JP2018144457A - 熱硬化性樹脂成形方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この真空注型法においては、例えば真空槽内において、成形型のキャビティ内に熱硬化性樹脂材料を充填する。次いで、真空槽内を所定の温度に維持することにより、成形型のキャビティ内に熱硬化性樹脂材料を硬化させる。そして、成形型を取り外すことによって、熱硬化性樹脂材料が硬化されてなる成形品が得られる。
成形型のキャビティ内に充填された熱可塑性樹脂に、当該成形型を介して赤外線やマイクロ波を照射することによって、熱可塑性樹脂を加熱・溶融し、その後、キャビティ内の熱可塑性樹脂を冷却・固化する方法が提案されている(特許文献2参照。)。
しかし、熱可塑性樹脂の成形は樹脂の熱溶融と冷却固化の物理反応であるのに対して、熱硬化性樹脂は、通常、熱硬化性樹脂の原料モノマー等と硬化触媒を混合して硬化させる化学反応を伴うものであるため、発生する反応熱や反応速度の制御が困難であり、従来の成型法では成形体を製造することが困難であった。
さらに、熱硬化性樹脂材料が硬化する際には、硬化反応によって熱硬化性樹脂材料自体が発熱する。このため、キャビティ内に充填された熱硬化性樹脂材料は、キャビティ内の中央に位置する部分の温度が、キャビティの内壁面近傍に位置する部分の温度よりも高くなる。その結果、キャビティ内の中央に位置する部分の硬化反応が促進されることにより、キャビティ内の中央に位置する部分とキャビティの内壁面近傍に位置する部分との間に硬化収縮に差が生じるため、寸法精度の高い成形品を得ることが困難である。
前記成形型に前記特定電磁波を照射する工程と
を有することを特徴とする。
また、前記成形型を構成する材料には、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛よりなる群から選ばれた少なくとも1種の物質が含有されていることが好ましい。
また、前記成形型におけるキャビティの内壁面の少なくとも一部に、前記特定電磁波を吸収する性能を有する表面層が形成されていることが好ましい。
また、前記表面層は、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛よりなる群から選ばれた少なくとも1種の物質が含有されてなることが好ましい。
また、前記特定電磁波は、0.01〜100mの波長領域から選択されたマイクロ波または高周波であることが好ましい。
また、前記特定電磁波は、0.78〜2μmの波長領域から選択された赤外線であることが好ましい。
[成形装置]
図1は、本発明の熱硬化性樹脂成形方法を実施するための成形装置の一例における構成を、成形型を横方向に切断して示す説明図である。図2は、本発明の熱硬化性樹脂成形方法を実施するための成形装置の一例における構成を、成形型を縦方向に切断して示す説明図である。この成形装置1は、内部に熱硬化性樹脂材料6が充填されるキャビティ20が形成された成形型2と、この成形型2に、0.78〜2μmおよび0.01〜100mの波長領域から選択された特定電磁波Xを照射する電磁波照射手段4と、成形型2におけるキャビティ内の真空引きを行う真空手段5とを有する。
図3は、図1および図2に示す成形装置の成形型によって得られる成形品の構成を示す説明用断面図である。
この成形品7は、平坦な表面701および裏面702を有する板状の本体部71と、この本体部71の周縁全周において、その裏面702から略垂直にまたは傾斜して起立する立壁部72とを有する。図3において、73は、後述する成形型2における吸引口271によって成形された成形部分であり、この成形部分73を切断することによって成形品7とされる。
成形型2は、電磁波照射手段4からの特定電磁波Xに対して透過性を有するものである。成形型2を構成する材料としては、ゴム材料、樹脂材料、セラミックス材料などを用いることができ、これらの中では、ゴム材料が好ましく、特にシリコーンゴム、フッ素ゴムが好ましい。成形型2を構成する材料としてゴム材料を用いることにより、成形型2が弾性変形するため、キャビティの容積を縮小可能にすることができ、また、成形型2の設計の自由度が向上し、更に、熱硬化性樹脂材料の成形精度の向上を図ることができる。
一方の成形型部2Aにおける他方の成形型部2Bに対向する面とは反対側の外側面には、バックアッププレート31が着脱可能に重ねられて配置されている。
また、他方の成形型部2Bにおけるキャビティ20の内壁面の少なくとも一部には、特定電磁波Xを吸収する性能を有する表面層3が形成されている。
この例では、一方の成形型部2Aにおける被嵌入凹部20Aは、環状嵌入凹部22および環状外周凸部23によって形成されている。また、他方側成形型部2Bにおける嵌入凸部20Bは、環状内周凸部26によって形成されている。
他方の成形型部2Bは、一方の成形型部2Aにおけるキャビティ形成凸部21を収容して成形品7の表面701を成形するキャビティ形成凹部25と、キャビティ形成凹部25の周辺全周において突出して形成された環状内周凸部26とを有する。この環状内周凸部26は、一方の成形型部2Aにおける環状外周凸部23の内周面231に嵌入されて、一方の成形型部2Aにおける環状嵌入凹部22内に進入した状態とされている。
具体的には、真空経路27は、一方の成形型部2Aの外側面から貫通してキャビティ形成凸部21の先端面211に開口する吸引口271と、それぞれ一方の成形型部2Aの外側面から貫通して環状嵌入凹部22の底面221に開口する複数の吸引ゲート272とを有する。図示の例では、吸引口271は、熱硬化性樹脂材料6をキャビティ20内へ投入するための投入口の機能も兼ねている。また、吸引口271から余剰の熱可塑性樹脂6を溢れ出させることもできる。
この例の表面層2は、他方の成形型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面に一体的に形成されている。表面層3は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴムなどのゴム材料よりなる基材中に誘電性付与物質が含有されて構成されている。
表面層3の厚みは、例えば0.1〜10mmであり、好ましくは0.5〜8mmとし、さらに好ましくは2〜7mmである。
誘電性付与物質の含有率が5体積%未満である場合には、特定電磁波Xの吸収能力が十分ではない。また、この場合には、特定電磁波Xを照射したときの表面層3の発熱効率が低下し、短時間での加熱が困難となる。また、キャビティ20内の熱硬化性樹脂材料6において局所的な加熱が生じやすくなる。一方、誘電性付与物質の含有率が90体積%を超える場合には、表面層3を構成する基材との混合が困難となり、表面層3の機械的強度が低下する。また、この場合には、特定電磁波Xを照射したときに、表面層3の内部や表面において、スパークが発生しやすくなることがある。
一方の成形型部2Aは、以下のようにして製造することができる。
先ず、図5に示すように、成形すべき成形品と同一の形状を有する母型8を用意する。母型8は、例えば三次元立体造形法により作製することができる。
この母型8と、被嵌入凹部20Aを成形するための補助型81とを型取り枠82内に配置する。その後、図6に示すように、型取り枠82内に、例えば液状のゴム材料よりなる成形型部形成材料209を充填する。次いで、成形型部形成材料209が硬化するまで冷却維持することにより、一方の成形型部2Aが形成される。その後、母型8および補助型81を一方の成形型部2Aから取り出す。
このようにして、一方の成形型部2Aが得られる。
先ず、図7に示すように、成形すべき成形品と同一の形状を有する母型8の一面に、例えば液状のゴム材料中に粒子状誘電性付与が含有されてなる表面層形成材料30を均一に塗布する。その後、図8に示すように、表面層形成材料30が塗布された母型8と、嵌入凸部20Bを成形するための補助型81とを、型取り枠82内に配置する。
このようして、表面層3が形成された他方の成形型部2Bが得られる。
先ず、図10に示すように、成形すべき成形品と同一の形状を有する母型8と、嵌入凸部20Bを成形するための補助型81とを型取り枠82内に配置し、型取り枠82内に成形型部形成材料209を充填する。その後、図11に示すように、成形型部形成材料209が、完全硬化する前の所定の半硬化状態になったときに、母型8および補助型81を、成形型部形成材料209から取り出す。
次いで、母型8の表面、および母型8の表面形状が転写された半硬化状態の成形型部形成材料209の内表面の少なくとも一方に対して、例えば液状のゴム材料中に粒子状誘電性付与が含有されてなる表面層形成材料30を均一に塗布する。そして、半硬化状態の成形型部形成材料209の内部に、母型8を再び配置する。その後、表面層形成材料30および成形型部形成材料209が硬化するまで冷却維持することにより、表面層形成材料30によって、母型8の表面形状を転写した表面層3が形成されると共に、成形型部形成材料209によって他方の成形型部2Bが表面層3と一体的に形成される。そして、母型8および補助型81を他方の成形型部2Bから再び取り出す。
このようにして、表面層3が形成された他方の成形型部2Bが得られる。
図示の例の電磁波照射手段4は、他方の成形型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25の底面251と平行に形成された外側面に対向して配置されている。
電磁波照射手段4は、0.78〜2μmおよび0.01〜100mの波長領域から選択された特定電磁波Xを照射するものである。このような電磁波照射手段4としては、0.78〜2μmの波長領域の赤外線を照射するもの、0.01〜1mの波長領域のマイクロ波を照射するもの、1〜100mの波長領域の高周波を照射するものを用いることができる。ここで、マイクロ波および高周波を周波数で示すと、マイクロ波が約30GHz〜約300MHzであり、高周波が約300MHz〜約3MHzである。
特定電磁波Xは、用いられる熱硬化性樹脂材料6の種類、目的とする成形品7の形状、成形型2の材質や形状、表面層3の材質、厚み、添加する無機化合物粉体の種類等を考慮して、0.78〜2μmおよび0.01〜100mの波長領域から任意に選択される。
マイクロ波または高周波を照射する電磁波照射手段4としては、一般的に、電磁漏洩による法令上の規制により、13.56MHz(約22.1m)、27.12MHz(約11.1m)、40.18MHz(7.46m)、2450MHz(約0.122m)付近の周波数の電磁波を照射するものが好ましく用いられる。特に、成形品7の形状の自由度が高いこと、スパークの発生が少ないこと、電磁漏洩の防止が容易であることなどの理由により、1000MHz(波長:0.3m)〜10GHz(波長:0.03m)のマイクロ波を照射する電磁波照射手段4が好ましく、2450MHz付近の周波数の電磁波を照射するものがより好ましい。
また、電磁波照射手段4としては、定格出力が100〜15000Wのものを用いることができ、定格出力が500〜3000Wのものを用いることがより好ましい。
真空手段5は、真空ポンプよりなり、熱硬化性樹脂6が充填されたキャビティ20内の真空引きを行い、このキャビティ20内を真空状態にするよう構成されている。成形型2は、真空手段5によって、キャビティ20内の圧力が外部の圧力よりも低くなり、一対の成形型部2A,2Bの間に吸引力(型締め力)を発生させることにより、一対の成形型部2A,2Bが互いに接近するよう構成されている。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂材料は、特定電磁波によって加熱されることによって硬化される熱硬化性樹脂を含むものである。熱硬化性樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
また、熱硬化性樹脂材料としては、脱泡処理されたものを用いることが好ましい。
また、本発明に用いられる硬化性樹脂材料は、一般に熱硬化性樹脂材料として用いられるものに限定されず、放射線硬化性樹脂材料などの任意の硬化性樹脂材料とすることができる。
本発明の熱硬化性樹脂成形方法は、上記の成形装置1を用いて以下のようにして実施される。
先ず、成形型2の一方の成形型部2Aからバックアッププレート31を取り外すと共に、一方の成形型部2Aの周縁部と他方の成形型部2Bの周縁部との間に間隙29が形成された状態とされる。このとき、環状嵌入凹部22の底面221と環状内周凸部26の先端面261との間には、キャビティ20に連通する余剰空間203が形成されている。そして、吸引口271から熱硬化性材料6を注入することにより、成形型2におけるキャビティ20内に熱硬化性樹脂材料6が充填される。
次いで、一方の成形型部2Aにバックアッププレート31を取り付け、この状態で、真空手段5を作動させることによってキャビィティ20内の真空引きを行う。これにより、一対の成形型部2A,2Bの間に吸引力(型締め力)Fが発生し、一方の成形型部2Aと他方の成形型部2Bとが互いに接近する結果、図12に示すように、一方の成形型部2A周縁部と他方の成形型部2Bの周縁部とが互いに接する状態となると共に、キャビティ20の容積が縮小される。
そして、真空手段5を作動させながら、電磁波照射手段4によって成形型2に特定電磁波Xを照射する。これにより、成形型2内に充填された熱硬化性樹脂材料6が加熱されて硬化し、以て、熱硬化性樹脂材料が硬化されてなる成形品7が得られる。
例えば表面層3は、図13に示すように、一方の成形型部2Aの内壁面に設けられていても、図14に示すように、一方の成形型部2Aおよび他方の成形型部2Bの各々の内壁面に設けられていてもよい。
また、表面層3を設ける代わりに、一方の成形型部2Aおよび他方の成形型部2Bのいずかにまたは両方を、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛よりなる群から選ばれた少なくとも1種の誘電性付与物質を含有する材料によって構成することもできる。この場合には、一方の成形型部2Aまたは他方の成形型部2Bにける誘電性付与物質の含有率は、成形型部全体に対して、通常5〜90体積%であり、好ましくは10〜70体積%、より好ましくは13〜50体積%、更に好ましくは15〜35体積%である。
熱硬化性である2液型エポキシ樹脂(タミヤ社製「TAMIYA CLEAR EPOXY RESIN」)をメーカー処方に従って2液を混合し、室温で2分間放置してからシリコーンゴム製の成形型(内面寸法は、30×30×2mmの直方形)に充填し、ディーメック社製マイクロ波成形機「Amolsys M150」を用いてマイクロ波を照射した。成形型の外面温度はマイクロ波照射前が22.4℃であり、毎分10℃で100℃になるまで昇温して100℃で5分間維持してからマイクロ波照射を止め、成形機内で室温まで自然冷却した。成形型を開けてエポキシ樹脂を取り出したところ、成形型内面寸法に硬化した成形体が得られていた。
マイクロ波照射による昇温速度を毎分5℃にしたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂の成形体を製造した。マイクロ波照射前の成形型の外面温度は21.8℃であった。成形型を開けてエポキシ樹脂を取り出したところ、成形型内面寸法に硬化した成形体が得られていた。
熱硬化性である2液型エポキシ樹脂に替えて2液型ウレタン樹脂(日新レジン社製「Craft Resin NX 透明タイプ」)を使用したことおよびマイクロ波照射による温度条件を毎分5℃で昇温して50℃になるまで昇温して50℃で5分間維持したこと以外は、実施例1と同様にしてウレタン樹脂の成形体を製造した。マイクロ波照射前の成形型の外面温度は25.7℃であった。成形型を開けてエポキシ樹脂を取り出したところ、成形型内面寸法に硬化した成形体が得られていた。
2 成形型
2A,2B 成形型部
3 表面層
4 電磁波照射手段
5 真空手段
6 熱硬化性樹脂材料
7 成形品
8 母型
20 キャビティ
20A 被嵌入凹部
20B 嵌入凸部
21 キャビティ形成凸部
22 環状嵌入凹部
23 環状外周凸部
25 キャビティ形成凹部
26 環状内周凸部
27 真空経路
29 間隙
30 表面層形成材料
31 バックアッププレート
32 真空引き経路
71 本体部
72 立壁部
81 補助型
82 型取り枠
203 余剰空間
209 成形型部形成材料
211 キャビティ形成凸部の先端面
221 環状嵌入凹部の底面
231 環状外周凸部の内周面
251 キャビティ形成凹部の底面
261 環状内周凸部の先端面
263 環状内周凸部の外周面
271 吸引口
272 吸引ゲート
701 成形品の表面
702 成形品の裏面
Claims (7)
- 0.78〜2μmおよび0.01〜100mの波長領域から選択された特定電磁波に対して透過性を有する成形型のキャビティ内に、熱硬化性樹脂材料を充填する工程と、
前記成形型に前記特定電磁波を照射する工程と
を有することを特徴とする熱硬化性樹脂成形方法。 - 前記成形型がシリコーンゴムまたはフッ素ゴムよりなることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記成形型を構成する材料には、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛よりなる群から選ばれた少なくとも1種の物質が含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記成形型におけるキャビティの内壁面の少なくとも一部に、前記特定電磁波を吸収する性能を有する表面層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記表面層は、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラックおよび黒鉛よりなる群から選ばれた少なくとも1種の物質が含有されてなることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記特定電磁波は、0.01〜100mの波長領域から選択されたマイクロ波または高周波であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形方法。
- 前記特定電磁波は、0.78〜2μmの波長領域から選択された赤外線であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂成形方法。
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