JP2018130883A - インクジェット方法 - Google Patents

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Hiroshi Takiguchi
宏志 瀧口
将明 安▲藤▼
Masaaki Ando
将明 安▲藤▼
景多▲郎▼ 中野
Keitaro Nakano
景多▲郎▼ 中野
斉 土屋
Hitoshi Tsuchiya
斉 土屋
敏行 餘田
Toshiyuki Yoda
敏行 餘田
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Abstract

【課題】放射線硬化型組成物を用いたインクジェット方法であって、放射線硬化型組成物の保存安定性を良好に保ち、かつ吐出安定性に優れたインクジェット方法を提供すること。
【解決手段】放射線硬化型組成物を加温する加温工程と、加温工程により加温された放射線硬化型組成物を超音波処理する超音波処理工程と、超音波処理工程を経た放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドから吐出して付着対象へ付着させる付着工程と、を備える、インクジェット方法。
【選択図】図5

Description

本発明は、インクジェット方法に関する。
インクジェット方式の記録又は造形(以下単に「記録」ということがある。)において、高い耐水性、耐溶剤性、及び耐擦性などを有する画像や構造体(以下単に「記録物」ということがある。)を記録するため、放射線を照射すると硬化する、放射線硬化型組成物(以下「インク」とも呼ぶ。)が使用されることがある。係る放射線硬化型組成物は、少なくとも重合性化合物、及び、重合開始剤を含んで構成され、必要に応じて着色材(顔料等の色材)を含んで構成される。
インク組成物には、溶存気体や微小な気泡が意図せずに混入する場合がある。溶存気体や微小な気泡は、インクジェットヘッドのインク組成物の流路において無視できない程度の大きさの気泡に成長することがあり、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出を不安定化させることがある。
このような溶存気体や微小な気泡の除去を意図して、例えば、特許文献1には、インクに超音波脱気を施す液体吐出装置が開示されている。また、特許文献2には、インクが流入する脱気室と、液体を通さない分離膜を介して当該脱気室に接する減圧室と、を備えた減圧脱気機構を有するインクジェット装置が開示されている。さらに、特許文献3には、加温後のインクを気体透過性のある中空糸膜モジュールに通して、インクを脱気する方法が開示されている。
特開2012−016824号公報 特開2013−240980号公報 特開2003−253169号公報
溶存気体や微小な気泡は、インクジェットヘッドの流路において一定以上の程度の大きさの気泡を発生させる原因の一つと考えられる。特許文献1に記載されたインクの超音波処理は、気泡を揺動させることにより、流路形成部材等に貼り付いた気泡を揺動、流動させることによって気泡を除去していると考えられる。一方、特許文献2、3に記載された気体透過膜では、気泡を移動させて除去する作用よりも、インク中に溶存している気体を直接除去する作用が主体であると考えられる。
一方、放射線硬化型組成物は、インクジェットヘッドからの吐出時に、粘度を下げる目的で加温される場合がある。そのような場合には、放射線硬化型組成物中の溶存気体や微小な気泡をあらかじめ除去していたとしても、加温の際に、残存した溶存気体が気泡となったり、残存した微小な気泡が成長したりしやすい。また、気泡は、その核となる部分(気泡核)から成長しやすいと考えられており、例えば、特許文献2では、当該気泡核は、重合開始剤の表面に存在することを示唆している。しかし、発明者らの検討によれば、放射線硬化型組成物にある種の顔料が含有している場合には、係る顔料にも気泡核が存在する可能性があることが分かってきた。
他方、放射線硬化型組成物は、重合開始剤を含むことから、保存中に重合開始剤が徐々に活性化して重合が進み、粘度が上昇して吐出性能が低下する場合があり、保存安定性を確保することが重要である。このことは、発明者らの検討により、放射線硬化型組成物を製造の際にあらかじめ脱気して保存すると、製造時に脱気しないで保存する場合に比べて粘度が上昇しやすいことが分かってきている。このことから放射線硬化型組成物中の溶存気体は、重合開始剤の活性化を抑制して、保存安定性を高めることに寄与していることが示唆される。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、放射線硬化型組成物を用いたインクジェット方法であって、放射線硬化型組成物の保存安定性を良好に保ち、かつ吐出安定性に優れたインクジェット方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係るインクジェット方法の一態様は、
放射線硬化型組成物を加温する加温工程と、
前記加温工程により加温された放射線硬化型組成物を超音波処理する超音波処理工程と、
前記超音波処理工程を経た放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドから吐出して付着対象へ付着させる付着工程と、
を備える。
このようなインクジェット方法によれば、放射線硬化型組成物を加温することにより、積極的に気泡を発生させ、係る気泡を超音波処理により効率よく取り除くことができ、その状態で付着対象に対してインクジェットヘッドから吐出させて付着対象に付着させることができる。これにより、インクジェットヘッドの流路に気泡を発生させにくく、気泡による吐出の不具合を低減できので、吐出安定性を良好とすることができる。また、係るインクジェット方法によれば、放射線硬化型組成物に気体を溶存させた状態で保存することができ、その状態で使用することができる。そのため、放射線硬化型組成物の保存安定性も良好とすることができる。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度は30℃以上50℃以下であってもよい。
このようなインクジェット方法によれば、気泡を効率的に発生させて、超音波処理により除去できるとともに、放射線硬化型組成物の粘度を適度に低下させることができる。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記超音波処理工程の時間は、10秒以上60秒以下であってもよい。
このようなインクジェット方法によれば、気泡をより効果的に取り除くことができ、かつ、記録のスループットをより良好にすることができる。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記超音波処理工程の後、前記放射線硬化型組成物を減圧処理する脱気工程をさらに備えてもよい。
このようなインクジェット方法によれば、インクジェットヘッドから吐出される前に、組成物中の溶存気体をさらに減少させることができるので、インクジェットヘッドの流路における気泡の発生をさらに低減させることができる。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記放射線硬化型組成物が、単体で固体である重合開始剤、及び、顔料の少なくともいずれかを含んでもよい。
このようなインクジェット方法によれば、放射線硬化型組成物が、気泡核を生じやすい、単体で固体である重合開始剤、及び、顔料の少なくともいずれかが含まれているにもかかわらず、発生した気泡を効率的に除去できる。すなわち、気泡による不具合を低減し吐出安定性を良好とする効果がより顕著である。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記放射線硬化型組成物が、顔料を含み、当該顔料の一次粒子のアスペクト比が2.5以上であってもよい。
このようなインクジェット方法によれば、放射線硬化型組成物に、より気泡核を生じやすい、アスペクト比が2.5以上の一次粒子を有する顔料が含まれ、気泡がさらに発生しやすいとしても、発生した気泡を効率的に除去できるので吐出安定性を良好とする効果が一層顕著である。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記放射線硬化型組成物が、重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系化合物、及び、チオキサントン系化合物の少なくともいずれかを含有してもよい。
このようなインクジェット方法によれば、放射線硬化型組成物に、溶解しにくいことにより、さらに気泡核を生じやすい重合開始剤が含まれ、より気泡が発生しやすいとしても、発生した気泡を効率的に除去できるので、吐出安定性を良好とする効果が一層顕著である。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記超音波処理工程が、前記放射線硬化型組成物を流動させた状態で行われてもよい。
このようなインクジェット方法によれば、超音波処理により顔料等の固体表面から離れた(剥離された)気泡を流動によって移動させることができるので、さらに気泡を除去しやすい。
本発明に係るインクジェット方法において、
前記放射線硬化型組成物を収容した収容体と、インクジェットヘッドと、放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドへ供給する流路と、を備えるインクジェット装置を用いて行われ、前記流路が前記放射線硬化型組成物を循環させる循環路を形成し、前記循環路において前記超音波処理工程が行われてもよい。
このようなインクジェット方法によれば、固体表面から離れた(剥離された)気泡を循環路における流動によって移動させることができ、かつ、循環により繰り返し超音波を照射するので、さらに気泡を効率的に除去することができる。
インクジェット装置の全体構成の一例を示すブロック図。 インクジェット装置のヘッドを模式的に示す分解斜視図。 インクジェット装置のヘッドの要部の断面の模式図。 実施形態のインクジェット方法に用いるプリンタを模式的に示す斜視図。 実施形態のインクジェット方法に用いるプリンタの要部の模式図。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
また以下では、本発明の一実施形態に係るインクジェット方法に用いる放射線硬化型組成物、インクジェット方法の各工程、及び、付着対象について説明した後、インクジェット方法に好適なインクジェット装置等について説明する。
1.放射線硬化型組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット方法に用い得る放射線硬化型組成物(以下、単に「組成物」、「インク」等と称することもある。)について説明する。ここでは係る放射線硬化型組成物が重合性化合物(モノマー)を主成分として含む態様について説明するが、本実施形態で使用可能な放射線硬化型組成物としては、水系放射線硬化型組成物や、溶剤系放射線硬化型組成物であってもよい。なお、水系放射線硬化型組成物とは、溶媒成分として、水を主要な成分として含有する組成物であり、組成物に含まれる水の含有量が全質量に対して、例えば、50質量%以上である組成物をいう。また、溶剤系放射線硬化型組成物とは、有機溶剤などの溶剤を主要な成分として含み、溶媒成分として水を主要な成分としない硬化型の組成物であり、有機溶剤等の溶剤の含有量は80質量%以上である組成物をいう。
また、本明細書では「放射線硬化型」の一態様として「紫外線硬化型」、「光硬化型」などと記載する場合があるが、本実施形態において放射線硬化型組成物は放射線を照射することにより硬化するものであればよく、紫外線硬化型や光硬化型を放射線硬化型と読み替えてもよい。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、エックス線、これらの中間的な波長の光線、及び、これらの光線が重畳した光線などが挙げられる。放射線としては、放射線源が入手しやすく広く用いられている点、及び紫外線の放射による硬化に適した材料(開始剤等)が入手しやすい点から、紫外線がより好ましい。
本実施形態で用いる放射線硬化型組成物は、モノマー(重合性化合物)と、重合開始剤と、を含有し、必要に応じて顔料やその他の成分を含有する。以下、放射線硬化型組成物に含まれる成分及び含まれ得る成分について説明する。
1.1.重合性化合物(モノマー)
放射線硬化型組成物は重合性化合物を含む。重合性化合物は、単独で又は重合開始剤の作用により、放射線を照射することにより重合して硬化することができる。重合性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、従来公知の、単官能のモノマー、2官能及び3官能以上の多官能のモノマー、並びにオリゴマーが使用可能である。重合性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下これら重合性化合物について例示する。
重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸;該不飽和カルボン酸の塩;該不飽和カルボン酸のエステル、ウレタン、アミド及び無水物;アクリロニト
リル、スチレン等の、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタン等が挙げられる。また、単官能、2官能、又は3官能以上のオリゴマーとしては、特に限定されないが、例えば、直鎖アクリルオリゴマーなどの上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、エポキシ(メタ)アクリレートとは、不飽和カルボン酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られる化合物のことをいう。この反応において、エポキシ化合物のエポキシ基が開環して不飽和カルボン酸とエステル結合を生じて結合する。また、「(メタ)アクリレート」との表現は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」との表現は、アクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
また、放射線硬化型組成物は、重合性化合物として、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては、これらの中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、単官能(メタ)アクリレートとしては、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。
なお、以下の芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、後述するビニルエーテル基を含有する単官能(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート等)と重複して例示するものがある。
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートは、芳香環骨格を有し、かつ、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を一分子中に1個有する化合物である。芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、以下に限定されないが、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(PEA)、アルコキシ化2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)ア
クリレートが挙げられる。これらの市販品としては、例えば、ビスコート#192(大阪有機化学工業社製、商品名、フェノキシエチルアクリレート)、SR340(フェノキシエチルメタクリレート)、SR339A(フェノキシエチルアクリレート)、SR504(エトキシ化ノニルフェニルアクリレート)、CD614(アルコキシ化ノニルフェニルアクリレート)、及びCD9087(アルコキシ化2−フェノキシエチルアクリレート)(以上、全てサートマー社製商品名)が挙げられる。
これらの中でも、下記の一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物のうち少なくともいずれかがより好ましい。
CH=CR−COOR−Ar ・・・(I)
CH=CR−COO−Ar ・・・(II)
(上記式(I)及び(II)中、Rは水素原子又はメチル基である。上記式(I)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子がRで表される基に結合している1価の有機残基であり、またRは炭素数1〜4の2価の有機残基である。上記式(II)中、芳香環骨格を表すArは、少なくともアリール基を1個有し、当該アリール基を構成する炭素原子が当該式中の−COO−に結合している1価の有機残基である。)
上記の一般式(I)において、Rで表される基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分枝状、又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、並びに構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく挙げられる。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基、並びにオキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数1〜4のアルキレン基が好適に用いられる。上記有機残基が置換されていてもよい基である場合、置換基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、アルコキシ基、水酸基、及びハロ基が挙げられ、置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。
上記の一般式(I)及び(II)において、Ar(アリール)(芳香環骨格)に少なくとも1個含まれるアリール基としては、限定されないが、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。アリール基の数は1以上であり、好ましくは1又は2である。アリール基は、当該基を構成する炭素原子のうち、式(I)中のRで表される有機残基に結合する炭素原子、式(II)における−COO−に結合する炭素原子、及びアリール基を複数有する場合にはアリール基同士を結び付ける炭素原子、以外の炭素原子に置換されていてもよい。置換されている場合、アリール基1個当たりの置換数は1以上であり、好ましくは1又は2である。置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基及びアルコキシ基、カルボキシル基、ハロ基、並びに水酸基が挙げられる。
以下、一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物を、単に「式(I)の化合物」及び「式(II)の化合物」と記載することがある。
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することにより、後述する重合開始剤の溶解性が良好となる傾向があり、硬化性が向上する傾向があるため好ましい。特に、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤やチオキサントン系重合開始剤を用いる場合にその溶解性が良好となる傾向がある。芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートの中でもフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましいが、臭気がより低いことからフェノキシエチル(メタ)アクリレートがさらに好
ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、ビニルエーテル基を含有するものも挙げられる。ビニルエーテル基を含有する単官能(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(III)で表される化合物を含有することが好ましい。
CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(III)
(式(III)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2〜20の2価の有機残基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
以下、一般式(III)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートを、単に「式(III)の化合物」と記載することがある。
本実施形態に係る組成物が式(III)の化合物を含有することにより、組成物の硬化性を優れたものとすることができる。また、式(III)の化合物を含有することにより、組成物の粘度を低く抑えやすい。さらに、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリル基を有する化合物を別々に使用するよりも、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリル基を一分子中に共に有する化合物を使用する方が、組成物の硬化性を良好にする上で好ましい。
上記一般式(III)において、Rで表される炭素数2〜20の2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。さらに、放射線硬化型インクジェット組成物を、より低粘度化でき、かつ、硬化性をさらに良好にする観点から、R2が、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基となっている、グリコールエーテル鎖を有する化合物がより好ましい。
上記一般式(III)において、Rで表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
式(III)の化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリ
ル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、メタアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、放射線硬化型組成物をより低粘度化でき、引火点が高く、かつ、インクジェット組成物の硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、即ち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルは、いずれも単純な構造であって分子量が小さいため、放射線硬化型組成物を顕著に低粘度化することができる。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。なお、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルの方が、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルに比べて硬化性の面で優れている。
2官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトール骨格若しくはジペンタエリスリトール骨格を有する3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、放射線硬化型組成物には、多官能(メタ)アクリレートを単官能(メタ)アクリレートに加えて含むことがより好ましい。
2官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、放射線硬化型組成物の総質量(100質量%)に対して、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。上記好ましい範囲とすることにより、硬化性・保存安定性・吐出安定性・記録物の表面光沢により優れる。
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物は単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。この場合、放射線硬化型組成物が低粘度となり、重合開始剤その他の添加剤の溶解性に優れ、かつ、インクジェット記録時の吐出安定性が得られやすい。さらに硬化膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性が増すため、単官能(メタ)アクリレート及び2官能(メタ)アクリレートを併用することがより好ましく、中でもフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを併用することがさらに好ましい。
上記重合性化合物の含有量は、放射線硬化型組成物の総質量(100質量%)に対し、合計で5質量%以上95質量%以下が好ましく、15質量%以上90質量%以下がより好ましい。重合性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、粘度及び臭気を低減させることができるとともに、重合開始剤の溶解性及び反応性・記録物の表面光沢をさらに優れたものとすることができる。
1.2.重合開始剤
放射線硬化型組成物は、重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤としては、放射線を照射することによってラジカルやカチオンなどの活性種を発生し、上記重合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。
重合開始剤は、単体で固体であるものを使用する場合、重合開始剤としての機能が優れたものである反面、本実施形態が特に有用となる点で好ましい。単体で固体である重合開始剤としては、融点が常温(25℃)より高い重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤としては、紫外線、赤外線、可視光線等の放射線によって活性種を生じる種の、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。なお、放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、かつ、照射部のコストを抑えることができる。したがって、重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン系化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも特に硬化性が良好という観点から、アシルホスフィンオキサイド系化合物及びチオキサントン系化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド系化合物及びチオキサントン系化合物を併用することがより好ましい。
また、アシルホスフィンオキサイド系化合物及びチオキサントン系化合物は、放射線硬化型組成物に配合される際に、重合性化合物や溶剤の種類及び組成によっては、溶解しにくい場合がある。一例として、アシルホスフィンオキサイド系化合物及びチオキサントン系化合物は、単体で固体であり、溶解しにくい場合があり、溶存気体等の気泡化における気泡核となりやすい。しかし、本実施形態のインクジェット方法では、アシルホスフィンオキサイド系化合物又はチオキサントン系化合物が気泡核を生じやすい場合であっても、発生する気泡を超音波処理により十分に除去することができる。そのため、本実施形態のインクジェット方法は、アシルホスフィンオキサイド系化合物及びチオキサントン系化合物の少なくともいずれかが放射線硬化型組成物に配合された場合に、より顕著な効果が得られると言える。放射線硬化型組成物に含まれる重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド系化合物及び/又はチオキサントン系化合物である場合には、アシルホスフィンオキサイド系化合物の含有量は、放射線硬化型組成物の総質量に対して2質量%以上であることが好ましい。同様に、チオキサントン系化合物の含有量は、放射線硬化型組成物の総質量に対して1質量%以上であることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASFジャパン社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬株式会社製)、ユベクリルP36(UCB社製)、Speedcure TPO(ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド)、Speedcure TPO(ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド)(以上、Lambson社製)などが挙げられる。
光によってカチオン(酸)を発生する光重合開始剤(光カチオン重合開始剤)としては、アリールスルホニウム塩やアリールヨードニウム塩等のオニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニウムアセトフェノン誘導体等のスルホン酸を発生する開始剤、鉄−アレン錯体等のアレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。光カチオン重合開始剤の具体例としては、アリールスルホニウム塩誘導体としては、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172等が挙げられ、アリールヨードニウム塩誘導体としてはローディア社製のRP−2074等が挙げられ、アレン−イオン錯体誘導体としてはチバガイギー社製のイルガキュア261等が挙げられる。
重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の含有量は、放射線硬化型組成物の総質量に対して、合計で0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が前記範囲であれば、放射線を照射した際の組成物の硬化速度が十分大きく、かつ、重合開始剤の溶け残りや重合開始剤に由来する着色が少ない。
なお、重合性化合物として、それ自体が光重合性を有する化合物を用いる場合には、重合開始剤の添加を省略することが可能である。しかし、重合開始剤を用いた方が、重合の
開始タイミングをより容易に調節することができるのでより好適である。
1.3.色材
本実施形態に係るインクジェット方法に用いる放射線硬化型組成物は、色材を含有してもよい。色材としては、顔料及び染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。色材は、顔料及び染料から選択され得るが、耐光性の観点から顔料を使用することがより好ましい。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタン(例えば、NanoTek(R)Slurry、シーアイ化成株式会社製)を使用することができる。
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
色別にいえば、ブラック用として使用される無機顔料として、カーボンブラックが挙げられる。ホワイト顔料としてはC.I.ピグメントホワイトで呼ばれる顔料が、イエロー顔料としてはC.I.ピグメントイエローで呼ばれる顔料が、マゼンタ顔料としてはC.I.ピグメントレッドやC.I.ピグメントバイオレッドで呼ばれる顔料が、シアン顔料としてはC.I.ピグメントブルーで呼ばれる顔料が、その他の色の顔料として、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントグリーン、C.I.ピグメントブラウンなどが挙げられる。
さらに詳しく言えば、カーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200Bなど(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700など(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400など(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special
Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
ホワイト顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
イエロー顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアン顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、C.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態においては、上記に挙げた顔料以外にも分散染料や油溶性染料等の水に不溶又は難溶の染料も好適に使用することができる。また、放射線硬化型組成物に顔料を含有させる場合には、分散剤又は界面活性剤で適宜の媒体中に分散させた顔料分散液を用いることができる。
顔料を使用する場合、顔料の最大粒子径は2.5μm以下であり、2.0μm以下であることが好ましく、1.7μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、本明細書において、顔料の最大粒子径とは、顔料の一次粒子が凝集あるいは結合して粗大粒子化した粒子の最大粒子径を意味している。したがって顔料の一次粒子の平均粒子径とは異なるものである。最大粒子径は、例えば、凝集粒子などの粗大粒子の状態を測定可能な装置である、個数カウント方式の粒度分布計 アキュサイザー(株式会社ピーエスエスジャパン製)を用いて測定することができる。本実施形態において一次粒子は、放射線硬化型組成物の調製後に長期の保管中や使用中に顔料粒子同士が凝集や結合して粗大粒子化したものではなく、放射線硬化型組成物を調製した時点の粒子をいう。また、粗大粒子は放射線硬化型組成物の調製後の長期の保管中や使用中に顔料粒子同士が意図しない凝集や結合により粗大粒子化してしまったものをいい、粗大粒子を含む粒子の平均粒子径を二次粒子径という。
最大粒子径の測定方法は、以下に限らないが、例えば、インクサンプルを、測定に適した溶剤を用いて、測定に適した濃度に希釈し、光遮法による個数カウント方式の装置を用
いて行うことができ、例えば、インクサンプルを、EDGAC(エチルジグリコールアセテート)で3000倍に希釈し、アキュサイザー780APS(株式会社ピーエスエスジャパン製)に希釈したサンプルを20ml投入して下記の条件で測定することができる。
<アキュサイザー条件>
・注入サンプル量:20ml
・流速:1ml/s
・チャンネル数:128
・測定原理:光遮_法による個数カウント方式
・最大粒子径の定義:粗大粒子数が、400個/20mlを超えた時点のサイズを最大粒子径として定義。
また、顔料には、一次粒子のアスペクト比が2.5以上であり、かつ、顔料の一次粒子の平均粒子径(D50)が170nm以上であるものも使用できる。そのような顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 155や、C.I.ピグメントイエロー 128、C.I.ピグメントレッド 122等の一次粒子が直方体状である顔料があげられる。なお、C.I.ピグメントイエロー 155は、一次粒子のアスペクト比が4.5であり、一次粒子の平均粒子径(D50)は235nmである。
また、本明細書において、顔料の一次粒子のアスペクト比は、(長軸の長さ)/(短軸の長さ)の比で算出される個々の顔料の一次粒子のアスペクト比の平均値である。具体的には、顔料粉体をTEM(透過型電子顕微鏡)やSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、個々の顔料粒子の画像を取得する。そして、取得した個々の顔料粒子の画像の重心から、角度0°から179°の範囲を間隔1°で粒子径(直径)を計測し、計測された180個の粒子径の最大値を長軸の長さ、最小値を短軸の長さとして、個々の顔料の一次粒子のアスペクト比を得る。また、アスペクト比の平均値は、この様にして得た50個以上の顔料粒子のアスペクト比の値の平均値を用いる。
さらに、本明細書において、顔料の一次粒子の平均粒子径(D50)は、動的光散乱法による体積基準の累積50%の体積平均粒子径(D50)を意味し、以下のようにして得られる値である。分散媒中の粒子に光を照射し、当該分散媒の前方・側方・後方に配置されたディテクターによって、発生する回折散乱光を測定する。前記測定値を利用して、当該粒子の体積と等しい球に換算された粒子集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その際の累積値が50%となる点を50%平均粒子径(D50)として得られる。
一次粒子のアスペクト比が2.5以上の長方形形状を有するような顔料は、顔料間の相互作用が高いため分散しにくく、凝集などにより粗大粒子化しやすい。そのため、凝集した場合の複数の一次粒子の間には、微細な空間(微小な気泡)が生じやすい。係る空間は、放射線硬化型組成物における気泡核となりやすい。逆に、一次粒子のアスペクト比が2.5以上の長方形形状を有するような顔料は、顔料分散時にアスペクト比を低くする必要がなく分散工程の設計の自由度を高くすることができるという利点がある。この観点からは、一次粒子のアスペクト比は、3以上10以下が好ましく、3.5以上7以下がより好ましく、4以上6以下がさらに好ましい。数種類の顔料についてアスペクト比を測定したところ、2.5以上の顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー 155や、C.I.ピグメントイエロー 128、C.I.ピグメントレッド 122がある。
一次粒子のアスペクト比が2.5以上の長方形形状を有するような顔料を用いる際には、微細な空間(微小な気泡)の存在により、溶存気体の気泡化における気泡核となりやすい。しかし、本実施形態のインクジェット方法では、一次粒子のアスペクト比が2.5以上の長方形形状を有する顔料を用いて気泡核を生じやすい状況であっても、発生する気泡
を十分に除去することができる。そのため、本実施形態のインクジェット方法は、一次粒子のアスペクト比が2.5以上の長方形形状を有するような顔料が放射線硬化型組成物に配合された場合に、より顕著な効果が得られると言える。
なお、粗大粒子化しやすい顔料を用いた場合においても、粗大粒子化した粒子の最大粒子径が2.5μm以下となるように制御することにより、吐出不良を低減させてより吐出安定性に優れるインクジェット方法を提供できる。例えば、放射線硬化型組成物の調製時に、フィルターによってろ過する際に、孔径1.5μm以下のフィルターを使用したり、遠心分離などをすることにより行うことで、粗大粒子化した粒子の最大粒子径を2.5μm以下とすることができる。なお顔料の平均粒径(二次粒径)は、限るものではないが例えば、10nm以上2μm以下、好ましくは100nm以上1.5μm以下、より好ましくは200nm以上1μm以下である。また、顔料粒子の上記の一次粒子の平均粒子径(D50)は、10nm以上500nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましく、100nm以上270nm以下がさらに好ましく、200nm以上250nm以下が特に好ましい。
他方、一次粒子のアスペクト比が1.0以上2.5未満の範囲内にある顔料は、顔料の粒子の形状が擬球状であるため、顔料間の相互作用(凝集引力)が低下し、吐出の際に、ノズルでのフロキュレーション(凝集)による吐出不安定の発生を抑制できる。また、顔料がインク中で安定して分散されるため、顔料の凝集による組成物の粘度の上昇が抑えられ、インクの保存安定性及び吐出安定性に優れる。さらに、顔料の一次粒子の平均粒子径(D50)は170nm未満である場合には、顔料の凝集による粗大粒子化が起こりにくい。具体的な一例として、C.I.ピグメントイエロー 180は、一次粒子のアスペクト比が2.1程度であることが分かっている。
本実施形態の放射線硬化型組成物に色材を含有させる場合は、色材の合計の添加量は、0.1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上7質量%以下である。含有量がこの程度であれば、硬化物(記録物)の発色性や硬化性を両立させることができる。
1.4.界面活性剤
本実施形態に係る放射線硬化型組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤(BYK350(ビックケミー・ジャパン社製商品名))が挙げられる。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤を含むことにより、表面張力低下能に優れ、記録媒体に対する濡れ性を上げ、ベタ埋まりにより優れ、また表面張力を調整しやすい。
界面活性剤は、単独又は複数種を用いることができる。界面活性剤の含有量は、放射線硬化型組成物の総質量(100質量%)に対し、合計で0.01質量%以上2質量%であることが好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が係る範囲にあることにより、記録媒体への濡れ性により優れ、ノズルプレートの撥液性を良好に保ち、吐出安定性により優れるものとできる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。また、市販品を用いることもでき、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348、BYK UV3500、UV3570(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−
6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)が挙げられる。
1.5.分散剤
放射線硬化型組成物は、色材として顔料を選択した場合、係る顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000EL(武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、solsperse13940、20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、36000(ルーブリゾール株式会社製)、disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(ビック・ケミー社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(EFKAケミカルズ社製)、ディスパロンシリーズ(楠本化成社製)の単独、又は混合したものを挙げることができる。
放射線硬化型組成物に分散剤を含有させる場合の分散剤の合計の含有量としては、放射線硬化型組成物中の色材(特には顔料)の含有量に対して、5質量%以上200質量%以下、好ましくは30質量%以上120質量%以下であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
1.6.その他の添加剤
本実施形態に係る放射線硬化型組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
<重合禁止剤>
本実施形態に係る放射線硬化型組成物は、重合禁止剤としてヒンダードアミン化合物やその他のものをさらに含んでもよい。その他の重合禁止剤として、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ヒドロキノン、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合禁止剤の合計の含有量は、放射線硬化型組成物の総質量(100質量%)に対して、好ましくは0.05質量%以上0.5質量%、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。
<光増感剤>
本実施形態に係る放射線硬化型組成物は、光増感剤をさらに含んでもよい。光増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(
アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルフォスフィン、ナトリウムジエチルジチオフォスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)などが挙げられる。
<その他の物質>
本実施形態の放射線硬化型組成物には、上記の他に、重合促進剤、熱ラジカル重合禁止剤、湿潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、レベリング添加剤、マット剤、記録物の物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させてもよい。
1.7.物性
本実施形態に係る放射線硬化型組成物の20℃における粘度は、好ましくは25mPa・s以下であり、より好ましくは5〜20mPa・sである。組成物の20℃における粘度が前記範囲にあると、インクジェットヘッドのノズルから組成物が適量吐出され、組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット装置に好適に使用することができる。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
本実施形態に係る放射線硬化型組成物の20℃における表面張力は、好ましくは20mN/m以上30mN/m以下である。組成物の20℃における表面張力が前記範囲にあると、組成物が撥液処理されたノズルに濡れにくくなる。これにより、ノズルから組成物が適量吐出され、組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット装置に好適に使用することができる。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
2.インクジェット方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット方法は、上述の放射線硬化型組成物を加温する加温工程と、加温工程を経た放射線硬化型組成物を超音波処理する超音波処理工程と、超音波処理工程を経た放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドから吐出して付着対象へ付着させる付着工程と、を含む。
2.1.加温工程
加温工程は、放射線硬化型組成物を加温する工程である。加温工程は、放射線硬化型組成物を加熱することができる任意の手段により行われる。加温工程は、例えば、上述のインクジェット装置に設けられた加温手段により行われることができる。加温手段は、インクジェット装置におけるインクジェットヘッドへの放射線硬化型組成物の流通経路に設けられ、後述する超音波処理手段よりも上流又は超音波処理手段と一体的に設けられる。
加温工程は、超音波処理工程の前又は同時に行われる。これにより、加温工程よりも前に、及び/又は、加温工程を経た後に、発生した気泡を、その後に又は同時に行われる超音波処理工程によって除去することができる。加温工程で加温される放射線硬化型組成物の到達温度は、放射線硬化型組成物の組成、保存状態等の条件によって適宜に変更し得るが、例えば、25℃以上80℃以下、好ましくは30℃以上70℃以下、より好ましくは35℃以上60℃以下である。この程度の温度にすれば、放射線硬化型組成物中に溶存し
ている気体を気泡化することができる他、例えば、一次粒子が凝集した形態の顔料に含まれる微小な気泡を成長させることができる。また、顔料や重合開始剤が気泡核として働く場合には、係る気泡核に気泡を発生させることができる。
加温工程の処理時間は、適宜調整することができるが、上記の効果を充分得る点やスループットを良好とする点で1秒以上600秒以下、好ましくは3秒以上300秒以下、より好ましくは5秒以上120秒以下、さらに好ましくは10秒以上60秒以下である。
また、加温工程は、超音波処理工程よりも先に開始されれば、超音波処理工程の開始後も継続して行われてもよい。したがって、加温工程と超音波処理工程とは同時に行われる期間があってもよい。このようにすれば、加温工程において発生させる気泡を超音波処理工程により、効率よく除去することができる。
一方、加温工程と超音波処理工程とは逐次的に行われてもよく、その場合の加温工程が終了してから、超音波処理工程が開始されるまでの時間間隔は、特に限定されないが、0.01秒以上300秒以下、好ましくは0.1秒以上120秒以下、より好ましくは1秒以上60秒以下、さらに好ましくは1秒以上10秒以下である。この程度の時間間隔であれば、加温工程において発生させた気泡が消える前に超音波処理工程に移行することができるため、より効率よく気泡を除去することができる。
さらに、加温工程の時間、加温工程と超音波処理工程とが同時に行われる期間の有無、あるいは加温工程と超音波処理工程との間の時間間隔、等を調節することにより、超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度を変化させることもできる。このようにして調節し得る超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度は、25℃以上70℃以下、好ましくは28℃以上65℃以下、より好ましくは30℃以上60℃以下、さらに好ましくは35℃以上55℃以下である。超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度をこの程度とすることにより、放射線硬化型組成物の粘度を適度に低下させることができるとともに、さらに効率的に発生させた気泡を超音波処理により除去することができる。
加温工程は、加温を行いつつあるいは加温の前、若しくは後に、さらに他の処理を行ってもよい。係る他の処理としては、撹拌、減圧脱気などが挙げられる。例えば攪拌を行うことにより、加温の効率が向上しやすくなる場合がある。
加温工程は、例えば、ヒーターや赤外線加熱装置等の加温手段により行われることができる。これらの加温手段は、インクジェット装置に備えられてもよいし、インクジェット装置とは別体で設けられてもよい。後述するインクジェット装置とは別体の装置を利用してもよい。
2.2.超音波処理工程
本実施形態のインクジェット方法は、超音波処理工程を含む。超音波処理工程は、加温工程の後に行われる。超音波処理工程は、加温工程の開始後に開始されればよく、既述の通り加温工程と同時に行われる期間があってもよいし、加温工程の終了後に逐次的に行われてもよい。
超音波処理工程では、加温工程を経た放射線硬化型組成物に対して超音波処理を行う。超音波処理により、加温工程で発生させた気泡を除去することができる。より詳しくは、超音波処理工程では、加温工程を経た後、流路の壁面、顔料の表面、重合開始剤の表面等に発生した気泡を、音波の振動により、それらの固体表面から脱離させ、放射線硬化型組成物中に遊離させて、放射線硬化型組成物から除去する。これにより、インクジェットヘッドから放射線硬化型組成物を吐出する際に、インクジェットヘッド内でキャビテーショ
ンが発生しにくくなるため、ノズル詰まりによる吐出不良が抑制され、吐出安定性が向上する。
超音波処理工程は、例えば、放射線硬化型組成物を収容した流路や容器の中や壁面に、超音波振動子を設けて行うことができる。超音波振動子は、プローブ型であっても振動板型であってもよく、さらに流路や容器の壁面を外部から超音波振動させて行われてもよい。
超音波処理工程の処理時間は、気泡を遊離させるための時間を充分取る点や放射線硬化型組成物による記録のスループットを適度に維持する点で、1秒以上300秒以下、好ましくは2秒以上120秒以下、より好ましくは3秒以上100秒以下、さらに好ましくは5秒以上80秒以下、特に好ましくは10秒以上60秒以下、一層好ましくは10秒以上30秒以下である。
また、超音波処理工程において放射線硬化型組成物に対して照射される超音波の出力は、同様の点で、1W以上100W以下、好ましくは3W以上80W以下、より好ましくは5W以上10W以下である。超音波処理工程における超音波の周波数は、気泡の大きさ、気泡の数、装置の構成等を考慮して適宜に設定できるが、例えば、10kHz以上50kHz以下、好ましくは15kHz以上40kHz以下、より好ましくは20kHz以上30kHz以下とすることができる。このような条件のもとで超音波を印加させることにより、例えば、顔料に付着した気泡を顔料から効率よく剥がすことができる。
なお、既に述べたが、超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度は、25℃以上70℃以下、好ましくは28℃以上65℃以下、より好ましくは30℃以上60℃以下、さらに好ましくは35℃以上55℃以下である。上記範囲であることで脱気効率がより高まる点で好ましい。
さらに、超音波処理工程は、超音波を照射しつつ、又は、超音波処理の前、若しくは後に、他の処理をさらに行ってもよい。他の処理としては、撹拌、流動等が挙げられる。超音波処理工程を、放射線硬化型組成物を撹拌しながら、あるいは流動させながら行うことにより、気泡の除去をより効率的に行うことができる。特に、放射線硬化型組成物を流動させた状態で超音波処理工程が行われると、超音波処理により顔料や流路の壁面等の固体表面から離れた(剥離された)気泡を流動によって移動させることができるので、さらに気泡を除去しやすくすることができる。
2.3.付着工程
本実施形態のインクジェット方法は、付着工程を含む。付着工程は、超音波処理工程を経た放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドから吐出して付着対象へ付着させる工程である。付着工程は、超音波処理工程の後に行われる。付着工程は、超音波処理工程の後に開始されるが、加温工程と同時に行われる期間があってもよいし、加温工程の終了後に行われてもよい。さらに、付着工程は、上述の加温工程とは別に、加温されながら行われてもよい。その場合の吐出温度としては、22℃以上65℃以下、好ましくは25℃以上55℃以下、より好ましくは30℃以上50℃以下である。吐出時の粘度としては、15mPa・S以下が好ましく、5〜15mPa・S以下がより好ましい。
本工程は、インクジェット記録用ヘッド(インクジェットヘッド)のノズルから放射線硬化型組成物の液滴を吐出させて、当該液滴を付着対象に付着させることにより行われる。そして必要に応じて、適宜に放射線を照射することにより、放射線硬化型組成物の降下物からなる記録物を得ることができる。
放射線硬化型組成物を吐出させるインクジェット記録方式としては、いずれの方式でもよく、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデンマンド方式(ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式)などが挙げられる。これらのインクジェット記録方式の中でも、高精細、装置の小型化等の観点から、ピエゾ式のインクジェット記録装置を用いる方式がより好ましい。
本工程における放射線硬化型組成物の付着量は、これに限定されないが、例えば、1.5mg/cm以上6mg/cm以下、好ましくは2mg/cm以上5mg/cm以下、より好ましくは2.5mg/cm以上5.5mg/cm以下となるように付着対象に付与することが好ましい。放射線硬化型組成物の付着量が1.5mg/cmであることで、記録物の硬化性、発色性、堅牢性等が良好になる傾向にある。
2.4.その他の工程
本実施形態のインクジェット方法は、上述の工程の他、以下に説明する、脱気工程、放射線照射工程を有してもよい。また、例示は省略するが、必要に応じてその他の工程を任意の順序で付加してもよい。
2.4.1.脱気工程
脱気工程は、放射線硬化型組成物を脱気する工程であり、上記の加温工程、超音波処理工程を経た後であって付着工程の前に、放射線硬化型組成物に残存又は溶存している気体を減圧脱気することによって除去する工程である。
減圧脱気は、減圧ポンプなどを用いて、例えば、−50kPa以上−90MPa以下の減圧で行うことが好ましく、−70kPa以上−500kPa以下の減圧で行うことがより好ましい。また、減圧処理は、放射線硬化型組成物を攪拌しながら行うことが好ましい。減圧処理の処理時間は、特に限定されないが、1秒以上10分以下、好ましくは2秒以上5分以下、より好ましくは5秒以上2分以下である。この範囲であれば、記録のスループットを大きく損なうことがない。
このような脱気工程を備えることにより、放射線硬化型組成物中の溶存気体をさらに減少させることができるので、インクジェットヘッドの流路における気泡の発生をさらに低減させることができる。
2.4.2.放射線照射工程
上述の放射線硬化型組成物は、放射線が照射されることによって、硬化する性質を有している。放射線照射を行うことは必須ではないが、特に放射線硬化型組成物が重合開始剤を含有する場合には、放射線が照射されることによって、直ちに硬化が開始され、良好な硬化物を得ることができる。
また、放射線照射工程を行うことにより、所定のタイミング(放射線を照射するタイミング)で放射線硬化型組成物の硬化を開始させることができるのでより好ましい。
放射線照射工程は、上述の付着工程の後、付着対象に付着した放射線硬化型組成物に対して放射線を照射すれば、その開始タイミング、照射時間、照射回数等はいずれも任意である。
放射線硬化型組成物への放射線の照射量は、例えば、10mJ/cm以上20000mJ/cm以下であり、好ましくは50mJ/cm以上15,000mJ/cm以下の範囲である。係る範囲内における照射量であれば、短時間で十分に硬化反応を行うことができる。
また、記録物に対する放射線の照射は、インクジェット方法による記録が終了した後に、後硬化工程として別途行われてもよく、同一の装置や別体の装置により行われることができる。
3.付着対象
本実施形態のインクジェット方法において、付着工程で放射線硬化型組成物を付着させる対象としては、紙、シート、フィルム等の記録媒体、先に吐出した放射線硬化型組成物及びその他の組成物、並びに、硬化物等の物体が挙げられる。記録媒体への付着は、一般的なインクジェットプリンターと同様に、記録媒体に対向して配置されたインクジェットヘッドから、放射線硬化型組成物を吐出して行われる。また、放射線硬化型組成物やその他の組成物が付着された記録媒体に対して、さらに放射線硬化型組成物を付着させてもよい。また、本実施形態のインクジェット方法は、いわゆる3Dプリンター(三次元造形)にも適用することができ、その場合の付着対象としては、三次元的な立体形状を有する物体であり、先に吐出した放射線硬化型組成物の硬化物であってもよい。そのような物体への付着についても、該物体に対向して配置されたインクジェットヘッドから、放射線硬化型組成物を吐出して行われる。
4.インクジェット装置
本実施形態のインクジェット方法は、インクジェットヘッドから、加温工程及び超音波処理工程を経た上述の放射線硬化型組成物を吐出して、上述の付着対象に付着させて行われる。以下、本実施形態のインクジェット方法に好適なインクジェット装置の一例を説明する。
4.1.装置の概略構成
本実施形態に係るインクジェット方法に用いるインクジェット装置は、特に限定されないが、例えば、放射線硬化型組成物をノズルから吐出させる方式として、ピエゾ方式を採用したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)を備えたものを例示できる。このようなインクジェット装置は、例えば、放射線硬化型組成物を吐出するノズルと、この組成物に圧力を付与してノズルから吐出させる圧力室と、圧力室とノズルとを接続する接続部と、を備えるインクジェットヘッドを備えている。
以下、インクジェットヘッドを有する装置について、収容体(インクカートリッジやインクパック等)がキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのシリアル型のプリンター1を例に挙げて説明する。しかし、本実施形態のインクジェット方法で使用できるインクジェット装置は、オンキャリッジタイプの装置であることに限定されず、例えば、収容体(インクカートリッジやインクパック等)がキャリッジに搭載されないで外部に固定された、オフキャリッジタイプであってもよいし、ヘッドが記録媒体の幅以上の幅を有するように形成され、ヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出し、1パス印刷により記録を行うライン型の装置であってもよい。また、本実施形態のインクジェット方法で使用するインクジェット装置は、三次元形状を有する物体を造形する、いわゆる3Dプリンターであってもよい。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態に係るインクジェット方法を行うインクジェットヘッドを有する装置の一例であるプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。プリンター1はコンピューター700に電気的に接続されている。コンピューター700にはプリンタードライバーがインストールされており、プリンター1に画像等を記録させるため、当該記録に応じたデータをプリンター1に出力する。プリンター1は、搬送ユニット200、ヘッドユニット300、照射ユニット400、コントローラー500、検出器群600及びイン
ターフェイス(I/F)501を有する。外部装置であるコンピューター700から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー500によって各ユニットが制御され、印刷データに従い、記録媒体上に画像を記録する。
搬送ユニット200は、記録媒体を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。ヘッドユニット300は、記録媒体に後述するインクを噴射するためのものである。照射ユニット400は、放射線硬化型組成物を用いて記録した場合に、付着対象に着弾したインクに向けて放射線を照射するものである。付着対象上に形成されたドットは、照射ユニット400からの放射線の照射を受けることにより、硬化する。
照射ユニット400は、例えば、照射の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)や、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を備えている。各照射部は、入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
コントローラー500は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー500は、CPU502、メモリー503及びユニット制御回路504を有し、インターフェイス501を介して、外部装置であるコンピューター700とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU502は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。ユニット制御回路504は、各ユニットを制御するための回路を備える。メモリー503は、CPU502のプログラムを格納する領域や作業領域などを確保するためのものであり、RAM、EEPROMなどの記憶素子を有する。CPU502は、メモリー503に格納されているプログラムにしたがって、ユニット制御回路504を介して各ユニットを制御する。
プリンター1内の状況は検出器群600によって監視されており、検出器群600は、検出結果をCPU502に出力する。検出器群600は、例えば、ロータリー式エンコーダ(図示せず)、記録媒体検出センサ(図示せず)などが含まれる。ロータリー式エンコーダは、搬送ユニット200の搬送ドラム260(図4参照)の回転量を検出し、ロータリー式エンコーダの検出結果に基づいて、記録媒体の搬送量を検出することができる。記録媒体検出センサは、記録媒体の先端の位置を検出する。コントローラー500は、検出器群600から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
本実施形態において、プリンター1は、様々な色のインクを記録媒体に記録する(画像を形成する)ことができる。インクジェット方法としては、例えば、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色のインクを用いて画像を形成したり、白色のインクを用いて記録媒体に優れた隠蔽性を付与する下地の画像を形成したりすることが挙げられる。
図2は、プリンター1のヘッドを構成するインクジェットヘッド100を模式的に示す分解斜視図である。図3は、インクジェットヘッド100の要部の断面の模式図であり、インクの吐出動作の際のインク供給室40からノズル孔12までのインクの流れを、破線矢印で模式的に示してある。
なお、図2及び図3では、圧電素子32は簡略化して図示されている。また、本実施形態ではインクジェットヘッド100は連通板110とカバー150を備える構成であるが、図2では省略されている。
プリンター1が有するヘッドユニット300(図1参照)は、後述するインクを記録媒体に向けて吐出して記録を行うインクジェットヘッド100を備える。プリンター1は、
1色のインクにつきヘッドを1個設ける構成としてもよく、複数個設ける構成としてもよい。1色のインクにつきインクジェットヘッドを複数個設ける場合には、複数個のヘッドを記録媒体の幅方向に並べることにより例えばラインヘッドを構成してもよく、この場合、記録幅を長くすることができる。複数色のインクを用いて記録を行う場合には、プリンター1はインク毎にインクジェットヘッドを備える。インクジェットヘッドは、例えば、以下のようにして構成することができる。
図2に示すように、インクジェットヘッド100は、記録媒体(付着対象)と対向する面に複数のノズル孔12を有するノズルプレート10と、ノズルプレート10に形成された複数のノズル孔12のそれぞれに連通する複数の圧力室20と、複数の圧力室20のそれぞれの容積を変化させる振動板30と、複数の圧力室20にインクを供給するインク供給室40と、筐体130を備える。
ノズルプレート10は、インクを吐出するための複数のノズル孔12を有し、これらの複数のノズル孔12は列状に配列されており、ノズルプレート10表面にノズル面13が形成されている。ノズルプレート10に設けられるノズル孔12の数は、特に限定されない。本実施形態で用いられるインクジェットヘッド100では、ノズル孔12の列方向におけるノズル密度は、200dpi以上であることが好ましい。すなわち、配列されたノズル孔12の隣り合うノズル孔12の間隔は、127μm以下であることが好ましい。ノズル密度を200dpi以上とすることにより、液滴を微小化した場合であっても、総インク打ち込み量を維持することができる。より好ましくは、ノズル密度は240dpi以上であり、さらに好ましくは250dpi以上、より好ましくは300dpi以上、さらに好ましくは400dpi以上、もっとも好ましくは500dpi以上である。ノズル密度の上限値は、好ましくは2000dpi以下であり、より好ましくは1000dpi以下である。
ノズルプレート10の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。また、ノズルプレート10の材質としては、鉄(Fe)を主成分(50%以上)として、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金であると、剛性や錆び難さを両立できるためより好ましい。ノズルプレート10の厚みは特に限定されないが、例えば、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。
インクジェットヘッド100は、圧力室20を形成するための圧力室基板120を備え、圧力室基板120の材質としては、例えば、シリコンなどが挙げられる。図3に示すように、圧力室基板120は、ノズルプレート10との間に流路形成基板としての連通板110を備える。連通板110がノズルプレート10と圧力室基板120との間の空間を区画することにより、インク供給室40(液体貯留部)と、インク供給室40と連通する供給口126と、供給口126と連通する圧力室20と、が形成される。すなわち、インク供給室40、供給口126及び圧力室20は、ノズルプレート10、連通板110、圧力室基板120及び振動板30によって区画されている。
連通板110は、圧力室20からノズル孔12に連通する連通孔127を有する。連通板110がノズルプレート10と接触する面に形成された連通孔127の端部には、インクの吐出口128が形成されている。吐出口128は、ノズルプレート10に形成されたノズル孔12に連通している。
振動板30は圧力室基板120に接して設けられ、振動板30に接して圧電素子32が形成されている。圧電素子32は、コントローラー500中の圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)するこ
とができる。振動板30は、圧電素子32の動作によって変形し、圧力室20の容積を変化させることで圧力室20の内部圧力を変化させることができる。圧電素子32としては、特に限定されないが、例えば、電圧を印加することによって変形を生じる種の素子(電気機械変換素子)を挙げることができる。このように、本実施形態では、圧電素子32と振動板30とによって圧電アクチュエーター34が構成されている。
なお、この例では、圧力室20は、連通板110、圧力室基板120及び振動板30によって区画されているが、圧力室20は、振動板30の振動によって容積が変化され得る限り、適宜の部材によって形成されることができ、そのための部材の数、形状、材質などは任意である。また、振動板30は、圧電素子32を構成する電極(例えば、Ptなどで形成される。)と一体的であってもよい。
本実施形態において、インクジェットヘッド100は、ノズル孔12間の間隔が127μm以下であり、圧電素子32としては、2つの電極の間に圧電材料が配置された構成であることが好ましい。すなわち、圧電アクチュエーター34は、例えば、振動板30に対して、一方の電極、圧電材料(例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛))の層、及び他方の電極が順次積層された全体として薄膜状の態様であることが好ましい。
振動板30の材質についても特に限定されないが、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO)、炭化ケイ素(SiC)、及びそれらの材質からなる層の積層体などを挙げることができる。
インクジェットヘッド100は、インク流路の一部を形成する部材として、コンプライアンスシート140と、圧電素子32を収容するカバー150を備える。コンプライアンスシート140は、連通板110との間に、インク供給室40と連通する供給口126を形成する。また、コンプライアンスシート140は可撓性の弾性膜であり、インクの吐出や流通のためのダンパーとしての機能や、インクの体積が膨張した場合に、変形することによってインクジェットヘッド100の破損を抑制する機能を有している。
コンプライアンスシート140は、弾性を有する膜であれば特に限定されないが、例えば、高分子膜、薄膜にした金属、ガラスファイバー、カーボンファイバーなどが用いられる。高分子膜の材質としては、特に限定されないが、ポリイミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイトなどが挙げられ、ポリフェニレンスルファイトで形成されることがより好ましい。また、金属としては、例えば、鉄やアルミニウムを含む材料が挙げられる。
本実施形態では、インク供給室40、供給口126、圧力室20及び連通孔127を区別して説明しているが、これらはいずれも液体の流路であって、圧力室20が形成される限り、流路はどのように設計されても構わない。例えば、図示の例では供給口126として、流路の一部が狭窄された形状を有しているが、そのような流路の拡大縮小は、設計にしたがって任意に形成することができ、また必ずしも必須の構成ではない。
上記構成によって形成される圧力室20は、連通板110と、圧力室基板120と、振動板30とによって区画される空間であり、供給口126、連通孔127、吐出口128及びノズル孔12を含まない空間のことをいう。つまり、振動板30、圧力室基板120、連通板110などのインクに圧力を付与する部分(圧力室20の壁の変形や発熱する部分)と対向する空間、及び、該空間に隣接し、インクが移動する方向に対する断面の断面積が該空間と等しい空間を圧力室20とし、圧力室20の容積はこの容積である。このように、圧力室20は、振動板30の変位によって容積が変化する空間であり、係る空間に
連通する狭窄された流路などを含まない空間と定義する。
上記したように、連通孔127は圧力室20からノズル孔12に連通している。本発明においては、圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの部分、すなわち、図3の例では、連通孔127、ノズル孔12、及びこれらを接続する全ての部分、を接続部132と定義する。したがって、接続部132の距離とは、図3の例では、接続部132が連通板110の厚み方向と平行に貫通するように設けられているので、連通板110の厚み方向の長さd1とノズルプレート10の厚み方向の長さd2の和に等しくなる。
本実施形態では、例えば、連通板110の厚み方向の長さd1とノズルプレート10の厚み方向の長さd2の長さの和、つまり、d1+d2が500μm以上であることが好ましい。このように、接続部132の距離が長い構成とすることにより、ノズル面13からインクの乾燥が進むことを防止できる。
なお、図3に示す例では、ノズルプレート10と連通板110が積層され、ノズル孔12及び連通孔127が異なる部材により形成されているが、ノズルプレートと連通板が単一の部材で形成されていてもよい。ノズルプレートと連通板が単一の部材で形成されている場合においても、接続部132は、圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの部分となる。この場合においても、接続部の距離が500μm以上である場合には、ノズル面からインクの乾燥が進むことを防止できる。
インク供給室40は、外部(例えば、インクカートリッジ)から、振動板30に設けられた貫通孔129を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。インク供給室40内のインクは、供給口126を介して、圧力室20に供給されることができる。圧力室20は、振動板30の変形により容積が変化する。圧力室20は連通孔127を介してノズル孔12と連通しており、圧力室20の容積が変化することによって、ノズル孔12からインクが吐出されたり、インク供給室40から圧力室20にインクが導入されたりすることができる。ここで、ノズル孔12のノズル径は、画質を優れたものにする点や、間欠性やミスト低減の点で、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上40μm以下である。
筐体130は、図2に示すように、ノズルプレート10、圧力室基板120及び圧電素子32を収納することができる。筐体130の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。筐体130は、圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有してもよい。また、筐体130には、不活性ガスなどが封入されたり、筐体130内が減圧されてもよく、これにより、圧電材料の劣化などを抑制することができる。
カバー150は、筐体130とは別部材として構成されている。カバー150は、振動板30に接して設けられ、圧電素子32を収容する空間を形成し、圧電素子32を当該空間に収納している。カバー150の材質は、上述の筐体130の材質と同様である。上記筐体130は圧電素子32を覆うカバーとなっているが、カバー150は圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有し、カバー150によって形成される空間に不活性ガスなどが封入されたり、当該空間が減圧されてもよい。これにより、圧電素子32の圧電材料の劣化などを抑制することができる。この場合に、筐体130は、インクジェットヘッド100の支持体として機能してもよい。
以上例示したインクジェットヘッド100は、プリンター1に搭載された場合に、ノズルプレート10が記録媒体に向かって配置され、ノズルプレート10が大気(外気)と直接に接することになる。また、本実施形態において、インクジェットヘッド100は、筐
体130及びカバー150を有するため、圧電素子32及び振動板30が実質的に外気と接触しない構造である。
図4は、上述のインクジェットヘッド100を有するプリンター1を概略的に示す斜視図である。プリンター1は、ヘッドユニット300と、駆動部210と、コントローラー500と、を含む。また、プリンター1は、装置本体820と、給紙部850と、媒体P(記録用紙)を設置するトレイ821と、媒体Pを排出する排出口822と、装置本体820の上面に配置された操作パネル870と、を含むことができる。
ヘッドユニット300は、本実施形態のインクジェットヘッド100(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット300は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ831と、インクジェットヘッド100及びインクカートリッジ831を搭載した運搬部(キャリッジ)832と、を備える。
駆動部210は、ヘッドユニット300を往復動させることができる。駆動部210は、ヘッドユニット300の駆動源となるキャリッジモーター841と、キャリッジモーター841の回転を受けて、ヘッドユニット300を往復動させる往復動機構842と、を有する。インクジェットヘッド100は、ヘッドユニット300の往復動の方向と、ヘッドのノズルプレート10の法線方向とが一致するようにヘッドユニット300に取り付けられている。
往復動機構842は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸844と、キャリッジガイド軸844と平行に延在するタイミングベルト843と、を備える。キャリッジガイド軸844は、キャリッジ832が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ832を支持している。さらに、キャリッジ832は、タイミングベルト843の一部に固定されている。キャリッジモーター841の作動により、タイミングベルト843を走行させると、キャリッジガイド軸844に導かれて、ヘッドユニット300が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、媒体Pへの印刷が行われる。
コントローラー500は、ヘッドユニット300、駆動部210、及び給紙部850を制御することができる。
給紙部850は、媒体Pをトレイ821からヘッドユニット300側へ送り込むことができる。給紙部850は、その駆動源となる給紙モーター851と、給紙モーター851の作動により回転する給紙ローラー852とを備える。給紙ローラー852は、媒体Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラ652a及び駆動ローラ652bを備える。駆動ローラ652bは、給紙モーター851に連結されている。コントローラー500によって給紙部850が駆動されると、媒体Pは、ヘッドユニット300の下方を通過するように送られる。
ヘッドユニット300、駆動部210、コントローラー500、及び給紙部850は、装置本体820の内部に設けられている。
なお、図示しないが、プリンター1は、付着対象上に吐出された放射線硬化型組成物に放射線(紫外線)を照射することによって硬化する硬化手段を備えてもよい。硬化手段としては、インクジェットヘッド100と共にキャリッジ832に搭載された光源(放射線源)や、キャリッジ832からみて媒体Pの搬送方向下流側に配置された光源(放射線源)を挙げることができる。また、硬化手段は、プリンター1とは別体で設けられてもよい。
本実施形態の放射線硬化型組成物を硬化させる放射線としては、例えば、400nm〜200nmの範囲の紫外線、可視光、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、又はX線等の電磁波、及び電子線、α線等の粒子線が挙げられる。
放射線として紫外線を用いる場合、紫外線の照射は、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプが挙げられる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ、Integration社製のSubZero 055等の市販されているものを用いて行うことができる。また、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子によっても、紫外線照射を行うことができる。さらに、必要に応じてミラーや光ファイバー等によって適宜の位置に紫外線を導いてもよい。
3.2.装置の要部の構成
本実施形態のインクジェット方法に好適なプリンター1(インクジェット装置)は、少なくとも加温機構、超音波処理機構を備える。また、プリンター1は、脱気機構を備えてもよい。ここでは、加温機構、超音波処理機構及び脱気機構を備えたプリンター1(インクジェット装置)を例示する。
図5は、キャリッジ832の要部を模式的に示す図である。キャリッジ832には、インクカートリッジ831(図5にでは不図示)、及びインクジェットヘッド100が搭載され、さらに、サブタンク900、加圧ポンプ902、加温機構920の一例であるヒーター、超音波処理機構940、脱気機構960の一例である脱気モジュールが搭載されている。
本実施形態のプリンター1は、放射線硬化型組成物を吐出する吐出手段として、インクジェットヘッド100(上述)を備える。サブタンク900はインクカートリッジ(図示せず:インクパックでもよい。)から放射線硬化型組成物の供給を受け、加圧ポンプ902によって放射線硬化型組成物を加温機構の一例である加温機構920(ヒーター)、超音波処理機構940、脱気機構960の一例である脱気モジュールの順に通過させて、インクジェットヘッド100に供給する。
インクジェットヘッド100は付着対象(図示せず)に放射線硬化型組成物を吐出するものである。圧力調整弁908は開弁アクチュエーター910によって開弁され、サブタンク900からインクジェットヘッド100へ放射線硬化型組成物を供給する際の放射線硬化型組成物の圧力を調整する。
脱気機構960を通過した放射線硬化型組成物は、圧力調整弁908が開弁すると、往路914を通じてインクジェットヘッド100に流入する。インクジェットヘッド100から吐出されなかった放射線硬化型組成物は、開閉バルブ912が開いた状態において、復路916を介してサブタンク900へ循環される。サブタンク900とインクジェットヘッド100との間に放射線硬化型組成物を循環させることで、放射線硬化型組成物が長期滞留して成分が分離、沈降した場合にこれを回復させたり、循環する放射線硬化型組成物の温度を一定にしたりすることができる。なお図示しないが、放射線硬化型組成物は、インクジェットヘッド100に設けられた図示せぬさらなるヒーターによって加熱されてもよく、そのようにすれば粘度が低下し、インクジェットヘッド100からの吐出にさらに適した粘度となり得る。
これらの構成は、キャリッジ832に設けられており、キャリッジ832ごと付着対象
に対して移動しながらインクジェットヘッド100から付着対象に放射線硬化型組成物の吐出を行う主走査が行われる。しかし、これらの構成のうちインクジェットヘッド100以外の構成については、必ずしもキャリッジ832に設けられる必要はないことは理解されよう。
脱気機構960(脱気モジュール)内には、放射線硬化型組成物が流入する脱気室(図示せず)と、空気などの気体を通して放射線硬化型組成物などの液体を通さない分離膜を介して脱気室と接する減圧室(図示せず)と、が設けられている。減圧ポンプ(図示せず)によって減圧室を減圧すると、脱気室内の放射線硬化型組成物に混入していた気泡や溶解していた酸素などの気体は抜けていくので、気泡の混入がなく、脱気機構960へ送られた放射線硬化型組成物よりも溶存気体濃度を低くした放射線硬化型組成物をインクジェットヘッド100へ供給し、インクジェットヘッド100から吐出させることができる。本記録装置の脱気機構960は、サブタンク900からインクジェットヘッド100へ放射線硬化型組成物を供給し続けた状態で、連続的に放射線硬化型組成物の脱気を行うことができる。
また、脱気機構960が上記のような連続的に放射線硬化型組成物の脱気を行うものである代わりに、分離膜を備えずに、圧力調整弁を閉じた状態にして、減圧室を減圧することで放射線硬化型組成物の脱気を行うことと、脱気を終了したら、減圧室を常圧に戻して圧力調整弁を開いた状態にしてインクジェットヘッド100に供給することと、を交互に断続的に行う形態としてもよい。前者は放射線硬化型組成物を連続的に脱気することができる点で好ましく、後者は脱気能力が高い点で好ましい。
本実施形態のプリンター1は、放射線硬化型組成物の流路に、放射線硬化型組成物を流通させる加圧ポンプ902(P)を備える。加圧ポンプ902は、流路に設置され、放射線硬化型組成物を流路に流通させるものであれば特に制限はない。
〔加温機構〕
本実施形態のプリンター1は、放射線硬化型組成物の流路に、放射線硬化型組成物を加温するための加温機構920を備える。加温機構920を備えることにより、放射線硬化型組成物中に気泡を積極的に発生させやすく、かつ粘度を低下させることができる。
加温機構920は、流路中に設けるものであれば特に制限されないが、図5において、循環路918(往路914及び復路916)に設けられ、より具体的には循環路918の途中、即ちサブタンク900及びインクジェットヘッド100の間に位置する。加温機構920は、例えばヒーターであり、放射線硬化型組成物が供給される方向の加圧ポンプ902より下流で、かつインクジェットヘッド100より上流に位置することが好ましい。加温機構920により、吐出される放射線硬化型組成物の吐出温度、吐出粘度を制御することもできる。
〔超音波処理機構〕
循環路918の往路914には超音波処理機構940として、超音波発振機が配置されている。そして、超音波処理機構940の発振機を駆動させることにより、循環路918内を流動する放射線硬化型組成物に対して超音波を印加することができる。
ここで、超音波処理が、加温機構による加温の後となることにより、加温によって成長した気泡が超音波の印加によって、例えば、気泡が発生した顔料の表面から効率よく剥がれる。そして、その後に任意に設けられる脱気機構による脱気処理により、より効果的に気泡(空気)を除去することができる。
超音波処理機構940を構成し得る装置としては、GSD150AT、GSD300AT、GSD600AT、GSD1200AT、GSD600MCVP−5、GSD600MCVP−10、GSD600MAT−5、GSD600MAT−10、GSD1200MAT−10(以上型式名:ギンセン社製)、UH−50、UH−150、UH−300、UH−600、UH−600S、UH−600SR、UH−1200SR、UH−600SR−1、UH−1200SR−1、UH−600SR−2、UH−600SR−3(以上型式名:エスエムテー社製)などを例示でき、適宜に配置することにより利用することができる。
〔脱気機構〕
本実施形態のプリンター1は、放射線硬化型組成物の流路に、脱気機構960をさらに有している。脱気機構960は、放射線硬化型組成物を脱気するものである。脱気機構960は、放射線硬化型組成物の流路中に設けるものであれば特に制限されないが、循環路918に設けられ、より具体的には循環路918の途中、即ちサブタンク900及びインクジェットヘッド100の間に設けることができる。脱気機構960により脱気された放射線硬化型組成物はインクジェットヘッド100に供給される。脱気機構960は、放射線硬化型組成物が供給される方向であって、加温機構920及び超音波処理機構940より下流側であり、かつ、インクジェットヘッド100より上流側に設けられていることが好ましい。
これにより脱気機構960が加温機構920及び超音波処理機構940の下流に位置することにより、放射線硬化型組成物の温度が高い状態で脱気されることとなり、脱気効率をより高くすることができる。
脱気機構960としては、例えば、放射線硬化型組成物が流入する脱気室(図示せず)と、放射線硬化型組成物などの液体を通さない分離膜を介して当該脱気室に接する減圧室(図示せず)と、を備えたものを例示できる。減圧室は、例えば、負圧ポンプにより減圧され、循環路918内の放射線硬化型組成物の溶存気体や気泡を除去することができる。
脱気機構960は、放射線硬化型組成物が供給される方向であって、加圧ポンプ902より下流側であり、かつ、インクジェットヘッド100より上流側に設けられていることが好ましい。脱気機構960としては、特に限定されないが、例えば、放射線硬化型組成物を送りつつ脱気を行う分離膜を備えたもの(脱気モジュール)が挙げられる。
〔循環路〕
プリンター1は、放射線硬化型組成物を循環させる流路として、循環路918をさらに有している。そして、循環路918に脱気機構960と、加圧ポンプ902とを備えることが好ましい。図5において、プリンター1は、循環路918を有し、循環路918は、サブタンク900及びインクジェットヘッド100に通じており、サブタンク900から放射線硬化型組成物が供給されて、当該放射線硬化型組成物をインクジェットヘッド100に供給するものとすることができる。このように、循環路918により放射線硬化型組成物を循環させることで、加温機構920で加温した放射線硬化型組成物の温度を一定にすること、超音波処理機構940による超音波の照射回数を増すこと、気泡の定着(流路壁や固体成分への付着)を抑制すること、脱気効率をより高くすること、放射線硬化型組成物に含まれる成分の沈降を抑制すること、の少なくとも1つの効果を高めることができる。
また、循環路918は、図示しないが、フィルター、循環ポンプ、ヘッドフィルター等を有してもよい。例えば、フィルターは循環路918の循環ポンプの下流に設けられ、組成物中の異物をろ過するものである。また、例えば、循環路918の一部はインクジェッ
トヘッド100内に設けられ、組成物中の異物をろ過するヘッドフィルターを介して、循環する組成物の少なくとも一部がインクジェットヘッド100より吐出されるようにしてもよい。なお、インクジェットヘッド100へ供給される放射線硬化型組成物の移動速度及び循環路918内での移動速度は、例えば、1ml/分以上500ml/分以下、好ましくは5ml/分以上300ml/分以下、より好ましくは10ml/分以上200ml/分以下、さらに好ましくは20ml/分以上150ml/分以下である。
5.実施例及び比較例
以下、本発明を実験例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
5.1.放射線硬化型組成物の調製
まず、顔料、分散剤、各モノマーの一部を秤量して顔料分散用のタンクに入れ、タンクに直径1mmのセラミック製ビーズミルを入れて攪拌することにより、顔料を重合性化合物中に分散させた顔料分散液を得た。次いで、表1に記載の組成物1〜6(放射線硬化型組成物1〜6)の組成となるように、ステンレス製容器である混合物用タンクに、残りのモノマー、重合開始剤、重合禁止剤及び界面活性剤を入れ、混合攪拌して完全に溶解させた後、上記で得られた顔料分散液を投入して、さらに常温で1時間混合撹拌し、さらに、後述する孔径の異なる各種フィルターで加圧ろ過することにより各組成物を得た。
表中で使用した略号の成分は、以下の通りである。
<顔料>
・PY155(C.I.ピグメントイエロー 155)
・PY180(C.I.ピグメントイエロー 180)
<重合性化合物(モノマー)>
・VEEA(商品名、株式会社日本触媒製、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル)
・PEA(商品名「ビスコート#192、大阪有機化学工業株式会社製、フェノキシエチルアクリレート」)
・TPGDA(商品名「ビスコート#310HP」大阪有機化学工業株式会社製、トリプロピレングリコールジアクリレート)
・DPHA(新中村化学工業株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)<重合開始剤及び増感剤>
・DarocureTPO(商品名「DAROCUR TPO」、BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)
・Irgacure819(商品名「IRGACURE 819」、BASF社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)
<重合禁止剤>
・LA−87(商品名:株式会社ADEKA製、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート:ヒンダードアミン系光安定剤(HALS))
<界面活性剤(スリップ剤)>
・BYK−UV3500(商品名、BYK Additives&Instruments社製、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)。
<顔料の一次粒子のアスペクト比>
顔料の一次粒子のアスペクト比を測定した。走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、電界放出形走査電子顕微鏡 S−4500)による観察より算出した。まず、写真用紙上に、インクサンプルを滴下し、薄く広げた上で、乾燥したものを
試料とした。次に、SEMにより、視野内の粒子を撮影して、顔料粒子50個について、その長い方の径(長径)と、短い方の径(短径)の長さをそれぞれ測定し、長径の平均値/短径の平均値をアスペクト比とした。また、動的光散乱法で一次粒子の平均粒子系D50(体積平均粒子径)も測定した。
その結果、C.I.ピグメントイエロー 155は、一次粒子のアスペクト比が4.5で、一次粒子の平均粒子径が235nmであった。C.I.ピグメントイエロー 180は、一次粒子のアスペクト比が2.1で、一次粒子の平均粒子径が110nmであった。
Figure 2018130883
5.2.評価方法
5.2.1.記録物の作成
<インクジェット装置>
インクジェット装置として、SC−S30650(セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用意した。インクパック(インクカートリッジ)からインクジェットヘッドに放射線硬化型組成物を供給する流路を図5に概略を示したように構成した。すなわち、改造機では循環路が構成され、流路に加温機構(ヒーター)、超音波処理機構、脱気機構(減圧処理)を設けられている。
インクジェットヘッドのノズル列の1つに1種の放射線硬化型組成物を供給するように、インクパックに各実施例及び各比較例の放射線硬化型組成物を充填した。ノズル列は、ノズル密度360dpiである。
循環路にて循環させた放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドに供給し、放射線硬化型組成物の一部をインクジェットヘッドから吐出させ、残りの放射線硬化型組成物をサブタンクへ還流させるようにした。そして、還流された放射線硬化型組成物に、インクパック(インクカートリッジ)からサブタンクへ供給された新たな放射線硬化型組成物を合流させて循環させた。
実施例及び比較例では、循環路中の加温機構、超音波処理機構、脱気機構を表3中の条件で作動させて放射線硬化型組成物を処理した。インクジェットヘッドへ供給される放射線硬化型組成物の移動速度は100ml/分とした。
表中の温度は超音波処理機構の内部の放射線硬化型組成物の温度である。処理時間は超音波処理機構の内部を放射線硬化型組成物が移動中に超音波処理を受けた時間である。減圧圧力は超音波処理機構の下流に設けた脱気機構の減圧圧力であり中空糸脱気モジュール
を用いた。なお、脱気機構は超音波処理を経た後でも組成物中に残存している気体が気泡として発生する場合があるので、これを除去するために行った。
<記録物の作成>
循環路に流通させた放射線硬化型組成物を各ノズル例毎に表中の条件で、加温、超音波処理、脱気処理し、これをインクジェットヘッドへ供給し吐出して、記録媒体へ付着させテストパターンを記録した。記録解像度は、720×720dpiとし、組成物の付着量は、10mg/inchとした。記録媒体は、PET50A PLシン リンテック社製(非吸収性記録媒体)を用いた。
また、インクジェット装置のインクジェットヘッドよりも記録媒体の搬送方向における下流に、光源(ピーク波長395nmのLED)を設けて記録媒体を照射して放射線硬化型組成物を硬化できるようにした。
加温処理の温度が20℃の例では、ヒーターをオフにして加熱せずに行った。また、加温処理温度が30℃以上である、その他の例では、ヒーターを作動させて加熱した。加温機構(ヒーター)及び超音波処理機構は、流路において近接しているので、加温処理の温度は、超音波処理における温度と同様であると考えられる。
5.2.2.評価項目
<耐光性>
記録媒体へ放射線硬化型組成物を、付着量10mg/inchでバーコーターにて付着させ、光源(ピーク波長395nm、ピーク強度800mW/cmのLED)で300mJ/cmの照射エネルギーで照射硬化させたパターン部を耐光性試験に供した。
試験は、温度63℃及び照度70000ルクスに設定したキセノンウェザーメーター XL75(スガ試験機社(Suga Test Instruments Co.,Ltd.)製)内に100時間放置して、耐光性を評価した。その後、耐光性評価の実施前後のベタパターン画像を、測色器(商品名:Spectrolino、GretagMacbeth社製)を用いて測色し、a値及びb値を測定した。そして、得られたa値及びb値を基にΔE値(色差)を算出して、耐光性評価の実施前後における変退色の評価を、以下の基準で行い、結果を表1に記載した。
A: ΔEが0.5以下
B: ΔEが0.5超。
<保存安定性>
放射線硬化型組成物1を用いて、記録物の作成において用いた装置の循環路、加温機構、超音波処理機構、脱気機構の部分を使用して、表2に示した条件で処理を行った。処理後の放射線硬化型組成物1をガラス瓶に入れ密閉し、45℃×7日間保存し、保存前後の放射線硬化型組成物1の25℃における粘度を測定し、粘度の上昇度合いにより、下記の基準で評価して、結果を表2に記載した。
A: 粘度上昇が2mPa・s以下
B: 粘度上昇が2mPs・s超 5mPs・s以下
C: 粘度上昇が5mPs・s超。
Figure 2018130883
なお、保存安定性試験後の放射線硬化型組成物の平均粒子径(D50)を一次平均粒子径(D50)の測定と同様にして測定した所、試験結果がA、B、Cの順番で、試験前の一次平均粒子径(D50)に対する試験後の平均粒子径(二次平均粒子径)の増大率が大きかった。
<目詰まり>
記録試験の条件でA4サイズの記録媒体の1枚あたりに、20cm×20cmのベタパターンを記録する記録を30分連続で行った。記録中、1枚毎にノズル検査を行い吐出有無を確認した。360個のノズルに対して1回でも不吐出の確認されたノズルの個数を調べ、全ノズル個数に対する割合を求め、以下の基準で評価して結果を表3に記載した。
A: 0.1%未満
B: 0.1%以上0.2%未満
C: 0.2%以上0.5%未満
D: 0.5%以上1.0%未満
E: 1.0%以上。
<飛行曲がり>
目詰まり試験と同様に記録を行い、記録中、1枚の記録毎に、ノズルの飛行曲がりの検査を行った。検査は記録媒体にノズルチェックパターンを印刷させて、ドットの着弾位置が隣接ノズル間距離の半分以上のものを飛行曲がりありとした。吐出は可能なノズルに対して1回でも飛行曲がりの確認されたノズルの個数を調べ、全ノズル個数に対する割合を求め、以下の基準で評価して結果を表3に記載した。
A: 0.2%未満
B: 0.2以上0.5%未満
C: 0.5%以上1.0%未満
D: 1.0%以上2.0%未満
E: 2.0%以上。
<耐擦性>
放射線硬化型組成物を付着させた後、記録媒体のパターン部を光源(ピーク波長395nm、ピーク強度800mW/cmのLED)で100mJ/cmの照射エネルギーで照射した。照射後、パターン部を綿棒(ジョンソンエンドジョンソン社製)で5g加重で1回擦り、パターン部の傷の有無を目視で確認し、以下の基準で評価して結果を表3に記載した。
A: パターン部の傷も綿棒へのインクの付着も見られない
B: パターン部の傷が若干見られる
C: パターン部の傷が目立って見られる。
<溶存空気>
ガスクロマトグラフ(Agilent 6890アジレント・テクノロジー社製)で溶存酸素と溶存窒素をそれぞれ測定した合計値である。キャリアガスとしてはヘリウムガスを使用した。ヘッドへ供給される時点のインクを採集して測定し、表3に記載した。数値の単位は質量ppmである。
Figure 2018130883
5.3.評価結果
表1をみると、C.I.ピグメントイエロー 155(PY155)を用いた組成物(1〜5)に比較して、C.I.ピグメントイエロー 180(PY180)を用いた組成物(6)では、耐光性が若干劣っていることが分かった。
超音波処理は、顔料などに付着している微細な気泡(気泡核)を除去する効果があると推測される。そのため、製造時に、加温工程及び超音波処理工程の組を1回行えばよいと考えることもできる。ところが、表2の結果から、加温工程及び超音波処理工程の組を1回行った状態で放射線硬化型組成物を保存すると(試験1)、良好な保存安定性が得られないことが分かる。このことから、放射線硬化型組成物の保存においては、溶存気体が多い方が良好となることが分かった。特に組成物中の酸素は、重合禁止剤として機能するので、これを除去すると保存安定性が劣ることになったと推測される。
また、このことを踏まえた場合、表2における試験2、3、4の結果から、加温せずに超音波処理のみを行っても、溶存気体は除去されにくいことが分かる。そのため、超音波処理は、加温により気泡が形成された状態で行われることにより、気泡(溶存気体)を効率的に除去できることが分かった。
また、これらのことから、加温及び超音波処理は、放射線硬化型組成物の製造時ではなく、記録を行う際に行うことが好ましいことが分かる。また、記録時において行われる加温及び超音波処理は、その後、放射線硬化型組成物を、せいぜい数時間程度で使い切ることが可能であり、また、インクパックの容量に比較して少量であることから、処理後の放
射線硬化型組成物の装置内における保存安定性は、十分に確保できると考えられる。
表3をみると、加温処理及び超音波処理を行った各実施例では、いずれも放射線硬化型組成物の保存安定性が良好で、かつ吐出安定性に優れていることが分かる。これに対して、加温処理及び超音波処理の少なくとも一方を行わなかった各比較例では、保存安定性は良好と考えられるが、吐出安定性が劣っていることが分かる。また、各例における溶存空気の量は、超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度及び超音波処理工程の時間との間に、相関があることが分かる。
また、PY155を用いた実施例及び比較例と、PY180を用いた実施例6及び比較例4とを比較すると、PY155を用いた例のほうが、相対的に吐出安定性が若干劣っていた。これは、一次粒子のアスペクト比が、PY155では4.5であり、PY180では2.1であることにより、PY155では、よりゴツゴツした形状であると考えられ、これにより、気泡核が多く存在して、比較的除去しにくかったことによると考えられる。ただし表1に示される通り、PY155では、PY180よりも耐光性が高いため、総合的に考えると、いずれの顔料でも使用することの利点がある。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…プリンター、10…ノズルプレート、12…ノズル孔、13…ノズル面、20…圧力室、30…振動板、32…圧電素子、34…圧電アクチュエーター、40…インク供給室、100…インクジェットヘッド、110…連通板、120…圧力室基板、127…連通孔、128…吐出口、130…筐体、132…接続部、140…コンプライアンスシート、150…カバー、200…搬送ユニット、210…駆動部、300…ヘッドユニット、400…照射ユニット、500…コントローラー、502…CPU、503…メモリー、504…ユニット制御回路、501…インターフェイス、600…検出器群、700…コンピューター、820…装置本体、821…トレイ、822…排出口、831…インクカートリッジ、832…運搬部(キャリッジ)、841…キャリッジモーター、842…往復動機構、843…タイミングベルト、844…キャリッジガイド軸、850…給紙部、870…操作パネル、851…給紙モーター、852…給紙ローラー、900…サブタンク、902…加圧ポンプ、908…圧力調整弁、910…開弁アクチュエーター、914…往路、916…復路、918…循環路、920…加温機構、940…超音波照射機構、960…脱気機構

Claims (9)

  1. 放射線硬化型組成物を加温する加温工程と、
    前記加温工程により加温された放射線硬化型組成物を超音波処理する超音波処理工程と、
    前記超音波処理工程を経た放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドから吐出して付着対象へ付着させる付着工程と、
    を備える、インクジェット方法。
  2. 請求項1において、
    前記超音波処理工程における放射線硬化型組成物の温度は30℃以上50℃以下である、インクジェット方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記超音波処理工程の時間は、10秒以上60秒以下である、インクジェット方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記超音波処理工程の後、前記放射線硬化型組成物を減圧処理する脱気工程をさらに備えた、インクジェット方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型組成物が、単体で固体である重合開始剤、及び、顔料の少なくともいずれかを含む、インクジェット方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型組成物が、顔料を含み、当該顔料の一次粒子のアスペクト比が2.5以上である、インクジェット方法。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型組成物が、重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系化合物、及び、チオキサントン系化合物の少なくともいずれかを含有する、インクジェット方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
    前記超音波処理工程が、前記放射線硬化型組成物を流動させた状態で行われる、インクジェット方法。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
    前記放射線硬化型組成物を収容した収容体と、インクジェットヘッドと、放射線硬化型組成物をインクジェットヘッドへ供給する流路と、を備えるインクジェット装置を用いて行われ、前記流路が前記放射線硬化型組成物を循環させる循環路を形成し、前記循環路において前記超音波処理工程を行う、インクジェット方法。
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