以下、実施形態について図に基づいて説明する。車両用空調装置は、図1に示す室内空調ユニット10および冷凍サイクル30、図2に示す冷却水回路40、ならびに図3に示す空調制御装置50を備えている。
車両用空調装置は、図2に示すエンジン41から車両走行用の駆動力を得る車両に搭載されている。車両用空調装置は、エンジン41から供給される動力および廃熱を用いて車室内の空調を実行する。図1中、上下の矢印は、車両用空調装置が搭載されている車両の上下方向を示している。
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤の内側に配置されている。室内空調ユニット10は、その外殻を形成するケース11を有している。ケース11内には、蒸発器12およびヒータコア13等が収容されている。
ケース11は、車室内に送風される空気の空気通路を形成している。ケース11は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)で成形されている。
ケース11内の空気流れ最上流側には、図示しない内外気切替箱が配置されている。内外気切替箱は、車室内空気と車室外空気とを切替導入する内外気切替部である。以下では、車室内空気を内気と言い、車室外空気を外気と言う。
内外気切替箱には、図示しない内気導入口および図示しない外気導入口が形成されている。内気導入口は、ケース11内に内気を導入させる内気導入部である。外気導入口は、ケース11内に外気を導入させる外気導入部である。
内外気切替箱の内部には、図示しない内外気切替ドアが配置されている。内外気切替ドアは、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、ケース11内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる風量割合変更部である。
内外気切替ドアは、図3に示す電動アクチュエータ51によって駆動される。内外気切替ドア用の電動アクチュエータ51の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
内外気切替ドアは、吸込口モードを切り替える吸込口モード切替部である。吸込口モードとしては、内気モード、外気モードおよび内外気混入モードがある。
内気モードでは、内外気切替ドアが内気導入口を全開にするとともに外気導入口を全閉にするので、ケース11内に内気が導入される。外気モードでは、内外気切替ドアが内気導入口を全閉にするとともに外気導入口を全開にするので、ケース11内に外気が導入される。
内外気混入モードでは、内外気切替ドアが内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整するので、内気モードと外気モードとの間で内気と外気の導入比率が連続的に変化される。
内外気切替箱の空気流れ下流側には、図3に示す室内送風機52が配置されている。室内送風機52は、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風部である。室内送風機52は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室内送風機52の電動モータは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数が制御される。これにより、室内送風機52の送風能力が制御される。
室内送風機52の空気流れ下流側には、蒸発器12が配置されている。蒸発器12の内部には、熱媒体である冷媒が流通する。蒸発器12は、室内送風機52から送風された空気と冷媒とを熱交換させて空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器12のコア面は、車両の上下方向(換言すれば重力方向)と略平行になっている。蒸発器12のコア面とは、蒸発器12の空気流入面および空気流出面のことである。
蒸発器12は、圧縮機31、凝縮器32、膨張弁33および蒸発器12等とともに冷凍サイクル30を構成している。冷凍サイクル30は、車室内へ吹き出される空気の温度を、エンジン41が発生する動力を利用して冷却する空気冷却部である。
圧縮機31は、冷凍サイクル30の冷媒を吸入し、圧縮して吐出する圧縮部である。圧縮機31は、車両のエンジンルーム内に配置されており、図示しないプーリーおよびベルト等を介してエンジン41により回転駆動される。
圧縮機31は、可変容量型圧縮機または固定容量型圧縮機である。可変容量型圧縮機は、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整する圧縮機である。固定容量型圧縮機は、図3に示す電磁クラッチ53の断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する圧縮機である。
凝縮器32の内部には、圧縮機31から吐出された冷媒が流通する。凝縮器32は、室外送風機34から送風された外気と冷媒とを熱交換させることによって冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。凝縮器32は、車両のエンジンルーム内に配置されている。凝縮器32は、圧縮機31から吐出された冷媒が持つ熱を放熱させる放熱器である。
室外送風機34は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数が制御されて送風量が制御される電動式送風機である。室外送風機34の回転数が制御されることによって、室外送風機34の送風量が制御される。
膨張弁33は、凝縮器32から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧部である。蒸発器12は、膨張弁33にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。蒸発器12は、空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器12で蒸発した冷媒は圧縮機31に吸入される。
蒸発器12で空気を冷却するので、蒸発器12の表面に凝縮水が発生する。凝縮水の排水を容易にするために、蒸発器12の表面には親水処理が施されている。
室内空調ユニット10のケース11内には、ヒータコア通路14、バイパス通路15および混合空間16が形成されている。
ヒータコア通路14およびバイパス通路15は、蒸発器12通過後の空気が流れる空気通路である。ヒータコア通路14およびバイパス通路15は、互いに並列な空気通路である。混合空間16は、ヒータコア通路14およびバイパス通路15から流出した空気を混合させるための空間である。
ヒータコア通路14には、ヒータコア13が配置されている。ヒータコア13は、図2に示す冷却水回路40を循環する冷却水と蒸発器12通過後の空気とを熱交換させて蒸発器12通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
ヒータコア13のコア面は、車両の上下方向(換言すれば重力方向)に対して斜めになっている。ヒータコア13のコア面とは、ヒータコア13の空気流入面および空気流出面のことである。蒸発器12およびヒータコア13は、ケース11内において略水平方向に並んで配置されている。
ヒータコア13に空気よりも低温の冷却水が循環する場合、ヒータコア13で空気が冷却される。ヒータコア13で空気が冷却される場合、ヒータコア13の表面に凝縮水が発生する。ヒータコア13の表面の凝縮水の排水を容易にするために、ヒータコア13の表面には親水処理が施されている。
バイパス通路15は、蒸発器12通過後の空気を、ヒータコア13を通過させることなく、混合空間16に導く空気通路である。蒸発器12の空気流れ下流側であって、ヒータコア通路14およびバイパス通路15の入口側には、エアミックスドア17が配置されている。
エアミックスドア17は、ヒータコア通路14へ流入させる冷風とバイパス通路15へ流入させる冷風との風量割合を連続的に変化させる風量割合変化部である。エアミックスドア17は、車室内へ送風される空気の温度を調整する温度調整部である。すなわち、エアミックスドア17が、ヒータコア通路14を通過する空気とバイパス通路15を通過する空気との風量割合を変化させることによって、混合空間16にて混合された空気の温度が変化する。
エアミックスドア17は、回転軸と板状のドア本体部とを有する片持ちドアである。エアミックスドア17の回転軸は、図3に示す電動アクチュエータ54によって駆動される。エアミックスドア17用の電動アクチュエータ54の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
図1は、エアミックスドア17がヒータコア通路14を全開してバイパス通路15を全閉している状態を示している。図4は、エアミックスドア17がヒータコア通路14を全閉してバイパス通路15を全開している状態を示している。
ケース11の空気流れ最下流部にはフェイス吹出口18、フット吹出口19およびデフロスタ吹出口20が配置されている。フェイス吹出口18、フット吹出口19およびデフロスタ吹出口20は、混合空間16で温度調整された空気を車室内へ吹き出す吹出部である。
フェイス吹出口18は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す。フット吹出口19は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出す。デフロスタ吹出口20は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出す。
フェイス吹出口18、フット吹出口19およびデフロスタ吹出口20の空気流れ上流側には吹出口モードドア21、22が配置されている。本例では、吹出口モードドア21、22は、フェイスフットドア21およびデフロスタドア22である。
フェイスフットドア21は、フェイス吹出口18およびフット吹出口19の開口面積を調整する。デフロスタドア22は、デフロスタ吹出口20の開口面積を調整する。
フェイスフットドア21およびデフロスタドア22は、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替部である。フェイスフットドア21およびデフロスタドア22は、図示しないリンク機構を介して、図3に示す電動アクチュエータ55に連結されて連動して回転操作される。吹出口モードドア21、22用の電動アクチュエータ55の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
吹出口モードドア21、22によって切り替えられる吹出口モードは、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードおよびフットデフロスタモードである。
フェイスモードでは、フェイス吹出口18が全開されて、フェイス吹出口18から車室内乗員の上半身に向けて空気が吹き出される。バイレベルモードでは、フェイス吹出口18およびフット吹出口19の両方が開口されて、車室内乗員の上半身および足元に向けて空気が吹き出される。
フットモードでは、フット吹出口19が全開されるとともにデフロスタ吹出口20が小開度だけ開口されて、フット吹出口19から主に空気が吹き出される。フットデフロスタモードでは、フット吹出口19およびデフロスタ吹出口20が同程度開口されて、フット吹出口19およびデフロスタ吹出口20の双方から空気が吹き出される。
乗員が、図3に示す操作パネル70のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードでは、デフロスタ吹出口が全開されて、デフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に向けて空気が吹き出される。
ケース11のうち蒸発器12の下方側部位には、第1排水口23が形成されている。第1排水口23は、蒸発器12で発生した凝縮水(換言すればドレン水)を車外へ排出する凝縮水排出部である。第1排水口23には、第1ドレンホース24が接続されている。
第1ドレンホース24は、ケース11内で発生した凝縮水を車外へ導いて排出するための第1排水部材である。本例では、第1ドレンホース24は、長手方向に2分割されていて、ジョイント部材27を介して互いに接続されている。第1ドレンホース24は、車両の床面1を貫通して車外に延びている。
ケース11のうちヒータコア13の下方側部位には、第2排水口25が形成されている。第2排水口25は、ヒータコア13で発生した凝縮水(換言すればドレン水)を車外へ排出する凝縮水排出部である。第2排水口25には、第2ドレンホース26が接続されている。第2ドレンホース26は、ケース11内で発生した凝縮水を車外へ導いて排出するための第2排水部材である。
第2ドレンホース26は、ジョイント部材27を介して第1ドレンホース24に接続されている。第2ドレンホース26は、第1ドレンホース24のうち車両の床面1の直ぐ上方の部位に接続されている。第2ドレンホース26は、下方へ傾斜しながら第1ドレンホース24に接続されている。
本例では、第1ドレンホース24および第2ドレンホース26は、ゴムのような柔軟性を有する材料で形成されており、ジョイント部材27は樹脂で形成されている。第1ドレンホース24および第2ドレンホース26の代わりに、樹脂製のパイプ部材が設けられていてもよい。
図2に示す冷却水回路40は、熱媒体としての冷却水が循環する熱媒体回路である。冷却水回路40では、ヒータコア13とエンジン41とが冷却水配管によって接続されている。冷却水回路40の冷却水は、エンジン41の廃熱によって加熱される。エンジン41は、冷却水回路40の冷却水を加熱する熱源である。
冷却水回路40には冷却水ポンプ42、ラジエータ43、サーモスタット44、タンク45、開閉弁46および2つの三方弁47が配置されている。
冷却水ポンプ42は、冷却水回路40の冷却水を吸入して吐出することによって、冷却水回路40に冷却水を循環させる冷却水循環部である。冷却水ポンプ42は、エンジン41により回転駆動される水ポンプである。冷却水ポンプ42は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(換言すれば冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプであってもよい。
冷却水ポンプ42およびエンジン41は、冷却水回路40の循環流路40aに配置されている。循環流路40aは、冷却水が循環する閉じた冷却水流路である。
ラジエータ43およびサーモスタット44は、冷却水回路40のラジエータ流路40bに配置されている。ラジエータ流路40bは、その両端が循環流路40aに接続された冷却水流路である。
ラジエータ43は、冷却水回路40の冷却水と外気とを熱交換させる熱交換器である。サーモスタット44は冷却水温度応動弁である。冷却水温度応動弁は、温度によって体積変化するサーモワックスによって弁体を変位させて冷却水流路を開閉する機械的機構を備える弁である。
サーモスタット44は、冷却水の温度が所定温度を下回っている場合、ラジエータ流路40bを閉じてラジエータ43への冷却水の流れを遮断し、冷却水の温度が所定温度を上回っている場合、ラジエータ流路40bを開いてラジエータ43へ冷却水を流通させる。
ヒータコア13は、冷却水回路40のヒータコア流路40cに配置されている。ヒータコア流路40cは、その両端が循環流路40aに接続された冷却水流路である。
三方弁47は、ヒータコア流路40cと循環流路40aとの接続部に配置されている。三方弁47は、ヒータコア流路40cが循環流路40aから遮断される状態と、ヒータコア流路40cと循環流路40aとが連通する状態とを切り替える切替弁である。三方弁47は、ヒータコア13とエンジン41との間における冷却水の循環を遮断する遮断部である。
図2は、ヒータコア流路40cが循環流路40aから遮断された状態を示している。図5は、ヒータコア流路40cと循環流路40aとが連通している状態を示している。図5に示すように、ヒータコア流路40cと循環流路40aとが連通している状態では、循環流路40aのうち2つの三方弁47同士の間の冷却水流れが遮断されるように三方弁47が作動する。
タンク45および開閉弁46は、冷却水回路40のタンク流路40dに配置されている。タンク流路40dは、その両端がヒータコア流路40cに接続された冷却水流路である。
タンク45は、冷却水を貯留する冷却水貯留部材である。開閉弁46は、タンク流路40dを開閉する弁である。図2は、開閉弁46がタンク流路40dを開けた状態を示している。図5は、開閉弁46がタンク流路40dを閉じた状態を示している。
タンク45は、図6に示すタンク移動機構48によって上下に移動可能になっている。タンク移動機構48は、ヒータコア13に対するタンク45の車両上下方向(換言すれば重力方向)における相対位置を移動させる移動機構である。
図6中、タンク45の実線位置は、タンク移動機構48がタンク45を最上方まで移動させた状態を示している。図6中、タンク45の二点鎖線位置は、タンク移動機構48がタンク45を最下方まで移動させた状態を示している。
タンク移動機構48は、ボールねじ48aと電動アクチュエータ48bとを有している。タンク45はボールねじ48aに連結されている。電動アクチュエータ48bがボールねじ48aを回転駆動することによって、タンク45が上下に移動する。ボールねじ駆動用(すなわちタンク移動用)の電動アクチュエータ48bの作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
タンク流路40dは、タンク45の上下移動に追従するように、ゴムホース等の柔軟性のある部材によって形成されている。
タンク移動機構48がタンク45を最上方まで移動させた状態では、タンク45の下端はヒータコア13の上端よりも上方に位置している。タンク移動機構48がタンク45を最下方まで移動させた状態では、タンク45の上端はヒータコア13の下端よりも下方に位置している。
図2、図5および図6において、ファイヤーウォール2は、車室内空間とエンジンルームとを仕切る隔壁である。ラジエータ43、サーモスタット44、タンク45、開閉弁46、2つの三方弁47およびタンク移動機構48は、車両のエンジンルームに配置されている。
図3に示す空調制御装置50およびエンジン制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。空調制御装置50は、空調を制御する空調制御部である。エンジン制御装置60は、エンジン41の作動を制御するエンジン制御部である。
エンジン制御装置60の出力側には、エンジン41を構成する図示しない各種エンジン構成機器が接続されている。各種エンジン構成機器は、スタータおよび燃料噴射弁の駆動回路等である。スタータは、エンジン41を始動させる始動部である。燃料噴射弁は、エンジン41に燃料を供給する燃料供給部である。
エンジン制御装置60の入力側には、種々のエンジン制御用の図示しないセンサ群が接続されている。種々のエンジン制御用のセンサ群は、アクセル開度センサ、エンジン回転数センサおよび車速センサ等である。
アクセル開度センサは、アクセル開度を検出するアクセル開度検出部である。エンジン回転数センサは、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出部である。車速センサは、車速を検出する車速検出部である。
空調制御装置50の出力側には、室外送風機34、冷却水ポンプ42、各種電動アクチュエータ48b、51、54、55、室内送風機52、圧縮機11の電磁クラッチ53等が接続されている。
空調制御装置50の入力側には、種々の空調制御用のセンサ群61〜66が接続されている。種々の空調制御用のセンサ群61〜66は、内気センサ61、外気センサ62、日射センサ63、蒸発器温度センサ64、エンジン冷却水温度センサ65、およびタンク冷却水温度センサ66等である。
内気センサ61は、車室内温度Trを検出する車室内温度検出部である。外気センサ62は、外気温Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ63は、車室内の日射量Tsを検出する日射量検出部である。
蒸発器温度センサ64は、蒸発器温度TEを検出する蒸発器温度検出部である。蒸発器温度TEは、蒸発器12からの吹出空気温度である。
蒸発器温度センサ64は、蒸発器12の熱交換フィン温度を検出するフィン温度センサである。蒸発器温度センサ64は、蒸発器12のその他の部位の温度を検出する温度センサであってもよい。蒸発器温度センサ64は、蒸発器12を流通する冷媒自体の温度を直接検出する冷媒温度センサであってもよい。
エンジン冷却水温度センサ65は、エンジン41から流出した冷却水の温度Twを検出する冷却水温度検出部である。タンク冷却水温度センサ66は、タンク45における冷却水の温度を検出する冷却水温度検出部である。
空調制御装置50の入力側には、各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。各種空調操作スイッチは空調操作パネル70に設けられている。空調操作パネル70は、車室内前部の計器盤付近に配置されている。
操作パネル70の各種空調操作スイッチは、車両用空調装置の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モード切替スイッチ、吹出口モード切替スイッチ、風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ等である。
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定部である。風量設定スイッチは、室内送風機52が送風する風量を調整する風量調整部である。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度Tsetを設定する目標温度設定部である。
空調制御装置50およびエンジン制御装置60は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。
例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置60へエンジン41の作動を要求する信号を出力することによって、エンジン41の作動を要求することが可能となっている。エンジン制御装置60では、空調制御装置50からのエンジン41の作動を要求する信号を受信すると、エンジン41の作動の要否を判定し、その判定結果に応じてエンジン41の作動を制御する。
例えば、暖房のためにエンジン41の廃熱が必要である場合、空調制御装置50は、エンジン制御装置60へエンジン41の作動を要求する信号を出力する。
空調制御装置50およびエンジン制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御するハードウェアおよびソフトウェアを有している。
空調制御装置50およびエンジン制御装置60のうち、各種制御対象機器を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
エンジン制御装置60は、エンジン41がアイドリング状態となった際にエンジン41を停止させるアイドルストップ制御を実施する。エンジン制御装置60のうちアイドルストップ制御を実施するハードウェアおよびソフトウェアは、アイドルストップ制御部である。
空調制御装置50のうち、タンク移動機構48の電動アクチュエータ48bの作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、タンク45の上下位置を制御するタンク位置制御部である。
空調制御装置50のうち、エアミックスドア17用の電動アクチュエータ54の作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、ヒータコア通路14を通過する空気とバイパス通路15を通過する空気との風量割合を制御する風量割合制御部である。
空調制御装置50のうち、三方弁47の作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、ヒータコア流路40cと循環流路40aとの連通・遮断状態の切り替えを制御する流路切替制御部である。
空調制御装置50のうち、開閉弁46の作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアは、タンク流路40dの開閉を制御する流路開閉制御部である。
空調制御装置50のうち、エンジン制御装置60に制御信号を出力するハードウェアおよびソフトウェアは、制御信号出力部である。制御信号出力部は、アイドルストップ禁止要求信号およびアイドルストップ許可信号をエンジン制御装置60に出力する。アイドルストップ禁止要求は、アイドルストップ制御を禁止してエンジン41を作動させることをエンジン制御装置60に要求する信号である。アイドルストップ許可要求は、エンジン制御装置60に対してアイドルストップ制御を許可する信号である。
エンジン制御装置60のうち、空調制御装置50からの出力信号等に応じてエンジン41の作動の要否を決定するハードウェアおよびソフトウェアは、エンジン作動要否決定部である。
上記構成における本実施形態の車両用空調装置の作動を説明する。空調制御装置50は、図7のフローチャートに示す制御処理を、空調制御プログラムのメインルーチンに対するサブルーチンとして実行する。
まずステップS100では、センサ群61〜66の検出信号に基づいて、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、以下の数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
Tsetは、車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である。Trは、内気センサ61によって検出された車室内温度である。Tamは、外気センサ62によって検出された外気温である。Tsは、日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインである。Cは補正用の定数である。
目標吹出温度TAOは、車室内を所望の温度に保つために車両用空調装置が生じさせる必要のある熱量に相当するものである。目標吹出温度TAOは、車両用空調装置に要求される空調熱負荷である。
ステップS110では、目標吹出温度TAOが冷房領域内にあるか否かを判定する。例えば、目標吹出温度TAOが外気温Tamよりも低い場合、目標吹出温度TAOが冷房領域内にあると判定する。
ステップS110にて目標吹出温度TAOが冷房領域内にないと判定した場合、暖房運転を行う必要があると判断してステップS120へ進み暖房運転を行う。
暖房運転時には、ヒータコア流路40cと循環流路40aとが連通するように三方弁47を制御し、タンク流路40dが閉じられるように開閉弁46を制御し、ヒータコア通路14を通過する空気とバイパス通路15を通過する空気との風量割合が目標吹出温度TAO、蒸発器温度TEおよびエンジン冷却水温度Twに応じて調整されるようにエアミックスドア17用の電動アクチュエータ54を制御する。
これにより、エンジン41の廃熱によって加熱された冷却水がヒータコア13を循環し、蒸発器12通過後の空気がヒータコア13を流れるので、蒸発器12通過後の空気がヒータコア13で加熱されて車室内に吹き出される。したがって、車室内が暖房される。
一方、ステップS110にて目標吹出温度TAOが冷房領域内にあると判定した場合、冷房運転を行う必要があると判断してステップS130へ進み、クールダウンが完了したか否かを判定する。クールダウンとは、夏期の炎天下において乗車した直後等、冷房負荷が高いために高い冷房能力で急速に冷房を行うことをいう。
例えば、目標吹出温度TAOがクールダウン閾値以下である場合、クールダウンが完了していないと判定し、目標吹出温度TAOがクールダウン閾値を上回った場合、クールダウンが完了したと判定する。
ステップS130にてクールダウンが完了していないと判定した場合、ステップS140へ進みクールダウンモードを実行する。クールダウンモードでは、ヒータコア通路14が全閉されバイパス通路15が全開されるようにエアミックスドア17用の電動アクチュエータ54を制御する。
これにより、蒸発器12通過後の空気がヒータコア13をバイパスして流れるので、蒸発器12通過後の空気がヒータコア13で加熱されることなく車室内に吹き出される。クールダウンモードでは、エンジン41が稼動して圧縮機31が駆動されるので、蒸発器12で空気が冷却される。したがって、高い冷房能力で急速に冷房が行われる。
蒸発器12では空気が露点温度以下に冷却されるので、蒸発器12の表面に凝縮水が発生する。蒸発器12の表面で発生した凝縮水は、蒸発器12からケース11の底部側へ流下して、第1排水口23および第1ドレンホース24を通じて車外に排出される。
一方、ステップS130にてクールダウンが完了したと判定した場合、ステップS150へ進み、アイドルストップ中であるか否かを判定する。例えば、エンジン制御装置60からの出力信号に基づいてアイドルストップ中であるか否かを判定する。
ステップS150にてアイドルストップ中でないと判定した場合、ステップS160へ進み、蓄冷モードを実行する。
蓄冷モードでは、ヒータコア流路40cが循環流路40aから遮断されるように三方弁47を制御し、タンク流路40dが開かれるように開閉弁46を制御し、ヒータコア通路14が全開されバイパス通路15が全閉されるようにエアミックスドア17用の電動アクチュエータ54を制御し、タンク45が最下方まで移動するようにタンク移動機構48の電動アクチュエータ48bを制御する。
これにより、エンジン41の廃熱によって加熱された冷却水がヒータコア13を循環せず、蒸発器12通過後の空気がヒータコア13を流れるので、ヒータコア13内の冷却水が冷却される。タンク45がヒータコア13よりも下方に位置しているので、ヒータコア13で冷却された冷却水がヒートサイフォン効果によってタンク45に移動するとともにタンク45内の温かい冷却水がヒータコア13に移動する。すなわち、ヒータコア13とタンク45との間で冷却水が自然対流によって循環する。
したがって、タンク45内の冷却水に蓄冷されるとともに、クールダウンモードと比較して低い冷房能力で冷房が行われる。
続くステップS170では、蓄冷が完了したか否かを判定する。例えば、タンク45内の冷却水の温度に基づいて蓄冷が完了したか否かを判定する。
ステップS170にて蓄冷が完了したと判定した場合、ステップS180へ進み、アイドルストップ許可信号をエンジン制御装置60へ出力する。すなわち、アイドルストップが行われて圧縮機11が停止してもタンク45内の冷却水に蓄えられた冷熱を利用して冷房を行うことが可能であることからアイドルストップを許可する。
一方、ステップS170にて蓄冷が完了していないと判定した場合、ステップS180へ進み、アイドルストップ禁止要求信号をエンジン制御装置60へ出力する。すなわち、アイドルストップが行われて圧縮機11が停止するとタンク45内の冷却水に蓄えられた冷熱が不足して冷房を十分に行うことができないことからアイドルストップの禁止を要求する。
一方、ステップS150にてアイドルストップ中であると判定した場合、ステップS200へ進み、放冷モードを実行する。放冷モードでは、ヒータコア流路40cが循環流路40aから遮断されるように三方弁47を制御し、タンク流路40dが開かれるように開閉弁46を制御し、ヒータコア通路14が全開されバイパス通路15が全閉されるようにエアミックスドア17用の電動アクチュエータ54を制御し、タンク45が最上方まで移動するようにタンク移動機構48の電動アクチュエータ48bを制御する。
これにより、エンジン41の廃熱によって加熱された冷却水がヒータコア13を循環せず、蒸発器12通過後の空気がヒータコア13を流れるので、ヒータコア13において、蒸発器12通過後の空気が、蓄冷モードで蓄冷された冷却水によって冷却される。タンク45がヒータコア13よりも上方に位置しているので、ヒータコア13で蒸発器12通過後の空気から吸熱した冷却水がヒートサイフォン効果によってタンク45に移動し、タンク45内の冷たい冷却水がヒータコア13に移動する。すなわち、ヒータコア13とタンク45との間で冷却水が自然対流によって循環する。
したがって、タンク45内の冷却水によって冷却された空気が車室内に吹き出されるので、冷房が行われる。
放冷モードでは、ヒータコア13で空気が露点温度以下に冷却されるので、ヒータコア13の表面に凝縮水が発生する。ヒータコア13の表面で発生した凝縮水は、ヒータコア13からケース11の底部側へ流下して、第2排水口25、第2ドレンホース26および第1ドレンホース24を通じて車外に排出される。
第1排水口23から第1ドレンホース24へと流れる空気の流速によるベンチュリー効果によって、第2ドレンホース26の空気が吸い出される。そのため、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を車外に良好に排出できる。
本実施形態では、タンク移動機構48は、蓄冷モード時にヒータコア13に対するタンク45の相対位置を放冷モード時と比較して下方に移動させ、放冷モード時にヒータコア13に対するタンク45の相対位置を蓄冷モード時と比較して上方に移動させる。
これによると、蓄冷モード時および放冷モード時に、ヒートサイフォン効果によってヒータコア13とタンク45との間で冷却水を循環させることができるので、ヒータコア13とタンク45との間の冷却水の循環を省動力化できる。
本実施形態では、タンク移動機構48は、蓄冷モード時に、タンク45の上端がヒータコア13の下端よりも下方に位置するようにヒータコア13に対するタンク45の相対位置を移動させ、放冷モード時に、タンク45の下端がヒータコア13の上端よりも上方に位置するようにヒータコア13に対するタンク45の相対位置を移動させる。
これによると、蓄冷モードおよび放冷モードのいずれにおいてもヒートサイフォン効果によってヒータコア13とタンク45との間で冷却水を確実に循環させることができるので、ヒータコア13とタンク45との間の冷却水の循環を確実に省動力化できる。
本実施形態では、タンク移動機構48は、蓄冷モード時にタンク45を放冷モード時と比較して下方に移動させ、放冷モード時にタンク45を蓄冷モード時と比較して上方に移動させる。これにより、ヒータコア13に対するタンク45の相対位置を容易に移動させることができる。
本実施形態では、ケース11内において、ヒータコア13のコア面が車両上下方向(換言すれば重力方向)に対して斜めになっている。これによると、ヒータコア13のコア面が車両上下方向(換言すれば重力方向)と平行になっている場合と比較して、ヒータコア13の上端から下端までの距離を短くできる。そのため、蓄冷モード時にタンク45の上端をヒータコア13の下端よりも下方に位置させ、放冷モード時に、タンク45の下端をヒータコア13の上端よりも上方に位置させるために必要なタンク45の移動距離を小さくできるので、タンク移動機構48を簡素化できる。
本実施形態では、ケース11には、蒸発器12の表面で発生した凝縮水を排出する第1排水口23と、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を排出する第2排水口25とが形成されている。
これによると、蒸発器12の表面で発生した凝縮水のみならず、放冷モード時にヒータコア13の表面で発生した凝縮水もケース11から排出できるので、凝縮水が車室内に漏れることを抑制できる。
本実施形態では、第2ドレンホース26は、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を第2排水口25から第1ドレンホース24へ導く。
これによると、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を、蒸発器12の表面で発生した凝縮水とともに車室外へ排出できるので、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を効率良く車室外へ排出できる。
本実施形態では、ヒータコア13の表面に親水処理が施されている。これにより、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を確実に流下させることができるので、ヒータコア13の表面で発生した凝縮水を確実に排出できる。
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
(1)上記実施形態では、蓄冷モード時にタンク45を下方に移動させ、放冷モード時にタンク45を上方に移動させるタンク移動機構48を備えるが、蓄冷モード時にヒータコア13を上方に移動させ、放冷モード時にヒータコア13を下方に移動させるヒータコア移動機構を備えてもよい。
(2)上記実施形態では、蒸発器12のコア面が車両上下方向と略平行になっており、蒸発器12およびヒータコア13が略水平方向に並んで配置されているが、蒸発器12のコア面およびヒータコア13のコア面が水平方向と略平行になっていて、蒸発器12およびヒータコア13が車両上下方向に並んで配置されていてもよい。
これによると、蒸発器12で発生した凝縮水とヒータコア13で発生した凝縮水とを共通の排水口に流下させて排水することができる。
(3)上記実施形態の冷凍サイクル30では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
また、上記実施形態の冷凍サイクル30は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
(4)上記実施形態では、冷却水回路40の冷却水を加熱する熱源がエンジン41であるが、冷却水回路40の冷却水を加熱する熱源は電気ヒータ等であってもよい。
(5)上記実施形態では、車両用空調装置は、エンジン41から車両走行用の駆動力を得る車両に搭載されているが、車両用空調装置は、エンジンおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行可能なハイブリッド車両に搭載されていてもよい。
上記実施形態の車両用空調装置がハイブリッド車両に搭載されている場合、EV走行モード時に、車室内に吹き出す空気を、蓄冷されたエンジン冷却水によって長時間冷却することができる。EV走行モードは、エンジンが停止して走行用電動モータから駆動力を得て走行する走行モードである。