JP2017200914A - ケモカインcxcl14を利用した自然免疫活性化アジュバント - Google Patents

ケモカインcxcl14を利用した自然免疫活性化アジュバント Download PDF

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孝彦 原
Takahiko Hara
孝彦 原
幸祐 種子島
Kosuke TANEGASHIMA
幸祐 種子島
伶奈 高橋
Reina Takahashi
伶奈 高橋
章 大高
Akira Otaka
章 大高
章 重永
Akira Shigenaga
章 重永
耕平 辻
Kohei Tsuji
耕平 辻
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Abstract

【課題】一本鎖CpG DNAオリゴヌクレオチドの自然免疫賦活能を増強させ得る技術の開発。
【解決手段】本発明に係る自然免疫賦活剤は、ヒトCXCL14ケモカインタンパク質又はその変異型タンパク質を含む、或いは、当該タンパク質と抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAとを含む、自然免疫賦活剤等である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ケモカインCXCL14を利用した自然免疫活性化アジュバント(例えばワクチンアジュバント)、及び当該アジュバントを含む医薬組成物等に関する。
CXCL14は脊椎動物で非常に保存性の高いCXC型ケモカインである。本発明者は2007年に、CXCL14欠損マウスでは肥満によって誘導される糖尿病性の病態(インスリン抵抗性、脂肪組織の慢性炎症)が抑えられていることを報告した。一方、CXCL14を過剰発現するそのトランスジェニックマウスでは、NK細胞による癌免疫が強化されており、CXCL14が慢性炎症反応だけでなく、免疫系活性化にも関与していることが示唆されている(非特許文献1)。本発明者は2013年に、CXCL14がCXCL12の受容体であるCXCR4に高親和性で結合し、CXCL12の細胞誘引活性を阻害することを証明したが、この特性だけで上記の免疫系活性化の機序を説明することはできなかった(非特許文献2)。
Toll-like receptor (TLR) は、外来病原体特有の生体高分子を認識することでT細胞を介した免疫系を活性化するという重要な役割を果たしている。このうち、TLR9は、細菌やウイルス由来のDNAに多く存在する非メチル化CpG DNA配列を認識して、免疫応答を惹起することが知られている(非特許文献3)。これを利用して、20〜30塩基長程度の一本鎖CpG DNAオリゴヌクレオチド (CpG ODN) を、病原体、がん特異的抗原又は各種アレルゲンに対するワクチンアジュバントとして利用する試みが行われており、CpG ODNの投与によって、炎症性サイトカインの誘導とそれに続くTh1応答が惹起されることが示されている(非特許文献3)。CpG ODNは、塩基配列と生物活性に基づいてClass-A, B, C, Pの4グループに分類されている。Class-Aは、polyGモチーフとパリンドローム配列を持ち、主に形質細胞様樹状細胞のInterferon-a発現を誘導する。Class-Bは、B細胞の活性化能が非常に強く、パリンドローム配列を持たないCpG DNAである。Class-Cは、Class-AとClass-Bの両方の特性を併せ持ち、3’側にパリンドローム構造を持つ(非特許文献3)。最後に、Class-Pは、パリンドローム構造を2つ持つ、活性の高いCpG DNAである。これまでの研究では、DNaseによる分解を防ぐために、CpG ODNのリン酸結合をホスホロチオエート化した合成オリゴヌクレオチド(S-オリゴCpG ODN)が用いられてきた。CpG ODNはエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、エンドソームやリソソームと呼ばれる細胞内小胞の膜に存在するTLR9に特異的に結合する。樹状細胞を含む抗原提示細胞のTLR9にCpG DNAが結合すると、NFkBシグナル伝達経路が活性化され、IL-6, IL-12, TNF-αを代表とする炎症性サイトカイン遺伝子群の転写が誘導される。活性化してリンパ節へ移行した抗原提示細胞は、Th1細胞の分化を促進する。
このようなTh1細胞による免疫応答の中で、CpG ODNを抗原提示細胞のエンドソームやリソソームにおけるTLR9まで効率よく届けることは非常に重要であるが、CpG ODN単体の取り込み効率が低いために、CpG ODNをワクチンアジュバントとして用いるには、大量のCpG ODNが必要とならざるを得ないという問題があった。
Hara T, Tanegashima K. Pleiotropic functions of the CXC-type chemokine CXCL14 in mammals. J. Biochem. (2012) 151, 469-476. Hara T, Tanegashima K. CXCL14 antagonizes the CXCL12-CXCR4 signaling axis. Biomolecular Concepts. (2014) 5, 167-173. Krieg AM. Therapeutic potential of Toll-like receptor 9 activation. Nature Reviews Drug Discovery (2006) 5, 471-484.
このような状況下において、一本鎖CpG DNAオリゴヌクレオチド (CpG ODN)の自然免疫賦活能を増強させ得る技術の開発が望まれていた。
本発明は、上記状況を考慮してなされたものであり、以下に示す、自然免疫賦活剤、それを含む医薬組成物、自然免疫賦活能の増強剤などを提供するものである。
(1)抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAと、
下記(a)〜(e)のタンパク質:
(a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質、
(b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
(e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
とを含む、自然免疫賦活剤。
(2)抗原提示細胞が樹状細胞である、前記(1)に記載の賦活剤。
(3)前記一本鎖DNAが、TLR9リガンド活性を有するCpG DNAである、前記(1)又は(2)に記載の賦活剤。
(4)CpG DNAが、パリンドローム配列を有するCpG DNAである、前記(3)に記載の賦活剤。
(5)CpG DNAが、Class-A、Class-C又はClass-PのCpG DNAである、前記(3)又は(4)に記載の賦活剤。
(6)CpG DNAが、配列番号6〜12のいずれかで示される塩基配列を含むDNA、又は、該塩基配列と80%以上の同一性を有し且つ自然免疫賦活化能を有するDNAである、前記(3)〜(5)のいずれか1つに記載の賦活剤。
(7)前記一本鎖DNAは、構成ヌクレオチドの一部又は全部がホスホロチオエート修飾されたものである、前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の賦活剤。
(8)前記一本鎖DNAと、前記(a)〜(e)のいずれかのタンパク質とが、互いに結合したものである、前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の賦活剤。
(9)下記(a)〜(e)のタンパク質:
(a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質、
(b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
(e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
を含む、自然免疫賦活剤。
(10)炎症性サイトカインの発現を亢進させ得るものである、前記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の賦活剤。
(11)炎症性サイトカインが、IL-6、IL-12、TNF-α、IFN-α、及びIFN-βのうちの少なくとも1種である、前記(10)に記載の賦活剤。
(12)ワクチンアジュバントである、前記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の賦活剤。
(13)前記(1)〜(12)のいずれか1つに記載の賦活剤を含む、医薬組成物。
(14)さらにワクチン抗原を含む、前記(13)に記載の組成物。
(15)ワクチン抗原ががん抗原である、前記(13)又は(14)に記載の組成物。
(16)がん治療用、がん予防用又はがん免疫療法用医薬組成物である、前記(13)〜(15)のいずれか1つに記載の組成物。
(17)抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能の増強剤であって、
下記(a)〜(e)のタンパク質:
(a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質、
(b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
(e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
を含む、前記増強剤。
(18)下記(a)〜(d)のタンパク質:
(a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
(c) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
(d) 前記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質。
(19)前記(18)に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
(20)配列番号1に示される塩基配列において第22番目〜第24番目の塩基及び/又は第31番目〜第33番目の塩基がアルギニンのコドンを示す塩基に置換された塩基配列からなるDNA、或いは、該DNAの塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質をコードするDNA
を含む遺伝子。
本発明によれば、従来よりワクチンアジュバントとしての利用が研究されてきた、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNA(一本鎖CpG DNAオリゴヌクレオチド)の自然免疫賦活能をより一層増強させた自然免疫賦活剤等を提供することができる。
本発明の自然免疫賦活は、優れた自然免疫活性化能を有する医薬組成物(ワクチン製剤)を提供することができる点で、極めて有用なものである。
CXCL14とCpG DNAが協調的に炎症性サイトカインを誘導することを示す図である(この説明は、以下、図1D−Fにおいても同様。)。(A〜C) BMDCを100 nM ODN2395, 100 nM ODN2395ΔCG, 1μg/ml Poly IC, 10μg/ml Poly U単独、または300 nM CXCL14と共処理し、6時間培養後に上清を回収した。培養上清中のサイトカイン濃度をIL-12p40 (A), IL-6 (B), TNF-a(C)それぞれについてELISAにて測定した。*P<0.05, **P<0.01 Student’s t-testによる検定。 (D〜F) マウス脾臓細胞 (Spl) を100 nM ODN2395単独、または300 nM CXCL14と共処理し、24時間後に培養上清を回収した。培養上清中を用いて、IL-12p40 (D), IL-6 (E), TNF-a(F)の濃度をELISAにて測定した。*P<0.05, **P<0.01 Student’s t-testによる検定。 CXCL14がCpG DNAの樹状細胞内への取り込みを促進することを示す図である(この説明は、以下、図2C、図2Dにおいても同様。)。(A) BMDCを30 nM Cy3-ODN2395, または30 nM Cy3-ODN2395 +300 nM CXCL14にて37℃で1時間処理し、固定したサンプルをリソソームマーカーLAMP-1-FITCで染色後、共焦点顕微鏡で観察した。(B) BMDCを300 nM CXCL14-Alexa488, または30 nM Cy3-ODN2395 +300 nM CXCL14-Alexa488にて37℃で1時間処理し、固定したサンプルを共焦点顕微鏡で観察した。 (C) BMDCを、1, 10, 100 nM Cy3-ODN2395単独(ODN Only)、または300 nM CXCL14と共処理し(ODN+CXCL14)、37℃で1時間培養した後FACS解析を行った。生細胞のCy3蛍光をヒストグラムで示した。灰色での塗りつぶしのヒストグラム全てのヒストグラムにおいて、ピーク位置が一番左側にあるものは、何も処理していないBMDCのコントロール細胞(No ODN)を示し、他方、ピーク位置が一番右側にあるものは「ODN+CXCL14」、これら両ピーク間にピーク位置があるものは「ODN Only」を示す。また、100 nM Cy3-ODN2395(p)と300 nM CXCL14の共処理実験も行った。 (D) FACS解析により得られたCy3-ODN2395の取り込みを平均のCy3蛍光強度で指標化した。 樹状細胞へのCpG DNAの取り込みおよび炎症性サイトカイン産生増強はCXCL14特異的な活性であることを示す図である(この説明は、以下、図3B、図3C−Eにおいても同様。)。(A) ODN2395と各種ケモカインの共処理による取り込み活性の増強。300 nMのCXCL14, CXCL12, CXCL8と100 nM Cy3-ODN2395(p)を 37℃で1時間共処理して、FACS解析を行った。生細胞のドットプロットを示す。 (B) FACS解析により得られたCy3-ODN2395の取り込みを平均のCy3蛍光強度で指標化した。 (C〜E) マウス脾臓細胞 (Spl) を30 nM ODN2395単独、または300 nM CXCL14もしくはCXCL12で共処理し、24時間後に培養上清を回収した。培養上清を用いて、IL-12p40 (C), IL-6 (D), TNF-a(E) の濃度をELISAにて測定した。*P<0.05, **P<0.01 Student’s t-testによる検定。 CXCL14がClass AおよびCのCpG DNAに作用することを示す図である(この説明は、以下、図4B、図4C−Eにおいても同様。)。(A) CXCL14と各種CpG DNAの共処理による取り込み活性の増強。100 nMのCy3-ODN2395(p), Cy3-ODN2395ΔCG(p), Cy3-ODN1826(p), Cy3-ODN1585(p)と300 nMのCXCL14を 37℃で1時間共処理して、FACS解析を行った。生細胞のドットプロットを示す。上段にODN単独、下段はODNとCXCL14の共処理である。 (B) FACS解析により得られたCy3-ODNの取り込みを平均のCy3蛍光強度で指標化した。 (C〜E) マウス脾臓細胞 (Spl) を30 nM ODN2395もしくは100 nM ODN D-SL3で単独処理または、300 nM CXCL14で共処理し、24時間後に培養上清を回収した。培養上清中のIL-12p40 (C), IL-6 (D), TNF-a(E)濃度をELISAにて測定した。*P<0.05, **P<0.01 Student’s t-testによる検定。 CXCL14がCpG DNAに中性条件で高親和性結合することを示す図である(この説明は、以下、図5C−D、図5E−Fにおいても同様。)。(A) ODN2395とCXCL14の結合実験。100 nM Cy3ODN2395を非標識ODN2395(左より 1:1, 1:10, 1:100)存在下で、CXCL14-biotinと反応させたのちstreptavidin-agar (SA) を用いてpull-down (PD)した。(B) さまざまなCpG ODNとCXCL14の結合。競合阻害実験では、対応する非標識ODNを100倍量添加した。 (C) 酸性条件下でのODN2395とCXCL14との結合実験。(D) 酸性条件下でのODN2395-CXCL14複合体の解離。 (E) CXCL14とCpG DNAの相乗的な作用を模式的に表したモデル図。 Cy3-ODNとCXCL14-biotinとの結合実験のScatchard plot解析の結果を示す図である(この説明は、以下、図6G−Iにおいても同様。)。 Cy3-ODN2395 (A), Cy3-ODN2395(5meC) (B), Cy3-ODN2395 (p) (C), Cy3-ODN2395ΔCG(p) (D), Cy3-ODN1826 (p) (E), Cy3-ODN1585 (p) (F) を用いてCXCL14-biotin/Streptoavidin-agar beadsでpull-downアッセイを行い、Scatchard plot解析を行った。N.D.: not detectable. 計算した親和性に関しては、表1に示した。 Cy3-ODN-D-SL03 (G), Cy3-ODN21798 (H), Cy3-D35 (I) を用いてCXCL14-biotin/Streptoavidin-agar beadsでpull-downアッセイを行い、Scatchard plot解析を行った。N.D.: not detectable. 計算した親和性に関しては、表1に示した。 生理的な条件下でもCXCL14がCpG DNAの作用を増強していることを示す図である。(A) CXCL14ノックアウトマウスへのCpG DNA投与実験の模式図。(B) CXCL14 (+/-)、およびCXCL14 (-/-)マウスにODN2395を尾静脈注入したときの血清中IL-12p40濃度の変化。Steady stateはinjection 3日前の血清を測定した。赤で示したODN2395 injection後の血清は、injection後24時間にて回収した。*P<0.05 Student’s t-testによる検定。(C) ODN2395を尾静脈注入したCXCL14 (+/-)およびCXCL14 (-/-)マウスにおける脾臓CD8+樹状細胞活性化。脾臓細胞のconventional CD8+樹状細胞(CD11c+/CD8+/CD3-/B220-)をゲートした際の、MHC class II highの細胞の割合を示した。*P<0.05 Student’s t-testによる検定。 CXCL14(K8R), CXCL14(K11R), CXCL14(K8R, K11R)変異体が、野生型CXCL14よりも強いCpG DNA取り込み活性を誘導することを示す図である(この説明は、以下、図8B、図8C−Dにおいても同様。)。(A) ODN2395と各種CXCL14変異体の共処理による取り込み活性の増強。300 nMのCXCL14, CXCL14(K8R), CXCL14(K11R), CXCL14(K8R/K11R)と100 nMのCy3-ODN2395(p)を 37℃で1時間共処理して、FACS解析を行った。生細胞のドットプロットを示す。 (B) FACS解析により得られたCy3-ODN2395(p)の取り込みを平均のCy3蛍光強度で指標化した。 (C, D) マウスBMDC細胞を100 nM ODN2395(p)と300 nM CXCL14またはCXCL14 (K8R) で共処理または単独で37℃で3時間処理し、これら細胞からのcDNAを用いてRT-PCRを行った。縦軸の数字は、無処理の細胞の発現レベルを1とした相対値を示す。*P<0.05, **P<0.01 Student’s t-testによる検定。 CXCL14による高活性CpG ODNの取り込み増強の結果を示す図である。BMDCを30 nM Cy3-ODN-D-SL03, Cy3-ODN21798, あるいはCy3-D35と、300 nMのCXCL14存在下・非存在下にて37℃で1時間反応させ、FACS解析を行った。CD11c+ BMDCのFACSプロファイルを示す。 Cy3-ODNの取り込みが高い画分の割合をグラフ化した図である。**P<0.01 Student’s t-testによる検定。 CXCL14による高活性CpG ODNのサイトカイン誘導能の増強の結果を示す図である。BMDCを30 nM ODN-D-SL03, あるいはODN21798と、300 nMのCXCL14存在下・非存在下で37℃6時間反応させた後、培養上清を回収した。そこに含まれているIL-12p40 (A) とIL-6 (B) の濃度をELISAにて測定した。*P<0.05, **P<0.01 Student’s t-testによる検定。 B16F10メラノーマ移植系を用いた、CXCL14-CpG ODNの抗癌活性の検討結果を示す図である。(A) 移植系の概略。B16F10をC57BL/6マウスに皮下移植したのち、腫瘍の長辺が0.5 cmを超えたものに対して、PBS, 0.2 nmol ODN2395, 0.2 nmol CXCL14, 0.2 nmol ODN2395 +0.2 nmol CXCL14を腫瘍内投与した(Day 0). その後、同一のカクテルを3日おきに4回投与し、腫瘍の大きさの推移および生存率(図. 13) を調べた。(B) 投与開始6日後の腫瘍体積。(C) 腫瘍体積の測定による腫瘍増殖曲線。*P < 0.05 Student’s t-testによる検定。 (A) B16F10メラノーマ移植系の生存曲線。移植後の生存率をグラフ化した図である。(B) Splenocyteを用いたB16F10の細胞障害アッセイ。PBS, 100 nM ODN2395, 300 nM CXCL14, 100 nM ODN2395+300 nM CXCL14で24時間処理したSplenocyte (105) をB16F10細胞(104) と37℃で6時間培養し、死細胞から放出されるLDH活性を指標に細胞の死亡率を算出した。*P < 0.05 Student’s t-testによる検定。 OVAモデル抗原を用いたCXCL14-CpG ODNのワクチンアジュバント活性の解析の結果を示す図である。(A) 実験系の概略。OVA 100 mgをC57BL/6マウスへ皮下投与する際にアジュバントとしてPBS, 0.2 nmol ODN2395, 0.2 nmol CXCL14, あるいは0.2 nmol ODN2395+0.2 nmol CXCL14を共投与した。ポジティブコントロールとして完全フロイントアジュバントを用いた。10日後、同一のカクテルを皮下投与し、さらに7日後に血清を採取してOVAへの抗体価を測定した。(B) 抗OVA-IgG2b抗体の抗体価。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2016−091183号明細書(平成28年4月28日出願)の全体を包含する。本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.本発明の概要
Toll-like receptor (TLR) は、外来病原体の侵入を検知して免疫系を活性するのに必須な細胞内センサーである。病原体の構成分子のうち、細菌やウイルス由来の非メチル化CpG DNAは、TLR9を活性化して自然免疫を強く誘導することが知られている。これを利用して、20〜30塩基長の一本鎖CpG DNAオリゴヌクレオチド (CpG ODN) を、病原体・がん抗原・アレルゲンに対する免疫を惹起するワクチンアジュバントとして利用する試みがなされてきた。TLR9は細胞内のリソソームやエンドソーム小胞に存在するため、CpG ODNを標的細胞内に効率よく取り込ませることは非常に重要であるが、CpG ODN単体の樹状細胞への取り込み効率は必ずしも高くない。
このような状況下、本発明者は、ケモカインCXCL14がCpG ODNの細胞内取り込みを促進し、炎症性サイトカインを発現誘導して自然免疫を賦活化することを実証した。マウス骨髄由来樹状細胞をCXCL14存在下でCpG ODNと培養すると(要するに、当該樹状細胞にCXCL14とCpG DNAを同時投与すると)、IL-6, IL-12p40, TNFaなどの炎症性サイトカインの発現が強く誘導された。さらに、CXCL14はCpG ODNの樹状細胞への取り込みを促進し、CpG ODNをTLR9が局在するリソソームへと運び入れた。CpG ODNにはいくつかのClassが存在するが、CXCL14はClass-A、Class-C及びClass-Pに属するCpG ODNの細胞内取り込みを促進した。この結果と合致して、CXCL14はClass-A、Class-C及びClass-PのCpG ODNに高親和性で結合した(Kd=約10〜100 nM)。このCXCL14とCpG ODNとの結合により、樹状細胞におけるCpG ODNの取り込みが強力に促進されることを明らかとなった。また当該結合は、弱酸性条件下(pH 6.0)ではキャンセルされた(乖離した)ことから、同程度の条件下であるリソソームやエンドソームの中ではCpG ODNはCXCL14から遊離されると推察された。上記のin vitro実験の結果に加え、CXCL14欠損マウスにおいては、CpG ODNによる全身性のIL-12p40誘導と樹状細胞におけるMHC class IIの発現が抑制されていた。これらの結果は、CpG DNAはCXCL14をキャリアとして樹状細胞内へ取り込まれ、リソソーム等にてTLR9にリレーされることで炎症性応答を惹起していることを示している。また、CXCL14のN末端側に位置する2つのリジン(Lys)の一方又は両方をアルギニン(Arg)に変えた変異体 [CXCL14(K8R), CXCL14(K11R), CXCL14(K8R/K11R)]では、CpG DNAの細胞内取り込みと炎症性サイトカインの誘導能が野生型CXCL14より大幅に増強されていた。CXCL14変異体を用いれば、CpG ODNを抗原提示細胞にさらに効率良く取り込ませることが可能である。本発明は、CXCL14又はCXCL14変異体を利用した、新たな自然免疫賦活剤(自然免疫活性化アジュバント)、詳しくは炎症性応答を増強する新たなワクチンアジュバントの開発、並びに、当該賦活剤を用いた医薬組成物等(免疫療法用医薬組成物等)の開発に寄与するものである。
2.自然免疫賦活剤、並びにCXCL14タンパク質及びその変異体等
本発明に係る自然免疫賦活剤(以下、本発明の賦活剤と称する。)は、ヒトCXCL14ケモカインタンパク質(以下、単に「CXCL14」又は「CXCL14タンパク質」と称することがある。)又はその変異体を用いたもの、或いは、CXCL14タンパク質又はその変異体と、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAとを用いたものである。
本発明の賦活剤は、例えば、いわゆるワクチンアジュバント、すなわち、ワクチン抗原と共に用いた場合あるいはワクチン抗原となるものが既に生体内に内在する場合などに、当該抗原による自然免疫賦活能を補強し得るアジュバントとなるもの等が好ましく挙げられる。
また本発明の賦活剤においては、CXCL14タンパク質又はその変異体は、必ずしも前記一本鎖DNA(例えば、後述するCpG DNA等)と共に使用する態様には限られず、CXCL14タンパク質又はその変異体のみでも自然免疫賦活剤として用いることができる。例えば、前記一本鎖DNAとして既に生体内に内在しているものが利用されるような態様の場合は、CXCL14タンパク質又はその変異体のみで自然免疫賦活剤として用い得る。
本発明に用い得るCXCL14タンパク質又はその変異体としては、下記(a)〜(e)のタンパク質が挙げられる。
(a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質
(b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質
(c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質
(d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
ここで、上記(a)のヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列は、下記のとおり、配列番号2で表されるアミノ酸配列(77アミノ酸残基)である。なお、当該アミノ酸配列をコードするcDNAは、配列番号1に示されるものである。

CXCL14タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2):
SKCKCSRKGPKIRYSDVKKLEMKPKYPHCEEKMVIITTKSVSRYRGQEHCLHPKLQSTKRFIKWYNAWNEKRRVYEE
上記(b)〜(e)のタンパク質は、いわゆるCXCL14タンパク質の変異体となるものである。本発明においては、このような変異型のCXCL14タンパク質も包含される。
上記(b)のタンパク質は、CXCL14タンパク質のアミノ酸配列中のリジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むものである。当該リジン残基としては、特に限定はされないが、潜在的にユビキチン化され得る部位としてのリジン残基が挙げられる。置換されるリジン残基の数は、特に限定はされないが、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜2個である。また、当該リジン残基の具体例としては、特に限定はされないが、CXCL14タンパク質のアミノ酸配列における第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸が好ましく挙げられ(上記(c)のタンパク質に対応)、第8番目のアミノ酸が特に好ましい。ここで、CXCL14タンパク質のアミノ酸配列において、第8番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列(CXCL14(K8R))、第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列(CXCL14(K11R))、並びに、第8番目と第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列(CXCL14(K8R/K11R))は、それぞれ、配列番号3〜5に示される(上記(d)のタンパク質に対応)。
本発明に用いるCXCL14タンパク質の変異体としては、上記(b)〜(d)のタンパク質のほか、上記(a)〜(d)のタンパク質のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性(相同性)を有するアミノ酸配列からなり(又は当該アミノ酸配列を有し)、かつ抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質(上記(e)のタンパク質に対応)も挙げられる。当該(e)のタンパク質としては、より好ましくは、上記(a)〜(d)のタンパク質のアミノ酸配列に対して81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり(又は当該アミノ酸配列を有し)、かつ抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質が挙げられる。上記同一性の数値は一般的に大きい程好ましい。
また、CXCL14タンパク質の変異体としては、例えば、上記(a)〜(d)のタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質も挙げられる。ここで、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、特に限定はされないが、例えば、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、若しくは1個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされないが、当該欠失、置換又は付加の数は、一般的には小さい程好ましい。当該欠失、置換又は付加等の変異の導入は、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えば、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、及びTaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Prime STAR(登録商標) Mutagenesis Basal kit、Mutan(登録商標)-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。また、上記欠失、置換又は付加の変異が導入されたペプチドであるかどうかは、各種アミノ酸配列決定法、並びにX線及びNMR等による構造解析法などを用いて確認することができる。
本発明において、上記の抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性とは、Toll-like receptor 9(TLR9)を活性化することを意味する。当該活性は、例えば、樹状細胞が分泌する各種炎症性サイトカインをELISAで測定する方法などにより評価及び測定することができる。
本発明に用い得るCXCL14タンパク質又はその変異体は、天然物由来のタンパク質(ポリペプチド)であってもよいし、人工的に化学合成して得られた非天然のタンパク質(ポリペプチド)であってもよく、限定はされない。非天然のものである場合は、生産が容易であり、コストを安価に抑えて大量調製することができるため好ましい。天然物由来のものである場合は、細胞毒性等の悪影響がない場合が多いため好ましい。
化学合成ポリペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、特に限定されないが、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてポリペプチドを精製することができる。
また、天然物由来のポリペプチドとしては、天然に存在するオリゴペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、又はこれらを断片化した状態のもの等が挙げられる。天然物由来のポリペプチドは、天然物から公知の回収法及び精製法により直接得てもよいし、又は、公知の遺伝子組換え技術により、CXCL14タンパク質をコードする遺伝子を各種発現ベクター等に組込んで細胞に導入し、発現させた後、公知の回収法及び精製法により得てもよい。あるいは、市販のキット、例えば、試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTMSystem(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)及びRTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等を用いた無細胞タンパク質合成系により当該ポリペプチドを産生し、公知の回収法及び精製法により得てもよく、限定はされない。
本発明においては、CXCL14タンパク質又はその変異体として、これらの誘導体を用いる又は含むことができる。当該誘導体とは、当該CXCL14タンパク質又はその変異体のポリペプチドに由来して調製され得るものをすべて含む意味であり、例えば、構成アミノ酸の一部が非天然のアミノ酸に置換されたものや、構成アミノ酸(主にその側鎖)の一部に化学修飾が施されたもの等が挙げられる。
さらに、本発明においては、CXCL14タンパク質又はその変異体、或いは上記誘導体として、これらの塩を用いる又は含むことができる。当該塩としては、生理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどの無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジンなどの有機塩基との塩が挙げられる。塩は、塩酸などの適切な酸、又は水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。
本発明の賦活剤に用い得る、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAについて、抗原提示細胞としては、特に限定はされないが、樹状細胞、マクロファージ、B細胞等が挙げられるが、より好ましくは樹状細胞である。
上記一本鎖DNAとしては、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される特性を有するものであれば、特に限定はされないが、例えば、TLR9(Toll-like receptor 9)リガンド活性を有するCpG DNA等が挙げられる。ここで、CpG DNAとは、一般に、細菌やウイルスの遺伝子に特有のCpGモチーフを有するDNAを意味する。
上記一本鎖DNAの長さは、特に限定されず、5塩基以上、15塩基以上、20塩基以上、25塩基以上が好ましく、さらに好ましくは5〜30塩基、15〜30塩基、15〜25塩基、又は20〜30塩基である。
上記一本鎖DNAは、天然由来のものであっても、その改変物や合成物等の非天然由来のものであってもよく、特に限定はされない。上記一本鎖DNAが合成物等の非天然由来のものである場合、例えば、その一部又は全部(好ましくは全部)が、ホスホロチオエート修飾されたものであってもよい。ホスホロチオエート修飾により、ヌクレアーゼ耐性を付与できるとともに、エンドソームやリソソームへの送達性を向上させることができる。
前記CpG DNAは、特に限定はされないが、パリンドローム配列を有するCpG DNAであることが好ましく、CXCL14タンパク質及びその変異体との親和性(結合性)が増強する効果が期待できる。したがって、本発明の賦活剤においては、CXCL14タンパク質及びその変異体と、前記一本鎖DNA(CpG DNA等)とが、互いに結合したものであることが好ましい態様として挙げられる。ここで、パリンドローム配列を有するCpG DNAとしては、具体的には、例えば、Class-A、Class-C及びClass-Pに該当するCpG DNAが好ましく挙げられる。
本発明に用い得るCpG DNAの具体例としては、特に限定はされないが、配列番号6〜12のいずれかで示される塩基配列を含むDNAが挙げられる。また、当該塩基配列を含むDNAに対して相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA、かつ、自然免疫賦活化能を有する(又は抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達され得る)DNAも、本発明に用い得るCpG DNAの具体例として挙げられる。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、塩(ナトリウム)濃度が150〜900mMであり、温度が55〜75℃、好ましくは塩(ナトリウム)濃度が150〜200mMであり、温度が60〜70℃での条件等が挙げられる。
さらに、本発明におけるCpG DNAとして用い得る、上記ハイブリダイズが可能なDNAとしては、FASTA、BLASTなどの相同性(同一性)検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、配列番号6〜12に示される塩基配列を含むDNAと、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同一性(相同性)を有するDNAであって、かつ、自然免疫賦活化能を有する(又は抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達され得る)DNAも挙げられる。
本発明の賦活剤は、自然免疫賦活能に優れたものであるため、アジュバントとして用いた場合、炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、IL-12、TNF-α、IFN-α、及びIFN-β等)の発現を亢進させることができる。
また、前述のとおり、本発明においてはCXCL14タンパク質変異体も包含される。当該変異体の詳細については、先に詳述したとおりである。
さらに本発明においては、当該CXCL14タンパク質変異体をコードする遺伝子も包含される。当該遺伝子としては、特に限定はされないが、例えば、下記(i)又は(ii)のDNAを含む遺伝子が挙げられる。
(i) 配列番号1に示される塩基配列において第22番目〜第24番目の塩基及び/又は第31番目〜第33番目の塩基がアルギニンのコドン(例えば、CGT、CGC、CGA、CGG、AGA、AGG)を示す塩基に置換された塩基配列からなるDNA
(ii) 当該(i)のDNAの塩基配列と80%以上の同一性(相同性)を有する塩基配列からなり、かつ抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質をコードするDNA
上記(ii)のDNAにおける同一性は、上記(i)の塩基配列に対して80%以上であるが、さらに好ましくは、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同一性である。なお、上記の抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性の、意味並びに評価及び測定の仕方については、先の詳述内容と同じである。
3.医薬組成物等
前記2.項で述べた本発明の賦活剤は、医薬組成物に含まれる有効成分として有用である。特に、各種病原体や疾患に対する自然免疫療法に用い得る医薬組成物の有効成分として有用である。
本発明の医薬組成物は、本発明の賦活剤のほか、所望のワクチン抗原を含むこともでき、この場合、当該組成物はいわゆるワクチン製剤として各種病原体や疾患に対する治療又は予防薬として用いることができる。ワクチン抗原としては、特に限定はされず、使用可能なものとして公知の各種抗原を任意に選択し用いることができるが、例えば、がん抗原、具体的には、gp100、TRP1、変異p53、survivin及びWT1などが挙げられる。ワクチン抗原としてがん抗原を用いた場合は、当該組成物は、がん予防用又は治療用、あるいはがん免疫療法用の医薬組成物(がんの予防/治療薬、がんの免疫療法薬)として用いることができる。なお、本発明の医薬組成物は、ワクチン抗原と共に使用する態様には限られず、所望の抗原が既に生体内に内在しているような場合では、ワクチン抗原と共に使用しなくても、各種病原体や疾患(がん等)に対する予防/治療又は自然免疫療法用の医薬組成物として用いることもできる。
ここで、本発明において対象となるがん種としては、特に限定はされず、使用するがん抗原の種類に応じて各種がんに使用できるが、例えば、悪性黒色腫、肺がん、腎臓がん、膵臓がん及び白血病などが適用がん種として好ましく挙げられる。
本発明の医薬組成物は、本発明の賦活剤を有効成分として含み、さらに薬学的に許容される担体を含む形態で提供されることが好ましい。
「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。また、前述した本発明の賦活剤やワクチン抗原等を生体内に投与する場合は、特に限定はされないが、例えば、コロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、当該ペプチドの生体内の安定性を高めたり、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果が期待される。コロイド分散系は、通常用いられるものであればよく限定はされないが、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを包含する脂質をベースとする分散系を挙げることができ、好ましくは、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞である。
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは医薬組成物に含有される本発明の賦活剤やワクチン抗原等の種類などにより異なっていてもよい。通常、成人一人あたり、一回につき100μg〜5000mgの範囲で投与することができるが、特に限定はされない。
例えば注射剤により投与する場合は、限定はされないが、ヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、100μg〜100mgの量を、1日〜数日平均あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合等により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
なお、本発明は、各種病原体の感染や疾患(例えば、がん等)を治療及び/又は予防する、或いは自然免疫療法を適用する医薬(薬剤)を製造するための、前記本発明の賦活剤の使用も包含するものである。また、本発明は、各種病原体の感染や疾患(例えば、がん等)の治療及び/又は予防用、或いは自然免疫療法用の前記本発明の賦活剤も包含するものである。
さらに、本発明は、前記本発明の賦活剤を用いること(すなわち患者・被験者に投与すること)を特徴とする、各種病原体の感染や疾患(例えば、がん等)の治療及び/又は予防方法、或いは自然免疫療法も包含するものであり、また、各種病原体の感染や疾患(例えば、がん等)を治療及び/又は予防する、或いは自然免疫療法を適用するための、前記本発明の賦活剤の使用も包含するものである。
また本発明は、CXCL14タンパク質又はその変異体を有効成分とする、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能の増強剤(以下、本発明の増強剤と称することがある。)を提供することもできる。
CXCL14タンパク質又はその変異体の詳細、及び、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの詳細については、前記2.項で詳述した内容が同様に適用できる。
また、本発明の増強剤の用法・用量や、使用し得る他の成分等については、上述した本発明の医薬組成物に関する説明が同様に適用できる。
本発明の増強剤により自然免疫賦活化能が増強される対象となる前記一本鎖DNA(CpG DNA等)は、本発明の増強剤と共に使用するものであってもよいし、既に生体内に内在しているものであってもよく、特に限定はされない。
本発明の増強剤の使用により、前記一本鎖DNA(CpG DNA等)のアジュバント活性が、更に亢進させることができ、これまでにない新たなワクチン抗原の発見や開発に寄与することができる。
なお、本発明は、CXCL14タンパク質又はその変異体を用いること(すなわち患者に投与すること)を特徴とする、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能の増強方法も包含するものである。また、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強するための、CXCL14タンパク質又はその変異体の使用を包含するものでもある。さらに、抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能の増強剤を製造するための、CXCL14タンパク質又はその変異体の使用を包含するものでもある。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<材料と方法>
CXCL14野生型タンパク質、CXCL14変異体および標識CXCL14の合成
実施例に用いたCXCL14タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ配列情報をベースにして合成したCXCL14 (1-28), CXCL14 (29-49), CXCL14 (50-77) の3つのペプチドのNCL法を用いた連結反応によって調製した(Tsuji K, Tanegashima K, Sato K, et al. Efficient one-pot synthesis of CXCL14 and its derivative using an N-sulfanylethylanilide peptide as a peptide thioester equivalent and their biological evaluation. Bioorg Med Chem. (2015) 23, 5909-5914.)。CXCL14- K(biotin) およびCXCL14-K(Alexa488)はそれぞれCXCL14(50-77) ペプチドのC末端側にLysと標識化合物が結合したペプチドを合成し、連結反応に用いた(以後、CXCL14-biotinおよびCXCL14-Alexa488と表記)。CXCL14(K8R), CXCL14(K11R), CXCL14(K8R/K11R)はそれぞれの対応するペプチドに変異を導入した物を合成し、連結反応により各種の変異体を合成した。各々のCXCL14由来ペプチドは、フォールディング反応後、HPLCで精製し、生理活性検証実験に供した。
TLRリガンド
Polyinosinic-polycytidylic acid sodium salt (Poly-IC), Polyuridylic acid potassium salt (Poly-U) はSigma社より購入した物を使用した。D35以外のすべてのオリゴヌクレオチドはEurofins genomicsにて受託合成された。D35はジーンデザイン社より購入した。本実施例で用いたオリゴヌクレオチドの塩基配列は、以下の表1の通りである。アンダーラインで示した塩基間の結合は、ホスホロチオエート結合である。また、*を付けた塩基(シトシン)は、5’メチルシトシンである。
骨髄由来樹状細胞(BMDC)の分化誘導
6〜8週齢のC57BL/6マウスの骨髄細胞を大腿骨と腓骨より採取し、赤血球を溶血後、10%非働化ウシ胎児血清 (FBS) 、マウスGM-CSF (10 ng/ml)、マウスIL-4 (10 ng/ml)を添加したRPMI1640培地 (Sigma)を用いて10日間培養した。分化誘導後のBMDCを24-well plate (BD Falcon)もしくはGlass bottom dish (Iwaki)に105cells/ well or dishでまき直して一晩培養した後に実験に供した。
ELISAによるサイトカイン分泌量の測定
24-well plateに播種したBMDC細胞を各種のアッセイ用の物質を含む無血清培地[0.1% BSA, 20 mM Hepes-NaOH (pH 7.5) を含むRPMI1640培地]で37℃ 6時間処理し、培養上清を回収してELISA に用いた。脾臓細胞は6〜8週齢のC57BL/6マウスの脾臓から取り出したものを溶血し、107cells/mlとなるよう10% FBS-RPMI培地を用いて調製した。調製した細胞液に各種のアッセイ用の物質を加え、37℃で24時間培養し、上清を回収した。培養上清中のサイトカイン濃度について、Mouse IL-12 (p40) ELISA MAX Deluxe (Biolegend), Mouse IL-6 ELISA MAX Deluxe (Biolegend), Mouse Tnf-aELISA MAX Deluxe (Biolegend)を用いて定量解析した。
FACSによるCpG DNAの取り込み測定
24-well plateに播種したBMDC細胞をCy3標識したODNとCXCL14とを含む無血清培地に入れ、37℃で1時間反応させた。0.25% Trypsin-EDTAで5分処理して浮遊化させた後、Cy3-ODNの取り込み率をFACS Fortessa-LSR (BD Bioscience)を用いて測定した。Cy3の蛍光強度はFlowJo software (トミーデジタルバイオロジー)で解析した。
共焦点顕微鏡によるBMDCへのCpG DNA取り込みの観察
Glass bottom plateに播種したBMDC細胞をCy3-ODN2395単独、あるいはCXCL14-Alexa488(又は非標識CXCL14)存在下に37℃で1時間反応させた。その後、細胞を4% PFA-PBS中に室温30分間置くことで固定した。リソソームマーカーLAMP-1との共染色実験では、固定後、0.05%サポニンで室温10分間処理したのち、抗LAMP-1-FITC抗体 (Biolegend)と反応させた。細胞の蛍光像は、Leica TCS SP8 共焦点顕微鏡(Leica)を用いて観察した。
CpG DNAとCXCL14の結合実験
CXCL14-biotinをStreptavidin-agar (Sigma)と4℃で1時間反応させ、PBSで洗浄後、CXCL14-biotinが10 pmol/tubeとなるように濃度を調製した。結合バッファー [50 mM Hepes-NaOH (pH 7.5), 150 mM NaCl, 1 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 1% BSA]で100 nMに調製したCy3-ODNを100μl (10 pmol)添加して4℃で1時間反応させた。競合阻害実験では、対応する非標識ODNを反応系に添加して結合実験を行った。結合後には、Wash バッファー [50 mM Hepes-NaOH (pH 7.5), 150 mM NaCl, 1% Triton-X100, 1 mM MgCl2] で3回洗浄後、30μlのSDSサンプルバッファーを加えて複合体を溶出した。Cy3-ODNの解析には15%アクリルアミドTBE-Urea-SDSゲルの電気泳動によって複合体を分離し、蛍光シグナルをLAS-3000 (富士フィルム)を用いて検出した。CXCL14-biotinの解析は、11%アクリルアミドTris-Tricineゲルの電気泳動によって分離した後、ウエスタンブロットし、Streptavidin-POD (GE lifescience)と反応させた後にECL-prime (GE lifescience)で化学発光させてLAS-3000 (富士フィルム)を用いて検出した。酸性条件下での結合実験には、酸性結合バッファー[50 mM PIPES-NaOH (pH 6.0), 150 mM NaCl, 1 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 1% BSA]を用いた。
Scatchard plot解析
さまざまな濃度のCy3-ODNで上記の結合実験を行った後、Streptavidin agarを除いた上清を回収し、非結合量(Free)測定用のサンプルとした。結合量(Bound)の測定には、Elution buffer [Tris-HCl pH 7.5, 200 mM NaCl, 5mM EDTA, 1% SDS, proteinase K (0.02 mg/ml)]を加えてCy3-ODNを溶出したサンプルを用いた。これらのサンプルのCy3蛍光レベルをVarioSKAN FLASH (Thermo)を用いて測定し、その値を元にScatchard plot解析を行った。
RT-PCR
細胞をIsogen (ニッポンジーン)で溶解し、常法に従ってTotal RNAを抽出した。PrimeScript Master Mix (Takara)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを基質として、Thunderbird SYBR qPCR mix (Toyobo) とLight Cycler 480 (Roche) を用いてreal-time PCR反応を行った。発現レベルはb-actin mRNA の発現レベルを内部標準としたRelative quantification法にて決定した。
マウスIL-12p40, IL-6, b-actin mRNAの検出に用いたプライマーの配列は、以下の通りである。
5’- aggagacagaggaggggtgt -3’(配列番号13)
5’- acagcttttgggggactctt -3’(配列番号14) (IL-12p40; 249 bp)
5’- AACGATGATGCACTTGCAGA -3’(配列番号15)
5’- GAGCATTGGAAATTGGGGTA -3’(配列番号16)(IL-6: 282 bp)
5’- GTGGGCCGCCCT AGGCACCA -3’(配列番号17)
5’- TGGCCTTAGGGTTCAGGGGG -3’(配列番号18)(b-actin; 240 bp)
B16F10メラノーマ移植と腫瘍内投与実験
106個のB16F10を100μlのPBSに懸濁し、10週齢のC57BL/6マウスの背側皮下に26G針付きシリンジを用いてそれぞれ移植した。移植後9日目から経時的に腫瘍の短辺、長辺を3日おきに計測し、腫瘍の長辺が5 mm以上になった時点からアジュバントの腫瘍内投与を開始した。腫瘍内投与はPBS, 0.2 nmol ODN2395, 0.2 nmol CXCL14あるいは0.2 nmol ODN2395+0.2 nmol CXCL14を加えた溶液を、投与開始時から3日おきに4回, 20μlの容量で行い、マウスの生存率と腫瘍容積を定期的に測定した。腫瘍容積は「短辺×短辺×長辺×1/2」として計算した。
ワクチンアジュバント活性の測定
6週齢のC57BL/6マウス背側皮下に100μgのOvalbumin (OVA: Hyglos)とPBS, 0.2 nmol ODN2395, 0.2 nmol CXCL14あるいは0.2 nmol ODN2395+0.2 nmol CXCL14を加えた溶液を混合して投与した。10日後、同じ組み合わせのカクテルを同様に投与して、boostし、その7日後に血清を経心採血により採取した。抗OVA-IgG2bの抗体価は、anti-mouse IgG2b-biotin (Biolegend)とOVA-IgG1マウスキットを組み合わせて決定した。
<結果>
CXCL14はCpG DNAによる炎症性サイトカインの誘導を増強する
CXCL14とTLRシグナルとの関連を調べるため、BMDCをCXCL14存在下又は非存在下でODN2395 (TLR9リガンド)、ODN2395ΔCG (ODN2395からCpG配列を除去したコントロールODN)、Poly-IC (TLR3リガンド)、またはPoly-U (TLR8リガンド)と反応させる実験を行った。ODN2395とCXCL14とを同時に処理したときにだけ、IL-12p40, IL-6, TNF-aの分泌が強く誘導された (図1A〜C)。TLR9を活性化できないODN2395ΔCGには、CXCL14依存性のサイトカイン誘導活性はなかった (図1A〜C)。また、Poly-ICとPoly-UはIL-6やTNF-aの分泌を誘導したが、CXCL14による促進は観察されなかった (図1A〜C)。マウス脾臓細胞においても、ODN2395とCXCL14は相乗的に働いてIL-12p40, IL-6, TNF-aの分泌を有意に促進した (図1D〜F)。これらの実験結果は、CXCL14にはTLR9リガンドであるCpG DNAの炎症性応答を亢進させる活性があることを証明するものであった。
CXCL14によるCpG DNA取り込みの増強
CXCL14によるCpG DNAの活性増強メカニズムを解析するため、BMDCがCy3-ODN2395を取り込む様子を、共焦点顕微鏡を用いて観察した。30 nMのCy3-ODN2395単独では、BMDCへの取り込みがほんのわずかであったのに対して (図2A上段)、そこへ300 nMのCXCL14を添加した場合では、Cy3-ODN2395の取り込み量が大幅に増加した (図2A下段)。また、CXCL14存在下ではCy3-ODN2395が細胞内の小胞構造に取り込まれ、リソソームのマーカーであるLAMP-1と共局在した (図2A下段, マージ図)。TLR9はエンドソームやリソソームといった細胞内小胞に存在しているため、Cy3-ODN2395の存在場所は活性とよく合致している。さらに、Alexa488で蛍光標識したCXCL14とCy3-ODN2395とを添加したBMDCでは、両者が共局在した小胞が細胞内に多数観察された (図2B上段)。CXCL14によるCy3-ODN2395の細胞内取り込みの促進は、FACS解析によっても確認された(図2C, D)。CpG DNAはこれまで用いてきたODN2395を含め、一般的にはヌクレアーゼ耐性を持つホスホロチオエート化されたDNAが用いられる。天然型リン酸バックボーンを持つODN2395(p) (pは天然型リン酸バックボーンを示す) は、100 nMという高い濃度でもほとんど細胞に取り込まれないが、CXCL14存在下では、ホスホロチオエート化されたODN2395と同程度にまで細胞内に取り込まれた (図2C)。したがって、CXCL14はCpG DNAの細胞内取り込みを促進することによって、TLR9を活性化しているものと推察される。より生理的な条件に近づけるため、これ以降の実験のTLR9リガンドには天然型(リン酸バックボーン)のODNを使用した。
CXCL14によるCpG DNA取り込み増強の特異性
CXCL14とCpG DNAの相乗作用が他のケモカインにも当てはまるかどうかを知るために、近縁のケモカイン分子であるCXCL12とCXCL8を用いて検討した (図3)。その結果、CXCL12とCXCL8のどちらにおいても、Cy3-ODN2395(p)の細胞内取り込みを促進する活性は検出されなかった (図3A, B)。また、脾臓細胞におけるODN2395によるIL-12p40, IL-6, TNF-a分泌誘導は、CXCL12添加によって変化しなかった (図3D〜E)。したがって、CXCL14によるCpG DNAの活性亢進はCXCL14に特異的な機能である。
次に、CXCL14がCpG DNAを認識する配列特異性を明らかにするため、ODN2395ΔCG、異なったクラスのCpG DNAであるODN1826 (Class-B)、ODN1585 (Class-A) を用いて、CXCL14存在下又は非存在下でのBMDCへの取り込み実験を行った (図4)。CXCL14はODN2395ΔCGの取り込みを増強したことから (図4A, B)、CpG配列自体はCXCL14の特異性に関係していない。それに対して、ODN1826ではCXCL14による細胞内取り込みの促進は全く観られなかった(図4A, B)。ODN1585については、CXCL14がなくても取り込まれたものの、CXCL14添加によってさらに取り込み量が増加した(図4A, B)。Class-AとClass-CのCpG ODNにはパリンドローム配列が存在し、分子内あるいは分子間で二次構造を形成することから、CXCL14はパリンドローム配列を認識していると推察される。CXCL14はODN2395以外のパリンドローム型CpG DNA (Class-C)であるODN D-SL3とも相乗的に働いて、脾臓細胞のIL-12p40, IL-6, TNF-a産生を促進した (図4C〜E)。以上の実験結果から、CXCL14はClass-B CpG DNAには作用せず、パリンドローム配列をもつCpG DNAの中でも特にClass-C ODNに対して強い活性増強効果を示すことが判明した。
CXCL14とCpG DNAの直接的な結合
CXCL14とODN2395とが細胞内で共局在しており、かつCXCL14が特定のCpG DNAを認識していることから、両者が直接結合していると推察された。そこで、in vitroでの結合実験を行った。streptavidin-agarを用いたpull down実験において、Cy3-ODN2395はCXCL14-biotinと共沈降し、この結合は過剰量の未標識ODN2395によって競合阻害された。このことから、CXCL14がODN2395と特異的に結合することが分かった (図5A)。また、Cy3-ODN2395(p), Cy3-ODN2395ΔCG(p), Cy3-ODN1826(p), Cy3-ODN1585(p) (いずれもリン酸基バックボーン) についてCXCL14との結合実験を行った。
ODN2395ΔCG(p)とODN1585(p)は、ODN2395(p)と同様にCXCL14に特異的に結合した (図5B)。それに対して、Class-B CpG DNAであるODN1826(p)はCXCL14に全く結合しなかった (図5B)。したがって、CXCL14はTLR9とは異なった特異性をもってCpG DNAに直接結合し、それがCpG DNAの細胞内輸送に必須であることが判明した。
TLR9が存在するエンドソームやリソソームは酸性であるため、次にpH 6.0のバッファー中でCXCL14とODN2395の結合実験を行った。興味深いことに、酸性条件下ではCXCL14とODN2395との高親和性結合はおこらなかった (図5C)。また、CXCL14-ODN2395複合体は、4℃, pH 6.0において、Koff= 7 minという迅速な解離が誘導されることが明らかとなった (図5D)。このことから、CXCL14/CpG ODN複合体は、CXCL14/CpG ODN受容体のエンドサイトーシスに伴ってリソソームへ移行し、そこで両者の結合が乖離してCpG ODNがTLR9へと受け渡されるというモデルが考えられる (図5E)。さらに、ODNとCXCL14との結合親和性をScatchard plotにより解析したところ、CXCL14はpH 7.5の細胞外pH条件で、ODN2395 (Class-C), ODN2395 (p), ODN2395ΔCG (p), ODN-D-SL03 (Class-C), ODN21798 (Class-P), D35 (Class-A), and ODN1585 (p) (Class-A) といったClass-A, Class-C及びClass-P 型のオリゴヌクレオチドにKd=9-100 nMの高親和性で結合していることが明らかとなった (図6A, C, D, F-H, 表1)。一方で、Class-B 型のODN1826 (p) に対する結合は検出されなかった (図6E, 表1)。また、ODN2395のCytosine残基の5位をすべてメチル化したODN2395(5meC)は、非メチル化のものに比べCXCL14への親和性が低下していることが分かった (図6B, 表1)。このことは哺乳類ゲノムに存在するメチル化された自己DNAよりも、細菌等に由来する非メチル化DNAへ強い結合をすることを示すものであった。
CXCL14欠損マウスのCpG DNA反応性
CXCL14によるCpG DNAのTLR9活性化がin vivoでもおこっているどうかを理解するために、ODN2395をCXCL14ホモ欠損マウスとヘテロ欠損マウスに投与して、両者の血中IL-12p40濃度を比較した (図7A)。ODN2395を尾静脈注射後24時間後のIL-12p40レベルはCXCL14ホモ欠損マウスの方が有意に低かった (図7B)。さらに、ODN2395投与後のCXCL14ホモ欠損マウスの脾臓では、MHC class IIを高発現する活性化CD8+conventional樹状細胞が有意に減少していた (図7C)。これらの結果は、CXCL14はin vivoでもCpG DNAを介した炎症性応答に関与していることを示している。
CpG DNAによるTLR9活性化をより強く惹起するCXCL14変異体
CXCL14のアミノ酸変異によってCpG DNAに対する結合能をさらに高めることを試みた。化学合成反応によってアミノ酸配列を改変した各種のCXCL14変異体におけるCy3-ODN2395(p)の取り込み促進活性をFACSにて解析した。CXCL14N末端側に位置するLys残基をArgに置換した3種類の変異体 CXCL14(K8R), CXCL14(K11R), CXCL14(K8R/K11R)では、Cy3-ODN2395(p)の取り込み率が野生型CXCL14と比べて顕著に高まっていた (図8A, B)。さらに、CXCL14(K8R)変異体では、Cy3-ODN2395(p)との相乗作用によるIL-12p40, IL-6遺伝子の転写誘導率が野生型CXCL14と比べて5倍以上亢進していた (図8C, D)。これらの結果は、CXCL14(K8R), CXCL14(K11R), CXCL14(K8R/K11R)が、活性増強型のCXCL14変異体であることを示している。
CXCL14による高活性型CpG ODN取り込みの増加および活性増強
ODN-D-SL03 (Class-C), ODN21798 (Class-P), D35 (Class-A)は単独でも高い活性を持つCpG ODNである。これらのCpG ODNもCXCL14との高親和性結合が見られたことから (図6)、CXCL14による取り込み増強活性およびサイトカイン誘導能の上昇について調べた (図9, 10)。CXCL14の添加により、ODN-D-SL03, ODN21798, D35の三種のODNともにBMDCへの取り込み増強が見られた (図9A, B)。ODN-D-SL03とODN21798については、BMDCにおいて30 nMという非常に低濃度でも強いIL-12p40, およびIL-6の産生誘導がCXCL14との組み合わせで見られた (図10A, B)。これらの結果から、CXCL14は、ODN2395だけでなくパリンドローム配列をもつODN-D-SL03 (Class-C), ODN21798 (Class-P) の活性を増強できることが明らかとなった。
CpG ODN/CXCL14の同時投与によって、腫瘍増殖が抑制される
CpG ODN/CXCL14のin vivo抗腫瘍効果を調べるために、B16F10メラノーマ細胞を移植したC56BL/6担癌マウスへの腫瘍内投与実験を行った (図11A)。CpG ODNの濃度は、一般的に抗癌実験に使用される量の1/100程度とし、CXCL14での増強効果を調べた。メラノーマの平均容積は、ODN2395とCXCL14の同時投与群において、投与後6日目で有意に減少し、9日目でも減少傾向が維持された (図11B, C)。また、CXCL14単独投与群の腫瘍サイズの抑制傾向は見られた。さらに、PBSとODN2395単独投与マウス群の生存期間の中央値が約24日であったのに対して、CXCL14単独投与群とODN2395/CXCL14投与群ではどちらも約29日まで延長した (図12A)。この部分的な抗癌活性が、免疫細胞の活性化によるものかどうかを調べるため、in vitroの細胞障害アッセイを行った (図12B)。脾臓細胞を24時間CXCL14, ODN2395, ODN2395+CXCL14で刺激し、B16F10に作用させると、ODN2395+CXCL14で刺激した脾臓細胞でのみ有意なB16F10の細胞死が誘導された。この活性は主にNK細胞が担っていると考えられることから、in vivoでの部分的な抗癌活性は、NK細胞の活性化による可能性がある。これらの実験は、CXCL14がCpG ODNの免疫賦活化効果を高め、腫瘍免疫を増強することを示すものであった。
ODN2395/CXCL14のワクチンアジュバント活性
CpG ODNの抗原との共投与によるワクチンアジュバント活性をCXCL14が増強するかどうかについて、Ovalbuminをモデル抗原として検討した (図13A)。 Th1型の免疫応答であるIgG2bの産生は、OVA単独の投与に比べ、ODN2395+CXCL14をアジュバントとして用いた群で上昇し、フロイント完全アジュバントで誘導される強い免疫応答に匹敵した (図13B)。また、ODN2395+CXCL14によるOVA抗体価の誘導はODN2395単独よりも高く、ODN2395+CXCL14の組み合わせがTh1応答の誘導に有用なアジュバントとして働くことが明らかとなった。
<考察>
CpG DNAを感染性病原体・がん抗原・アレルゲンに対するワクチンアジュバントとして利用する試みが欧米で実施されており、実際それらには炎症性応答を介した免疫賦活活性が存在することが示されている。本発明では、CXCL14がCpG DNAの細胞内輸送効率とそれによるサイトカイン誘導能を大幅に高めることを初めて明らかにした。
CpG DNAのレセプターTLR9はエンドソームやリソソームといった細胞内小胞に存在しており、CpG DNAがどのようにして細胞内へ取り込まれてレセプターと接触・結合するのかについては、まだ解明されていなかった。先行研究では、granulinなどの分泌性タンパク質がCpG DNAに直接結合して取り込みを促進することが報告されている(Park B, Ludovico B, Lee S, et al. Granulin Is a Soluble Cofactor for Toll-like Receptor 9 Signaling. Immunity (2011) 34, 505-513.)。本発明においては、世界で初めて、特定のケモカインCXCL14がCpG DNAに高親和性で結合すること、そしてCXCL14がCpG DNAに対する免疫応答に使われていることを証明した。CXCL14欠損マウスが軽度の肥満性糖尿病にしかならなかったケースでも、脂肪組織におけるIL-6などの炎症性サイトカインの発現低下が観察されていた。これまで、CXCL14による炎症反応増強はマクロファージや樹状細胞の動員によって説明されてきたが、本発明における発見によって、実はCXCL14がTLR9シグナルを活性化する役割を果たしていることが推察された。損傷組織から放出されるミトコンドリアDNAはCpG DNAを多く含み、内在性のTLR9リガンドとして働くことが明らかとなってきている。CXCL14はこのような内在性のCpG DNAとも複合体を形成して、炎症反応を惹起すると推察される。今後、CXCL14とTLR9シグナルのin vivoクロストークが証明されれば、自己免疫疾患や肥満性糖尿病に特徴的な慢性炎症惹起のメカニズム解明にも貢献できると考えられる。
CXCL14のCpG DNAへの結合には配列特異性が存在した。CXCL14はClass-A、Class-C及びClass-PのODNに結合し、細胞内取り込みとサイトカイン誘導を促進したが、Class-BのCpG DNAに対してはまったく結合しなかった。Class-AとClass-Cに共通する特徴としては、パリンドローム配列の存在が挙げられる。従って、CXCL14はCpG DNA中のパリンドローム配列が形成するDNAの2次構造 (ヘアピン構造や分子間二重鎖)を認識していると推察された。また、CXCL14は人工的なホスホロチオエート修飾ODNだけでなく、天然型ホスホジエステルODNに対しても強い親和性を持ち、細胞内へと運び入れた。ホスホロチオエート結合ODNには、補体系の非特異的反応や血小板の活性化等の副作用を引き起こす可能性が最近の研究で指摘されている。そのようなアナログ型核酸を使用せずに、天然のリン酸バックボーンを持つCpG DNAによって効率良く自然免疫を賦活化する方法の開発が望まれていた。本発明により発見されたCXCL14と天然型CpG ODNの組み合わせによって、より安全性の高い自然免疫賦活化法を開発することができる。
本発明者はこれまでの研究過程において、様々なCXCL14変異体を作出してきた。その中でN末端側の8番目と11番目のLysをArgに置換したCXCL14が、野生型CXCL14より強力なCpG DNA輸送活性を持つことを見出した。CXCL14(K8R)に関しては、CpG DNAを介したサイトカインの誘導促進活性も顕著に増強されていた。しかしながら、上記の変異体は、S型のオリゴヌクレオチドに対しては、野生型との活性増強のレベルの差が顕著でなかったため(未発表データ)、今後S型のCpG ODNへの活性が増強した新たなCXCL14変異体の開発が望まれる。CXCL14とCpG DNAとの結合様式が分子レベルで解明されれば、さらに強力なCXCL14変異体やCXCL14の構造模倣化合物を創出できる可能性がある。
ワクチンアジュバントは、自然免疫を賦活化して生体内でのワクチン効果を増強する。近年、ワクチンは感染症だけでなく、がん特異的T細胞の賦活化による癌免疫療法にまで適用範囲が広がっている。がんに対するワクチン療法(免疫療法)では、わずかな量のがん抗原を感度よく検出して免疫担当細胞を集めなければならない。したがって、低濃度で効く強いアジュバントが必須であった。また、既存の感染性病原体に対するワクチンに関しても、免疫機能が弱い幼児や高齢者への投与を考慮して、少ない回数の接種によって免疫を誘導できる高性能のワクチンアジュバントの開発が望まれていた。CpG DNAは、TLR9を介して非常に強く炎症性応答を引き起こせることから、ワクチンアジュバントとして有用である。本発明では、ODN2395とCXCL14との組み合わせで有意なメラノーマの縮小とin vitroでの抗癌活性の誘導を見出した。また、OVAをモデル抗原としたODN2395とCXCL14とのアジュバント活性も、Th1型の免疫応答を増強させた。これらの免疫増強は、完全な腫瘍の退縮には不十分であったが、今後CpG ODNの最適化や他の免疫療法と組み合わせることで、癌治療に活かすことができる可能性がある。本発明において見出されたCXCL14とCpG DNAは、その相乗的な効果により、一層強力で副作用の少ないワクチンアジュバントを提供することができ、がん等の各種免疫活性化剤の開発に新しい道を拓くものである。
配列番号3〜5:合成ペプチド
配列番号6〜18:合成DNA

Claims (20)

  1. 抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAと、
    下記(a)〜(e)のタンパク質:
    (a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質、
    (b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
    (e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
    とを含む、自然免疫賦活剤。
  2. 抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項1に記載の賦活剤。
  3. 前記一本鎖DNAが、TLR9リガンド活性を有するCpG DNAである、請求項1又は2に記載の賦活剤。
  4. CpG DNAが、パリンドローム配列を有するCpG DNAである、請求項3に記載の賦活剤。
  5. CpG DNAが、Class-A、Class-C又はClass-PのCpG DNAである、請求項3又は4に記載の賦活剤。
  6. CpG DNAが、配列番号6〜12のいずれかで示される塩基配列を含むDNA、又は、該塩基配列と80%以上の同一性を有し且つ自然免疫賦活化能を有するDNAである、請求項3〜5のいずれか1項に記載の賦活剤。
  7. 前記一本鎖DNAは、構成ヌクレオチドの一部又は全部がホスホロチオエート修飾されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の賦活剤。
  8. 前記一本鎖DNAと、前記(a)〜(e)のいずれかのタンパク質とが、互いに結合したものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の賦活剤。
  9. 下記(a)〜(e)のタンパク質:
    (a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質、
    (b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
    (e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
    を含む、自然免疫賦活剤。
  10. 炎症性サイトカインの発現を亢進させ得るものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の賦活剤。
  11. 炎症性サイトカインが、IL-6、IL-12、TNF-α、IFN-α、及びIFN-βのうちの少なくとも1種である、請求項10に記載の賦活剤。
  12. ワクチンアジュバントである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の賦活剤。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の賦活剤を含む、医薬組成物。
  14. さらにワクチン抗原を含む、請求項13に記載の組成物。
  15. ワクチン抗原ががん抗原である、請求項13又は14に記載の組成物。
  16. がん治療用、がん予防用又はがん免疫療法用医薬組成物である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の組成物。
  17. 抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能の増強剤であって、
    下記(a)〜(e)のタンパク質:
    (a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質、
    (b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (c) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (d) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
    (e) 前記(a)〜(d)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質
    を含む、前記増強剤。
  18. 下記(a)〜(d)のタンパク質:
    (a) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において、リジン残基のうちの少なくとも1つをアルギニンに置換したアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (b) ヒトCXCL14ケモカインタンパク質のアミノ酸配列において第8番目及び/又は第11番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質、
    (c) 配列番号3〜5のいずれかで示されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は、
    (d) 前記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質。
  19. 請求項18に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  20. 配列番号1に示される塩基配列において第22番目〜第24番目の塩基及び/又は第31番目〜第33番目の塩基がアルギニンのコドンを示す塩基に置換された塩基配列からなるDNA、或いは、該DNAの塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ抗原提示細胞のエンドソーム又はリソソームに送達される一本鎖DNAの自然免疫賦活化能を増強させる活性を有するタンパク質をコードするDNA
    を含む遺伝子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020032895A3 (en) * 2018-08-10 2020-03-19 Hacettepe Üni̇versi̇tesi̇ An immunomodulator peptide derived from a cxcl14 amino terminal precursor sequence

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