本明細書に記載の実施態様は、製造におけるエネルギー使用量の削減をもたらす、直鎖アルファオレフィンを製造するためのプロセスを提供する。一つの実施態様においては、ヘキセン分離塔からの塔頂凝縮器を、ブテン分離塔のための再沸器として使用する。このことによって、システムにおける総合的な熱の所要量が削減される。第一の実施態様と関連して、または別途に使用することも可能な、また別の実施態様においては、ブテンおよびヘキセン精製塔のいずれか、または両方のために二塔式(two tower)精留システムを使用する。そのフィードを分割し、二つの異なった圧力で運転される二本の別々ではあるが統合された塔にフィードし、熱交換を行わせて、製造コストがより低減される。
本明細書で使用するとき、「超精留」という用語は、0.3〜10℃の間の沸点差を有する2種以上の成分を蒸留によって分離することを指している。本明細書で使用するとき、「触媒複分解」という用語は、2種のオレフィンの間で不均化反応をさせて、2種のまた別なオレフィンを製造することを指している。
ブテンの自動複分解を含む複分解反応でのヘキセンの製造においては、三つの一般的な処理過程が存在する。第一段階では、たとえばラフィネート2ストリームのようなC4ストリームから1−ブテンを製造する。次の段階で、その1−ブテンに自己不均化すなわち自動複分解を行わせて、エチレンと3−ヘキセンとを形成させる。最後の段階で、3−ヘキセンを異性化させて1−ヘキセンとし、次いでそれを精製する。これらの処理過程のそれぞれについて、以下において詳しく説明する。
1−ブテンの製造においては、ラフィネート2を、蒸留/ブテン異性化の組合せシステムにフィードする。ラフィネート2とは、ブタン、ブテン−1およびブテン−2を含むが、イソブチレンおよびブタジエンは両方とも極めて少ない量でしか含んでいない、C4ストリームである。蒸留からの製品には、典型的には、少なくとも純度90重量%の1−ブテンを含む塔頂ストリームが含まれる。ノルマルブテンの異性体の間の比揮発度が低いために、分離を達成するためには、極めて多段の蒸留トレーと極めて高い還流比とが必要となる。これらの要件があると、その蒸留塔では、再沸の負荷と凝縮の負荷に膨大なエネルギーが必要となる。
1−ブテンからエチレンと3−ヘキセンとを生成させる自己不均化すなわち自動複分解においては、1−ブテンを複分解触媒の上で反応させ、その反応の生成物を精留システムの中で分離させる。その反応生成物にはC2からC7までの炭素数を有する生成物が含まれているので、精留塔の配列に関連して、数多くの精留の選択肢が存在する。その精留システムでの要件は次の通りである:
(1)C2/C3反応生成物を有用なオレフィンとして回収するための分離、
(2)高いプロセス収率を達成するための、C4/C5オレフィンのリサイクル、および
(3)最終のプロセス工程へのフィードとしての、3−ヘキセンが主体のストリームの分離。適切な自動複分解触媒の例としては、酸化タングステン、酸化モリブデン、または酸化レニウムなど、第VIB族または第VIIB族の金属酸化物が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
1−ヘキセン製造の最終工程すなわち、3−ヘキセンから1−ヘキセンへの異性化およびその1−ヘキセンの精製においては、精製を第二の「超精留塔」で実施する。この蒸留は、1−ブテン精留の場合よりも、さらに一段と困難である。多段のトレーと極めて高い還流比が必要とされ、相当なエネルギー消費量となる。全体のプロセスに対して、ブテンの分離のために必要なエネルギーに加えて、ヘキセンの分離でもかなりのエネルギー消費量となる。本明細書に記載のいくつかのプロセスおよびシステムは、直鎖アルファオレフィンたとえば1−ヘキセンの製造におけるエネルギー使用量を削減する。
ブテンから1−ヘキセンの製造においてエネルギー消費量を削減するための一つのプロセスは、ヘキセン−スプリッターの塔頂トレーの蒸気を、ブテン−スプリッターの塔底トレーの液体を加熱するために使用することである。このことは、n−ブテン分離システムの加熱エネルギー消費量と、ヘキセン塔分離システムのための塔頂冷却必要量との両方を無くすことになる。
ブテン−スプリッターおよびヘキセン−スプリッターのいずれもが、製品としての塔頂凝縮器液体の中でのアルファ−オレフィンが高い濃度となっている必要がある。ブテンスプリッターでは、その製品ストリーム中に、多くの場合90%を超える、場合によっては95%を超える1−ブテンが必要とされる。ヘキセンスプリッターでは、その製品ストリーム中に、98%を超える1−ヘキセンが要求されることが多い。ブテン塔およびヘキセン塔の中における、内部オレフィン類(2−ブテン、2−ヘキセンおよび3−ヘキセン)と、アルファオレフィン類(1−ブテンおよび1−ヘキセン)との比揮発度が極めて低く、そのために、精留では、いずれの塔においても顕著な段数と還流とが必要となる。比揮発度とは、同一の温度における個々の成分の蒸気圧の比であって、精留による分離の相対的な傾向を表している。比揮発度が高いほど、分離するのが容易である。
従来からのシステムにおいては、そのブテンスプリッターは、1−ブテンと2−ブテンとの間の比揮発度を高め、それにより、必要とされる分離を促進させるために、可能な限り低い圧力で運転するように設計されている。比揮発度を高めることによって、必要とされる還流量および加熱/冷却の負荷レベルが下がる。しかしながら、凝縮器液体(condenser liquid)を冷却するために必要な温度によって、ブテン塔の圧力が制限される。ブテン塔の圧力が極めて低いと、塔頂温度が冷却水の温度範囲から外れてしまい、その結果、冷凍が必要となり、その冷凍を与えるための追加のプロセスエネルギーが必要となる。この用途においては、そのブテン塔(1本または複数)は、典型的には、ほぼゲージ圧で70重量ポンド毎平方インチ(70psig)で設計されているであろう。ここで1psig=6.895kPaである。以下では圧力をpsigで表示するが、上記換算率でSI単位系のkPaに変換される。
従来からのシステムにおけるヘキセンスプリッターも、先に説明したのと同じ理由で、ブテンスプリッター(1本または複数)と同様に設計されている、すなわち、低い塔の圧力を使用して比揮発度を上げることによって、分離を促進している。ヘキセン類のほうがブテン類よりも高い温度で沸騰するので、ヘキセン塔は、大気圧またはそれより低い圧力で運転することが可能であり、凝縮器においては水がまだ使用できる。この塔は典型的には、−10〜5psigの範囲の圧力で運転される。
本明細書に記載の実施態様の一つにおいては、そのヘキセンスプリッターがより高い圧力で運転され、それによって、その塔頂蒸気ストリームを、ブテンスプリッターの再沸器ストリームを加熱するために利用することが可能となる。ヘキセンスプリッター(1本または複数)をより高い圧力で運転すると、絶対圧力が高くなるほど比揮発度が下がるので、還流比が一定ならば、より多くの理論段が必要となってくる。以下の表1に示すコンピュータシミュレーションからもわかるように、ヘキセンスプリッターの塔頂圧力を0psigから15psigまで上げると、理論分離段が103段から125段へと高くなってしまう。これは、21%の増加率に相当する。したがって、圧力がより高い塔では、段数が増えるために、建設費が高くなるであろう。
別な方法として、塔頂圧力15psigで同一の段数を使用したとすると、同一の分離度を達成するためには、圧力が高い塔では、より高い還流比が必要となるであろう。このことは、塔の直径が大きくなって建設コストが上がり、さらには、再沸および凝縮の負荷が高くなるためにエネルギーの使用量も多くなる。
ブテン塔のための再沸器負荷を与える目的でヘキセン塔が運転されるようなプロセスにおいては、そのブテン塔の圧力は、凝縮器における冷凍の使用を避けるためには、好ましくは70psigより高く、あるいは約70psig〜約100psigとするべきである。そのようにすると、C4塔の再沸器温度がほぼ139゜F(約59℃)となる。ヘキセン塔を高い圧力で運転することによって、その塔頂凝縮器の温度(ヘキセンカラムにおける最低温度)を、そのヘキセン塔の凝縮器をC4カラムのための再沸器として使用することが可能な温度にまで高めることができる。このことは、ヘキセン塔における精留の必要条件(段数、還流、またはその両方)を高めることになるので、ヘキセン塔の圧力を高めて、その凝縮器を使用してブテン塔の再沸負荷を与えられるようにすることで、正味の省エネルギーのような結果が得られるとは、予想もされなかった。
1−ブテン/2−ブテンスプリッターの塔底トレーの液体と、1−ヘキセン/2−ヘキセンおよび3−ヘキセンの塔頂トレーの蒸気との熱交換をさせるためには、最低限でも、ヘキセン塔の圧力を、表1に記載の「高圧力」の範囲(15psig)にまで上げなければならない。ヘキセン塔においてより低い圧力で運転すると、以下の表2に見られるように、熱交換器のミニマムアプローチ(minimum approach)が低下する。
このヘキセン塔を大気圧で運転すると、ヘキセンの精留にとってはそれが最適ではあるものの、その塔頂トレーの蒸気温度では、ブテン塔底トレー液体を効果的に加熱することができないということになるであろう。ヘキセン塔で高い圧力を使用するのは、必要とされる分離を達成しようとするとより多くのトレーが必要となるのだから、直感に反することである。しかしながら、ヘキセン塔で高い圧力を使用することによって、そのヘキセン蒸気を、ブテン再沸器ストリームを加熱するために使用することが可能となる。このことが、システム全体にとっては、省エネルギーとなるのである。
図1に、上述の熱統合を有するシステムを示す。そのシステム全体を100と呼ぶ。このシステムには、再沸器104を有する1−ブテン/2−ブテンスプリッター102と、還流ドラム108を有する1−ヘキセン/2−および3−ヘキセンスプリッター106とが含まれている。1−ヘキセン蒸気ストリーム110を、ヘキセンスプリッター106の塔頂から抜き出して、再沸器104の中の加熱ストリームとして使用し、その結果、再沸器104の中を通過することでストリーム110の温度が低下し、通常はストリーム110のある程度の凝縮が起きる。ストリーム112は、ブテンスプリッター102の塔底から抜き出し、分割して、再沸ストリーム114とブテン塔底ストリーム116とにする。ストリーム114は、再沸器104の中で加熱してから、ブテンスプリッター102の下端に戻す。
熱交換器104の中で熱を与えた後、必要があれば、1−ヘキセン蒸気ストリーム110を、冷却水ストリーム120を使用して熱交換器118の中でさらに冷却して、完全に凝縮させる。冷却された1−ヘキセンストリーム110は、還流ドラム108に送る。ドラム108からの流出物の一部は、還流ストリーム122としてスプリッター106に戻し、残りのものは、1−ヘキセン製品ストリーム124として抜き出す。上述のケースにおいては、ヘキセン塔106のために必要とされる凝縮器の負荷が、ブテン塔102のための再沸器の負荷よりも大きい。ブテンの組成がもっと希薄であるか、それとは別に複分解に行くであろう1−ブテンストリームに加えて製品の1−ブテンストリームを抜き出すような、また別の設計においては、ブテンスプリッター再沸器の負荷が、ヘキセンスプリッター凝縮器の負荷よりも大きくなるであろう。そのようなケースにおいては、ストリーム110に対する追加の冷却器に代えて、ストリーム114に追加の再沸器を存在させて、ブテンスプリッターのための再沸器負荷のバランスをとることになるであろう。
ヘキセンおよびブテンのスプリッター中における冷却水/スチーム削減の程度は、塔の規格と製造能力に依存する。図1に関連させて記載してきた熱統合は、冷却水(CW)および加熱のためのスチーム(LPS)の両方を顕著に削減することができる。以下の表3および4で、50KMTAの1−ヘキセン製造能力の場合の、ヘキセン塔とブテン塔とを統合する前後における、プロセスのためのエネルギーを比較する。
これらの表からもわかるように、ブテン再沸器とヘキセン凝縮器との間で熱交換させることによって、CW所要量が76231KWから48771KWへと(つまり36%)削減され、低圧スチームの加熱負荷(LPS)が68301KWから39901KWへと(つまり42%)削減される。
製造能力を高めるには、複数の1−ブテン/2−ブテンスプリッター、さらには複数の1−ヘキセン/2−&3−ヘキセンスプリッターを採用すればよい。このシナリオの下では、ブテン−スプリッターのストリーム112に示したようなフローを組み合わせて、ヘキセン−スプリッターのストリーム110に示したようなフローを組み合わせたものと熱交換させればよい。いくつかの場合においては、トリム冷却水交換器(trim cooling water exchanger)が必要となるかもしれない。
プロセス効率を向上させるまた別な方法は、ブテンスプリッターへのフィードおよび/またはヘキセンスプリッターへのフィードを二本の別々の塔に分割して、超精留プロセスにおいてその二本の塔を異なった圧力で運転する方法である。ヘキセン分離において使用すると、本明細書に開示された実施態様の機能では、同等のトレー数および運転圧力では、ヘキセン塔システムのエネルギー消費量が約33%削減される。これらの節減法は一般的に、比揮発度が低い炭化水素を分離する超精留システムに適用することができる。ヘキセンシステムの場合には、この実施態様によって達成されるメリットが、上述の統合熱交換システムによって達成可能なメリットに上乗せされる。
超精留塔では、再沸用役と凝縮用役との両方において、莫大な量のエネルギーを消費する。超精留塔におけるエネルギーコストを削減するための種々の選択肢についての検討が公開されている。公知のシステムとしては以下のものが挙げられる。
(a)圧力差塔。そこでは、塔を二本の別個の塔に分割する。第一の塔を、第二の塔よりも高い圧力で運転し、第一の塔の凝縮器を第二の塔の再沸に使用する。
(b)ヒートポンプの使用。この場合、塔頂蒸気を圧縮して、より高い圧力にする。圧縮エネルギーが、その蒸気を加熱して、より高い温度に上げる。次いで、そのより高い圧力/より高い温度の蒸気を(より高い温度で)凝縮させて、塔のための再沸負荷を得る。この選択肢は、それ自体ではエネルギー節約にはならないが、省エネルギーになるであろうという条件下での運転を可能とする。塔の圧力を下げることによって、炭化水素類の比揮発度が高くなる。このことによって、所定の分離を達成するための、段数を減らしたり、還流を少なくしたりすることが可能となる。しかしながら、より低い圧力での運転は、塔の温度を下げることとなり、凝縮器負荷のために、冷却水ではなく冷凍が必要となるおそれがある。これによって、エネルギー消費量が増大するであろう。ヒートポンプを運転することによって、より低温の負荷と再沸負荷の両方を、圧縮電力で供給することが可能であり、このことは、追加の冷凍によるエネルギーの上昇を招くことにはならない。
システム(a)の二塔システムは、低級オレフィンをそれらのパラフィン類似体から分離する場合のような、各種の分離塔の配列において使用されてきた。単一の塔を用役の面から設計すれば、その凝縮器負荷は100%が塔頂にあり、そしてその再沸負荷は100%が塔底にある。このことは、塔全体での最大の温度差を表している。二塔を使用して二つの異なった圧力で精留することによって、それぞれの塔を、異なった還流比で運転することが可能となり、エネルギー総量およびエネルギーレベルの両面で負荷を最適化することができる。「エネルギーレベル」という用語は、多くの場合、冷凍システムにおいてより大量のエネルギーを必要とする、より冷たいレベルの冷凍の温度と定義することができる。この統合は、側留再沸器または側留中間冷却器を使用した場合とは異なって、単一の塔の中で用役を最適化するために還流および温度分布を調節するためのものではない。
本明細書に記載の実施態様においては、分割フィードを有する二塔システムにおいて1−ヘキセンを2−ヘキセンおよび3−ヘキセンから分離する場合、その二本の蒸留カラムのそれぞれの塔頂における圧力の差は通常、4〜40psi、または6〜20psi、または8〜15psiである。本明細書に記載の二塔システムを使用して、その他の沸点か近接した成分を分離する場合、その二本の蒸留カラムのそれぞれの塔頂における圧力の差は通常、4〜40psi、または6〜20psi、または8〜15psiの範囲である。差圧の最適な選択は、熱交換のための所望の温度差と、その結果として得られる熱交換器のサイズ(およびコスト)によって決まる。
システム(a)を効率的に使用するための要諦は、その二塔のそれぞれの運転をバランスさせて、第一の塔の凝縮負荷が、第二の塔で必要とされる再沸負荷にマッチするようにすることである。いくつかのケースにおいては、アンバランスの存在も許容されるが、その差を補うための、小さな外部加熱再沸器か、またはその代わりに小さな冷却凝縮器を設置して、その差を補う。これは、システムを調節するために、使用されることも多い。また別な可能性は、それぞれの塔における精留負荷を調節して、バランスさせる方法である。運転のバランスをとるために従来から実施されてきた方法は、第一の塔からの蒸気の幾分かを、第二の塔にバイパスできるようにするか、または別な方法として、第二の塔からの液体の幾分かを、第一の塔に通すことができるようにするか、のいずれかによって、一つの塔からもう一つの塔へ負荷をシフトさせる方法である。従来からの選択肢の第一のものにおいては、塔フィード(tower feed)を、第一のまたはより高圧力のカラムに送る。第一の塔における凝縮負荷の量は、第一の塔から第二の塔への蒸気のバイパス運転によって調節する。このバイパスによって、一つの塔の凝縮部分から、もう一つの塔の再沸負荷へと負荷がシフトされ、それによって、塔1の凝縮器を、塔2の再沸器の負荷とマッチさせることが可能となる。このタイプのシステムで実現される節約は、全体の省エネルギーというよりは、エネルギーレベル(温度)におけるものが主となる。さらに、多数の段を有する塔の場合に、その塔を二本の別個の塔に分割することによって、単一の極めて高い塔に比較してコストが抑制される。
以下において、従来からの単一塔システムと、第一の塔から第二の塔への蒸気バイパスを有する従来からの二塔システムとの比較を行う。ケースAおよびケースBは、能力とトレーの段数が異なる単一塔システムを代表している。ケースEでは、圧力損失がより低いトレーを使用している(塔のdP=20kPa、それに対してケースAおよびケースBでは35kPa)。ケースCおよびケースDは、同等の能力であるがトレーの数が異なる、二塔システムを代表している。単一塔ヘキセンシステムは、従来からの蒸留ユニットであって、典型的には100段以上(通常は150段以上)の段を有している。それらの段は、塔頂から番号を付けていく。フィードは、段番号75番に入る。製品の1−ヘキセンは、留出物として抜き出される。塔底の2−ヘキセンおよび3−ヘキセンは、ヘキセン異性化反応器(図示せず)へとリサイクルされて、そこで、異性化されて1−、2−および3−ヘキセンの混合物となり、その流出物が塔に戻される。この方法で、3−ヘキセンを1−ヘキセンに転換させる。そのシステムからは、少量のパージが抜き出される。塔における規格を表5に示す。ケースAおよびケースBを、異なったフローと圧力と、異なった段数で運転して、わずかに異なった純度の1−ヘキセンを得ている。
従来からの1−ヘキセンの圧力差蒸留分離を、それぞれ100段を有する二塔(合計200段)の中で実施する。その二塔システムの概略図を図2に示し、全体を200と名付ける。そのシステムには、第一の蒸留塔202と第二の蒸留塔204とが含まれている。ストリーム206の中のほぼ8%の1−ヘキセン(残りは、ほとんどが2−ヘキセンおよび3−ヘキセンと、少量のC7+(炭素数7以上の)物質)を含むフィードを、第一の塔202の第40段に入れる。ストリーム211中のこの塔の塔底製品は、主としてC7+であるが、これはストリーム213の中にパージし、残りのものは、ストリーム215の中で塔202の塔底に戻す。第一の塔からの留出製品は、ストリーム212中の35%の1−ヘキセンである。蒸気の側留抜出しを、第一の塔202の第81段からストリーム217の中に取り出して、相互交換負荷とバランスさせる。第一の塔202を異性化反応システムと統合するのなら、液体の側留抜出しを第87段からストリーム214に取り出して、異性化反応システムにフィードする。ほとんどが2−ヘキセンおよび3−ヘキセンからなるこのリサイクルストリームをフレッシュな3−ヘキセンフィード(図示せず)と混合して、異性化反応器(図示せず)を通過させて、2−ヘキセンおよび3−ヘキセンから幾分かの1−ヘキセンを製造し、フィード206として第一の塔に戻す。
ストリーム212の中の第一の塔202からの留出物を、凝縮器216の中で凝縮させ、次いで第一の塔202の塔頂に入る還流ストリーム218と、留出物ストリーム220とに分割する。留出物ストリーム220を、第二の塔204の第54段に入れる。ストリーム217の中の蒸気側留抜出し物を、第二の塔204の第90段に入れる。ストリーム217は、ストリーム220よりも下側の段に入れるが、その理由は、それがより低い段で抜き出されたものであるので、含まれる1−ヘキセンがより少ないからである。製品の1−ヘキセンを、第二の塔204からの留出物としてストリーム222の中に抜き出し、凝縮させ、1−ヘキセン製品ストリーム223と還流ストリーム225とに分割する。ストリーム224中の第二の塔204からの塔底製品は、再沸器228の中で再沸させ、その一部は、ストリーム226の中から第二の塔204に戻す。残りの部分は、ストリーム214の中の第一の塔からの液体の側留抜出し物と混合して、ストリーム232を形成させ、それをヘキセン異性化反応器へとリサイクルさせる。必要とあれば、少量のパージをストリーム234の中に抜き出すこともできる。
第二の塔204は、第一の塔202よりも低い圧力で運転する。このことによって、第一の塔202の凝縮器216を、第二の塔204の再沸器228よりも高い温度で運転することが可能となり、それらの間で熱交換をさせることが可能となる。それによって、第一の塔202の凝縮器を第二の塔204の再沸器と連結したことによる熱統合が達成される。塔における規格を表6に示す。精留段の総数を変えた、二つの異なった設計を示している。第一のケースでは、二塔のそれぞれで100(合計200)トレーを使用しているのに対して、第二のケースでは、二塔のそれぞれで150(合計300)トレーを使用している。
単一塔のケースA〜BおよびE、ならびに二塔のケースC〜Dにおけるエネルギー消費量を、以下の表7および8に示す。
結果を、エネルギー使用量の観点から表にまとめると、それら二つのシステムにおける全エネルギー使用量は、蒸留段数が同等のところでは、類似していることが明らかである。このことは、図3のグラフにも現れている。単一塔の場合と、二塔の蒸気バイパスの場合では、エネルギー使用量が、同様の曲線に乗る。運転圧力に依存した僅かな差は存在していて、より圧力が低い単一塔のケースでは、比エネルギーが約10%低い。見ればわかるように、ケースAはケースBに比較して、高い回収率(厳しい規格)を有している。このことは、エネルギーに関しては劇的な衝撃を与えるものではない。しかしながら、ケースBとケースEでは類似の回収率を有しているが、ケースEの方が、トレーのdPがはるかに低い。これは、比揮発度に影響する。
蒸気のバイパスを有する二塔システムの利点は、製品1トンあたりのエネルギーにあるのではなく、第一の塔の再沸器温度を上昇させる性能にある。この場合、単一塔のケースの99℃から、二塔のケースの124℃にまで、再沸器温度が上がる。二塔の蒸気バイパスシステムは、再沸器が冷凍を必要としているような、冷凍システムの場合に最も適用可能である。多くの場合、この上昇によって、冷凍圧縮を必要とする低い温度から、冷凍を減らすか、またはもしかすると、スチームまたはそれよりも低コストのエネルギー源によって再沸させることが可能であるかのいずれかの、より高い温度レベルへと、負荷をシフトさせることができる。例に挙げたケースでは冷凍を使用していないが、再沸器の温度におけるシフトがその原理を説明している。多くの場合において、極めて多数のトレー(100超)を用いる場合には、塔を直列の二塔として設計して、基礎費および構造物費を削減することによってコストを下げるということに留意されたい。塔を直列になった二本のカラムとして建設する場合には、圧力差を調整しておくのが好ましい。
本明細書に開示されたその他の実施態様は、フィードの分割および熱統合を用いた圧力差二塔システムであって、それには対応する方法も備えている。これらのシステムでは、先に挙げた従来からの圧力差二塔システムに比較して、エネルギー消費量が削減された。そのシステムおよび方法を、図4に概略的に示す。そのシステム全体を250と呼ぶ。その図面および説明は、1−ヘキセンを2−ヘキセンおよび3−ヘキセンから分離することを目的とはしているが、その実施態様の範囲には、その他の沸点が近い成分を製造することも含まれる。
1−ヘキセンの2−ヘキセンおよび3−ヘキセンからの蒸留分離は、塔252および254において実施する。図示した実施態様においては、塔252は80段、塔254は70段である。したがって、その合計した段数(150)は、先に説明した単一塔の一つにおけるのと同じである。実際の場合においては、その他の段数もまた使用できるということに留意されたい。
その分離システムへのフィードを分割して、フィードストリーム256の一部を、ストリーム258として第一の塔252の第25段に入れる。残りの部分は、ストリーム260として第二の塔254の第60段に入れる。ストリーム261の中の塔252の塔底製品は、主としてC7であり、その大部分は、パージされてストリーム263に入る。再沸器259で加熱して、再沸器ストリーム265を第一の塔252に戻す。ストリーム262の中の第一の塔252からの留出物は、40%が1−ヘキセンである。2−ヘキセンおよび3−ヘキセンを含む液体の側留抜出しを、第一の塔252の第74段からストリーム264として抜き出し、異性化反応システム(図示せず)にフィードする。ほとんどが2−ヘキセンおよび3−ヘキセンからなるこのリサイクルストリームを、フレッシュな3−ヘキセンフィード(図示せず)と混合して、異性化反応器(図示せず)を通過させて、2−ヘキセンおよび3−ヘキセンから幾分かの1−ヘキセンを製造し、フィード256として第一の塔に戻す。
第一の塔252からの留出物262を凝縮器266の中で凝縮させ、その凝縮物を、第一の塔252の塔頂に戻る還流ストリーム268と、第二の塔へのフィードストリーム270とに分離するが、そのフィードストリームは、第二の塔254の第40段に入り、そこは、第60段に入るフレッシュフィードの第二の部分のフィードポイントよりは上である。側留抜出しおよびフィードの位置は、本明細書に記載のものとは別な位置を使用することも可能であることに留意されたい。
製品の1−ヘキセンは、第二の塔254から、ストリーム272の中の留出物として抜き出す。留出物272は、凝縮器274の中で凝縮させ、還流ストリーム273と、1−ヘキセン製品ストリーム275とに分離する。ストリーム274の中の第二の塔254からの塔底製品は、部分的に再沸器278の中で再沸させる。再沸したストリームは、第二の塔254の塔底に戻すストリーム276と、残りの塔底ストリーム280とに分離する。塔底ストリーム280は、第一の塔からのストリーム264中の液体の側留抜出しと混合して、ストリーム282とする。ストリーム282の一部を、分離してC6パージストリーム284とし、残りのストリーム286をヘキセン異性化反応器(図示せず)にリサイクルさせる。
第二の塔254は、第一の塔252に比較してより低い圧力で運転する。このことによって、第一の塔の凝縮器を第二の塔の再沸器よりも高い温度とすることができ、それらの間で熱交換が可能となる。これらの負荷を、それらの塔へのフィードを分割することによって、バランスさせる。塔2へフレッシュフィードを送る量を増減させることによって、再沸器278と凝縮器266の相対的な負荷をバランスさせることができる。それによって、第一の塔の凝縮器を第二の塔の再沸器と連結したことによる熱統合が達成される。
第二の塔252の再沸器259と第一の塔254の凝縮器274との間で、加熱・冷却流体を循環させるヒートポンプを組み込むと、図4のプロセスのさらなるメリットを実現することができる。一つの実施態様においては、図5にみられるように、第一の塔254からの留出物を採用した開ループヒートポンプが使用される。この実施態様においては、システムの構成要素の多くのものは同一であり、そのシステム全体を250’と名付けるが、そのフィード256’を分割して、第一の塔252’に入る第一の塔フィード258’と、第二の塔254’に入る第二の塔フィード260’とにする。留出物262’を第一の塔252’から抜き出して、凝縮器266’の中で凝縮させ、還流ストリーム268’と第二の塔フィードストリーム270’とに分離する。その違いは、第二の塔254’からの留出物272’を圧縮機290の中で圧縮して、再沸器259’中における加熱流体として使用する点にある。次いでストリーム272’を分離器292の中で分離して、製品として抜き出す蒸気ストリーム275’と、精留塔254’への還流ストリームとして使用する液体ストリーム273’とにする。この実施態様においては、その圧縮機が熱い蒸気を、所望の再沸温度になるような圧力にまで加圧する。
コンピュータシミュレーションのための塔の規格を表9に示す。表において、ケースFは、二塔フィード分割塔を代表している。この例においては、その第一の分割フィード塔の圧力を、単一塔システムにかなり比較できる程度にまで上げている。その第二の塔の塔頂圧力は、単一塔の塔頂圧力とほぼ同等である。このことによって、ヘキセン凝縮器とブテン塔再沸器との間の等価な相互交換が、(この実施態様と組み合わせてそれを使用するのならば)上記のように可能となる。
表10にシミュレーションの結果のまとめを示す。二塔フィード分割システムのエネルギー使用量は、1.44KW/(KTA製品、ヘキセン−1)にまで低下した。これは、図3にも、「二塔フィード分割」として示されている。この数値は、トレーの段数が同じで、トレー圧力損失と規格が同等の単一塔システムの場合の2.13と対比させることができる。これは、32%の削減である。同じ数の低圧力損失トレー(高コストトレー)を用いて運転し、1−ヘキセンの回収率の低い単一塔では、エネルギーがさらに23%も高い(1.91対1.44)。さらに、そのエネルギーは、2倍の数のトレーを必要とする従来からの圧力差二塔システムに比肩することもできる。このことは、本明細書に開示された実施態様のシステムが、建設費の面で実質的に有利であることを表している。二塔システムの第一の塔は、単一塔システム(または第二の塔)よりも高い圧力で運転する。したがって、精留の大部分はより高い圧力で起こるので、その部分の塔の直径を小さくすることとなり、そのために建設費の節約にもなる。
図4に示した配置によって、極めて近い沸点を有する物質を含む混合物を分離するのに使用される二塔システムにおけるエネルギー使用量が顕著に削減されるようになるとは、予想もされなかったことである。分割フィード塔は、単一塔を使用したいくつかの用途においてはこれまでも使用されていたが、その場合、分割フィードのそれぞれの部分は、異なった組成のものである。たとえば、分割フィード塔は、蒸気−液体分離の後で使用することは公知である。この場合においては、蒸気を塔の高いところにフィードし、液体を塔の低いところにフィードして、平衡フラッシュ分離のメリットを得ている。同一のフィード組成物および類似の相(蒸気相または液体相)を、二つの異なった塔の中に位置していて異なった圧力で運転されている、25精留トレー分だけ離れた位置にフィードすることは、最適なフィード位置を見出そうとするこれまでの精留のやり方とは正反対のことである。最適なフィード位置とは、典型的には、塔の内部で類似の組成となる点と定義されている。しかしながら、二塔−二圧力システムの運転のバランスをとる手段としての、本明細書に開示された実施態様のコンセプトを使用することによって、顕著な省エネルギーを実現することが可能である。
記述した分割フィードの実施態様においては、塔の圧力レベルを増減させて、エネルギー使用量を最適化することができる。このことによって、従来からの二塔システムの場合と同様の、冷凍システムにおけるさらなる省エネルギーだけでなく、さらには、究極的な精留の省エネルギーを達成することも可能となる。
さらなる実施態様においては、特定のシステム設計に合わせて、図4における第一の塔252からのストリーム264の側留抜出しの位置を選択することにより、そのストリームの1−ヘキセン含量を最小化することもできる。先にも説明したように、1−ヘキセンと2−ヘキセンおよび3−ヘキセンとの間の比揮発度が近いために、高純度(>99mol%)の1−ヘキセンを分離するには、顕著な段数と塔の還流が必要となる。その結果として、ヘキセン精留工程は多大なエネルギーを消費する。ヘキセン精留塔では、塔頂から1−ヘキセンを、そして塔底から2−ヘキセンおよび3−ヘキセンを抜き出す。2−ヘキセンおよび3−ヘキセンの塔底液は、ヘキセン異性化反応器にリサイクルさせて、そこで1−ヘキセンリッチにする。そのヘキセン異性化反応器からの流出物をフレッシュな3−ヘキセンフィードと組み合わせて、ヘキセン精留塔に戻す。異性化反応器の出口温度が何度であろうとも、1−ヘキセンの濃度は平衡による制限を受ける。高温での運転は、ファウリングによる制限があり、より低温での運転は、平衡が望ましくなくなるという制限がある。異性化反応器における1パスあたりの転化率は、リサイクルストリームの中の1−ヘキセンの入口濃度と、反応器出口の中の平衡によって決まる出口濃度とによって決定する。
1−ヘキセンのような直鎖アルファオレフィンを製造するためのシステムを建設している者は、精留塔の塔底における1−ヘキセンの濃度を下げ(1mol%の場合の例を、下記のモード1に示す)、それによって下流のヘキセン異性化反応器の1パスあたりの転化率を上げるような精留システムを設計するであろうと考えられる。その塔システムの中において1−ヘキセンの可能な濃度が最も低くなるのは、その塔の塔底においてである。単一塔の方式は、精留塔の塔底の1−ヘキセンの濃度が低いために、ヘキセン塔リサイクルの量が減るということから、いかにももっともらしい。図6に従来からの精留塔290を示す。塔底ストリーム291の一部をヘキセン異性化反応器292にリサイクルし、次いで精留塔290に戻す。図6の設計(以下に示すモード1、塔底における1−ヘキセンが低濃度)ではさらに、パージの際に1−ヘキセンがほとんど失われないので、1−ヘキセンの高い回収率(製造された1−ヘキセンの、フレッシュフィード中の全ヘキセンに対する比率)も可能となる。
図7の方式は、図4の実施態様に接続させて使用することも可能であるし、また、図2の実施態様に中に組み入れることも可能である。図7に示した実施態様(モード2)においては、ヘキセン塔の側留抜出しを、塔底にある場合よりも1−ヘキセンの組成が高いところで抜き出して、それをヘキセン異性化反応器へフィードする。さらに詳しくは、精留塔294が側留抜出し295を有していて、それを異性化反応器296に送る。その側留抜出しの1−ヘキセン濃度の例を非限定的に挙げれば、2.5mole%1−ヘキセンである。反応器フィードの中の1−ヘキセンの濃度が高いほど、1パスあたりのヘキセン反応器の転化率が下がり、ヘキセン異性化反応器リサイクル率が2.7%だけ上がる。これが上がると、異性化反応器のためのエネルギー所要量が増加することになるであろう。図7(モード2)におけるヘキセンパージ(塔底)はやはり、同一の1−ヘキセン塔底規格で、塔底から抜き出す。モード2では、ヘキセン異性化反応器リサイクル率が25%高くなるので、それによって、蒸発および予熱も含めた異性化システムの用役が増大し、従って、ヘキセン塔の内部還流フローが絶対的な基準で大量に減るかどうかは明らかでない。その結果として、同一の1−ヘキセン回収率では、モード2を使用すると、塔にプラスして、異性化エネルギー消費量および還流比が正味で削減される。この塔の還流フローの正味の削減が起きる理由は、適合させるべきヘキセン異性化リサイクル規格がわずかに緩められたので、エネルギーの必要量が少なくなるからである。
モード1に代えてモード2を使用したときのエネルギー使用量の削減を、以下の表11に示す。
表11に見られるように、モード2を使用すると、合計エネルギー使用量が、93.59MM Kcal/hrから88.58MM Kcal/hrへと削減され、約5%のエネルギー削減となる。
米国特許第6,727,396号に記載されている、自動複分解プロセスのある種の実施態様には、内部ブテンおよび内部ヘキセンオレフィンをそれぞれ外部アルファオレフィンに転換させるために使用されるブテン異性化反応器およびヘキセン異性化反応器が含まれている。さらに、そのプロセスでは自動複分解反応器システムも採用されている。これら3種の反応システムのそれぞれが、蒸気相固定床反応システムである。それぞれにおいて、反応器へのフィードをまず蒸発させることが必要である(その理由は、フィードが、ユニットへのフィードポイントにおいては液体であるからである)。さらに、それぞれの反応器では、その流出物の温度が、フィード温度および/またはその反応器に続く精留塔の温度よりも顕著に高い。異性化工程においては温度が高いほど所望のアルファオレフィンに有利であり、また自動複分解では反応動力学の面からより高い温度が必要であるために、それらの高い温度が必要となる。従来からのシステムにおいては、反応器からの流出物を、そのフィードをある程度まで蒸発させ、予熱するために使用するが、予熱に必要な残りの部分は、燃焼式加熱器によって供給されることになるであろう。
図8に、炉342、344および346の建設費を削減する目的で、追加の熱交換器330、332および334を加えた、1−ヘキセンを製造するためのプロセスのフロースキームを示している。図8に示すシステムには、ヘキセン異性化および精製ゾーン302、ブテン異性化および精製ゾーン304、ならびに自動複分解ゾーン306が含まれる。ブテンフィードストリーム305を、リサイクルストリーム311と組み合わせてストリーム307を形成させる。ストリーム307を、熱交換器330の中で加熱し、さらに熱交換器336の中で加熱して、炉342に送り、次いで反応器331の中で異性化させる。反応器の流出物ストリーム308を精留塔309の中で精留し、その塔頂ストリーム310を分割して、還流ストリーム341と複分解フィードストリーム313とし、後者を複分解ゾーン306に送る。塔底ストリーム331はリサイクルさせるが、部分的にストリーム337の中にパージすることも可能である。複分解ゾーン306においては、ストリーム313を複分解リサイクルストリーム312と組み合わせて、ストリーム314を形成させる。ストリーム314を、熱交換器334の中で加熱し、さらに熱交換器340で加熱して、炉346に送り、反応器335の中で複分解にかける。その反応器の流出物(ストリーム316中)を、精留セクション318において精留する。副生物をストリーム320に抜き出し、パージストリーム322を抜き出す。C4'およびC5'はストリーム312にリサイクルさせる。複分解反応生成物のストリーム324を、ヘキセン異性化および精製ゾーン302に送る。
ゾーン302においては、ストリーム324を、熱交換器332の中で加熱し、熱交換器338の中で加熱し、炉344に送り、次いで反応器333の中で異性化させる。その反応器の流出物(ストリーム325中)を、精留セクション326の中で精留して、1−ヘキセン製品ストリーム328、C6パージストリーム329、およびC7+パージストリーム339を形成させる。分離した熱交換器330、332、334を加えて、それぞれブテン異性化反応器331、ヘキセン異性化反応器333、および自動複分解反応器335の上流側の反応器フィードを予熱することによって、これら反応器それぞれの上流側にある炉におけるエネルギー消費量が削減される。必要とされる熱負荷のほとんどは、蒸発器330、332および334において発生するが、それらはプロセス/プロセス熱交換器336、338および340よりも上流側にあり、それらはさらにそれぞれ炉342、344および346よりも直接的に上流側にある。図8に示したフロースキームでは、熱交換器330、332および334が含まれていない従来技術の公知のシステムに比較して、炉の建設費が80%を超える節減となる。
熱交換器330、332および334は多くの場合、蒸発器である。これらの熱交換器では、場合によっては、(利用できれば)他の熱源からの廃熱を使用することもできる。例えば、エチレンシステムにおいては、これは急冷水であり得る。さらに、各種の統合スチームシステムにおいては、「放散される(pass-out)」スチームを最大限に利用することによって、スチームシステムの総合的な効率が上昇するであろう。燃焼式加熱器では、エネルギーの浪費を防ぐために、(プロセス負荷予熱の後で)さらなる熱回収が必要となる。加熱器における燃焼負荷が大きくなると、さらに大量の熱量が必要となり、その結果、システムのための建設費がかさむ。装置コストの削減を達成するために装置を追加するというのは、直観に反する。しかしながら、この場合においては、高コストの燃焼式加熱器のサイズを小さくするために、低コストの蒸発器を追加しているので、建設費を節約し、エネルギー消費量が削減される。
各種の上述およびその他の特徴および機能、またはそれらに代わるものが、その他多くのシステムまたは用途の中に組み込まれるのも望ましいということは、評価できるであろう。さらに、現時点では予見または予測できないような、代替え物、修正、変形形態またはそれらにおける改良が今後当業者によりなされるかもしれないが、そのこのともまた、以下の特許請求項に包含されるであろうこともまた意図されている。
本明細書に記載の実施態様は、製造におけるエネルギー使用量の削減をもたらす、直鎖アルファオレフィンを製造するためのプロセスを提供する。一つの実施態様においては、ヘキセン分離塔からの塔頂凝縮器を、ブテン分離塔のための再沸器として使用する。このことによって、システムにおける総合的な熱の所要量が削減される。この一つの実施態様と関連して、または別途に使用することも可能な、参考実施態様においては、ブテンおよびヘキセン精製塔のいずれか、または両方のために二塔式(two tower)精留システムを使用する。そのフィードを分割し、二つの異なった圧力で運転される二本の別々ではあるが統合された塔にフィードし、熱交換を行わせて、製造コストがより低減される。
プロセス効率を向上させるまた別な方法は、ブテンスプリッターへのフィードおよび/またはヘキセンスプリッターへのフィードを二本の別々の塔に分割して、超精留プロセスにおいてその二本の塔を異なった圧力で運転する方法である。ヘキセン分離において使用すると、本明細書に開示された参考実施態様の機能では、同等のトレー数および運転圧力では、ヘキセン塔システムのエネルギー消費量が約33%削減される。これらの節減法は一般的に、比揮発度が低い炭化水素を分離する超精留システムに適用することができる。ヘキセンシステムの場合には、この参考実施態様によって達成されるメリットが、上述の統合熱交換システムによって達成可能なメリットに上乗せされる。
第二の塔252の再沸器259と第一の塔254の凝縮器274との間で、加熱・冷却流体を循環させるヒートポンプを組み込むと、図4のプロセスのさらなるメリットを実現することができる。参考実施態様においては、図5にみられるように、第一の塔254からの留出物を採用した開ループヒートポンプが使用される。この参考実施態様においては、システムの構成要素の多くのものは同一であり、そのシステム全体を250’と名付けるが、そのフィード256’を分割して、第一の塔252’に入る第一の塔フィード258’と、第二の塔254’に入る第二の塔フィード260’とにする。留出物262’を第一の塔252’から抜き出して、凝縮器266’の中で凝縮させ、還流ストリーム268’と第二の塔フィードストリーム270’とに分離する。その違いは、第二の塔254’からの留出物272’を圧縮機290の中で圧縮して、再沸器259’中における加熱流体として使用する点にある。次いでストリーム272’を分離器292の中で分離して、製品として抜き出す蒸気ストリーム275’と、精留塔254’への還流ストリームとして使用する液体ストリーム273’とにする。この参考実施態様においては、その圧縮機が熱い蒸気を、所望の再沸温度になるような圧力にまで加圧する。
コンピュータシミュレーションのための塔の規格を表9に示す。表において、ケースFは、二塔フィード分割塔を代表している。この例においては、その第一の分割フィード塔の圧力を、単一塔システムにかなり比較できる程度にまで上げている。その第二の塔の塔頂圧力は、単一塔の塔頂圧力とほぼ同等である。このことによって、ヘキセン凝縮器とブテン塔再沸器との間の等価な相互交換が、(この参考実施態様と組み合わせてそれを使用するのならば)上記のように可能となる。
表10にシミュレーションの結果のまとめを示す。二塔フィード分割システムのエネルギー使用量は、1.44KW/(KTA製品、ヘキセン−1)にまで低下した。これは、図3にも、「二塔フィード分割」として示されている。この数値は、トレーの段数が同じで、トレー圧力損失と規格が同等の単一塔システムの場合の2.13と対比させることができる。これは、32%の削減である。同じ数の低圧力損失トレー(高コストトレー)を用いて運転し、1−ヘキセンの回収率の低い単一塔では、エネルギーがさらに23%も高い(1.91対1.44)。さらに、そのエネルギーは、2倍の数のトレーを必要とする従来からの圧力差二塔システムに比肩することもできる。このことは、本明細書に開示された参考実施態様のシステムが、建設費の面で実質的に有利であることを表している。二塔システムの第一の塔は、単一塔システム(または第二の塔)よりも高い圧力で運転する。したがって、精留の大部分はより高い圧力で起こるので、その部分の塔の直径を小さくすることとなり、そのために建設費の節約にもなる。
図4に示した配置によって、極めて近い沸点を有する物質を含む混合物を分離するのに使用される二塔システムにおけるエネルギー使用量が顕著に削減されるようになるとは、予想もされなかったことである。分割フィード塔は、単一塔を使用したいくつかの用途においてはこれまでも使用されていたが、その場合、分割フィードのそれぞれの部分は、異なった組成のものである。たとえば、分割フィード塔は、蒸気−液体分離の後で使用することは公知である。この場合においては、蒸気を塔の高いところにフィードし、液体を塔の低いところにフィードして、平衡フラッシュ分離のメリットを得ている。同一のフィード組成物および類似の相(蒸気相または液体相)を、二つの異なった塔の中に位置していて異なった圧力で運転されている、25精留トレー分だけ離れた位置にフィードすることは、最適なフィード位置を見出そうとするこれまでの精留のやり方とは正反対のことである。最適なフィード位置とは、典型的には、塔の内部で類似の組成となる点と定義されている。しかしながら、二塔−二圧力システムの運転のバランスをとる手段としての、本明細書に開示された参考実施態様のコンセプトを使用することによって、顕著な省エネルギーを実現することが可能である。