以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本実施形態は、管制サーバに通信接続され、当該管制サーバから無線通信回線を介して受信する管制指示情報に従って自律走行を行うダンプトラックに本発明を適用した鉱山車両運行システム1に関する。
図1は、鉱山車両運行システム1の概略図である。図1に示すように鉱山には、鉱物や表土をショベルやホイールローダなどの油圧ショベル10により掘削し、ダンプトラック20に積み込む積込場61と、ダンプトラック20に積み込まれた鉱物や表土を降ろす放土場62と、鉱山内で運用される車両や機械を駐機しておく駐機場があり、積込場61、放土場62及び駐機場は搬送路60により連結される。
上記鉱山内に設置された鉱山車両運行システム1は、少なくとも1台以上のダンプトラック20の其々を管制局30に設置された管制サーバ31に無線通信回線40により通信接続して構成される。各ダンプトラックは、管制サーバ31から送信される管制指示情報を受信し、これに従って自律走行する。
搬送路60や積込場61ではグレーダ、ドーザ、散水車、ライトビークルなどの補助作業車両70も走行する。
図2Aはダンプトラックの側面図、図2Bはダンプトラックの平面図(上面視)である。ダンプトラック20は右前輪21R、左前輪21L、右後輪22R、左後輪22Lと、車体フレーム23と、車体フレーム23上に搭載されたベッセル24と、車体フレーム23の前部に設置されたキャブ25を備える。ダンプトラック20の右側面には、ダンプトラック20の右後方を監視する右後方監視センサ30Rが備えられ、ダンプトラック20の左側面には、ダンプトラック20の左後方を監視する左後方監視センサ30Lが備えられる(図2B参照)。
右後方監視センサ30R、及び左後方監視センサ30Lの其々は、例えば、赤外線の反射光を利用して被検出体までの距離を取得可能な赤外線距離センサや、2つの画像を使ってステレオ視により距離を取得するステレオカメラなどで対称位置での被検出体距離を算出することができる距離センサを用いてもよい。但し、右後方監視センサ30Rは、ダンプトラック20の後退方向をスキャン方向とし、右後輪22Rの接地面から後輪の後退時の軌跡を含む第1の高さにある第1被検出体までの第1距離を測定し、第1距離を示す第1距離情報を出力する。更に第1の高さよりも高く、ベッセル24の後退時の軌跡を含む第2の高さにある第2被検出体までの第2距離を測定し、第2距離を示す第2距離情報を出力する。同様に左後方監視センサ30Lは、左後輪22Lの接地面から第1の高さにある第1被検出体までの第1距離、及び左後輪22Lの接地面から第2の高さにある第2被検出体までの第2距離及びを測定し、第1距離情報及び第2距離情報を出力する。
赤外線距離センサはある1点での距離を検出する固定型赤外線距離センサや、赤外線のある平面内で放射方向を移動させることで、その平面での複数点の距離を取得可能な平面スキャン型赤外線距離センサ、それを3次元的に動作させて空間をスキャンすることが可能な空間スキャン型赤外線距離センサなどを用いてもよい。固定型赤外線距離センサを用いる場合には、右後方監視センサ30R及び左後方監視センサ30Lの其々は、第1の高さに取り付けた固定型赤外線距離センサ及び第2の高さに取り付けた固定型赤外線距離センサを含んで構成される。
一例として、本実施形態では平面スキャン型赤外線距離センサを用いるものとする。平面スキャン型赤外線距離センサはスキャン範囲が2次元平面であり、ダンプトラック20の下方から後方のエリアをスキャン範囲に含むように設置されている。このようなセンサ仕様及びセンサ配置とすることで、平面スキャン型赤外線距離センサからなる右後方監視センサ30R及び左後方監視センサ30Lのそれぞれは、第1の高さ上の計測点の点列、及び第2の高さの上の計測点の点列が取得可能となる。つまり、右後方監視センサ30Rが第1の高さにある第1被検出体を検出する第1後方監視センサと、第1の高さよりも高い第2の高さにある第2被検出体を検出する第2後方監視センサとを兼ね備える。同様に、左後方監視センサ30Lも第1後方監視センサ、及び第2後方監視センサを兼ね備える。
その他の例としては、後輪の車軸の左右方向中央部、及び、ベッセルの後端の左右方向中央部のそれぞれに、平面スキャン型赤外線距離センサを、その計測面が走行面と概略平行になるように設置してもよい。
なお、図2Aでは、第1の高さの検出位置を示すための矢印の始点を右後輪22R,左後輪22Lの後端、第2の高さの検出位置を示す矢印の始点をベッセル24後端としたが、これは後方監視センサがその位置に配置されることを限定するものではない。後方監視センサがいずれに位置に配置されていても、第1被検出体及び第2被検出体が検出できればよい。
また、第1平面内及び第2平面内の全域をスキャン範囲とすることが理想ではあるが、必ずしも、第1平面内全域、及び、第2平面内全域を検知する必要はなく、例えば、図2Bに示すように、左右それぞれの角付近での距離のみを活用してもよい。このように後方監視センサの数は図2Bに示す4角の4点にそれぞれ1個ずつ合計4つのセンサを備えてもよいし、ダンプトラックにおいて高さが異なる2点に1個ずつセンサを備えてもよいし、更に、ダンプトラックの高さ方向をスキャン面に含むセンサを1台備えてもよい。
図3Aはダンプトラックの機能ブロック図である。ダンプトラック20は後退支援装置100を備える。後退支援装置100はCPU101、RAM102、ROM103、HDD104、入出力インターフェース(I/F105)を含み、これらがバス106を介して互いに接続される。I/F105には無線通信装置28、右後方監視センサ30R、左後方監視センサ30L、自車位置センサ110、及び自律走行制御装置120が接続される。
後退支援装置100は、無線通信装置28を介して管制サーバ31からは管制指示情報を受信し、油圧ショベル10からは積込指定位置情報を受信する。
後退支援装置100は、右後方監視センサ30R及び左後方監視センサ30Lからはそれぞれのセンサ出力(第1被検出体までの距離である第1距離L1、第2被検出体までの距離である第2距離L2を含む)、自車位置センサ110からは自車位置情報を受信する。
一方後退支援装置100は、外部装置としての自律走行制御装置120に後退支援装置100が決定した目標停車位置情報と、管制サーバ31から受信した管制指示情報とを出力する。更に、後退支援装置100が決定した目標停車距離情報を出力してもよい。
図3Bは後退支援装置の機能ブロック図である。図3Bに示すように、後退支援装置100は、第1被検出体位置演算部111、第2被検出体位置演算部112、判定距離演算部113、接近許容体判定部114、目標停車距離演算部115、目標停車位置決定部116、入力制御部117、及び出力制御部118を備える。上記各部は、後退支援装置100を構成するハードウェアと各部の機能を実現するソフトウェアとの組み合わせにより構成されてもよいし、回路により構成されてもよい。各部の機能は後述する。
自律走行制御装置120は入力制御部121、及び自律制御部122を含む。これら各部は、自律走行制御装置120を構成するハードウェアと各部の機能を実現するソフトウェアとの組み合わせにより構成されてもよいし、回路により構成されてもよい。自律走行制御装置120は、走行モータ211、操舵モータ212、及び制動装置213に接続され。自律走行制御装置120は、管制指示情報及び目的停車位置情報(目的停車距離情報を含んでもよい)に従ってダンプトラック20を自律走行させるための各種信号を、適宜走行モータ211、操舵モータ212、及び制動装置213に対して出力する。
図4Aは積込機械の概略構成図である。図4Aに示すように、油圧ショベル10は、クローラを備える下部走行体11、下部走行体11上に旋回可能に支持された上部旋回体12、上部旋回体12に搭載された運転席13、上部旋回体12の前部に連結されたフロント作業機と、油圧ショベル10の絶対座標系の位置情報を算出する位置算出装置(例えばGPS)17と、積込位置指定装置18とを備える。フロント作業機は、俯仰動可能に支持されたブーム14、ブーム14の先端に回転可能に支持されたアーム15、アーム15の先端に回転可能に支持されたバケット16を含む。油圧ショベル10のオペレータがダンプトラック20への積込位置にバケット16を位置させ、その位置を指定すると積込位置指定装置18がそのときのバケット16の絶対座標系の座標を演算する。
図4Bは積込位置指定装置の機能ブロック図である。油圧ショベル10は、ブーム14の俯仰角度を検出するブーム角度センサ141、アーム15の回転角度を検出するアーム角度センサ151、バケット16の回転角度を検出するバケット角度センサ161を備える。積込位置指定装置18は、ブーム角度センサ141、アーム角度センサ151、及びバケット角度センサ161からの出力を基にバケット16の油圧ショベル10に対する相対位置を演算するバケット相対位置演算部181と、GPS17から取得した油圧ショベル10の絶対座標系の位置情報にバケット相対位置演算部181が演算したバケット16の相対位置を加算して、バケット16の絶対位置を演算するバケット絶対位置演算部182と、バケットの絶対位置である積込指定位置情報をダンプトラック20へ送信する通信部183とを含む。
積込位置の指定操作は、油圧ショベル10の運転席に設置されたディスプレイに、積込機械周辺の環境情報を表示し、そのディスプレイ上でオペレータが停車位置を指定することができるように構成されていても良い。この積込位置の指定操作が行われると、積込位置指定装置18は、その時のブーム角度センサ141、アーム角度センサ151、及びバケット角度センサ161、GPS17からの出力を取得し、バケット絶対位置を演算してこれを積込指定位置として出力する。
以下では、油圧ショベル10がダンプトラック20の接地面よりも高い位置に配置され、切羽面を掘削して崖下にいるダンプトラック20に積荷を積込む、所謂ベンチカット工法時に本実施形態に係る後退支援装置を用いる例について説明する。
ダンプトラック20は、図2Aに示すように、側方から車体を見た際の右後輪22Rの後端(タイヤ高さ中央での水平方向後端)と、ベッセル24の後端の、上下2つの高さの位置で突出しており、その位置での被検出体との接触の危険性が高い。従って、後退時には、この2つの平面での接触を回避することが求められる。
ここで、油圧ショベル10は、切羽自体を掘削するという作業の性質上、切羽近傍に存在することが想定される。油圧ショベル10のバケット16はそれほど遠くまでは届かないため、作業効率を考えると、多くの場合、油圧ショベル10のオペレータが指定する積込指定位置は、切羽近傍に指定される。従って、積込指定位置に近い位置に検知された被検出体は切羽と考えることができる。
切羽は、右後輪22Rの接地面から連続的に立ち上がることが想定される。また切羽面の形状は掘削作業の進展に伴って随時変形するが、切羽面は掘削作業により形成される人工的な形状であって、ダンプトラック20の前輪21及び後輪22の接地面から大きな突出はなく掘削された面形状であるものとする。この場合、ダンプトラック20の後退時には、ダンプトラック20が十分に切羽に近づいたときには、必ず第1の高さで切羽が検出される。以上のことから、後輪22の後端部の高さである第1の高さで検知された第1被検出体の位置が、油圧ショベル10のオペレータが指定した積込指定位置と十分に近い場合、第1被検出体を切羽と判定する。一方で、第1の高さで検知された第1被検出体の位置が、積込指定位置から離れている場合は、その被検出体は切羽でないものと考えることができる。切羽ではないものであれば、ダンプトラック20は接近する必要はなく、むしろ、ドーザ等の補助作業車両70であることが想定されるため、安全な距離を保った位置で停車すべきと考えられる。
ここでダンプトラック20は、第1被検出体が切羽であるかを判定し、切羽であるとは判定すると、第1後方監視センサにより第1被検出体までの距離(第1距離L1)と、第2後方監視センサにより第2被検出体までの距離(第2距離L2)とを比較し、小さい方の距離を目標停車距離とする。また、切羽で無いと判定した場合は、第1距離L1と第2距離L2とを比較し、小さいほうの距離と自車位置と安全のための距離(「安全距離Ds」という)を用いて、目標停車距離を算出し、目標停車距離と自車位置を元に目標停車位置を決定する。
以下、ダンプトラック20が油圧ショベル10のオペレータが指定した積込位置に向かって後退支援装置を用いながら自律走行で接近し目標停車位置で停車する処理について説明する。図5は、積込位置に向かって停車するまでの概略の流れを示すフローチャートである。
ダンプトラック20は、放土場62で積荷を放土した後、搬送路60を走行して積込場61に向かう。積込場61の入口で、ダンプトラック20は管制サーバ31に対して積込場61の場内を油圧ショベル10に向かって走行するための経路データのリクエストを送信する(S501)。
管制サーバ31がリクエストに応答して経路データを生成し、ダンプトラック20に管制指示情報として返信する。ダンプトラック20は経路データを取得すると(S502/Yes)、経路データに沿って自律走行する(S503)。そして、ダンプトラック20は経路データを取得するまでは待機する(S502/No)。
油圧ショベル10のオペレータが積込位置の指定操作を行うと、積込位置指定装置18は積込指定位置の絶対位置を示す積込指定位置情報をダンプトラック20及び管制サーバ31に送信する(S504)。
ダンプトラック20は、スイッチバック地点を含み、積込指定位置情報が示す積込位置までの経路を示すアプローチデータを生成し(S505)、管制サーバ31からダンプトラック20に送信し、ダンプトラック20が取得する(S506/Yes)。ダンプトラック20はアプローチデータを取得するまでは(S506/No)、スイッチバック地点にて待機する。
ダンプトラック20は後退支援装置100による走行支援を受けながらアプローチデータが示す経路に沿って後退する(S507)。後退支援装置100が決定した目標停車位置に到達するまでは後退支援処理及び後退走行を継続し(S508/No)、目標停車位置に到達すると(S508/Yes)、停車して後退支援処理を終了する。
次にステップS507の後退支援処理について説明する。図6は後退支援処理の流れを示すフローチャートである。図7Aは、積込停止位置から第1被検出体までの判定距離D及び第1距離L1を示す説明図(平面視)である。図7Bは、積込停止位置から第1被検出体までの判定距離D及び第1距離L1を示す説明図(側面視)である。図8はステップS602及びS603において実行される座標変換処理を示す図である。図9A、図9Bは、第1距離L1及び第2距離L2の大小関係の例を示す図である。
後退支援装置100の入力制御部117は、管制指示情報、自車位置情報、積込指定位置情報、右後方監視センサ30R、左後方監視センサ30Lのセンサ出力の入力を受けつける。第1被検出体位置演算部111及び第2被検出体位置演算部112のそれぞれは、右後方監視センサ30R及び左後方監視センサ30Lのそれぞれからセンサ出力(第1距離L1、第2距離L2を含む)を取得する(S601)。第1距離L1、第2距離L2は、右後方監視センサ30R及び左後方監視センサ30Lからの出力に基づいて二つずつ求められるが、そのうち、どちらか一方、例えば小さい方を選択して以下の処理を行ってもよいし、右後方監視センサ30Rから出力された第1距離L1、第2距離L2を用いて以下の処理を実行し、左後方監視センサ30Lから出力された第1距離L1、第2距離L2を用いて以下の処理を実行してもよい。
第1被検出体位置演算部111は、第1距離L1と自車位置情報とを用いて、第1被検出体の絶対座標の位置を演算する(S602)。
判定距離演算部113は、積込指定位置情報、第1被検出体位置演算部111から得た第1被検出体位置情報を基に、積込指定位置と第1被検出体位置との間の距離(以下「判定距離D」という)を演算する(S603)。
図8を参照して第1被検出体位置演算部111及び判定距離演算部113が実行する座標変換処理について説明する。図8では鉱山座標系を添え字g、ダンプトラック座標系を添え字t、センサ座標系を添え字sで表す。油圧ショベル10のオペレータが指定した積込指定位置は、鉱山座標系で表される座標gPeとする。またダンプトラックの位置は、鉱山座標系で表される後輪軸中心の座標gPtで表すものとする。
座標変換処理では鉱山座標系と、センサ座標系と、ダンプトラック座標系との3つがある。センサ座標系は、右後方監視センサ及び左後方監視センサのダンプトラックへの取り付け位置と自車位置センサが算出するダンプトラックの車体における自車位置算出基準位置との幾何学的な位置関係を用いることで、鉱山座標系への座標変換が行える。そこで、判定距離演算部113及び、第1被検出体位置演算部111は、以下の数式1より積込指定位置座標及び第1被検出体位置座標を求め、判定距離Dを演算する。
接近許容体判定部114は、判定距離Dが、予め定めた接近許容体判定閾値Dth以下であるかを判定する(S604)。
ステップS604の判定結果が肯定であれば(S604/Yes)、第1被検出体は接近許容体であると判定し(S605)、その判定結果を目標停車距離演算部115に出力する。ここでいう「接近許容体」とは、ダンプトラック20が万一干渉しても許容できるものであり、本例では切羽に相当する。非接近許容体との相違から定義するならば、後述する目標停車距離の演算において、安全距離Dsの確保が不要な被検出体が接近許容体、必要な被検出体が非接近許容体といえる。
目標停車距離演算部115は第1距離L1及び第2距離L2を比較し(S606)、第1距離L1が第2距離L2以下の場合は(S606/Yes、図9A参照)、第1距離L1を目標停車位置までの距離に決定し(S607)、第1距離L1が第2距離L2よりも大きい場合は(S606/No、図9B参照)、第2距離L2を目標停車位置までの距離に決定(S608)する。
ステップS604の判定結果が否定であれば(S604/No)、第1被検出体は非接近許容体(例えば補助作業車両)であると判定し(S609)、その判定結果を目標停車距離演算部115に出力する。
目標停車距離演算部115は第1距離L1及び第2距離L2を比較し(S610)、第1距離L1が第2距離L2以下の場合は(S610/Yes)、予め定められたマージンでる安全距離Dsを用いて、第1距離L1から安全距離Dsを減算した値を目標停車位置までの距離に決定し(S611)、第1距離L1が第2距離L2よりも大きい場合は(S610/No)、第2距離L2から安全距離Dsを減算した値を目標停車位置までの距離に決定する(S612)する。安全距離Dsは、例えば10m以上の値を用いてもよい。
図10はステップS604の判定結果が否定となる場合の一例を示す図である。切羽とダンプトラック20との間に補助作業車両70がいる。この場合、右後方監視センサ30R及び左後方監視センサ30Lは、第1被検出体として切羽ではなく補助作業車両70を検出する。判定距離Dは積込停止位置から補助作業車両70におけるダンプトラック20に最も近い点(第1被検出体検知位置)までの距離となる。一般に、積込指定位置は切羽近くに指定されるので、(D−L1)の絶対値はDthよりも大きくなる。
図11はステップS611における目標停車位置距離の決定例を示す図である。切羽手前に補助作業車両70がいるので、これに干渉しないように第1被検出体検知位置よりも更にマージンとしての安全距離Ds手前を目標停車位置とする。よって、目標停車距離演算部115は、第1距離L1から安全距離Dsを減算した距離を目標停車距離として算出する。図11は、第1距離L1を例に挙げて説明したが第2距離L2が第1距離よりも小さい場合は第1距離L1を第2距離L2に読み替えればよい。
そして目標停車位置決定部116は、目標停車距離と自車位置を用いて、目標停車位置を決定する(S613)。ステップS607、ステップS608から本ステップに遷移した場合は、切羽近傍で停車することが効率的と考えられるので、この(D−L1)、又は(D−L2)がゼロ付近となるところに目標停車位置が決定される。
一方、ステップS611、ステップS612から本ステップに遷移した場合はこのときは、第1被検出体又は第2被検出体はドーザ等の補助作業車両である可能性があるため、接近せず、安全距離Dsを保った位置で停車すべきであるので、被検出体までの距離に安全距離Dsを考慮した距離がゼロ付近となるところで停車するように停車位置が決定される。
本実施形態によれば、油圧ショベル10のオペレータが指定した積込停止位置に向かって後退する際に、自車両と積込停止位置との間に非接近許容体があれば安全距離を確保した位置を目標停車位置とし、非接近許容体がなければ積込停止位置を目標停車位置とし、これに向かって後退する。ここで、目標停車位置の決定に際して、走行面とそうでない部分、例えば切羽との境界線を使用することがないので、境界線の更新が不必要となり、境界線の位置、形状が随時変化してもそれを取得する必要がなく、作業効率の向上が期待できる。
上記実施形態では自律走行車両を例に挙げて説明したが、ダンプトラック20に運転手が搭乗し、その運転操作に従ってダンプトラックを走行させる所謂有人ダンプトラックの後退支援に、本発明を適用してもよい。図12、図13は、有人ダンプトラックに搭載される後退支援装置及び外部装置の機能ブロック図である。
図12に示すように、後退支援装置100にダンプトラック20のキャブ25内に設けられた情報提供装置250を接続し、その情報提供装置250にモニタ261やアラーム262を接続する。情報提供装置250は入力制御部251、表示制御部252、及び警告部253を含む。表示制御部252はモニタ261に、決定された目標停車位置を示す画像を表示してもよい。その画面に自車両の位置も同時に表示することで、自車両と目標停車位置との位置関係の把握がより簡便に行える。更に、目標停車距離を数値で表示してもよい。これにより、運転手に対して目標停車位置までの後退走行距離を知らせ、運転支援を行うことができる。
また、例えばステップS604の判定で否定となった場合は、その結果を示す情報を情報提供装置250に出力し、警告部253がアラーム262から警報を出力するように構成されてもよい。
また後退支援装置100から目標停車位置を出力する外部装置の例として、図13に示すように、ダンプトラック20の減速指令生成装置270を用いてもよい。減速指令生成装置270は、入力制御部271、減速指令生成部272、及び走行制御部273を含み、減速指令生成部272が目標停車距離に応じてその距離がゼロとなる位置で停車するように、走行制御部273に減速指令を出力し、走行制御部273は走行モータ281又は制動装置282を制御することで速度しながら目標停車位置に停車させる。これにより、補助作業車両70がいる場合にも、これとの干渉を回避しつつ目標停車位置に向かって自動停止させることができ、運転手による操作ミスを抑制することができる。
本構成により、切羽と判定された場合とそうでない場合で、減速指令が出力される後方の被検出体までの距離を適切に確保することができ、不必要な操作介入の発生を抑制することが可能となる。
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を変更しないさまざまな実施形態、実施例は本発明に含まれる。