JP2018145107A - 細胞内導入機能を有するホウ素を含むデンドリマー - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、細胞内での高いホウ素濃度を示す、新規なホウ素化合物を提供する。【解決手段】 コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む、デンドリマーである。コア部は、1〜49の酸素が挿入された炭素原子数4〜100の2価脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。樹木状分岐部は、−N[R2−CONH−R2−]2[ここで、R2は、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、R2は、各々同じでも異なっていてもよい。]の構造を含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞内導入機能を有する新規なホウ素を含むデンドリマー及びその製造方法に関する。より具体的には、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)で使用される新規なホウ素を含むデンドリマー及びその製造方法に関する。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、中性子とそれに増感効果のあるホウ素との反応を利用して、正常細胞にあまり損傷を与えず、腫瘍細胞のみを選択的に破壊する治療法である。具体的には、患者の腫瘍部の腫瘍細胞内部にホウ素化合物を導入し、それに人体に無害な低エネルギーの熱中性子線又は熱外中性子線を照射し、腫瘍細胞内部でホウ素(10B)原子の核反応を起こして、腫瘍を殺傷する。核分裂反応によって、α粒子とリチウム(7Li)核が生ずるが(10B + 1n → 7Li + 4He + 2.4MeV)、それらの飛程は、10μm以下であり、細胞直径より短いので、中性子線の影響は、10Bを含む細胞内部に限られる。
現在、臨床応用されているホウ素化合物は、下記のホウ素フェニルアラニン(BPA:borono-L-phenylalanine)と、ドデカボランチオール(BSH:disodium mercaptoundecahydrododecaborate, [B12H11SH]2- 2Na+)の2種類である。
BPAは、必須アミノ酸であるフェニルアラニンに、10B原子が1つ結合したホウ素化合物である。BPAは血液脳関門を通過して脳全体に広がり、特にアミノ酸代謝の高い脳腫瘍に取り込まれる。BPAは正常細胞と比較して、腫瘍細胞に、より高効率で取り込まれる。BPAは、18Fが結合した18F-BPAも開発され、治療前検査に利用されている。
腫瘍細胞への選択性が高く及び集積量が高く、水溶性が高く、正常細胞に対する細胞毒性が低いホウ素化合物を提供するために、(±)−p−ボロノフェニルアラニン結合ポリアミドアミンデンドリマー(0世代)及び(±)−p−ボロノフェニルアラニン結合ポリアミドアミンデンドリマー(1世代)が報告された(特許文献1実施例1及び2参照)。
BSHは、分子内に12個の10B原子を含み、20面体の化学構造を有するホウ素化合物である。BSHは、それ自身で、通常、腫瘍細胞に選択的に取り込まれることは無い。但し、BSHは、血液脳関門が壊れている脳腫瘍細胞については、EPR(enhanced permeability and retention)効果によって蓄積する。BSHは、高水溶性及び低毒性である。BSHは、通常、細胞内に自然に取り込まれないこと及びPETなどの薬物動態をイメージングする手法も無いこと等から、脳腫瘍細胞を除き、用いられない(非特許文献1参照)。
特開2006−96870号公報
Kawabata S. et al., "Boron neutron capture therapy for newly diagnosed glioblastoma", J Radiat Res. 2009 Jan;50(1):51-60. Epub 2008 Oct 29..
BPAは1分子あたりに占める10Bの割合が、元々低く、4.7重量%である。治療効果を得るために大量のBPAを要する。更に、BPAは、正常細胞にも、少量取り込まれるので、正常細胞に取り込まれていることを考慮して中性子線照射を行うことが必要である。そして、BPAは、アミノ酸の代謝の低い細胞への取り込みが不十分であるから、例えば、腫瘍幹細胞と呼ばれる、細胞分裂能は低いが、腫瘍形成能の高い細胞(即ち、腫瘍を形成する元となる細胞)への取り込みも不十分である。この腫瘍幹細胞への取り込み及びその後の中性子線による殺傷が低いことが、腫瘍の再発の原因と考えられる。
特許文献1に記載の実施例1のホウ素化合物の10Bの割合は、約3.5重量%であり、実施例2のホウ素化合物の10Bの割合は、約3.1重量%である。これらの10Bの割合は、更に改良することが必要である。
更に、特許文献1実施例2のホウ素化合物の、Iharaがん細胞への取り込みについては、ホウ素濃度が約1.1ppmであり、更に、改良することが必要である(特許文献1実施例2及び図2参照)。
従って、特許文献1のホウ素化合物と異なる、新たなホウ素化合物が要求される。
一方、BSHは、通常、腫瘍細胞内への取り込み能を有さないが、その化合物1分子あたりの10Bの割合は、57.4重量%であり、より10Bの割合が高く、高水溶性であり及び低毒性である。
そこで、安価で簡便な方法で合成でき、BSHを基本構造として含み、腫瘍細胞内への取り込み能を有する、新規なホウ素化合物を開発することが期待される。更に、そのホウ素化合物の腫瘍細胞への取り込み能、及び細胞毒性等を明らかにすることが期待される。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、コア部に、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、樹木状分岐部に、アミドアミン構造を含み、末端部に、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む、特定のデンドリマーは、驚くべきことに、比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、細胞内での高いホウ素濃度を示すことを見いだした。
本発明は、一の要旨において、ホウ素を含む新規なデンドリマーを提供し、それは、
コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、
コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、
樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、
末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む。
本発明は、一の態様において、コア部は、1〜49の酸素が挿入された炭素原子数4〜100の2価脂肪族炭化水素基を含む、デンドリマーを提供する。
本発明は、他の態様において、コア部は、式(2)で示す構造を有する、デンドリマーを提供する。
[ここで、Rは、炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、各々同じでも異なっていてもよい。]
本発明は、好ましい態様において、樹木状分岐部は、式(3):−N[R−CONH−R−][ここで、Rは、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、各々同じでも異なっていてもよい。]で示す構造を含む、デンドリマーを提供する。
本発明は他の要旨において、上述のデンドリマーとカーボンナノチューブとの複合体を提供する。
本発明は好ましい要旨において、上述のデンドリマー及び/又は上述の複合体を含むホウ素製剤を提供する。ホウ素製剤は、BNCTに、好ましく使用することができる。
本発明の形態のデンドリマーは、上述の特徴を有するので、比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、高い細胞内ホウ素濃度を示す。
図1A及びB(図1Bは図1Aの続き)は、1,10-ビス(デシロキシ)デカンをコア部に有するデンドリマー 9 の合成スキームを示す。 図2A及びBは、デンドリマー9の水溶液の走査電子顕微鏡(SEM)の画像を示す。加速電圧は、共に5.0KVである。図2Aは、80,000倍、図2Bは、40,000倍である。 図3は、デンドリマー9とカーボンナノチューブとの複合体10の紫外可視近赤外スペクトルを示す。 図4は、デンドリマー9とカーボンナノチューブとの複合体10のラマンスペクトルを示す。 図5は、デンドリマー9とカーボンナノチューブとの複合体10の蛍光スペクトルを示す。 図6は、デンドリマー9とカーボンナノチューブとの複合体10の原子間力顕微鏡(AFM)の像を示す。図6Aは、3.5×3.5μmの範囲を示し、繊維状の複合体10が認められた。図6Bは、2.8〜4.3nmの範囲の高さプロファイルを示す。 図7は、細胞毒性試験 (WST-1 assay) 結果を示す。デンドリマー9を、1、10、50、100、250 μMの濃度で、複合体10を、100、250 μMの濃度で、又はControl(DMSO)を、悪性脳腫瘍細胞株U87 delta EGFRとともに、24時間(左図)又は48時間(右図)培養後、吸光度(450 nm - 690 nm)のWST-1細胞増殖アッセイを用いて、細胞毒性を測定した。データは平均値±標準偏差(n=5)である。 図8は、細胞内ホウ素濃度測定(ICP)結果を示す。左図:悪性脳腫瘍細胞株U87 delta EGFRとともに、デンドリマー9を5、50、250μMの濃度で、複合体10を250μMの濃度で、24時間培養後、細胞内ホウ素濃度を測定した。右図:U87 delta EGFRとともに、デンドリマー9を250μMの濃度で、6時間、12時間、24時間培養後、細胞内ホウ素濃度を測定した。データは平均値(n=6)である。
以下、添付した図面も参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの形態によって制限されることはない。
本発明は、一の要旨において、
コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、
コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、
樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、
末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む、デンドリマーを提供する。
本発明の形態のデンドリマーは、下記式(1)で示すことができる。
式(1)において、コア部は、Aに相当し、樹木状分岐部は、B及びBと結合した二つのC、即ち、BC構造に相当し、末端部は、Dに相当する。
デンドリマーのコア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含む(但し、複数の酸素が挿入される場合、酸素と酸素の間には、少なくとも2つの炭素原子が存在する)。生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等の観点から、コア部の化学構造は、適度の柔軟性を有することが好ましく、コア部は、酸素が挿入されている鎖状の2価脂肪族炭化水素基を含むことが、好ましい。
コア部は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、1〜49の酸素が挿入された4〜100の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが好ましく、1〜19の酸素が挿入された8〜80の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことがより好ましく、1〜9の酸素が挿入された12〜60の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが更に好ましく、1〜6の酸素が挿入された16〜56の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが更により好ましく、1〜4の酸素が挿入された、20〜50の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが特に好ましい。
上述の2価脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を含むことが好ましい。少なくとも1つの酸素が挿入されることで、2価脂肪族炭化水素基は、少なくともより炭素数が少ない複数の2価の脂肪族炭化水素基に分割されるが、それらは、1種類のより炭素数が少ない2価の脂肪族炭化水素基であってよいし、複数種のより炭素数が少ない2価の脂肪族炭化水素基であってよい。
デンドリマーのコア部の、(酸素が挿入されていない、)より炭素数の少ない2価脂肪族炭化水素基として、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、及びエイコシレン基等を例示できる。
デンドリマーのコア部の、(酸素が挿入されていない、)2価脂肪族炭化水素基は、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、及びトリデシレン基から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
デンドリマーのコア部は、上述の少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基として、下記式(2)で示す構造を有してもよい。
ここで、Rは、炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、各々同じでも異なっていてもよい。Rに含まれる炭素数は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが特に好ましい。
nは1〜20の整数であるが、式(2)に含まれる、炭素鎖の合計の炭素数は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、4〜100であることが好ましい。式(2)に含まれる、炭素鎖の合計の炭素数は、8〜80であることが好ましく、12〜60であることがより好ましく、16〜56であることが更に好ましく、20〜50であることが特に好ましい。nは、1〜49であることが好ましく、1〜19であることがより好ましく、1〜9であることが更に好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが更により好ましい。
式(2)に記載のR基は、1種類の2価の脂肪族炭化水素基であっても、複数種の2価の脂肪族炭化水素基であってもよい。式(2)の中で、R基は、単一の2価の脂肪族炭化水素基である必要はない。
式(2)に記載のR基として、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、及びエイコシレン基等を例示できる。
基は、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、及びトリデシレン基から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の形態のデンドリマーの樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含む。
合成の容易さ、生体適合性、血液中への溶解性などがより向上するので、鎖状アミドアミン構造を含むことが好ましい。
樹木状分岐部は、繰り返し結合されてよい。繰り返し結合されることで、末端部の数が、4個、8個、16個、・・・と増加する。
尚、本発明が目的とするデンドリマーが得られる限り、繰り返しの回数に制限されることはなく、繰り返されていなくてもよい。
更に、全部の(式1のデンドリマーであれば、2つの)樹木状分岐部が繰り返される必要はなく、一部の(式1のデンドリマーであれば、片方の)樹木状分岐部が繰り返されても良い。
樹木状分岐部は、例えば、下記式(3)で示す構造を含むことができる。
(3): −N[R−CONH−R−]
ここで、Rは、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、各々同じでも異なっていてもよい。Rに含まれる炭素数は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、2〜9であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、2〜3であることが特に好ましい。
樹木状分岐部は、例えば、−N[C−CONH−C−]、−N[C−CONH−C−]、−N[C−CONH−C−]、−N[C10−CONH−C10−]、及び−N[C12−CONH−C12−]、から選択される構造を含むことが好ましい。
樹木状分岐部は、−N[C−CONH−C−]、及び−N[C−CONH−C−]から選択される構造を含むことがより好ましい。
末端部は、ホウ素を含む構造として、ウンデカヒドロドデカボレート構造[B12H11]2-を含む。末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含むので、本発明の形態のデンドリマーは、低毒性であるにもかかわらず、細胞内の高いホウ素濃度が期待される。
ウンデカヒドロドデカボレート構造[B12H11]2-を含み、本発明が目的とするデンドリマーを得ることができ、樹木状分岐部とウンデカヒドロドデカボレート構造を接続することができる限り、末端部の他の構造は、特に制限されることはない。
樹木状分岐部と接続するための末端部の他の構造として、例えば、−NHCO−C−NC−S−、−CO−S−、及び−CONH−C−S−等を例示することができ、末端部の他の構造は、これらから選択される構造を含むことが好ましい。
目的とするホウ素を含むデンドリマーを得ることができる限り、その製造方法は、特に制限されることはない。本発明の形態のホウ素を含むデンドリマーは、後述する実施例及び図1A及びBからも判るように、例えば、以下のようにして製造することができる。
例えば、2つの酸素原子が挿入された炭素原子数30の2価脂肪族炭化水素基の両末端にアミノ基を有するジアミン化合物5[NH−C1020O−C1020O−C1020−NH]を準備する。これに、アクリル酸メチルを反応させて、テトラエステル化合物6[(CHOCO−CN−C1020O−C1020O−C1020−N(C−COO−CH]を得る。次に、ジエチルアミンと反応させて、テトラアミン化合物7[(NH−C−NHCO−CN−C1020O−C1020O−C1020−N(C−CONH−C−NH]を得る。その後、アミノ基にN−スクシンイミジル基を結合させ、そのN−スクシンイミジル基に、メルカプトウンデカヒドロドデカボレート(Na2 10B12H11SH)を反応させて、ホウ素を含むデンドリマー9を得ることができる。
ジエチルアミンによる反応及びその次のアクリル酸メチルを用いる反応を繰返すことで、樹木状分岐部を繰り返し導入することができる。例えば、式(1)におけるBC構造が繰返されたホウ素を含むデンドリマーを得ることができる。この樹木状分岐部の繰返しが多いほど末端部Dの数を増やすことができる。
また、末端部に含まれる[10B12H11]と樹木状分岐部との結合は、本発明の形態のホウ素を含むデンドリマーを得ることができる限り、特に制限されることはない。
本発明の形態のデンドリマーは、カーボンナノチューブと複合体を形成することができる。即ち、本発明は、本発明の形態のホウ素を含むデンドリマーとカーボンナノチューブとの複合体を提供する。
本明細書においてカーボンナノチューブとは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質をいい、本発明が目的とするデンドリマーとカーボンナノチューブの複合体を得ることができる限り、特に制限されることはない。
複合体の製造方法は、本発明が目的とするデンドリマーとカーボンナノチューブの複合体を得ることができる限り、特に制限されることはないが、通常、デンドリマーとカーボンナノチューブを適当な溶媒に加えて、適宜、攪拌することで(必要であれば加熱して)製造することができる。
複合体の生成は、紫外可視近赤外スペクトル、ラマンスペクトル、蛍光スペクトル及び原子間力顕微鏡による像などによって、確認することができる。
複合体は、カーボンナノチューブの少なくとも一部を、ホウ素を含むデンドリマーが被覆することが好ましく、カーボンナノチューブの外側の少なくとも一部を、ホウ素を含むデンドリマーが被覆することがより好ましい。
本発明は、本発明の形態のホウ素を含むデンドリマー及び/又はそのデンドリマーとカーボンナノチューブとの複合体を含むホウ素製剤を提供することができる。
本発明の形態のホウ素を含むデンドリマーを含むホウ素製剤は、比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、高い細胞内ホウ素濃度を示すことができ、好ましく使用することができる。
本発明の形態の複合体を含むホウ素製剤は、比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、高い細胞内ホウ素濃度を示し、好ましく使用することができる。更に、近赤外光を吸収して蛍光を発する蛍光プローブとして、より好ましく使用することができる。
本発明の形態のホウ素製剤は、適当な薬学的に許容され得る賦形剤、担体、溶媒、ゲル形成剤、酸化防止剤、希釈剤、等張化剤、pH安定化剤などの通常用いられる添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、当業者であれば、適宜選択することができる。
このようなホウ素製剤は、溶液、懸濁液、注射剤、カプセル、ゲル、軟膏、クリーム、エマルジョンなど、種々の剤形に調製することができる。つまり、生理食塩水、等張液や一般臨床で用いられる注射液用の添加剤と共に注射剤とすること、カプセル化しての内服薬やゲル化剤や皮膚科薬剤と混ぜて経皮的導入薬剤などとすることも可能である。
本発明の形態のホウ素製剤は、一般的に経静脈的、経動脈的に投与することができる。更に、内服薬による投与、筋肉注射による投与、経皮的投与等も行うことができる。
本発明の形態のホウ素製剤は、治療に有効な量を腫瘍細胞内に蓄積できる濃度および量で投与することが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した、試薬及び測定装置等を記載する。
全ての溶媒及び試薬は、関東化学株式会社、東京化成工業株式会社又は和光純薬株式会社より購入したものを、使用した。特に記載しない場合、精製することなく、そのまま使用した。
分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、日本分析工業株式会社製(Japan Analytical Industry Co., Ltd.)の model LC-918V(製品名)を用い、カラムには、日本分析工業株式会社製 JAIGEL GS-320(製品名)(eluent : CH3OH)を使用した。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、日本電子株式会社製のJEOL AL300(製品名)を用いて測定した。TMSを、内部標準物質として用いた。
紫外可視近赤外吸収スペクトルは、島津製作所製のSHIMADZU UV-3150(製品名)を用いて測定した。
赤外線吸収スペクトル(IR)は、島津製作所製のSHIMADZU IR Affinity-1(製品名)を用い、KBr 法を使用して測定した。
ラマンスペクトルは、日本分光株式会社製のJASCO NRS-3100(製品名)を用い、488 nmのレーザー光を用いて測定した。
デンドリマー及びそのデンドリマーとカーボンナノチューブとの複合体10は、例えば、1,10-デカンジオール1を出発物質として、図1A及びBに示すように製造した。以下、詳細に説明する。
<化合物(ジオール) 2 の合成>
500 ml 三ツ口フラスコ中に、水素化ナトリウム(0.432 g, 18.0 mmol)、1,10-デカンジオール 1 (2.613 g, 15.0 mmol)及びDMF(50 ml)を加えて、その溶液を、80℃で3時間、加熱攪拌した。その後、DMF溶液に80℃で加熱攪拌しながら、1,10-ジブロモデカン (0.750 g, 2.50 mmol)のDMF(40 ml)の溶液を滴下して加えた。更に、アルゴン雰囲気下、混合物を、80℃で、24時間加熱攪拌した。
反応混合物に水を加えた後、溶媒を留去して、残留物を得た。残留物を、クロロホルムを用いて吸引ろ過し、エバポレーターでクロロホルムを留去して、固体を得た。固体を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, eluent: クロロホルム)を用いて精製して、化合物 2 (11,22-dioxadotriacontane-1,32-diol:11,22-ジオキサドトリアコンタン-1,32-ジオール)(0.220 g, 0.452 mmol, 収率18 %)を無色透明な結晶として得た。
化合物2 : mp 81 - 82 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.29 (s, 36H), 1.56 (t, J = 6.5 Hz, 12H), 3.39 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 3.64 (t, J = 6.0 Hz, 4H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 16.39 (t), 16.46 (t), 22.29 (t), 24.11 (t), 46.34(t), 46.77 (t), 51.09 (t), 61.50 (t), 61.59 (t); Anal. Calcd for C30H62O4; C, 74.02; H, 12.84; N, 0. Found: C, 74.11; H, 13.32; N, 0.
<化合物(ジクロリド) 3 の合成>
200 ml ナスフラスコ中に、上述の化合物 2 (0.100g, 0.205 mmol)、塩化チオニル (0.596 ml)、触媒量のDMF (0.128 ml)及びクロロホルム(20 ml)を加えて、その溶液を、室温で1日間攪拌した。塩化チオニルとDMF を留去して、残留物を得た。その後、残留物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル, eluent: クロロホルム)で精製して、化合物3 (11,22-dioxa-1,32-dichlorodotriacontane:11,22-ジオキサ-1,32-ジクロロドトリアコンタン)(0.876 g, 0.167 mmol, 収率81 %)を無色透明な固体として得た。
化合物 3 : mp 47 - 48 ℃; 1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 1.29 (s, 32H), 1.42 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 1.56 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 1.74 (m, 4H), 3.39 (t, J = 6.8 Hz, 8H), 3.53 (t, J = 6.8 Hz, 4H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.2 (t), 26.9 (t), 28.8 (t), 29.36 (t), 29.42 (t), 29.46 (t), 29.53 (t), 29.7 (t), 32.6 (t), 45.2 (t), 70.92 (t), 70.95 (t); Anal. Calcd for C30H60Cl2O2; C, 68.80; H, 11.55; N, 0. Found: C, 68.75; H, 11.86; N, 0.
<化合物(ジフタルイミジル) 4 の合成>
200 ml ナスフラスコ中に、フタルイミドカリウム (0.213 g, 115 mmol)、上述の化合物 3 (0.100 g, 0.191 mmol)及びDMF(16.3 ml)を加えて、80℃で2日間加熱攪拌した。DMFを留去して、得られた残留物をクロロホルムで吸引ろ過し、エバポレーターでクロロホルムを留去して残留物を得た。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル, eluent : ヘキサン : クロロホルム = 1 : 5)で精製して、化合物 4 (1,32-diphtalimidyl-11,22-dioxadotriacontane:1,32-ジフタルイミジル-11,22-ジオキサドトリアコンタン)(0.111 g, 0.150 mmol, 収率78 %)を無色透明固体として得た。
化合物 4 : mp 82 - 83 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.27 (s, 36H), 1.55 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 1.66 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 3.38 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 3.67 (t, J = 7.4Hz, 4H), 7.71 (AA’BB’, J = 8.4, 2.8 Hz, 8H), 7.84 (AA’BB’, J = 8.4, 2.8 Hz, 8H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.2 (t), 26.9 (t), 28.6 (t), 29.2 (t), 29.4 (t), 29.49 (t), 29.54 (t), 29.8 (t), 38.1 (t), 71.0 (t), 123.1(d), 132.2 (d), 133.2 (d), 168.5 (q); Anal. Calcd for C46H88N2O6; C, 74.16; H, 9.20; N, 3.76. Found: C, 73.75; H, 9.46; N, 3.68.
<化合物(ジアミン) 5 の合成>
200 ml ナスフラスコ中に、上述の化合物 4 (0.111 g, 0.150 mmol)、ベンゼン (6 ml)、エタノール (6 ml)、及びヒドラジン一水和物 (0.6 ml, 0.012 mol)を加えて、80℃で3時間加熱還流した。溶媒を留去して、得られた混合物からクロロホルムで抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄して有機層を得た。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターでクロロホルムを留去し、真空乾燥して、化合物 5 (11,22-dioxa-1,32-dotriacontanediamine:11,22-ジオキサ-1,32-ドトリアコンタンジアミン)(0.051 g, 0.105 mmol, 収率 70.5 %) を無色透明固体として得た。
化合物 5 : 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.28 (s, 32H), 1.47(m, 4H), 1.56 (t, J = 6.5 Hz, 8H), 2.67 (t, J = 6.9 Hz 4H), 3.39 (t, J = 6.7 Hz, 8H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.2, 26.9, 29.5, 29.6, 29.8, 70.98; IR (KBr): 3327 (-NH2), 2930 (C-H), 2855 (C-H), 1114(C-O-C) cm-1.
<化合物(テトラエステル) 6 の合成>
100 ml ナスフラスコ中に、上述の化合物 5 (0.0511 g, 0.105 mmol) のメタノール(7.5 ml)溶液に、アクリル酸メチル(0.189 ml, 2.11 mmol)を滴下して加えた後、45 ℃で3日間加熱攪拌した。溶媒をエバポレーターで留去して、残留物を得た。得られた残留物をHPLC (eluent;メタノール) で精製し、化合物 6 (0.0612 g, 0.0738 mmol, 収率70 %) を無色透明な油状物質として得た。
化合物 6 : 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.27 (d, J = 6.6Hz, 36H), 1.40 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 1.56 (t, J = 6.5 Hz, 8H), 2.37-2.46 (m, 12H), 2.76 (t, J = 7.2 Hz, 8H), 3.39 (t, J = 6.8 Hz, 8H), 3.67 (s, 12H) ; 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.1 (t), 27.1 (t), 27.3 (t), 29.45 (t), 29.50 (t), 29.6 (t), 29.7 (t), 32.5 (t), 49.2 (t), 51.5 (q), 53.8 (t), 70.9 (t), 173.1 (s) ; Anal. Calcd for C46H88N2O10; C, 66.63; H, 10.70; N, 3.38. Found: C, 66.02; H, 10.58; N, 3.28.
<化合物(テトラアミン) 7 の合成>
200 ml ナスフラスコ中、過剰量のエチレンジアミン (9.69 ml, 0.145 mol) に、上述の化合物 6 (0.151 g, 0.182mmol) のメタノール分散液 (50 ml) を、氷浴で冷やしながら滴下して加えた後、室温で3日間攪拌した。メタノールとエチレンジアミンを減圧下で留去して、残留物を得た。残留物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えて、3800 rpm で20 分の遠心分離を行って、沈殿物を得た。沈殿物を乾燥して、化合物7 を無色透明な固体として得た。化合物 7 は精製することなく、そのまま、次の反応に用いた。
<化合物(テトラ-N-スクシンイミジル) 8 の合成>
上述の化合物 7 (0.113 g, 0.12 mmol) をメタノール (2 ml) に溶解し、4-マレイミド酪酸 N-スクシンイミジル(0.202 g, 0.72 mmol)とトリエチルアミン (0.067 mL, 4.8 mmol)とクロロホルム(5 mL)を加えた。室温で12 時間攪拌した後、溶媒を留去して得られた残留物をメタノールで吸引濾過して、濾液をえた。ろ液をHPLCで精製し、化合物 8 を無色透明な油状物質として得た(0.062 g, 0.039 mmol, 収率32%)。
化合物 7 : 1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 1.27 (36H, d, J = 6.3 Hz), 1.45 (4H, br), 1.55 (8H, t, J = 6.3 Hz), 1.92 (8H, quin, J =6.8 Hz), 2.19 (8H, t, J = 7.2 Hz), 2.35 (8H, t, J = 5.9 Hz), 2.43 (8H, t, J = 7.4 Hz), 2.70 (8H, t, J =5.9 Hz), 3.30-3.40 (28H, m), 3.56 (8H, t, J = 6.8 Hz), 6.71 (8H, s). IR (KBr): 3302, 3089, 2928, 2855, 1709, 1693,1552 cm-1.
<デンドリマー 9 の合成>
上述の化合物 8 (0.033 g, 0.021 mmol) をメタノール (3 ml) に溶解し、Na2 10B12H11SH (0.017 g, 0.084 mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、溶媒を濃縮してデンドリマー9を無色透明な油状物質として得た(0.050g, 0.020 mmol)。
デンドリマー 9 : 1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 0.5-1.8 (11Η, m), 1.24 (36H, s), 1.55 (12H, br), 1.90 (8H, br), 2.26 (8H, br), 2.58 (12H, br), 3.04 (8H, br), 3.17 (8H, br), 3.42 (28H, t, J = 6.5 Hz), 3.51 (8H, t, J = 6.3 Hz), 3.89 (4H, br). IR (KBr): 3373, 2927, 2854, 2498, 1694, 1643, 1549 cm-1
デンドリマー9のホウ素含有率は、19.3重量%であった。
<走査型顕微鏡(SEM)を用いたデンドリマー9の観察>
上述のデンドリマー9水溶液(10, 100 μM)を、SEM試料台(日新EM 株式会社PK29T Type-KM)に貼り付けたカバーガラス(MATHUNAMI)の上に乗せ、1 時間自然乾燥させた。試料をオスミウムコーター(株式会社真空デバイス HPC-1S型ホローカソードプラズマCVD)でオスミウムコーティングし、走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4800 型(製品名))を用いて上述のデンドリマー9の形状を観察した。加速電圧は5.0KV、倍率は、80000倍と40000倍であった。
走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を、図2A及びBに示す。図2Aが80,000倍であり、図2Bが40,000倍である。SEM画像から、各々の粒径を測定したところ、129.37±46.86 nmであった。SEM画像では、デンドリマー9の形状は、やや楕円に近い形状を示した。更に、いずれの粒子も、その大きさは、ほぼ均一に見えた。
<デンドリマー9とカーボンナノチューブとの複合体10の合成>
上述のデンドリマー 9 (0.002 g, 0.82 μmol) をイオン交換水5 ml に溶かし、デンドリマー9の水溶液を調製した。次にカーボンナノチューブ(NanoIntegris社製のHiPco(商品名)チューブ) 1 mg をねじ口試験管に入れた後、上述のデンドリマー 9 水溶液(5 ml) を加えた。その後、超音波照射を4時間行い、3000G で30分間の遠心分離を行い、デンドリマー9とカーボンナノチューブとの(超分子)複合体10の黒色透明上澄み溶液を得た。
複合体10の紫外可視近赤外スペクトル、ラマンスペクトル、蛍光スペクトル、および、原子間力顕微鏡(AFM)像を、各々図3〜6に示す。
紫外可視近赤外スペクトルによると、カーボンナノチューブの光吸収とデンドリマー9の光吸収が足し合わされた吸収帯が観測された。このことは、カーボンナノチューブとデンドリマー9が複合化したことを示す。
ラマンスペクトルによると、新たなピークが観察されておらず、新たな化学結合の形成は認められない。
蛍光スペクトルによると、カーボンナノチューブが各々分散して存在し、1本のカーボンナノチューブのまわりにデンドリマーが物理吸着した複合体が形成されたことを示す特徴的なピークが認められた。
原子間力顕微鏡(AFM)像によると、複合体10の繊維状構造が認められ(左図)、その高さプロファイルから、太さは、1.5nm程度であると認められた。AFMとして、セイコーインスツルメント社製のSPA 400を使用した。
<細胞増殖アッセイ (Water-Soluble Tetrazolium: WST-1 assay)>
上述のデンドリマー9と複合体10の毒性は、WST-1アッセイを用いて評価した。U87ΔEGFR細胞を、96wellプレート(BD)中で、24時間培養(1×103 cells/well)した。その培養液を、デンドリマー9又は複合体10を含む同量の培養液で置換した(終濃度 1, 10, 50, 100, 250μM)。Controlとして、10 %(v/v)ウシ胎児血清(GE Healthcare, Fairfield CA, USA)、100 単位/mL ペニシリン-100μg/mL ストレプトマイシン (和光純薬工業) を含むDulbecco’s Modified Eagle 培地 (DMEM,和光純薬工業)を使用した。24, 48, 72 時間後、Cell Proliferation Reagent WST-1 (Roche, Basel, Switzerland) を 10 μL/well 加えた。37 ℃で1 時間インキュベート後、マイクロプレートリーダー (Vient XS, DS ファーマバイオメディカル, 大阪) で、各サンプルの吸光度 (A450 nm - 690 nm) を測定した。
細胞増殖アッセイ(細胞毒性)の結果を図7に示す。デンドリマー9と、複合体10の投与から、24時間(左図)及び48時間(右図)経過時に、評価した。いずれもコントロール(Cont)との有意差を示さなかった。
従って、デンドリマー9と、複合体10の投与による細胞毒性を認めなかった。
<腫瘍細胞の10B 濃度測定>
悪性脳腫瘍細胞株U87ΔEGFR をφ35 mm-ディッシュ中 (BD) で24時間培養(1×105 cells/dish)した。その培養液を、上述のデンドリマー9又は複合体10を含む同量の培養液で置換した (終濃度5, 50, 250μM)。設定した時間(6, 12, 24 時間)経過後、培養液を除去し細胞をPBSで1回洗浄した。トリプシン(0.25w/v% トリプシン-1mmol/l EDTA・4Na 溶液、和光純薬工業)を300 μL/well添加し、37℃で2分インキュベートした。PBSを700 μL/well 加え、回収した後、PBS を400 μL/well を加え、洗いこみ回収した。マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所)で1500rpm、10分間遠心分離し、上清を吸引した。61 %(v/v) 硝酸 (HNO3, boron determination grade, 和光純薬工業) を300 μL 加え、室温で30分間溶解させた。水を700 μL 加え、100℃で2 時間加熱した。得られたサンプルに含まれる10B 量、すなわち、細胞内10B 濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置 (ICP-AES, VISTA-PRO, セイコーインスツル, 千葉) で測定した。
細胞内10B 濃度測定結果を、図8に示す。デンドリマー9の投与から、24時間経過時に、細胞内導入効果が確認された。この細胞内ホウ素濃度(10B)は、5μM群で316.3338 (ng/106 細胞), (ppm)、 50μM群で596.1537 (ng/106 細胞), (ppm)、 250μM群で2182.93(ng/106 細胞), (ppm)であり、デンドリマー9の濃度に依存性を示した。
更に、デンドリマー9の250μM群は、投与から、6時間経過後に770.3263(ng/106 細胞), (ppm)、12時間経過後に1229.552(ng/106 細胞), (ppm)、24時間経過後に2182.93 (ng/106 細胞), (ppm)であり、時間に依存性を示した。
また、複合体10の250μM群は、デンドリマー9の250μM群と比較して、高い細胞内導入効果を示した。例えば、複合体10の250μM群は、投与から、24時間経過後に6411.329 (ng/ 106 細胞), (ppm) という、高い細胞内導入効果を示した。
尚、特許文献1の実験例2及び図2に示された細胞取り込み試験でのホウ素濃度は、約1ppmであることを考慮すると、本発明に係る形態のデンドリマー9及び複合体10の細胞内導入効果は、著しく高いことが示された。
本発明は、細胞内導入機能を有する新規なホウ素を含むデンドリマー及びそのデンドリマーとカーボンナノチューブを含む複合体を提供する。かかるデンドリマー及び/又は複合体を含むホウ素製剤は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)で、好ましく使用することができる。

Claims (6)

  1. コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、
    コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、
    樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、
    末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む、デンドリマー。
  2. コア部は、1〜49の酸素が挿入された4〜100の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含む、請求項1に記載のデンドリマー。
  3. コア部は、下記式で示す構造を有する、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含む、請求項1に記載のデンドリマー。
    [ここで、Rは、炭素数2〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、各々同じでも異なっていてもよい。]
  4. 樹木状分岐部は、下記式で示す構造を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のデンドリマー。
    −N[R−CONH−R−]
    [ここで、Rは、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、各々同じでも異なっていてもよい。]
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のデンドリマーとカーボンナノチューブとの複合体。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のデンドリマー及び/又は請求項5に記載の複合体を含むホウ素製剤。
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