JP2010035744A - 癒着防止材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多糖類誘導体のハイドロゲルからなり、生理的な塩濃度下において、1.0重量%水溶液について動的粘弾性測定装置で角速度10rad/secにて求められる複素弾性率が1〜1000N/m2増加することを特徴とする癒着防止材。好ましい多糖類誘導体としては、カルボキシメチルセルロースとホスファチジルエタノールアミンとの縮合反応生成物が例示される。
【選択図】なし
Description
その結果、生理的な塩濃度下において、1.0重量%水溶液について動的粘弾性測定装置で角速度10rad/secにて求められる複素弾性率が1〜1000N/m2増加するという特徴を有する多糖類誘導体のハイドロゲルが存在することを見出した。そして、かかるハイドロゲルが腹腔以外の癒着防止にも有用であることを見出し、本発明を完成した。
好ましい粘弾性の増加範囲としては、50〜700N/m2増加するものであり、より好ましくは100〜500N/m2増加するものである。
−H (a)
−CH2−COOH (b)
−CH2−COOX (c)
式(d)中、R4およびR5はそれぞれ独立に炭素数9〜27のアルキル基またはアルケニル基であり、
(b)と(c)の置換度の合計が0.3〜2.0であり、
(d)の置換度が0.001〜0.05、より好ましくは0.005〜0.015である。
本発明の癒着防止材調製のために用いるセルロース誘導体は、例えば次のようにして製造することができる。
上記した本発明で用いられるセルロース誘導体は、下記式で表される繰り返し単位からなり、分子量が5×103〜5×106のカルボキシメチルセルロースと、
−H (a)
−CH2−COOH (b)
−CH2−COOX (c)
式(c)中、Xはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、
式(b)と(c)の置換度の合計が0.3〜2.0であり、
R4およびR5はそれぞれ独立に、炭素数9〜27のアルキル基またはアルケニル基である。
(b)と(c)の置換度の合計は、0.3〜2.0、好ましくは0.5〜1.8、より好ましくは0.6〜1.5である。(b)と(c)の割合は特に限定されないが、水に対する溶解性の点から、(c)が(b)よりも多く存在するほうが好ましい。
本発明で用いられるセルロース誘導体の製造方法においては、得られたセルロース誘導体を、実質的にカルボキシメチルセルロースを溶解しないが水と相溶する有機溶媒(B)を用いてセルロース誘導体を精製する工程を加えてもよい。
本発明の癒着防止材は、上述のセルロース誘導体を含有するハイドロゲルであり、水100重量部に対し、かかるセルロース誘導体を0.1〜1.5重量部、好ましくは0.5〜1.0重量部含むハイドロゲルである。
またハイドロゲル中に含まれる水以外の他の成分としては、触媒として用いた縮合剤類、縮合剤が所定の化学反応を経由することで生成するウレアなどの副産物類、カルボキシル活性化剤、未反応のホスファチジルエタノールアミン類、反応の各段階で混入する可能性のある異物、pHの調整に用いたイオン類などが考えられるが、これらの成分は、上記の有機溶媒(B)を用いた精製あるいは洗浄によって取り除かれており、いずれの化合物も、生体内に入れたときに異物反応として認識されない程度の低いレベルに抑えてあることが好ましい。
(1)実施例に使用した材料は以下の通りである。
(i)CMCNa:カルボキシメチルセルロースナトリウム(日本製紙ケミカル(株)製、置換度0.69)、
(ii)テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)、
(iii)0.1M HCl(和光純薬工業(株)製)、
(iv)0.1M NaOH(和光純薬工業(株)製)、
(v)EDC :1−Ethyl−3−[3−(dimethylamino)propyl]−carbodi−imide・HCl((株)大阪合成有機化学研究所製)、
(vi)HOBt・H2O :1−Hydroxybenzotriazole,monohydrate((株)大阪合成有機化学研究所製)、
(vii)L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(COATSOME ME−8181、日本油脂(株)製)、
(viii)エタノール(和光純薬工業(株)製)、
(ix)NaCl(和光純薬工業(株)製)、
(x)注射用蒸留水(大塚製薬(株)製)、
(xi)消毒用エタノール(和光純薬工業(株)製)、
(xii)ペントバルビタールナトリウム(ネンブタール注射液、大日本住友製薬製)。
(2)セルロース誘導体中のリン脂質含量の測定
セルロース誘導体中のリン脂質の割合は、バナドモリブデン酸吸光光度法による全リン含量の分析により求めた。
(3)ハイドロゲルの複素弾性率の測定
ハイドロゲルの複素弾性率は、動的粘弾性測定装置であるRheometer RFIII(TA Instrument)を使用し、37℃、角速度10rad/secで測定した。複素弾性率とは弾性体の応力とひずみの比を表す定数のことである。
(セルロース誘導体)
CMCNa500mgを水100mLに溶解し、さらにテトラヒドロフラン100mLを加えた。この溶液に、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン236.6mg(0.000318mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し20当量)、EDC67.2mg(0.00035mol)、HOBt・H2O53.5mg(0.00035mol)を25mLのテトラヒドロフラン/水=1/1に溶解し、反応系に添加した後、終夜攪拌を行った。攪拌後、テトラヒドロフランを除去し、水をある程度蒸発させたところでエタノール中に加え、沈殿させた。ろ過により、エタノールを除き、再度エタノールにて洗浄し、ろ物を真空乾燥することでセルロース誘導体を得て、そのリン脂質含量を測定した。反応前のカルボキシメチルセルロースナトリウムの置換度は0.69であり、すべてのカルボキシメチル基はナトリウム化されていると仮定し、リン脂質含量を用いて計算により、式(d)の置換度を求めた。式(d)の置換度は1.9mol%/糖であった。
真空乾燥したセルロース誘導体からなる組成物5mgを注射用蒸留水995mgに溶解し、濃度0.5重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、85.6N/m2であった。
(坐骨神経癒着試験)
日本チャールス・リバー(株)のLewisラット(9匹)を使用し、Ohsumiらの方法に従って坐骨神経癒着モデルを作製した[Hidehiko Ohsumi, Hitoshi Hirata, Takeshi Nagakura, Masaya Tsujii, Toshiko Sugimoto, Keiichi Miyamoto, Takeshi Horiuchi: Plastic and Reconstructive Surgery 116(3): 823-30, 2005]。すなわち、ラットをペントバルビタールナトリウムの腹腔内投与麻酔下で側臥位に固定し、臀部を剃毛した後、消毒用エタノールで消毒した。腹部から背部に向け臀部を4〜5cm切開して坐骨神経を露出させた。坐骨神経の上周膜を1.5cm剥離し、さらに周囲の筋組織を灼焼した。その後、上周膜を剥離した坐骨神経周囲に実施例1のハイドロゲル(0.5mL)を塗布し、切開部の筋層及び皮膚を縫合した。創傷部をイソジン消毒液で消毒した後、ケージに戻した。モデル作製6週間後、動物をペントバルビタールナトリウム麻酔下で、再度坐骨神経を露出させ、坐骨神経癒着の程度を肉眼的に観察し、以下に示す基準に従ってスコア化した。
スコア0:癒着が認められない状態
スコア1:弱い癒着がある状態
スコア2:中程度の癒着がある状態
スコア3:かなりしっかりとした癒着がある状態
さらに、坐骨神経の上周膜を剥離した部分1.5cmの両端を切断し、片方の端に縫合糸を結びつけ、それをデジタル圧力計(SHIMPO社製)を用いて2cm/分で引っ張り、坐骨神経が周囲の筋組織からはがれる最大強度(N)を測定し、その値を癒着の強度として評価した。癒着がない場合、0Nとして扱った。
その結果、癒着のスコア、強度はそれぞれ、1.1±0.3、0.51±0.28N(平均値±標準偏差)となった。
ラットを9匹用い、実施例1のハイドロゲルの代わりに実施例1で得られたセルロース誘導体10mgを注射用蒸留水990mgに溶解し、濃度1.0重量%で調製したハイドロゲル(0.5mL)を用いること以外、実施例2と同様の操作を行い、癒着の程度、強度に対する効果を評価した。その結果、癒着のスコア、強度はそれぞれ、1.6±0.5、0.78±0.46N(平均値±標準偏差)であった。
得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定したところ、306.1N/m2であった。ハイドロゲルの複素弾性率は、動的粘弾性測定装置であるRheometer RFIII(TA Instrument)を使用し、37℃、角速度10rad/secで測定した。
コントロールとして、ハイドロゲルを塗布せずに、実施例2と同様の操作を行い、癒着の程度、強度を評価した。その結果、癒着のスコア、強度はそれぞれ、2.0±0.7、1.24±0.18Nとなった(平均値±標準偏差)。
陽性対照として、臨床現場で癒着防止効果を期待して使用されているArtz(登録商標)(科研製薬(株)製)(0.5mL)を用いること以外、実施例2と同様の操作を行い、癒着の程度、強度に対する効果を評価した。その結果、癒着のスコア、強度はそれぞれ、1.7±0.9、0.98±0.39N(平均値±標準偏差)であった。
Artzの複素弾性率を測定したところ、7.7N/m2であった。
以下表1に実施例2、実施例3、比較例1、および比較例2の結果をまとめる。
(塩添加による複素弾性率増加)
CMCNa3500mgを水100mLに溶解し、さらにテトラヒドロフラン100mLを加えた。この溶液に、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン413.7mg(0.0000795mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し5当量)、縮合剤として4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)169.4mg(0.0000874mol)を反応系に添加した後、終夜攪拌を行った。攪拌後、エタノール中に加え、沈殿させた。以下、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体を得た。置換度は1.0mol%/糖であった。セルロース誘導体からなる組成物20mgを注射用蒸留水1800mgに溶解後、最終濃度が0.9%となるように9%NaClを200mg添加し、最終濃度1.0重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、134.5±1.4N/m2(平均値±標準偏差)であった。
9%のNaClの代わりに注射用蒸留水200mgを添加すること以外、実施例4と同様の操作を行い、ハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、8.0±0.5N/m2(平均値±標準偏差)であった。
CMCNa2500mg、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン591、5mg(0.000159mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し10当量)、EDC168mg(0.000175mol)、HOBt・H2O134mg(0.000175mol)を用いること以外、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体を得た。置換度は1.2mol%/糖であった。セルロース誘導体からなる組成物20mgを注射用蒸留水1800mgに溶解後、最終濃度が0.9%となるように9%NaClを200mg添加し、最終濃度1.0重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、187.5±33.4N/m2(平均値±標準偏差)であった。
9%のNaClの代わりに注射用蒸留水200mgを用いること以外、実施例5と同様の操作を行い、ハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、56.2±5.2N/m2(平均値±標準偏差)であった。
CMCNa1500mgを水100mLに溶解し、さらにテトラヒドロフラン100mLを加えた。この溶液に、L−α−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン411.4mg(0.000184mol)(CMCNaのカルボキシル基100当量に対し10当量)、縮合剤として4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)168.3mg(0.000203mol)を反応系に添加した後、終夜攪拌を行った。攪拌後、エタノール中に加え、沈殿させた。以下、実施例1と同様の操作を行い、セルロース誘導体を得た。置換度は1.0mol%/糖であった。セルロース誘導体からなる組成物20mgを注射用蒸留水1800mgに溶解後、最終濃度が0.9%となるように9%NaClを200mg添加し、最終濃度1.0重量%のハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、294.9±22.0N/m2(平均値±標準偏差)であった。
9%のNaClの代わりに注射用蒸留水200mgを用いること以外、実施例6と同様の操作を行い、ハイドロゲルを調製した。得られたハイドロゲルの複素弾性率を測定した結果、109.8±7.8N/m2(平均値±標準偏差)であった。
Claims (8)
- 多糖類誘導体のハイドロゲルからなり、生理的な塩濃度下において、1.0重量%水溶液について動的粘弾性測定装置で角速度10rad/secにて求められる複素弾性率が1〜1000N/m2増加することを特徴とする癒着防止材。
- 多糖類誘導体が、下記式で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体であり、1.0重量%水溶液について動的粘弾性測定装置で角速度10rad/secにて求められる複素弾性率が5〜200N/m2である、請求項1に記載の癒着防止材。
−H (a)
−CH2−COOH (b)
−CH2−COOX (c)
式(d)中、R4およびR5はそれぞれ独立に炭素数9〜27のアルキル基またはアルケニル基であり、
(b)と(c)の置換度の合計が0.3〜2.0であり、
(d)の置換度が0.001〜0.05である。 - R4およびR5が炭素数9〜19のアルケニル基である請求項2に記載の癒着防止材。
- R4CO−および/またはR5CO−がオレオイル基である請求項2に記載の癒着防止材。
- 水100重量部に対し、多糖類誘導体を0.1〜1.5重量部含む、請求項1から4のいずれかに記載の癒着防止材。
- 請求項1から5のいずれかに記載の癒着防止材を含んでなる、整形外科領域の手術用癒着防止剤。
- 請求項1から5のいずれかに記載の癒着防止材を含んでなる、末梢神経の手術用癒着防止剤。
- 請求項1から5のいずれかに記載の癒着防止材を含んでなる、坐骨神経の手術用癒着防止剤。
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WO2005040224A1 (ja) * | 2003-10-29 | 2005-05-06 | Teijin Limited | ヒアルロン酸化合物、そのハイドロゲルおよび関節治療用材料 |
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