以下、本発明に係るマニピュレータの構造について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明に係るマニピュレータの一例であり、本発明は実施形態により限定されるものではない。
[1 実施形態1]
図1乃至図5を参照して、実施形態1に係るマニピュレータ1について説明する。図1はマニピュレータ1の第一状態を後方から見た図(つまり、背面図)である。なお、図1において、後述する箱旋回装置16および抑え装置22は省略されている。
図2Aは図1のA−A断面に相当する図であって、マニピュレータ1の第一状態を示す図である。図2Bは図1のA−A断面に相当する図であって、マニピュレータ1の第二状態を示す図である。なお、図2Aおよび図2Bにおいては、ワークWは省略されている。
図3Aは抑え装置22の一部および保持部13の一部のみを示す、マニピュレータ1の第一状態に相当する図である。図3Bは抑え装置22の一部および保持部13の一部のみを示す、マニピュレータ1の第三状態に相当する図である。図3Cは抑え装置22の一部を後方から見た図である。
図4Aは包装材の一例である防錆紙6に覆われたワークWが入った箱5を斜め上方から見た斜視図である。図4Bは図4AのB−B断面図である。図4Cは、マニピュレータ1により防錆紙6をめくった状態を示す図である。図4Dは、防錆紙6をめくるとともに、抑え装置22により防錆紙6を抑えている状態を示す図である。図5は本実施形態のマニピュレータ1が使用される工程およびその前後工程に関するフローチャートである。
なお、以下の説明において、前後方向はマニピュレータ1に関する前後方向(図2A乃至図3Bの矢印abの方向)をいう。「前方」は図2A乃至図3Bに矢印aで示す方向をいう。「後方」は図2A乃至図3Bに矢印bで示す方向をいう。
また、幅方向はマニピュレータ1に関する幅方向(図1および図3Cの矢印cdの方向)をいう。上下方向はマニピュレータ1に関する上下方向(図1乃至図3Cの矢印efの方向)をいう。「上方」は図1乃至図3Cに矢印eで示す方向をいう。「下方」は図1乃至図3Cに矢印fで示す方向をいう。
なお、前後方向および幅方向は水平方向に平行であってもよいし、平行でなくてもよい。上下方向は垂直方向に平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
また、以下の説明において、第一状態は、図1、図2Aおよび図3Aに示すマニピュレータ1の状態をいう。マニピュレータ1を構成する各部材の第一状態における位置が各部材の第一位置である。
また、第二状態は、図2Bに示すマニピュレータ1の状態をいう。マニピュレータ1を構成する各部材の第二状態における位置が各部材の第二位置である。
さらに、第三状態は、図3Bに示すマニピュレータ1の状態をいう。なお、第三状態(つまり、第三位置)は、図1および図2Aに示すマニピュレータ1の第一状態(つまり、第一位置)に対して、抑え装置22(具体的には、旋回抑え部225)の状態が異なる。従って、第三状態における、抑え装置22の位置は第三位置である。一方、抑え装置22以外の第三状態の位置は第一位置である。
[1.1 マニピュレータが使用される工程について]
本実施形態のマニピュレータ1は、ワークの自動組立装置にワークを供給する工程の前工程で使用される。具体的には、例えば、本実施形態のマニピュレータ1は、内燃機関に組み込まれるバルブの自動組立装置にバルブを供給する工程の前工程で使用される。以下、本実施形態のマニピュレータ1が使用される工程について簡単に説明する。
[1.2 ワークの搬送状態について]
図4Aおよび図4Bに示すように、バルブなどのワークW(図4B参照)は、上方が開口した箱5の内側に配置された状態で組立工場に搬入される。具体的には、複数個のワークWは縦横方向に整列した状態で箱5の内側に配置されている。この状態で、複数個のワークWは下方および上方を防錆紙6により覆われている。
防錆紙6は気化性の防錆剤が塗布された略矩形状の紙部材である。防錆紙6は略C字状に折り曲げられた状態で箱5の内側に配置されている。
具体的には、防錆紙6は、箱5の内側に配置された総てのワークWの下方を覆う下方紙部61と、箱5の内側面のうち一つの内側面(換言すれば、使用状態で後方に配置される内側面)に沿う側方紙部62と、総てのワークWの上方を覆う上方紙部63と、を有している。なお、防錆紙6は従来から知られている各種防錆紙を使用できる。
以上のようなワークWは、図4Bに示す状態で、搬送コンベア(図示省略)に乗って所定位置(後述する、箱旋回装置16の箱載置台161)まで運ばれてくる。
[1.3 マニピュレータの概容について]
以下、図1乃至図2Bを参照して、本実施形態のマニピュレータ1の概要を説明する。
本実施形態のマニピュレータ1は、旋回支持部(具体的には、後述する一対の旋回支持板10a、10b、および、エアシリンダ11の上下動テーブル113)と、旋回支持部に対して旋回可能に支持された旋回部(具体的には、後述する旋回板部12)と、旋回部を旋回させるアクチュエータ(具体的には、後述するエアシリンダ11)と、ワークWおよびワークWの上を覆った包装材(具体的には、防錆紙6)が収納された箱5の外に定義される第一位置(具体的には、図2Aに示す位置)と箱5の内に定義される第二位置(具体的には、図2Bに示す位置)との間を旋回部とともに旋回し、包装材が保持された状態で第二位置から第一位置に旋回する保持部13と、保持部13に保持された包装材に保持部13と反対側から当接する抑え部(具体的には、後述する旋回抑え部225)と、を備える。
[1.4 マニピュレータの具体的構造について]
次に、図1乃至図5を参照して、本実施形態のマニピュレータ1の具体的構造について説明する。マニピュレータ1は、一対の旋回支持板10a、10bと、エアシリンダ11と、旋回板部12と、保持部13と、一対の上下位置規制部14a、14bと、抑え装置22と、前後位置調節部15と、箱旋回装置16と、を備えている。
[1.4.1 旋回支持板について]
一対の旋回支持板10a、10bは、幅方向視で上下方向に長い略矩形板状である。一対の旋回支持板10a、10bは、互いに幅方向に離隔した状態で配置されている。一対の旋回支持板10a、10bの下端部は可変載置台17に固定されている。
なお、可変載置台17は、固定台18に対する前後方向の変位を可能な状態で、固定台18の上面に配置されている。可変載置台17の前後方向位置は、後述する前後位置調節部15により調節可能である。
一対の旋回支持板10a、10bは案内部を有している。上記案内部は、例えば、一対の旋回支持板10a、10bに形成された円弧状のガイド溝101により構成できる。
本実施形態の場合、ガイド溝101は、一対の旋回支持板10a、10bの互いに対向する面(つまり、幅方向における内側面)に形成されている。ガイド溝101は、直線溝部101aと、円弧溝部101bと、を有している。
直線溝部101aは幅方向視で上下方向に延在した溝である。円弧溝部101bは幅方向視で上が凸の半円形の溝である。円弧状溝部101bの後端部は直線溝部101aの上端に連続している。
一対の旋回支持板10a、10bの幅方向における内側面には旋回規制部102が設けられている。旋回規制部102は、後述する旋回板部12の一部と当接することにより、旋回板部12が第一位置から第二位置に旋回する際のストッパとして機能する。
[1.4.2 エアシリンダについて]
エアシリンダ11は後述する旋回板部12を上下方向に変位させる。具体的には、エアシリンダ11は、シリンダ部111と、ピストン部112と、上下動テーブル113と、を備えている。なお、エアシリンダ11の下端部は可変載置台17に固定されている。従って、エアシリンダ11は可変載置台17とともに前後方向に変位可能である。
シリンダ部111はシリンダ空間(図示省略)を有する筒状部材である。当該シリンダ空間はピストン部112のピストン本体(図示省略)により第一シリンダ空間と第二シリンダ空間とに区切られている。
ピストン部112は上記第一シリンダ空間への圧縮空気の供給にともない上方へ変位する。一方、ピストン部112は上記第二シリンダ空間への圧縮空気の供給にともない下方へ変位する。
具体的には、ピストン部112は、ピストン本体(図示省略)と、ピストンロッド112aと、を備えている。
上記ピストン本体はシリンダ部111のシリンダ空間に配置されている。ピストンロッド112aの基端部(図1の下端部)は、上記ピストン本体に連結されている。一方、ピストンロッド112aの先端部(図1の上端部)は、シリンダ部111よりも上方に位置しており、後述する上下動テーブル113に固定されている。
上下動テーブル113はピストン部112とともに上下方向に変位する。具体的には、上下動テーブル113は、テーブル本体113aと、一対のフランジ部113b、113cと、を備えている。
テーブル本体113aは幅方向に長い略矩形板状であって水平に配置されている。テーブル本体113aの下面はピストンロッド112aの先端部(図1の上端部)に固定されている。なお、テーブル本体113aは積層した複数枚の板状部材により構成してもよい。
一対のフランジ部113b、113cはそれぞれ、幅方向視で略矩形の板状部材である。一対のフランジ部113b、113cにはそれぞれ、幅方向に貫通した貫通孔113d、113eが形成されている。
一対のフランジ部113b、113cのうち一方(図1の右側)のフランジ部113bは、テーブル本体113aの上面の幅方向における一方の端部(図1の右端部)に固定されている。
一方、一対のフランジ部113b、113cのうち他方(図1の左側)のフランジ部113cは、テーブル本体113aの上面の幅方向における他方の端部(図1の左端部)に固定されている。
[1.4.3 旋回板部について]
旋回板部12は、第一位置(つまり、図2Aおよび図3Aに示す第一状態における位置)と第二位置(つまり、図2Bに示す第二状態における位置)との間を旋回可能な状態でエアシリンダ11の上下動テーブル113および一対の旋回支持板10a、10bに支持されている。
なお、旋回板部12の第一位置は旋回板部12の旋回範囲内で箱5から最も遠い位置である。一方、旋回板部12の第二位置は旋回板部12の旋回範囲内で箱5に最も近い位置である。
具体的には、旋回板部12は、本体板部120と、一対の側板部121a、121bと、一対のガイドローラ122a、122bと、を備えている。
本体板部120は、幅方向に長い矩形板状の基板部123と、一対の延在板部124a、124bと、を備えている。このような本体板部120(つまり、基板部123および一対の延在板部124a、124b)は、第一主面と第二主面とを有している。
以下の説明において、第一主面といった場合には、旋回板部12が第一位置から第二位置に旋回する際の旋回方向(図2Aおよび図2Bの矢印gの方向)の面をいう。一方、第二主面といった場合には、旋回板部12が第二位置から第一位置に旋回する際の旋回方向(図2Aおよび図2Bの矢印hの方向)の面をいう。
一対の延在板部124a、124bは、第一状態(図1参照)で、基板部123の上端部の二個所位置から上方かつ後方に延在している。
一対の延在板部124a、124bには、後述する保持部13を支持するための二個の貫通孔125a、125bが形成されている。
一対の側板部121a、121bは本体板部120とは別部材の板状部材である。一対の側板部121a、121bには、旋回中心孔126a、126bおよびローラ支持孔127a、127bが形成されている。
一対の側板部121a、121bのうち一方(つまり、図1の右側)の側板部121aは本体板部120の幅方向における一方の端部(つまり、図1の右端部)に、図示しない締結用部品(例えば、ネジ、またはボルトおよびナットの組など)により固定されている。
一方の側板部121aは、上下動テーブル113の一方のフランジ部113bの幅方向外側に隣接した位置に配置されている。この状態で、一方の側板部121aの旋回中心孔126aおよび一方のフランジ部113bの貫通孔113dに旋回中心軸19aが挿通されている。
なお、一方のフランジ部113bの貫通孔113dと旋回中心軸19aの外周面との間には軸受が設けられている。一方、一方の側板部121aの旋回中心孔126aと旋回中心軸19aの外周面との間にも軸受が設けられている。
一方、一対の側板部121a、121bのうち他方(つまり、図1の左側)の側板部121bは本体板部120の幅方向における他方の端部(つまり、図1の左端部)に、図示しない締結用部品(例えば、ネジ、またはボルトおよびナットの組など)により固定されている。
他方の側板部121bは、上下動テーブル113の他方のフランジ部113cの幅方向における外側に隣接して配置されている。この状態で、他方の側板部121bの旋回中心孔126bおよび他方のフランジ部113cの貫通孔113eに旋回中心軸19bが挿通されている。本実施形態の場合、旋回中心軸19a、19bは互いに同軸、かつ、幅方向に平行(つまり、上下方向に直交する状態)に配置されている。
なお、他方のフランジ部113cの貫通孔113dと旋回中心軸19bの外周面との間には軸受が設けられている。一方、他方の側板部121bの旋回中心孔126aと旋回中心軸19aの外周面との間にも軸受が設けられている。このようにして、旋回板部12は上下動テーブル113に対する旋回可能な状態で支持されている。
一対のガイドローラ122a、122bは被案内部の一例である。一対のガイドローラ122a、122bがガイド溝101に案内されることにより、アクチュエータ(例えば、エアシリンダ11)の直線運動が旋回板部12の旋回運動に変換される。
本実施形態の場合、一対のガイドローラ122a、122bはそれぞれ、軸部の幅方向における外側の端部に回転可能に支持されている。一対のガイドローラ122a、122bはそれぞれ、旋回板部12のローラ支持孔127a、127bに上記軸部が挿通された状態で、一対の側板部121a、121bの幅方向における外側面に配置されている。なお、上記軸部のうち一対の側板部121a、121bの幅方向における内側に突出した部分にはナットが螺合されている。
一対のガイドローラ122a、122bはそれぞれ、一対の側板部121a、121bのガイド溝101の内側に配置されている。
具体的には、第一状態(図1および図2A参照)において、一対のガイドローラ122a、122bはガイド溝101における直線溝部101aの下端寄り部分に位置している。
一方、第二状態(図2B参照)において、一対のガイドローラ122a、122bはガイド溝101における円弧溝部101bの前端寄り部分に位置している。
[1.4.4 保持部について]
保持部13は、一対の延在板部124a、124bに設けられている。図2Aおよび図3Aに示す第一状態(つまり、第一位置)において、保持部13は箱5の外に位置する。なお、図3Bに示すマニピュレータ1の第三状態においても、保持部13は第一位置に位置する。従って、図3Bに示すマニピュレータ1の第三状態においても、保持部13は箱5の外に位置する。一方、図2Bに示す第二状態(つまり、第二位置)において、保持部13の先端部は箱5の内に位置する。
このような保持部13は、第一保持部131と、第二保持部132と、を備えている。
第一保持部131は、先端側および基端側が開口した吸引流路(図示省略)を有する筒状部材である。具体的には、第一保持部131は、軸部131aと、伸縮部131bと、吸盤部131cと、を備えている。
軸部131aは金属製で中空状の筒部材である。軸部131aは複数の部材を組み合わせて構成してもよい。
伸縮部131bは、軸部131aの先端部に固定されている。伸縮部131bは、例えば、合成樹脂製で中空状かつ蛇腹状に形成された筒部材である。伸縮部131bは伸縮部131bの軸方向に伸縮可能である。
第一保持部131の軸部131aは、一対の延在板部124a、124bに対する変位不能な状態で、一対の延在板部124a、124bに組み付けられている。
具体的には、第一保持部131の軸部131aは、図2Aおよび図2Bに示すように、一対の延在板部124a、124bの貫通孔125aに挿通されている。この状態で、軸部131aは締結用部品(例えば、ナットなど)により一対の延在板部124a、124bに固定されている。
吸盤部131cは中心孔(図示省略)を有する吸盤状であって、伸縮部131bの先端部に固定されている。
なお、軸部131aの基端部には、吸引装置20(図2A参照)のチューブ201が接続されている。吸引装置が作動すると、第一保持部131の吸引流路を先端側から基端側に向かう方向(図2Aおよび図2Bの矢印α1の方向)に空気が流れることにより第一保持部131(具体的には、吸盤部131c)が吸着力(換言すれば、保持力)を発揮する。
第二保持部132は、先端側および基端側が開口した吸引流路(図示省略)を有する筒状部材である。
具体的には、第二保持部132は、軸部132aと、突き当て部材132b、伸縮部132cと、吸盤部132dと、コイルバネ132eと、を備えている。
軸部132aは金属製で中空状の筒部材である。伸縮部132cは、例えば、合成樹脂製で中空状かつ蛇腹状に形成された筒部材である。
軸部132aは、一対の延在板部124a、124bに対する軸部132aの軸方向の変位を可能な状態で、一対の延在板部124a、124bに組み付けられている。
具体的には、第二保持部132の軸部132aは、図2Aおよび図2Bに示すように、一対の延在板部124a、124bの貫通孔125bに挿通されている。この状態で、軸部132aのうち一対の延在板部124a、124bの第二主面から突出した部分に突き当て部材132b(例えば、ナット)が固定されている。
突き当て部材132bは、軸部132a(換言すれば、第二保持部132)の先端側への変位を規制する。
伸縮部132cは軸部132aの先端部に固定されている。伸縮部132cは伸縮部131bの軸方向に伸縮可能である。
吸盤部132dは中心孔(図示省略)を有する吸盤状であって、伸縮部132cの先端部に固定されている。なお、第一状態(図2A参照)において、第二保持部132の吸盤部132dは、第一保持部131の吸盤部131cより、一対の延在板部124a、124bの第一主面から遠い位置に配置されている。
一方、第二状態(図2B参照)において、第二保持部132の吸盤部132dは、ワークWの上面と当接して基端側に押圧される。そして、第二保持部132が基端側に変位する。この結果、第二状態において、第二保持部132の吸盤部132dと第一保持部131の吸盤部131cとの、一対の延在板部124a、124bの第一主面からの距離が等しくなる。
コイルバネ132eは、一対の延在板部124a、124bの第一主面と伸縮部132cの基端部との間に、軸部132aが挿通された状態で配置されている。
第一状態(図2A参照)において、コイルバネ132eは、一対の延在板部124a、124bの第一主面から離れる方向に、伸縮部132cの基端部を押圧している。
なお、第二保持部132(具体的には、軸部132a)の基端部には、吸引装置のチューブ(図示省略)が結合されている。吸引装置が作動すると、空気が第二保持部132の吸引流路内を先端側から基端側に向かう方向(図2Aおよび図2Bの矢印α2の方向)に流れることにより、第二保持部132(具体的には、吸盤部132d)が吸着力(換言すれば、保持力)を発揮する。
[1.4.5 上下位置規制部について]
一対の上下位置規制部14a、14bは、旋回板部12の第一位置(図1および図2A参照)における上下位置を調整可能である。
具体的には、一対の上下位置規制部14a、14bはそれぞれ、下側ロッド141a、141bと、調節ボルト142a、142bと、を備えている。
下側ロッド141a、141bは互いに長さが等しい。下側ロッド141a、141bの下端部は可変載置台17に固定されている。
調節ボルト142a、142bはエアシリンダ11の上下動テーブル113に固定されている。具体的には、調節ボルト142a、142bは上下動テーブル113のねじ孔に螺合されている。この状態で、調節ボルト142a、142bの頭部143a、143bは上下動テーブル113の下面側に配置されている。
頭部143a、143bを回転させると、上下動テーブル113のねじ孔と調節ボルト142a、142bとの螺合に基づいて、調節ボルト142a、142bが上下方向に変位する。この結果、頭部143a、143bの上下方向位置が調整される。
調節ボルト142a、142bの頭部143a、143bの下面と下側ロッド141a、141bの上面との当接に基づいて、上下動テーブル113の上下方向変位の下限位置が規制される。
[1.4.6 抑え装置について]
抑え装置22のうち抑え部の一例である旋回抑え部225は、保持部13(具体的には、保持部13の吸盤部131cおよび吸盤部132d)に保持された防錆紙6に保持部13と反対側から当接する。
上述の抑え部は、保持部13が第一位置と第二位置との間を旋回する際に保持部13(好ましくは、保持部13および旋回板部12)と干渉しない位置に定義される旋回開始位置(図2A乃至図3Cに示す位置)から、同じく保持部13(好ましくは、保持部13および旋回板部12)と干渉可能な位置に定義される抑え位置との間を旋回する。以下、図2A乃至図3Cを参照して抑え装置22について説明する。
抑え装置22は、上述の一対の旋回支持板10a、10b、エアシリンダ11、旋回板部12、保持部13、および一対の上下位置規制部14a、14bにより構成されるマニピュレータ本体よりも後方に配置されている。
具体的には、抑え装置22は、基台部221と、支持台部222と、アクチュエータ223(図3C参照)と、回転軸224と、旋回抑え部225と、を備えている。
基台部221の下端部は、可変載置台17のうち一対の旋回支持板10a、10bの下端部が固定された部分よりも後方に固定されている。従って、基台部221(つまり、抑え装置22)は可変載置台17とともに前後方向に変位可能である。
支持台部222は、支持台部222に対する上下方向の変位を調節可能な状態で、基台部221の上端に支持されている。
アクチュエータ223は、幅方向に平行な中心軸(具体的には、回転軸224)を中心として図2A乃至図3Cに矢印ijで示す方向に、旋回抑え部225を往復旋回させる。
アクチュエータ223は、支持台部222の幅方向における片側の端部(本実施形態の場合、図3Cの左端部)に固定されている。なお、アクチュエータ223は支持台部222の幅方向における何れの端部に固定されていてもよい。
本実施形態の場合、アクチュエータ223は幅方向に平行な出力軸(図示省略)を有するロータリアクチュエータである。なお、ロータリアクチュエータとしては、空圧式、油圧式あるいは電動式などの各種構造が挙げられる。ロータリアクチュエータの構造は、従来から知られている各種ロータリアクチュエータの構造とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
回転軸224は幅方向に平行に配置された軸部材である。回転軸224の幅方向における一方側の端部(図3Cの右端部)は、軸受を介して支持台部222に支持されている。一方、回転軸224の幅方向における他方側の端部(図3Cの左端部)は、アクチュエータ223の出力軸に固定されている。回転軸224はアクチュエータ223の出力軸とともに回転可能である。
旋回抑え部225は回転軸224に固定されている。従って、旋回抑え部225は回転軸224とともに回転する。本実施形態の場合、旋回抑え部225は図2A乃至図3Cに矢印ijで示す方向に所定の範囲で往復旋回する。
旋回抑え部225は、芯金部226と、緩衝部材227と、を備えている。
芯金部226は、金属製の線材を幅方向視で略L字状に曲げ成形して造られる。具体的には、芯金部226は、抑え直線部226a(図3C参照)と、一対の側方線部226bと、一対の連続線部226cと、一対の係止線部226d(図3C参照)と、を備えている。
以下、芯金部226の具体的構造について説明する。抑え直線部226aは、抑え部の一例であって、回転軸224に平行(つまり、幅方向に平行)に設けられている。一対の側方線部226bは、図2Aおよび図3Cに示すように、抑え直線部226aの幅方向における両端部から、図2A乃至図3Cの矢印jの方向に折り曲げられた状態で設けられている。
一対の連続線部226cは、一対の側方線部226bのうち抑え直線部226aから遠い側の端部から互いに近づく方向、かつ、回転軸224に近づく方向に折り曲げられた状態で設けられている。一対の係止線部226dは、一対の連続部226cのうち一対の側方線部226bから遠い端部から回転軸224に近づく方向に折り曲げられた状態で設けられている。一対の係止線部226dは一対の固定具7aを介して回転軸224に固定されている。
緩衝部材227は、例えば、スポンジ、ゴムなどの弾性を有する筒状部材である。緩衝部材227の内径側には、芯金部226の抑え直線部226aが挿通されている。
[1.4.7 前後位置調節部について]
前後位置調節部15は、旋回板部12の前後位置を調整するためのものである。以下、図2Aおよび図2Bを参照して、前後位置調節部15について説明する。
前後位置調節部15は、回転運動を直線運動に変換可能な送りねじ機構により構成されている。具体的には、前後位置調節部15は、回転支持部151と、ボルト152と、ナット部153と、を備えている。
回転支持部151は、固定台18の上面に固定されている。回転支持部151はボルト152の軸部を挿通可能な軸支持孔を有している。
ボルト152は、頭部が回転支持部151よりも後側(図2Aおよび図2Bの左側)に配置されるとともに、軸部が回転支持部151の軸支持孔に挿通されている。この状態で、ボルト152は回転支持部151に対して回転可能かつ前後方向の変位不能である。
ナット部153は可変載置台17の上面に固定されている。従って、ナット部153は可変載置台17とともに前後方向変位が可能である。ナット部153はねじ孔を有している。ナット部153のねじ孔には、ボルト152の軸部が螺合されている。
以上のような構成を有する前後位置調節部15は、ボルト152の頭部を回転すると、ボルト152とナット部153との螺合に基づいて、ナット部153が前後方向に変位する。そして、ナット部153の前後方向の変位にともない、可変載置台17が前後方向に変位する。この結果、可変載置台17に直接または間接的に固定された部材も前後方向に変位する。
なお、本実施形態の場合、一対の旋回支持板10a、10b、旋回板部12、保持部13、エアシリンダ11、上下位置規制部14a、14b、および抑え装置22が、可変載置台17とともに前後方向に変位する。
なお、図示は省略するが、前後位置調節部15は、上述の機能に加えて抑え装置22のみの前後位置を調節する機能(例えば、第二前後位置調節部)を備えていてもよい。すなわち、第二前後位置調節部は上記マニピュレータ本体に対する抑え装置22の前後位置を調節できる。
[1.4.8 箱旋回装置について]
箱旋回装置16は、箱5を、旋回板部12が第一位置から第二位置に旋回する際の旋回方向(図2Aおよび図2Bの矢印gの方向)と反対方向(図2Aおよび図2Bの矢印hの方向)に旋回させるためのものである。なお、図1において、箱旋回装置16は省略されている。
箱旋回装置16は、上述の一対の旋回支持板10a、10b、エアシリンダ11、旋回板部12、保持部13、および一対の上下位置規制部14a、14bにより構成されるマニピュレータ本体よりも前方に配置されている。
具体的には、箱旋回装置16は、箱載置台161と、箱旋回エアシリンダ162とを備えている。
箱載置台161は、上下方向視で略矩形の板状部材である。
箱旋回エアシリンダ162は、下端部が固定部(例えば、固定台18)に固定されている。箱旋回エアシリンダ162は、シリンダ部162aと、ピストン部162bと、を備えている。ピストン部162bの上端部は、箱載置台161の下面にヒンジ163を介して結合されている。
なお、シリンダ部162aおよびピストン部162bの構造は、上述のエアシリンダ11のシリンダ部111およびピストン部112の構造とほぼ同様であるため、詳しい説明は省略する。
シリンダ部162aの第一シリンダ空間に圧縮空気が供給されると、ピストン部162bが上方に変位して、箱載置台161が図2Aに二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に旋回する。
すなわち、箱載置台161は、ピストン部162bの上下方向変位にともない、箱載置台161の後端部を支点(旋回中心)として図2Aの矢印hの方向に旋回する。従って、箱載置台161の上面に載置された箱5の上側開口部は斜め後上方を向く。
[1.5 マニピュレータの動作について]
以下、図2A乃至図5を参照して、本実施形態のマニピュレータ1の動作について説明する。
まず、図5のステップS1において、作業者は、ワークWが入った箱5(図4A参照)を搬送コンベア(図示省略)に乗せる。この作業は作業者の手作業により行われる。
図5のステップS2において、搬送コンベア上の箱5はマニピュレータ1における箱旋回装置16の箱載置台161の上面まで搬送される。
図5のステップS3において、箱載置台161に置かれた箱5の中の防錆紙6を、マニピュレータ1によりめくる。以下、マニピュレータ1が防錆紙6をめくる際の動作について説明する。なお、以下で説明するマニピュレータ1の動作は、例えば制御装置(図示省略)により制御される。
まず、箱5が箱載置台161の上面に搬送されると箱旋回装置16が作動して、箱載置台161が図2Aに二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に旋回する。そして、箱載置台161とともに箱5が旋回して図2Aに示す状態となる。
次に、エアシリンダ11が作動して、旋回板部12が図2Aに示す第一状態(つまり、第一位置)から図2Bに示す第二状態(つまり、第二位置)まで旋回する。この状態では、抑え装置22は、図2Aおよび図3Aに示す第一位置に位置している。即ち、旋回板部12が第一状態(つまり、第一位置)から第二状態(つまり、第二位置)まで旋回する際、抑え装置22は作動していない。
具体的には、シリンダ部111の第一シリンダ空間への圧縮空気の供給にともない、ピストン部112および上下動テーブル113が上方へ変位する。そして、上下動テーブル113の上方への変位にともない、旋回板部12は上方に変位した後、図2Aの矢印gの方向に旋回する。
より具体的には、先ず、一対のガイドローラ122a、122bが、一対の旋回支持板10a、10bのガイド溝101のうち直線溝部101aに案内されることにより、旋回板部12が上方に変位する。
その後、一対のガイドローラ122a、122bが円弧溝部101bに進入すると、一対のガイドローラ122a、122bが円弧溝部101bに案内されて、旋回板部12は図2Aの矢印gの方向に旋回する。
なお、旋回板部12の側板部121a、121bが旋回規制部102に当接するまで、旋回板部12は図2Aの矢印gの方向に旋回する。
上述のような旋回板部12の旋回にともない、第一保持部131の吸盤部131cおよび第二保持部132の吸盤部132dが、箱5の外から内に(具体的には、箱5よりも後上方の外部空間から箱5の内部空間に)進入する(図2B参照)。
この状態で、吸引装置が作動しているため、第二保持部132は吸着力(換言すれば、保持力)を発揮している。従って、吸盤部131cおよび吸盤部132dが箱5内の防錆紙6の上面に吸着する。換言すれば、箱5内の防錆紙6の上面が吸盤部131cおよび吸盤部132dに保持される。
なお、図2Bに示す第二状態において、第二保持部132は箱5の中のワークWの上端との当接に基づいて基端側に押圧される。この押圧に基づいて、第二保持部132は基端側に変位する。この際、第二状態のコイルバネ132eは第一状態よりも収縮する。この結果、突き当て部材132bと一対の延在板部124a、124bの後面との間に隙間が形成される。
次に、吸盤部131cおよび吸盤部132dが防錆紙6の上面に吸着した状態で、シリンダ部111の第二シリンダ空間に圧縮空気が供給されると、ピストン部112および上下動テーブル113が下方へ変位する。このような上下動テーブル113の下方への変位にともない、旋回板部12は図2Aの矢印hの方向に旋回した後、下方に変位する。
具体的には、先ず、一対のガイドローラ122a、122bがガイド溝101のうち円弧溝部101bに案内されることにより、旋回板部12は図2Bの矢印hの方向に旋回する。その後、一対のガイドローラ122a、122bが直線溝部101aに進入すると、一対のガイドローラ122a、122bが直線溝部101aに案内されて、旋回板部12が下方に変位する。
なお、調節ボルト142a、142bの頭部143a、143bが下側ロッド141a、141bの上面に当接するまで、旋回板部12は下方に変位する。そして、旋回板部12は図2Aに示す第一状態(つまり、第一位置)となる。
上述のような第二状態から第一状態への旋回板部12の旋回にともない、吸盤部131cおよび吸盤部132dに吸着した防錆紙6が、箱5内のワークWの上から箱5よりも後方の外部空間にめくられる。即ち、箱5内のワークWの上方を覆う防錆紙6は、図4Bに示す状態から図4Cに示す状態となる。
第一保持部131および第二保持部132が第一位置(つまり、図4Cに示す位置)にある状態で、抑え装置22が作動して、抑え装置22の旋回抑え部225が上記旋回開始位置から抑え位置に旋回する。
なお、第一保持部131および第二保持部132の位置を検出する位置検出部(図示省略)は、例えば、旋回中心孔126a、126bと旋回中心軸19a、19bとの間の軸受に設けた回転センサ(例えば、ロータリーエンコーダなど)により構成できる。また、位置検出部は、第一保持部131および第二保持部132を撮影するカメラと画像処理部とで構成されてもよい。また、位置検出部はエアシリンダ11に設けた変位センサにより構成してもよい。何れにしても位置検出部は、検出した第一保持部131および第二保持部132に関する位置情報を図示しない制御装置に出力する。
上述のような位置検出部により検出された第一保持部131および第二保持部132に関する位置情報に基づいて、上記制御装置が所定のタイミングで抑え装置22を作動する。本実施形態の場合、上記制御装置は、第一保持部131および第二保持部132が第一位置にある状態で、抑え装置22を作動する。
抑え装置22が作動すると、抑え装置22における旋回抑え部225が、上記旋回開始位置(図2Aおよび図3Aに示す位置)から上記抑え位置(図3Bおよび図4Dに示す位置)まで旋回する。
そして、抑え直線部226aおよび一対の側方線部226bが、保持部13の吸盤部131cおよび吸盤部132dに保持された防錆紙6に保持部13と反対側から(図2A乃至図3Cの矢印iで示す方向から)当接する。この結果、保持部13と保持部13に正対した一対の側方線部226bとにより防錆紙6が挟持されて、図3Bおよび図4Dに示すマニピュレータ1の第三状態となる。
第三状態では、保持部13と抑え装置22とにより防錆紙6が挟持されているため、吸引装置20は作動を停止してもよい。なお、第三状態において、吸引装置20は作動を続けてもよい。
第三状態において、抑え直線部226aと防錆紙6との間には緩衝部材227が存在している。このため、抑え直線部226aが防錆紙6に当接する際の衝撃が、緩衝部材227により吸収される。
抑え直線部226aが防錆紙6に当接する際、抑え直線部226aから防錆紙6に箱5から離れる方向の力(つまり、後方への力)が作用する。当該方向の力を防錆紙6に作用させることにより、防錆紙6のうち箱5内において最も後方に配置されたワークWを覆う部分が、効果的にめくられる。この結果、箱5内において最も後方に配置されたワークWが露出されて、次工程で当該ワークWを取り出し易くできる。
なお、防錆紙6は、次工程で箱5内のワークWを取り出している間、図4Cに示す状態(つまり、めくられた状態)で保持される。換言すれば、次工程で箱5内のワークWを取り出している間、吸盤部131cおよび吸盤部132dは防錆紙6を図4Cに示す状態(つまり、めくられた状態)で保持できる。つまり、本実施形態のマニピュレータ1は、一つの箱5に対して、上述のような防錆紙6をめくる動作を一度だけ行う。そして、マニピュレータ1は、防錆紙6をめくった状態を維持する。
本実施形態の場合、防錆紙6がめくられるとともに、コイルバネ132eの弾性力に基づいて第二保持部132が先端側に変位する。換言すれば、第二保持部132が図2Aに示す第一状態から図2Bに示す第二状態に変位する。このため、第二保持部132が防錆紙6を引っ張る力を和らげながら防錆紙6をめくることができる。第二保持部132は、突き当て部材132bが延在板部124a、124bの後面に当接して止まる。
なお、図4Cに示す状態で、箱5内のワークWのうち最も後方のワークWが露出するように、前後位置調節部15により可変載置台17の前後方向位置が予め調整されている。換言すれば、前後位置調節部15により第一状態(つまり、第一位置)における旋回板部12の前後位置が予め調整されている。
ステップS3において、箱載置台161に置かれた箱5の中の防錆紙6をめくった後、ステップS4において、ワーク供給ロボット(図示省略)により、箱5の中からワークWを取り出す。
そして、ステップS5において、上記ワーク供給ロボットが、ワークWを次工程(例えば、組付け工程)に供給する。
[1.5 付記]
旋回板部12を旋回させるための構造は、本実施形態の場合に限定されない。また、箱旋回装置16を省略して、箱5を水平に配置された載置台の上に置いた状態で、箱5の中の防錆紙6をめくるようにしてもよい。
旋回部を旋回させるアクチュエータは、上述のエアシリンダ11に限定されない。旋回部を旋回させるアクチュエータは、例えば、油圧式アクチュエータあるいはソレノイド式アクチュエータなどでもよい。箱旋回装置16に関しても同様に、箱載置台161を旋回させるアクチュエータは、上述の箱旋回エアシリンダ162に限定されない。箱載置台161を旋回させるアクチュエータは、例えば、油圧式アクチュエータあるいはソレノイド式アクチュエータなどでもよい。また、アクチュエータが旋回支持部を兼ねるような構成としてもよい。
また、抑え部は本実施形態のような旋回式のものに限定されない。例えば、所定の変位開始位置から抑え位置に直線的に変位する抑え部により構成することもできる。
[1.6 実施形態1の作用・効果]
本実施形態によれば、上述のような動作により箱5内のワークWの上方を覆う防錆紙6を自動でめくることができる。このため、生産ラインの自動化を進めることが可能となる。