図1を用いて、本発明の一実施形態として、コンバイン1の全体構成について説明する。図1は、コンバイン1の側面図である。なお、図1には、コンバイン1の前後方向及び上下方向を表す。図1の紙面表裏方向は、コンバイン1の左右方向となる。
コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8、及び、操縦部9を備える。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。また、脱穀後の排藁は排藁処理部7によって処理される。動力部8は、これらの走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7に動力を供給する。そして、操縦部9によってコンバイン1が稼働する。
走行部2は、機体フレーム20の下方に設けられている。走行部2は、トランスミッション21(図9参照)と、左右一対の走行装置(以降「クローラ式走行装置」とする)22・22とを備える。トランスミッション21は、動力部8のエンジン8aの動力(以降「回転動力」とする)をクローラ式走行装置22・22へ伝達する。クローラ式走行装置22・22は、コンバイン1を前後方向に走行させる。また、クローラ式走行装置22・22は、コンバイン1を左右方向に旋回させる。
刈取部3は、走行部2の前方に設けられている。刈取部3は、デバイダ31と、引起装置32と、切断装置33と、搬送装置34とを備える。デバイダ31は、圃場の穀稈を引起装置32へ案内する。引起装置32は、デバイダ31によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置33は、引起装置32によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置34は、切断装置33によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。図1には、搬送装置34として、縦搬送装置134と補助搬送装置135とを示す。
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、扱室に収容された扱胴42を備える。また、刈取部3の後方であって、脱穀部4の前方には、穀稈を刈取部3から脱穀部4へ搬送するフィードチェン41が設けられている。フィードチェン41は、搬送装置34から穀稈を受け継いで排藁処理部7へ搬送する。また、搬送装置34からフィードチェン41への搬送を中継する受継搬送装置136が、フィードチェン41の前方に設けられている。扱胴42は、フィードチェン41によって搬送されている穀稈を脱穀する。
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置51と、風選別装置52とを備える。揺動選別装置51は、脱穀部4から落下した脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置52は、揺動選別装置51によって選別された脱穀物を更に穀粒と藁屑等に選別する。揺動選別装置51及び風選別装置52によって選別された穀粒は貯留部6へと搬送される。揺動選別装置51及び風選別装置52によって選別された藁屑等は排出される。
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられている。貯留部6は、グレンタンク61と、排出装置62とを備える。グレンタンク61は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置62は、グレンタンク61に貯留されている穀粒を任意の場所に排出できる。
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、フィードチェン41から搬送された穀稈を切断して排出する部分である。
動力部8は、選別部5の右側方に設けられている。動力部8は、エンジン8aを備える。エンジン8aは、回転動力を発生させる。
操縦部9は、動力部8の上方に設けられている。操縦部9は、運転席91と、ハンドル92、主変速レバー93(図11参照)、副変速レバー94(図11参照)、作業クラッチレバー95(図11参照)等の複数の操作具とを備える。
運転席91は、作業者が座る座席である。ハンドル92は、コンバイン1の進行方向を変更する操向ハンドルである。主変速レバー93は、トランスミッション21の主変速装置(不図示)の「前進」、「ニュートラル」、「後進」の三つのポジションを切り替えることでコンバイン1の進行方向を切り替えるとともに、前進方向、後進方向への倒し量でコンバイン1の走行速度を変更する。主変速レバー93には、主変速レバー93の操作位置を検出する主変速シフトセンサ86(図10参照)が接続されている。
副変速レバー94は、トランスミッション21の出力及び回転数を所定範囲に設定保持するための操作具である。副変速レバー94は、トランスミッション21の副変速装置(不図示)を操作し、副変速装置の出力及び回転数を、標準(作業速)、ニュートラル(停止)、低速(畦越)の三段階の変速段に設定する。つまり、副変速レバー94は、「標準」、「ニュートラル」、「畦越」の三つの操作位置を有する(図11参照)。副変速レバー94には、副変速レバー94の各操作位置を検出する副変速シフトセンサ87(図10参照)が接続されている。
作業クラッチレバー95は、刈取部3及び脱穀部4の駆動/停止を切り替える操作手段であり、「刈取入り・脱穀入り」、「刈取切り・脱穀入り」、「刈取切り・脱穀切り」の三つの操作位置を有する(図11参照)。作業クラッチレバー95には、作業クラッチレバー95の各操作位置を検出する選択位置センサ88(図10参照)が接続されている。
作業者は、各操作具を適宜操作することによってコンバイン1を稼動させる。このような構成により、作業者は、運転席91に着座した状態でコンバイン1を操縦できる。
また、コンバイン1は、穀稈ガイド40を備えている。穀稈ガイド40は、手扱ぎ作業時に穀稈を押えてフィードチェン41へ案内するものである。穀稈ガイド40は、コンバイン1の左側部に設けられている。穀稈ガイド40は、刈取部3側に設けられた回転支点を中心にして回動自在に構成されている。
図2に示すように、フィードチェン41は、サイドカバー43によってコンバイン1の機体外方から覆われている。サイドカバー43の上方に設けられた藁押え台カバー44は、扱胴42(図1参照)を機体外方から覆っている。藁押え台カバー44には、緊急停止スイッチSw0が取り付けられている。緊急停止スイッチSw0は、作業者の押圧操作によって入り切りが切り替えられる押圧式のスイッチであって、オンに切り替えられるとエンジン8aの駆動が強制的に停止されてフィードチェン41の駆動が停止される。
次に、図2〜図4を用いて、穀稈ガイド40について説明する。
図2に示すように、穀稈ガイド40は、回転軸40aを介して補助搬送装置135のガイドフレーム114に支持されている。ガイドフレーム114は、補助搬送装置135の挟扼ガイド(不図示)を支持している。また、ガイドフレーム114は、引起変速ケース35に固定されている。引起変速ケース35は、回転動力を引起装置32に伝達する引起縦伝動軸162(図9参照)及び引起装置32の出力及び回転数を変速する引起変速装置170(図9参照)を収容している。
図3と図4とに示すように、穀稈ガイド40は、フィードチェン41から離間した状態と、フィードチェン41に近接した状態との間で回転軸40aを中心として回動自在に構成されている。穀稈ガイド40は、コンバイン1の左側面視で時計回りに回動することによってフィードチェン41に近づいた状態に移行する。図中には、穀稈ガイド40の回動の方向を表す矢印を示す。なお、コンバイン1の左側面とは、図3に示すフィードチェン41を紙面表面から見た方向である。
回転軸40a付近において穀稈ガイド40には、引張バネ40bが引っ掛けられている。引張バネ40bは、フィードチェン41から離間した状態に向けて穀稈ガイド40を引っ張っている。
穀稈ガイド40は、フィードチェン41の駆動を許可する第一スイッチSw1と、第一スイッチSw1のオンとオフとの切り替えを操作する操作具としての操作レバー401と、操作レバー401を回動自在に支持するフレーム板402と、フレーム板402に固定されたガイドロッド403とを有している。回転軸40aは、フレーム板402と一体となるように固定されており、ガイドフレーム114に相対回転自在に支持されている。
フレーム板402と背面板404との間で回転軸40aは筒部材405に相対回転自在に挿入され、筒部材405の外周面にはブラケット406が固定されている(図6参照)。ブラケット406がガイドフレーム114に固定されることにより、回転軸40a及び穀稈ガイド40がガイドフレーム114に相対回転自在に支持される。このようにして、コンバイン1においては、穀稈ガイド40の回転支点が刈取部3側に設けられている。
ガイドロッド403は、穀稈に接触するときに搬送方向に沿ってフィードチェン41に対面する対面部407と、対面部407の上手側にあって対面部407から回転軸40aに向かって湾曲した間隙形成部408と、対面部407の下手側にあってフィードチェン41から離れる方向に対面部407から湾曲した先端部409とを含む。このような形状により、ガイドロッド403は、押付部材として、フィードチェン41に近づいた状態で穀稈に接触して、フィードチェン41に穀稈を押し付けることができる。ガイドロッド403は、多角形状として、円形状の断面を有している。
次に、穀稈ガイド40の周囲の構造について説明する。
穀稈ガイド40がフィードチェン41に近接した状態において、穀稈ガイド40は、受継搬送装置136及びフィードチェン41の搬送始端部41aの上方に配置される。
受継搬送装置136は、縦搬送装置134から穀稈を受け継ぐ。更に、受継搬送装置136は、チェン(以下、受継搬送チェンという)137を有し、フィードチェン41に向かって穀稈を搬送する。受継搬送装置136は、縦搬送装置134の搬送終端部とフィードチェン41の搬送始端部41aとの間において、フィードチェン41の搬送始端部41aに沿って設けられる。受継搬送装置136の搬送始端部138は、フィードチェン41の搬送始端部41aよりも前方に位置する。
受継搬送装置136は、縦搬送装置134の後方に配置される。また、受継搬送装置136は、フィードチェン41の搬送始端部41aよりも右方(言い換えると、コンバイン1の機体内側)に配置されるとともに、補助搬送装置135よりも左方に配置される。受継搬送装置136の搬送始端部138は、補助搬送装置135の搬送終端部の左下方に位置する。
受継搬送チェン137は、縦回りに回転しており、側方へ搬送する力の成分を有していない。従って、受継搬送チェン137は、穀稈を後方に搬送する。コンバイン1の平面視において、受継搬送チェン137の搬送経路と、フィードチェン41の搬送経路とは略平行であって(図6参照)、前後方向を向いている。
図3に示すように、コンバイン1には、手扱ぎ作業時に穀稈を支持して待機させるとともに、穀稈ガイド40の回動に合わせて穀稈を案内する案内斜板45が設けられている。案内斜板45は、回転軸40aよりも後方においてガイドフレーム114に支持されている。案内斜板45は、ガイドフレーム114に支持される台座45aと、台座45aの後方に位置して後方且つ下方に向かって伸びるスロープ45bとを含む。スロープ45bは、受継搬送チェン137及びフィードチェン41の搬送方向に沿って下向きに傾斜している。スロープ45bの先端(下端)45cは、受継搬送チェン137とフィードチェン41との合流部139の上方且つ後方に位置している。このような形状により、案内斜板45は、穀稈を支持して穀稈の滑落を防止することができる。
コンバイン1は、第一スイッチSw1の他に、フィードチェン41の駆動を許可する第二スイッチSw2を備えている。第二スイッチSw2は、穀稈ガイド40よりもフィードチェン41から離れた位置、即ち、穀稈ガイド40の前方に配置されている。第二スイッチSw2は、穀稈ガイド40の回転軸40aよりも前方において、ガイドフレーム114に支持されている。第二スイッチSw2は、作業者の押圧操作によって入り切りが切り替えられる。なお、第二スイッチSw2は、常時オフであり、作業者が押している間のみオンに切り替えられる。
コンバイン1は、第一スイッチSw1及び第二スイッチSw2がオンに切り替えられる場合に、フィードチェン41を駆動する。
なお、穀稈ガイド40には、コンバイン1の機体に対するフレーム板402の回転角度を検知する回転角度センサ89が設けられている(図10参照)。回転角度センサ89は、例えば、ポテンショメータによって構成されている。
次に、図5と図6と用いて、第一スイッチSw1のオンとオフとを切り替えるための穀稈ガイド40の構造について説明する。
上述のように、穀稈ガイド40には、当該穀稈ガイド40の回動を操作する操作レバー401が設けられている。操作レバー401は、当該穀稈ガイド40の回動を操作するための取っ手となる。
図5に示すように、第一スイッチSw1は、操作レバー401の操作に応じてオンとオフとが切り替えられる。第一スイッチSw1は、穀稈ガイド40がフィードチェン41に近づいた状態で、図中の矢印が示すように操作レバー401がコンバイン1の左側面視で時計回りに回転することによって、オンに切り替えられる。作業者は、穀稈ガイド40をフィードチェン41に向けて回動させた後に、更に操作レバー401をフィードチェン41に近接させるように操作することで第一スイッチSw1をオンとし、操作レバー401をフィードチェン41から離間させるように操作することで第一スイッチSw1をオフとし、そのオンとオフとを切り替えることが可能である。
図6に示すように、回転支点となる回転軸40aは、フレーム板402と背面板404とに挟み込まれてこれらに一体となるように固定されている。また、ストッパ軸41sがフレーム板402と背面板404とに挟み込まれるとともにフレーム板402と背面板404とに固定されており、回転軸40a、ストッパ軸41s、フレーム板402及び背面板404が一体となっている。ストッパ軸41sは、回転軸40aと平行に伸びている。ストッパ軸41sは、操作レバー401の回動範囲の限界を設定するものである。操作レバー401のレバー軸がストッパ軸41sに接触する位置で、操作レバー401の回動範囲の限界が設定される。
図8(A),(B),(C),(D),(E)を用いて、穀稈ガイド40の構造について、詳細に説明する。
背面板404には、回転軸40aの軸方向に沿ってフレーム板402に向かって折り曲げられた屈曲部40fが形成されており、屈曲部40fに第一スイッチSw1が載置されている。押圧操作によってオンに切り替えられる第一スイッチSw1のボタンが、屈曲部40fにあけられた孔40pを貫通している。
操作レバー401は、操作中心軸40cを介してフレーム板402に相対回転自在に支持されている。穀稈ガイド40において、操作中心軸40cの位置は、ガイドロッド403の先端部409と回転軸40aとの間に配置されている。操作レバー401には、フレーム板402側のリンク機構411と背面板404側のリンク機構412とが連結されており、二つのリンク機構411・412の間に回転筒413が設けられている。
回転筒413には、枢軸40dが挿入されている。枢軸40dは、フレーム板402と背面板404とに挟み込まれて回転軸40aと平行に伸びている。また、回転筒413の外周面には、押圧板414が固定されており、操作レバー401の回動に応じて回転筒413とともに押圧板414が枢軸40d回りに回転する。ガイドロッド403に近接する方向への操作レバー401の回動に応じて押圧板414が移動すると、第一スイッチSw1のボタンが押圧板414によって押圧される。操作レバー401と背面板404とには、ガイドロッド403から離れる方向に操作レバー401を付勢する捩りコイルバネ410の各端が引っ掛けられている。操作レバー401は、捩りコイルバネ410によって、フィードチェン41に近接した状態から元の位置まで復帰できる。
なお、第一スイッチSw1は、穀稈ガイド40に設けられるものに限定されず、刈取部3における剛体、例えば、ガイドフレーム114等の刈取部3のフレーム部材に支持されるものであってもよい。
次に、手扱ぎ作業時に、受継搬送装置136の上方から穀稈を押し付けることができる構造について説明する。
図6に示すように、コンバイン1の左右方向に沿って、穀稈ガイド40のフレーム板402と背面板404との間に案内斜板45が配置されるように、ガイドフレーム114に案内斜板45と穀稈ガイド40とが支持されている。穀稈ガイド40がフィードチェン41に向かって回動したときには、コンバイン1の左側面視において案内斜板45がフレーム板402によって遮蔽される(図4参照)。なお、図6には、コンバイン1の前後方向及び左右方向を表す。
図8(B)に示すように、リンク機構411・412には、別の押付部材としての捩りバネ415が連結されている。この押付部材は、ガイドロッド403と同様に、多角形状の断面、より好ましくは、円形状の断面を有している。図5に示すように、捩りバネ415は、操作レバー401の移動に応じて受継搬送装置136に向かって移動して、受継搬送チェン137に近づいた状態で穀稈に接触して、受継搬送チェン137に穀稈を押し付ける押付部材となる。
図8(E)に示すように、捩りバネ415の一端部としての固定端部416は、回転板420に相対移動不能に取り付けられている。回転板420は、背面板404に相対回転自在に支持されるとともに、リンク機構412に連結されている。捩りバネ415は、穀稈に接触するときに搬送方向に沿って受継搬送チェン137に対面する対面部417と、対面部417の上手側にあって対面部417から固定端部416に向かって湾曲した間隙形成部418と、対面部417の下手側にあって受継搬送チェン137から離れる方向に対面部417から湾曲した先端部419とを含む。
操作レバー401のレバー軸に沿って操作中心軸40cよりも離れた位置で、支持軸40eが背面板404に固定されている。回転板420は、支持軸40eを介して背面板404に相対回転自在に支持されている。捩りバネ415の固定端部416が回転板420に相対移動不能に取り付けられているので、捩りバネ415は、支持軸40eを介して、回転板420とともに背面板404に相対回転できる。ガイドロッド403に近接する方向へ操作レバー401が回動すると、操作レバー401の回動に応じてリンク機構411・412が作動して、回転板420が支持軸40e回りに回転する。これにより、捩りバネ415が下方即ち受継搬送装置136に向かって移動する。一方、操作レバー401の操作による捩りバネ415の変形及び押付力は、操作レバー401が捩りコイルバネ410によって元の位置まで復帰するときに、自身のバネ力によって解消される。
図3と図4とに示すように、手扱ぎ作業時に穀稈ガイド40が上方からフィードチェン41に向けて回動する場合には、ガイドロッド403の下面とスロープ45bの表面とに穀稈が挟まれながら、穀稈ガイド40の回動に応じてスロープ45bの表面に沿って後方且つ下方に押し出される。これにより、穀稈ガイド40と案内斜板45とは、回動に応じてスロープ45bの先端45cからフィードチェン41上に穀稈を円滑に移動させることができる。このとき、穀稈の搬送開始点を、合流部139よりも後方、即ち、フィードチェン41の前端部とすることができるため、穀稈は、合流部139における受継搬送チェン137の回り込みに影響されずにフィードチェン41上を円滑に移動できる。
図7に示すように、穀稈ガイド40がフィードチェン41に向かって下方に回動すると、ガイドロッド403が穀稈Gに接触してフィードチェン41に穀稈Gを押し付けることができる。このとき、ガイドロッド403の対面部407は、穀稈Gの株元側を押えることができる。
更に、第一スイッチSw1をオンに切り替えるように操作レバー401が操作されると、操作レバー401の回動に応じて捩りバネ415が下方に移動して(図5参照)、スロープ45bに堆積した穀稈Gを案内斜板45から遠ざけるとともに、受継搬送チェン137に穀稈Gを押し付けることができる。このとき、捩りバネ415の対面部417は、穀稈Gの穂先側を押えることができる。なお、図7においては、束になった穀稈ではなく、図の視認性を確保するために、少量の穀稈Gを便宜的に示している。手扱ぎ作業時に穀稈ガイド40によって実際に押えられる穀稈Gは、図7に示すものよりも更に多く、束になっていてもよい。
更に、案内斜板45のスロープ45bとフィードチェン41とは、略V字状の構造物を構成する。手扱ぎ作業時に穀稈Gがこの構造物上に載置されるときに、この構造物は、穀稈Gが零れ落ちないように安定して穀稈Gを支持することができる。このように安定して支持された穀稈Gの株元側と穂先側との其々を、穀稈ガイド40のガイドロッド403と捩りバネ415とは、案内斜板45の両脇からスロープ45bの表面に沿って円滑に押し出して、フィードチェン41と受継搬送チェン137とに効果的に押さえ付けることができる。このように、コンバイン1は、ガイドロッド403と捩りバネ415とによって、スロープ45bの表面に沿って穀稈Gを円滑に下方に移動させたうえで穀稈Gの穂先側と株元側との双方を同時に押え付けることができるので、穀稈Gの折れ曲がりを防止して穀稈Gを安定して搬送できる。
次に、コンバイン1の動力伝達機構について説明する。なお、以下では、動力伝達機構の主要な部分と本発明に関する部分とを説明しており、その他の部分の説明については省略する。
コンバイン1の動力伝達機構は、トランスミッション21と、脱穀部用伝動装置186と、フィードチェン用伝動装置187と、その他の各部へエンジン8aの回転動力を伝達する回転軸及びベルト等を有している。
エンジン8aには、出力プーリ181が設けられている。エンジン8aからの回転動力は、出力プーリ181を介してトランスミッション21へと伝達され、トランスミッション21から走行部出力プーリ141へと伝達される。このように、トランスミッション21には、エンジン8aの出力プーリ181に巻回されたベルトを介してエンジン8aの回転動力が入力される。トランスミッション21は、無段変速装置23を備えている。無段変速装置23は、エンジン8aの回転動力を油圧に変換した後に再び回転動力に変換してクローラ式走行装置22・22を駆動させる。このような構成により、トランスミッション21は、クローラ式走行装置22・22の駆動状態を変更でき、コンバイン1を任意の方向に走行させることができる。
また、出力プーリ181と入力プーリ182との間にはベルトが巻回されており、出力プーリ181から入力プーリ182へと回転動力が伝達される。入力プーリ182は、動力伝達第一軸183の一端に固定されている。動力伝達第一軸183の他端側は、動力伝達ケース185に収納されている。
また、回転動力は、走行部出力プーリ141から刈取部第一入力プーリ142へと伝達される。走行部出力プーリ141と刈取部第一入力プーリ142との間にはベルトが巻回されている。更に、脱穀部出力プーリ143からも、回転動力が刈取部第二入力プーリ144に伝達される。刈取部第一入力プーリ142と刈取部第二入力プーリ144とは、刈取入力軸を構成する刈取第一軸147の一端に固定されている。刈取第一軸147の他端には補助搬送装置135の補助搬送駆動ケース210が固定されている。脱穀部出力プーリ143と刈取部第二入力プーリ144との間にはベルトが巻回されており、このベルトにはテンションクラッチ145が設けられている。
通常作業時には、テンションクラッチ145は切状態に切り替えられており、走行部出力プーリ141から刈取部第一入力プーリ142へと動力が伝達される。また、走行部2が停止した状態である場合でも穀稈の流し込み作業のみが行われるときには、脱穀部4が駆動している。このときには、テンションクラッチ145が入状態に切り替えられることによって、脱穀部出力プーリ143から刈取部第二入力プーリ144へと動力が伝達される。
脱穀部用伝動装置186は、動力伝達ケース185内に収納されている。脱穀部用伝動装置186は、脱穀部4へ回転動力を伝達するものであり、動力伝達第二軸191及び脱穀部出力軸192を有する。
また、フィードチェン用伝動装置187は、フィードチェン用伝動ケース201と、フィードチェン用伝動ケース201を貫通する変速入力軸194と、フィードチェン用伝動ケース201よりも機体外側に設けられたフィードチェン変速機構であるベルト式無段変速機208と、ベルト式無段変速機208から出力された動力を出力する変速出力軸260とを有する。
動力伝達第一軸183の他端に設けられたギヤと、動力伝達第二軸191の一端に設けられたギヤとの間の回転動力の伝達によって、動力伝達第一軸183から動力伝達第二軸191へと回転動力が伝達される。動力伝達第二軸191の中途部にはベベルギヤが固定されており、ベベルギヤを介して脱穀部出力軸192へと回転動力が伝達される。脱穀部出力軸192は、図示せぬ扱胴や排藁処理装置へ回転動力を伝達するための軸である。
動力伝達第二軸191の他端に設けられたギヤと、変速入力軸194の一端に設けられたギヤとの間の回転動力の伝達によって、動力伝達第二軸191から変速入力軸194へと回転動力が伝達される。変速入力軸194の他端には、ベルト式無段変速機208の入力プーリ220が設けられている。
また、入力プーリ220は、ベルト290を介して出力プーリ250へ回転動力を伝達する。出力プーリ250は、変速出力軸260へ回転動力を出力する。
変速出力軸260の端部には、動力伝達スプロケット195が設けられており、動力伝達スプロケット195を介して、変速入力軸194に相対回転可能に嵌め込まれている動力伝達スプロケット196へと回転動力が伝達される。動力伝達スプロケット196に併設されたギヤは、複数のギヤからなる動力伝達機構198を介して、フィードチェン出力軸199に動力を伝達する。二つの動力伝達スプロケット195・196及び動力伝達機構198は、フィードチェン用伝動ケース201に収納されている。
また、動力伝達機構198には、フィードチェン停止機構193が設けられている。フィードチェン停止機構193は、フィードチェン41への動力伝達の入切を切り替えるための機構である。フィードチェン停止機構193は、切替軸202に設けられた遊星歯車機構を含むクラッチ機構によって構成されている。切替軸202の軸方向に沿って摺動可能にクラッチが切替軸202に固定されている。
切替軸202には、リンク機構203を介して油圧アクチュエータ204が連結されている。油圧アクチュエータ204は、伸縮することによってリンク機構203を移動させる。油圧アクチュエータ204の油路には、二位置四ポート式の電磁弁206が設けられている。電磁弁206においてソレノイドが励磁されると、油圧アクチュエータ204は伸長し、ソレノイドの励磁を解消すると、油圧アクチュエータ204は短縮する。油圧アクチュエータ204の伸長により、クラッチがギヤと離間して切状態に切り替わり、油圧アクチュエータ204の短縮により、クラッチがギヤと相対回転不能に連結して入状態に切り替わる。
電磁弁206は、制御装置80によって制御され、制御装置80からパルス信号を受信した場合にソレノイドにパルス信号を流す。制御装置80は、エンジン8aにも接続されており、例えば、制御装置80の電源が遮断された場合には、エンジン8aの駆動も止まる。コンバイン1は、制御装置80の電源が遮断された場合(エンジン8aの駆動が停止した場合)には、油圧アクチュエータ204を短縮させて、フィードチェン停止機構193を駆動させることができる。これにより、フィードチェン41への回転動力の伝達が遮断されて、フィードチェン41を強制的に停止することができる。但し、油圧アクチュエータの代わりに、電動のアクチュエータによってフィードチェン停止機構193を駆動する構成としてもよく、限定するものではない。
エンジン8aから伝達される回転動力によって変速入力軸194が回転すると、変速入力軸194とともに入力プーリ220も回転する。入力プーリ220が回転すると、ベルト290を介して出力プーリ250が回転する。出力プーリ250が回転によって変速出力軸260が回転して、変速出力軸260からフィードチェン41に向けて回転動力が出力される。
変速出力軸260はフィードチェン用伝動ケース201内の動力伝達スプロケット195・196及び動力伝達機構198と連結され、動力伝達機構198と連結されるフィードチェン出力軸199にはフィードチェン回動スプロケット205が設けられている。フィードチェン回動スプロケット205は、フィードチェン41の前下部に配置されており(図3参照)、コンバイン1は、フィードチェン回動スプロケット205の回転によってフィードチェン41を駆動させることができる。
入力プーリ220の溝幅及び出力プーリ250の溝幅は、モータ310の駆動に応じて変化する。モータ310の駆動に応じて当該モータ310の軸が一方向(正方向)に回転する場合に、モータ310の出力によって入力プーリ220に巻回されるベルト290の径は拡大する。ベルト290の全長は一定であるため、入力プーリ220に巻回されるベルト290の径が拡大すると、出力プーリ250の溝幅が広くなり、出力プーリ250に巻回されるベルト290の径(以下、単に「出力プーリ径」と記す)は小さくなる。この場合には、ベルト式無段変速機208の変速比が増速側へと変わる。これにより、フィードチェン回動スプロケット205が増速し、フィードチェン41の搬送速度を増速側へ変速することができる。例えば、コンバイン1の走行速度が上昇した場合には、フィードチェン41の搬送速度を増速側へ変更することにより、搬送効率を向上させることができる。
一方、モータ310の駆動に応じて当該モータ310の軸が他方向(逆方向)に回転する場合に、モータ310の出力によって入力プーリ220に巻回されるベルト290の径は縮小する。入力プーリ220に巻回されるベルト290の径が小さくなると、出力プーリ250の溝幅が狭くなり、出力プーリ径は大きくなる。この場合には、ベルト式無段変速機208の変速比が減速側へと変わる。これにより、フィードチェン回動スプロケット205が減速し、フィードチェン41の搬送速度を減速側へ変速することができる。例えば、コンバイン1の走行速度が低下した場合には、フィードチェン41の搬送速度を減速側へ変更することにより、搬送効率を向上させることができる。このように、フィードチェン変速機構であるベルト式無段変速機208は、フィードチェン41による搬送速度と刈取部3による刈取速度をコンバイン1の走行速度に同調させることができる。
次に、コンバイン1の制御システムについて説明する。
図10に示すように、油圧アクチュエータ204は、電磁弁206に制御信号を送信できる制御装置80と接続されている。上述のように、刈取部3への動力の伝達又は遮断を変更するフィードチェン停止機構193には、電磁弁206が設けられた油圧アクチュエータ204が接続されている。制御装置80は、制御装置80に入力信号を送信できる第一スイッチSw1及び第二スイッチSw2と接続されている。第一スイッチSw1及び第二スイッチSw2は、制御装置80に対してフィードチェン停止機構193の作動状態を指示できる。そして、制御装置80は、フィードチェン停止機構193の断接を変更できる。制御装置80は、電磁弁206に制御信号を送信可能であり、フィードチェン停止機構193の断接を制御可能である。また、制御装置80は、上述の緊急停止スイッチSw0と接続されており、緊急停止スイッチSw0は、制御装置80に入力信号を送信できる。
制御装置80は、コンバイン1の走行速度を検出する走行速度センサ85と接続され、走行速度センサ85によりコンバイン1の走行状態を把握している。また、制御装置80には、主変速シフトセンサ86と、副変速シフトセンサ87と、選択位置センサ88とが接続される。更に、制御装置80には、回転角度センサ89が接続される。このように、制御装置80によって、コンバイン1の走行状態、主変速レバー93の操作位置、副変速レバー94の操作位置、作業クラッチレバー95の操作位置、及び、穀稈ガイド40の作動量が把握されている。
制御装置80は、作業クラッチレバー95が脱穀入りの操作位置に操作され、且つ、コンバイン1が走行状態であることを条件に、フィードチェン停止機構193を入り状態としてフィードチェン41の駆動を許可し、コンバイン1の停止を検出した場合に、フィードチェン停止機構193を切り状態としてフィードチェン41の駆動を停止するものである。また、フィードチェン停止機構193が切り状態となった後、第一スイッチSw1及び第二スイッチSw2が同時に入り状態に操作されると、フィードチェン停止機構193が接続状態とされてフィードチェン41が駆動する。
フィードチェン停止機構193が接続に切り替えられて回転動力がフィードチェン41に伝達されるときには、モータ310の駆動によって、フィードチェン41の回転速度が増速若しくは減速される。穀稈ガイド40の下方への回動量、即ち、穀稈ガイド40の回転角度を回転角度センサ89によって検出される。制御装置80は、回転角度センサ89によって検出された回転角度に応じて、モータ310の回転方向及び回転速度を制御することができる。
コンバイン1は、穀稈の量の多寡と穀稈ガイド40の回転角度の大きさとの関連が考慮されて、回転角度の大きさに応じてフィードチェン41の駆動速度を低下させることができる。例えば、穀稈ガイド40の下方への回動量が小さい(回転角度θが小さい)場合には穀稈の量が比較的多いことが想定されるので、コンバイン1は、フィードチェン41の駆動速度を増速させるためにモータ310を正回転方向に駆動させる。一方、穀稈ガイド40の回動量が大きい(回動角度θが大きい)場合には穀稈の量が比較的少ないことが想定されるので、フィードチェン41の駆動速度を減速させるためにモータ310を逆回転方向に駆動させる。
コンバイン1においては、フィードチェン41を強制的に駆動するための補助操作手段としての補助操作スイッチSw3が制御装置80に接続されている。補助操作スイッチSw3を操作することにより、制御装置80は、フィードチェン停止機構193に制御信号を送信して、その断接を制御する。
次に、図11及び図12を用いて、補助操作スイッチSw3の作動条件について説明する。
図11に示すように、補助操作スイッチSw3は、主変速レバー93に設けられている。補助操作スイッチSw3は、主変速レバー93において、作業者が主変速レバー93を操作しながら補助操作スイッチSw3を操作可能な位置に配置されている。
補助操作スイッチSw3は、例えば、フィードチェン41が停止している状況で、脱穀部4の扱室入口に穀稈の詰まりが生じていることを作業者が確認した時、刈取部3の搬送装置に穀稈の詰まりが生じていることを作業者が確認した時等にこの補助操作スイッチSw3を操作することでフィードチェン41が駆動して、一時的な不具合を解消するための手段である。このように、コンバイン1は、手扱ぎ作業の際にフィードチェン41を駆動させる第一スイッチSw1及び第二スイッチSw2の他に、フィードチェン停止機構193の断接を切り替えるための第三のスイッチとして補助操作スイッチSw3を備えている。
図12に示すように、主変速レバー93の操作位置によらずに(「前進」、「ニュートラル」、「後進」の何れかに操作されている状態であっても)、作業クラッチレバー95が「刈取切り・脱穀入り」に操作されている状況で、補助操作スイッチSw3が入り操作された場合、フィードチェン41が所定の制限時間(刈取から脱穀までの一連の作業に要する時間であり、例えば5秒)だけ作動する。この場合に、副変速レバー94の操作位置は、「標準」、「ニュートラル」、「畦越」の何れであってもよい。しかし、刈取部3は、作業クラッチレバー95の操作によって、回転動力の伝達が遮断された状態となり、作動しない。このように、フィードチェン41の駆動時間に制限を設けることで、不必要に駆動を長引かせることなく、効率よく作業できる。なお、この制限時間は連続駆動の最大値を設定するものであり、補助操作スイッチSw3を押している間だけ(ただし、制限時間以内)フィードチェン41が作動する構成としてもよい。
主変速レバー93が「前進」に操作され、作業クラッチレバー95が「刈取入り・脱穀入り」に操作されている状況で、補助操作スイッチSw3が入り操作された場合、フィードチェン41及び刈取部3が所定の制限時間(刈取から脱穀までの一連の作業に要する時間であり、例えば5秒)だけ作動する。この場合に、副変速レバー94の操作位置は、「標準」、「ニュートラル」、「畦越」の何れであってもよい。このときのフィードチェン41及び刈取部3の駆動速度は、主変速レバー93の倒し量に対応した速度に設定される。つまり、刈取部3は、テンションクラッチ145が切状態となって、走行速度に同調した状態で作動する。また、フィードチェン41は、動力伝達機構198及びベルト式無段変速機208によって、走行速度に同調した状態で作動する。この場合でも、フィードチェン41及び刈取部3の駆動時間に制限を設けることで、効率よく作業できる。
一方、副変速レバー94の操作位置によらずに作業クラッチレバー95の操作位置が「刈取入り・脱穀入り」であっても主変速レバー93の操作位置が「後進」の場合には、補助操作スイッチSw3が入り操作されたとしても、刈取部3とフィードチェン41との作動は停止されている。
主変速レバー93が「ニュートラル」に操作され、副変速レバー94が「標準」に操作され、且つ、作業クラッチレバー95が「刈取入り・脱穀入り」に操作されている状況で、補助操作スイッチSw3が入り操作された場合には、刈取部3の作動は停止され、フィードチェン41のみが上記制限時間だけ作動する。このように、刈取作業中に脱穀部4への入口で穀稈が詰まった場合に、補助操作スイッチSw3を入り操作することで、フィードチェン41が駆動を開始し、穀稈を脱穀部4へ送ることが可能となる。
次に、図13(A),(B),(C),(D)を参照して、コンバイン1の手扱ぎ作業について説明する。なお、手扱ぎ作業は、コンバイン1が停止した状態、つまり、クローラ式走行装置22・22が停止し、フィードチェン41が停止している状態で行われる。
図13(A)に示すように、作業者は、穀稈ガイド40を上方へ回動させて、フィードチェン41から離間させる。なお、この際、当初よりフィードチェン41は停止しているので、フィードチェン41は引き続き停止した状態となる。
作業者は、穀稈ガイド40を上方へ回動させる場合において、操作レバー401又はガイドロッド403を把持して操作することで、穀稈ガイド40を上方へ回動させることができる。なお、コンバイン1は、穀稈ガイド40に連結された穀稈ガイド操作レバー(不図示)を備えており、作業者は、運転席91に座った状態のままで穀稈ガイド操作レバーを操作することで、手扱ぎ作業が開始される以前に穀稈ガイド40を上方へ回動させることができる。
次に、図13(B)に示すように、作業者は、刈り取った穀稈Gを所定の場所に置く。ここで、所定の場所とは、穀稈ガイド40を下方へ回動させた際に、ガイドロッド403によって穀稈Gをフィードチェン41に押し付けることができる空間のことであって、スロープ45bの表面とフィードチェン41の往路とに挟まれた略V字状の支持構造の上方の空間のことである。
その後、図13(C)に示すように、作業者は、穀稈ガイド40を下方へ回動させて、フィードチェン41に近接させる。これにより、ガイドロッド403によって穀稈Gをフィードチェン41に押し付けることができる。ただし、操作レバー401が操作されていないことで第一スイッチSw1がオフであることから、第二スイッチSw2が押圧操作されたとしても、制御装置80は、フィードチェン停止機構193の切断を維持する。
そして、図13(D)に示すように、作業者は、操作レバー401をフィードチェン41に向かって回動させることにより、ガイドロッド403が穀稈Gをフィードチェン41に押え付けた状態を維持しながら第一スイッチSw1をオンに切り替える。このとき、第一スイッチSw1をオンに切り替える操作レバー401の操作は、穀稈ガイド40が穀稈をフィードチェン41に押し付ける操作となる。更に、作業者は、操作レバー401をフィードチェン41に向かって押し下げたままで第二スイッチSw2を押して、第二スイッチSw2をオンに切り替える。このとき、作業者は、第二スイッチSw2を押した状態を維持しながら第二スイッチSw2がオンに切り替えられた状態を継続させる。そして、制御装置80は、第一スイッチSw1と第二スイッチSw2とが共にオンとなったことを受けて、フィードチェン停止機構193を接続に切り替える。これにより、フィードチェン41にエンジン8aの回転動力が伝達される。
このような構成により、作業者は、一方の手で穀稈ガイド40の操作レバー401を握り、他方の手で第二スイッチSw2を操作することとなる。つまり、作業者が右手で操作レバー401をフィードチェン41に向かって押し下げる状態を維持することで第一スイッチSw1がオンに切り替えられた状態を継続させ、左手で第二スイッチSw2を押した状態を維持することで第二スイッチSw2がオンに切り替えられた状態を継続させて、フィードチェン41を駆動することができる。
コンバイン1においては、穀稈ガイド40の回転軸40aが刈取部3側に設けられている。これにより、穀稈ガイド40が穀稈をフィードチェン41に押し付ける操作レバー401の操作、即ち、第一スイッチSw1をオンに切り替える操作レバー401の操作によって、フィードチェン41の搬送方向に沿って穀稈を送り込むように作用する力を穀稈に容易に掛けることができる。そのため、フィードチェン41の搬送方向に沿って穀稈を送り込むように作用する力の加減を作業者による操作レバー401の操作量に応じて直接的に容易に調整でき、穀稈の搬送姿勢をより安定させた状態で維持できる。
以上のように、本発明のコンバイン1によれば、穀稈ガイド40の回転軸40aが刈取部3側に設けられているので、操作レバー401の操作によって穀稈ガイド40が穀稈をフィードチェン41に押し付けるときには、刈取部3側から脱穀部4側に向かって、即ち、フィードチェン41の搬送方向に沿って穀稈を送り込むように作用する力を穀稈に容易に掛けることができる。そのため、脱穀部4側に掛かる力の加減を作業者による操作レバー401の操作量に応じて直接的に容易に調整でき、穀稈の搬送姿勢をより安定させた状態で維持できる。従って、手扱ぎ作業時の穀稈の搬送姿勢を安定させることができるコンバイン1を提供することができる。
また、回転支点として回転軸40aが刈取部3側に設けられていることによって、搬送抵抗を減少させて、受継搬送チェン137の回り込みに起因する穀稈の滞留を無くしたり軽減したりできる。そのため、穀稈の搬送姿勢が改善されるだけでなく、手扱ぎ作業時の作業者による穀稈ガイド40の操作を省力化且つ容易化できるので、効率よく手扱ぎ作業を実施できる。更に、穀稈の搬送姿勢が改善されることによって、刈取部3側とフィードチェン41との間の穀稈の滞留を無くしたり軽減したりできるので、作業者が穀稈ガイド40を再度操作したり改めて穀稈をセットし直したりするような無駄な作業の頻度を低減でき、効率よく手扱ぎ作業を実施できる。
刈取部3側に回転軸40aが設けられることによって、フィードチェン41から離れた位置に回転軸40aが配置されるため、穀稈ガイド40がフィードチェン41から離れる方向に回動すると、脱穀部4側に回転支点が設けられる場合に比べてフィードチェン41から離れた位置まで穀稈ガイド40が移動して、扱室の入口付近で穀稈が載置される空間を大きく開放できる。そのため、穀稈ガイド40が作業を妨害することなく、穀稈の脱落を防止でき、効率よく手扱ぎ作業を実施できる。
本発明のコンバイン1によれば、作業者の両手をフィードチェン41から離れた刈取部3側まで離したうえで、作業者の一方の手をフィードチェン41に穀稈を押し付ける操作レバー401の操作に用いて、他方の手をフィードチェン41の駆動を指示できる第二スイッチSw2の操作に用いることによって、作業者の両手を用いて効率よく手扱ぎ作業を実施できるとともに穀稈の搬送姿勢を安定させることができる。
本発明のコンバイン1によれば、穀稈ガイド40の回動の方向が刈取部3側から脱穀部4側に向かって時計回りであることに合わせて、操作レバー401の時計回りの回動によって第一スイッチSw1をオンに切り替えることができるので、穀稈ガイド40の回動から第一スイッチSw1のオンへの切り替えまでを作業者が穀稈ガイド40を容易に連続して操作することができるとともに、穀稈の搬送姿勢を安定させることができる。このように、穀稈ガイド40は、操作性の向上が図られている。そのため、操作性の向上が図られた穀稈ガイド40によって、効率よく手扱ぎ作業を実施できるとともに、穀稈の搬送姿勢を安定させることができる。
本発明のコンバイン1によれば、ガイドロッド403の間隙形成部408が対面部407から回転軸40aに向かって湾曲していることによってガイドロッド403の上手側とフィードチェン41との間に隙間を形成できるので、刈取部3側で待機する穀稈への搬送抵抗を減少させつつ穀稈の搬送姿勢を安定させることができる。また、ガイドロッド403の先端部409がフィードチェン41から離れる方向に対面部407から湾曲していることによってガイドロッド403の下手側とフィードチェン41との間に隙間を形成できるので、穀稈ガイド40が穀稈の搬送を妨げることなく、穀稈の搬送姿勢を安定させたままでフィードチェン41が穀稈を搬送でき、扱室に穀稈を安定して取り込むことができる。
本発明のコンバイン1によれば、ガイドロッド403と捩りバネ415との複数の押付部材によって穀稈の穂先側と株元側との双方を同時に押え付けることができるので、穀稈の折れ曲がりを防止して穀稈の搬送姿勢をより安定させた状態で維持できる。
次に、図14を用いて、本発明の別の実施形態のコンバイン1について説明する。本実施形態において、上述の構成と同一の構成については同符号を付し、説明を省略する。
図14に示すように、コンバイン1は、刈取部3側の第二スイッチSw2の代わりに、脱穀部4側の第二スイッチSw4だけが設けられた構造を有している。
脱穀部4側の第二スイッチSw4は、刈取部3側の第二スイッチSw2と同様に機能する。脱穀部4側の第二スイッチSw4は、藁押え台カバー44に取り付けられている。脱穀部4側の第二スイッチSw4は、緊急停止スイッチSw0よりも前方に配置されている。刈取部3側の第二スイッチSw2と同様に、脱穀部4側の第二スイッチSw4には制御装置80が接続されており(不図示)、脱穀部4側の第二スイッチSw4は、制御装置80に入力信号を送信できる。
このような構成によれば、作業者が左手で操作レバー401をフィードチェン41に向かって押し下げる状態を維持することで第一スイッチSw1がオンに切り替えられた状態を継続させ、右手で第二スイッチSw2を押した状態を維持することで第二スイッチSw2がオンに切り替えられた状態を継続させて、フィードチェン41を駆動することができる。また、フィードチェン41上を移動する穀稈を真正面から観察しながら手扱ぎ作業を実施できるので、穀稈の搬送姿勢を一回ごとに修正して的確に脱穀できる。
次に、図15を用いて、本発明のまた別の実施形態のコンバイン1について説明する。本実施形態において、上述の構成と同一の構成については同符号を付し、説明を省略する。
図15に示すように、コンバイン1は、刈取部3側の第二スイッチSw2とともに、脱穀部4側の第二スイッチSw4が設けられた構造を有している。
このような構成によれば、作業者の利き手に応じて二つの第二スイッチSw2・Sw4を選択的に使い分けることができるので、どちらの利き手にも対応できる。手扱ぎ作業時に作業者が穀稈を持つ手は利き腕によって異なるので、例えば、作業者が右手で手刈り稈を下方に押え付けた状態から右手を穀稈から離しつつ左手で操作レバー401を操作して穀稈ガイド40をフィードチェン41に近づけて、更に第一スイッチSw1をオンに切り替える。その後、作業者は、穀稈から離した右手によって脱穀部4側の第二スイッチSw4を押した状態を維持しながら脱穀部4側の第二スイッチSw4がオンに切り替えられた状態を継続させることによって、フィードチェン41を駆動できる。一方、作業者が左手で手刈り稈を下方に押え付けた状態から左手を穀稈から離しつつ右手で操作レバー401を操作して穀稈ガイド40をフィードチェン41に近づけて、更に第一スイッチSw1をオンに切り替える。その後、作業者は、穀稈から離した左手によって刈取部3側の第二スイッチSw2を押した状態を維持しながら刈取部3側の第二スイッチSw2がオンに切り替えられた状態を継続させることによって、フィードチェン41を駆動できる。
次に、図16(A)及び(B)を用いて、フィードチェン41の挟扼装置46と挟扼解除装置50とについて説明する。
図16(A)に示すように、脱穀部4には、挟扼装置46が設けられている。挟扼装置46は、フィードチェン41の搬送方向に沿ってフィードチェン41の往路の上方に配置され、フィードチェン41に向かって穀稈を押し付けることができる構造を有している。挟扼装置46は、挟扼レール460と、複数のバネ部材464と、バネフレーム465とを含む。挟扼レール460は、略U字状の断面をそれぞれ有するように形成された複数のレール部材461・462・463・・・を含む。隣り合う二つのレール部材がバネ部材464を介して互いに連結することによって、複数のレール部材461・462・463・・・が挟扼レール460を構成している。
複数のバネ部材464は、搬送方向に沿って所定間隔ごとに配置されてレール部材461・462・463・・・に連結されている。複数のバネ部材464は、機体フレーム20(図1参照)に支持されたバネフレーム465に懸架されている。各バネ部材464は、軸466と、軸466が挿入されるコイルバネ467とを含む。コイルバネ467は、それぞれバネフレーム465と挟扼レール460とに相対移動不能に支持された上下のバネ台468間で伸縮できる。上側の各バネ台468は、バネフレーム465に支持され、下側の各バネ台468は、複数のレール部材461・462・463・・・のうち、前後に並ぶ二つのレール部材に連結されている。つまり、最前のバネ部材464の軸466は、最前のレール部材461の後方側と前から二番目のレール部材462の前方側とに連結されている。前から二番目のバネ部材464の軸466は、前から二番目のレール部材462の後方側と三番目のレール部材463の前方側とに連結されている。
フィードチェン41が穀稈を搬送する場合には、フィードチェン41と挟扼レール460との間に穀稈が挟まれて、各レール部材461・462・463・・・がフィードチェン41から離れる方向に移動するとともに、各レール部材461・462・463・・・の移動量に応じて各コイルバネ467のバネ力が変化する。このように、挟扼装置46は、フィードチェン41上を移動する穀稈を各コイルバネ467のバネ力によって押し付けることができる。
挟扼レール460の最前のレール部材461の頂面には、コンバイン1の前方及び上方に対向する面を有する斜板47が固定され、斜板47とレール部材461とが一体となっている。斜板47を有さない挟扼レール460によれば、穀稈の量が比較的多く、厚い束となって搬送される穀稈が、挟扼レール460の先端の上方から挟扼レール460を乗り越えてしまう場合がある。しかし、斜板47を有する挟扼レール460によれば、レール部材461の先端の上方に移動する穀稈を斜板47から滑落させることができ、穀稈が挟扼レール460の上方に堆積することを防止できる。
一方、特に手扱ぎ作業において、穀稈の量が少ない場合には、フィードチェン41と挟扼レール460との間に穀稈が食い込まずに、フィードチェン41の駆動に対して穀稈が最前のレール部材461との接触を繰り返して挟扼レール460の先端付近に滞留することがある。しかし、コンバイン1は、挟扼レール460の先端付近に穀稈が滞留することを防止できる構造を有している。
コンバイン1は、挟扼解除装置50を備えている。挟扼解除装置50は、挟扼レール460の先端部として少なくとも最前のレール部材461を強制的にフィードチェン41から離れる方向に移動させる構造を有している。
挟扼解除装置50は、アーム501を有する欠歯歯車502と、モータ軸504を有するアーム作動機503とを含む。最前のバネ部材464の軸466には、軸466の表面から突出したピン469が固定されている。最前のバネ部材464に近接する位置において、バネフレーム465は、欠歯歯車502とアーム作動機503とを支持している。欠歯歯車502は、アーム501がピン469に引っ掛かる位置に配置されている。欠歯歯車502の歯は、モータ軸504の歯車505に噛み合わされている。
なお、アーム作動機503は、欠歯歯車502を介して、コイルバネ467のバネ力に反してバネ部材464の軸466を持ち上げることができるものであればよく、油圧アクチュエータであってもよく、周知の電動機又はアクチュエータをアーム作動機503として用いることができる。アーム作動機503には、上述の制御装置80が接続されている(図10参照)。
コンバイン1が手扱ぎモードに切り替えられると、即ち、上述の作業クラッチレバー95が「刈取切り・脱穀入り」の操作位置に操作されて、制御装置80が選択位置センサ88からの信号に基づいて作業クラッチレバー95の操作位置を認識すると、制御装置80はアーム作動機503を一方向に回転させる。アーム作動機503が一方向に回転すると、図中の矢印が示すように、欠歯歯車502が歯車505を介して回転する。これにより、アーム501がピン469を介して軸466を持ち上げることができる。
図16(B)に示すように、アーム501によって軸466が持ち上げられると、最前のレール部材461と二番目のレール部材462とがバネ力に反してフィードチェン41から離れる方向に移動する。このようにして、挟扼解除装置50の作動により、挟扼レール460の先端部を強制的にフィードチェン41から離れる方向に移動させて、フィードチェン41に対する挟扼レール460の先端部即ち最前のレール部材461と二番目のレール部材462との挟扼を強制的に解除することができる。
最前のレール部材461と二番目のレール部材462とが移動することにより、穀稈の量に関わらず、フィードチェン41と挟扼レール460との間に穀稈を容易に一旦食い込ませることができる。これにより、挟扼レール460の先端付近に穀稈が滞留することなく、扱室内に容易に穀稈を取りこむことができる。また、順次搬送される穀稈が挟扼レール460の先端よりも後方で次第に束を形成して、前から三番目のレール部材463を穀稈の束が持ち上げる力を二番目のバネ部材464のバネ力よりも大きくすることができ、フィードチェン41によって穀稈を順次搬送することができる。つまり、フィードチェン41上を穀稈が円滑に移動するので、コンバイン1は円滑に脱穀できる。このように、穀稈の量が比較的少ない場合でも、コンバイン1は、挟扼解除装置50の作動によって穀稈を扱室内に円滑に取り込むことができる。
作業クラッチレバー95が「刈取切り・脱穀入り」以外の操作位置、即ち、「刈取入り・脱穀入り」又は「刈取切り・脱穀切り」に操作されて、制御装置80が選択位置センサ88からの信号に基づいて作業クラッチレバー95の操作位置を認識すると、制御装置80はアーム作動機503を逆方向に回転させる。アーム作動機503が逆方向に回転すると、欠歯歯車502が歯車505を介して逆回転する。これにより、アーム501による軸466の持ち上げが解消される。或いは、モータ軸504に対して歯車505が空転して欠歯歯車502が逆回転することでもよい。そして、最前のレール部材461と二番目のレール部材462とが、最前のバネ部材464のバネ力に応じてフィードチェン41に近付く方向に移動して元の位置に復帰する。