本発明のカーボンナノチューブ複合材の製造方法は、カーボンナノチューブアレイシートに超音波振動を加えて、カーボンナノチューブアレイシートを固定シートに埋め込むものである。
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。本発明の第1実施形態は、カーボンナノチューブ複合材1(以下、CNT複合材1とする。図4参照)の製造方法であって、成長基板2上に垂直配向カーボンナノチューブ3(Vertically Aligned carbon nanotubes;以下、VACNTs3とする。)を成長させる工程と、成長基板2からVACNTs3を剥離し、カーボンナノチューブアレイシート4(以下、CNTアレイシート4とする。)とする工程と、CNTアレイシート4に超音波振動を加えて、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程とを含んでいる。
(1−1)成長基板2上にVACNTs3を成長させる工程
図1A〜図1Cに示すように、第1実施形態では、まず、成長基板2上にVACNTs3を成長させる。
詳しくは、図1Aに示すように、成長基板2を準備する。成長基板2は、特に限定されず、例えば、化学気相成長法(CVD法)に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。成長基板2としては、例えば、シリコン基板や、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板7などが挙げられ、好ましくは、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板7が挙げられる。なお、図1A〜図2Cでは、成長基板2が、二酸化ケイ素膜6が積層されるステンレス基板7である場合を示す。
次いで、図1Aに示すように、二酸化ケイ素膜6(成長基板2)上に触媒層8を形成する。二酸化ケイ素膜6上に触媒層8を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法により、二酸化ケイ素膜6上に成膜する。
金属触媒としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。成膜方法としては、例えば、真空蒸着およびスパッタリングが挙げられ、好ましくは、真空蒸着が挙げられる。
次いで、図1Bに示すように、触媒層8が配置される成長基板2を、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層8が、凝集して、複数の粒状体8Aとなる。
次いで、図1Cに示すように、成長基板2に、例えば、1分以上30分以下、原料ガスを供給する。
原料ガスは、炭素数1〜4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1〜4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
これによって、複数の粒状体8Aのそれぞれを起点として、複数のカーボンナノチューブ9が成長する。図1Cでは、便宜上、1つの粒状体8Aから、1つのカーボンナノチューブ9が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体8Aから、複数のカーボンナノチューブ9が成長してもよい。なお、以下において、カーボンナノチューブ9をCNT9とする。
CNT9は、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。複数のCNT9は、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれか1種のみを含んでいてもよく、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブの両方を含んでいてもよい。
CNT9の平均外径は、例えば、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、例えば、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。CNT9の平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、1μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、例えば、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。なお、CNT9の層数、平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析や、電子顕微鏡観察などの公知の方法により測定される。
複数のCNT9は、成長基板2上において、互いに略平行となるように、成長基板2の厚み方向に延びており、成長基板2に対して直交するように配向(垂直に配向)されている。以上によって、成長基板2上に、複数のCNT9からなるVACNTs3が成長する。
また、VACNTs3において、複数のCNT9は成長基板2の面方向に互いに密集している(図2C参照)。VACNTs3における複数のCNT9の本数密度は、単位面積当たり、例えば、109本/cm2以上であることが好ましく、1010本/cm2以上であることがより好ましい。なお、複数のCNT9の本数密度は、例えば、単位面積当たり質量(目付量:単位 mg/cm2)と、カーボンナノチューブの長さ(SEM(日本電子社製)または非接触膜厚計(キーエンス社製)により測定)とから算出される。
(1−2)成長基板2からVACNTs3を剥離する工程
次いで、図2A〜図2Cに示すように、成長基板2からVACNTs3を剥離して、CNTアレイシート4とする。
詳しくは、図2Aおよび図2Bに示すように、切断刃10(例えば、カッター刃、剃刀など)を成長基板2の上面に沿ってスライド移動させて、複数のCNT9の基端部(成長基板2側端部)を一括して切断する。これによって、VACNTs3が成長基板2から分離される。
次いで、分離されたVACNTs3を成長基板2から引き上げる。以上によって、VACNTs3が、成長基板2から剥離されて、カーボンナノチューブアレイシート(以下、CNTアレイシート4)とされる。
図2Cに示すように、CNTアレイシート4は、成長基板2から剥離されており、複数のCNT9からシート形状に形成される。詳しくは、CNTアレイシート4において、複数のCNT9は、CNTアレイシート4の厚み方向に配向されており、面方向(縦方向および横方向)に互いに連続してシート形状となるように配列されている。
これによって、CNTアレイシート4は、成長基板2から剥離された状態で、複数のCNT9が面方向に互いに接触するように形状を保持している。また、CNTアレイシート4は、可撓性を有している。なお、複数のCNT9のうち、互いに隣接するCNT9間には、ファンデルワールス力が作用している。
CNTアレイシート4における複数のCNT9の本数密度の範囲は、上記のVACNTs3における複数のCNT9の本数密度の範囲と同一程度である。
CNTアレイシート4のG/D比は、例えば、1以上10以下であることが好ましい。G/D比とは、カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて、1350cm−1付近に観測されるDバンドと呼ばれるピークのスペクトル強度に対する、1590cm−1付近に観測されるGバンドと呼ばれるピークのスペクトル強度の比である。なお、Dバンドのスペクトルは、カーボンナノチューブの欠陥に由来し、Gバンドのスペクトルは、炭素の六員環の面内振動に由来する。
CNTアレイシート4は、そのままCNT複合材1に利用できるが、種々の特性(例えば、熱伝導率や電気伝導性など)を向上させる観点から好ましくは、高密度化処理される。つまり、第1実施形態は、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程の前において、CNTアレイシート4を高密度化処理する工程を含む。
高密度化処理としては、例えば、CNTアレイシート4を加熱処理する方法、CNTアレイシート4に揮発性の液体(例えば、水、有機溶媒など)を供給して気化させる方法、CNTアレイシート4を機械的に圧縮する方法などが挙げられる。
高密度化処理は、少なくとも1回実施され、複数回繰り返すこともできる。同一の高密度化処理を複数回繰り返してもよく、複数種類の高密度化処理を組み合わせて実施してもよい。
高密度化処理のなかでは、好ましくは、CNTアレイシート4を加熱処理する方法が挙げられる。具体的には、CNTアレイシート4を、不活性ガス雰囲気において下記条件で加熱する。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどが挙げられ、好ましくは、アルゴンが挙げられる。
高密度化のための加熱温度は、例えば、2600℃以上であることが好ましく、2700℃以上であることがより好ましく、2800℃以上であることがとりわけ好ましい。加熱温度が上記下限以上であれば、CNTアレイシート4において複数のCNT9を十分に密集させることができる。また、加熱温度としては、複数のCNT9の昇華温度未満であればよく、3000℃以下であることが好ましい。加熱温度が上記上限以下であれば、複数のCNT9が昇華することを抑制できる。
高密度化のための加熱時間は、例えば、10分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、例えば、5時間以下であることが好ましく、3時間以下であることがより好ましい。
また、CNTアレイシート4は、好ましくは、無負荷の状態(CNTアレイシート4に荷重がかけられていない状態、つまり、大気圧下)で加熱処理される。
以上によって、CNTアレイシート4が、高密度化のために加熱処理される。CNTアレイシート4が加熱処理されると、CNTアレイシート4において、CNT9を構成するグラフェンの結晶性が向上し、複数のCNT9の配向性(直線性)が向上する。すると、CNTアレイシート4において、互いに隣接するCNT9は、それらの間に作用するファンデルワールス力などにより、配向性(直線性)を維持したまま、束状となるように密集する。
これによって、CNTアレイシート4の全体が均一に密集され、CNTアレイシート4が高密度化する。その後、CNTアレイシート4を必要により冷却(例えば、自然冷却)する。
加熱処理後のCNTアレイシート4の厚みは、複数のCNT9が配向性(直線性)を維持したまま密集するため、加熱処理前のCNTアレイシート4の厚み(CNT9の配向方向長さ)と略同じである。
加熱処理後のCNTアレイシート4の体積は、加熱処理前のCNTアレイシート4の体積に対して、例えば、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、例えば、70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。また、加熱処理後のCNTアレイシート4のG/D比は、例えば、10を超過することが好ましく、例えば、20以下であることがより好ましい。
(1−3)CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程
次いで、図3A〜図3Cに示すように、CNTアレイシート4に超音波振動を加えて、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む。
CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込むには、図3Aに示すように、固定シート5を準備する。固定シート5は、CNTアレイシート4を固定するためのシートである。第1実施形態では、固定シート5は、平板形状を有し、具体的には、所定の厚みを有し、厚み方向と直交する面方向(縦方向および横方向)に延び、平坦な表面5Aおよび平坦な裏面5Bを有している。
固定シート5の厚みは、特に制限されず、例えば、10μm以上50μm以下であることが好ましい。固定シート5の厚みは、CNTアレイシート4の厚みを100%としたときに、例えば、10%以上50%以下であることが好ましい。
固定シート5の材料は、固定シート5がCNTアレイシート4の少なくとも一部を埋め込み、固定することができれば特に制限されず、CNT複合材1の用途に応じて適宜選択される。固定シート5の材料としては、例えば、高分子材料などが挙げられる。第1実施形態では、固定シート5は、高分子材料から形成される高分子層からなる。
高分子材料としては、例えば、プラスチック(硬質樹脂)、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。高分子材料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
プラスチックとしては、例えば、熱硬化性プラスチック、熱可塑性プラスチック、紫外線硬化性プラスチック、多液硬化性プラスチック(二液硬化型など)などが挙げられる。プラスチックは、単独使用または2種類以上併用することができる。プラスチックのなかでは、好ましくは、熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性プラスチックが挙げられる。
熱硬化性プラスチックは、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂などが挙げられる。熱硬化性プラスチックは、単独使用または2種類以上併用することができる。熱硬化性プラスチックのなかでは、好ましくは、ポリイミド樹脂が挙げられる。
熱可塑性プラスチックとしては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、芳香族ポリエーテルケトン(例えば、ポリエーテルエーテルケトンなど)、ポリオキサジアゾール、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)などが挙げられる。
熱可塑性プラスチックは、単独使用または2種類以上併用することができる。熱可塑性プラスチックのなかでは、好ましくは、フッ素系ポリマーが挙げられ、より好ましくは、PFAが挙げられる。
ゴムは、熱硬化性の軟質樹脂であって、例えば、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素系ゴムなどが挙げられる。ゴムは、単独使用または2種類以上併用することができる。
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性の軟質樹脂であって、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、固定シート5は、必要に応じて、公知の添加材を適宜の割合で含有することができる。添加材としては、例えば、金属粒子、炭素材料、セラミックス粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銅粒子、チタン粒子、アルミニウム粒子などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラファイト、フラーレンなどが挙げられる。セラミックス粒子としては、例えば、無機酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなど)のセラミックス粒子、無機窒化物(例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素など)のセラミックス粒子、無機炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステンなど)のセラミックス粒子などが挙げられる。このような添加材は、単独使用または2種類以上併用することができる。
固定シート5が上記した添加材を含有すると、固定シート5の面方向における熱伝導性の向上を図ることができる。
次いで、図3Aおよび図3Bに示すように、固定シート5を超音波振動装置12にセットする。
超音波振動装置12は、アンビル13と、複数のスペーサ14と、複数の押え冶具15と、ホーン16と、超音波振動子(図示せず)とを備える。
図3Bに示すように、アンビル13は、固定シート5を受ける台座である。アンビル13は、平坦な上面13Aを有する。上面13Aは、水平方向に沿って延びている。
複数のスペーサ14は、アンビル13の上面13Aと固定シート5との間にスペースを形成するための部材である。複数のスペーサ14の個数は、2以上であれば特に制限されないが、第1実施形態では2つである。2つのスペーサ14は、アンビル13の上面13Aにおいて水平方向に互いに間隔を空けて位置する。
複数の押え冶具15は、複数のスペーサ14との間に固定シート5を挟み込んで、固定シート5を固定するための部材である。複数の押え冶具15の個数は、複数のスペーサ14の個数と同じである。
ホーン16は、CNTアレイシート4を固定シート5に向かって押圧可能、かつ、水平方向に振動可能に構成される。ホーン16は、アンビル13の上面13Aに対して上側に間隔を空けて位置する。
ホーン16は、接触部16Aと、軸部16Bとを一体に備える。接触部16Aは、CNTアレイシート4と接触する部分である。接触部16Aは、水平方向に延びる平板形状を有する。
軸部16Bは、接触部16Aを支持する部分である。軸部16Bは、鉛直方向に延びる円柱形状を有する。軸部16Bの下端部は、接触部16Aの上面における中央部分に固定されている。なお、軸部16Bの上端部は、加圧シリンダなどの加圧装置(図示せず)に接続される。また、軸部16Bは、超音波振動子(図示せず)からの超音波振動が伝達可能に構成される。
超音波振動子(図示せず)は、例えば、圧電素子であって、電気が供給され、その電圧が制御されることによって伸縮する。これにより、超音波振動子(図示せず)は、超音波振動を出力する。
そして、固定シート5を超音波振動装置12にセットするには、固定シート5を2つのスペーサ14上に配置する。次いで、押え冶具15を、スペーサ14との間に固定シート5を挟み込むように配置する。これにより、固定シート5が超音波振動装置12に固定される。
このとき、固定シート5は、水平方向に沿うように配置されており、アンビル13の上面13Aに対して上側に間隔を空けて配置される。固定シート5とアンビル13との間の間隔は、後述するCNT9の第2突出部分9D(図3C参照)の長さよりも大きい。
次いで、CNTアレイシート4を、ホーン16の下側かつ水平方向において2つの押え冶具15の間に位置するように、固定シート5上に配置する。
次いで、超音波振動装置12により、CNTアレイシート4に超音波振動を加える。
詳しくは、図3Bに示すように、ホーン16を下降させて、CNTアレイシート4をホーン16と固定シート5との間に挟み込む。これによって、CNTアレイシート4の複数のCNT9は、ホーン16と接触するとともに、固定シート5と接触する。
そして、ホーン16を加圧装置(図示せず)により下側に向かって押圧するとともに、ホーン16に超音波振動子(図示せず)から超音波振動を入力する。
すると、ホーン16は、CNTアレイシート4を固定シート5に向かって押圧するとともに、水平方向において直線的に往復移動(振動)する。つまり、ホーン16の移動方向(振動方向)は、固定シート5の面方向(厚み方向と直交する方向)に沿っている。
このとき、超音波振動装置12からの超音波振動が、CNTアレイシート4の複数のCNT9に伝達される。
CNTアレイシート4に対する圧力は、例えば、1kPa以上10MPa以下であることが好ましい。
ホーン16の最大振幅Lは、例えば、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがとりわけ好ましく、例えば、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがとりわけ好ましい。
超音波振動装置12の発振周波数は、例えば、1kHz以上であることが好ましく、10kHz以上であることがより好ましく、20kHz以上であることがとりわけ好ましく、例えば、50kHz以下であることが好ましく、30kHz以下であることがより好ましく、25kHz以下であることがとりわけ好ましい。
超音波振動装置12の発振時間は、例えば、1秒間以上1分間以下であることが好ましい。
また、複数のCNT9に超音波振動が加えられるときの固定シート5の温度は、固定シート5のガラス転移温度以下であればよい。例えば、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがとりわけ好ましい。固定シート5のガラス転移温度を超過すれば、固定シート5の形状を保持できないためである。
これによって、固定シート5と接触するCNT9の先端部が、超音波振動により振動して徐々に固定シート5に埋め込まれる。換言すると、超音波振動からCNT9の先端部に伝達された振動エネルギーによって、固定シート5と接触するCNT9の先端部の境界面で摩擦熱が発生し、固定シート5の溶融温度まで瞬時に上昇し、CNTアレイシート4の少なくとも一部が固定シート5に溶着(固定化)される。つまり、CNTアレイシート4が固定シート5に埋め込まれて固定される。
以上によって、図3Cおよび図4に示すように、CNTアレイシート4と固定シート5とが複合化されて、CNT複合材1が製造される。CNT複合材1は、固定シート5と、超音波振動により固定シート5に埋め込まれるCNTアレイシート4とを備えている。
また、第1実施形態では、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程においてCNTアレイシート4が、固定シート5の厚み方向に固定シート5を貫通する。換言すると、超音波振動からCNT9の先端部に伝達された振動エネルギーによって、固定シート5と接触するCNT9の先端部の境界面で摩擦熱が発生し、固定シート5の溶融温度まで瞬時に上昇し、CNTアレイシート4の先端または末端が固定シート5から露出して(CNTアレイシート4の先端または末端が固定シート5と同一面を含む)、CNTアレイシート4の先端から末端にかけての少なくとも一部が固定シート5に溶着(固定化)される。なお、CNTアレイシート4が固定シート5を貫通するとは、CNTアレイシート4の両端部が固定シート5から突出する態様と、CNTアレイシート4の両端部が固定シート5と面一となり、固定シート5から露出される態様と、CNTアレイシート4の両端部のいずれか一方が固定シート5から突出し、他方が固定シート5と面一となり、固定シート5から露出される態様とを含む。
CNTアレイシート4における複数のCNT9は、互いに略平行となるように配向されている。CNT9は、固定シート5を厚み方向に貫通している。第1実施形態では、CNT9は、固定シート5に埋設される埋設部分9Bと、固定シート5の表面5Aから突出する第1突出部分9Cと、固定シート5の裏面5Bから突出する第2突出部分9Dとを一体に有する。つまり、CNT9は、埋設部分9Bと、第1突出部分9Cと、第2突出部分9Dとのみからなる。このような場合において、CNT9の長さは、固定シート5の厚みよりも長いことが好ましい。
第1突出部分9Cおよび第2突出部分9Dのそれぞれの長さは、固定シート5の表面粗さ(Rmax)と、接触対象物(例えば、電子部品やヒートシンクなど)の表面粗さ(Rmax)との総和よりも大きいことが好ましい。
CNT複合材1の熱伝導率は、厚み方向において、例えば、5W/(m・K)以上であることが好ましく、20W/(m・K)以上であることがより好ましく、例えば、100W/(m・K)以下であることが好ましく、50W/(m・K)以下であることがより好ましい。なお、熱伝導率は、公知の熱伝導率測定装置により測定される。
CNT複合材1は、例えば、異方熱伝導性シート、異方電気伝導性シート、集積回路などの電気特性を検査するためのプローバーなどとして好適に利用でき、より好ましくは、異方熱伝導性シート、とりわけ好ましくは、電子部品とヒートシンクとの間に配置される熱伝導性材料などの放熱シートとして利用できる。
(1−4)作用効果
図3A〜図3Cに示すように、第1実施形態では、CNTアレイシート4に超音波振動を加えることにより、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込むことができる。
そのため、簡易な方法でありながら、CNTアレイシート4における複数のCNT9の配向の乱れを抑制でき、固定シート5に含浸するCNTアレイシート4の含有率を高め、かつ、CNTアレイシート4と固定シート5とを効率よく複合化することができる。その結果、CNT複合材1の生産効率の向上を図ることができる。
図3Cに示すように、CNT複合材1において、CNTアレイシート4が固定シート5の厚み方向に貫通する。そのため、CNTアレイシート4を固定シート5に固定できるとともに、厚み方向におけるCNT複合材1の熱伝導性の向上を図ることができる。そのため、CNT複合材1を、好ましくは、異方熱伝導性シート、より好ましくは、放熱シートとして利用することができる。
第1実施形態では、CNTアレイシート4が固定シート5に埋め込まれる前に高密度化される。そのため、CNTアレイシート4の特性(例えば、熱伝導性や電気伝導性など)の向上を図ることができ、ひいては、CNT複合材1の性能の向上を図ることができる。
第1実施形態では、固定シート5が高分子シートである。そのため、CNTアレイシート4を固定シート5に安定して埋め込むことができる。
また、CNT複合材1は、固定シート5と、超音波振動により固定シート5に埋め込まれるCNTアレイシート4とを備えている。そのため、CNTアレイシート4を固定シート5に固定できながら、複数のCNT9の配向の乱れを抑制できる。
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態では、図5に示すように、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程の後において、固定シート5を熱収縮させる工程をさらに含む。
第2実施形態では、固定シート5の材料として、熱収縮可能な熱収縮材料が選択される。
熱収縮材料としては、上記した固定シート5の材料のうち、例えば、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、フッ素系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリプロピレン系、ポリ乳酸系、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エラストマーなどが挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン系が挙げられる。熱収縮材料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
そして、固定シート5を熱収縮させるには、図4に示すCNT複合材1を加熱処理する。熱収縮のための加熱温度は、例えば、固定シート5が熱収縮する温度以上であればよく、80℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、例えば、400℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましい。熱収縮のための加熱時間は、例えば、固定シート5が熱収縮する時間以上であればよく、5分間以上であることが好ましく、10分間以上であることがより好ましく、例えば、30分間以下であることが好ましい。
以上によって、CNTアレイシート4が埋め込まれた固定シート5が熱収縮する。熱収縮後の固定シート5の体積は、熱収縮前の固定シート5の体積に対して、例えば、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
第2実施形態によれば、CNTアレイシート4が埋め込まれた固定シート5が熱収縮する。そのため、単位面積当たりの複数のCNT9の密度の向上を図ることができる。その結果、CNT複合材1の性能の向上を図ることができる。また、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第3実施形態)
次に、図6Aおよび図6Bを参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態では、図6Aおよび図6Bに示すように、CNTアレイシート4が埋め込まれた固定シート5を加熱処理して、固定シート5をグラファイト化する工程をさらに含む。
第3実施形態では、固定シート5の材料として、グラファイト化が可能な高分子材料が選択される。そのような高分子材料としては、上記した固定シート5の材料のうち、例えば、ポリオキサジアゾール、ポリアミド、ポリイミド樹脂(例えば、芳香族ポリイミド樹脂など)、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂などが挙げられ、好ましくは、ポリイミド樹脂、より好ましくは、芳香族ポリイミド樹脂が挙げられる。
そして、図6Aに示すように、固定シート5をグラファイト化するには、まず、図4に示すCNT複合材1を、上記の不活性ガス雰囲気において予備加熱する。これにより、固定シート5の高分子材料(高分子層)が炭素化して、固定シート5が炭素シート20となる。
予備加熱の温度は、例えば、1000℃以上であることが好ましく、1500℃以上であることがより好ましく、例えば、2000℃以下であることが好ましい。予備加熱の時間は、例えば、10分間以上であることが好ましい。
次いで、図6Bに示すように、炭素シート20を備えるCNT複合材1を、上記の不活性ガス雰囲気において加熱する。これにより、炭素シート20の炭素がグラファイト化して、炭素シート20がグラファイトシート21となる。
グラファイト化の加熱温度は、例えば、2000℃以上であることが好ましく、2500℃以上であることがより好ましい。グラファイト化の加熱時間は、例えば、5分間以上であることが好ましく、10分間以上であることがより好ましい。
グラファイトシート21は、複数の炭素原子が六角網目状に結合したグラフェンシートが厚み方向に複数積層されて形成されている。なお、グラファイトシート21は、固定シートの一例である。
第3実施形態では、CNTアレイシート4が埋め込まれた固定シート5(高分子層)を、必要により予備加熱後、加熱処理してグラファイト化する。これにより、固定シート5がグラファイトシート21とする。そのため、面方向におけるCNT複合材1の熱伝導性および電気伝導性の向上を図ることができる。
また、炭素シート21のグラファイト化とともに、CNTアレイシート4のCNT9を構成するグラフェンの結晶性が向上する。そのため、厚み方向におけるCNT複合材1の熱伝導性および電気伝導性のさらなる向上を図ることができる。
さらに、CNTアレイシート4のCNT9と、グラファイトシート21のグラフェンシートとが結合する場合がある。これにより、CNTアレイシート4をグラファイトシート21により強固に固定することができる。また、第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記の第3実施形態では、固定シート5を予備加熱して炭素シート20とした後、炭素シート20を加熱処理してグラファイトシート21とするがこれに限定されない。固定シート5(高分子層)がグラファイト化するように、固定シート5を予備加熱することなく、一気に加熱処理してもよい。
(第4実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
図3Cに示すように、第1実施形態では、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程において、CNTアレイシート4が固定シート5を貫通するが、これに限定されない。
図7に示すように、第4実施形態では、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程において、CNTアレイシート4が固定シート5を貫通しない。すなわち、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程において、CNTアレイシート4の一端部を固定シート5の内部(表面および裏面の間)に埋め込み、CNTアレイシート4の他端部を固定シート5から露出させる。
詳しくは、CNTアレイシート4は、厚み方向において、固定シート5側の一端部4Aと、一端部4Aと反対側の他端部4Bとを有する。
そして、第1実施形態と同様の方法によって、CNTアレイシート4の一端部4Aを固定シート5の内部(表面5Aおよび裏面5Bの間)に埋め込み、CNTアレイシート4の他端部4Bを固定シート5の表面5Aから露出させる。
つまり、CNTアレイシート4の一端部4Aは、固定シート5から露出しておらず、CNTアレイシート4の他端部4Bは、固定シート5から露出している。
この場合、CNTアレイシート4におけるCNT9は、固定シート5に埋設される埋設部分9Bと、固定シート5の表面5Aから突出する突出部分9Cとを一体に有する。つまり、CNT9は、埋設部分9Bと、突出部分9Cとのみからなる。
第4実施形態では、例えば、固定シート5の材料として、電気絶縁性を有する絶縁材料が選択される場合、固定シート5から露出するCNTアレイシート4の他端部4Bにより、電気伝導性を確保できるとともに、CNTアレイシート4の一端部4Aを埋め込む固定シート5により、電気絶縁性を確保することができる。
絶縁材料の体積抵抗率は、例えば、1012Ω・cm以上1016Ω・cm以下である。なお、体積抵抗率は、体積抵抗率計を用いた四端子法、二端子法により測定することができる。
このような絶縁材料としては、上記した固定シート5の材料のうち、プラスチック、ゴムが挙げられ、好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタンゴム、フッ素系ゴムが挙げられる。
また、第4実施形態において、固定シート5は、必要に応じて、上記した添加材を適宜の割合で含有することができる。第4実施形態において選択される添加材は、好ましくは、電気絶縁性および熱伝導性を有する添加材が挙げられる。そのような添加材として、好ましくは、セラミックス粒子が挙げられ、より好ましくは、無機酸化物のセラミックス粒子、無機窒化物のセラミックス粒子が挙げられる。
固定シート5が、絶縁材料から形成されるとともに、セラミックス粒子を含有する場合、CNTアレイシート4の一端部4Aが固定シート5から露出しておらず、かつ、固定シート5がセラミックス粒子を含有するので、厚み方向におけるCNT複合材1の電気絶縁性を確保できながら、厚み方向におけるCNT複合材1の熱伝導性を確保することができる。
また、第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第5実施形態)
次に、図8および図9を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
第5実施形態では、図8および図9に示すように、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程において、複数(2以上)のCNTアレイシート4が、固定シート5にパターンを形成するように、複数埋め込まれる。
例えば、図8では、複数(2以上)のCNTアレイシート4が、固定シート5の同一面に埋め込まれているCNT複合材である。
また、図9では、例えば、CNTアレイシート4が、固定シート5の異方向の複数面に埋め込まれている異方性CNT複合材である。そして、固定シート5の内部において互いにCNTアレイシート4が接触していることにより、異方向に熱を伝える異方性CNT複合材を容易に製造することが可能になる。
詳しくは、第1実施形態と同様の方法によって、複数のCNTアレイシート4を準備する。その後、第1実施形態と同様の方法によって、複数のCNTアレイシート4を、所定のパターンを形成するように、固定シート5に埋め込む。
第5実施形態では、CNT複合材1において、CNTアレイシート4の特性(例えば、熱伝導性や電気伝導性など)が要求される部分にのみ、CNTアレイシート4を埋め込むことができる。そのため、CNT複合材1を種々の製品に応じて設計することができる。また、第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第6実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。なお、第6実施形態では、上記した第1実施形態と同様の部材には同様の符号を付し、その説明を省略する。
図3Cに示すように、第1実施形態では、固定シート5が、高分子層からなる高分子シートであるが、これに限定されない。
図10に示すように、第6実施形態では、固定シート5が、基材25と、高分子層26とを備えている。
基材25としては、例えば、金属箔(例えば、銅箔、アルミニウム箔など)、グラファイトシート、セラミックスシート(例えば、上記した無機酸化物のセラミックスシート、上記した無機窒化物のセラミックスシート、上記した無機炭化物のセラミックスシートなど)などが挙げられる。
高分子層26は、基材25上に配置されている。高分子層26の材料としては、例えば、上記した高分子材料などが挙げられる。高分子層26を基材25上に配置する方法としては、上記した高分子材料を基材25上に塗布する方法や、上記した高分子材料から形成される高分子シートを基材25に貼り付ける方法などが挙げられる。
そして、第1実施形態と同様の方法によって、CNTアレイシート4に超音波振動を加えて、CNTアレイシート4の一端部4Aを高分子層26に埋め込む。これにより、CNTアレイシート4の一端部4Aが、高分子層26に埋め込まれて、基材25に接触する。また、CNTアレイシート4の他端部4Bは、高分子層26から露出することが好ましい。
このような第6実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(変形例)
第1実施形態では、ホーン16の振動方向は、固定シート5の面方向であるが、これに限定されない。ホーン16の振動方向は、特に制限されず、固定シート5の厚み方向であってもよい。
第1実施形態は、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程の前において、CNTアレイシート4を高密度化処理する工程を含むが、これに限定されない。CNT複合材1の製造方法は、CNTアレイシート4を高密度化処理する工程を含まなくてもよい。
第1実施形態では、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む工程において、1つのCNTアレイシート4を1つの固定シート5に埋め込むが、これに限定されない。複数のCNTアレイシート4を、固定シート5に順次埋め込むこともできる。同一箇所に再びCNTアレイシート4を、固定シート5に埋め込むこともできる。
この場合、固定シート5は、長尺状に形成される。そして、長尺状の固定シート5上に、複数のCNTアレイシート4を固定シート5の長尺方向に並ぶように配置する。
そして、第1実施形態と同様に、固定シート5を超音波振動装置12に固定(セット)した後、複数のCNTアレイシート4のうち、1つのCNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む。
次いで、固定シート5の超音波振動装置12に対する固定を解除し、固定シート5を長尺方向に搬送する。そして、次のCNTアレイシート4がホーン16の下側に到達したときに、再度、固定シート5を超音波振動装置12に固定する。その後、CNTアレイシート4を固定シート5に埋め込む。
上記を繰り返すことによって、複数のCNTアレイシート4を、1つの固定シート5に間欠的に埋め込むことができる。
第1実施形態では、CNT複合材1におけるCNTアレイシート4は、固定シート5を貫通して、固定シート5の厚み方向両側から突出するが、これに限定されない。CNTアレイシート4の一端部4Aは、固定シート5の裏面5Bと略面一であり、CNTアレイシート4の他端部4Bは、固定シート5の表面5Aと略面一であってもよい。
固定シート5の表面からCNTアレイシート4が露出され、固定シート5の裏面から添加材が露出される構成であってもよい。この構成によれば、CNTアレイシート4が固定シート5を貫通しなくても、垂直方向(厚み方向)の電気絶縁性および熱伝導性を確保することができる。
上記の第1実施形態〜第6実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、第2実施形態のCNT複合材1(図5参照)を第3実施形態と同様に加熱処理して、熱収縮した固定シート5をグラファイト化することができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
(実施例1)
ステンレス製の成長基板(ステンレス基板)の表面に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。
次いで、成長基板を600℃に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を、10分間供給した。これにより、成長基板上において、平面視略矩形形状のVACNTsを形成した。
VACNTsにおいて、複数のCNTは、互いに略平行となるように延び、成長基板に対して直交するように配向(垂直配向)されていた。CNTは、多層カーボンナノチューブであり、CNTの平均外径は、約12nm、CNTの平均長さは、約100μmであった。VACNTsにおける単位体積当たりの本数密度は、1010本/cm2であった。
次いで、カッター刃(切断刃)を成長基板に沿って移動させて、VACNTsを成長基板から切り離して、CNTアレイシートを準備した。CNTアレイシートの厚みは、CNTの平均長さと同じであり、約100μmであった。
次いで、CNTアレイシートを、耐熱容器である炭素容器(内寸高さ1mm)に収容して、その炭素容器を抵抗加熱炉内に配置した。
次いで、抵抗加熱炉内を、アルゴン雰囲気に置換した後、10℃/分で2800℃まで昇温し、2800℃で2時間保持した。これにより、CNTアレイシートが高密度化され、その後、自然冷却(−100℃/分程度)により、室温(25℃)まで冷却した。
高密度化されたCNTアレイシートにおける単位体積当たりの本数密度は、約5×1010本/cm2であった。
次いで、PFAから形成される固定シート(高分子シート、厚み;30μm)を準備した。そして、CNTアレイシートを固定シート上に配置した。
次いで、CNTアレイシートが配置された固定シートを図3A〜図3Cに示す超音波振動装置に固定した後、CNTアレイシートを高分子シートに向かって押圧するとともに、CNTアレイシートに超音波振動を加えた。超音波振動の条件を下記に示す。
温度;100℃、
ホーンの振動方向;固定シートの面方向、
CNTアレイシートに対する圧力;1MPa、
ホーンの最大振幅;15μm、
周波数;20kHz、
発振時間;0.5分間
これによって、CNTアレイシートが高分子シートに徐々に埋め込まれ、CNTアレイシートが高分子シートを貫通した。
以上によって、高分子シートとCNTアレイシートとが複合化されたCNT複合材料を得た。CNT複合材料の厚みは、CNTアレイシートの厚みと同じであり、約100μmであった。また、CNTにおける埋設部分の長さは、約30μmであった。
(実施例2)
PFAから形成される固定シートを、芳香族ポリイミド樹脂から形成される固定シートに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてCNT複合材料を得た。
その後、CNT複合材料を加熱炉内に配置した。次いで、加熱炉内をアルゴン雰囲気に置換した後、20℃/分で1800℃〜2000℃の温度範囲まで昇温し、1時間保持した。これにより、固定シートが、炭素化して炭素シートとなった。
次いで、加熱炉内を、10℃/分で2800℃まで昇温し、1時間保持した。これにより、炭素シートが、グラファイト化してグラファイトシートとなった。
以上により、グラファイトシートとCNTアレイシートとが複合化されたCNT複合材料を得た。