JP2018145107A - 細胞内導入機能を有するホウ素を含むデンドリマー - Google Patents
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Abstract
Description
更に、特許文献1実施例2のホウ素化合物の、Iharaがん細胞への取り込みについては、ホウ素濃度が約1.1ppmであり、更に、改良することが必要である(特許文献1実施例2及び図2参照)。
従って、特許文献1のホウ素化合物と異なる、新たなホウ素化合物が要求される。
そこで、安価で簡便な方法で合成でき、BSHを基本構造として含み、腫瘍細胞内への取り込み能を有する、新規なホウ素化合物を開発することが期待される。更に、そのホウ素化合物の腫瘍細胞への取り込み能、及び細胞毒性等を明らかにすることが期待される。
コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、
コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、
樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、
末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む。
本発明は、他の態様において、コア部は、式(2)で示す構造を有する、デンドリマーを提供する。
本発明は、好ましい態様において、樹木状分岐部は、式(3):−N[R2−CONH−R2−]2[ここで、R2は、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、R2は、各々同じでも異なっていてもよい。]で示す構造を含む、デンドリマーを提供する。
本発明は好ましい要旨において、上述のデンドリマー及び/又は上述の複合体を含むホウ素製剤を提供する。ホウ素製剤は、BNCTに、好ましく使用することができる。
コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、
コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、
樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、
末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む、デンドリマーを提供する。
コア部は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、1〜49の酸素が挿入された4〜100の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが好ましく、1〜19の酸素が挿入された8〜80の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことがより好ましく、1〜9の酸素が挿入された12〜60の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが更に好ましく、1〜6の酸素が挿入された16〜56の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが更により好ましく、1〜4の酸素が挿入された、20〜50の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含むことが特に好ましい。
デンドリマーのコア部の、(酸素が挿入されていない、)2価脂肪族炭化水素基は、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、及びトリデシレン基から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
nは1〜20の整数であるが、式(2)に含まれる、炭素鎖の合計の炭素数は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、4〜100であることが好ましい。式(2)に含まれる、炭素鎖の合計の炭素数は、8〜80であることが好ましく、12〜60であることがより好ましく、16〜56であることが更に好ましく、20〜50であることが特に好ましい。nは、1〜49であることが好ましく、1〜19であることがより好ましく、1〜9であることが更に好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが更により好ましい。
R1基は、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、及びトリデシレン基から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
合成の容易さ、生体適合性、血液中への溶解性などがより向上するので、鎖状アミドアミン構造を含むことが好ましい。
樹木状分岐部は、繰り返し結合されてよい。繰り返し結合されることで、末端部の数が、4個、8個、16個、・・・と増加する。
尚、本発明が目的とするデンドリマーが得られる限り、繰り返しの回数に制限されることはなく、繰り返されていなくてもよい。
更に、全部の(式1のデンドリマーであれば、2つの)樹木状分岐部が繰り返される必要はなく、一部の(式1のデンドリマーであれば、片方の)樹木状分岐部が繰り返されても良い。
(3): −N[R2−CONH−R2−]2
ここで、R2は、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、R2は、各々同じでも異なっていてもよい。R2に含まれる炭素数は、生体適合性、細胞取り込み能、血液中への溶解性等がより向上するので、2〜9であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、2〜3であることが特に好ましい。
樹木状分岐部は、−N[C2H4−CONH−C2H4−]2、及び−N[C3H6−CONH−C3H6−]2から選択される構造を含むことがより好ましい。
ウンデカヒドロドデカボレート構造[B12H11]2-を含み、本発明が目的とするデンドリマーを得ることができ、樹木状分岐部とウンデカヒドロドデカボレート構造を接続することができる限り、末端部の他の構造は、特に制限されることはない。
例えば、2つの酸素原子が挿入された炭素原子数30の2価脂肪族炭化水素基の両末端にアミノ基を有するジアミン化合物5[NH2−C10H20O−C10H20O−C10H20−NH2]を準備する。これに、アクリル酸メチルを反応させて、テトラエステル化合物6[(CH3OCO−C2H4)2N−C10H20O−C10H20O−C10H20−N(C2H4−COO−CH3)2]を得る。次に、ジエチルアミンと反応させて、テトラアミン化合物7[(NH2−C2H4−NHCO−C2H4)2N−C10H20O−C10H20O−C10H20−N(C2H4−CONH−C2H4−NH2)2]を得る。その後、アミノ基にN−スクシンイミジル基を結合させ、そのN−スクシンイミジル基に、メルカプトウンデカヒドロドデカボレート(Na2 10B12H11SH)を反応させて、ホウ素を含むデンドリマー9を得ることができる。
また、末端部に含まれる[10B12H11]と樹木状分岐部との結合は、本発明の形態のホウ素を含むデンドリマーを得ることができる限り、特に制限されることはない。
本明細書においてカーボンナノチューブとは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質をいい、本発明が目的とするデンドリマーとカーボンナノチューブの複合体を得ることができる限り、特に制限されることはない。
複合体の生成は、紫外可視近赤外スペクトル、ラマンスペクトル、蛍光スペクトル及び原子間力顕微鏡による像などによって、確認することができる。
複合体は、カーボンナノチューブの少なくとも一部を、ホウ素を含むデンドリマーが被覆することが好ましく、カーボンナノチューブの外側の少なくとも一部を、ホウ素を含むデンドリマーが被覆することがより好ましい。
本発明の形態のホウ素を含むデンドリマーを含むホウ素製剤は、比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、高い細胞内ホウ素濃度を示すことができ、好ましく使用することができる。
本発明の形態の複合体を含むホウ素製剤は、比較的簡便な方法で合成でき、低毒性であるにもかかわらず、細胞への高い取り込み能を有し、高い細胞内ホウ素濃度を示し、好ましく使用することができる。更に、近赤外光を吸収して蛍光を発する蛍光プローブとして、より好ましく使用することができる。
このようなホウ素製剤は、溶液、懸濁液、注射剤、カプセル、ゲル、軟膏、クリーム、エマルジョンなど、種々の剤形に調製することができる。つまり、生理食塩水、等張液や一般臨床で用いられる注射液用の添加剤と共に注射剤とすること、カプセル化しての内服薬やゲル化剤や皮膚科薬剤と混ぜて経皮的導入薬剤などとすることも可能である。
本発明の形態のホウ素製剤は、治療に有効な量を腫瘍細胞内に蓄積できる濃度および量で投与することが好ましい。
全ての溶媒及び試薬は、関東化学株式会社、東京化成工業株式会社又は和光純薬株式会社より購入したものを、使用した。特に記載しない場合、精製することなく、そのまま使用した。
分取用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、日本分析工業株式会社製(Japan Analytical Industry Co., Ltd.)の model LC-918V(製品名)を用い、カラムには、日本分析工業株式会社製 JAIGEL GS-320(製品名)(eluent : CH3OH)を使用した。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、日本電子株式会社製のJEOL AL300(製品名)を用いて測定した。TMSを、内部標準物質として用いた。
紫外可視近赤外吸収スペクトルは、島津製作所製のSHIMADZU UV-3150(製品名)を用いて測定した。
赤外線吸収スペクトル(IR)は、島津製作所製のSHIMADZU IR Affinity-1(製品名)を用い、KBr 法を使用して測定した。
ラマンスペクトルは、日本分光株式会社製のJASCO NRS-3100(製品名)を用い、488 nmのレーザー光を用いて測定した。
<化合物(ジオール) 2 の合成>
500 ml 三ツ口フラスコ中に、水素化ナトリウム(0.432 g, 18.0 mmol)、1,10-デカンジオール 1 (2.613 g, 15.0 mmol)及びDMF(50 ml)を加えて、その溶液を、80℃で3時間、加熱攪拌した。その後、DMF溶液に80℃で加熱攪拌しながら、1,10-ジブロモデカン (0.750 g, 2.50 mmol)のDMF(40 ml)の溶液を滴下して加えた。更に、アルゴン雰囲気下、混合物を、80℃で、24時間加熱攪拌した。
反応混合物に水を加えた後、溶媒を留去して、残留物を得た。残留物を、クロロホルムを用いて吸引ろ過し、エバポレーターでクロロホルムを留去して、固体を得た。固体を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, eluent: クロロホルム)を用いて精製して、化合物 2 (11,22-dioxadotriacontane-1,32-diol:11,22-ジオキサドトリアコンタン-1,32-ジオール)(0.220 g, 0.452 mmol, 収率18 %)を無色透明な結晶として得た。
化合物2 : mp 81 - 82 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.29 (s, 36H), 1.56 (t, J = 6.5 Hz, 12H), 3.39 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 3.64 (t, J = 6.0 Hz, 4H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 16.39 (t), 16.46 (t), 22.29 (t), 24.11 (t), 46.34(t), 46.77 (t), 51.09 (t), 61.50 (t), 61.59 (t); Anal. Calcd for C30H62O4; C, 74.02; H, 12.84; N, 0. Found: C, 74.11; H, 13.32; N, 0.
200 ml ナスフラスコ中に、上述の化合物 2 (0.100g, 0.205 mmol)、塩化チオニル (0.596 ml)、触媒量のDMF (0.128 ml)及びクロロホルム(20 ml)を加えて、その溶液を、室温で1日間攪拌した。塩化チオニルとDMF を留去して、残留物を得た。その後、残留物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル, eluent: クロロホルム)で精製して、化合物3 (11,22-dioxa-1,32-dichlorodotriacontane:11,22-ジオキサ-1,32-ジクロロドトリアコンタン)(0.876 g, 0.167 mmol, 収率81 %)を無色透明な固体として得た。
化合物 3 : mp 47 - 48 ℃; 1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 1.29 (s, 32H), 1.42 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 1.56 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 1.74 (m, 4H), 3.39 (t, J = 6.8 Hz, 8H), 3.53 (t, J = 6.8 Hz, 4H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.2 (t), 26.9 (t), 28.8 (t), 29.36 (t), 29.42 (t), 29.46 (t), 29.53 (t), 29.7 (t), 32.6 (t), 45.2 (t), 70.92 (t), 70.95 (t); Anal. Calcd for C30H60Cl2O2; C, 68.80; H, 11.55; N, 0. Found: C, 68.75; H, 11.86; N, 0.
200 ml ナスフラスコ中に、フタルイミドカリウム (0.213 g, 115 mmol)、上述の化合物 3 (0.100 g, 0.191 mmol)及びDMF(16.3 ml)を加えて、80℃で2日間加熱攪拌した。DMFを留去して、得られた残留物をクロロホルムで吸引ろ過し、エバポレーターでクロロホルムを留去して残留物を得た。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル, eluent : ヘキサン : クロロホルム = 1 : 5)で精製して、化合物 4 (1,32-diphtalimidyl-11,22-dioxadotriacontane:1,32-ジフタルイミジル-11,22-ジオキサドトリアコンタン)(0.111 g, 0.150 mmol, 収率78 %)を無色透明固体として得た。
化合物 4 : mp 82 - 83 ℃; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ1.27 (s, 36H), 1.55 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 1.66 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 3.38 (t, J = 6.6 Hz, 8H), 3.67 (t, J = 7.4Hz, 4H), 7.71 (AA’BB’, J = 8.4, 2.8 Hz, 8H), 7.84 (AA’BB’, J = 8.4, 2.8 Hz, 8H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.2 (t), 26.9 (t), 28.6 (t), 29.2 (t), 29.4 (t), 29.49 (t), 29.54 (t), 29.8 (t), 38.1 (t), 71.0 (t), 123.1(d), 132.2 (d), 133.2 (d), 168.5 (q); Anal. Calcd for C46H88N2O6; C, 74.16; H, 9.20; N, 3.76. Found: C, 73.75; H, 9.46; N, 3.68.
200 ml ナスフラスコ中に、上述の化合物 4 (0.111 g, 0.150 mmol)、ベンゼン (6 ml)、エタノール (6 ml)、及びヒドラジン一水和物 (0.6 ml, 0.012 mol)を加えて、80℃で3時間加熱還流した。溶媒を留去して、得られた混合物からクロロホルムで抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄して有機層を得た。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターでクロロホルムを留去し、真空乾燥して、化合物 5 (11,22-dioxa-1,32-dotriacontanediamine:11,22-ジオキサ-1,32-ドトリアコンタンジアミン)(0.051 g, 0.105 mmol, 収率 70.5 %) を無色透明固体として得た。
化合物 5 : 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.28 (s, 32H), 1.47(m, 4H), 1.56 (t, J = 6.5 Hz, 8H), 2.67 (t, J = 6.9 Hz 4H), 3.39 (t, J = 6.7 Hz, 8H); 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.2, 26.9, 29.5, 29.6, 29.8, 70.98; IR (KBr): 3327 (-NH2), 2930 (C-H), 2855 (C-H), 1114(C-O-C) cm-1.
100 ml ナスフラスコ中に、上述の化合物 5 (0.0511 g, 0.105 mmol) のメタノール(7.5 ml)溶液に、アクリル酸メチル(0.189 ml, 2.11 mmol)を滴下して加えた後、45 ℃で3日間加熱攪拌した。溶媒をエバポレーターで留去して、残留物を得た。得られた残留物をHPLC (eluent;メタノール) で精製し、化合物 6 (0.0612 g, 0.0738 mmol, 収率70 %) を無色透明な油状物質として得た。
化合物 6 : 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 1.27 (d, J = 6.6Hz, 36H), 1.40 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 1.56 (t, J = 6.5 Hz, 8H), 2.37-2.46 (m, 12H), 2.76 (t, J = 7.2 Hz, 8H), 3.39 (t, J = 6.8 Hz, 8H), 3.67 (s, 12H) ; 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 26.1 (t), 27.1 (t), 27.3 (t), 29.45 (t), 29.50 (t), 29.6 (t), 29.7 (t), 32.5 (t), 49.2 (t), 51.5 (q), 53.8 (t), 70.9 (t), 173.1 (s) ; Anal. Calcd for C46H88N2O10; C, 66.63; H, 10.70; N, 3.38. Found: C, 66.02; H, 10.58; N, 3.28.
200 ml ナスフラスコ中、過剰量のエチレンジアミン (9.69 ml, 0.145 mol) に、上述の化合物 6 (0.151 g, 0.182mmol) のメタノール分散液 (50 ml) を、氷浴で冷やしながら滴下して加えた後、室温で3日間攪拌した。メタノールとエチレンジアミンを減圧下で留去して、残留物を得た。残留物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えて、3800 rpm で20 分の遠心分離を行って、沈殿物を得た。沈殿物を乾燥して、化合物7 を無色透明な固体として得た。化合物 7 は精製することなく、そのまま、次の反応に用いた。
上述の化合物 7 (0.113 g, 0.12 mmol) をメタノール (2 ml) に溶解し、4-マレイミド酪酸 N-スクシンイミジル(0.202 g, 0.72 mmol)とトリエチルアミン (0.067 mL, 4.8 mmol)とクロロホルム(5 mL)を加えた。室温で12 時間攪拌した後、溶媒を留去して得られた残留物をメタノールで吸引濾過して、濾液をえた。ろ液をHPLCで精製し、化合物 8 を無色透明な油状物質として得た(0.062 g, 0.039 mmol, 収率32%)。
化合物 7 : 1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 1.27 (36H, d, J = 6.3 Hz), 1.45 (4H, br), 1.55 (8H, t, J = 6.3 Hz), 1.92 (8H, quin, J =6.8 Hz), 2.19 (8H, t, J = 7.2 Hz), 2.35 (8H, t, J = 5.9 Hz), 2.43 (8H, t, J = 7.4 Hz), 2.70 (8H, t, J =5.9 Hz), 3.30-3.40 (28H, m), 3.56 (8H, t, J = 6.8 Hz), 6.71 (8H, s). IR (KBr): 3302, 3089, 2928, 2855, 1709, 1693,1552 cm-1.
上述の化合物 8 (0.033 g, 0.021 mmol) をメタノール (3 ml) に溶解し、Na2 10B12H11SH (0.017 g, 0.084 mmol)を加えた。室温で3時間攪拌した後、溶媒を濃縮してデンドリマー9を無色透明な油状物質として得た(0.050g, 0.020 mmol)。
デンドリマー 9 : 1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 0.5-1.8 (11Η, m), 1.24 (36H, s), 1.55 (12H, br), 1.90 (8H, br), 2.26 (8H, br), 2.58 (12H, br), 3.04 (8H, br), 3.17 (8H, br), 3.42 (28H, t, J = 6.5 Hz), 3.51 (8H, t, J = 6.3 Hz), 3.89 (4H, br). IR (KBr): 3373, 2927, 2854, 2498, 1694, 1643, 1549 cm-1
デンドリマー9のホウ素含有率は、19.3重量%であった。
上述のデンドリマー9水溶液(10, 100 μM)を、SEM試料台(日新EM 株式会社PK29T Type-KM)に貼り付けたカバーガラス(MATHUNAMI)の上に乗せ、1 時間自然乾燥させた。試料をオスミウムコーター(株式会社真空デバイス HPC-1S型ホローカソードプラズマCVD)でオスミウムコーティングし、走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4800 型(製品名))を用いて上述のデンドリマー9の形状を観察した。加速電圧は5.0KV、倍率は、80000倍と40000倍であった。
上述のデンドリマー 9 (0.002 g, 0.82 μmol) をイオン交換水5 ml に溶かし、デンドリマー9の水溶液を調製した。次にカーボンナノチューブ(NanoIntegris社製のHiPco(商品名)チューブ) 1 mg をねじ口試験管に入れた後、上述のデンドリマー 9 水溶液(5 ml) を加えた。その後、超音波照射を4時間行い、3000G で30分間の遠心分離を行い、デンドリマー9とカーボンナノチューブとの(超分子)複合体10の黒色透明上澄み溶液を得た。
紫外可視近赤外スペクトルによると、カーボンナノチューブの光吸収とデンドリマー9の光吸収が足し合わされた吸収帯が観測された。このことは、カーボンナノチューブとデンドリマー9が複合化したことを示す。
ラマンスペクトルによると、新たなピークが観察されておらず、新たな化学結合の形成は認められない。
蛍光スペクトルによると、カーボンナノチューブが各々分散して存在し、1本のカーボンナノチューブのまわりにデンドリマーが物理吸着した複合体が形成されたことを示す特徴的なピークが認められた。
原子間力顕微鏡(AFM)像によると、複合体10の繊維状構造が認められ(左図)、その高さプロファイルから、太さは、1.5nm程度であると認められた。AFMとして、セイコーインスツルメント社製のSPA 400を使用した。
上述のデンドリマー9と複合体10の毒性は、WST-1アッセイを用いて評価した。U87ΔEGFR細胞を、96wellプレート(BD)中で、24時間培養(1×103 cells/well)した。その培養液を、デンドリマー9又は複合体10を含む同量の培養液で置換した(終濃度 1, 10, 50, 100, 250μM)。Controlとして、10 %(v/v)ウシ胎児血清(GE Healthcare, Fairfield CA, USA)、100 単位/mL ペニシリン-100μg/mL ストレプトマイシン (和光純薬工業) を含むDulbecco’s Modified Eagle 培地 (DMEM,和光純薬工業)を使用した。24, 48, 72 時間後、Cell Proliferation Reagent WST-1 (Roche, Basel, Switzerland) を 10 μL/well 加えた。37 ℃で1 時間インキュベート後、マイクロプレートリーダー (Vient XS, DS ファーマバイオメディカル, 大阪) で、各サンプルの吸光度 (A450 nm - 690 nm) を測定した。
従って、デンドリマー9と、複合体10の投与による細胞毒性を認めなかった。
悪性脳腫瘍細胞株U87ΔEGFR をφ35 mm-ディッシュ中 (BD) で24時間培養(1×105 cells/dish)した。その培養液を、上述のデンドリマー9又は複合体10を含む同量の培養液で置換した (終濃度5, 50, 250μM)。設定した時間(6, 12, 24 時間)経過後、培養液を除去し細胞をPBSで1回洗浄した。トリプシン(0.25w/v% トリプシン-1mmol/l EDTA・4Na 溶液、和光純薬工業)を300 μL/well添加し、37℃で2分インキュベートした。PBSを700 μL/well 加え、回収した後、PBS を400 μL/well を加え、洗いこみ回収した。マイクロ冷却遠心機(株式会社久保田製作所)で1500rpm、10分間遠心分離し、上清を吸引した。61 %(v/v) 硝酸 (HNO3, boron determination grade, 和光純薬工業) を300 μL 加え、室温で30分間溶解させた。水を700 μL 加え、100℃で2 時間加熱した。得られたサンプルに含まれる10B 量、すなわち、細胞内10B 濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置 (ICP-AES, VISTA-PRO, セイコーインスツル, 千葉) で測定した。
更に、デンドリマー9の250μM群は、投与から、6時間経過後に770.3263(ng/106 細胞), (ppm)、12時間経過後に1229.552(ng/106 細胞), (ppm)、24時間経過後に2182.93 (ng/106 細胞), (ppm)であり、時間に依存性を示した。
また、複合体10の250μM群は、デンドリマー9の250μM群と比較して、高い細胞内導入効果を示した。例えば、複合体10の250μM群は、投与から、24時間経過後に6411.329 (ng/ 106 細胞), (ppm) という、高い細胞内導入効果を示した。
尚、特許文献1の実験例2及び図2に示された細胞取り込み試験でのホウ素濃度は、約1ppmであることを考慮すると、本発明に係る形態のデンドリマー9及び複合体10の細胞内導入効果は、著しく高いことが示された。
Claims (6)
- コア部、樹木状分岐部及び末端部を含むデンドリマーであって、
コア部は、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含み、
樹木状分岐部は、アミドアミン構造を含み、
末端部は、ウンデカヒドロドデカボレート構造を含む、デンドリマー。 - コア部は、1〜49の酸素が挿入された4〜100の炭素原子を含む2価脂肪族炭化水素基を含む、請求項1に記載のデンドリマー。
- コア部は、下記式で示す構造を有する、少なくとも1つの酸素が挿入された2価脂肪族炭化水素基を含む、請求項1に記載のデンドリマー。
- 樹木状分岐部は、下記式で示す構造を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のデンドリマー。
−N[R2−CONH−R2−]2
[ここで、R2は、炭素数2〜12の2価の脂肪族炭化水素基であり、R2は、各々同じでも異なっていてもよい。] - 請求項1〜4のいずれかに記載のデンドリマーとカーボンナノチューブとの複合体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のデンドリマー及び/又は請求項5に記載の複合体を含むホウ素製剤。
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