JP2018140333A - 不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを含有する排気の脱臭方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記の化学工場等から排出される排気中に含有されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和結合を分子内に有する揮発性有機化合物モノマーは、空気中に拡散すると、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の二重結合を有しない揮発性溶剤に比較して微量であっても強い臭気を呈することは前記の通りであり、かかる揮発性有機化合物モノマーの脱臭方法の開発が切望されてきた。
一方、一般に揮発性有機化合物の除去方法においては、前記揮発性有機化合物が吸収液に吸収されて、溶解濃度が増加すると吸収液の吸収能力が低下するので、蒸留等の操作により、吸収液の吸収能力を再活性化させなければならないから液体吸収法では工程が複雑化するという問題もあった。
[特許文献1]特開昭52−37858号公報
かくして、本発明の要旨は次の(1)〜(7)に示す通りである。
(1)分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを含有する排気を重質の有機液体からなる吸収液と連続的または断続的に接触させることにより、前記分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを前記吸収液に吸収させた後、前記吸収液の存在下において重合させることにより脱臭することを特徴とする排気の脱臭方法。
(2)前記分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モーマーは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、およびアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする前記(1)に記載の排気の脱臭方法。
(3)前記重質の有機液体からなる吸収液の分子量が、250以上であり、かつ沸点が200℃以上であることを特徴とする前記(1)に記載の排気の脱臭方法。
(4)前記重質の有機液体からなる吸収液が、−10℃においても液状を保有し、かつ沈殿物を生じないものであることを特徴とする前記(1)に記載の排気の脱臭方法。
(5)前記重質の有機液体からなる吸収液が、エポキシ化合物、可塑剤用エステル、ポリオレフィングリコール、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油、およびリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする前記(1)に記載の排気の脱臭方法。
(6)前記エポキシ化合物が、分子中にエポキシ基を有する有機化合物であり、脂環式エポキシ型化合物、アルコール型化合物、およびフェノール型化合物からなる群より選択された化合物である前記(5)に記載の排気の脱臭方法。
(7)前記エポキシ化合物が、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシルおよび水素化ビスフェノールAグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である前記(6)に記載の排気の脱臭方法。
(8)前記分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを有する排気は、重合禁止剤が除去されたものである前記(1)に記載の排気の脱臭方法。
本発明の実施にとって、不飽和結合を有する揮発性有機化合物の排気中における好ましい含有量は15〜100ppm%である。
普通、揮発性有機化合物モノマーには重合禁止剤(ハイドロキノン等)が微量添加され、自動的に重合反応を抑制しているが、重合禁止剤は、一般に沸点が高いので、製造行程中で蒸発しにくく、モノマーのみが蒸発し、それが吸収液に溶解されるので、脱臭処理には支障がない。本発明の排気の脱臭方法を実施する上で、排気中に重合禁止剤が含有する場合には、適宜、除去処理を行なえばよい。
本発明に係る排気の脱臭方法において、排気と吸収液との接触の方法は、特に限定されるものではなく、吸収液中に排気を通過させるバブリング方式または、排気の充填空間に吸収液のシャワーを導入するか、吸収液のシャワー中に、排気を通過させるなどのシャワー方式のいずれも採用することができるが、装置および操作の簡便性の観点より、バブリング方式が好ましい。
本発明に係る排気の脱臭方法において、前記の如き分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物を含有する排気の処理風量は、0.5〜200m3/分の範囲、好ましくは5〜50m3/分の範囲であり、重質の有機液体からなる吸収液1Lに対しては2〜1000L/分の割合、好ましくは20〜200L/分、さらに好ましくは30〜350L/分の割合で接触させることができる。
次に、本発明に係る不飽和結合を有する揮発性有機化合物を含有する排気の脱臭方法において、重質の有機液体からなる吸収液としては、分子量250以上、好ましくは300以上であり、かつ沸点が200℃以上、好ましくは300℃以上のものであることが選択される。分子量が250未満であると吸収液自体が揮発する恐れが生ずる状態となる。
また、前記吸収液として−10℃においても液状を保持することができ、かつ、沈殿物を生じないものが好ましい。
かかる性状を有する吸収液としては、重質の有機液体からなるものであり、具体的にはエポキシ化合物、可塑剤用エステル、ポリオレフィングリコール、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油等を挙げることができる。
前記脂環式エポキシ型化合物は、エポキシ基が脂環構造内に存在するものであり、具体例としてエポキシヘキサヒドロフタル酸ジブチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジペンチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸―ジ―2―エチルヘキシル(EPS)、エポキシヘキサヒドロフタル酸―ジ―n―オクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸―ジ―エポキシ化ステアリル等を挙げることができる。
前記アルコール型化合物の具体例は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1.4―シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等を例示することができる。
また、前記フェノール型化合物は、具体例として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、メチレンジフェノールジグリシジルエーテル、エチレンジフェノールジグリシジルエーテル等を例示することができる。
可塑剤用エステルとしては、具体的には、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、アジピン酸エステル、エポキシステアリン酸メチル、エポキシ大豆油、多価アルコールエステル、塩素系パラフィン等を挙げることができる。
前記鉱油系潤滑油留分は、液状炭化水素油類であり、例えば、100℃における動粘度3〜80mm2/sの直留油系留分または分解油系留分またはこれらの混合油系留分、流動パラフィンを挙げることができる。
次に本発明の排気の脱臭方法を実施する脱臭装置について説明する。
図1によれば、脱臭装置は、揮発性有機化合物臭気ガスを吸収塔2に導入するブロアー1と、吸収液22を下層に充填した吸収塔2と吸収塔2の吸収液22において吸収され無臭化された清浄化ガスが移送される移送管23と、飛沫フィルター3とから構成されたものである。
かかる脱臭装置において、導入管4に入口測定位置Aを設け、飛沫フィルターの出口に出口測定位置Bを設け、それぞれ、揮発性有機化合物の濃度を測定すれば、揮発性有機化合物の吸収率を求めることができ、脱臭装置の性能を評価することができる。
また、前記揮発性有機化合物モノマーを重合体化し、重合体は吸収液中に溶解しており、かつ、モノマーに対する吸収液としての吸収能力を有することから、重合体の濃度が増加しても、吸収液の吸収能力を低下させることがなく、例えば、1年間の長期間にわたって、吸収液の吸収能力を低下させずに、連続吸収処理を行うことができる。
吸収処理後、清浄化ガスを導管23により飛沫フィルター3に導入し、脱臭されたガスを飛沫フィルター3の出口で採取することができる。具体的な処理条件については、実施例で示す。
EPS100mlにVOC液体10mlを添加して調製した。
・VOC液体;
VOC液体としては、各実施例および各比較例で示すものを用いた。
有限会社オー・エス・ピー社製 ハンディVOCセンサー
・VOC濃度測定方法;
VOC濃度の測定は、測定温度を室温約20℃において、試験毎に4回測定し、測定結果は、4回の測定値の平均値を採用した。
容量200mlのガラス容器に、VOC液体として下表に示すアクリル酸エチルを含むVOC吸収用試験液をガラス容器に100ml採り、ガラス容器は、ラップ蓋でカバーした。試験液を撹拌した後、液面上約1cmの位置でアクリル酸エチルの濃度(気中アクリル酸エチル濃度)を測定した。
VOC液体としてアクリル酸エチルの代わりにトルエンを用いたこと以外すべて実施例1に記載の方法と同様に処理し、試験開始時および12時間経過時の気中トルエン濃度をそれぞれ、測定した。測定結果を表1に示す。
VOC液体としてアクリル酸エチルの代わりに酢酸エチルを用いたこと以外すべて実施例1に記載の方法と同様に処理し、試験開始時および12時間経過時の気中酢酸エチル濃度をそれぞれ測定した。測定結果を表1に示す。
実施例2
容量10mlの試験管に、VOC液体としてアクリル酸エチルを含むVOC吸収用試験液を5ml採り、ラップで蓋をし、40℃の湯液に浸漬加温し、試験開始時および試験開始後12時間経過時の液面上約1cmの位置における気中アクリル酸エチル濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
VOC液体としてアクリル酸エチルの代わりにトルエンを用いたこと以外すべて実施例2に記載の方法と同様に処理し、気中トルエン濃度をそれぞれ測定した。測定結果を表2に示す。
VOC液体としてアクリル酸エチルの代わりに酢酸エチルを用いたこと以外すべて実施例2に記載の方法および条件により気中酢酸エチル濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
図1に示すVOC脱臭装置において、アクリレート系化合物、メタクリレート系化合物、酢酸ビニルおよびスチレンのVOC臭気混合ガスを含む排気をポンプ1により吸収液注)を充填した吸収塔2の下部に導入し、VOC臭気混合ガスと吸収液との接触により、VOC臭気混合ガスを吸収液中をバブリングさせながら通過させ吸収塔2の頂部より除き、導管3を介して飛沫フィルター3に導入し、飛沫(ミスト)を除去した後、飛沫フィルター3の出口から脱臭された排気を回収した。一年間の連続運転におけるVOC吸収率の推移を図2に示す。運転開始後、1ヶ月経過時においてVOC吸収率82%、6ヵ月経過時78%、12ヶ月経過時73%の結果を得た。
運転条件;
風量:30m3/分
入口測定位置AのVOC濃度:100ppm
VOC濃度測定:有限会社オー・エス・ピー社製 ハンディVOCセンサー
前記の条件および操作により、1年間を通し週日は毎日日中8時間の運転を行った。各種VOC混合物中の成分は、アクリル酸エチル換算値で表示し、入口測定位置Aと出口測定位置Bにおいて、それぞれの気中のVOC濃度を測定し、その結果をベースにしてVOCの吸収率を示す。
Claims (8)
- 分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを含有する排気を重質の有機液体からなる吸収液と連続的または断続的に接触させることにより、前記不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを前記重質の有機液体からなる吸収液に吸収させた後、前記吸収液の存在下において重合させることにより脱臭することを特徴とする排気の脱臭方法。
- 前記分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モーマーは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、およびアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の排気の脱臭方法。
- 前記重質の有機液体からなる吸収液の分子量が、250以上であり、かつ沸点が200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の排気の脱臭方法。
- 前記重質の有機液体からなる吸収液が、−10℃においても液状を保有し、かつ沈殿物を生じないものであることを特徴とする請求項1または3に記載の排気の脱臭方法。
- 前記重質の有機液体からなる吸収液が、エポキシ化合物、可塑剤用エステル、ポリオレフィングリコール、リン酸エステル、鉱油系潤滑油留分又は合成油系潤滑油留分からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の排気の脱臭方法。
- 前記エポキシ化合物が、分子中にエポキシ基を有する有機化合物であり、脂環式エポキシ型化合物、アルコール型化合物およびフェノール型化合物からなる群より選択された少なくとも一種の化合物である請求項5に記載の排気の脱臭方法である請求項1に記載の排気の脱臭方法。
- 前記エポキシ化合物が、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシル、および、水素化ビスフェノールAグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項6に記載の排気の脱臭方法。
- 前記分子内に不飽和結合を有する揮発性有機化合物モノマーを含有する排気は、重合禁止剤が除去されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の排気の脱臭方法。
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