JP2018143998A - スケールの生成を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機懸濁物質を1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上と高濃度で含む水の処理系において、できるだけスケール防止剤の使用量を低減した状態で、スケールの発生を安定して効果的に抑制することを達成すること。【解決手段】被処理水に、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤の少なくともいずれかを添加して処理する第1の処理工程と、該第1の処理工程後に行う、高分子凝集剤を添加して処理する第2の処理工程と、該第2の処理工程後に行う固液分離工程とを有する水系の懸濁物質の除去処理方法において、前記第2の処理工程で処理する被処理水中に1000mg/L以上の無機懸濁物質が存在しており、前記第2の処理工程における高分子凝集剤の添加と同時に、又は、前記第2の処理工程と前記固液分離工程の間に、スケール防止剤を添加するスケールの生成抑制工程を設けたスケールの生成を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法。【選択図】図1

Description

本発明は、スケールの生成を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法に関し、詳しくは、無機懸濁物質を多く含む廃水等の水系において、少ない量のスケール防止剤の使用であるにもかかわらず、スケールの発生を効果的に抑制し、安定した運転を可能にした廃水の懸濁物質の除去処理技術に関する。
従来より、工業用等の水系において、炭酸カルシウムや硫酸カルシウムなどのカルシウムスケールが発生し、管渠に固着するという問題があった。これに対して、炭酸カルシウムや硫酸カルシウムなどのカルシウムスケールの発生防止に、ホスホン酸類や、各種の低分子ポリマーが効果的であることは既に知られており、スケール防止剤として使用されている。例えば、これらのスケール防止剤を用いて、蒸気発生用ボイラーのような水循環系や、冷却水のような循環系の高濃縮水中におけるスケール等の沈着物の発生を抑制する方法が提案されている(特許文献1〜4参照)。しかし、これらの従来技術は、懸濁物質を含まないか、含んでいても極めて低濃度の水系においての技術であるといえ、懸濁物質が存在する水系に、上記技術をそのまま流用したとしても、スケール防止剤を高濃度で添加しなければスケール発生の防止効果を得ることができなかった。
これに対し、懸濁物質の存在量が多い、製紙工場の各工程からの水系や、或いは、無機懸濁物質が共存する鉄鋼集塵水系などで、スケール防止剤の効果が安定的に得られる方法についての提案がされている(特許文献5参照)。具体的には、この技術では、炭酸カルシウムを主体とする懸濁物質を100mg/L以上含有する水系において、ホスホン酸及び/又はホスホン酸塩に、低分子水溶性ポリマーを併用したことで、ホスホン酸(塩)の消耗が著しく減少し、懸濁物質が上記した高い濃度で含まれている水系においても、安定したスケールの防止効果が得られるとされている。
特開昭50−91570号公報 特公昭60−17828号公報 特公昭57−13358号公報 特公昭61−52760号公報 特許第5435080号公報
しかしながら、本発明者らが、上記した特許文献5に記載の技術を、該技術で例示しているよりも格段に高濃度で無機懸濁物質を含む廃水に適用したところ、顕著なスケール抑制効果は認められず、スケール防止剤をより高濃度で添加しても、大きなスケール発生の抑制効果は得られないとの知見を得た。すなわち、無機懸濁物質の量が多過ぎると、低分子水溶性ポリマーを併用したとしても、スケール防止剤の機能が十分に発揮されないことがわかった。
また、本発明者らは、無機懸濁物質を多く含む廃水の処理系において、スケールの生成を効果的に抑制する目的でスケール防止剤を高濃度で使用した場合は、そのことに起因して、下記の工業上利用する上での重大な課題を生じるとの認識をもった。すなわち、スケール防止剤を高濃度で使用することは、工業上の利用において、下記の大きな課題を生じる。まず、薬剤にかかる費用が高額になり、ランニングコストが増大する。また、それ以外に、ホスホン酸類を多量に使用することは、処理水のリン濃度が上昇してしまうという別の課題を生じ、多量の低分子ポリマーを使用することはCODの上昇を招き、この点でも処理水の水質に与える影響が懸念される。
一方、無機懸濁物質を1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上と多く含む廃水も、懸濁物質にカルシウム塩などを含むスケール生成傾向を示す廃水も多く、処理装置にスケール等の沈着物が固着し、これによる処理効率の低下や、装置寿命の劣化の問題があり、スケールの発生を安定して効果的に抑制する技術の開発は、工業上、極めて重要である。
上記した無機懸濁物質を多く含む廃水では、懸濁物質を沈降分離除去することが行われており、この場合、無機系の凝集剤(無機凝集剤)と高分子凝集剤を添加し凝集フロックを生成させ、沈降を促進させて固液分離する方法が一般的である。また、水系に含まれる問題となる成分を除去するために、無機系の処理剤を添加して沈降分離することが行われている。上記に挙げたような無機懸濁物質を多く含む処理系では、スケールの生成が避け難く、流路などがスケールによって詰まるといった不具合を生じており、運転を頻繁に停止して、スケールの除去を定期的に行う必要や、運転を長期間停止して、スケールが強固に付着した装置を新しいものに交換するといった作業が必要となっていた。
この問題に対して、無機懸濁物質を多く含む処理系で、スケール防止剤を使用することが行われている。従来方法では、スケールの固着が多くみられる箇所を考慮して、スケール防止剤を、懸濁物質を沈殿池にて沈殿除去した後のろ過機の入口、或いは、固液分離した上澄みを溜める処理水槽に添加していた。この際、スケールの固着の問題に対して、明らかなスケールの生成抑制効果を得るために使用されるスケール防止剤の量は多く、そのために多くの費用がかかっている。先述したように、多量のスケール防止剤の使用は、処理水の水質への影響を伴い、場合によっては処理水に対して二次処理を行う必要を生じ、工業上、好ましいものでなく、スケール防止剤の使用量の低減が望まれる。
したがって、本発明の目的は、無機懸濁物質を1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上と高濃度で含む水の処理系に際して、できるだけスケール防止剤の使用量を低減した状態で、スケールの発生を安定して効果的に抑制することを達成することにある。また、本発明の目的は、水の処理系において、効果的にスケールの発生を抑制することで、スケールの発生に伴い必要になっていた、定期的に行う必要があるスケール除去の頻度の低減、使用量を低減することでスケール防止剤にかかる費用の低減、スケール防止剤を使用したことによる処理水への影響の低減、を実現した、スケールの発生を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、被処理水に、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤の少なくともいずれかを添加して処理する第1の処理工程と、該第1の処理工程後に行う、高分子凝集剤を添加して処理する第2の処理工程と、該第2の処理工程後に行う固液分離工程とを有する水系の懸濁物質の除去処理方法において、前記第2の処理工程で処理する被処理水中に1000mg/L以上の無機懸濁物質が存在しており、前記第2の処理工程における高分子凝集剤の添加と同時に、又は、前記第2の処理工程と前記固液分離工程の間に、スケール防止剤を添加するスケールの生成抑制工程を設けたことを特徴とするスケールの生成を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法を提供する。
本発明の水系の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。すなわち、前記無機系の処理剤が、消石灰、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム又は活性炭の少なくともいずれかであること;前記無機系の凝集剤が、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、塩化第二鉄、硫酸第二鉄及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選ばれる少なくともいずれかであること;前記スケール防止剤が、ホスホン酸、ホスホン酸塩及び低分子水溶性ポリマーからなる群から選ばれる少なくともいずれかであること;前記無機懸濁物質を含有する被処理水が、鉄鋼業における酸洗廃水、転炉の集塵廃水、石炭火力発電所における脱硫後の廃水、酸性鉱山廃水及びフッ酸洗浄廃水からなる群から選ばれるいずれかであること;前記第2の処理工程で処理する被処理水が、カルシウム濃度が500mg/L以上であること;が挙げられる。
本発明によれば、無機懸濁物質を1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上と高濃度で含む水の処理系において、従来に比べてスケール防止剤の使用量を格段に低減できたにもかかわらず、スケールの発生を安定して効果的に抑制することが達成され、その結果、スケールの発生に伴い必要になっていた、定期的に行うスケール除去の頻度の低減、スケール防止剤を使用したことによる処理水への影響の低減、スケール防止剤にかかる費用の低減が実現された、スケールの生成を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法の提供が可能になる。
本発明の水系の懸濁物質の除去処理方法を説明するためのフロー図である。 本発明の実施例におけるスケールの生成状態と、従来行われている比較例におけるスケールの生成状態との比較である。
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。まず、発明の経緯について説明する。
例えば、鉄鋼業における酸洗廃水や、転炉の集塵廃水や、石炭火力発電所における脱硫後に発生する廃水や、鉱山で発生する酸性鉱山廃水や、フッ酸洗浄廃水などでは、様々な種類の無機懸濁物質が、1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上と高濃度で含有されており、放流するにあたっては、無機懸濁物質を除去処理することが必要になっている。先述したように、その処理工程では、一般的に、無機懸濁物質を効率よく沈降分離させるために、無機凝集剤と高分子凝集剤とが用いられている。上記した廃水は、スケール生成傾向に直結するカルシウム濃度が高いものや、また、カルシウム以外の沈着し、固着し易い成分を含むものも多く、上記した方法で行う懸濁物質の除去処理においても、カルシウムスケール等のスケール付着は重大な問題となっている。
上記した廃水に代表される産業用に使用されている水中には、砂や金属等の無機懸濁物質だけでなく、放流するにあたって厳しく規制されている成分が含有されている場合があり、その際には、無機系の処理剤を添加して無害化し、これらの成分を沈降分離して、他の無機懸濁物質とともに除去処理することが行われている。その際にも凝集剤が使用されている。無機系の処理剤を処理系に添加する一例としては、例えば、廃水中のフッ素成分を沈降分離除去する目的で、消石灰(Ca(OH)2)などのCa塩を添加することが行われており、その処理系は、高いカルシウムスケール生成傾向を示すものになる。また、本発明者らの検討によれば、上記した廃水等の処理系に、無機懸濁物質になる粉末の活性炭を添加することも、処理後の水質を向上させるための有効な手段となり得る。
本発明者らは、無機懸濁物質を1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上と高濃度で含む水の処理系において重要な問題となっている、スケールの発生の抑制について鋭意検討した結果、スケール防止剤の添加を特定のタイミングで行うという極めて簡単な手段によって、スケール防止剤の使用量を格段に低減でき、しかも、スケールの発生を安定して抑制できるようになることを見出して本発明に至った。
本発明者らは、従来の一般的な、無機凝集剤と高分子凝集剤とを用いて行う懸濁物質の除去処理方法では、スケールの固着状況に鑑みて、スケール防止剤の添加を、懸濁物質を沈殿池にて沈殿除去した後のろ過機の入口、或いは、処理水槽の、沈殿池より後段の設備で行っていたのに対し、沈殿池の前段の、凝集剤を添加して凝集フロックを生成させるための凝集槽や、沈殿池へ至る配管又は流路や、沈殿池の越流壁などにも生じている点に着目し、この点に疑問をもった。また、処理工程で、問題となる成分と反応させて、これらの成分を沈降分離させるために添加されている無機系の処理剤である、溶解性が劣るCa塩や、粉末活性炭自体および無機系の処理剤の添加による生成物も無機懸濁物質になり、これらのものもスケールの生成やスケールの固着に関与しているとの認識をもった。
本発明者らの検討によれば、例えば、廃水中のフッ素成分を沈降沈殿させて除去する目的で、消石灰を添加した場合に、硫酸濃度が高い系にあっては、硫酸カルシウム(石膏)などのカルシウムスケールの発生が著しくなる。そして、この場合は、固着したスケールの除去にかかる労力の増大や、スケールの除去を行うための運転停止によって生じる処理効率の低下、薬剤にかかるコストの増大、多量なスケール防止剤の使用によって生じる処理液への影響が大きくなる。このため、円滑で安定した効率のよい水系の懸濁物質の除去処理を達成するには、スケール防止剤で、スケールの生成を効率よく安定して効果的に抑制する技術の開発が急務である。
より具体的には、例えば、カルシウム濃度が500mg/L以上の水の処理系にあっては、石膏や炭酸カルシウム等のスケールの生成が著しく、これらのスケールが処理系に固着し、このことが、円滑で安定した無機懸濁物質の除去処理を行う大きな弊害となっていた。この問題を解決するためには、先述したように、処理水への影響を及ぼすことなく、より少ない量のスケール防止剤の使用で、しかも処理装置の変更を伴うことなく、より効果的に、スケールの生成を抑制する技術の開発が望まれる。
本発明者らは、上記したスケールの発生が著しい、カルシウム濃度が500mg/L以上の水系に対して、無機凝集剤と高分子凝集剤とを使用して一般的に行われている懸濁物質の除去処理方法において、スケール防止剤を使用してスケールの発生を効果的に抑制することについて鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、懸濁物質の除去処理フロー中において、スケール防止剤を添加するタイミングによってスケールの固着状態が全く異なることを見出した。そして、従来よりもスケール防止剤の使用量を低減したにもかかわらず、スケールの生成を抑制できる構成を見出して本発明に至った。
本発明者らは、図1に示したような、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤の少なくともいずれかを添加して処理する第1の処理工程と、該第1の処理工程後に行う、高分子凝集剤を添加して処理する第2の処理工程と、該第2の処理工程後に行う固液分離工程とを有する水系の懸濁物質の除去処理方法において、第1の処理工程の後であって、高分子凝集剤を添加して行う第2の処理工程で、高分子凝集剤の添加と同時に、或いは、高分子凝集剤を添加した直後などの、第2の処理工程とその後の固液分離工程との間のいずれかのタイミングで、スケール防止剤を添加した場合に、スケール生成が効果的に安定して抑制できることを見出した。スケール生成の抑制効果は、図2に示したように、従来の方法に比べて、格段に顕著である。
すなわち、このようにスケール防止剤の添加を本発明で規定したタイミングで行う構成にしただけで、従来よりも少ないスケール防止剤の使用量で、従来の方法で処理した場合では、スケール防止剤の使用量を多くしたとしても達成できない程度に、スケール生成が効果的に抑制できることがわかった(図2参照)。具体的には、本発明の構成によれば、スケールの生成が認められた、凝集剤を添加して凝集フロックを生成させるための凝集槽を有する第2の工程の槽や樋や、固液分離工程前の沈殿池に至る配管や、固液分離工程を行う沈殿池の越流壁など、処理システム全体において、スケールの生成が効果的に抑制できることが確認された。従来の方法で目的としていた、固液分離工程を行う沈殿池よりも後段の設備におけるスケールの固着は、より効果的に抑制された。
すなわち、本発明者らは、高濃度の無機懸濁物質の存在下であっても、スケール防止剤を、高分子凝集剤の添加時或いは添加直後に添加するという極めて簡単な操作だけで、スケール防止剤の機能が発揮されるという新たな知見を得、しかも、その場合における発揮されるスケール防止剤の機能の程度は、従来の、スケール防止剤の使用におけるものと比較して、格段に優れたものになることを見出した。この点は、図2に示されており、実施例では、少ない量のスケール防止剤の添加で、比較例である従来の添加位置では、スケール防止剤の添加量を、実施例の場合の10倍以上に増加させたとしても達成できない程度に、スケールの発生を抑制することができる。
本発明で使用するスケール防止剤は、ホスホン酸やホスホン酸塩等のホスホン酸類や、各種の低分子ポリマーなど、従来公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、ホスホン酸類としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)及びその塩、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)及びその塩、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)及びその塩、ヘキサメチレン−N,N,N,N−ジアミン−テトラメチレンホスホン酸(HMDTMP)及びその塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。また、低分子水溶性ポリマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)、マレイン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーが重合又は共重合してなる、平均分子量が1000〜100000のホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
本発明者らの検討によれば、上記に列挙したようなスケール防止剤を添加する場合、ホスホン酸類と、各種の低分子ポリマーは、それぞれを個別に使用することで、少ない量のスケール防止剤によって本発明の顕著な効果が得られる。勿論、ホスホン酸類と、低分子ポリマーとを併用してもよいが、先述した特許文献5の技術のように、併用することで特に好ましい効果が得られるとしたものではない。スケール防止剤の添加濃度は、1〜30mg/L程度でよく、好ましくは3〜10mg/L程度になる少ない量で足りる。後述するように、本発明によれば、このような従来よりも格段に少ないスケール防止剤の使用量で、従来よりも良好な状態にスケールの生成を抑制することができる。
本発明者らは、本発明の構成によって本発明の顕著な効果が得られた理由について、下記の事実から、下記のように考えている。本発明者らは、無機懸濁物質が高濃度に存在する廃水の懸濁物質の除去処理において、高分子凝集剤を添加して処理する第2の処理工程の前に行う第1の処理工程で、スケール防止剤であるポリカルボン酸を添加し、従来と同様の処理を行い、得られた処理水について検討した。その結果、処理水中の、ポリカルボン酸の濃度、COD値は、添加したスケール防止剤の濃度に比べて低いことがわかった。また、上記のようにして処理した場合は、同じ量のスケール防止剤を使用して、スケール防止剤の添加のタイミングを本発明で規定するようにして処理した場合と比べて、スケールの生成の抑制効果が格段に劣ることがわかった。これらのことから、上記のように構成した場合は、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤を添加して凝集フロックを生成させるための第1の処理工程では、添加したスケール防止剤が、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤を含む懸濁物質に吸着(反応)して消費されてしまい(より具体的にはPAC等にスケール防止剤が吸着してしまい)、このことが原因して、添加したスケール防止剤が、添加した量ほどには効果を発揮できなかったと考えられる。
一方、本発明で規定したように、第1の処理工程後であって、第2の処理工程で行う高分子凝集剤の添加と同時に、或いは、高分子凝集剤の添加直後といった、第2の処理工程と固液分離工程との間に、スケール防止剤であるポリカルボン酸を添加し、従来と同様の処理を行った場合は、少ない量のスケール防止剤の使用で、格段に高いスケールの発生抑制効果が得られることが確認された。具体的には、従来の、スケール防止剤を使用して行う懸濁物質の除去処理方法の場合と比較して、少ない量のスケール防止剤の使用であるにもかかわらず、処理系内のスケールの生成、スケールの固着を、より安定的に、且つ、効率的に防止することができた。
この場合に得られた処理水についても、前記したと同様の分析を行ったところ、COD値は、ポリカルボン酸の添加濃度から予想される程度に残存していることが確認された。このことから、本発明で規定したタイミングでスケール防止剤を添加した場合、すなわち、第2の処理工程でスケール防止剤を添加した場合は、第1の処理工程で添加した場合のように懸濁物質にスケール防止剤が吸着することはなく、高分子凝集剤によって無機懸濁物質の凝集フロックが形成されることで懸濁物質の比表面積が小さくなり、その結果、スケールの生成原因となる懸濁物質の比表面積も減少する。このため、スケールの発生の原因となる懸濁物質と反応するスケール防止剤の量は少なくて済み、これにより、本発明の、少ない量のスケール防止剤の使用で、スケールの生成が高度に抑制できたものと推察される。
本発明の水系の懸濁物質の除去処理方法を適用した場合に、本発明の顕著な効果が得られる好適な対象としては、例えば、カルシウム分を含有したスケール生成傾向を示す廃水であって、且つ、スケール防止剤を添加する際に、無機懸濁物質を1000mg/L以上、場合によっては、2000mg/L以上で含む廃水が挙げられる。この場合の無機懸濁物質は、はじめから廃水に含まれているものであっても、第1の処理工程で用いる、無機系の凝集剤や、処理のために廃水に添加した無機系の処理剤であってもよい。処理のために添加した無機系の処理剤としては、Ca(OH)2などのCa塩や粉末活性炭などが挙げられ、無機系の凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド、塩化第二鉄及びポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)などが挙げられる。
本発明の水系の懸濁物質の除去処理方法は、先に述べたように、特に、Ca濃度が500mg/L以上、硫酸濃度が500mg/L以上のスケールが生成し易い水系において、スケールの生成の抑制効果は、従来技術に比べてより顕著に確認できる。本発明によって達成される、従来技術の場合よりも少量のスケール防止剤の使用によって得られるスケール発生の優れた抑制効果は、例えば、下記に挙げるような、無機懸濁物質を高濃度で含有する各種の廃水に対して、特に、PACや塩化第二鉄等の無機系の凝集剤を用いて懸濁物質の凝集沈殿処理を行う工程を有する凝集沈殿設備において、顕著に得られる。
本発明の技術的特徴は、下記の点にあり、本発明者らは、上記した凝集沈殿設備に限らず、下記の状況にある、無機懸濁物質を高濃度で含む水系におけるスケールの発生を抑制する目的で、スケール防止剤を添加するいずれの場合においても、本発明を適用できると考えている。すなわち、従来技術では、スケールの固着が顕著な、固液分離工程を行う沈殿池よりも後段の設備におけるスケールの発生を抑制する点に注視しており、スケール防止剤の添加を固液分離工程後に行っていた。これに対し、本発明の技術的特徴は、PAC等の無機凝集剤を使用して、無機懸濁物質を凝集沈降させる際の処理系にはスケール防止剤を存在させないようにし、且つ、高分子凝集剤とともにスケール防止剤を添加して、高分子凝集剤によって無機懸濁物質の凝集フロックが形成された状態でスケール防止剤を存在させたことにあり、その結果、固液分離工程後にスケール防止剤を添加する従来の手段よりも、少ないスケール防止剤の添加量で、無機懸濁物質の除去処理システム全体におけるスケール発生の抑制が、安定して効果的に達成できた点にある。
無機懸濁物質を高濃度で含有する各種の廃水としては、例えば、鉄鋼業における酸洗廃水、転炉の集塵廃水、石炭火力発電所における脱硫後に発生する廃水、鉱山で発生する酸性鉱山廃水、フッ酸洗浄廃水が挙げられ、本発明は、これらの廃水を処理する場合におけるカルシウムスケール等のスケール防止に好適である。
図1に、本発明の方法を効果的に適用できる凝集沈殿設備の一例の概略フロー図に示した。無機系の凝集剤又は無機系の処理剤の少なくともいずれかを添加して処理する第1の処理槽、高分子凝集剤を添加して処理する第2の処理槽である凝集槽、その後に固液分離を行うための沈殿槽、沈殿槽からの越流した処理水、或いは、必要に応じてろ過した処理水を導入するための処理水槽からなる。必要に応じて行うろ過には、砂ろ過塔などが使用できる。本発明においては、このようなろ過設備は必須ではなく、放水等する処理水のSS基準値が低い場合などに適宜に設けられる。
本発明の方法を上記した凝集沈殿設備に適用する場合、スケール防止剤の添加を、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤の少なくともいずれかの添加が行われる第1の処理槽の後段であって、固液分離工程の後段ではない、下記の特定の位置で行う構成にすることが重要である。具体的には、高分子凝集剤を添加する第2の処理槽に、或いは、第2の処理槽と、その後に固液分離を行うための沈殿槽との間で、スケール防止剤を添加する。より好ましくは、高分子凝集剤の添加と同時に、或いは、高分子凝集剤の添加の直後にスケール防止剤を添加するとよい。また、この際に用いるスケール防止剤は、従来公知のホスホン酸類や低分子水溶性ポリマーの少なくともいずれか一方を用いればよい。また、ホスホン酸類と低分子水溶性ポリマーとを併用しても本発明の効果が損なわれることはない。
本発明の方法を適用できる上記した凝集沈殿設備は、例えば、廃水中のフッ素を凝集沈降させる目的で、更に、第1の処理槽に、廃水に消石灰等のCa塩を添加するための処理設備が設けられていてもよい。このような処理を行う場合、消石灰の未反応分を有効に使う目的で、沈殿槽から汚泥を、第1の処理槽に返送する方法が用いられることがある。したがって、本発明の方法においても、この固液分離を行うための沈殿槽から、汚泥の一部或いは全部を第1の処理槽へと返送するプロセスを採用することが有効である。このようにすれば、消石灰等の処理剤を、より有効活用できるようになるので好ましい。
実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1−1〜1−5、比較例1−1〜1−11)
図1に示した第1の処理槽を想定し、ビーカー(500mL)内に、無機懸濁物質の濃度(総SS)が、2000mg/Lと高いフッ酸洗浄廃水に、消石灰を用いて、カルシウムの濃度が2000mg/Lとなるように調整して、無機懸濁物質を高濃度で含み、且つ、スケール生成傾向を示すようにした被処理水を用意した。また、その際、スケールが生成され易いように、硫酸濃度が2000mg/Lとなるように調整した。そして、実機の第2の処理槽で行うのと同様に、高分子凝集剤を用いて凝集処理を行った後、ビーカー内にSUS製の鋼片(2.0×20×80mm)を吊るした。高分子凝集剤には、ケーイーフロックKEA−776(日鉄住金環境社製)を用いた。これらの例では、無機系の凝集剤を添加していない。
上記した処理の際に、表1に示したスケール防止剤をそれぞれに用い、実施例と比較例で、その添加順序を変えて、60℃で60分間静置し、SUS製の鋼片へのスケール固着状態を観察した。具体的には、実施例1では、高分子凝集剤の添加の直後に、スケール防止剤を添加した。表中では、その添加位置をBとした。一方、比較例の1−1〜1−7では、高分子凝集剤を添加する前に、スケール防止剤を添加した。表中では、その添加位置をAとした。また、比較例の1−8〜1−11では、従来行っていたように、沈殿池と処理槽の間でのスケール防止剤の添加を想定し、懸濁物質が存在しない系で試験を行った。上記の処理で高分子凝集剤を用いて凝集処理を行った後、ろ過した水を処理水として、ここにスケール防止剤を添加し、この場合の添加位置をCとした。
上記において、スケール固着状態の観察は、添加位置A及び添加位置Bでスケール防止剤を添加した例では、高分子凝集剤を用いて凝集処理を行った後、ろ過せずに懸濁物質が存在する状態においてSUS製の鋼片を吊るしてスケールの生成状態を調べた。一方、添加位置Cでスケール防止剤を添加した例では、ろ過した処理水中にSUS製の鋼片を吊るし、スケールの生成状態を確認した。
スケール防止剤には、表1に示した量で、ホスホン酸(東京化成工業社製)と、低分子ポリマーをそれぞれ用いた。低分子ポリマーには、アクリル酸とHAPS(2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸)とをモル比80:20で共重合させた平均分子量が10000の共重合体を用いた。
(評価)
そして、60℃で60分の反応後、それぞれの鋼片へのスケールの発生の状態を目視で観察して、下記の基準で評価した。
◎:鋼片にスケールの固着が見られなかった。
○:鋼片にスケールの固着が僅かに認められた。
△:鋼片の表面の半分程度にスケールの固着が明らかに認められた。
×:鋼片の表面の大半にスケールの固着が明らかに認められた。
(実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−5)
次の例では、ビーカー(500mL)内に、表2に示したように、PAC又は塩化第二鉄の無機凝集剤、粉末活性炭を適宜に併存させ、無機懸濁物質の濃度(総SS)が、2000mg/Lである被処理水を用意した。この場合も、実施例1と同様に、フッ酸洗浄廃水を用い、消石灰を、カルシウムの濃度が2000mg/Lとなるように調整し、硫酸濃度が2000mg/Lとなるように調整した。そして、この被処理水に5mg/Lの高分子凝集剤を用いて凝集処理を行い、それぞれの試験の際における、SUS製鋼片へのスケール付着を調べた。この処理の際に、実施例1、比較例1で用いた低分子ポリマーをスケール防止剤とし、実施例ではBの位置で、比較例ではAの位置でそれぞれ添加した。そして、それぞれの処理後、60℃で60分静置し、処理水中に吊るしたSUS製の鋼片のスケール固着状態を観察した。
その結果を表2に示した。表2の結果から、まず、比較例2−2と、比較例2−3〜2−5との比較から、無機懸濁物質として、無機凝集剤や活性炭が含まれている場合は、これらを含まない場合に比べて、スケール防止剤の機能が劣ることが確認された。これに対して、実施例の場合は、無機懸濁物質として、無機凝集剤や活性炭が併存していても、優れたスケール生成の抑制効果が得られ、スケール防止剤が有効に機能したことが確認できた。
(実施例3−1〜3−10)
表3に示したように、スケール防止剤の種類と使用量を替えた以外は実施例1と同様にして試験した。その結果を、表3に示した。その結果、従来からスケール防止剤として使用されているホスホン酸又は低分子ポリマーのいずれについても、スケール発生に対して高い抑制効果を発揮することが確認された。なお、ホスホン酸と低分子ポリマーを併用する場合においても特に問題はない。

Claims (6)

  1. 被処理水に、無機系の凝集剤又は無機系の処理剤の少なくともいずれかを添加して処理する第1の処理工程と、該第1の処理工程後に行う、高分子凝集剤を添加して処理する第2の処理工程と、該第2の処理工程後に行う固液分離工程とを有する水系の懸濁物質の除去処理方法において、
    前記第2の処理工程で処理する被処理水中に1000mg/L以上の無機懸濁物質が存在しており、
    前記第2の処理工程における高分子凝集剤の添加と同時に、又は、前記第2の処理工程と前記固液分離工程の間に、スケール防止剤を添加するスケールの生成抑制工程を設けたことを特徴とするスケールの生成を抑制した水系の懸濁物質の除去処理方法。
  2. 前記無機系の処理剤が、消石灰、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム又は活性炭の少なくともいずれかである請求項1に記載の水系の懸濁物質の除去処理方法。
  3. 前記無機系の凝集剤が、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、塩化第二鉄、硫酸第二鉄及びポリ硫酸第二鉄からなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項1又は2に記載の水系の懸濁物質の除去処理方法。
  4. 前記スケール防止剤が、ホスホン酸、ホスホン酸塩及び低分子水溶性ポリマーからなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系の懸濁物質の除去処理方法。
  5. 前記無機懸濁物質を含有する被処理水が、鉄鋼業における酸洗廃水、転炉の集塵廃水、石炭火力発電所における脱硫後の廃水、酸性鉱山廃水及びフッ酸洗浄廃水からなる群から選ばれるいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系の懸濁物質の除去処理方法。
  6. 前記第2の処理工程で処理する被処理水が、カルシウム濃度が500mg/L以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水系の懸濁物質の除去処理方法。
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