以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1〜図12を参照して、本発明の第1実施形態によるシールド掘進機1について説明する。第1実施形態では、特許請求の範囲の「トンネル掘削機」を、シールド工法によりトンネル掘削を行うシールド掘進機に適用した例を説明する。
(シールド掘進機の全体構成)
図1に示すように、シールド掘進機1は、掘削面を有する本体部2と、トンネル内面にセグメントSGを組み立てるセグメント組立装置3とを備える。本体部2は、掘削面を構成するカッタヘッド11と、カッタヘッド11によって掘削された土砂が貯留されるチャンバ12と、チャンバ12内から掘削に伴う土砂を輸送する排土装置13と、セグメントSGを押圧して本体部2を推進させるシールドジャッキ14とを含む。
第1実施形態では、シールド掘進機1が、泥土圧式のシールド掘進機である例を示している。泥土圧式のシールド掘進機1では、カッタヘッド11により掘削された土砂にチャンバ12内で作泥材が注入されて土砂と混合され、掘削土砂が不透水性と塑性流動性を持つ泥土に変換される。掘削土砂(泥土)は、チャンバ12内および排土装置13内に充満する。シールド掘進機1は、掘削土砂(泥土)をチャンバ12内および排土装置13内に充満させた状態を維持してシールドジャッキ14の推力によりチャンバ12内に圧力を発生させることにより、地山側の圧力(切羽の土圧および地下水圧)に対抗させる。シールド掘進機1は、掘進量と排土量とのバランスによって圧力の平衡を図りながらA方向に掘進する。なお、A方向は、特許請求の範囲の「掘進方向」の一例である。
本体部2は、前胴部15aおよび後胴部15bから構成された胴体15を備えている。前胴部15aは、推進力が付与されてカッタヘッド11により地山の掘進を行う部分であり、後胴部15bは、前胴部15aに伴って、トンネルのリング状の周壁部分を構成するセグメントSGを配列しながら進行する部分である。
ここで、図2に示すように、第1実施形態のシールド掘進機1は、異形断面を有するシールド掘進機である。すなわち、本体部2は、A方向と直交する断面Cが非円形形状のトンネルを掘削する掘削面(カッタヘッド11)を有する。図2では、上下方向に縦長の長方形(矩形)断面を有し、長方形断面のトンネルを掘進する本体部2の例を示している。図2の例では、本体部2の断面形状の縦横比(縦寸法/横寸法)は、約1.9である。このため、セグメント組立装置3は、長方形断面のトンネル内面に合わせて、セグメントSGを長方形のリング状に組み立てる。なお、非円形形状は、矩形に限られず、オーバル形状(角丸長方形)または楕円形状や、六角形状などの多角形状であってもよい。図2では、セグメントリングSRを8つのセグメントSG1〜SG8により構成している例を示しているが、1つのセグメントリングSRをいくつのセグメントSGで構成してもよい。図1に示すように、セグメントSG(セグメントリングSR)は、A方向の長さLsを有する。
以下では、特に断らない限り、「断面」とはA方向と略直交する断面Cを意味するものとする。A方向と略直交する断面方向をB方向とする。また、B方向のうち、断面Cにおける本体部2の長手方向(長軸方向)をBy、本体部2の短手方向(短軸方向)をBxとする。なお、以下では、By方向が鉛直方向に沿っており、図2の上側が鉛直上方、下側が鉛直下方となるものとする。
図1に戻り、カッタヘッド11は、図示しない駆動源によって、A方向と略平行な回転軸回りに回転駆動される。カッタヘッド11によって削られた掘削土は、図示しない貫通孔を通ってカッタヘッド11の内部のチャンバ12に進入する。チャンバ12は、カッタヘッド11、前胴部15aおよび隔壁16によって囲まれた空間(作泥土室)である。
シールドジャッキ14は、複数設けられており、胴体15の周方向に沿って配列されている。各シールドジャッキ14は、A方向に向けて、組み立てられたセグメントSGと対向するように設置されている。本体部2は、シールドジャッキ14を伸長させて既設のセグメントSGをA方向後方に押圧することにより、A方向前方への推進力(反作用力)を発生させる。
複数のシールドジャッキ14は、セグメントリングSRのうち、一方側部分UP(図2参照)に属するセグメントSG(SG1〜SG5)を押圧する第1シールドジャッキ14aと、他方側部分BP(図4参照)に属するセグメントSG(SG6〜SG8)を押圧する第2シールドジャッキ14bとを含む。第1シールドジャッキ14aおよび第2シールドジャッキ14bは、それぞれ断面Cの周方向に沿って、間隔を隔てて複数設けられている。第1シールドジャッキ14aおよび第2シールドジャッキ14bは、少なくとも、セグメントリングSRを構成する各セグメントSG1〜SG8を個別に押圧および押圧解除できるように、周方向に配列されている。
第1実施形態では、第1シールドジャッキ14aと第2シールドジャッキ14bとが、A方向の前後に1セグメント分ずれた位置に配置されている。つまり、第1シールドジャッキ14aが、第2シールドジャッキ14bよりも、長さLsに相当する分だけA方向前方に設置されている。
排土装置13は、チャンバ12に接続され、チャンバ12内の土砂を排出するように構成されている。排土装置13は、一端で開口する取込口13aが隔壁16を貫通してチャンバ12内に露出し、他端側の排出口13bが隔壁16よりも後方側の作業空間WS内に設けられている。本実施形態では、排土装置13は、螺旋状の羽根を有するスクリュの回転によって掘削土砂を搬送するスクリュコンベアにより構成されている。スクリュコンベアにより構成された排土装置13は、チャンバ12内の土砂を排出してチャンバ12内の圧力を調整する機能を有する。
(セグメント組立装置)
本実施形態のセグメント組立装置3は、掘進方向(A方向)と直交する断面Cが非円形形状のトンネルの内周面に、環状のセグメントリングSRを組み立てる装置である。セグメント組立装置3はセグメントリングSRのうち、一方側部分UP(図2参照)のセグメント(SG1〜SG5)を組み立てる第1エレクタ21と、セグメントリングSRのうち、他方側部分BP(図4参照)のセグメント(SG6〜SG8)を組み立てる第2エレクタ22とを備える。言い換えると、シールド掘進機1には、一方側部分UPのセグメントSGを組み立てる第1エレクタ21と、他方側部分BPのセグメントSGを組み立てる第2エレクタ22とが設けられている。第1エレクタ21および第2エレクタ22は、各々のセグメントSGの設置位置(P1、P2)において、本体部2の内部にそれぞれ配置されている。
セグメント組立装置3は、隔壁16の後方に配置されている。第1実施形態では、第1エレクタ21と第2エレクタ22とが、完全に分離して構成されており、互いに独立して動作可能に構成されている。
第1実施形態では、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、互いに掘進方向に対して前後にずれて配置されている。第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、後述する把持部28間の距離で、距離DだけA方向の前後にずれて配置されている。第1エレクタ21がA方向前方に配置された先行のエレクタであり、第2エレクタ22がA方向後方に配置された後行のエレクタである。そして、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、掘進方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)が、少なくとも1セグメント分互いにずれた位置となるように構成されている。なお、第1エレクタ21の設置位置P1と第2エレクタ22の設置位置P2とが互いにずれるとは、設置位置P1と設置位置P2との相対位置(P1に対するP2の位置)が、A方向にずれていることを意味する。
具体的には、第1エレクタ21は、本体部2内に設置された第1支持部31によって、本体部2内の所定位置に支持されている。第1支持部31は、本体部2内において上下(By方向)に延びるように設けられ、A方向には移動不能に固定されている。第1エレクタ21は、第1支持部31のガイド柱34からA方向後方に向くように設けられており、A方向の設置位置P1においてセグメントSGを設置するように構成されている。
第2エレクタ22は、本体部2の後方で既設のセグメントリングSRにより構築されたトンネル内部に配置された第2支持部41によって、本体部2の後胴部15b内に前向きに突入するように支持されている。第2支持部41は、本体部2とは別個に設けられた自走式の支持装置として構成され、A方向に移動可能に構成されている。第2エレクタ22は、第2支持部41のA方向前方端部に設けられたガイド柱44からA方向前方に向くように設けられている。つまり、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、互いにA方向前後に向かい合うように設けられている。第2エレクタ22は、A方向の設置位置P2においてセグメントSGを設置するように構成されている。
第1エレクタ21の設置位置P1と、第2エレクタ22の設置位置P2とは、A方向に、セグメントSGの1ピース分(長さLs)に相当する距離Dを隔てる位置に設定されている。つまり、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、互いに隣接する別々のセグメントリングSRのセグメントSGを設置することができる。距離Dは、本体部2側のシールドジャッキ14による前進(掘進)と、第2支持部41の前進とが、それぞれ制御されることによって、セグメントSGの1ピース分以上(D≧Ls)となるように維持される。
また、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、上下に離れて配置されている。第1エレクタ21は、トンネルの掘削に伴う土砂を輸送する排土装置13の上方に配置され、一方側部分UP(図2参照)である上側部分のセグメントSGを組み立てるように構成されている。第2エレクタ22は、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間で第1エレクタ21の下方から斜め上方に立ち上がる排土装置13の下方に配置され、他方側部分BP(図4参照)である下側部分のセグメントSGを組み立てるように構成されている。
第1実施形態では、1つのセグメントリングSRを組み立てるに際して、掘進方向前側の第1エレクタ21が一方側部分UPのセグメントSGの組立を行った後に前進し、掘進方向後側の第2エレクタ22が前進して、一方側部分UPが組み立てられたリング部分に対して他方側部分BPのセグメントSGの組立を行うように構成されている。具体的なセグメントSGの組立方法は、後に説明する。
次に、セグメント組立装置3の各部の構成について説明する。
〈第1エレクタ〉
図1および図2に示すように、第1エレクタ21を支持する第1支持部31は、A方向と直交する断面Cにおいて、一方側(上側)に配置されたガイド柱34を含むエレクタ移動機構32と、他方側(下側)に配置された矩形の枠状フレーム33とを含む。エレクタ移動機構32は、断面CのBy方向に延びるガイド柱34、ガイド柱34の両端をBx方向に移動可能に支持するガイド35、および、ガイド柱34をBx方向に駆動するガイド柱駆動部36(図1参照)を含む。
ガイド柱34は、矩形断面(図1における水平断面)で中空の角筒形状を有する。ガイド柱34の両端部が、Bx方向のガイド35(図2参照)によって支持されている。ガイド柱駆動部36(図2では図示省略)は、たとえばBx方向に向いて設置された油圧ジャッキなどにより構成され、ガイド柱34にBx方向の駆動力を付与してBx方向に移動させる。
また、エレクタ移動機構32は、ガイド柱34に移動可能に取り付けられるとともに第1エレクタ21を支持する昇降ベース37(図1参照)と、昇降ベース37をガイド柱34に沿ってBy方向に駆動する昇降ジャッキ38(図1参照)とを含む。昇降ベース37は、ガイド柱34よりも一回り大きい矩形形状を有し、ガイド柱34が挿入されている。昇降ベース37は、ガイド柱34に沿ってBy方向に摺動する。昇降ジャッキ38は、一端がガイド柱34の上端部近傍に固定され、他端が昇降ベース37に固定されている。第1エレクタ21は、ガイド柱駆動部36によってガイド柱34とともにBx方向に移動し、昇降ジャッキ38の伸縮によってBy方向に移動する。
枠状フレーム33は、断面Cにおいて矩形枠状に組まれた梁部材によって構成され、断面Cの他方側に配置されている。すなわち、枠状フレーム33は、エレクタ移動機構32の下側に配置され、エレクタ移動機構32を支持している。枠状フレーム33の上部は、ガイド35を構成している。断面Cにおいて、枠状フレーム33の内側には中空のスペースが設けられている。
このような構成により、第1エレクタ21の配置位置を通る断面Cでは、図2のハッチング部分で示した範囲が第1エレクタ21の作業領域SA1として構成されている。作業領域SA1は、Bx方向における本体部2の略全幅に渡るとともに、By方向における本体部2の上側約2/3に相当する範囲に設定されている。他方側(下側)の枠状フレーム33の内側の範囲が、排土装置13や配索部材の通過スペースSCとして構成されている。つまり、第1実施形態では、第1エレクタ21は、掘進方向と直交する断面Cにおいて、セグメントリングSRの一方側の所定範囲(作業領域SA1)に移動範囲が制限されている。第1実施形態では、第1エレクタ21が作業領域SA1の外部に移動できないように、移動範囲が機械的に制限されている。通過スペースSCは、第1エレクタ21の非作業領域であって、通過スペースSC内ではセグメント組立作業時の第1エレクタ21との干渉を回避することができる。
図3に示すように、第1エレクタ21は、A方向に延びる円筒状の回転機構23、回転フレーム24、径方向移動機構25、軸方向移動機構26、スライドフレーム27、および把持部28を含んで構成されている。
回転機構23は、昇降ベース37からA方向後方に延びており、内周側で回転フレーム24の軸部24aを中心軸E回りに回転可能に支持している。回転機構23は、回転モータ23aおよび図示しない伝達機構により、回転フレーム24を中心軸E回りに回転駆動する。
回転フレーム24は、円筒状の軸部24aの端部において、径方向移動機構25を介してスライドフレーム27を支持している。径方向移動機構25は、一対の伸縮ジャッキ25aと、回転フレーム24のガイド筒24b内に挿入された一対のガイドロッド25bとを含む。径方向移動機構25は、伸縮ジャッキ25aの伸縮により、スライドフレーム27(ガイドロッド25b)をガイド筒24bに沿って径方向に進退移動させる。
スライドフレーム27は、軸方向移動機構26を介して把持部28を保持している。軸方向移動機構26は、中心軸Eと平行な軸方向(A方向と一致する)に延びて把持部28を移動可能に支持する一対のスライドガイド26aと、軸方向に伸縮可能なスライドジャッキ26bとを含む。軸方向移動機構26は、スライドジャッキ26bの伸縮により、把持部28をスライドガイド26aに沿って軸方向(A方向)に進退移動させる。
把持部28は、セグメントSGと係合して把持するように構成されている。把持部28は、セグメントSGの係合穴(ねじ穴)と係合する吊り金具28aを取り付け可能となっており、吊り金具28aを介してセグメントSGを把持する。把持部28には、セグメントSGを把持部28に固定するための複数のサポートジャッキ28bが設けられている。
このような構成により、第1エレクタ21は、中心軸E回りの周方向、中心軸Eの径方向、および中心軸Eと平行な軸方向(A方向)の各々に把持部28を移動させることが可能であり、把持部28によってセグメントSGを把持して、所定の設置位置P1にセグメントSGを組み付ける。図2に示した例では、第1エレクタ21は、セグメントリングSRを構成する8つのセグメントSGのうち、一方側部分UPのセグメントSG1〜SG5の組み付けを、設置位置P1において行う。
〈第2エレクタ〉
図1および図4に示すように、第2エレクタ22を支持する第2支持部41は、A方向と直交する断面Cにおいて、他方側(下側)に配置されたガイド柱44を含むエレクタ移動機構42と、中央部に配置された矩形の内筒部43とを含む。エレクタ移動機構42は、第1エレクタ21のエレクタ移動機構32と同等の構成を有しており、図1に示すように、ガイド柱44、ガイド45(図4参照)、ガイド柱駆動部46、昇降ベース47、および、昇降ジャッキ48を含む。
図4に示すように、ガイド柱44は、内筒部43から他方側(下方)に延びるように設けられており、ガイド柱44の両端部が、Bx方向のガイド45によって支持されている。ガイド45は、矩形枠状に組まれた梁構造の上辺および下辺により構成される。ガイド柱駆動部46は、ガイド柱44にBx方向の駆動力を付与してBx方向に移動させる。
図1に示すように、昇降ベース47は、ガイド柱44に沿ってBy方向に摺動する。昇降ジャッキ48は、一端がガイド柱44の上端部近傍に固定され、他端が昇降ベース47に固定されている。第2エレクタ22は、ガイド柱駆動部46によってガイド柱44とともにBx方向に移動し、昇降ジャッキ48の伸縮によってBy方向に移動する。
内筒部43は、断面Cにおいて矩形断面で中空の角筒形状に構成され、第2支持部41を貫通するようにA方向に延びている。内筒部43は、エレクタ移動機構42を上方側から支持している。中空の内筒部43の内側は、中空のスペースとして構成されている。また、内筒部43よりも一方側(上側)の領域もスペースが確保されている。
このような構成により、第2エレクタ22の配置位置を通る断面Cでは、図4のハッチング部分で示した範囲が第2エレクタ22の作業領域SA2として構成されている。作業領域SA2は、Bx方向における本体部2の略全幅に渡るとともに、By方向における本体部2の下側約1/3に相当する範囲に設定されている。したがって、第1エレクタ21の作業領域SA1と、第2エレクタ22の作業領域SA2とを重ね合わせると、断面Cの略全面を占める範囲となる。
また、第2エレクタ22の配置位置を通る断面Cでは、中央の内筒部43の内部と、内筒部43よりも一方側(上側)の範囲とが、排土装置13や配索部材の通過スペースSC(非作業領域)として構成されている。このように、第1実施形態では、第2エレクタ22は、掘進方向と直交する断面Cにおいて、セグメントリングSRの他方側の所定範囲(SA2)に移動範囲が制限されている。第1実施形態では、第2エレクタ22が作業領域SA2の外部に移動できないように、移動範囲が機械的に制限されている。
第2エレクタ22の構成は、第1エレクタ21と同様である。図示は省略するが、第2エレクタ22は、第1エレクタ21(図3参照)と同様に、回転機構23、回転フレーム24、径方向移動機構25、軸方向移動機構26、スライドフレーム27、および把持部28を含んで構成されている。そのため、共通の構造については説明を省略する。これにより、第2エレクタ22は、中心軸E回りの周方向、中心軸Eの径方向、および中心軸Eと平行な軸方向(A方向)の各々に把持部28を移動させることが可能であり、把持部28によってセグメントSGを把持して、所定の設置位置P2にセグメントSGを組み付ける。図4に示した例では、第2エレクタ22は、セグメントリングSRを構成する8つのセグメントSGのうち、他方側部分BPのセグメントSG6〜SG8の組み付けを、設置位置P2において行う。
〈支持部移動機構〉
図1に示すように、第2支持部41において第2エレクタ22のA方向後方側には、第2支持部41をA方向に自走させるための支持部移動機構49が設けられている。図1の構成例では、支持部移動機構49は、A方向前側から順に、第1フレーム51、第2フレーム52および第3フレーム53の独立した3つのフレームを含んでいる。3つのフレームは、それぞれ共通して、フレームを固定または固定解除することが可能なBy方向両側に延びる脚部54を有する。
脚部54の構造は、各フレームで略共通している。図5に示すように、脚部54は、By方向両側に張り出した矩形枠状を有する。脚部54の端部には、押付フート55が押付ジャッキ56を介してBy方向に進退可能に設けられている。押付フート55は、セグメントリングSRの内周面の断面形状に対応させた表面形状を有し、セグメントリングSRの内周面と接触する。各フレームは、押付ジャッキ56を伸ばして押付フート55をセグメントリングSRに向けて押圧することにより、A方向に移動不能に固定される。各フレームは、押付ジャッキ56の縮めることにより、押付フート55の押圧を解除してA方向に移動可能となる(固定が解除される)。
図1に示すように、前側の第1フレーム51は、内筒部43と固定的に接続されて内筒部43を支持しており、内筒部43と一体的に移動するように構成されている。また、中央の第2フレーム52および後側の第3フレーム53の各々は、内筒部43の外周に設けられてA方向に相対移動可能な外筒部57(図5参照)を一体的に備える。
外筒部57により、第2フレーム52および第3フレーム53は、それぞれ、第1フレーム51(内筒部43)に対して、A方向に相対移動することが可能である。第1フレーム51と第2フレーム52との間、および、第2フレーム52と第3フレーム53との間は、それぞれ、A方向に伸縮可能な摺動ジャッキ58aおよび58bを介して連結されている。この構成により、3つのフレームのうちいずれか2つを固定し、他の1つを移動可能とした状態で、移動可能なフレームに接続された摺動ジャッキ58aまたは58bを伸縮させることによって、個々のフレームをA方向に移動させることができる。そして、3つのフレームを1つずつ交替でA方向に前進させることによって、第2支持部41(および第2エレクタ22)の全体をA方向に前進させることができる。
断面Cにおける各フレームの構造は、外筒部57の有無を除いて概ね共通となっているため、第2エレクタ22よりも後方側では、第2支持部41は概ね図5に示す断面構造を有していると考えてよい。各フレームの配置位置を通る断面Cでは、中央の内筒部43の内部と、内筒部43からBy方向の両側に張り出す矩形枠状の脚部54の内側の各範囲、さらに、押付フート55の内側の範囲のそれぞれが、中空のスペースとなっている。
〈各部のレイアウト〉
上記のように構成されたセグメント組立装置3では、図6に示すように、第1エレクタ21の下側(他方側)の通過スペースSCと、第2エレクタ22の上側(一方側)の通過スペースSCとが設けられ、かつ、第1エレクタ21(第1エレクタ21の把持部28)と第2エレクタ22(第2エレクタ22の把持部28)との間にA方向に距離D分のスペースが存在する。そのため、第1エレクタ21の下側の通過スペースSCから第2エレクタ22の上側の通過スペースSCに至る、A方向後側へ斜め上方に延びる通過スペースSCが確保されている。
そのため、第1実施形態では、排土装置13が掘進方向に斜めに延びて、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通過するように設けられている。図6の構成例では、排土装置13は、第1エレクタ21の下側の通過スペースSC、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通り、第2エレクタ22の上側で内筒部43の内部により構成される通過スペースSCを通って、セグメント組立装置3の前方側から後方側まで延びるように設けられている。また、図示しないが、配線、配管などの各種の配索部材も、排土装置13と同様の経路によって、セグメント組立装置3の前方側から後方側へ通過することが可能である。
さらに、図6の構成例では、第2支持部41の通過スペースSCのうち、内筒部43の上側に張り出す矩形枠状の脚部54の内側、または上側の押付フート55の内側の通過スペースSCと、第2エレクタ22の配置位置における内筒部43の上側の通過スペースSCとを通って、第1エレクタ21に至るA方向の経路が構成される。この上側の経路には、たとえば図示しないセグメント搬送装置が設けられ、第1エレクタ21へのセグメントSGの供給経路R1として構成される。
また、図6の構成例では、第2支持部41の通過スペースSCのうち、内筒部43の下側に張り出す矩形枠状の脚部54の内側、または下側の押付フート55の内側の通過スペースSCを通って、第2エレクタ22に至るA方向の経路が構成される。この下側の経路には、図示しないセグメント搬送装置が設けられ、第2エレクタ22へのセグメントSGの供給経路R2として構成される。
セグメントSGの供給経路R1と供給経路R2とは、セグメント組立装置3の後端部近傍までは、共通の搬送経路となっていてよく、セグメント組立装置3の後端部近傍で上側の供給経路R1と下側の供給経路R2とに分岐することができる。
(セグメント組立方法)
次に、セグメント組立装置3を用いたセグメント組立方法について説明する。第1実施形態によるセグメント組立方法は、主として、第1エレクタ21により、一のセグメントリングSRのうち一方側部分UPのセグメントSGの組立を行う工程(一次組立工程)と、第1エレクタ21と、第1エレクタ21に対してトンネルのA方向後方にずれた位置に配置した第2エレクタ22とを、A方向前方に移動させる工程(前進工程)と、第1エレクタ21および第2エレクタ22の移動後、第2エレクタ22により、一のセグメントリングSRのうち他方側部分BPのセグメントSGの組立を行う工程(二次組立工程)と、を備える。このように、第1実施形態によるセグメント組立方法では、第1エレクタ21による一次組立工程と第2エレクタ22による二次組立工程との間で前進工程を実施することによって、第1エレクタ21と第2エレクタ22との距離D(把持部28間の距離)を維持しつつセグメントリングSRの組み立てを行う。
図7〜図12は、セグメント組立方法の各段階を示したものである。ここでは、セグメントリングSRの組み立てを新たに始めるタイミングから説明を開始する。
まず、ステップS1において、図7に示すように、第1エレクタ21による一次組立工程が行われる。第1エレクタ21は、セグメントリングSRに対する一方側部分UPのセグメントSGの組み立てを行う。つまり、図2の上側のセグメントSG1〜SG5の5つのセグメントを組み立てる。一次組立工程の結果、セグメントリングSRの上側のリング部分(一方側部分UP)が組み立てられる一方、下側の他方側部分BPが組み立て前の状態となる。
ステップS2において、図8〜図11に示すように、前進工程が行われる。まず、図8に示すように、シールド掘進機1の掘進により、第1エレクタ21がA方向前方に移動する。ステップS1によって一方側部分UPが組み立て済みとなっているため、第1シールドジャッキ14aが押圧する一方側部分UPのセグメントSGの端面位置と、第2シールドジャッキ14bが押圧する他方側部分BPのセグメントSGの端面位置とは、1セグメント分ずれた位置となる。言い換えると、第1シールドジャッキ14aは現在組み立て中のN番目のセグメントリングSRの一方側部分UPを押圧し、第2シールドジャッキ14bは既設の(N−1)番目のセグメントリングSRの他方側部分BPを押圧する。第1実施形態では、第1シールドジャッキ14aと第2シールドジャッキ14bとが1セグメント分ずれて配置されることにより、同じストローク量で掘進(前進)が可能である。1リング分の掘進に伴って、第1エレクタ21が1リング分(1セグメント分)前進する。このときの第1エレクタ21と第2エレクタ22とのA方向の位置ずれは距離Dよりも大きくなる。また、排土装置13は、掘進に伴って、第2支持部41の内筒部43内を前方に移動する。
次に、セグメント組立装置3が前進することにより、第2エレクタ22が1セグメント分前進する。まず、図9に示すように、第2フレーム52の固定が解除(第1フレーム51および第3フレーム53は固定)され、前側の摺動ジャッキ58aが縮む(後側の摺動ジャッキ58bが延びる)ことにより、第2フレーム52が1セグメント分前進する。
次に、図10に示すように、第3フレーム53の固定が解除(第1フレーム51および第2フレーム52は固定)され、後側の摺動ジャッキ58bが縮むことにより、第3フレーム53が1セグメント分前進する。
そして、図11に示すように、第1フレーム51の固定が解除(第2フレーム52および第3フレーム53は固定)され、前側の摺動ジャッキ58aが延びることにより、第1フレーム51が1セグメント分前進する。これに伴い、第2エレクタ22が1セグメント分前進する。その結果、第1エレクタ21と第2エレクタ22とのA方向の位置ずれは距離Dとなる。また、内筒部43は、排土装置13が内部に配置されたまま前進するため、内筒部43と排土装置13とのA方向の相対位置が元に戻る。
ステップS3において、図12に示すように、第2エレクタ22による二次組立工程が行われる。第2エレクタ22は、N番目のセグメントリングSRに対する他方側部分BPのセグメントSGの組み立てを行う。つまり、図4の下側のセグメントSG6〜SG8の3つのセグメントを組み立てる。二次組立工程の結果、現在組み立て中のN番目のセグメントリングSRの組み立てが完了する。
以上のステップS1〜S3を繰り返すことにより、トンネルが構築される。
ここで、図12に示したステップS3の時点で、第1エレクタ21は、次の(N+1)番目のセグメントリングSRの位置に配置される。そのため、第1実施形態では、第2エレクタ22により、一のセグメントリングSRのうち他方側部分BPのセグメントSGの組立を行う工程(二次組立工程)と、第1エレクタ21により、一のセグメントリングSRに隣接する他のセグメントリングSRに対する一方側部分UPのセグメントSGの組立を行う工程(一次組立工程)とが、並行して行われる。すなわち、第2エレクタ22によるN番目のセグメントリングSRの二次組立工程と、第1エレクタ21による(N+1)番目のセグメントリングSRの一次組立工程とが、並行して行われる。この結果、掘進(ステップS2)とセグメントリングSRの組み立て(ステップS1およびステップS3の並行実施)とが交互に実施されることとなり、実質的に掘進とセグメントリング組立の2ステップでトンネル構築が行われる。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、セグメントリングSRのうち、一方側部分UPのセグメントSGを組み立てる第1エレクタ21と、セグメントリングSRのうち、他方側部分BPのセグメントSGを組み立てる第2エレクタ22とを設け、第1エレクタ21と第2エレクタ22とを、互いにA方向に対して前後にずれて配置し、A方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)が少なくとも1セグメント分(長さLs分)互いにずれた位置となるように構成する。これにより、第1エレクタ21が設置された断面Cにおける他方側(下側)と、第2エレクタ22が設置された断面Cにおける一方側(上側)とに、それぞれのエレクタの非作業領域を設けることができる。そして、第1エレクタ21と第2エレクタ22とを、A方向に対して前後にずれて配置し、第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)を少なくとも1セグメント分互いにずれた位置とすることによって、A方向における第1エレクタ21の作業領域(設置位置P1)と第2エレクタ22の作業領域(設置位置P2)との間にも、エレクタの非作業領域を設けて、第1エレクタ21から第2エレクタ22に渡って連続したスペースを確保することができる。つまり、第1エレクタ21の下側から、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通って、第2エレクタ22の上側へと延びる通過スペースSCを確保し、スクリュコンベアやベルトコンベアなどの排土装置13、配線・配管などの配索設備(図示せず)を通過させることが可能となる。以上によって、第1実施形態では、トンネル断面Cの縦の長さと横の長さとが大きく異なる場合でも、エレクタが設置された断面C内で排土装置13などを通過させるためのスペースを確保することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、1つのセグメントリングSRを組み立てるに際して、A方向前側の第1エレクタ21が一方側部分UPのセグメントSGの組立を行った後に前進し、A方向後側の第2エレクタ22が前進して、一方側部分UPが組み立てられたリング部分に対して他方側部分BPのセグメントSGの組立を行うように、セグメント組立装置3が構成される。これにより、先行する第1エレクタ21がセグメントリングSRの一方側部分UPを組み立てた後で、後行の第2エレクタ22が前進して残りの他方側部分BPを組み立てることができる。そのため、A方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22との位置が、少なくとも1セグメント分(距離D)ずれた状態を確実に維持しながら、容易にセグメントリングSRを組み立てることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、排土装置13の上方に第1エレクタ21を配置して一方側部分UPである上側部分のセグメントSGを組み立てるように構成し、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間で第1エレクタ21の下方から斜め上方に立ち上がる排土装置13の下方に第2エレクタ22を配置して、他方側部分BPである下側部分のセグメントSGを組み立てるように構成する。これにより、第1エレクタ21と第2エレクタ22とを、A方向に前後にずらしつつ上下に配置することによって、第1エレクタ21の下側および第2エレクタ22の上側を通過する斜めに延びる大きな通過スペースSCを確保することができる。これにより、掘削土砂を輸送するため特にスペースが必要になる排土装置13を、各エレクタと干渉することなく容易に通過させることが可能となる。
また、第1実施形態では、上記のように、断面Cにおいて、第1エレクタ21の移動範囲を、セグメントリングSRの一方側の所定範囲(作業領域SA1)に制限し、第2エレクタ22の移動範囲を、セグメントリングSRの他方側の所定範囲(作業領域SA2)に制限する。これにより、第1エレクタ21の他方側(下側)および第2エレクタ22の一方側(上側)に、それぞれのエレクタとの干渉を確実に回避可能なスペースを確保することができる。そのため、第1エレクタ21の他方側の通過スペースSCから、第1エレクタ21および第2エレクタ22の間を通って、第2エレクタ22の一方側の通過スペースSCに至る経路で、排土装置13などを確実に通すことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、セグメントリングSRのうち、一方側部分UPに属するセグメントSGを押圧する第1シールドジャッキ14aと、他方側部分BPに属するセグメントSGを押圧する第2シールドジャッキ14bとを設け、第1シールドジャッキ14aと第2シールドジャッキ14bとを、A方向の前後に少なくとも1セグメント分ずれた位置に配置する。これにより、別々のセグメントリングSR(N、N−1)を構成する各セグメントSGを、確実に押圧することができる。これらのシールドジャッキ14によって押圧力を加え続けることができるので、特別の支持構造などを設けることなく、リング状に完成していないリング部分の状態(第2エレクタ22による組み立てが実施されていない状態)のセグメントSGを保持しながら掘進することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、一次組立工程と、前進工程と、二次組立工程と、を備えるエレクタ組立方法を実施することによって、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通って、第2エレクタ22の一方側へと延びる通過スペースSCを確保することができるので、スクリュコンベアやベルトコンベアなどの排土装置13などを通過させることが可能となる。そして、先行する第1エレクタ21がセグメントリングSRの一方側部分UPを組み立てた後で、後行の第2エレクタ22が残りの他方側部分BPを組み立てることによって、掘進方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22との位置が、少なくとも1セグメント分ずれた状態を確実に維持しながら、容易にセグメントリングSRを組み立てることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2エレクタ22による二次組立工程と、第1エレクタ21による一次組立工程とを、並行して行う。これにより、複数のセグメントリングSRに跨がったセグメントSGの組立を並行して行うことができるので、セグメントリングSRの組み立て作業を効率化することができる。また、第1エレクタ21および第2エレクタ22によるセグメント組立と、第1エレクタ21および第2エレクタ22の前進(トンネルの掘進)という大別して2種類の動作を繰り返す工法となるので、複数のセグメントリングSRに跨がってセグメントSGの組み立てを行う場合でも、トンネル施工作業が複雑化するのを抑制することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、セグメント組立装置3のうち、第1エレクタ21を第1支持部31によって本体部2内に設置し、第2エレクタ22を本体部2とは別個に設けた自走式の第2支持部41に設置した例を示したが、この第2実施形態では、第1エレクタ21および第2エレクタ22の両方を、本体部102内に固定的に設置した例について説明する。
図13に示すように、第2実施形態のシールド掘進機101では、セグメント組立装置103がシールド掘進機101の一部として本体部102の内部に組み付けられている。したがって、第1エレクタ21および第2エレクタ22は、共に、本体部102の掘進に伴って前進し、本体部102と一体的にA方向に移動する。
具体的には、第1エレクタ21は、本体部102内に設置された第1支持部131によって、本体部102内の所定位置に支持されている。第1支持部131の構成は、上記第1実施形態の第1支持部31と同様である。第1エレクタ21は、エレクタ移動機構32によって、ガイド柱34とともにBx方向に移動し、ガイド柱34に沿ってBy方向に移動する。また、第1エレクタ21の下側に設けられた枠状フレーム33の内側の範囲が、排土装置13や配索部材の通過スペースSCとして構成されている。
第2エレクタ22は、上記第1実施形態とは異なり、本体部102内に設置された中空の第2支持部141によって、本体部102内の所定位置に支持されている。具体的には、第2支持部141は、上記第1実施形態の内筒部43と類似の筒状構造を有し、第1支持部131から掘進方向後方側へ延びている。中空の第2支持部141の前側端部は、第1支持部131の枠状フレーム33に連結されており、第2支持部141の内部と、枠状フレーム33の内側の通過スペースSCとが連通している。つまり、枠状フレーム33の内側の通過スペースSCが、第2支持部141の内部の通過スペースSCの入口として構成されている。
第2支持部141は、第1エレクタ21の下側の通過スペースSCからA方向後側へ斜め上方に延びた後、A方向に沿って後方に延びている。そして、第2支持部141の後端部近傍からガイド柱44を含むエレクタ移動機構42を介して、第2エレクタ22が吊り下げられるように支持されている。第2エレクタ22およびエレクタ移動機構42の構成は、上記第1実施形態と同様である。第2エレクタ22は、エレクタ移動機構42によって、ガイド柱44とともにBx方向に移動し、ガイド柱44に沿ってBy方向に移動する。
このような構成により、第1エレクタ21は、断面Cの上側(一方側)に配置され、一方側部分UPのセグメントSGを組み立てるように構成され、第2エレクタ22は、断面Cの下側(他方側)に配置され、他方側部分BPのセグメントSGを組み立てるように構成されている。
そして、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、互いに掘進方向に前後にずれて配置されているとともに、A方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)が、少なくとも1セグメント分互いにずれた位置となるように構成されている。
排土装置13は、掘進方向に斜めに延びて、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通過するように設けられている。すなわち、排土装置13は、第1エレクタ21の下側の通過スペースSCから第2支持部141の内部により構成される通過スペースSCに入って、第2支持部141に沿って第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通り、第2エレクタ22の上側でセグメント組立装置103の後方側まで延びるように設けられている。
(第2実施形態の効果)
第2施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、第1エレクタ21と第2エレクタ22とを、互いに掘進方向に対して前後にずれて配置し、掘進方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)が少なくとも1セグメント分互いにずれた位置となるように構成することによって、トンネル断面Cの縦の長さと横の長さとが大きく異なる場合でも、エレクタが設置された断面C内で排土装置13などを通過させるための通過スペースSCを確保することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、第1エレクタ21および第2エレクタ22の両方をシールド掘進機101の本体部102の内部に設け、本体部102と一体的にA方向に移動するように構成している。これにより、セグメント組立装置103の少なくとも第2エレクタ22を本体部102とは別個に独立して自走可能に構成する必要がないため、シールド掘進機101の全体の装置構成や移動制御を簡素化することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。上記第2実施形態では、第1エレクタ21および第2エレクタ22の両方を、本体部2内に固定的に設置した例を示したが、この第3実施形態では、第1エレクタ21および第2エレクタ22の両方を、本体部202とは別個に設け、自走可能に構成した例について説明する。
図14に示すように、第3実施形態のシールド掘進機201では、セグメント組立装置203がシールド掘進機201とは別個の自走式装置として構成されている。すなわち、第1エレクタ21および第2エレクタ22は、共に、本体部202とは独立して、セグメント組立装置203の前進によってA方向に移動する。
第3実施形態のセグメント組立装置203は、第1エレクタ21および第2エレクタ22の両方を支持するエレクタ支持部230と、エレクタ支持部230をA方向に自走させるための支持部移動機構240とを備える。
エレクタ支持部230は、内筒部231を備えている。図14の構成例では、内筒部231が、A方向に延びる直線状の角筒形状を有する。内筒部231のA方向前方端部に第1エレクタ21が設けられ、内筒部231の第1エレクタ21よりも後方側の位置に、第2エレクタ22が設けられている。
第1エレクタ21は、エレクタ移動機構32によって、ガイド柱34とともにBx方向に移動し、ガイド柱34に沿ってBy方向に移動する。第1エレクタ21の下側が、排土装置13や配索部材の通過スペースSCとして構成されている。
第2エレクタ22は、内筒部231の下面側から下方に延びるガイド柱44を介して、吊り下げられるように支持されている。第2エレクタ22は、エレクタ移動機構42によって、ガイド柱44とともにBx方向に移動し、ガイド柱44に沿ってBy方向に移動する。第2エレクタ22の上側の内筒部231の内部、および内筒部231の上方が、排土装置13や配索部材の通過スペースSCとして構成されている。
支持部移動機構240の構成は、上記第1実施形態の支持部移動機構49と同様であり、第1フレーム51、第2フレーム52および第3フレーム53を含んでいる。そして、3つのフレームを1つずつ交替でA方向に前進させることによって、セグメント組立装置203(第1エレクタ21および第2エレクタ22)の全体をA方向に前進させることができる。
このような構成により、第1エレクタ21は、断面Cの上側(一方側)に配置され、一方側部分UPのセグメントSGを組み立てるように構成され、第2エレクタ22は、断面Cの下側(他方側)に配置され、他方側部分BPのセグメントSGを組み立てるように構成されている。
そして、第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、互いに掘進方向に対して前後にずれて配置されているとともに、A方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)が、少なくとも1セグメント分互いにずれた位置となるように構成されている。
排土装置13は、掘進方向に斜めに延びて、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間を通過するように設けられている。図14の構成例では、排土装置13は、第1エレクタ21の下側の通過スペースSCから斜め上方に延びて、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間で、内筒部231の下面側に設けられた開口を介して内筒部231の内部の通過スペースSC内に進入するように設けられている。そして、排土装置13は、内筒部231の内部の通過スペースSCからA方向後方に延びて、第2エレクタ22の上側でセグメント組立装置3の前方側から後方側まで延びるように設けられている。シールド掘進機201の掘進時には、シールドジャッキ14による本体部202の前進と概ね同期するように、セグメント組立装置203の内筒部231(すなわち、第1フレーム51)を前進させることにより、排土装置13と内筒部231との相対位置を維持しながら前進することができる。
(第3実施形態の効果)
第3施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、第1エレクタ21と第2エレクタ22とを、互いに掘進方向に対して前後にずれて配置し、掘進方向における第1エレクタ21と第2エレクタ22とのそれぞれが組み立てるセグメントSGの設置位置(P1、P2)が少なくとも1セグメント分互いにずれた位置となるように構成することによって、トンネル断面Cの縦の長さと横の長さとが大きく異なる場合でも、エレクタが設置された断面C内で排土装置13などを通過させるためのスペース(通過スペースSC)を確保することができる。
また、第3実施形態では、上記のように、第1エレクタ21および第2エレクタ22の両方をシールド掘進機201の本体部202とは独立した自走式のセグメント組立装置203に設け、本体部202と別個にA方向に移動するように構成している。このように、セグメント組立装置203をシールド掘進機201とは別個の独立した装置として構成することも可能である。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、泥土圧式シールド掘進機に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明を、泥水式シールド掘進機に適用してもよい。泥水式シールド掘進機の場合には、送泥管を介してチャンバ12内に泥水を送り込んで掘削土砂をスラリー化し、スラリー化した掘削土砂を、排泥管を介して排出する。上記第1〜第3実施形態の排土装置13として、泥水式シールド掘進機の送泥管および排泥管を設けてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、特許請求の範囲の「トンネル掘削機」の一例として、シールド掘進機に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、セグメント組立装置を用いてセグメントリングを組み立てる方式で掘進を進めるトンネル掘進機であれば、シールド掘進機以外の他のトンネル掘削機に適用してもよい。たとえば、岩盤掘削などに用いられる開放型のトンネルボーリングマシンに本発明を適用してもよい。この場合、トンネル掘削機は、土圧(地下水圧)に対抗するためのチャンバを備えておらず、掘削土砂を、直接、ベルトコンベアからなる排土装置13によって輸送する。
また、上記第1〜第3実施形態(図1参照)では、第1シールドジャッキ14aと第2シールドジャッキ14bとが、A方向の前後に1セグメント分ずれた位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。図15に示すように、第1シールドジャッキ14aと第2シールドジャッキ14bとが、伸縮長さがA方向に1セグメント分(長さLs)異なっていてもよい。図15では、第1シールドジャッキ14aと第2シールドジャッキ14bとがA方向の同じ位置に設けられているものの、第2シールドジャッキ14bの伸縮長さが、第1シールドジャッキ14aの伸縮長さよりも1セグメント分(長さLs分)、大きくなっている。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1エレクタ21の移動範囲(作業領域SA1、図2参照)および第2エレクタ22の移動範囲(作業領域SA2、図4参照)を、機械的に制限した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば図16に示すように、第1エレクタ21および第2エレクタ22を、断面C内の全域に移動可能に構成しておき、第1エレクタ21および第2エレクタ22の移動範囲を制御的に制限してもよい。図16(A)では、第1エレクタ21が配置された断面Cにおいて、第1エレクタ21が環状軌道331に沿って断面Cの略全域に移動することが可能となっている。同様に、図16(B)では、第2エレクタ22が配置された断面Cにおいて、第2エレクタ22が環状軌道341に沿って断面Cの略全域に移動することが可能となっている。図16の例では、第1エレクタ21および第2エレクタ22がそれぞれ作業領域SA1およびSA2の外部には移動しないように制限する制御を行うことによって、各エレクタの移動範囲が制限される。この構成例では、作業領域SA1(SA2)の外部で、かつ環状軌道331(341)の内側の領域が、通過スペースSCとして構成される。
また、上記第1および第3実施形態において、セグメント組立装置3(203)を移動するための支持部移動機構49(240)を3つのフレームにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。支持部移動機構の構造は、上記実施形態(図1および図14参照)に示した構造例に限られない。たとえば、既設のセグメントリングSR内に敷設したA方向のレール上を走行するように、支持部移動機構を構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1エレクタ21による設置位置P1と第2エレクタ22による設置位置P2とを、1セグメント分(長さLs)ずらした例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえばセグメントSGのA方向の長さLsが小さい場合などには、設置位置P1と設置位置P2とを、A方向に2セグメント分以上ずらしてもよい。第1エレクタ21と第2エレクタ22とは、両者の間に十分な通過スペースSCが確保できるようにA方向に対して前後にずれて配置されればよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1エレクタ21を断面Cの上側に配置し、第2エレクタ22を断面Cの下側に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。第1エレクタ21を下側に配置し、第2エレクタ22を上側に配置してもよい。断面Cが横長の場合には、第1エレクタ21を横方向の一方側に配置し、第2エレクタ22を他方側に配置すればよい。つまり、第1エレクタ21が排土装置13に対して横方向(断面Cの長手方向)の一方側に配置され、セグメントリングSRの一方側部分に属するセグメントSGを組み立てるように構成される。第2エレクタ22は、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間で第1エレクタ21の他方側から一方側へ向けて斜めに延びる排土装置13の他方側に配置され、セグメントリングSRの他方側部分に属するセグメントSGを組み立てるように構成される。排土装置13は、第1エレクタ21と第2エレクタ22との間の隙間を斜めに通過するように設けられる。すなわち、A方向前方から見て、第1エレクタ21が断面Cの左側、第2エレクタ22が右側に配置される場合、排土装置13は、断面Cの右側から左側へ、かつA方向後方へ向けて斜めに延びるように設ければよい。第1エレクタ21が断面Cの右側、第2エレクタ22が左側に配置される場合、排土装置13は、断面Cの左側から右側へ、かつA方向後方へ向けて斜めに延びるように設ければよい。