合だけでなく比較的低き場合でも省エネルギー化が可能であるとされている。
そのような認識の下、本発明者は、上述以外のハイブリッド化の態様の可能性について鋭意検討した。そのような検討過程において、本発明者は、ハイブリッド化の有用な態様を見出し、本発明を完成するに至った。
<1>膜分離装置と蒸留塔を組み合わせ、炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物からアルケン及び/又はアルカンを濃縮する濃縮方法であって、前記原料混合物を膜分離装置に供給しアルケンを膜透過させて回収するとともに、膜未透過混合物を蒸留塔に供給し、塔頂からの導出物を前記原料混合物の供給路に循環供給し、塔底からアルカンを回収する濃縮方法。
<2><1>に記載の濃縮方法において、膜分離装置を2段に設け、前記原料混合物を1段目膜分離装置に供給し、その膜透過物を2段目膜分離装置に供給しアルケンを膜透過させて回収するとともに、1段目膜分離装置の膜未透過混合物を蒸留塔に供給し、2段目膜分離装置の膜未透過混合物を前記原料混合物の供給路に循環供給する濃縮方法。
<3>前記膜分離装置の理想分離係数が90以上である<1>又は<2>に記載の濃縮方法。
<4>炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物の供給路と、前記原料混合物の供給路に接続され、アルケンを膜透過させる膜分離装置と、前記膜分離装置に接続され、その膜透過アルケンを回収するアルケン回収路と、蒸留塔と、前記膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記蒸留塔に供給する膜未透過混合物供給路と、前記蒸留塔の塔頂からの蒸気を前記原料混合物の供給路に循環供給する蒸気循環供給路と、前記蒸留塔の塔底からのアルカンを回収するアルカン回収路を具備する濃縮装置。
<5>炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物の供給路と、前記原料混合物の供給路に接続される1段目膜分離装置と、前記1段目膜分離装置に接続され、その膜透過物を2段目膜分離装置に供給する膜透過物供給路と、前記2段目膜分離装置に接続され、その膜透過アルケンを回収するアルケン回収路と、蒸留塔と、前記1段目膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記蒸留塔に供給する膜未透過混合物供給路と、前記2段目膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記原料混合物供給路に循環供給する膜未透過混合物循環供給路と、前記蒸留塔の塔頂からの蒸気を前記原料混合物供給路に循環供給する蒸気循環供給路と、前記蒸留塔の塔底からのアルカンを回収するアルカン回収路を具備する濃縮装置。
<6>前記膜分離装置は、理想分離係数が90以上である<4>又は<5>に記載の濃縮装置。
<7>前記塔底から導出されるアルカン液の一部を加熱して前記蒸留塔の最下段の棚段に還流する<1>〜<3>のいずれか1項に記載の濃縮方法。
<8>前記蒸留塔の塔頂から導出するアルケン蒸気の一部を凝縮して最上部の棚段に還流する<1>〜<3>、<7>のいずれか1項に記載の濃縮方法。
<9>アルケンとしてプロピレンを、アルカンとしてプロパンを、それぞれ用いる<1>〜<3>、<7>、<8>のいずれか1項に記載の濃縮方法。
<10><4>〜<6>のいずれか1項に記載の濃縮装置において、前記塔頂からのアルケン蒸気の一部を最上段の棚段に還流する塔頂側還流路と、該塔頂側還流路に設けたコンデンサと、前記塔底からのアルカン液の一部を最下段の棚段に還流する塔底側還流路とをさらに具備する濃縮装置。
<11>アルケンとしてプロピレンを、アルカンとしてプロパンを、それぞれ用いる<4>〜<6>、<10>のいずれか1項に記載の濃縮装置。
本発明の実施例1の濃縮装置は、アルケンとアルカンとを含む原料混合物の供給路と、前記原料混合物の供給路に接続される膜分離装置と、前記膜分離装置に接続され、その膜透過物を低沸点成分(アルケン)として回収する低沸点成分回収路と、蒸留塔と、前記膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記蒸留塔に供給する膜未透過混合物供給路と、前記蒸留塔の塔頂からの導出物(蒸気)を前記原料混合物の供給路に循環供給する塔頂導出物循環供給路と、前記蒸留塔の塔底からの導出物を高沸点成分(アルカン)として回収する高沸点成分回収路を具備する。
膜分離装置の形式としては、十字流式、向流式、並流式などの形式が存在するが、いずれの形式も採用することができる。
膜分離装置では、アルケンとアルカンは気体状態で膜分離されるので、原料混合物が液体を含むなどの状態に応じて、原料混合物の供給路に原料混合物を加熱する、加熱器を設けることもできる。
供給される膜未透過混合物は、その温度が供給される棚段内と大差がないように、原料混合物供給路の加熱器を調整することが望ましい。蒸留塔の棚段に供給される膜未透過混合物の温度を該棚段内の温度に近づけるように、膜未透過混合物供給路に膜未透過混合物の温度を調整する加熱器及び/又は冷却器などの温度調節器を設けることも必要に応じて可能である。
アルケンとアルカンを含む原料混合物は、それ以外の成分や不純物などを含有しないことが望ましいが、濃縮に支障がない程度であれば、それ以外の成分や不純物を所定量以下(例えば、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下)含有することも許容される。
指標として用いた参考例1と参考例2の濃縮装置、及び、上記の実施例1の濃縮装置について、濃縮に必要なエネルギー消費量の比較をシミュレーションにより行う。
参考例1の濃縮装置の構成を図2に示す。この濃縮装置は、1台の膜分離装置と、1台の蒸留塔、リボイラー、3台の加熱器、コンデンサ、圧縮機、冷却器を備える。原料混合物は蒸留塔に供給され、蒸留塔の塔頂からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて膜分離装置に供給され、その膜透過物は、低沸点成分として回収され、膜未透過混合物は蒸留塔に循環供給され、蒸留塔の塔底からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて、高沸点成分として回収される。
参考例2の濃縮装置の構成を図3に示す。この濃縮装置は、1台の膜分離装置と、1台の蒸留塔、リボイラー、2台の加熱器、コンデンサ、圧縮機、冷却器を備える。原料混合物は原料混合物供給路を通じて膜分離装置に供給され、その膜透過物は、低沸点成分(アルケン)として低沸点成分回収路Aを通じて回収され、膜分離装置の膜未透過混合物は、膜未透過混合物供給路を通じて蒸留塔に供給され、蒸留塔の塔頂からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて低沸点成分(アルケン)として低沸点成分回収路Bを通じて回収され、蒸留塔の塔底からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて、高沸点成分(アルカン)として高沸点成分回収路を通じて回収される。
先行例(非特許文献1の8頁参照)の濃縮装置の構成を図4に示す。この濃縮装置は、1台の膜分離装置と、1台の蒸留塔、リボイラー、2台の加熱器、コンデンサ、圧縮機、2台の冷却器を備える。原料混合物は原料混合物供給路を通じて膜分離装置に供給され、その膜透過物は、圧縮機とその下流の冷却器とを有する膜透過物供給路を通じて蒸留塔の上段側へ供給され、前記膜分離装置の膜未透過物は蒸留塔の下段側に供給され、蒸留塔の塔頂からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて低沸点成分(アルケン)として低沸点成分回収路を通じて回収され、蒸留塔の塔底からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて、高沸点成分(アルカン)として高沸点成分回収路を通じて回収される。
エネルギー消費量を確認するために、図2の参考例1、図3に示した参考例2、又は、図1に示した実施例1の濃縮装置を用いて、プロピレンとプロパンからなる混合物を原料とし、入力時におけるプロピレンの濃度を90モル%、プロパンの濃度10モル%として、毎時1592キロモルを供給するとして、膜分離装置の透過側の最終出口(参考例2の場合には、膜分離装置の透過側の最終出口と蒸留塔の塔頂側の最終出口を合わせたもの)におけるプロピレンの濃度が高濃度(99.5モル%以上)、プロピレンの回収率(最終出口のプロピレンの流量と入力されたプロピレンの流量の比)が99.5%となるようにプロピレンの分離操作を行った場合における、分離に必要なエネルギー消費量(加熱器、リボイラー、圧縮機への投入エネルギー量)を、プロセスシミュレーションソフトウェアによりシミュレーション解析を行った。なお、冷却の熱源としては河川水や地下水などがそのまま利用できるため、冷却器やコンデンサで使用されるエネルギーは考慮していない。
シミュレーションで用いた蒸留塔と膜分離装置の主な仕様、及び、シミュレーションモデルは、下記のとおりである。
蒸留塔:棚段、段数230段。蒸留塔の塔頂の圧力2040kPa。
膜分離装置:FAU型ゼオライト分離膜。操作温度120℃、混合物の供給圧力2040kPa、透過側の操作圧力600kPa、プロピレンとプロパンの理想選択性100。(酒井求、佐々木康人、松方正彦、加圧条件下におけるFAU型ゼオライト膜のプロピレン/プロパン分離特性、石油学会第59年会講演要旨集、A03、2016)。膜分離装置のステージカット(膜分離装置の透過側の流量と膜分離装置に入力する流量の比)は、参考例1が0.8で、参考例2と実施例1は、0.9。
プロセスシミュレーションにより、分離に必要なエネルギー消費量の解析を行うため、蒸留塔の解析には平衡段モデルを、膜分離装置の解析には十字流プラグフローモデルを用いた。計算を行う上での仮定として、膜分離装置の操作温度は一定、膜分離装置内での圧力損失はなし、膜分離装置の理想分離係数の混合物の濃度依存はなしとした。
(シミュレーション解析結果)
参考例1、参考例2、先行例、及び、実施例1についてのシミュレーション解析結果を表1に示す。
表1から明らかなように、参考例2の濃縮装置は、先行例とほぼ同程度であるが、参考例1と比べると、エネルギー消費量の合計値が大幅に小さく、省エネルギー効果が大きい。
本発明の実施例1の濃縮装置は、エネルギー消費量の合計値が参考例1に較べ大幅に小さく、参考例2や先行例に比べもさらに小さくなっており、省エネルギー効果が最も優れている。
図1に示した実施例1、図2に示した参考例1、図3に示した参考例2、及び、図4に示した先行例のそれぞれの濃縮装置を用いて、プロピレンとプロパンからなる混合物を原料とし、入力時におけるプロピレンの濃度を90モル%、プロパンの濃度10モル%として、毎時1592キロモルを供給するとして、膜分離装置の透過側の最終出口(参考例2の場合は、膜分離装置の透過側の最終出口と蒸留塔の塔頂側の最終出口を合わせたもの)におけるプロピレンの濃度が高純度(99.5モル%以上)、プロピレンの回収率(最終出口のプロピレンの流量と入力されたプロピレンの流量の比)が99.5%となるようにプロピレンの分離操作を行う場合において、蒸留塔の棚段数を減らした場合における、濃縮に必要なエネルギー消費量を上記シミュレーション解析例1と同様にしてシミュレーション解析を行った。
図7に示した実施例2、図2に示した参考例1、及び、図3に示した参考例2、及び、図4に示した先行例のそれぞれの濃縮装置を用いて、原料混合物に含まれるプロピレン濃度を変化させた場合のシミュレーションを行った。
実施例2の濃縮装置の構成を図7に示す。この濃縮装置は、2台の膜分離装置と、1台の蒸留塔、リボイラー、2台の加熱器、コンデンサ、2台の圧縮機、2台の冷却器を備える。原料混合物は原料混合物供給路を通じて1段目膜分離装置Aに供給され、その膜透過物は、膜透過物供給路を通じて2段目膜分離装置Bに供給され、その膜透過物は、低沸点成分(アルケン)として低沸点成分回収路を通じて回収され、2段目膜分離装置Bの膜未透過混合物は、膜未透過混合物循環供給路を通じて原料混合物供給路に循環供給され、1段目膜分離装置の膜未透過混合物は、膜未透過混合物供給路を通じて蒸留塔に供給され、蒸留塔の塔頂からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて塔頂導出物循環供給路を通じて原料混合物供給路に循環供給され、蒸留塔の塔底からの導出物は、蒸留塔に還流される一部を除いて、高沸点成分(アルカン)として高沸点成分回収路を通じて回収される。
実施例1の濃縮装置について、膜分離装置の理想分離係数を変化させた以外は上記シミュレーション解析例1と同様にしてシミュレーション解析を行った。その解析結果を図6に示す。
膜分離装置の理想分離係数が90程度まで増加するにつれ、実施例1の濃縮装置のエネルギー消費量合計は急激に減少した。膜分離装置の理想分離係数が90以上では、エネルギー消費量の減少は緩やかである。膜分離装置の理想分離係数が90〜100程度のものは、FAU型ゼオライト分離膜、BEA型ゼオライト膜などによって実現されているので、本発明を実際の濃縮装置に応用した場合でも同様の省エネルギー効果が得られると考えられる。
本発明は、既設の蒸留塔に膜分離装置を導入する手段としても利用可能であり、また、新設の膜分離と蒸留を組み合わせた装置を設計する手段としても利用可能であり、産業上の利用可能性は極めて高い。
Claims (6)
- 膜分離装置と蒸留塔を組み合わせ、炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物からアルケン及び/又はアルカンを濃縮する濃縮方法であって、前記原料混合物を膜分離装置に供給しアルケンを膜透過させて回収するとともに、膜未透過混合物を蒸留塔に供給し、塔頂からの導出物を前記原料混合物の供給路に循環供給し、塔底からアルカンを回収する濃縮方法。
- 請求項1に記載の濃縮方法において、膜分離装置を2段に設け、前記原料混合物を1段目膜分離装置に供給し、その膜透過物を2段目膜分離装置に供給しアルケンを膜透過させて回収するとともに、1段目膜分離装置の膜未透過混合物を蒸留塔に供給し、2段目膜分離装置の膜未透過混合物を前記原料混合物の供給路に循環供給する濃縮方法。
- 前記膜分離装置の理想分離係数が90以上である請求項1又は2に記載の濃縮方法。
- 炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物の供給路と、前記原料混合物の供給路に接続され、アルケンを膜透過させる膜分離装置と、前記膜分離装置に接続され、その膜透過アルケンを回収するアルケン回収路と、蒸留塔と、前記膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記蒸留塔に供給する膜未透過混合物供給路と、前記蒸留塔の塔頂からの導出物を前記原料混合物の供給路に循環供給する塔頂導出物循環供給路と、前記蒸留塔の塔底からのアルカンを回収するアルカン回収路を具備する濃縮装置。
- 炭素数が2〜4の範囲内でかつ同炭素数のアルケンとアルカンとを含む原料混合物の供給路と、前記原料混合物の供給路に接続される1段目膜分離装置と、前記1段目膜分離装置に接続され、その膜透過物を2段目膜分離装置に供給する膜透過物供給路と、前記2段目膜分離装置に接続され、その膜透過アルケンを回収するアルケン回収路と、蒸留塔と、前記1段目膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記蒸留塔に供給する膜未透過混合物供給路と、前記2段目膜分離装置に接続され、その膜未透過混合物を前記原料混合物供給路に循環供給する膜未透過混合物循環供給路と、前記蒸留塔の塔頂からの導出物を前記原料混合物供給路に循環供給する塔頂導出物循環供給路と、前記蒸留塔の塔底からのアルカンを回収するアルカン回収路を具備する濃縮装置。
- 前記膜分離装置は、理想分離係数が90以上である請求項4又は5に記載の濃縮装置。
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