JP2018134738A - 筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の耐久性を更に向上させることができる筆記具を提供する。【解決手段】 少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、筆記芯のせん断強度が5N以上であることを特徴とする筆記具。【選択図】図1

Description

本発明は、筆記具軸体から供給されるインクを誘導し、かつ保溜できる筆記芯を有する筆記具に関し、更に詳しくは、一般に、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカー、アンダーラインマーカーと呼ばれるタイプの筆記具に関する。
従来、ペイントマーカー、アンダーラインマーカー等と称される筆記具は、幅広の筆記芯を備えることにより幅広の線引きを可能にしたものであって、マーキングの視認性や作業性に優れているため幅広く使用されている。
ラインマーカー等の筆記具における筆記芯は、一般に合成樹脂繊維等を棒状等に集束したものや、高分子の焼結体などの多孔質部材に毛細管作用を付与し、これにより筆記具本体となる軸体から供給されるインクをペン先に導出することにより筆記可能としたものである。
また、蛍光インクを筆記具本体となる軸体内に収容した筆記具の普及にともない、幅広の線引きを可能とした多くの構造、形状のペン先を有する筆記具が市販されたことにより、使用者の用途に応じた筆記具の広い選択が可能となり、その作業性も快適なものとなっている。
本出願人は、筆記具本体となる軸体から供給されるインクを誘導し、かつ保留できる筆記芯を有する筆記具において、ペン先に、筆記方向を視認できる可視部(窓)を備えた筆記具を開示している(例えば、特許文献1参照)。
このタイプの筆記具は、ペン先の可視部(窓)から筆記した文字が見えるから、チェックしたいところだけ、ピタッとはみ出さずにラインが引けるものである。具体的には、図5(a)に示すように、筆記具本体となる軸体1内のインク吸蔵体1aにインクを吸蔵させ、一端に細字タイプの筆記芯からなるペン体2と他端に太字タイプの筆記芯からなるペン体3を有し、インク吸蔵体1aのインクをそれぞれペン体2及びペン体3に供給する構成となっている。図示符号1b,1cはペン体2及びペン体3を保護するキャップである。また、後軸4に図5(b)にて示す太字タイプの筆記芯からなるペン体3が取り付けられている。このペン体3は、図5(b)に示すように、透明な支持部材となる保持体3aの外周に、略U字状の多孔質部材からなるインク誘導部3b,3bと筆記部3cとを有する筆記芯が取り付けられている。
また、本出願人による特許文献2にも、図6(a)及び(b)示すように、筆記具本体5内に収容されたインクを筆記具本体5に固着された先軸6、この先軸6に取り付けられた保持体7を介して筆記芯8で筆記する筆記具を開示している。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された筆記具においては、強い筆記圧で筆記し続けると筆記芯に過度の荷重が持続することとなり、筆記芯の耐久性や筆記性能を損なうという課題があり、筆記性能を損なうことなく、更なる筆記芯の耐久性の向上、改善が切望されている。
特開2000−52682号公報(特許請求の範囲、段落0014、図7、図24、図25) 特開2014−50967号公報(図1等)
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、強い筆記荷重で筆記しても、筆記性能を損なうことなく、筆記芯の耐久性を更に向上させることができる筆記具を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも多孔体からなる筆記芯と硬質材料からなる保持体とから筆記部が構成される筆記具において、保持体からの筆記芯の先端側の強度を特定値以上などとする構成により、上記目的の筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の筆記具は、少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、筆記芯のせん断強度が5N以上であることが好ましい。
好ましくは、筆記芯のせん断強度が、筆記芯先端側の端面から内部側の長さで0.6mm以内のせん断強度であることが望ましい。
筆記芯が少なくとも粒状の熱可塑性樹脂を焼結した焼結体からなることが好ましい。
本発明によれば、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぐことができる耐久性に優れた筆記具が提供される。
(a)〜(c)は、本発明の筆記具の一例を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。 (a)〜(f)は、図1の筆記具において、筆記芯を保持する保持体の一例を示す各図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は中央横断面図である。 (a)〜(f)は、図2の保持体に筆記芯を取り付けた状態の一例を示す各図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は中央横断面図である。 (a)〜(d)は筆記芯のせん断強度を測定するための説明図であり、(a)は測定対象となる筆記芯の一例を示す左側面図、正面図、右側面図であり、(b)〜(d)は筆記芯のせん断強度の測定課程を示す各説明図である。 従来の筆記具の一例を示すものであり、(a)は縦断面図、(b)は筆記芯を保持体に取り付けた状態を示す部分正面図である。 従来の筆記具の他例を示すものであり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は後方側から見た斜視図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明の筆記具の実施形態の一例を示す各図面と、筆記芯を保持する保持体の一例を示す各図面と、保持体に筆記芯を取り付けた状態の一例を示す各図面である。また、図4(a)〜(d)は、筆記芯のせん断強度を測定するための説明図であり、(a)は測定対象となる筆記芯の一例を示す各図面であり、(b)〜(d)は筆記芯のせん断強度の測定課程を示す各説明図である。
本実施形態の筆記具Aは、図1(a)〜(c)に示すように、筆記具本体となる軸体(軸筒)10、インク吸蔵体20、筆記芯30、保持体40、キャップ50を備えている。
軸体10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、図1(a)に示すように、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体20を収容する有底筒状の後軸11と、ペン先となる筆記芯30を取り付けた保持体40を固着する先軸15とを有している。
後軸11は、例えば、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂を使用して有底筒状に成形され、筆記具の本体(軸体)として機能する。この後軸11は、図1(a)に示すように、後端側内部にインク吸蔵体20の後端部を保持する保持片12、12…からなる保持部材13が設けられており、後軸全体及び後述する先軸は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。また、後軸11の前方側に先軸15が嵌合等により固着される構造となっている。なお、筆記具用インクを熱変色性インクとした場合は、熱可塑性エラストマーを外面又は後軸11の後端部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易な軸体とすることが好適である。
先軸15は、後述する筆記芯30を固定する保持体40の本体部41を固着する凸状の嵌合部16が設けられている。この構造の先軸15は、例えば、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂などで成形されるものである。
インク吸蔵体20は、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体20は、軸体10の本体部となる後軸11内に収容保持されている。
また、用いるインク組成は特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができ、例えば、アンダーラインペン等ではインクに蛍光色素、例えば、ベーシックバイオレット11、ベーシックイエロー40、熱変色性マイクロカプセル顔料などを含有させることできる。
筆記芯30は、図3、図4(a)に示すように、全体がコ字型形状となるものであり、インク誘導部31、31と、該インク誘導部31、31からのインクを導出する筆記部32とを備えたものである。なお、33は一方の外形が傾斜状となる傾斜状部である。
この筆記芯30は、多孔質部材から構成されるものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンから選ばれる熱可塑性樹脂などの粒状の熱可塑性樹脂を焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
好ましい筆記芯30は、繊維束芯、繊維芯、焼結芯であり、特に好ましくは、製造性、気孔率の形成しやすさ、強度を高度に両立できる点等から、少なくとも上記粒状の熱可塑性樹脂を焼結した焼結芯が望ましい。
この筆記芯30は、せん断強度が5N以上となるように設定されており、好ましくは、筆記芯30のせん断強度が、筆記芯32先端側の端面から内部側の長さtで0.6mm以内のせん断強度であることが望ましい。
この筆記芯30のせん断強度を5N以上に設定することにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぐことができ、耐久性に優れたものとすることができ、更に好ましくは、8N以上、特に好ましくは、10N以上〜30N以下とすることが望ましい。
本発明において、上記せん断強度の測定は、例えば、図4(b)〜(d)に示すせん断強度の測定装置を用いて測定することができる。
このせん断強度の測定装置60は、装置本体61の中央部にせん断強度測定治具65を挿入する測定治具挿入孔62と、装置本体61の側面上部に、測定する筆記芯30を挿入する筆記芯挿入孔63とを有し、上記せん断強度測定治具65は荷重を加える荷重付加機66に連結され、該荷重付加機66は図示しないがモーター等の駆動計測機に連結されている。
この測定装置60を用いて筆記芯30のせん断強度の測定は、図4(a)に示す筆記芯30の筆記部32側から筆記芯挿入孔63に挿入、具体的には、筆記芯32先端側の端面から内部側の長さt(0.6mm)以内になるように挿入した後、測定治具挿入孔62に鉛直方向(真上)からせん断強度測定治具65を挿入し、筆記芯30の測定部位となる筆記部32に荷重を加えることにより、目的のせん断強度(耐荷重:破断した際の荷重)が測定されるものである。
本発明では、筆記芯のせん断強度が5N以上、好ましくは、筆記芯30のせん断強度が、筆記芯32先端側(筆記部32)の端面から内部側の長さtで0.6mm以内のせん断強度が5N以上となるものであれば、筆記芯30の材質、気孔率、形状、大きさなどは限定されないが、図3、図4(a)に示すように、全体がコ字型形状からなり、インク誘導部31、31と、該インク誘導部31、31からのインクを導出する筆記部32を備えたものや、L字、T字型形状のインク誘導部31を備えた筆記部30とすることが好ましい。
筆記部32は、好ましくは、描線幅1mm以上、更に好ましくは、描線幅2mm以上の描線幅となる筆記部が望ましい。
本実施形態の筆記芯30は、平均粒子径5μmのポリエチレン粉末を焼結した気孔率60%の焼結芯(焼結体)から構成されており、筆記部32は上辺長さ4mm、下辺長さ5mm、高さ2mm、インク誘導部31はφ2mm、長さ16mmのものを用いた。
保持体40は、図2(a)、図3(a)〜(f)に示すように、膨出状の本体部41と、該本体部41の前方側に、フランジ部42と、筆記方向を視認することができる可視部43とを有すると共に、該本体部41の後方側に、上記本体部41に連設される保持片44を有する後方保持部45とを備えたものである。また、これらの部材から構成される保持体40の長手方向外周面全体には、上記コ字型状の筆記芯30を嵌入保持する保持溝46が形成されている。
また、本体部41の幅方向外周面には、凹状の嵌合部41aが形成され、長手方向外周面には、空気流通溝41b、41bが形成されている。
この形態では、筆記芯30の筆記部32と接触する箇所となる、保持溝46の前方表面部47に、筆記部32の筆記時等の際のズレを防止して保持を確実にするための凹凸段差が微小の凹凸形状からなる非平滑面部48が形成されている。
このように構成される保持体40全体を、視認性、可撓性を有する材料、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の材料から成形により構成することにより、可視部43で筆記方向に書いてある文字を有効に視認できることとなる。なお、可視部43だけを視認性を有する材料で構成してもよい。
また、保持体40は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
本実施形態の筆記具Aでは、筆記芯30の筆記部32の一方は傾斜状部32となっており、筆記芯30は保持体40の保持溝46に嵌入することにより確実に固定される構造となっている。また、軸体10内の圧力等が増大にした際に、インク垂れ等がペン芯から生じることがあるが、この形態では、空気流通溝41b、41bを介して軸体10内と外気とを調整している。キャップ50は、先軸15の先端側外周面に嵌合等により着脱自在に取り付けられるものである。なお、筆記具用インクを熱変色性インクとした場合は、熱可塑性エラストマーをキャップ50の外面又はキャップ50の頂部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易なキャップとすることが好適である。
この筆記具Aでは、筆記具の軸体10を構成する後軸11内に筆記具用インクを吸蔵したインク吸蔵体20を挿入して保持せしめ、先軸15、上述の特定のせん断強度を有する焼結体から構成される筆記芯30を上記構成の保持体40に取り付けることにより、簡単に筆記具Aを作製することができ、インク吸蔵体20に吸蔵されたインクは毛管力により筆記芯30の筆記部32に効率的に供給され、筆記に供されるものとなる。
このように構成される筆記具Aは、少なくとも、多孔体からなる筆記芯30と、筆記芯30を保持する保持体40とから筆記部が構成されるものであって、筆記芯30のせん断強度が5N以上に設定することにより、好ましくは、筆記芯30のせん断強度が、筆記芯32先端側の端面から内部側の長さtで0.6mm以内のせん断強度を5N以上とすることにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぐことができる耐久性に優れた筆記具が得られるものとなる。
また、この筆記具Aは、上述の如く、筆記芯30を保持する保持体40が、視認性を有する材料で構成されているので、当該保持体40の可視部43が、塗布方向、筆記方向を視認できる視認部となるものであり、その方向に書いてある文字や塗布部を確実に視認することができる十分な視認性が付与することができると共に、塗布終わりまで使用可能な塗布具が提供されるものとなる。
更に、本発明の筆記具では、上述の如く、筆記芯のせん断強度が5N以上に設定することにより、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぐことができる耐久性に優れた筆記具が得られるものであるので、例えば、上記実施形態〔図1、図4(a)〕で用いた筆記芯30を生産ラインで大量生産する場合、上記せん断強度の検査を行うに当たっては、生産ロットごとにせん断強度検査を、以下の統計的方法で行うことにより生産ロットごとの合否判定ができることとなる。
ある生産ロット(10万本)からせん断強度測定用の100本(ピース)を任意に抜き取り、図4で詳述した方法でせん断強度測定を行い、検査データ(正規分布)から、平均値(μ)、標準偏差(σ)を求め、下記式で表される標準正規分布の確率密度関数f(x)において、累積確率φ(z)、確率変数0〜5により、5N以下の累積確率(混入確率)を100ppm以下とすることにより、その生産ロットは合格ロットとして製品とすることができることとなる。
Figure 2018134738
x=5(N)、μ:平均値、σ:標準偏差
上記生産ロットごとのせん断強度測定・検査を継続することで、生産ラインにおける筆記芯30の強度の変化が把握でき、せん断強度の低下等の生産トラブルも容易に回避することができるものとなる。なお、5N以下の累積確率(混入確率)が100ppm超過であると、歩留まりが悪くなる傾向となり、効率的な生産を発揮できないことが生じることとなる。
本発明の筆記具は、少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、筆記芯のせん断強度が5N以上であることを特徴とするものであるため、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
例えば、上記実施形態において、筆記芯30を焼結芯タイプの筆記芯について詳述した、上記せん断強度を充足すれば、筆記芯30は焼結体以外に、上述の如く、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体などであってもよく、筆記芯30が繊維束や発泡体などからなる筆記芯の場合に、例えば、気孔率、発泡率が低いもの(密度が高いもの)を筆記部32に用い、気孔率、発泡率が高いもの(密度が低いもの)をインク誘導部31、31に用いて筆記芯(繊維束芯)30として構成してもよく、また、平均粒子径分布の異なる熱可塑性材料(同一材料、異種材料)を組み合わせてなる筆記芯であってもよく、筆記芯30の筆記部32のせん断強度を更に向上させることができる。なお、上記筆記芯30を上記各態様(繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体などの強度、気孔率、発泡率等)に変更しても、インク吸蔵体12からの筆記部32へのインク供給機構を損なうことなく、インク切れを起こすことなく、好適な量となるインク供給がなされるように設定されるものである。
更に、上記各実施形態では、インク吸蔵体20に吸蔵されたインクを毛管力により筆記芯30の筆記部32に効率的に供給せしめる方式(中綿式)の筆記具を示したが、弁機構を備えた筆記具、例えば、筆記具本体となる軸体内に直接インクが収容されたインク室を設けて、インク室と筆記芯との間に弁機構を設け、ペン先方向の押圧移動で弁機構のスプリングの附勢力に抗して弁棒を後退させて弁部を解放してインクの導出を行い、筆記芯にインクを供給する構成の筆記具であってもよいものである。
さらにまた、上記実施形態では、ペン先となる筆記芯30が一つのシングルタイプの筆記具を挙げたが、ツインタイプの筆記具、後軸先端に細字タイプの筆記芯からなるペン体を設けて、インク吸蔵体20のインクを上記ペン体に供給する構成としてもよいものである。
更にまた、上記実施形態では、筆記具用インクで説明したが、液状化粧料、液状薬剤、塗布液、修正液などの液状体とし、筆記芯を該液状体に併せて、例えば、目的のせん断強度を備えた好適な塗布部材を使用してもよいものである。
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
下記構成及び図1〜図4に準拠する筆記具、インクを使用した。筆記芯、保持体等の寸法等は下記に示す大きさのものを使用した。
(筆記芯30の構成)
平均粒子径5μmのポリエチレン(PE)製粉末(融点130℃)を用いたPE製焼結芯、気孔率60%、筆記部:上辺長さ4mm、下辺長さ5mm、高さ2mm、インク誘導部:φ(t)2mm、長さ16mm、上辺長さ4mm、下辺長さ5mm、高さ2mm
せん断強度:t=0.5mmのせん断強度5N(図4による測定装置による測定)未満で破損する確率密度関数f(x)は47ppmであった。
なお、平均粒子径は、電子顕微鏡にて、測定した粒子の直径の平均値を示し、電子顕微鏡に投影された画像内の20個の粒子について測定した粒子径の平均値である。粒子が円形でない場合は、気孔を形成する輪郭の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さと最も短い線分の長さを足して2で割った値を、その粒子の粒子径とする。また、気孔率は、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、筆記芯に浸み込ませた水の体積が算出される。この水の体積を筆記芯の気孔体積と同一として、下記式(A)から算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(筆記芯の見掛け体積)×100 ……(A)
(保持体40の構成)
アクリル樹脂製(融点160℃)、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC−5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
筆記芯取り付け後の可視部43(四角形)の大きさ:5mm×6mm×3mm×4mm
非平滑面部48:凹凸形状:長さ2.0mm、凹凸段差:0.1mm、占有割合:表面部47全体
(筆記芯30、保持体40以外の筆記具部材の構成)
インク吸蔵体:PET繊維束、気孔率85%、φ6×77mm
筆記具本体、キャップ:ポリプロピレン(PP)製
(インク組成)
インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
保湿剤:トリメチルグリシン(グリシンベタイン) 7.5質量%
ペンタエリスリトール 4.5質量%
着色剤:NKW-4805黄(日本蛍光社製) 40.0質量%
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.3質量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1.0質量%
フッ素系界面活性剤:サーフロン8111N(AGCセイミケミカル社製) 0.2質量%
水溶性有機溶剤:エチレングリコール 3.0質量%
水(溶媒):イオン交換水 43.5質量%
この実施例1の筆記具では、上記特性の筆記芯30を図2に示す保持体40に取り付けた(図3)。この筆記芯30を保持体40に固着した後、先軸15を介して筆記具軸体10に装着して図1に示す筆記具を製造した。
この実施例1の筆記具によれば、筆記芯30のせん断強度が10N(5N以上)に設定されているので、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぐことができる耐久性に優れた筆記具が得られることが確認された。
また、筆記芯30と接触する保持体40の表面部47の少なくとも一部を非平滑面形状48としているので、接着剤等を用いることなく、簡便な構造で、保持体に筆記芯を確実に固着すると共に、組立工程の安定化、低コストで製造することができた。
また、得られた筆記具を用いて、文字の上に筆記したところ、筆記時に可視部を介して向こう側の見え方を目視にて確認したところ、視認性が十分であり、見やすく、筆記方向に書いてある文字を読みながら筆記することができた。
更に、自動筆記装置に、この筆記具をセットして、JIS S6037に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重10N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、筆記芯の折れや破損はなく、筆記性は良好で描線かすれはなく、インク流量も良好であることがわかった。
〔実施例2〕
上記実施例1において、筆記芯30の構成をPE製焼結芯から、平均粒子径5μmの
ポリプロピレン樹脂粉末(融点160℃)を用いてPP製燒結芯(気孔率60%)に代えたこと以外は筆記部の形状、大きさなどは変更せず、さらに、保持体40の構成、インク吸蔵体、筆記具本体、キャップ、インク組成も変更せず筆記具を製造した。その際のせん断強度:t=0.5mmのせん断強度5N(図4による測定装置による測定)未満で破損する確率密度関数f(x)は、64ppmとなった。
この実施例2の筆記具においても、筆記芯の材質を変更しても、上記実施例1と同様の作用効果、すなわち、強い筆記荷重で筆記しても筆記性能を損なうことなく、筆記芯の破損を防ぐことができる耐久性に優れた筆記具が得られ、また、接着剤等を用いることなく、簡便な構造で、保持体に筆記芯を確実に固着すると共に、組立工程の安定化、低コストで製造することができ、更に、得られた筆記具を用いて、文字の上に筆記したところ、筆記時に可視部を介して向こう側の見え方を目視にて確認したところ、視認性が十分であり、見やすく、筆記方向に書いてある文字を読みながら筆記することができた。
また、自動筆記装置に、この筆記具をセットして、JIS S6037に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重10N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、筆記芯の折れや破損はなく、筆記性は良好で描線かすれはなく、インク流量も良好であることを確認した。
本発明の筆記具では、アンダーラインペン、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカーと呼ばれるタイプの筆記具に好適に使用することができる。
A 筆記具
10 軸体
11 後軸
15 先軸
20 インク吸蔵体
30 筆記芯
40 保持体
50 キャップ

Claims (3)

  1. 少なくとも、多孔体からなる筆記芯と、筆記芯を保持する保持体とから筆記部が構成される筆記具であって、筆記芯のせん断強度が5N以上であることを特徴とする筆記具。
  2. 筆記芯のせん断強度が、筆記芯先端側の端面から内部側の長さで0.6mm以内のせん断強度であることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
  3. 筆記芯が少なくとも粒状の熱可塑性樹脂を焼結した焼結体からなることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。
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