JP2018151472A - 高アスペクト比構造物の製造方法、超音波プローブの製造方法、高アスペクト比構造物、および、x線撮像装置 - Google Patents

高アスペクト比構造物の製造方法、超音波プローブの製造方法、高アスペクト比構造物、および、x線撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、より寸法精度の高い高アスペクト比構造物を製造できる高アスペクト比構造物の製造方法、超音波プローブの製造方法および高アスペクト比構造物ならびにこれを用いたX線撮像装置を提供する。【解決手段】本発明の高アスペクト比構造物の製造方法は、所定の基板13の少なくとも一つの主面に、主面に交差する方向に延びる複数の穴PEaを形成する穴形成工程と、複数の穴PEaを形成した主面に、次の凹部形成工程で凹部134を形成する第1領域AR1と凹部134を形成しない第2領域AR2とを規定する領域規定工程と、エッチング液の中に浸漬することによって第1領域ARに対応する基板13に凹部134を形成する凹部形成工程とを備え、前記穴形成工程は、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが、主面側より穴PEaの底部側の方が薄くなるように、複数の穴PEaを形成する隔壁薄化穴形成工程を含む。【選択図】図7

Description

本発明は、例えばX線用金属格子や超音波プローブ等のアスペクト比が3以上である高アスペクト比の構造物を製造する高アスペクト比構造物の製造方法に関する。そして、本発明は、この高アスペクト比構造物の製造方法を用いて超音波プローブを製造する超音波プローブの製造方法に関する。さらに、本発明は、このような高アスペクト比の構造物およびこれを用いたX線撮像装置に関する。
例えばX線を受けるX線用金属格子は、多数の平行な周期構造を備えた素子として様々な装置に利用されており、近年では、X線撮像装置への応用も試みられている。このX線撮像装置では、近年、被爆量の低減の観点から、X線位相イメージングが注目されており、例えばタルボ干渉計あるいはタルボ・ロー干渉計が応用されている。このタルボ・ロー干渉計を用いたX線撮像装置では、第0格子、第1格子および第2格子の3個のX線用金属格子が用いられている。この第0格子は、単一のX線源をマルチ光源とするために利用される通常の格子であり、前記単一のX線源から放射されたX線を複数のX線(複数のX線ビーム)に分けて放射する。そして、これら第1および第2格子は、互いにタルボ距離だけ離間して配置される回折格子であり、タルボ・ロー干渉計(あるいはタルボ干渉計)を構成する。この回折格子には、回折方法で分類すると、一般に、透過型回折格子と反射型回折格子とがあり、さらに、透過型回折格子には、光を透過させる基板上に光を吸収する部分を周期的に配列した振幅型回折格子(吸収型回折格子)と、光を透過させる基板上に光の位相を変化させる部分を周期的に配列した位相型回折格子とがある。
このようなX線位相イメージングでは、高透過特性を有するX線に対し、X線を透過する、透過しない、のコントラストが明瞭な吸収型回折格子や、位相差が明瞭な位相型回折格子が必要になる。このため、例えばアスペクト比が3以上である、非常にアスペクト比の高い高アスペクト比構造の格子が必要となる。そのため、半導体の加工技術を応用した作製方法が提案され、例えば特許文献1に、高アスペクト比構造物の製造方法が開示されている。この特許文献1に開示された高アスペクト比構造物の製造方法は、基板の少なくとも1つの主面に、複数の穴を形成する穴形成工程と、前記穴形成工程終了後、前記複数の穴が形成された前記主面上に、レジスト層を配設した第1領域と前記レジスト層を配設していない第2領域とを形成するレジスト形成工程と、エッチング液中に浸漬させて前記第2領域に対応する前記基板に凹部を形成する凹部形成工程とを備える。
また、このような高アスペクト比構造物は、超音波プローブ(超音波探触子)にも見られる。
特開2017−32476号公報
ところで、前記特許文献1に開示された高アスペクト比構造物の製造方法では、理想的には、互いに隣接する穴間の隔壁厚さは、表面から底部まで一定で陽極酸化法によって形成され、前記隔壁は、表面から底部までほぼ同時にエッチングされる。このような理想的なケースも生じ得るが、高アスペクト比な格子を製造するために、陽極酸化によって形成された複数の穴を持つ穴群層が、比較的、厚い(前記複数の穴それぞれは、深い)ため、前記穴の径は、表面側が底部側より大きくなり、したがって、互いに隣接する穴間の隔壁厚さは、穴の底部側より主面側の方が薄くなるケースが生じる虞があった。このようなケースでは、凹部形成工程が実施され、これにより互いに隣接する穴間の隔壁がエッチング液でエッチングされると、前記隔壁厚さの相違と、常に新鮮な(未反応な)エッチング液に曝されていること等から、互いに隣接する穴間の隔壁は、表面側がエッチング液で溶解してしまっても、底部側が残存してしまう。そのため、底部側の前記隔壁を溶解するために、さらにエッチングすると、逆に、主面側では、過剰にエッチングされてしまい、凹部の側壁がエッチングされ、凹部の幅が広がってしまう。この結果、高アスペクト比構造物の寸法精度が低下してしまう。
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、より寸法精度の高い高アスペクト比構造物を製造できる高アスペクト比構造物の製造方法、および、これを用いた超音波プローブを製造する超音波プローブの製造方法を提供することである。そして、本発明は、このような高アスペクト比構造物、および、これを用いたX線撮像装置を提供することである。
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる高アスペクト比構造物の製造方法は、所定の基板の少なくとも一つの主面に、前記主面に交差する方向に延びる複数の穴を形成する穴形成工程と、前記複数の穴を形成した前記主面に、後記凹部形成工程で後記凹部を形成する第1領域と後記凹部形成工程で後記凹部を形成しない第2領域とを規定する領域規定工程と、エッチング液の中に浸漬することによって前記第1領域に対応する前記基板に凹部を形成する凹部形成工程とを備え、前記穴形成工程は、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴の底部側の方が薄くなるように、前記複数の穴を形成する隔壁薄化穴形成工程を含むことを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程そのものから成る。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴の底部側の方が薄くなるように、前記複数の穴を形成する隔壁薄化穴形成工程を含むので、凹部形成工程によって、表面側がエッチング液で溶解してしまったときに、底部側も溶解できる。このため、上記高アスペクト比構造物の製造方法は、過剰にエッチングされることを防止でき、より寸法精度の高い高アスペクト比構造物を製造できる。
なお、アスペクト比とは、凹部の幅に対する厚さ(深さ)の比(アスペクト比=厚さ/幅=深さ/幅)である。高アスペクト比とは、アスペクト比が3以上である場合をいう。
また、他の一態様では、前記穴形成工程は、前記領域規定工程を実施する前に実施される第1穴形成工程と、前記領域規定工程を実施した後に実施される第2穴形成工程とを備え、前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴それぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴を形成する前記隔壁薄化穴形成工程であることを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記第1穴形成工程は、その開始時からその終了時まで一定値の印加電圧で実施される陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴を形成する。
また、他の一態様では、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記第1穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程であることを特徴とする。
また、他の一態様では、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記穴形成工程は、前記領域規定工程を実施する前に実施される第1穴形成工程と、前記領域規定工程を実施した後に実施される第2穴形成工程とを備え、前記第1穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程であり、前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴それぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴を形成することを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記第2穴形成工程は、その開始時からその終了時まで一定値の印加電圧で実施される陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴を形成する。
このような、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法は、穴形成工程を第1および第2穴形成工程に分けるので、凹部形成工程によって互いに隣接する凹部間に形成された凸部の基部には、前記複数の穴が形成されないため、前記凸部をよりしっかり支持できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記領域規定工程は、前記第2領域に対応する前記主面上にレジスト層を形成するレジスト層形成工程であることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、前記第2領域に対応する前記主面上にレジスト層を形成することで、凹部形成工程で凹部を形成しない第2領域を規定(形成)でき、レジスト層形成工程で前記領域規定工程を容易に実現できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記領域規定工程は、前記複数の穴のうち、前記第2領域に対応する部分に形成されている1または複数の穴を閉塞する閉塞工程であることを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記閉塞工程は、前記主面上に第2レジスト層を形成する第1工程と、前記第2レジスト層をパターニングして前記第2領域に対応する前記第2レジスト層を除去する第2工程と、前記複数の穴のうち、前記第2工程で前記第2レジスト層を除去した前記第2領域に形成されている1または複数の穴を閉塞する第3工程と、前記第2工程後に残置している前記第2レジスト層を除去する第4工程とを備える。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記閉塞工程は、封孔処理材を用いた封孔処理によって前記穴を閉塞する工程である。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、前記複数の穴のうち、前記第2領域に対応する部分に形成されている1または複数の穴を閉塞することで、凹部形成工程で凹部を形成しない前記第2領域を規定(形成)でき、閉塞工程で前記領域規定工程を容易に実現できる。上記高アスペクト比構造物の製造方法は、ウェットエッチング法の実施の際にエッチング液の前記穴への侵入を閉塞工程で防ぐので、ウェットエッチング法の実施の際に通常必要となる、前記エッチング液に対するレジスト層が不要となる。このため、上記高アスペクト比構造物の製造方法は、ウェットエッチング法の実施に通常生じる、レジスト層によるいわゆるアンダーカットが生じることなく、前記エッチング液が前記穴の底部まで浸透し、互いに隣接する穴間に形成された隔壁を溶解する。したがって、上記高アスペクト比構造物の製造方法は、ウェットエッチング法によって基板の主面に対し略垂直な側面を持つ凹部を有する高アスペクト比構造物を製造できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記隔壁薄化穴形成工程は、開始時の第1印加電圧より終了時の第2印加電圧が低くなるように実施される陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴を形成する工程であることを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記隔壁薄化穴形成工程の前記陽極酸化法または陽極化成法は、時間経過に従って徐々に低下する印加電圧で実施される。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記隔壁薄化穴形成工程の前記陽極酸化法または陽極化成法は、時間経過に従って所定の割合で低下する印加電圧で実施される。好ましくは、前記所定の割合は、時間経過にかかわらず所定の一定値である(前記隔壁薄化穴形成工程の前記陽極酸化法または陽極化成法は、経過時間に対し所定の傾きでリニア(線形)に変化して低下する印加電圧で実施される。前記隔壁薄化穴形成工程の前記陽極酸化法または陽極化成法は、単位時間あたり所定の一定値で低下する印加電圧で実施される)。好ましくは、前記所定の割合は、時間経過に従って変化する値である(前記所定の傾きは、時間経過に従って変化する値である。前記隔壁薄化穴形成工程の前記陽極酸化法または陽極化成法は、経過時間に対し非線形に変化して低下する印加電圧で実施される)。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、隔壁薄化穴形成工程に、陽極酸化法または陽極化成法を用い、開始時の第1印加電圧より終了時の第2印加電圧が低くなるように陽極酸化法または陽極化成法の印加電圧を調整するので、基板の主面上に、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴の底部側の方が薄くなる前記複数の穴を容易に形成できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記所定の基板は、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)のうちのいずれか1つで形成されていることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、基板がこれらいずれか1つで形成されているため、例えば陽極酸化法または陽極化成法により主面に略垂直に延びる複数の穴を容易に形成できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記凹部に、X線吸収可能なX線吸収性材料を埋設するX線吸収性材料埋設工程をさらに備えることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、前記凹部にX線吸収性材料を埋設することで、前記第1領域をX線吸収部に形成でき、前記第2領域をX線透過部にできる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記X線吸収性材料埋設工程は、電鋳法によって、X線吸収性材料である金属を埋設することを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記金属は、金(Au)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)およびイリジウム(Ir)のうちのいずれか1つである。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、電鋳法によりX線吸収性材料である金属を埋設することで、X線吸収性材料を凹部に容易に確実に埋設できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記高アスペクト比構造物は、X線タルボ干渉計またはX線タルボ・ロー干渉計に用いられるX線用金属格子であることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、より性能の高い、X線タルボ干渉計またはX線タルボ・ロー干渉計に用いられる第0格子、第1格子および第2格子のX線用金属格子を製造できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物の製造方法において、前記高アスペクト比構造物は、超音波プローブを製造する際に用いられる超音波プローブ製造用型であることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物の製造方法は、超音波プローブを製造する際に用いられる超音波プローブ製造用型を容易に低コストで製造できる。
そして、本発明の他の一態様にかかる超音波プローブの製造方法は、上述の超音波プローブ製造用型の凹部に金属を充填して金型用凹部を有する金型を形成する金型形成工程と、前記金型の金型用凹部に樹脂材料からなる樹脂充填物を充填して樹脂型用凹部を有する樹脂型を形成する樹脂型形成工程と、前記樹脂型の樹脂型用凹部に圧電材料を含有するスラリーを充填して構造体凹部を有する微細構造体を形成する微細構造体形成工程と、前記微細構造体の構造体凹部に合成樹脂を充填して前記圧電材料からなる圧電層と合成樹脂からなる合成樹脂層とが交互に並んでアレイ化された超音波プローブ本体を形成する超音波プローブ本体形成工程とを備えることを特徴とする。
このような超音波プローブの製造方法は、ウェットエッチング法で基板の一方の主面に複数の凹部を備えた超音波プローブ製造用型に基づいて圧電層と合成樹脂層とが正確に交互に並んでアレイ化された超音波プローブ本体を形成でき、しかも、低コストで製造できる。
そして、本発明の他の一態様にかかる高アスペクト比構造物は、基板と、前記基板に形成された格子とを備え、前記格子は、空間的な周期を持つように形成された複数の凸部を備え、前記複数の凸部それぞれは、前記格子の格子面に交差する方向に延びる複数の穴を備え、互いに隣接する穴間の隔壁は、その厚さが前記格子面側より前記穴の底部側の方が薄くなっていることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物は、これら上述のいずれかの高アスペクト比構造物の製造方法によって製造可能であるので、より寸法精度が高い。
また、他の一態様では、上述の高アスペクト比構造物において、前記複数の凸部それぞれは、前記複数の穴それぞれを閉塞する閉塞部材をさらに備えることを特徴とする。好ましくは、上述の高アスペクト比構造物において、前記基板は、アルミニウムで形成され、前記凸部は、酸化アルミニウム(アルミナ)で形成され、前記閉塞部材は、酸化アルミニウム(アルミナ)の水和物で形成される。
このような高アスペクト比構造物は、前記閉塞部材を備えるので、製造工程中にウェットエッチング法が利用される場合でも、上述のレジスト層によるアンダーカットが生じることなく、基板の主面に対し略垂直な側面を持つ凹部を有する。したがって、上記高アスペクト比構造物は、より精巧である。しかも、上記高アスペクト比構造物は、低コストで製造できる。
また、他の一態様では、これら上述の高アスペクト比構造物において、前記複数の凸部間それぞれに形成される複数の凹部それぞれに埋設された、X線吸収可能なX線吸収性材料から成る複数のX線吸収部材をさらに備えることを特徴とする。
このような高アスペクト比構造物は、前記第1領域をX線吸収部とし、前記第2領域をX線透過部としたX線用金属格子となる。
そして、本発明の他の一態様にかかるX線撮像装置は、X線を放射するX線源と、前記X線源から放射されたX線が照射されるタルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計と、前記タルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計によるX線の像を撮像するX線撮像素子とを備え、前記タルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計は、これら上述のいずれかの高アスペクト比構造部をX線用金属格子として含むことを特徴とする。
このようなX線撮像装置は、タルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計を構成するX線用金属格子に、より性能の高い上述の高アスペクト比構造物を用いるので、より鮮明なX線の像を得ることができる。
本発明にかかる高アスペクト比構造物の製造方法は、より寸法精度の高い高アスペクト比構造物を製造できる。本発明によれば、これを用いた超音波プローブを製造する超音波プローブの製造方法が提供される。そして、本発明にかかる高アスペクト比構造物は、より寸法精度の高い。さらに、本発明によれば、このような高アスペクト比構造物を用いたX線撮像装置を提供できる。
第1実施形態にかかるX線用金属格子の構成を説明するための図である。 図1に示すX線用金属格子におけるX線吸収部の断面を説明するための図である。 図1に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その1)である。 図1に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その2)である。 図1に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その3)である。 金属基板に複数の穴を形成する陽極酸化法を説明するための図である。 凹部形成工程における凹部形成過程の様子を説明するための図である。 第2実施形態にかかるX線用金属格子の構成を説明するための図である。 図8に示すX線用金属格子におけるX線吸収部の断面を説明するための図である。 図8に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その1)である。 図8に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その2)である。 閉塞工程における封止処理を説明するための図である。 第3実施形態にかかるX線用金属格子の構成を説明するための図である。 図13に示すX線用金属格子におけるX線吸収部の断面を説明するための図である。 図13に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その1)である。 図13に示すX線用金属格子の製造方法を説明するための図(その2)である。 第4実施形態にかかるX線用金属格子の構成を説明するための図である。 凹部を金属材料で埋める電鋳法を説明するための図である。 第5実施形態におけるX線用タルボ干渉計の構成を示す斜視図である。 第6実施形態におけるX線用タルボ・ロー干渉計の構成を示す上面図である。 第7実施形態におけるX線撮像装置の構成を示す説明図である。 高アスペクト比構造物の製造方法により製造された一例である第8実施形態の超音波プローブ製造用型の断面図である。 前記超音波プローブ製造用型を用いて金型を形成する際の断面図である。 図23に示す金型の断面図である。 図23の金型を用いて樹脂型を形成する際の断面図である。 図25の樹脂型の断面図である。 図26の樹脂型を用いてチタン酸ジルコン酸鉛焼結体を形成する際の断面図である。 図27のチタン酸ジルコン酸鉛焼結体の断面図である。 図28のチタン酸ジルコン酸鉛焼結体に設けられた焼結体凹部にエポキシ樹脂を充填した際の断面図である。 図29の状態から形成した超音波プローブの要部の断面図である。 比較例における凹部形成工程における凹部形成過程の様子を説明するための図である。
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
本実施形態における高アスペクト比構造物は、基板と、前記基板に形成された格子とを備え、前記格子は、空間的な周期を持つように形成された複数の凸部を備え、前記複数の凸部それぞれは、前記格子の格子面に交差する方向に延びる複数の穴を備える。そして、本実施形態では、互いに隣接する穴間の隔壁は、その厚さが前記格子面側より前記穴の底部側の方が薄くなっている。このような高アスペクト比構造物は、例えば、金属格子や超音波プローブ製造用型等を挙げることができる。以下では、まず、金属格子の一例として、X線用金属格子に関してより具体的に説明し、次に、超音波プローブ製造用型に関してより具体的に説明する。
(第1実施形態;高アスペクト構造物の一例であるX線用金属格子およびその製造方法)
図1は、第1実施形態にかかるX線用金属格子の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すX線用金属格子におけるX線吸収部の断面を説明するための図である。図2Aは、X線吸収部の断面を模式的に示し、図2Bは、格子面側(主面側)におけるX線吸収部の拡大断面図を示し、図2Cは、穴の底部側におけるX線吸収部の拡大断面図を示す。
図1および図2に示すX線用金属格子1aは、金属基板13に設けられた格子領域10aおよび枠領域12aを備えて構成される。格子領域10aは、格子11aを形成した領域であり、枠領域12aは、この格子領域10aを取り囲むようにその周辺に設けられている。
この格子11aは、図1に示すようにDxDyDzの直交座標系を設定した場合に、所定の厚さ(深さ)H(格子面DxDyに垂直なDz方向(格子面DxDyの法線方向)の長さ)を有して一方向Dxに線状に延びる複数のX線吸収部111aと、前記所定の厚さHを有して前記一方向Dxに線状に延びる複数のX線透過部112aとを備え、これら複数のX線吸収部111aと複数のX線透過部112aとは、交互に平行に配設される。このため、複数のX線吸収部111aは、前記一方向Dxと直交する方向Dyに所定の間隔を空けてそれぞれ配設される。言い換えれば、複数のX線透過部112aは、前記一方向Dxと直交する方向Dyに所定の間隔を空けてそれぞれ配設される。この所定の間隔(ピッチ)Pは、本実施形態では、一定とされている。すなわち、複数のX線吸収部111aは、前記一方向Dxと直交する方向Dyに等間隔Pでそれぞれ配設されている。また、本実施形態では、X線吸収部111aは、前記DxDy面に直交するDxDz面に沿った板状または層状であり、複数のX線透過部112aは、互いに隣接するX線吸収部111aに挟まれた、DxDz面に沿った板状または層状の空間である。
そして、本実施形態では、これら複数のX線吸収部111aそれぞれは、図2に示すように、格子11aの格子面DxDyに交差する方向に延びる複数の穴PEaを備え、互いに隣接する穴PEa間の隔壁は、その厚さが格子面DxDy側より穴PEaの底部側の方が薄くなっている。図2に示す例では、これら複数の穴PEaは、格子面DxDyと略直交する方向Dzに延びてX線吸収部111a内に形成され、互いに隣接する穴PEa間の隔壁は、その厚さが前記方向に沿って格子面DxDyから穴PEaの底部へ向かうに従って徐々に薄くなっている。
これら複数のX線吸収部111aは、X線を吸収するように機能し、これらX線透過部112aは、X線を透過するように機能する。このため、このようなX線用金属格子1aは、一態様として、ピッチPがX線の波長に対し十分に長く干渉縞を生じない通常の格子、例えば、X線タルボ・ロー干渉計における第0格子として利用できる。また、このようなX線用金属格子1aは、他の一態様として、前記所定の間隔PをX線の波長に応じて適宜に設定することにより、回折格子として機能し、例えば、X線タルボ・ロー干渉計やX線タルボ干渉計における第1格子および第2格子として利用できる。X線吸収部111aは、例えば仕様に応じて充分にX線を吸収することができるように、適宜な厚さHとされている。X線は、一般的に透過性が高いので、この結果、X線吸収部111aにおける幅Wに対する厚さHの比(アスペクト比=厚さ/幅)は、例えば、3以上の高アスペクト比とされている。X線吸収部111aにおける幅Wは、前記一方向(長尺方向)Dxに直交する方向(幅方向)DyにおけるX線吸収部111aにおける長さであり、その厚さHは、前記一方向Dxとこれに直交する前記方向Dyとで構成される平面DxDyの法線方向(深さ方向)DzにおけるX線吸収部111aの長さである。
なお、上述では、X線用金属格子1aは、吸収型回折格子であるが、X線用金属格子1aは、X線吸収部111aを、X線透過部112aに対し所定の位相変化を与えるようにその厚さHを調整したX線位相部とすることで、位相型回折格子となる。
このようなX線用金属格子1aは、所定の基板の少なくとも一つの主面に、前記主面に交差する方向に延びる複数の穴を形成する穴形成工程と、前記複数の穴を形成した前記主面に、次の凹部形成工程で凹部を形成する第1領域と次の凹部形成工程で凹部を形成しない第2領域とを規定する領域規定工程と、エッチング液の中に浸漬することによって前記第1領域に対応する前記基板に凹部を形成する凹部形成工程とを備える高アスペクト比構造物の製造方法によって製造される。ここで、本実施形態では、前記穴形成工程は、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴の底部側の方が薄くなるように、前記複数の穴を形成する隔壁薄化穴形成工程を含む。前記凹部は、1次元格子では、例えば、スリット溝であり、また2次元格子では、柱状穴(柱状孔)等である。以下、後述する第2ないし第4実施形態も含め、前記凹部がスリット溝である前記X線用金属格子1aの製造方法について、詳述する。なお、凹部が例えば柱状穴等の他の形状であっても同様である。
図3ないし図5は、第1実施形態におけるX線用金属格子の製造方法を説明するための図である。図3ないし図5において、図Aおよび図Bを1組として各製造工程を模式的に説明しており、図Aは、図Bの断面図であり、図Bは、上面図である。図3ないし図5において、図Cおよび図Dを1組として各製造工程を模式的に説明しており、図Cは、図Dの断面図であり、図Dは、上面図である。図6は、金属基板に複数の穴を形成する陽極酸化法を説明するための図である。図7は、凹部形成工程における凹部形成過程の様子を説明するための図である。図7Aは、ウェットエッチング法の実施を開始した直後の穴群層132を模式的に示し、図7Dは、ウェットエッチング法の実施によって第1領域AR1に凹部134が形成された穴群層132を模式的に示し、図7Bおよび図7Cは、この順で、図7Aに示す穴群層132と図7Dに示す穴群層132との中間の状態における穴群層132を示す。
高アスペクト比構造物の一例としてX線用金属格子1aを製造する、高アスペクト比構造物の第1製造方法では、このX線用金属格子1aを製造するために、まず、板状の金属基板13が用意される(図3A、図3B)。
次に、この金属基板13の少なくとも一つの主面に、前記主面に交差する方向、好ましくは略直交する方向に延びる複数の穴PEaが形成される(穴形成工程)。このために、金属基板13は、陽極酸化法または陽極化成法によって複数の穴PEaを形成できる金属(合金を含む)で形成される。ここでは、一例として、金属基板13がアルミニウムで形成されている場合について説明する。そして、本実施形態では、この穴形成工程は、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴PEaの底部側の方が薄くなるように、前記複数の穴PEaを形成する隔壁薄化穴形成工程を含む。より具体的には、本実施形態では、前記穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程そのものから成る。
より詳しくは、前記隔壁薄化穴形成工程そのものから成る穴形成工程では、まず、金属基板13の一方の主面のみに複数の穴を形成するために、他方の主面に保護膜131が形成される(穴形成工程における保護膜形成工程、図3C、図3D)。例えば、保護膜131として石英(二酸化ケイ素、SiO)膜131が形成される。この石英膜131は、例えば、公知の常套手段である化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)およびスパッタ法等の種々の成膜方法によって形成される。例えば、本実施形態では、テトラエトキシシランを用いたプラズマCVDによって石英膜131は、成膜される。より詳しくは、まず、有機シランの一種であるテトラエトキシシラン(Tetraethoxysilane、TEOS)が加温され、キャリアガスによってバブリングされることによってTEOSガスが生成され、このTEOSガスに例えば酸素やオゾン等の酸化ガスおよび例えばヘリウム等の希釈ガスが混合されて原料ガスが生成される。そして、この原料ガスが例えばプラズマCVD装置に導入され、プラズマCVD装置内の金属基板13の表面に所定の厚さ(例えば2μm等)の石英膜131が形成される。
なお、上述では、保護膜131は、石英膜131であったが、これに限定されるものではない。保護膜131は、陽極酸化法の実施の際に、該陽極酸化法で用いられる溶液に抗して金属基板13を保護する保護膜として機能するので、保護膜131は、このような機能を有すれば良く、例えば、窒化ケイ素(SiN)等の誘電体材料や金属膜等で形成されても良い。
そして、この穴形成工程では、次に、金属基板13の一方の主面に、陽極酸化法(または陽極化成法)によって複数の穴PEaを有する穴群層132が形成される(穴形成工程における陽極酸化工程(陽極化成工程)、図4A、図4B)。例えば、この陽極酸化工程では、一例では、図6に示すように、上述の保護膜131が形成された金属基板13に電源21の陽極が通電可能に接続され、電源21の陰極に接続された陰極電極22および金属基板13が、電解液24を貯留した水槽23内における前記電解液24に浸けられる。その際、陰極電極22と金属基板13の一方の主面(保護膜131のない面)とを対向させて、陰極電極22および金属基板13が、浸けられる。前記電解液24は、酸化力が強く、かつ陽極酸化法によって生成された金属酸化膜を溶解する酸性溶液、例えば、リン酸およびシュウ酸等のエッチング液が好ましい。陰極電極22は、この電解液24に対して溶解しない金属、例えば、金(Au)、白金(Pt)およびカーボン(C)等で形成されることが好ましい。一例では、アルミニウムで形成された金属基板13に対し、電解液24は、0.3M(モル濃度、mol/l)のシュウ酸液であり、陰極電極22は、白金をメッキしたチタン板である。通電されると、金属基板13の主面表面から内部に向かって延びる複数の穴PEaが形成される。陽極酸化法(または陽極化成法)では、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さは、電圧に比例する。このため、開始時の第1印加電圧V1より終了時の第2印加電圧V2が低くなるように実施される陽極酸化法(または陽極化成法)によって前記複数の穴PEaが形成される(V1>V2)。すなわち、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴PEaの底部側の方が薄くなるように、通電初期では、所定の第1電圧値V1で通電が実施され、通電終期では、前記第1電圧値V1より低い所定の第2電圧値V2で通電が実施される。好ましくは、この陽極酸化法(または陽極化成法)は、前記第1電圧値V1から前記第2電圧値V2まで時間経過に従って徐々に低下する印加電圧で実施される。好ましくは、この陽極酸化法(または陽極化成法)は、前記第1電圧値V1から前記第2電圧値V2まで時間経過に従って所定の割合で低下する印加電圧で実施される。好ましくは、前記所定の割合は、時間経過にかかわらず所定の一定値である(前記陽極酸化法(または陽極化成法)は、経過時間に対し所定の傾きでリニア(線形)に変化して低下する印加電圧で実施される。前記陽極酸化法(または陽極化成法)は、単位時間あたり所定の一定値で低下する印加電圧で実施される)。好ましくは、前記所定の割合は、時間経過に従って変化する値である(前記隔壁薄化穴形成工程の前記陽極酸化法(または陽極化成法)は、経過時間に対し非線形に変化して低下する印加電圧で実施される)。このように通電されると、図2に示すように、金属基板13の主面表面から、金属基板13の厚さ方向(方向Dz、表面と垂直方向)に延びる複数の穴PEaが互いに間隔を空けて形成され、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴PEaの底部側の方が薄くなる。一例では、直流電圧で、60Vから20Vまでリニアに(線形に)時間変化するように20時間、通電が実施された(V1=60V、V2=20V、−2V/h)。したがって、通電開始から10時間経過後では、印加電圧V12は、40Vとなる(V12=40V)。これによって互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが前記主面側では約85nmであって、前記底部側では約40nmである複数の穴PEaが形成された(a1=約85nm(図2B),a2=約40nm(図2C))。なお、互いに隣接する穴PEaにおける中心間の平均距離は、前記主面側では約150nmであり、前記底部側では約50nmであった。穴PEaの底部におけるアルミナ層(二酸化アルミニウム層)の厚さは、約20nmであった(a2/2=約20nm(図2C))。このような複数の穴PEaを形成した穴群層132の厚さは、約110μmであった。この穴PEaは、その隔壁厚さが変化することで、枝分かれしながら、前記主面に交差する方向に延びて形成される。
次に、前記複数の穴PEaを形成した前記主面に、後述の凹部形成工程で後述の凹部134を形成する第1領域AR1と凹部形成工程で凹部134を形成しない第2領域AR2とが規定(形成)される(領域規定工程(領域形成工程)、図4C、図4D、図5A、図5B)。
より具体的には、本実施形態では、前記領域規定工程は、金属基板13の、第2領域AR2に対応する主面上にレジスト層133を形成するレジスト層形成工程である。より詳しくは、まず、金属基板13の、複数の穴PEaを形成した前記主面上にレジスト層133が形成される(レジスト層形成工程、図4C、図4D)。例えば、ドライフィルムレジストを金属基板13の前記主面上に貼付することで、レジスト層133が形成される。次に、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いることによって、レジスト層133がパターニングされ、前記パターニングされた部分の前記レジスト層133が除去される(パターニング工程、図5A、図5B)。より具体的には、レジスト層133に図略のリソグラフィーマスクを押し当てて、レジスト層133に前記リソグラフィーマスクを介して紫外線が照射され、レジスト層133がパターン露光され、現像される。そして、露光されなかった部分(あるいは露光された部分)のレジスト層133が除去される。これによって例えば、ピッチ(周期長)5.3μmであってデューティ比50%であるストライプ状(縞模様状)にレジスト層133の残るラインアンドスペースパターンが形成される。これにより金属基板13の穴群層132には、レジスト層133を除去した第1領域AR1と、レジスト層133を残置(配置)している第2領域AR2とが形成される。
なお、レジスト層133は、ドライフィルムレジストに限定されず、さらに、フォトレジストに限定されるものではなく、他のレジストが用いられても良い。このレジスト層133は、凹部形成工程におけるウェットエッチング法の実施の際に、エッチング液に抗して金属基板13の穴群層132を保護するように機能すれば良く、無機材料や有機材料で形成されて良い。例えば、金属基板13の、複数の穴PEaを形成した前記主面上にフォトレジストが形成され、前記フォトレジストがパターニングされた後に、レジスト層133として例えばクロム(Cr)膜等の金属膜(金属層)が形成される。そして、いわゆるリフトオフ(前記パターニングされたフォトレジストの除去)により前記金属膜がパターニングされる。これにより金属基板13の穴群層132には、レジスト層133としての前記金属膜を除去した第1領域AR1と、レジスト層133としての前記金属膜を残置(配置)している第2領域AR2とが形成される。
次に、金属基板13をエッチング液の中に浸漬することによって、前記領域規定工程で規定された第1領域AR1に対応する金属基板13に凹部134が形成される(凹部形成工程、図5C、図5D)。より具体的には、前記領域規定工程後の金属基板13が、8vol%のリン酸液(エッチング液)に浸漬され、180分間放置される。このとき、図7Aに示すように、金属基板13の浸漬後、数秒から数分で、前記領域規定工程のパターニング工程によって露出した穴群層132の穴PEaに、リン酸液が浸透する。その後、図7Bおよび図7Cに示すように、リン酸液は、穴PEa内で、残りの時間(≒180分)すべてを使い、等方的に、互いに隣接する穴PEa間の隔壁をエッチングし、隔壁を溶解する。これにより、図7D(図5Cおよび図5D)に示すように、金属基板13における第1領域AR1に、凹部134が形成される。
そして、第2領域AR2に残存しているレジスト層133が除去される(レジスト層除去工程)。
このような各製造工程を経ることによって、凹部形成工程でレジスト層133によって保護されて残存した第2領域ARの穴群層134が格子11aのX線吸収部111a(またはX線位相部)となり、第1領域ARの凹部134が格子11aのX線透過部112aとなり、図1に示す構成のX線用金属格子1aが製造される。なお、レジスト層133は、除去されずに(レジスト層除去工程が省略され)、図1に破線で示すように、レジスト層133を、X線吸収部111aの頂部を保護する保護層15としたX線用金属格子1aであっても良い。
従来では、前記理想的なケースも生じ得るが、高アスペクト比な格子を製造するために、陽極酸化法または陽極化成法によって形成された複数の穴を持つ穴群層は、比較的、厚い(前記複数の穴それぞれは、深い)ため、相対的に長い時間、電界液24と接している表面側と相対的に短い時間しか電解液24と接していない底面側とを較べると、表面側の方が電界液24による溶解作用により、前記穴の径は、表面側が底部側より大きくなり、したがって、互いに隣接する穴間の隔壁厚さは、穴の底部側より主面側の方が薄くなるケースが生じる虞があった。このようなケースでは、図31Aに示すように、凹部形成工程が実施され、互いに隣接する穴PEd間の隔壁がエッチング液でエッチングされると、前記隔壁厚さの相違と、表面側の方が常に新鮮な(未反応な)エッチング液に曝されていること等から、互いに隣接する穴PEd間の隔壁は、図31Bに示すように、表面側がエッチング液で溶解してしまっても、底部側が残存してしまう。そのため、底部側の前記隔壁を溶解するために、さらにエッチングすると、図31Cに示すように、逆に、主面側では、エッチング時間が過剰となってしまい、凹部の側壁がエッチングされ、凹部の幅が広がってしまう。この結果、高アスペクト比構造物の寸法精度が低下してしまう。なお、図31は、比較例における凹部形成工程における凹部形成過程の様子を説明するための図である。図31Aは、ウェットエッチング法の実施を開始した直後の穴群層132を模式的に示し、図31Bおよび図31Cは、この順で、ウェットエッチング法の実施の進行に伴う穴群層132の各状態を示す。
一比較例では、上述の穴形成工程における陽極酸化工程の条件が異なる点を除き、第1実施形態における高アスペクト比構造物の第1製造方法で、比較例の高アスペクト比構造物が作成された。この比較例の陽極酸化工程では、開始時から終了時まで、一定の電圧値60Vで通電が9時間、実施された。これによって、例えば、図30Aに示すように、互いに隣接する穴PEd間の隔壁厚さが前記主面側では約85nmであって、前記底部側では約120nmである複数の穴PEdが形成された。互いに隣接する穴PEdにおける中心間の平均距離は、金属基板13の厚さ方向(Dz方向)の厚さに無関係に約150nmであった。穴PEdの底部におけるアルミナ層の厚さは、約60nmであった。このような複数の穴PEdを形成した穴群層1000の厚さは、約110μmであった。凹部形成工程では、第1実施形態と同様に、前記領域規定工程後の金属基板13が、8vol%のリン酸液(エッチング液)に浸漬され、180分間放置された。この比各例では、この時点において、第1領域AR1の隔壁を形成する酸化アルミニウム(アルミナ)は、前記主面側では、溶解により消失したが、前記底部側では、消失していなかった。このため、さらに、穴PEdの底部に形成された酸化アルミニウムが溶解により消失し、金属基板13のアルミニウムを露出するために、さらに、180分のエッチング時間が必要とされた。この結果、凹部形成工程のエッチング時間は、180分+180分の360分となり、このため、前記底部では、凹部の幅は、設計値の約2.65μmであったが、前記主面(格子面)では、凹部の幅は、設計値2.65μmを越えて約2.8μmとなってしまい、過剰にエッチングされてしまった。
しかしながら、本実施形態における高アスペクト比構造物の第1製造方法は、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが、主面側より穴PEaの底部側の方が薄くなるように、複数の穴PEaを形成する隔壁薄化穴形成工程を含むので、凹部形成工程によって、表面側がエッチング液で溶解してしまったときに、底部側もより確実に溶解できる。このため、上記高アスペクト比構造物の製造方法は、過剰にエッチングされることを防止でき、より寸法精度の高い高アスペクト比構造物を製造できる。
上記高アスペクト比構造物の製造方法は、第2領域AR2に対応する主面上にレジスト層133を形成することで、凹部形成工程で凹部134を形成しない第2領域AR2を規定(形成)でき、レジスト層形成工程で前記領域規定工程を容易に実現できる。
陽極酸化法または陽極化成法では、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さは、電圧に比例する。この陽極酸化法または陽極化成法の特性を利用するために、上記高アスペクト比構造物の製造方法は、穴形成工程の隔壁薄化穴形成工程に、陽極酸化法または陽極化成法を用い、開始時の第1印加電圧V1より終了時の第2印加電圧V2が低くなるように陽極酸化法または陽極化成法の印加電圧を調整する。したがって、上記陽極酸化法または陽極化成法の特性のために、上記高アスペクト比構造物の製造方法は、基板13の主面上に、互いに隣接する穴PEa間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴PEaの底部側の方が薄くなる前記複数の穴を容易に形成できる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態;高アスペクト構造物の一例であるX線用金属格子およびその製造方法)
第1実施形態では、第2および第1領域AR2、AR1は、レジスト層133(15)の有無によって規定されたが、第2実施形態では、レジスト層133(15)に代え、前記複数の穴の閉塞の有無によって規定される。
図8は、第2実施形態にかかるX線用金属格子の構成を示す斜視図である。図9は、図8に示すX線用金属格子におけるX線吸収部の断面を説明するための図である。図9Aは、X線吸収部の断面を模式的に示し、図9Bは、格子面側(主面側)におけるX線吸収部の拡大断面図を示し、図9Cは、穴の底部側におけるX線吸収部の拡大断面図を示す。
この図8および図9に示すX線用金属格子1bは、金属基板13に設けられた格子領域10bおよび枠領域12bを備えて構成される。格子領域10bは、格子11bを形成した領域であり、格子11bは、複数のX線吸収部111bと、複数のX線透過部112bとを備える。これら第2実施形態のX線用金属格子1bにおける格子領域10b、枠領域12b、格子11b、複数のX線吸収部111b、および、複数のX線透過部112bは、それぞれ、後述するように第1実施形態のレジスト層133に代えて用いられた閉塞部材(図12B〜図12E参照)が複数のX線吸収部111bそれぞれに設けられている点を除き、第1実施形態のX線用金属格子1aにおける格子領域10a、枠領域12a、格子11a、複数のX線吸収部111a、および、複数のX線透過部112aと同様であるので、その説明を省略する。
前記閉塞部材は、図9Aおよび図9Bに斜線で示すように、格子11bの格子面(金属基板13の主面)に交差する方向に延びるように形成された複数の穴PEaを閉塞する部材である。
このようなX線用金属格子1bは、前記隔壁薄化穴形成工程そのものから成る前記穴形成工程と、前記領域規定工程(領域形成工程)と、前記凹部形成工程とを備える高アスペクト比構造物の製造方法によって製造される。ここで、前記領域規定工程は、本実施形態では、前記複数の穴のうち、前記第2領域に対応する部分に形成されている1または複数の穴を閉塞する閉塞工程を含む。
図10および図11は、第2実施形態におけるX線用金属格子の製造方法を説明するための図である。図10および図11において、図Aおよび図Bを1組として各製造工程を模式的に説明しており、図Aは、図Bの断面図であり、図Bは、上面図である。図10および図11において、図Cおよび図Dを1組として各製造工程を模式的に説明しており、図Cは、図Dの断面図であり、図Dは、上面図である。図12は、閉塞工程における封止処理を説明するための図である。
高アスペクト比構造物の一例としてX線用金属格子1bを製造する、高アスペクト比構造物の第2製造方法では、このX線用金属格子1bを製造するために、上述したX線用金属格子1aの第1製造方法と同様に、金属基板13が用意され、次に、保護膜形成工程および陽極酸化工程(または陽極化成工程)を備え、隔壁薄化穴形成工程そのものから成る穴形成工程が実施される。この陽極酸化工程(または陽極化成工程)では、第1実施形態と同条件で実施され、これによって第1実施形態と同様の穴群層132が形成された。
次に、後述の凹部形成工程で後述の凹部137を形成する第1領域AR1と凹部形成工程で凹部137を形成しない第2領域AR2とが規定(形成)される(領域規定工程(領域形成工程)、図10A、図10B、図10C、図10D)。
より具体的には、本実施形態では、前記領域規定工程は、穴群層132における複数の穴PEaのうち、第2領域AR2に対応する部分に形成されている1または複数の穴を閉塞する閉塞工程である。前記閉塞工程は、より具体的には、前記主面上に第2レジスト層135を形成する第1工程と、第2レジスト層135をパターニングして第2領域AR2に対応する第2レジスト層135を除去する第2工程と、穴群層132における複数の穴PEaのうち、前記第2工程で第2レジスト層135を除去した第2領域AR2に形成されている1または複数の穴PEaを閉塞する第3工程と、前記第2工程後に残置している第2レジスト層135を除去する第4工程とを備える。この第2レジスト層135は、第2領域AR2に形成されている1または複数の穴PEaを閉塞する際に、第1領域AR1に形成されている1または複数の穴PEaを保護するように機能すれば良く、無機材料や有機材料で形成されて良い。
より具体的には、まず、穴群層132を形成した金属基板13の主面上に、例えば有機材料から成るドライフィルムレジストを貼付することで、第2レジスト層135が形成される(第1工程)。
次に、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いることによって、第2レジスト層135がパターニングされて第2領域AR2に対応する部分の第2レジスト層135が除去される(第2工程、図10A、図10B)。より具体的には、第2レジスト層135に図略のリソグラフィーマスクが押し当てられ、第2レジスト層135に前記リソグラフィーマスクを介して紫外線が照射され、第2レジスト層135がパターン露光され、現像される。そして、露光されなかった部分(あるいは露光された部分)の第2レジスト層135が除去される。これによって、例えば、ピッチ(周期長)5.3μmであってデューティ比50%であるストライプ状に第2レジスト層135の残るラインアンドスペースパターンが形成される。
次に、穴群層132における複数の穴PEaのうち、前記第2工程で第2レジスト層135を除去した領域(第2領域AR2)に形成されている1または複数の穴PEaにおける開口が閉塞され、閉塞の穴群層136が形成される(第3工程、図10C、図10D)。例えば、封孔処理材を用いた封孔処理によって前記穴PEaが閉塞される。より具体的には、前記第2工程後の金属基板13が、98℃の純水(沸騰水)中に1時間浸漬される。これによって、図12Aに示すように、第2レジスト層135を除去した第2領域AR2における複数の穴PEaでは、図12Bないし図12Eに示すように、各図の各種態様で、前記沸騰水によって生成されたアルミナの水和物により、アルミナの体積が膨張し、少なくとも穴PEaの開口が閉塞される。より好ましくは、図12Dに示すように、穴PEa内全てがアルミナの水和物によって満たされる(充填される)。一方、第2レジスト層135を残置(配置)している領域(第1領域AR1)に形成されている複数の穴PEaでは、前記沸騰水が第2レジスト層135によって穴PEa内に侵入しないため、閉塞されない。
なお、封孔処理は、上述の沸騰水を用いた純粋沸騰水法に限定されるものではなく、表1に示すように、例えば奥野製薬工業製のトップシールH298等の封孔処理材を用いた酢酸ニッケル法等の他の方法であっても良い。
Figure 2018151472
次に、前記第2工程後に残置している第1領域AR1の第2レジスト層135が除去される(第4工程、図11A、図11B)。例えば、前記第2工程後に残置している第2レジスト層136がドライフィルム用専用リムーバー液で除去される。
このように閉塞工程を備える領域規定工程が実施され、金属基板13の主面には、凹部形成工程で凹部137が形成されることになる、開口が閉塞されなかった(本実施形態では封孔されなかった)穴PEaから成る穴群層132を備える第1領域AR1と、凹部形成工程で凹部137が形成されないことになる、開口が閉塞された(本実施形態では封孔された)穴PEaから成る閉塞の穴群層136を備える第2領域AR2が規定(形成)される(図11A、図11B)。これら穴群層132の第1領域AR1と閉塞の穴群層136の第2領域AR2とは、この例では、周期5.3μmのピッチで交互に並置されている。
次に、この金属基板13をエッチング液の中に浸漬するウェットエッチング法によって第1領域AR1に対応する金属基板13に凹部が形成される(凹部形成工程、図11C、図11D)。より具体的には、金属基板13が、第1実施形態と同様に、8vol%のリン酸液(エッチング液)に浸漬され、180分間放置される。これによって第1実施形態と同様に、互いに隣接する穴PEa間の隔壁がエッチングされ、前記隔壁が溶解される。これにより、金属基板13における第1領域AR1に、スリット溝状の凹部137が形成される。
このような各製造工程を経ることによって、複数のスリット溝状の凹部137の形成によって第2領域AR2に残った複数の板状の閉塞の穴群層136が格子11bのX線吸収部111b(またはX線位相部)となり、第1領域AR1に形成された凹部137が格子11bのX線透過部112bとなり、図8および図9に示す構成のX線用金属格子1bが製造される。
以上説明したように、一例としてX線用金属格子1bを製造する高アスペクト比構造物の第2製造方法は、上述のレジスト形成工程による効果の点を除き、第1実施形態におけるX線用金属格子1aを製造する高アスペクト比構造物の第1製造方法と同様の作用効果を奏する。
上記高アスペクト比構造物の製造方法は、前記複数の穴PEaのうち、第2領域AR2に対応する部分に形成されている1または複数の穴PEaを閉塞することで、凹部形成工程で凹部を形成しない第2領域AR2を規定(形成)でき、閉塞工程で領域規定工程を容易に実現できる。上記高アスペクト比構造物の第2製造方法は、ウェットエッチング法の実施の際にエッチング液の前記穴PEaへの侵入を閉塞工程で防ぐので、ウェットエッチング法の実施の際に通常必要となる、前記エッチング液に対するレジスト層が不要となる。このため、上記高アスペクト比構造物の第2製造方法は、ウェットエッチング法の実施の際に通常生じる、レジスト層によるいわゆるアンダーカットが生じることなく、前記エッチング液が前記穴PEの底部まで浸透し、互いに隣接する穴PEa間に形成された隔壁を溶解する。したがって、上記高アスペクト比構造物の第2製造方法は、ウェットエッチング法によって金属基板13の主面に対し略垂直な側面を持つ凹部136を有する高アスペクト比構造物を製造できる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第3実施形態;高アスペクト構造物の一例であるX線用金属格子およびその製造方法)
上述の第1および第2実施形態におけるX線用金属格子1a、1bでは、方向Dzにおいて、スリット溝状の空間である複数の凹部134、137における底の位置(凹部底位置)は、前記複数の凹部134、137の形成によって残った板状(層状)の複数の穴群層132、136に形成された複数の穴PEaにおける底の位置(穴底位置)と略同位置であるが、第3実施形態におけるX線用金属格子1cでは、方向Dzにおいて、スリット溝状の空間である複数の凹部140における凹部底位置は、前記複数の凹部140の形成によって残った板状(層状)の複数の穴群層138に形成された複数の穴PEbにおける穴底位置より低い。すなわち、凹部140の深さHは、穴PEbの深さより深い。
図13は、第3実施形態にかかるX線用金属格子の構成を説明するための図である。図14は、図13に示すX線用金属格子におけるX線吸収部の断面を説明するための図である。
この図13および図14に示すX線用金属格子1cは、金属基板13に設けられた格子領域10cおよび枠領域12cを備えて構成される。格子領域10cは、格子11cを形成した領域であり、格子11cは、複数のX線吸収部111cと、複数のX線透過部112cとを備える。これら第3実施形態のX線用金属格子1cにおける格子領域10c、枠領域12c、格子11c、複数のX線吸収部111c、および、複数のX線透過部112cは、それぞれ、複数のX線吸収部111cに形成される複数の穴PEbにおける各隔壁厚さおよび前記複数の穴PEbにおける穴底位置が第1実施形態と異なる点を除き、第1実施形態のX線用金属格子1aにおける格子領域10a、枠領域12a、格子11a、複数のX線吸収部111a、および、複数のX線透過部112aと同様であるので、その説明を省略する。
そして、本実施形態では、これら複数のX線吸収部111cそれぞれは、図14に示すように、格子11cの格子面DxDyに交差する方向にX線吸収部111cの途中まで延びる複数の穴PEbを備え、互いに隣接する穴PEb間の隔壁は、理想的なケースでは方向Dzにおいて略等しく、もしくは、その厚さが格子面DxDy側より穴PEbの底部側の方が厚くなっている。このように複数の穴PEbは、格子11cの格子面DxDyに交差する方向にX線吸収部111cの途中まで延びているので、複数のX線吸収部111cそれぞれは、方向Dzにおいて、その内部に複数の穴PEbを形成した第1部分1111cと、この第1部分1111cに続くその内部に複数の穴PEbを形成しない、すなわち、金属基板13のみで形成された第2部分1112cとを備えて成る。図14に示す例では、これら複数の穴PEbは、格子面DxDyと略直交する方向DzにX線吸収部111cの途中まで延びてX線吸収部111c内に形成され、互いに隣接する穴PEb間の隔壁は、その厚さが前記方向に沿って格子面DxDyから穴PEbの底部へ向かうに従って徐々に厚くなっている。
このようなX線用金属格子1cは、前記穴形成工程と、前記領域規定工程(領域形成工程)と、前記凹部形成工程とを備える高アスペクト比構造物の製造方法によって製造される。ここで、前記穴形成工程は、本実施形態では、前記領域規定工程を実施する前に実施される第1穴形成工程と、前記領域規定工程を実施した後に実施される第2穴形成工程とを備え、前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴PEbそれぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴PEcを形成する前記隔壁薄化穴形成工程である。
図15および図16は、第3実施形態におけるX線用金属格子の製造方法を説明するための図である。図15および図16において、その図Aは、図Bの断面図であり、図Bは、上面図であり、図Cは、図Bの一部を拡大した拡大断面図である。
高アスペクト比構造物の一例としてX線用金属格子1cを製造する、高アスペクト比構造物の第3製造方法では、このX線用金属格子1cを製造するために、上述したX線用金属格子1aの第1製造方法と同様に、金属基板13が用意され、次に、第1穴形成工程が実施される。
この第1穴形成工程では、金属基板13の少なくとも一つの主面に、前記主面に交差する方向、好ましくは略直交する方向に延びる複数の穴PEbが形成される。そして、本実施形態では、この第1穴形成工程では、互いに隣接する穴PEb間の隔壁厚さが、理想的なケースでは方向Dzにおいて略等しく、もしくは、前記主面側より穴PEbの底部側の方が厚くなるように、前記複数の穴PEbが形成される。
より詳しくは、第1穴形成工程では、まず、金属基板13の一方の主面のみに複数の穴を形成するために、第1実施形態と同様に、他方の主面に保護膜131が形成される(第1穴形成工程における保護膜形成工程)。例えば、保護膜131として石英(二酸化ケイ素、SiO)膜131が公知の成膜方法で形成される。
そして、この第1穴形成工程では、次に、金属基板13の一方の主面に、陽極酸化法(または陽極化成法)によって複数の穴PEbを有する穴群層138が形成される(第1穴形成工程における陽極酸化工程(または陽極化成工程))。この陽極酸化工程(または陽極化成工程)では、第1実施形態とは異なる条件で実施される。一例では、図6に示すように、保護膜131を持つ金属基板13に電源21の陽極が通電可能に接続され、電源21の陰極に接続された陰極電極22および金属基板13が、陰極電極22と金属基板13の一方の主面(保護膜131のない面)とを対向するように、電解液24を貯留した水槽23内における前記電解液24に浸けられる。そして、本実施形態では、開始時から終了時まで、一定の電圧値V3で通電が実施される。これによって、金属基板13の主面表面から内部に向かって延びる複数の穴PEbが形成され、互いに隣接する穴PEb間の隔壁厚さは、理想的なケースでは方向Dzにおいて略等しく、もしくは、前記主面側より穴PEbの底部側の方が厚くなるように、前記複数の穴PEbが形成される。一例では、アルミニウムで形成された金属基板13に対し、電解液24は、0.3M(モル濃度、mol/l)のシュウ酸液であり、陰極電極22は、白金をメッキしたチタン板である。開始時から終了時まで、一定の電圧値60Vで通電が9時間、実施された。このように通電されると、図14に示すように、金属基板13の主面表面から、金属基板13の厚さ方向(方向Dz、表面と垂直方向)に延びる複数の穴PEbが互いに間隔を空けて形成され、互いに隣接する穴PEb間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴PEbの底部側の方が厚くなった。これによって互いに隣接する穴PEb間の隔壁厚さが前記主面側では約85nmであって、前記底部側では約120nmである複数の穴PEbが形成された。互いに隣接する穴PEbにおける中心間の平均距離は、金属基板13の厚さ方向(方向Dz)の厚さに無関係に約150nmであった。このような複数の穴PEbを形成した穴群層138の厚さは、約110μmであった。
次に、前記複数の穴PEbを形成した前記主面に、後述の凹部形成工程で後述の凹部140を形成する第1領域AR1と凹部形成工程で凹部140を形成しない第2領域AR2とが規定(形成)される(領域規定工程(領域形成工程)、図15)。より具体的には、第1実施形態における前記領域規定工程と同様に、ドライフィルムレジストを用いたレジスト層形成工程が実施され、これをパターニングするパターニング工程が実施される。図15に示すように、例えば、ピッチ(周期長)5.3μmであってデューティ比50%であるストライプ状にレジスト層133の残るラインアンドスペースパターンが形成される。これにより金属基板13の穴群層138には、レジスト層133を除去した第1領域AR1と、レジスト層133を残置(配置)している第2領域AR2とが形成される。
次に、第2穴形成工程が実施される。この第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴PEbそれぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴PEcを形成する前記隔壁薄化穴形成工程である(図16)。すなわち、この前記隔壁薄化穴形成工程そのものから成る第2穴形成工程では、第1実施形態と同様に、開始時の第1印加電圧V1より終了時の第2印加電圧V2が低くなるように実施される陽極酸化法(または陽極化成法)によって前記複数の穴PEcが形成される(V1>V2)。言い換えれば、互いに隣接する穴PEc間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴PEcの底部側の方が薄くなるように、通電初期では、所定の第1電圧値V1で通電が実施され、通電終期では、前記第1電圧値V1より低い所定の第2電圧値V2で通電が実施される。一例では、直流電圧で、60Vから20Vまでリニアに(線形に)時間変化するように0.5時間(30分)、通電が実施された(V1=60V、V2=20V、−80V/h(≒−1.333V/min))。これによって、例えば、図16Cに示すように、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴PEbそれぞれに連続して方向Dzにさらに延びるようにさらに複数の穴PEcが形成され、互いに隣接する穴PEc間の隔壁厚さが前記主面側では相対的に厚く、前記底部側では相対的に薄くなった。これによって互いに隣接する穴PEc間の隔壁厚さは、前記主面側では約120nmであって、前記底部側では約40nmである複数の穴PEcが形成された。互いに隣接する穴PEcにおける中心間の平均距離は、前記主面側では約150nmであり、前記底部側では約50nmであった。このような複数の穴PEcを形成した穴群層139の厚さは、約3μmであった。この場合における穴PEcの底部におけるアルミナ層の厚さは、約20nmであった。このような穴PEcは、その隔壁厚さが変化することで、枝分かれしながら、前記主面に交差する方向に延びて形成される。
次に、金属基板13をエッチング液の中に浸漬することによって、前記領域規定工程で規定された第1領域AR1に対応する金属基板13に凹部140が形成される(凹部形成工程、図14)。より具体的には、前記第2穴形成工程後の金属基板13が、8vol%のリン酸液(エッチング液)に浸漬され、180分間放置される。本実施形態では、穴群層139の隔壁厚さが穴群層138の隔壁厚さに較べて薄いので、穴群層139は、穴群層138に対し優位に溶解する。このため、図14に示すように、180分間のエッチングによって、穴群層138および穴群層139を形成する酸化アルミニウム(アルミナ)が消失し、凹部140が形成できた。
そして、第2領域AR2に残存しているレジスト層133が除去される(レジスト層除去工程)。
このような各製造工程を経ることによって、凹部形成工程でレジスト層133によって保護されて残存した第2領域ARの穴群層138が格子11cのX線吸収部111c(またはX線位相部)となり、第1領域ARの凹部140が格子11cのX線透過部112cとなり、図13に示す構成のX線用金属格子1cが製造される。なお、レジスト層133は、除去されずに(レジスト層除去工程が省略され)、図13に破線で示すように、レジスト層133を、X線吸収部111cの頂部を保護する保護層15としたX線用金属格子1cであっても良い。
以上説明したように、本実施形態における高アスペクト比構造物の第3製造方法では、穴形成工程は、第1および第2穴形成工程を備え、前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴PEbそれぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴PEcを形成する前記隔壁薄化穴形成工程であるので、凹部形成工程によって、表面側がエッチング液で溶解してしまったときに、底部側もより確実に溶解できる。このため、上記高アスペクト比構造物の第3製造方法は、過剰にエッチングされることを防止でき、より寸法精度の高い高アスペクト比構造物を製造できる。
また、上記高アスペクト比構造物の第3製造方法では、穴形成工程を第1および第2穴形成工程に分けるので、凹部形成工程でレジスト層133によって保護されて残存した第2領域ARの穴群層138、すなわち、凹部形成工程によって互いに隣接する凹部140間に形成された凸部のX線吸収部111cにおける基部1112cには、前記複数の穴PEbが形成されないため、前記凸部のX線吸収部111cをよりしっかり支持できる。
なお、上述のX線用金属格子1cの第3製造方法では、第2および第1領域AR2、AR1は、第1実施形態と同様に、レジスト層133(15)の有無によって規定されたが、第2実施形態と同様に、レジスト層133(15)に代え、前記複数の穴PEbの閉塞の有無によって規定されてもよい。
また、上述のX線用金属格子1cの第3製造方法において、前記第1穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程であっても良い。すなわち、前記第1穴形成工程は、電圧を制御しながら陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴を形成しても良い。より具体的には、第1実施形態と同様に、この第1穴形成工程では、開始時の第1印加電圧V1より終了時の第2印加電圧V2が低くなるように実施される陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴が形成される(V1>V2)。一例では、直流電圧で、60Vから40Vまでリニアに(線形に)時間変化するように17時間、通電が実施された(V1=60V、V2=40V、約−1.18V/h)。これによって、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが前記主面側では相対的に厚く、前記底部側では相対的に薄くなった。これによって互いに隣接する穴間の隔壁厚さが前記主面側では約85nmであって、前記底部側では約80nmである複数の穴が形成された。互いに隣接する穴における中心間の平均距離は、前記主面側では約150nmであり、前記底部側では約100nmであった。このような複数の穴を形成した穴群層の厚さは、約110μmであった。そして、この場合における前記隔壁薄化穴形成工程の前記第2穴形成工程では、一例では、直流電圧で、40Vから20Vまでリニアに(線形に)時間変化するように0.5時間、通電が実施された(V1=40V、V2=20V、−40V/h(≒−0.667v/min))。これによって、例えば、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴それぞれに連続して方向Dzにさらに延びるようにさらに複数の穴が形成され、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが前記主面側では相対的に厚く、前記底部側では相対的に薄くなった。これによって互いに隣接する穴間の隔壁厚さは、前記主面側では約80nmであって、前記底部側では約40nmである複数の穴が形成された。互いに隣接する穴における中心間の平均距離は、前記主面側では約100nmであり、前記底部側では約50nmであった。このような複数の穴を形成した穴群層の厚さは、約2μmであった。この場合における穴の底部におけるアルミナ層の厚さは、約20nmであった。
また、上述のX線用金属格子1cの第3製造方法において、前記第1穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程であり、前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴それぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴を形成する。好ましくは、この場合において、前記第2穴形成工程は、その開始時からその終了時まで一定値の印加電圧で実施される陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴を形成する。一例では、第1実施形態のように、前記第1穴形成工程では、直流電圧で、60Vから20Vまでリニアに(線形に)時間変化するように20時間、通電が実施され、第1実施形態のように複数の穴が形成された。そして、この場合における前記第2穴形成工程では、開始時から終了時まで、一定の電圧値20Vで通電が1時間、実施された。これによって互いに隣接する穴間の隔壁厚さは、前記主面側から前記底部側まで約40nmである複数の穴が形成された。互いに隣接する穴における中心間の平均距離は、金属基板13の厚さ方向(方向Dz)の厚さに無関係に約50nmであった。このような複数の穴を形成した穴群層の厚さは、約2μmであった。この場合における穴の底部におけるアルミナ層の厚さは、約20nmであった。
次に、別の実施形態について説明する。
(第4実施形態;高アスペクト構造物の一例であるX線用金属格子およびその製造方法)
上述の第1ないし第3実施形態におけるX線用金属格子1a、1b、1cでは、スリット溝状の空間である複数の凹部134、137、140それぞれは、X線透過部112a、112b、112cとして機能し、前記複数の凹部134、137、140の形成によって残った板状(層状)の複数の穴群層132、136、138それぞれは、X線吸収部(またはX線位相部)111a、111b、111cとして機能したが、前記複数の凹部134、137、140それぞれに、X線吸収可能なX線吸収性材料を埋設することで、このX線吸収材料を埋設した前記複数の凹部134、137、140それぞれは、X線吸収部(またはX線位相部)111a、111b、111cと同様に機能し、前記複数の凹部134、137、140の形成によって残った板状(層状)の前記複数の穴群層132、136、138それぞれは、X線透過部112a、112b、112cと同様に機能しても良い。
このような第4実施形態のX線用金属格子1dに対し、前記複数の凹部134、137、140それぞれに、X線吸収可能なX線吸収性材料を埋設したX線用金属格子1dの一例が図17に示されている。図17は、第4実施形態にかかるX線用金属格子の構成を説明するための図である。ここでは、X線用金属格子1dは、第1実施形態のX線用金属格子1aに対する変形形態であるが、第2および第3実施形態のX線用金属格子1b、1cに対する変形形態のX線用金属格子1d(図略)も、同様に、説明でき、構成できる。図18は、凹部を金属材料で埋める電鋳法を説明するための図である。
この第4実施形態におけるX線用金属格子1dは、図17に示すように、金属基板13に設けられた格子領域10dおよび枠領域12dを備えて構成される。格子領域10dは、格子11dを形成した領域であり、格子11dは、複数のX線吸収部111dと、複数のX線透過部112dとを備える。これら第4実施形態のX線用金属格子1dにおける枠領域12dは、第1実施形態のX線用金属格子1aにおける枠領域12aと同様であるので、その説明を省略する。
第1実施形態におけるX線用金属格子1aでは、X線吸収部111aは、上述の各工程を実施することによって金属基板13から作り出された、DxDz面に沿った板状(層状)の部材(上述では穴群層132)であり、X線透過部112aは、上述の各工程を実施することによって金属基板13から作り出された、DxDz面に沿った板状(層状)の空間(スリット溝)(上述では凹部134)である。一方、この第4実施形態におけるX線用金属格子1dでは、X線吸収部111dは、後述の各工程を実施することによって金属基板13から作り出された、DxDz面に沿った板状(層状)の空間(スリット溝)、に入れられた、X線吸収性(好ましくは比較的高いX線吸収性)を持つ金属材料から成る部材であり、X線透過部112dは、後述の各工程を実施することによって金属基板13から作り出された、DxDz面に沿った板状(層状)の部材である。この点を除き、この第4実施形態におけるX線用金属格子1dにおける、格子11dを形成した前記格子領域10dは、第1実施形態におけるX線用金属格子1aにおける、格子11aを形成した前記格子領域10aと同様であるので、その説明を省略する。
このようなX線用金属格子1dは、第1実施形態で説明した上述の穴形成工程、領域形成工程および凹部形成工程の各工程後に、さらに、前記凹部に、X線吸収可能なX線吸収性材料を埋設するX線吸収性材料埋設工程を備えることによって製造される。
第4実施形態におけるX線用金属格子1dを製造するために、第1実施形態におけるX線用金属格子1aを製造するための、上述の、隔壁薄化穴形成工程そのものから成る穴形成工程(保護膜形成工程、陽極酸化工程(または陽極化成工程))、領域規定工程(レジスト層形成工程、パターニング工程)、および、凹部形成工程の各工程と同様の各工程が実施される。なお、凹部形成工程後にレジスト層除去工程が実施されても良い。
そして、上記凹部形成工程の後に、金属基板13を形成する第1金属(合金を含む。上述の例ではアルミニウム)におけるX線に対する第1特性とは異なる第2特性を持つ第2金属(合金を含む)が前記凹部134に埋められる(金属埋設工程(ここではX線吸収性材料埋設工程))。前記第2金属は、例えば、原子量が比較的重い元素の金属や貴金属、より具体的には、例えば、金(Au)、プラチナ(白金、Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)およびイリジウム(Ir)等である。
より具体的には、電鋳法(電気メッキ法)によって、第2金属が複数の凹部134それぞれに埋設される。特に、上述では、前記凹部134の側壁は、電気的に絶縁性の二酸化アルミニウム(アルミナ)である一方、その底部は、電気的に導電性のアルミニウムであるので、その底部からボトムアップで第2金属が前記凹部134に埋設できる。より詳しくは、図18に示すように、前記凹部形成工程の後の金属基板13(ここではX線用金属格子1a)に電源31の陰極が接続され、電源31の陽極に接続された陽極電極32および金属基板13(ここではX線用金属格子1a)が、メッキ液34を貯留した水槽33内における前記メッキ液34に浸けられる。なお、金属基板13の側面等がメッキされないように、金属基板13の側面等に絶縁膜が成膜され、電源31の陰極に接続される部分の前記絶縁膜が除去され、この除去部分で電源31の陰極と金属基板13とが互いに電気的に接続される。これによって、電鋳法で前記複数の凹部134それぞれの底部側から第2金属が析出し、成長する。そして、この第2金属が前記複数の凹部134それぞれを埋めると、電鋳法の実施が終了される。これによって第2金属が前記複数の凹部134それぞれを埋め、凹部134の深さ(厚さH)だけ成長する。こうしてX線吸収部111dが形成される。
このような各製造工程を経ることによって、前記複数の凹部134それぞれに埋設されたX線吸収性材料の第2金属から成るX線吸収部111dおよび穴群層132を備えるX線透過部112dを持つ、図17に示す構成のX線用金属格子1dが製造される。
以上説明したように、一例としてX線用金属格子1dを製造する高アスペクト比構造物の第4製造方法は、第1実施形態におけるX線用金属格子1aを製造する高アスペクト比構造物の第1製造方法と同様の作用効果を奏する。
上記高アスペクト比構造物の第4製造方法は、前記凹部140にX線吸収性材料を埋設することで、前記第1領域AR1をX線吸収部111dに形成でき、前記第2領域AR2をX線透過部112dにできる。
ここで、上述のように電鋳法(電気メッキ法)によって、複数の凹部134それぞれに金属を埋設する場合、その埋設された金属部分の内部に空間(ボイド、金属が未充填の部分)が発生してしまう虞がある。しかしながら、第3実施形態におけるX線用金属格子1cを用いて第4実施形態におけるX線用金属格子1dを製造した場合、第3実施形態におけるX線用金属格子1cでは前記第2穴形成工程が実施されるので、前記凹部140の底部分の表面積が前記第1穴形成工程のみの場合より広くなり、前記凹部140の底部分の通電可能な表面積が前記第1穴形成工程のみの場合より広くなる。このため、電鋳法で金属が前記凹部140の底部分から効果的に成長するので、ボイドの発生を効果的に抑制できる。この結果、このような第3実施形態のX線用金属格子1cを用いた第4実施形態のX線用金属格子1dは、電鋳法によってX線吸収部111dをより緻密に形成できる。
なお、上述では、第1金属は、第1特性としてX線透過性を持つ金属(合金を含む)であって、第2金属は、第2特性としてX線吸収性を持つ金属(合金を含む)であったが、第1金属は、第1特性として位相シフトの小さい低位相シフト性を持つ金属(合金を含む)であって、第2金属は、第2特性として相対的に位相シフトの大きい高位相シフト性(第1金属の位相シフトより大きい位相シフト)を持つ金属(合金を含む)であってもよい。
また、X線吸収性材料埋設工程は、上述の電鋳法に限らず、他の方法によって実施されても良い。例えば、X線吸収性材料埋設工程は、粒子状の複数の金属粒子を前記凹部134の開口から前記凹部134内に振動により埋め込む加振法によって実施できる。より具体的には、容器の底面に、上述の各工程を経て加工された金属基板13が固定され、タップ密度約8g/ccであって粒径約0.2μm〜1.0μmである純金粉末が入れられた。そして、振動を生成する振動発生器によって前記容器に約10Hzの振動が加えられて、前記容器を介して前記金属基板13が加振された。これによってスリット溝状の前記凹部134に金(純金粉末)が埋め込まれ、X線吸収部111dが形成された。
また、電鋳法で前記凹部134に金属が埋設された場合には、透過率を向上するために、前記凹部134の底、すなわち、埋設された金属が露出するまで、金属基板13における他方の主面が研磨されても良い。また、この場合に、透過率の高い材料(例えばアクリル樹脂等)の板状部材が支持基板として接着剤等によって格子11に接着されても良い。
また、上述の第1ないし第4実施形態では、X線用金属格子1(1a、1b、1c、1d)は、一次元周期構造であったが、これに限定されるものではない。X線用金属格子1は、例えば、二次元周期構造の格子であってもよい。例えば、二次元周期構造のX線用金属は、二次元周期構造の部材となるドットが線形独立な2方向に所定の間隔を空けて等間隔に配設されて構成される。このような二次元周期構造のX線用金属格子は、平面に高アスペクト比の穴を二次元周期で空ける、あるいは、平面に高アスペクト比の円柱を二次元周期で立設させることによって形成できる。または、これら空間に、上述と同様に、金属が埋め込まれても良い。
また、上述の第1ないし第4実施形態では、陽極酸化法または陽極化成法によって複数の穴を形成できる金属(合金を含む)として、アルミニウムが用いられたが、金属基板13は、他の金属(合金を含む)で形成されても良い。このような金属として、例えば、上述のアルミニウム(Al)の他に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)が挙げられる。これら金属は、陽極酸化法または陽極化成法によって、微細垂直穴を形成し易い。なお、陽極酸化法と同様な処理が実施された場合、金属基板13の材料によって金属基板13が酸化しない場合があり、この場合、前記処理は、陽極酸化法と呼称されず、陽極化成法と呼称される。
金属基板13がタングステンやモリブデンで形成される場合、硝酸およびシュウ酸等の溶液を用いた陽極酸化法によって複数の穴が形成できる。
金属基板13がシリコンで形成される場合、例えば金属基板13がp型シリコンの(001)基板である場合、フッ酸とメタノールの混合溶液を用いた陽極化成法によって複数の穴が形成できる。
金属基板13がガリウムヒ素やインジウリウムで形成される場合、例えば金属基板13がn型ガリウムヒ素の(001)基板である場合、水酸化アンモニウム(NHOH)の溶液を用いた陽極化成法によって複数の穴が形成できる。この陽極化成法では、金属基板13は、光照射および磁界印加されながら水酸化アンモニウム溶液中に浸漬され、電圧が印加される。
なお、これら金属基板13がタングステン(W)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)のうちのいずれかで形成される場合、封孔処理は、酸素雰囲気で金属基板13を加熱処理することによって実施される。これによれば酸化による体積膨張で前記穴PEa、PEbが封孔できる。
また、上述の第1ないし第4実施形態では、予め他方の主面に石英膜からなる保護膜131を形成することで、陽極酸化法または陽極化成法による穴群層132が一方の主面のみに形成されたが、酸化による面精度の変化を抑えるために、一方および他方の両主面に穴群層132が形成されても良い。この場合、両面に穴群層132を形成した後、パターニングをする面ではない方の面に、例えばドライレジストフィルムを貼付することによって、また例えばTEOS−CVD等の手法で石英膜を形成することによって、保護膜が形成されても良い。
次に、別の実施形態について説明する。
(第5および第6実施形態;タルボ干渉計およびタルボ・ロー干渉計)
上記実施形態のX線用金属格子1(1a、1b、1c、1d)は、高アスペクト比で金属部分を形成することができるので、X線用のタルボ干渉計およびタルボ・ロー干渉計に好適に用いることができる。この金属格子DGを用いたX線用タルボ干渉計およびX線用タルボ・ロー干渉計について説明する。
図19は、第5実施形態におけるX線用タルボ干渉計の構成を示す斜視図である。図20は、第6実施形態におけるX線用タルボ・ロー干渉計の構成を示す上面図である。
実施形態のX線用タルボ干渉計100Aは、図19に示すように、所定の波長のX線を放射するX線源101と、X線源101から照射されるX線を回折する位相型の第1回折格子102と、第1回折格子102により回折されたX線を回折することにより画像コントラストを形成する振幅型の第2回折格子103とを備え、第1および第2回折格子102、103がX線タルボ干渉計を構成する条件に設定される。第2回折格子103により画像コントラストの生じたX線は、例えば、X線を検出するX線画像検出器105によって検出される。このX線用タルボ干渉計100Aでは、第1回折格子102および第2回折格子103の少なくとも一方は、上述したX線用金属格子1の製造方法のいずれかによって製造されたX線用金属格子1である。
タルボ干渉計100Aを構成する前記条件は、次の式1および式2によって表される。式2は、第1回折格子102が位相型回折格子であることを前提としている。
l=λ/(a/(L+Z1+Z2)) ・・・(式1)
Z1=(m+1/2)×(d/λ) ・・・(式2)
ここで、lは、可干渉距離であり、λは、X線の波長(通常は中心波長)であり、aは、回折格子の回折部材にほぼ直交する方向におけるX線源101の開口径であり、Lは、X線源101から第1回折格子102までの距離であり、Z1は、第1回折格子102から第2回折格子103までの距離であり、Z2は、第2回折格子103からX線画像検出器105までの距離であり、mは、整数であり、dは、回折部材の周期(回折格子の周期、格子定数、隣接する回折部材の中心間距離、前記ピッチP)である。
このような構成のX線用タルボ干渉計100Aでは、X線源101から第1回折格子102に向けてX線が照射される。この照射されたX線は、第1回折格子102でタルボ効果を生じ、タルボ像を形成する。このタルボ像が第2回折格子103で作用を受け、モアレ縞の画像コントラストを形成する。そして、この画像コントラストがX線画像検出器105で検出される。
タルボ効果とは、回折格子に光が入射されると、或る距離に前記回折格子と同じ像(前記回折格子の自己像)が形成されることをいい、この或る距離をタルボ距離Lといい、この自己像をタルボ像という。タルボ距離Lは、回折格子が位相型回折格子の場合では、上記式2に表されるZ1となる(L=Z1)。タルボ像は、Lの奇数倍(=(2m+1)L、mは、整数)では、反転像が現れ、Lの偶数倍(=2mL)では、正像が現れる。
ここで、X線源101と第1回折格子102との間に被写体Sが配置されると、前記モアレ縞は、被写体Sによって変調を受け、この変調量が被写体Sによる屈折効果によってX線が曲げられた角度に比例する。このため、モアレ縞を解析することによって被写体Sおよびその内部の構造が検出される。
このような図19に示す構成のタルボ干渉計100Aでは、X線源101は、単一の点光源であり、このような単一の点光源は、単一のスリット(単スリット)を形成した単スリット板をさらに備えることで構成することができ、X線源101から放射されたX線は、前記単スリット板の前記単スリットを通過して被写体Sを介して第1回折格子102に向けて放射される。前記スリットは、一方向に延びる細長い矩形の開口である。
一方、タルボ・ロー干渉計100Bは、図20に示すように、X線源101と、マルチスリット板104と、第1回折格子102と、第2回折格子103とを備えて構成される。すなわち、タルボ・ロー干渉計100Bは、図19に示すタルボ干渉計100Aに加えて、X線源101のX線放射側に、複数のスリットを並列に形成したマルチスリット板104をさらに備えて構成される。
このマルチスリット板104は、いわゆる第0格子であり、上述したX線用金属格子1の製造方法のいずれかによって製造されたX線用金属格子1であってよい。マルチスリット板104を、上述したX線用金属格子1の製造方法のいずれかによって製造することによって、X線を、スリット状のX線透過部112(112a、112b、112c、112d)によって透過させるとともにより確実にスリット状のX線吸収部111(111a、111b、111c、111d)によって遮断することができるので、X線の透過と非透過とをより明確に区別することができるから、マルチスリット板104は、X線源101から放射されたX線を、より確実にマルチ光源とすることができる。
そして、タルボ・ロー干渉計100Bとすることによって、タルボ干渉計100Aよりも、被写体Sを介して第1回折格子102に向けて放射されるX線量が増加するので、より良好なモアレ縞が得られる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第7実施形態;X線撮像装置)
前記X線用金属格子1(1a、1b、1c、1d)は、種々の光学装置に利用することができるが、高アスペクト比でX線吸収部111(111a、111b、111c、111d)を形成することができるので、例えば、X線撮像装置に好適に用いることができる。特に、X線タルボ干渉計を用いたX線撮像装置は、X線を波として扱い、被写体を通過することによって生じるX線の位相シフトを検出することによって、被写体の透過画像を得る位相コントラスト法の一つであり、被写体によるX線吸収の大小をコントラストとした画像を得る吸収コントラスト法に較べて、約1000倍の感度改善が見込まれ、それによってX線照射量が例えば1/100〜1/1000に軽減可能となるという利点がある。本実施形態では、前記X線用金属格子1を用いたX線タルボ干渉計を備えたX線撮像装置について説明する。
図21は、第7実施形態におけるX線撮像装置の構成を示す説明図である。図21において、X線撮像装置200は、X線撮像部201と、第2回折格子202と、第1回折格子203と、X線源204とを備え、さらに、本実施形態では、X線源204に電源を供給するX線電源部205と、X線撮像部201の撮像動作を制御するカメラ制御部206と、本X線撮像装置200の全体動作を制御する処理部207と、X線電源部205の給電動作を制御することによってX線源204におけるX線の放射動作を制御するX線制御部208とを備えて構成される。
X線源204は、X線電源部205から給電されることによって、X線を放射し、第1回折格子203へ向けてX線を照射する装置である。X線源204は、例えば、X線電源部205から供給された高電圧が陰極と陽極との間に印加され、陰極のフィラメントから放出された電子が陽極に衝突することによってX線を放射する装置である。
第1回折格子203は、X線源204から放射されたX線によってタルボ効果を生じる回折格子である。第1回折格子203は、例えば、上述したX線用金属格子1の製造方法のいずれかによって製造された回折格子である。第1回折格子203は、タルボ効果を生じる条件を満たすように構成されており、X線源204から放射されたX線の波長よりも充分に粗い格子、例えば、格子定数(回折格子の周期)dが当該X線の波長の約20以上である位相型回折格子である。なお、第1回折格子203は、このような振幅型回折格子であってもよい。
第2回折格子202は、第1回折格子203から略タルボ距離L離れた位置に配置され、第1回折格子203によって回折されたX線を回折する透過型の振幅型回折格子である。この第2回折格子202も、第1回折格子203と同様に、例えば、上述したX線用金属格子1の製造方法のいずれかによって製造された回折格子である。
これら第1および第2回折格子203、202は、上述の式1および式2によって表されるタルボ干渉計を構成する条件に設定されている。
X線撮像部201は、第2回折格子202によって回折されたX線の像を撮像する装置である。X線撮像部201は、例えば、X線のエネルギーを吸収して蛍光を発するシンチレータを含む薄膜層が受光面上に形成された二次元イメージセンサを備えるフラットパネルディテクタ(FPD)や、入射フォトンを光電面で電子に変換し、この電子をマイクロチャネルプレートで倍増し、この倍増された電子群を蛍光体に衝突させて発光させるイメージインテンシファイア部と、イメージインテンシファイア部の出力光を撮像する二次元イメージセンサとを備えるイメージインテンシファイアカメラなどである。
処理部207は、X線撮像装置200の各部を制御することによってX線撮像装置200全体の動作を制御する装置であり、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路を備えて構成され、機能的に、画像処理部271およびシステム制御部272を備えている。
システム制御部272は、X線制御部208との間で制御信号を送受信することによってX線電源部205を介してX線源204におけるX線の放射動作を制御すると共に、カメラ制御部206との間で制御信号を送受信することによってX線撮像部201の撮像動作を制御する。システム制御部272の制御によって、X線が被写体Sに向けて照射され、これによって生じた像がX線撮像部201によって撮像され、画像信号がカメラ制御部206を介して処理部207に入力される。
画像処理部271は、X線撮像部201によって生成された画像信号を処理し、被写体Sの画像を生成する。
次に、本実施形態のX線撮像装置の動作について説明する。被写体Sが例えばX線源204を内部(背面)に備える撮影台に載置されることによって、被写体SがX線源204と第1回折格子203との間に配置され、X線撮像装置200のユーザ(オペレータ)によって図略の操作部から被写体Sの撮像が指示されると、処理部207のシステム制御部272は、被写体Sに向けてX線を照射すべくX線制御部208に制御信号を出力する。この制御信号によってX線制御部208は、X線電源部205にX線源204へ給電させ、X線源204は、X線を放射して被写体Sに向けてX線を照射する。
照射されたX線は、被写体Sを介して第1回折格子203を通過し、第1回折格子203によって回折され、タルボ距離L(=Z1)離れた位置に第1回折格子203の自己像であるタルボ像Tが形成される。
この形成されたX線のタルボ像Tは、第2回折格子202によって回折され、モアレを生じてモアレ縞の像が形成される。このモアレ縞の像は、システム制御部272によって例えば露光時間などが制御されたX線撮像部201によって撮像される。
X線撮像部201は、モアレ縞の像の画像信号をカメラ制御部206を介して処理部207へ出力する。この画像信号は、処理部207の画像処理部271によって処理される。
ここで、被写体SがX線源204と第1回折格子203との間に配置されているので、被写体Sを通過したX線には、被写体Sを通過しないX線に対し位相がずれる。このため、第1回折格子203に入射したX線には、その波面に歪みが含まれ、タルボ像Tには、それに応じた変形が生じている。このため、タルボ像Tと第2回折格子202との重ね合わせによって生じた像のモアレ縞は、被写体Sによって変調を受けており、この変調量が被写体Sによる屈折効果によってX線が曲げられた角度に比例する。したがって、モアレ縞を解析することによって被写体Sおよびその内部の構造を検出することができる。また、被写体Sを複数の角度から撮像することによってX線位相CT(Computed Tomography)により被写体Sの断層画像が形成可能である。
そして、本実施形態の第2回折格子202では、高アスペクト比のX線吸収部111を備える上述した実施形態におけるX線用金属格子1であるので、良好なモアレ縞が得られ、高精度な被写体Sの画像が得られる。
なお、上述のX線撮像装置200は、X線源204、第1回折格子203および第2回折格子202によってタルボ干渉計を構成したが、X線源204のX線放射側にマルチスリットとしての上述した実施形態におけるX線用金属格子1をさらに配置することで、タルボ・ロー干渉計を構成してもよい。このようなタルボ・ロー干渉計とすることで、単スリットの場合よりも被写体Sに照射されるX線量を増加することができ、より良好なモアレ縞が得られ、より高精度な被写体Sの画像が得られる。
また、上述のX線撮像装置200では、X線源204と第1回折格子203との間に被写体Sが配置されたが、第1回折格子203と第2回折格子202との間に被写体Sが配置されてもよい。
また、上述のX線撮像装置200では、X線の像がX線撮像部201で撮像され、画像の電子データが得られたが、X線フィルムによって撮像されてもよい。
次に、別の実施形態について説明する。
(第8実施形態;超音波プローブおよびその製造方法)
非破壊検査(NDT)や医療用に用いられている超音波プローブは、一般に、単一の能動素子(高周波音波の発信と受信両方を行うピエゾ素子)が使用される。これに対して、フェーズドアレイシステムは、複数(例えば16から多い場合は256)の個別にパルス発振できるピエゾ素子から成るプローブで構成されており、これら複数のピエゾ素子から発せられる超音波の強度および位相等を個別に電気的に制御することで、超音波の伝搬方向や焦点域を任意に変えることが可能となる。
以下に、このフェーズドアレイ用の超音波プローブを高アスペクト比構造物としてその製造方法を説明する。
図22は、高アスペクト比構造物の製造方法により製造された一例である第8実施形態の超音波プローブ製造用型の断面図である。図23は、前記超音波プローブ製造用型を用いて金型を形成する際の断面図である。図24は、図23に示す金型の断面図である。図25は、図23の金型を用いて樹脂型を形成する際の断面図である。図26は、図25の樹脂型の断面図である。図27は、図26の樹脂型を用いてチタン酸ジルコン酸鉛焼結体を形成する際の断面図である。図28は、図27のチタン酸ジルコン酸鉛焼結体の断面図である。図29は、図28のチタン酸ジルコン酸鉛焼結体に設けられた焼結体凹部にエポキシ樹脂を充填した際の断面図である。図30は、図29の状態から形成した超音波プローブの要部の断面図である。
一例では、第2実施形態のX線用金属格子1bを製造した場合と同様の各工程によって、図22に示すように、アルミニウムからなる基板301の主面に、幅L1が15um、深さH3が100umの複数の凹部300aと幅が15um、深さH3が100umの複数の凸部300bとを、30umのピッチ間隔L2(=周期30um)で交互に配置した1次元構造の高アスペクト比構造物である超音波プローブ製造用型300が作製される。この例では、超音波プローブ製造用型300は、第2実施形態のX線用金属格子1bを製造した場合と同様の各工程によって、作製されたが、超音波プローブ製造用型300は、第1および第3実施形態のX線用金属格子1a、1cを製造した場合と同様の各工程によって、作製されても良い。
次に、図23に示すように、この超音波プローブ製造用型300における凹部300aの底部の基板301をめっき電極とした電鋳法が実施され、ニッケルから成るニッケル充填物が凹部300aに充填され、1mmの厚さまで堆積される。その後、超音波プローブ製造用型300がリン酸液で溶解除去され、図24に示すように金型用凹部350aを有する金型350が作製される(金型形成工程)。
次に、図25に示すように、この作製された金型350に、樹脂材料から成る樹脂充填物が充填される。樹脂材料は、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)から成るアクリル樹脂である。加熱により軟化したシロップ状のアクリル樹脂が、金型350の金型用凹部350aに流し込まれ、室温まで冷却することで硬化される。その後、樹脂材料が金型350から離型され、図26に示すように樹脂型用凹部351aを有する樹脂型351が作製される(樹脂型形成工程)。
次いで、図27に示すように樹脂型35の樹脂型用凹部351aに、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粒子を含有するスラリーが充填される。このスラリーは、水および有機バインダーを用いて、調製される。次に、乾燥により充填したスラリーが固化される。その後、酸素プラズマを用いたアッシングが実施され、樹脂型351が除去される(図28)。次に、残ったスラリーの固化物が、500℃で仮焼成され、さらに1100°Cで本焼成される。この焼成により、図28に示すように焼結体凹部(構造体凹部)352aを有する微細構造体から成る圧電材料としてのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)焼結体352が作製される(微細構造体形成工程)。
このようにして作製したチタン酸ジルコン酸鉛焼結体352の焼結体凹部352aに、図29に示すようにエポキシ樹脂353が充填され、その後、図30に示すようにエポキシ樹脂353およびチタン酸ジルコン酸鉛焼結体352の台座部分が研磨によって除去される。これによって、チタン酸ジルコン酸鉛焼結体352とエポキシ樹脂353が交互に並んでアレイ化された超音波プローブ本体310が形成される(超音波プローブ本体形成工程)。その後、超音波プローブ本体310の両面に電極を形成することによって、超音波プローブが作製される。
以上のように、超音波プローブの製造方法に用いられた高アスペクト比構造物である超音波プローブ製造用型300は、ウェットエッチング法で基板301の一方の主面に形成された複数の凹部300aそれぞれが基板301の主面に垂直な側面を有している。そして、この超音波プローブの製造方法は、この超音波プローブ製造用型300に基づいて超音波プローブ310を製造することで、チタン酸ジルコン酸鉛焼結体352とエポキシ樹脂353とを正確に交互に並んでアレイ化でき、しかも、低コストで超音波プローブ310を製造できる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
PEa、PEb、PEc、PEd 穴
AR1 第1領域
AR2 第2領域
1、1a、1b、1c、1d X線用金属格子(高アスペクト比構造物)
10a、10b、10c、10d 格子領域
11a、11b、11c、11d 格子
12a、12b、12c、12d 枠領域
13 金属基板
100A X線用タルボ干渉計
100B X線用タルボ・ロー干渉計
102、203 第1回折格子
103、202 第2回折格子
104 マルチスリット板
132、138、139 穴群層
134、137、140 凹部
136 閉塞の穴群層
200 X線撮像装置
300 超音波プローブ製造用型(高アスペクト比構造物)

Claims (17)

  1. 所定の基板の少なくとも一つの主面に、前記主面に交差する方向に延びる複数の穴を形成する穴形成工程と、
    前記複数の穴を形成した前記主面に、後記凹部形成工程で後記凹部を形成する第1領域と後記凹部形成工程で後記凹部を形成しない第2領域とを規定する領域規定工程と、
    エッチング液の中に浸漬することによって前記第1領域に対応する前記基板に凹部を形成する凹部形成工程とを備え、
    前記穴形成工程は、互いに隣接する穴間の隔壁厚さが、前記主面側より前記穴の底部側の方が薄くなるように、前記複数の穴を形成する隔壁薄化穴形成工程を含むこと
    を特徴とする高アスペクト比構造物の製造方法。
  2. 前記穴形成工程は、前記領域規定工程を実施する前に実施される第1穴形成工程と、前記領域規定工程を実施した後に実施される第2穴形成工程とを備え、
    前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴それぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴を形成する前記隔壁薄化穴形成工程であること
    を特徴とする請求項1に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  3. 前記第1穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程であること
    を特徴とする請求項2に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  4. 前記穴形成工程は、前記領域規定工程を実施する前に実施される第1穴形成工程と、前記領域規定工程を実施した後に実施される第2穴形成工程とを備え、
    前記第1穴形成工程は、前記隔壁薄化穴形成工程であり、
    前記第2穴形成工程は、前記第1穴形成工程で形成された前記複数の穴それぞれに連続して前記方向にさらに延びるようにさらに複数の穴を形成すること
    を特徴とする請求項1に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  5. 前記領域規定工程は、前記第2領域に対応する前記主面上にレジスト層を形成するレジスト層形成工程であること
    を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  6. 前記領域規定工程は、前記複数の穴のうち、前記第2領域に対応する部分に形成されている1または複数の穴を閉塞する閉塞工程であること
    を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  7. 前記隔壁薄化穴形成工程は、開始時の第1印加電圧より終了時の第2印加電圧が低くなるように実施される陽極酸化法または陽極化成法によって前記複数の穴を形成する工程であること
    を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  8. 前記所定の基板は、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)のうちのいずれか1つで形成されていること
    を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  9. 前記凹部に、X線吸収可能なX線吸収性材料を埋設するX線吸収性材料埋設工程をさらに備えること
    を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  10. 前記X線吸収性材料埋設工程は、電鋳法によって、X線吸収性材料である金属を埋設すること
    を特徴とする請求項9に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  11. 前記高アスペクト比構造物は、X線タルボ干渉計またはX線タルボ・ロー干渉計に用いられるX線用金属格子であること
    を特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  12. 前記高アスペクト比構造物は、超音波プローブを製造する際に用いられる超音波プローブ製造用型であること
    を特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物の製造方法。
  13. 請求項12に記載の超音波プローブ製造用型の凹部に金属を充填して金型用凹部を有する金型を形成する金型形成工程と、
    前記金型の金型用凹部に樹脂材料からなる樹脂充填物を充填して樹脂型用凹部を有する樹脂型を形成する樹脂型形成工程と、
    前記樹脂型の樹脂型用凹部に圧電材料を含有するスラリーを充填して構造体凹部を有する微細構造体を形成する微細構造体形成工程と、
    前記微細構造体の構造体凹部に合成樹脂を充填して前記圧電材料からなる圧電層と合成樹脂からなる合成樹脂層とが交互に並んでアレイ化された超音波プローブ本体を形成する超音波プローブ本体形成工程とを備えること
    を特徴とする超音波プローブの製造方法。
  14. 基板と、
    前記基板に形成された格子とを備え、
    前記格子は、空間的な周期を持つように形成された複数の凸部を備え、
    前記複数の凸部それぞれは、前記格子の格子面に交差する方向に延びる複数の穴を備え、
    互いに隣接する穴間の隔壁は、その厚さが前記格子面側より前記穴の底部側の方が薄くなっていること
    を特徴とする高アスペクト比構造物。
  15. 前記複数の凸部それぞれは、前記複数の穴それぞれを閉塞する閉塞部材をさらに備えること
    を特徴とする請求項14に記載の高アスペクト比構造物。
  16. 前記複数の凸部間それぞれに形成される複数の凹部それぞれに埋設された、X線吸収可能なX線吸収性材料から成る複数のX線吸収部材をさらに備えること
    を特徴とする請求項14または請求項15に記載の高アスペクト比構造物。
  17. X線を放射するX線源と、
    前記X線源から放射されたX線が照射されるタルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計と、
    前記タルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計によるX線の像を撮像するX線撮像素子とを備え、
    前記タルボ干渉計またはタルボ・ロー干渉計は、請求項14ないし請求項16のいずれか1項に記載の高アスペクト比構造物をX線用金属格子として含むこと
    を特徴とするX線撮像装置。
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