JP2018153296A - 不飽和化合物を含有する組成物 - Google Patents

不飽和化合物を含有する組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2018153296A
JP2018153296A JP2017050996A JP2017050996A JP2018153296A JP 2018153296 A JP2018153296 A JP 2018153296A JP 2017050996 A JP2017050996 A JP 2017050996A JP 2017050996 A JP2017050996 A JP 2017050996A JP 2018153296 A JP2018153296 A JP 2018153296A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
composition
oxidase
meth
compound
acryloyl
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017050996A
Other languages
English (en)
Inventor
俊成 本田
Toshinari Honda
俊成 本田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JSR Corp
Original Assignee
JSR Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JSR Corp filed Critical JSR Corp
Priority to JP2017050996A priority Critical patent/JP2018153296A/ja
Publication of JP2018153296A publication Critical patent/JP2018153296A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)

Abstract

【課題】不飽和二重結合を有する変性多糖等の不飽和化合物からゲルを形成する際に、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物を提供する。【解決手段】不飽和二重結合を有する化合物(A)、アスコルビン酸類(B)、基質を消費して過酸化水素を生成する酸化酵素(C)、および前記酸化酵素(C)に対応する基質(D)を含有する組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、不飽和化合物を含有する組成物に関する。
軟骨および骨等の生体組織の一部が損なわれた場合、その損なわれた箇所にハイドロゲルなどを用いた人工の医療用器具への置き換えが行われている。このようなハイドロゲルとしては、多糖に(メタ)アクリロイル基を導入することで変性した変性多糖の(メタ)アクリロイル基を、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を用いて架橋または付加重合させることで形成される高分子ネットワーク(ゲル)が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
特表2012−510535号公報 国際公開第2007/083643号
前記変性多糖等の不飽和化合物の架橋または付加重合のために光ラジカル重合開始剤を用いる場合、生体組織の損失箇所に生体に悪影響を及ぼす紫外線を照射する必要がある。架橋または付加重合のために熱ラジカル重合開始剤を用いる場合、通常、生体組織の損失箇所に体温以上の温度を加える必要がある。また、これらの開始剤は生体関連物質でないため、前記損失箇所に適用する人工物としては、生体適合性の点からもリスクが高い。
本発明の課題は、不飽和二重結合を有する変性多糖等の不飽和化合物からゲルを形成する際に、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物を提供すること、また、前記組成物から得られるゲル、前記ゲルから形成される成形体、および前記成形体を有する医療用器具を提供することにある。
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。本発明者は、室温程度の温和な条件でラジカル重合可能な開始剤として、アスコルビン酸と過酸化水素とを含むレドックス型重合開始剤を検討したが、当該開始剤を含む組成物はゲル化速度がかなり遅いことが判明した。
本発明者は、この原因を、過酸化水素の大部分が水と酸素に分解してしまい、レドックス反応の活性物質であるヒドキシラジカルが継続的に生成しないことにあると考えた。そこで本発明者は、過酸化水素を穏やかに継続的に生成できれば前記課題を解決できると考え、更に鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する組成物が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]〜[9]である。
[1]不飽和二重結合を有する化合物(A)、アスコルビン酸類(B)、基質を消費して過酸化水素を生成する酸化酵素(C)、および前記酸化酵素(C)に対応する基質(D)を含有する組成物。
[2]前記不飽和二重結合を有する化合物(A)が、(メタ)アクリロイル変性多糖である前記[1]に記載の組成物。
[3]前記(メタ)アクリロイル変性多糖が、(メタ)アクリロイル変性ヒアルロン酸、(メタ)アクリロイル変性デキストラン、および(メタ)アクリロイル変性プルランから選ばれる少なくとも1種である前記[2]に記載の組成物。
[4]前記酸化酵素(C)がグルコースオキシダーゼであり、前記基質(D)がグルコースである前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]さらに、水(E)を含有する前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物(A)に含まれる前記不飽和二重結合の付加重合による架橋構造を有するゲル。
[7]水分を50〜99.9質量%含有するハイドロゲルである前記[6]に記載のゲル。
[8]前記[6]または[7]に記載のゲルを50質量%以上含有する成形体。
[9]前記[8]に記載の成形体を有する医療用器具。
本発明によれば、不飽和二重結合を有する変性多糖等の不飽和化合物からゲルを形成する際に、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物を提供すること、また、前記組成物から得られるゲル、前記ゲルから形成される成形体、および前記成形体を有する医療用器具を提供することができる。
図1は、組成物中に含まれるグルコースオキシダーゼの含有量を一定にして、グルコース量を変えた実施例の結果を示す図である。 図2は、組成物中に含まれるグルコースの含有量を一定にして、グルコースオキシダーゼ量を変えた実施例の結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について好適態様も含めて説明する。
[組成物]
本発明の組成物は、不飽和二重結合を有する化合物(A)、アスコルビン酸類(B)、基質を消費して過酸化水素を生成する酸化酵素(C)、および前記酸化酵素(C)に対応する基質(D)を含有する。
前記組成物では、基質(D)が酸化酵素(C)により消費されて、過酸化水素が穏やかに継続的に生成する。このため、本発明の組成物は、アスコルビン酸類(B)と前記生成した過酸化水素とを含むレドックス型重合開始剤を利用して、不飽和二重結合を有する化合物(A)の架橋または付加重合を開始する系であると言える。本発明では、このようなレドックス型重合開始剤を利用することから、不飽和二重結合を有する化合物(A)の架橋または付加重合を室温程度の温度で、しかも迅速に進めることができ、したがって、温和な条件で迅速にゲル化を進めることができる。
<化合物(A)>
化合物(A)は、不飽和二重結合を有する化合物(不飽和化合物)であるが、ただし後述するアスコルビン酸類(B)は除く。
化合物(A)としては、不飽和二重結合を有する高分子が好ましく、例えば、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質およびポリペプチド等の生体適合性ポリマーにおいて不飽和二重結合が導入された高分子が挙げられる。これらの中でも、多糖に不飽和二重結合が導入された変性多糖が好ましい。
多糖としては、例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、セルロース、グアーガム、プルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、デンプン、グリコーゲン、デキストリン、ゲランガム、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ヒアルロン酸、デキストランおよびプルランから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
多糖の誘導体としては、各種変性物が挙げられ、変性される箇所および変性基は本発明の作用効果を大きく損なうものでなければ特に制限はない。例えば、前記例示の多糖がメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエチルメチル基、ヒドロキシプロピルメチル基、カルボキシメチル基、アセチル基、ステアロキシ基、グリセロール、プロピレングリコールなどの置換基を有する誘導体が挙げられる。誘導体は、前記置換基を単独で又は複数の組合せで有してもよい。
置換基を有する多糖としては、具体的には、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルグアーガム、エチルグアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルグアーガムが挙げられる。
多糖は、塩であってもよく、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の周期表第2族金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。カルボキシル基を有する多糖の金属塩が挙げられる。
化合物(A)は不飽和二重結合を有していればよく、不飽和二重結合は、好ましくは炭素−炭素二重結合であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等として化合物(A)に含まれていればよく、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
高分子に不飽和二重結合を導入する方法としては、例えば、アミノ基、アルコール性水酸基およびカルボキシル基等の官能基を有する高分子と、前記官能基と反応しうる官能基(例:カルボキシル基、その酸ハロゲン化物、アミノ基、アルコール性水酸基、エポキシ基、オキセタニル基)および不飽和二重結合を有する化合物(以下「二重結合含有化合物」ともいう)とを、反応させる方法が挙げられる。
前記二重結合含有化合物としては、多糖が多く有するアルコール性水酸基と反応しうるカルボキシル基またはその酸ハロゲン化物(−COX(Xは塩素原子等のハロゲン原子)で表される基)を有する化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;前記不飽和ジカルボン酸の無水物;コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル;およびこれらの酸ハロゲン化物、例えば塩化(メタ)アクリロイルが挙げられる。
前記二重結合含有化合物としては、その他、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロへキシルメチル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;o,m又はp−ビニルフェニルグリシジルエーテル、o,m又はp−イソプロペニルフェニルグリシジルエーテル、o,m又はp−ビニルベンジルグリシジルエーテル、o,m又はp−イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル化合物;3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン等のオキセタニル基含有(メタ)アクリレート;3−(p−ビニルフェニルオキシメチル)−3−メチルオキセタン、3−(p−イソプロペニルフェニルオキシメチル)−3−メチルオキセタン等のオキセタニル基含有ビニル化合物;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキアルキルが挙げられる。
例えば、塩基性化合物の存在下又は非存在下に、多糖等の高分子と、塩化(メタ)アクリロイル等の前記二重結合含有化合物とを反応させる。塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジンが挙げられる。前記反応において、二重結合含有化合物は、高分子100質量部に対して、通常は1〜500質量部、好ましくは5〜300質量部、より好ましくは10〜100質量部の量で用いることができる。
前記反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドが挙げられる。前記反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
前記反応の反応温度は、通常は−10〜50℃、好ましくは−5〜30℃であり、反応時間は、通常は1〜24時間である。
変性多糖は、多糖に(メタ)アクリロイル基が導入された変性多糖((メタ)アクリロイル変性多糖)が好ましく、(メタ)アクリロイル変性ヒアルロン酸、(メタ)アクリロイル変性デキストラン、および(メタ)アクリロイル変性プルランから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
変性多糖において、多糖に不飽和二重結合が導入されている。変性多糖における前記不飽和二重結合による置換度(DS)、好ましくは(メタ)アクリロイル基による置換度(DS)は、通常は0.1〜300であり、好ましくは0.5〜100、より好ましくは1〜30である。置換度は、1H NMRより求めることができる。変性多糖の置換度とは、変性多糖の構成単糖100単位あたりに導入された不飽和二重結合の平均数を示す。変性多糖はこのような置換度を有することにより、変性多糖のゲル化速度が向上する。
不飽和二重結合を有する高分子の絶対分子量測定による数平均分子量は、通常は1,000〜10,000,000、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000である。
化合物(A)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中の化合物(A)の含有量は、通常は0.05〜49質量%、好ましくは0.5〜39質量%、より好ましくは5〜29質量%である。このような態様であると、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物となる。
<アスコルビン酸類(B)>
アスコルビン酸類(B)としては、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、およびこれらの塩またはエステルが挙げられる。前記塩としては、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の周期表第2族金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。前記エステルとしては、例えば、アルキルエステル、アルケニルエステル、アルキニルエステル、アリールエステル、アリールアルキルエステル、ハロアルキルエステル、アルカノイルオキシアルキルエステル、アルコキシカルボニルオキシアルキルエステルが挙げられる。
前記塩またはエステルとしては、例えば、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸エステルが挙げられる。
アスコルビン酸類(B)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中のアスコルビン酸類(B)の含有量は、化合物(A)の不飽和二重結合1モルあたり、通常は0.001〜100モル、好ましくは0.01〜10モルである。このような態様であると、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物となる。
<酸化酵素(C)>
酸化酵素(C)は、基質を消費して過酸化水素を生成する酵素である。
酸化酵素(C)としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼが挙げられる。これらの酵素は、用途に応じて適宜選択できるが、ゲル化速度が大幅に向上することから、グルコースオキシダーゼが好ましい。
酸化酵素(C)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中の酸化酵素(C)の含有量は、反応性の点から、0.01U/mL以上が好ましく、1U/mL以上がより好ましく;1,000U/mL以下が好ましく、500U/mL以下がより好ましい。なお、Uとは酵素活性の単位を示し、至適条件下で、温度30℃で毎分1マイクロモルの基質を変化させることができる酵素量である。
過酸化水素は生体内でも生成する物質ではあるが、生体内ではすぐに消失する物質である。一方、アスコルビン酸と過酸化水素とを含む従来のレドックス型重合開始剤の場合、上述したように過酸化水素が水と酸素に分解しやすいことから、充分なゲル化速度を得るために過酸化水素を大量に用いることがある。しかしながら、過酸化水素を生体に大量に適用すると、浸襲性の点で問題になると考えられる。本発明の構成であれば、酸化酵素(C)および基質(D)により過酸化水素が生成することから、過酸化水素を大量に使用しなくともよく、したがって前記浸襲性の問題を解決することができる。
<基質(D)>
基質(D)は、酸化酵素(C)により消費されて過酸化水素を生成する物質であり、酸化酵素(C)に対応して選択される物質である。例えば、酸化酵素(C)が、グルコースオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼまたはコレステロールオキシダーゼである場合、基質(D)は、それぞれ、グルコース、コリン、アミノ酸、アルコール、ピルビン酸またはコレステロールである。本発明では、ゲル化速度が大幅に向上することから、グルコースオキシダーゼとグルコースとの組合せが好ましい。
基質(D)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中の基質(D)の含有量は、アスコルビン酸類(B)1モルに対して、通常は0.1〜100モル、好ましくは1〜50モル、より好ましくは2〜30モルである。
<水(E)>
本発明の組成物は、水(E)を含有することが好ましい。また、本発明の組成物は、さらに塩化ナトリウムを含有してもよい。このように本発明の組成物は、生理食塩水のような塩化ナトリウム水溶液を含有してもよい。
本発明の組成物中の水(E)の含有量は、通常は50〜99.9質量%、好ましくは60〜99質量%、より好ましくは70〜90質量%である。このような態様であると、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物となり、さらに得られるゲルの機械的強度が優れる傾向にある。
<その他の成分>
本発明の組成物は、ゲルの用途に応じた機能発現物質を含有してもよい。これにより、得られるゲル中に機能発現物質を含ませることができる。機能発現物質としては、例えば、薬剤、細胞が挙げられる。機能発現物質を含有するゲルは、医学用器具等の幅広い分野で用いることができる。
本発明の組成物は、前述した不飽和二重結合を有する変性多糖以外の多糖をさらに含有してもよい。この多糖としては、例えば、<化合物(A)>の欄に記載した多糖が挙げられる。多糖は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物では、酸化酵素(C)および基質(D)により過酸化水素が生成することから、過酸化水素を含有しなくともよいが、前記生成する過酸化水素の他、別途、過酸化水素を含有してもよい。
<組成物の態様>
本発明の組成物の一実施態様は、化合物(A)およびアスコルビン酸類(B)を含み、酸化酵素(C)および基質(D)のいずれかを含むが両方は含まない第1の溶液と、前述の酸化酵素(C)および基質(D)のうち第1の溶液中で含まれない方を含む第2の溶液とを有する。
本発明の組成物のpH(化合物(A)重合時のpH)は、通常は2〜13、好ましくは3〜11、より好ましくは5〜9である。このような範囲であると、生体に対して低浸襲性な条件でゲル化が可能な組成物となることから好ましい。
本発明の組成物では、例えば、酸化酵素(C)が基質(D)を、酸素の存在下(例:空気中の酸素)に酵素処理することによって、過酸化水素を生成させることができる。
本発明の組成物は、以下に説明するゲルの原料組成物として好適に用いることができる。また、本発明の組成物は、例えば、変形性関節症の治療に用いられる関節腔内の潤滑剤や、損傷被覆材として用いることができる。変形性関節症は膝、肩、股、腰、足首、手首、指などの体の各関節に発生しうるが、本発明の組成物はいずれの関節にも適用しうる。
[ゲル]
本発明のゲルは、上述した化合物(A)に含まれる不飽和二重結合の付加重合による架橋構造を有し、すなわち化合物(A)の架橋体を含有する。
一実施態様において、前記ゲルは、水分を通常は50〜99.9質量%、好ましくは60〜99質量%、より好ましくは70〜90質量%含有するハイドロゲルである。前記ハイドロゲルは、化合物(A)の架橋体を通常は50〜0.1質量%、好ましくは40〜1質量%、より好ましくは30〜10質量%含有する。前記ハイドロゲルは、機械的強度および柔軟性に優れる。
本発明のハイドロゲルは、人工軟骨に用いる場合、10GPa以上の貯蔵弾性率を有することが好ましく、前記貯蔵弾性率は、より好ましくは10〜3000GPa、さらに好ましくは100〜2500GPaである。貯蔵弾性率の測定は、例えば、直径25mmおよびパレルプレートジオメトリーを使用して、レオメーター(装置名「MCR302」、Anton Paar社製)にて、1%の一定変形および1Hzの周波数で、動的振動モードにおいて、296Kで行う。
本発明のハイドロゲルは、前述した本発明の組成物における架橋反応または付加重合反応を進めることにより得ることができる。また、前記ハイドロゲルを適宜乾燥するなどして水分を除去することにより、キセロゲルを得ることができる。
本発明のゲルおよびハイドロゲルは、例えば、軟骨および骨等の生体組織の一部が損なわれた場合の、人工軟骨および人口骨等として好適に用いることができる。
本発明の組成物を用いることにより、ゲルおよびハイドロゲルを形成することができる。例えば、一実施態様において、前記成分(A)〜(D)を水中で混合し、化合物(A)の不飽和二重結合を付加重合させて、ハイドロゲルを形成する。前記成分(A)〜(D)は、それぞれの水溶液として用いてもよい。
ハイドロゲル形成時の水溶液温度(重合温度)は、通常は4〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは20〜40℃であり、反応時間は、通常は0.1〜20時間、好ましくは1〜10時間である。重合圧力は、特に限定されず、加圧、常圧(大気圧)および減圧のいずれでもよいが、常圧が好ましい。本発明の組成物を用いることにより、室温程度の温和な条件で、ハイドロゲルを形成することができる。
[成形体および医療用器具]
本発明の成形体は、上述したゲルを含有する。例えば、本発明のゲルが、所望の形状に成形された成形体である。前記成形体において、ゲルの量は、通常は50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
本発明の医療用器具は、前記成形体を有する。前記医療用器具は、機械的強度および柔軟性に優れる前記成形体を有することから、医療用器具の中でも特にインプラント材料に好適に用いることができる。インプラント材料としては、例えば、軟骨および骨等の生体組織の一部が損なわれた場合に用いられるインプラント材料が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[合成例1]アクリロイル基で変性したデキストラン(A1)
フラスコに、デキストラン(商品名「デキストラン40,000」、和光純薬株式会社製)12g、ジメチルホルムアミド480ml、および塩化リチウム9.6gを加え、90℃で60分間撹拌した。溶液を0℃に冷却し、ピリジン6mlと塩化アクリロイル3.9mlを加え、0℃で1時間撹拌した後に、室温で4時間撹拌した。冷エタノールを500ml加え、濾過を行った後に、純水100mlを加え、三日間、透析を行った。透析後の溶液を24.2質量%に濃縮し、アクリロイル基で変性したデキストラン(A1)の水溶液を得た。
得られたアクリロイル基で変性したデキストラン(A1)を1H NMRにて分析したところ、そのDSは17であった。
[実施例1〜8]組成物およびハイドロゲルの製造、ならびにゲル化時間の測定
下記表1に示す含有量で、アクリロイル基で変性したデキストラン(A1)の水溶液(濃度:24.2質量%)、アスコルビン酸水溶液(濃度:882mM)、グルコースオキシダーゼ水溶液(濃度:150U/ml)をバイアル瓶に入れ均一に混合し、次いで、ボルテックスミキサーで攪拌しながら、混合液にグルコース水溶液(濃度:882mM)を一度に入れた。
バイアル瓶を180度に傾けたとき、内容物が垂れてこない時間を、ゲル化時間として測定した。評価結果を表1に示す。
Figure 2018153296
[比較例1〜3]組成物およびハイドロゲルの製造、ならびにゲル化時間の測定
下記表2に示す含有量で、アクリロイル基で変性したデキストラン(A1)の水溶液(濃度は24.2質量%)、アスコルビン酸水溶液(濃度は882mM)をバイアル瓶に入れ均一に混合し、次いで、ボルテックスミキサーで攪拌しながら、混合液に過酸化水素水(濃度は882mM)を一度に入れた。
実施例と同様に、バイアル瓶を180度に傾けたとき、内容物が垂れてこない時間を、ゲル化時間として測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 2018153296
[実施例の考察]
図1に組成物中に含まれるグルコースオキシダーゼの含有量を一定にして、グルコース量(水溶液量)を変えた実施例1〜5の結果を図示した。
また、図2に組成物中に含まれるグルコースの含有量を一定にして、グルコースオキシダーゼ量(水溶液量)を変えた実施例3および実施例6〜8の結果を図示した。
図1および図2から、組成物中に含まれるグルコース量とグルコースオキシダーゼ量を調整することで、ゲル化時間をコントロールすることが可能であることが考察できる。
特に図1から、グルコースとグルコースオキシダーゼから生成する過酸化水素が少なすぎると、ゲル化時間が長くなる。一方、生成する過酸化水素が多すぎても、ゲル化時間は長くなり、これは過剰に生成した過酸化水素は分解して酸素を発生し、この酸素がゲル化時間を長くしていると推定される。

Claims (9)

  1. 不飽和二重結合を有する化合物(A)、
    アスコルビン酸類(B)、
    基質を消費して過酸化水素を生成する酸化酵素(C)、および
    前記酸化酵素(C)に対応する基質(D)
    を含有する組成物。
  2. 前記不飽和二重結合を有する化合物(A)が、(メタ)アクリロイル変性多糖である請求項1に記載の組成物。
  3. 前記(メタ)アクリロイル変性多糖が、(メタ)アクリロイル変性ヒアルロン酸、(メタ)アクリロイル変性デキストラン、および(メタ)アクリロイル変性プルランから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の組成物。
  4. 前記酸化酵素(C)がグルコースオキシダーゼであり、前記基質(D)がグルコースである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. さらに、水(E)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物(A)に含まれる前記不飽和二重結合の付加重合による架橋構造を有するゲル。
  7. 水分を50〜99.9質量%含有するハイドロゲルである請求項6に記載のゲル。
  8. 請求項6または7に記載のゲルを50質量%以上含有する成形体。
  9. 請求項8に記載の成形体を有する医療用器具。
JP2017050996A 2017-03-16 2017-03-16 不飽和化合物を含有する組成物 Pending JP2018153296A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017050996A JP2018153296A (ja) 2017-03-16 2017-03-16 不飽和化合物を含有する組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017050996A JP2018153296A (ja) 2017-03-16 2017-03-16 不飽和化合物を含有する組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018153296A true JP2018153296A (ja) 2018-10-04

Family

ID=63717084

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017050996A Pending JP2018153296A (ja) 2017-03-16 2017-03-16 不飽和化合物を含有する組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018153296A (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006514707A (ja) * 2002-12-20 2006-05-11 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 酵素を含有するフリーラジカル開始剤系
WO2007083643A1 (ja) * 2006-01-18 2007-07-26 National University Corporation Tokyo Medical And Dental University 骨形成促進物質とナノゲルを含有する骨形成用生体材料
JP2009508653A (ja) * 2005-09-21 2009-03-05 サーモディクス,インコーポレイティド 生分解性天然多糖を含む被膜及び器具
JP2009508626A (ja) * 2005-09-21 2009-03-05 サーモディクス,インコーポレイティド 生分解性天然多糖を含む被膜及び器具
JP2009530445A (ja) * 2006-03-14 2009-08-27 ノボザイムス バイオポリマー アクティーゼルスカブ アクリル化ヒアルロン酸
JP2012510535A (ja) * 2008-11-28 2012-05-10 ユニヴァーシタ’デグリ ステュディ ディ パレルモ ヒアルロン酸官能基化誘導体の製造方法及びそのヒドロゲル形成

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006514707A (ja) * 2002-12-20 2006-05-11 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 酵素を含有するフリーラジカル開始剤系
JP2009508653A (ja) * 2005-09-21 2009-03-05 サーモディクス,インコーポレイティド 生分解性天然多糖を含む被膜及び器具
JP2009508626A (ja) * 2005-09-21 2009-03-05 サーモディクス,インコーポレイティド 生分解性天然多糖を含む被膜及び器具
WO2007083643A1 (ja) * 2006-01-18 2007-07-26 National University Corporation Tokyo Medical And Dental University 骨形成促進物質とナノゲルを含有する骨形成用生体材料
JP2009530445A (ja) * 2006-03-14 2009-08-27 ノボザイムス バイオポリマー アクティーゼルスカブ アクリル化ヒアルロン酸
JP2012510535A (ja) * 2008-11-28 2012-05-10 ユニヴァーシタ’デグリ ステュディ ディ パレルモ ヒアルロン酸官能基化誘導体の製造方法及びそのヒドロゲル形成

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Dutta et al. Functional cellulose-based hydrogels as extracellular matrices for tissue engineering
Mo et al. Advances in Injectable and Self‐healing Polysaccharide Hydrogel Based on the Schiff Base Reaction
US7226972B2 (en) Process for cross-linking hyaluronic acid to polymers
AU2009304472B2 (en) Injectable in-situ crosslinked hydrogel and the preparation method and use thereof
EP1753787B1 (en) Method of covalently linking hyaluronan and chitosan
Peng et al. Cyclodextrin–dextran based in situ hydrogel formation: a carrier for hydrophobic drugs
US11787922B2 (en) Hydrophobically modified chitosan compositions
JP5039552B2 (ja) セルロース誘導体
JP2004323453A (ja) 分解性ゲル及びその製造法
JP5340093B2 (ja) 架橋ヒアルロン酸の製造方法
Hoque et al. Interaction chemistry of functional groups for natural biopolymer-based hydrogel design
CN114099787B (zh) 可吸收生物膜、制法及其应用
US20220135750A1 (en) Surgical hydrogel
JP2018153296A (ja) 不飽和化合物を含有する組成物
JP2018162440A (ja) 組成物およびその用途
JP2018199766A (ja) 変性多糖およびその用途
Mehrabi et al. Evaluation of inherent properties of the carboxymethyl cellulose (CMC) for potential application in tissue engineering focusing on bone regeneration
CN111588731A (zh) 用于伤口愈合的组合物及其生成方法和用途
JP2010035744A (ja) 癒着防止材
JP6834545B2 (ja) 変性多糖およびその用途
Agrawal et al. Polysaccharides-Based Biomaterials for Surgical Applications
WO2018139042A1 (ja) 変性多糖およびその製造方法、ならびにその用途
JP2018188561A (ja) 変性多糖およびその用途
JP2019025132A (ja) 変性多糖を含有する組成物およびその用途

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190805

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200519

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200714

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20201104