JP2018143185A - Il−6発現促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】IL−6の発現を亢進し、高い免疫誘導効果を有する、剤の提供。【解決手段】CpGモチーフを有するCpG−オリゴDNAと、特定の配列に示される配列と相同性が90%以上の塩基配列を有する免疫相乗オリゴDNAと、を組み合わせてなる、IL−6発現促進剤。【効果】炎症性サイトカインであるIL−6を高発現させる促進剤、及び当該促進剤を含む免疫誘導剤を提供することが可能になる。【選択図】なし
Description
本発明はオリゴDANを用いたIL−6発現促進剤に関する。
細菌DNAは脊椎動物の免疫システムによって認識される病原体関連分子パターン(PAMP)の一つであり、自然免疫システムを誘導しつつ、獲得免疫システムを制御することが知られている(例えば特許文献1)。
Shimosato T, Fujimoto M, Tohne M, Sato T, Tateo M, Otani H, Kitazawa H. CpG oligodeoxynucleotides induce strong up−regulation of interleukin 33 via Toll−like receptor 9. Biochem Biophys Res Commun. 2010;394:81−86.
非メチル化CpG−オリゴDNAも、PAMPの一つと考えられる。これまで非メチル化CpG−オリゴDNAは、単体もしくは他の菌生成物との組み合わせでIL−6、IL−12、インターフェロン(IFN)−γ、そして免疫グロブリン(Ig)Mの放出を誘発することが報告されている。
生体内において(in vivo)、IL−6の過剰産生は、多種多様な臨床的な症状や異常を引き起こすことが実験モデルにおいて示されている。この結果は様々な炎症性の病気、例えば関節リウマチ(RA)や、全身型若年性特発性関節炎(soJIA)を持つ患者にみられる兆候を説明できる可能性がある。
非メチル化CpG−オリゴDNAをはじめとした細菌DNAのIL−6誘導能力は、免疫が関係する様々な症状の説明や治療に役立つことが示唆されており、より免疫誘導効果の高い物質が求められていた。
上記課題を解決するため、発明者らは非メチル化CpG−オリゴDNAと、所定のオリゴDNAとを組み合わせて投与することにより、対象のIL−6発現が亢進することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、IL−6の発現を亢進し、高い免疫誘導効果を有する、IL−6発現促進剤を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、CpGモチーフを有するCpG−オリゴDNAと、配列番号1に示される配列と相同性が90%以上の塩基配列を有する免疫相乗オリゴDNAとを組み合わせてなることを特徴とする、IL−6発現促進剤である。
また、本発明の別の態様は、前記免疫相乗オリゴDNAが、配列番号2に示される配列に対して90%以上の相同性を有する塩基配列を含むオリゴDNAであることを特徴とする、請求項1記載の剤である。
また、本発明の別の態様は、前記免疫相乗オリゴDNAが、配列番号37に示される配列に対して90%以上の相同性を有する塩基配列を含むオリゴDNAであることを特徴とする、請求項1または2記載の剤である。
また、本発明の別の態様は、前記CpG−オリゴDNAが、B型のCpG−オリゴDNAであることを特徴とする、請求項1−3のいずれか1項記載の剤である。
また、本発明の別の態様は、請求項1−4のいずれか1項記載の剤を含むことを特徴とする免疫誘導剤である。
また、本発明の別の態様は、前記免疫相乗オリゴDNAが、配列番号2に示される配列に対して90%以上の相同性を有する塩基配列を含むオリゴDNAであることを特徴とする、請求項1記載の剤である。
また、本発明の別の態様は、前記免疫相乗オリゴDNAが、配列番号37に示される配列に対して90%以上の相同性を有する塩基配列を含むオリゴDNAであることを特徴とする、請求項1または2記載の剤である。
また、本発明の別の態様は、前記CpG−オリゴDNAが、B型のCpG−オリゴDNAであることを特徴とする、請求項1−3のいずれか1項記載の剤である。
また、本発明の別の態様は、請求項1−4のいずれか1項記載の剤を含むことを特徴とする免疫誘導剤である。
本発明によれば、炎症性サイトカインであるIL−6を高発現させる剤を提供することが可能になる。
以下、本発明の一態様に係る実施の形態(以下、本実施形態)について説明する。
本発明は、炎症性サイトカインであるIL−6の発現を亢進させるCpG−オリゴDNAを、所定の配列を有する免疫相乗オリゴDNAと組み合わせて使用することで、そのIL−6発現誘導効果を相乗的に増加させるものである。相乗的に増加させる、とは、組み合わせて使用する以前のオリゴDNAをそれぞれ単体で使用した場合に対して、より大きな効果を生じさせることをいう。
本明細書において、オリゴDNAは、およそ20塩基対かそれ以下の長さの短いヌクレオチドの配列をいう。また、ヌクレオチドとは、ヌクレオシドにリン酸基が結合した物質であって、DNA、RNAの構成単位をいう。
本発明に使用するCpG−オリゴDNAは、その配列中にCpGモチーフを有している。CpGモチーフとは、シトシンとグアニンがホスホジエステル結合でつながった配列をいい、特にメチル化されていない場合に、TLR9を強く刺激することが知られている。TLR9はIL−6の発現に関係することが広く知られた受容体である。
本発明に使用するCpG−オリゴDNAは、ホスホジエステル結合を有する天然型、またはリン酸基の一部または全部がS化されたホスホロチオエート型(化学修飾体)のいずれも好適に適用できる。
本発明に使用するCpG−オリゴDNAは、末端にポリG配列を有するA型、同配列を有さないB型のいずれであっても好適に適用することが可能であるが、B型であると、より望ましい。
本発明に使用する免疫相乗オリゴDNAは、配列表の配列番号1に示される塩基配列と90%以上の同一性を有することを特徴とする。本明細書においては、免疫相乗オリゴDNAのそれぞれの配列を便宜上iSNと番号と組み合わせて呼称する。免疫相乗オリゴDNAは、CpG−オリゴDNAを組み合わせて使用する際に、両末端にさらに1または2以上の塩基が結合されていても良く、N末端、C末端の両側に、次の塩基配列が結合されていると特に望ましい。当該塩基が結合した塩基配列を配列番号2に示す。
5’-cct-3’
本発明に使用する免疫相乗オリゴDNAの濃度は、これと組み合わせて使用するCpG−オリゴDNAの濃度を大きく超えない範囲の濃度であれば、特に制限なく適用することが可能である。ただし、CpG−オリゴDNAの濃度が3.0μMであるときに、免疫相乗オリゴDNAの濃度は、0.16μM−2.5μMであると特に好適である。
本発明において、CpG−オリゴDNAと、免疫相乗オリゴDNAの組み合わせるタイミング、具体的には投与するタイミングについては、同時であっても良いが、必ずしもこれに限定する必要はなく、免疫相乗オリゴDNAの投与後に、CpG−オリゴDNAを投与しても良い。ただし、CpG−オリゴDNAの投与を免疫相乗オリゴDNAの投与より先に行った場合には、得られる効果は前者ほど大きくない。
実験に使う動物は、無菌C57BL/6雌マウス(4週齢)(日本SLC社より購入)を、適度に温度・照度制御された条件下で飼育した。これらのマウスにはラボMRブリーダー(日本農産(株))が与えられた。
オリゴDNAを、インテグレーテッドDNAテクノロジーズ(株)にて合成した。各オリゴDNAは使用する前に無エンドトキシンフリーの超純水で溶解し、水中で再構成し、0.22μm孔のマイクロフィルター(日本ミリポア(株))を通してろ過滅菌した。
マウス脾細胞を、同モル量のCpG−オリゴDNA1555、コントロール(control)オリゴDNA1612、CpG−オリゴDNA1585、MsST、CpG−オリゴDNA2395、本実施例に係るCpG−オリゴDNA(iSN34)(表1)を用いて処理した。
脾細胞は標準的な方法で準備した。4ウェルプレート(NalgeNuncInternational(株))を用い、3連もしくは4連で2×106cells/wellの密度で培養した。その際、ウシ胎仔血清(Sigma−Aldrich)10%、ペニシリン100U/mL、スプレプトマイシン100mg/mL、HEPESを25 mM、ピルビン酸ナトリウム1.0mM、可欠アミノ酸、および2−メルカプトエタノール(2−ME)0.0035%を補充したRPMI1640培地(Sigma−Aldrich)を1mL/wellの量だけ添加した。
遺伝子発現の解析のため、全RNAをオリゴDNA刺激性マウス脾細胞から回収し、RNase(Macherey−Nagel GmbH&Co.,ドイツ)を用いて15分間常温で処理した。ここでヌクレアーゼは15分間70℃で混合培養することで加熱不活性となった。次にcDNAをサンプルあたり1マイクログラムの全RNAから逆転写によって生成した。このとき、Prime Script(登録商標)RT試薬キット(タカラバイオ(株))を用いた。
サイトカインcDNAの定量化のために、Thermal Cycler Dice(登録商標)リアルタイムシステム(タカラバイオ社製)を用いた。qPCR解析はSYBR Premix Ex Taq(タカラバイオ社製)を使用し、遺伝子特異的なプライマーを利用した。β−actinとIL−6遺伝子特異的プライマーはタカラバイオから購入した。
データは、類似の結果が得られた3つの独立した実験のうち代表的な一つの実験の平均および標準偏差(SD)で表した。
脾細胞は標準的な方法で準備した。これらの細胞は24ウェルプレート(Nalge Nunc International(株))中、1×107cells/wellの密度で培養した。その際、ウシ胎仔血清(Sigma−Aldrich)10%、ペニシリン100U/mL、スプレプトマイシン100mg/mL、HEPESを25mM、ピルビン酸ナトリウム1.0mM、非必須アミノ酸、および2−メルカプトエタノール(2−ME)0.0035%を補充したRPMI1640培地を1mL/wellの量だけ添加した。
細胞は3μMのiSN34の存在下で、5%のCO2環境化において37°Cで24時間インキュベートされた。その後細胞を6時間CpG−B(1555)を3μM補充した新鮮培地中で再懸濁し、上記のqPCRによりサイトカインの発現を検出した。データは、類似の結果が得られた3つの独立した実験のうち代表的な一つの実験の平均および標準偏差(SD)で表した。
48時間にわたる様々な処理の後、ELISAキット(Mouse IL−6 DuoSet(登録商標)ELISA,R&D Systems,米国、カナダ)を用い、当該メーカーの指示に従って、細胞培養上清におけるIL−6レベルを定量化した。
さらに、脾細胞(2×106cells/well)はiSN34を0.625μMもしくは同量の水を加えて培地中で予め3時間インキュベートされた。その後、細胞をオリゴDNA除去のため培地とともに洗浄し、CpG−B(1555)を3.0μM含む培地中で12時間再懸濁した。この刺激の後、細胞を、ウシ胎仔血清10%、ペニシリン100U/mL、スプレプトマイシン100mg/mL、ブレフェルジンAを10μg/mL、イオノマイシンを2μg/mL、さらにホルボール12−ミリスタート13−アセテートを20ng/mLを補充したRPMI1640培地中において、37℃で4時間培養した。
細胞内染色にあたり、4%のPFAの中、室温で15分間細胞を固定し、洗浄し、その後15分間のインキュベーションにより透過処理を行った。その後、フィコエリスリン標識抗マウスIL−6抗体(Biolegend社)を加えてさらにインキュベーションを行った。
脾細胞を、抗マウスIL−6抗体を用いて60分間氷上で染色処理した。細胞を洗浄し、FACS Calibur (BD Biosciences社)を用いてCD19陽性かつIL−6陽性細胞を特定した。データはFlow Joソフトを用いて解析した。全ての解析は少なくとも3回行い、代表的な結果を表示した。
本実施例では、先述のように得られ飼育された4週齢のC57BL/6雌マウスを用いた。2週間の準備期間の後、複数マウス(6週齢)にそれぞれPBS+PBS、PBS+CpG−B(MsST)、iSN34(20μg/20μL)+PBS、iSN34(20μg/20μL)+CpG−B(MsST)のいずれかを200μg、2週間に1回ずつ、全3回にわたり腹腔内注射した。
本実施例では、MsSTをCpG−オリゴDNAとして用いた。MsSTはサーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)ATCC19258のlacZ遺伝子から抽出された強力な免疫賦活CpG−オリゴDNAであり、炎症性サイトカイン産生と細胞増殖を誘導するCpG−オリゴDNA(1555)に似た能力を有する。
複数マウスは最終の腹腔内注射の後11週間後に安楽死させ解剖に処された。この処置の際、体重、脾臓重量、脾臓長を測定し、さらなる分析のために血液を採取した。
全ての統計分析は統計ソフトパッケージ(Prism7,GraphPad,Inc., La Jolla,米国)を使って実施した。体重傾向以外の全ての実験における違いの顕著性を決定するため、テューキークレーマー検定と共にTwo-tailed One-way ANOVAが用いられた。
体重の増変は処置と時間効果を比較しながら双方向分散分析によって解析を行った。相違はP<0.05において顕著であると考えられる。生体内(in vivo)実験(脾臓重量と脾臓長)の値は箱髭図を用いて表示してある。他の生体内の値は平均および分散値で表示される。
(LGGオリゴDNAの免疫相乗活性と免疫細胞によるIL−6mRNAの発現)
本実施例において、LGG−DNA配列に基づいて設計されたオリゴDNAの相乗効果について実験・評価した。まず事前スクリーニングで相乗効果陽性を示した脾臓細胞の候補を対象とし、IL−6mRNAの出現による相乗活性の確認を行った(図S1)。また、サイトカインの出現と分泌におけるiSN34の効果を決定するため、iSN34+CpG-オリゴDNAの組合せに晒されたマウス脾細胞におけるIL−6転写を評価した。この試験に用いるiSN34の最適濃度を決定するため、発明者らは、濃度が0.01から10μMの範囲のiSN34の存在下で、IL−6mRNAの発現量を調べた。
本実施例において、LGG−DNA配列に基づいて設計されたオリゴDNAの相乗効果について実験・評価した。まず事前スクリーニングで相乗効果陽性を示した脾臓細胞の候補を対象とし、IL−6mRNAの出現による相乗活性の確認を行った(図S1)。また、サイトカインの出現と分泌におけるiSN34の効果を決定するため、iSN34+CpG-オリゴDNAの組合せに晒されたマウス脾細胞におけるIL−6転写を評価した。この試験に用いるiSN34の最適濃度を決定するため、発明者らは、濃度が0.01から10μMの範囲のiSN34の存在下で、IL−6mRNAの発現量を調べた。
図1Aに示されるように、iSN34(CpG―オリゴDNA存在下で)は濃度0.16〜2.5μMにおいてIL−6発現の用量依存的な刺激を示した。次に、CpG−A(1585)、CpG−B(1555)、CpG−C(2395)、コントロール(1612)オリゴDNAとそれぞれ組み合わせたときのiSN34の活性を比較した。図1Bに示されるように、iSN34は、A型またはB型のCpG―オリゴDNAと組み合わせたときのIL−6mRNA発現において相乗効果を示した。これらの結果はiSN34とCpG−B(1555)との組み合わせにおいて相乗効果が最も強く出ることを示唆している。
さらにiSN34の活性を調べるため、本実施例では洗浄試験(wash-out assay)におけるマウス脾細胞に及ぼす分子の効果を調べた。培養物を3.0μMのiSN34と3.0μMのCpG−Bまたはコントロール(水)に24時間晒し、その後iSN34を除去し、その後の免疫相乗活性を観察した。興味深いことに、図1Cに示されるように培養物からiSN34が除去された後も脾細胞において免疫相乗活性が維持された。すなわち、IL−6mRNAレベルはオリゴDNAを洗浄(wash-out)した後も実質変わらなかった。これは、CpG−オリゴDNAと免疫相乗オリゴDNAとの投与が必ずしも同時である必要がないことを示している。
(低濃度iSN34に晒されたことによるIL−6の産生の誘導)
次に、異なる濃度のiSN34(0.01〜10μM)+CpG−オリゴDNA混合体が存在する中で48時間育成したマウス脾細胞を用いてIL−6の分泌量を調べた。本実験では、IL−6レベルを、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて検出した。
次に、異なる濃度のiSN34(0.01〜10μM)+CpG−オリゴDNA混合体が存在する中で48時間育成したマウス脾細胞を用いてIL−6の分泌量を調べた。本実験では、IL−6レベルを、酵素免疫測定法(ELISA)を用いて検出した。
結果によると、iSN34を加えた後IL−6の分泌は、iSN34が0.63μM存在するときにピークが検出され、用量依存的に定量化できることが示される(図2)。この結果は、低濃度のiSN34はIL−6の産生を誘発することを示唆する。
(マウス脾細胞におけるIL−6陽性細胞の発現の拡大)
免疫相乗オリゴDNAによるCpG誘発免疫反応の刺激の後のIL−6マウス脾細胞の素性を分類するためにフローサイトメトリーを使用した。iSN34+CpGの導入の後、CD19陽性(CD19+)かつIL−6陽性(IL-6+)細胞が増殖することを見出した(図3A)。同図に示されるように、CD19陽性細胞の割合はiSN34+CpGで処理された細胞において顕著に増加する。つまり、この刺激により全細胞中3割近くがCD19陽性かつIL−6陽性細胞に変わった(図3B)。このように、iSN34+CpGの相乗効果はCD19陽性Bリンパ球におけるIL−6発現増加を引き起こすことがわかった。
免疫相乗オリゴDNAによるCpG誘発免疫反応の刺激の後のIL−6マウス脾細胞の素性を分類するためにフローサイトメトリーを使用した。iSN34+CpGの導入の後、CD19陽性(CD19+)かつIL−6陽性(IL-6+)細胞が増殖することを見出した(図3A)。同図に示されるように、CD19陽性細胞の割合はiSN34+CpGで処理された細胞において顕著に増加する。つまり、この刺激により全細胞中3割近くがCD19陽性かつIL−6陽性細胞に変わった(図3B)。このように、iSN34+CpGの相乗効果はCD19陽性Bリンパ球におけるIL−6発現増加を引き起こすことがわかった。
(iSN34+CpGの腹腔内注射の効果)
次に、生体内(in vivo)でのiSN34+CpGの相乗効果の分析をさらに進めた(図4A)。全てのマウス群(n=4/グループ;それぞれPBS+PBS、PBS+CpG−B、iSN34+PBS、iSN34+CpG−Bのいずれかを腹腔内注射した)は研究期間中ずっと顕著な体重増加を示した。また、終末期の体重については4グループ間で顕著な差はなかった(図S2)。
次に、生体内(in vivo)でのiSN34+CpGの相乗効果の分析をさらに進めた(図4A)。全てのマウス群(n=4/グループ;それぞれPBS+PBS、PBS+CpG−B、iSN34+PBS、iSN34+CpG−Bのいずれかを腹腔内注射した)は研究期間中ずっと顕著な体重増加を示した。また、終末期の体重については4グループ間で顕著な差はなかった(図S2)。
しかしiSN34+CpG−Bで処理されたマウスの脾臓は他のグループと比べて肥大が目立った。また、これらの効果は脾臓の重量、長さのいずれを評価しても顕著であった(図S3)。これらの発見はiSN34とCpG−Bの組み合わせが免疫反応を活性化すること示している。
以上、本実施例によれば、免疫相乗オリゴDNAであるiSN34がCpG−オリゴDNAと組み合わさったときに相乗的に免疫効果を示すことが明らかになった。特に、培養脾細胞のin vitroでの曝露の後、IL−6mRNAが蓄積し、IL−6タンパクが分泌され、そしてIL−6陽性細胞が産生されるレベルにおける、iSN34+CpGの相乗活性が実証された。
本実施例においてテストされたオリゴDNAの中では、iSN34が、続いてiSN35が最も顕著にこれらの効果を示した。これらのオリゴDNAは共通して塩基配列5’−TCCTAAGCTTGAGGCCT−3’を有する。また、前二者に及ばないものの、効果が得られたオリゴDNAは、5’−AAGCTTGAGG−3’を有している。さらにこれらの効果はCpG―オリゴDNAとの組み合わせにおいてのみ観察された。CpG―オリゴDNAは樹状細胞とマクロファージを非常に強力に刺激し、その結果 IL−6やIL−12といったTh−1を伴うサイトカインの誘導を引き起こす。現在の研究では、オリゴDNAであるiSN34は(CpGとの組み合わせで)IL−6の産生を刺激する。このことは、iSN34が、Th−1が媒介するワクチンに対する高効率なアジュバントとなり得ることを示唆する。
他の研究によれば、IL−6は、B細胞を増殖させ、形質細胞を残存させ、さらに抗体を産生する強力な刺激として振る舞うことが示されている。本実施例におけるiSN34+CpGは、RA、炎症性腸炎、多発性硬化症、全身型の若年性慢性関節炎(JCA)、乾癬、などの炎症性疾患が関係する病気の予防と治療に役立つ可能性が示唆される。
本実施例において、iSN34はCpG−AおよびCpG−Bと組み合わせたときにより大きな相乗効果を示すことが示された。この結果は他グループが報告したもの(図1B)と矛盾しない。また、iSN34は、CpG−Bとの組み合わせることで特に高い相乗効果を示した。これらの結果はCpG−BはiSN34と共に用いる最適な相乗効果誘導因子であることを示している。また、本実施例において、iSN34+CpGをともに投与すると洗浄試験でも効果があることが示された。特にiSN34で処理された脾細胞は、そのiSN34が洗い流された後においても、免疫反応を刺激する能力を保持することが実証された。本実施例により、IL−6タンパク分泌を測定する(酵素免疫測定法による)ことによりiSN34+CpGの免疫相乗効果を調べた結果、iSN34が0.625μMのときに相乗有効性のピークが発生することが実証された。
CD19はIFN、IL−4、IL−6を含むさまざまなサイトカインから陽性の刺激を受けることができるB細胞バイオマーカーの一つであり、増殖、分化、サイトカイン産生、そして他のエフェクター機能を起こさせる。さらに、B細胞は、CpG−オリゴDNAへの反応性と関連してTLR9に対しmRNAを発現することが示されている。このとき、CpGとiSN34から得られたB細胞はコントロールと比較して顕著なCD19を誘導することが示された。
細胞の特定の下位個体群がiSN34によって選択的に活性化されたのかどうか明らかにするために、発明者らは、さらにフローサイトメトリーを用いてIL−6産生脾細胞を特徴づけた。このフローサイトメトリー分析により、脾細胞中のCD19陽性B細胞から分泌されるIL−6の比率は、マウスをiSN34+CpG混合オリゴDNAで処理している間に、コントロールと比較してほぼ2倍以上に増えることが明らかになった(図3C)。これらの発見は自己免疫と炎症の研究と高い関連性があることを示している。
さらに、マウス生体内でのiSN34+CpG混合オリゴDNAの投与は、脾臓の重量と長さの増加を生じさせることが明らかになった。なお、他のコントロールと比較して、この処理による体重の顕著な変化は生じなかった。このことはiSN34がおおむね毒性と係わりないことを示唆している(毒性があれば体重減少や増加率の低減で示される)。しかし、iSN34+MsSTの腹腔内注射で感作されることによりマウスに脾臓肥大が見られた。MsSTは、先天性免疫反応を誘導し、脾腫を誘発することが報告されている(非特許文献1)。
なお、iSN34がIL−6以外の炎症性サイトカインの顕著な相乗的誘導を示すことは全く知られていない。この事実から、iSN34を併用した療法は粘膜免疫の有益な効果を顕著に補完し、さらに強めるであろうことがわかる。
以上、本実施例によれば、iSN34はCpG−オリゴDNAとの組み合わせにおいてIL−6の誘導に相乗的に振る舞うことが確認された。このIL−6は、もともとはT細胞由来因子として識別され、その後、免疫反応、炎症、および造血を含む生物学的活性を伴った活性B細胞の抗体産生細胞への分化を誘導することが示された。
本開示の炎症誘導剤は、消炎剤開発のための一時的な炎症促進手段に利用可能であり、例えば炎症を有すモデルマウスを短時間で生成することができる。さらに医薬品としても、全身性の炎症性疾患の新しい治療薬として応用できる可能性がある。
Claims (5)
- CpGモチーフを有するCpG−オリゴDNAと、配列番号1に示される配列と相同性が90%以上の塩基配列を有する免疫相乗オリゴDNAと、を組み合わせてなることを特徴とする、IL−6発現促進剤。
- 前記免疫相乗オリゴDNAは、配列番号2に示される配列に対して90%以上の相同性を有する塩基配列を含むオリゴDNAであることを特徴とする、請求項1記載の剤。
- 前記免疫相乗オリゴDNAは、配列番号37に示される配列に対して90%以上の相同性を有する塩基配列を含むオリゴDNAであることを特徴とする、請求項1または2記載の剤。
- 前記CpG−オリゴDNAは、B型のCpG−オリゴDNAであることを特徴とする、請求項1−3のいずれか1項記載の剤。
- 請求項1−4のいずれか1項記載の剤を含むことを特徴とする免疫誘導剤。
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