JP2018128268A - ガストリン測定におけるカットオフ値の推定方法、並びに同方法を利用したガストリン測定キット及び胃の健常性評価のための分析方法 - Google Patents

ガストリン測定におけるカットオフ値の推定方法、並びに同方法を利用したガストリン測定キット及び胃の健常性評価のための分析方法 Download PDF

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【課題】胃の健常性を適切に評価するためにガストリン測定キットにて指定されるべきカットオフ値を推定する方法を提供する。【解決手段】個体群のそれぞれに対するヘリコバクターピロリ菌検査、及びペプシノーゲン検査のそれぞれ検査結果に基づいて前記個体群を胃の健常性に関する正常群と疾患群とに区分し、前記正常群及び前記疾患群のそれぞれの個体から取得した血液サンプルを対象として所定の測定キットにてガストリンを測定したときの測定値に基づいて、前記測定キットに関して指定されるべきガストリンの測定値に関するカットオフ値を推定する。【選択図】図1

Description

本発明は、ガストリン測定におけるカットオフ値の推定方法等に関する。
ガストリンは胃の幽門前庭部及び十二指腸粘膜に存在するG細胞にて産生される消化管ホルモンである。ガストリンは、胃酸の分泌機能を刺激する作用をもっており、その産生は胃の健常性と密接に関連する。例えば、ガストリノーマと呼ばれる疾患が生じている場合には、ガストリンが過剰に産生されて胃酸分泌が亢進し、胃潰瘍が生じる。この種の疾患はゾリンジャー・エリソン(Zollinger Ellison)症候群として知られている。一方、萎縮性胃炎や悪性貧血といった疾患が生じている場合には、それらの疾患に伴う胃酸分泌の低下を補うべくG細胞にてガストリンの産生が促され、結果としてガストリンが増加する。したがって、ガストリンの濃度が高くなれば何らかの疾患が生じていると推定することができる。
血中にて検出されるガストリンの大半は、アミノ酸残基が34のガストリン34と、アミノ酸残基が17のガストリン17である。それらのガストリン34、17を胃の健常性の評価のための指標(バイオマーカ)として利用することは従来より種々提案されている。例えば、血清サンプル中のペプシノーゲンI及びガストリン17の濃度を測定し、その測定値を基準値及びカットオフ値と比較して消化性潰瘍の危険性を評価する方法が提案されている(特許文献1参照)。ヒトから採取した生物学的サンプルのペプシノーゲン、ガストリン17及びヘリコバクターピロリ菌抗体をバイオマーカとして測定し、その測定値をカットオフ値又は基準範囲と比較して萎縮性胃炎等のリスクを評価する方法も提案されている(特許文献2及び3参照)。しかしながら、日常の臨床においては、難治性胃潰瘍や膵臓に特殊な腫瘍が存在する場合といったように、ガストリノーマが疑われる限られた場合にガストリンの測定が実施されており、それ以外の場面でガストリンが測定される例は少ない。
特表2002−543433号公報 特開2015−222271号公報 特開2014−38110号公報
ガストリンの測定が臨床的に限られてきた経緯から、ガストリンの測定値に関する検討は必ずしも十分に行われておらず、ガストリン測定に用いられる各種の測定キットでは、相当以前に提唱されたカットオフ値が現在もそのまま指定されている。例えば、ガストリン34及び17の総和を測定するキットにおいては、200pg/mL以下(株式会社エスアールエル、株式会社ファルコバイオシステムズ)が正常な範囲として指定されており、富士レビオ株式会社が製造販売する血中ガストリン量測定用キットである「ガストリン・リアキットII」(「リアキット」はアボットジャパン株式会社の登録商標)の添付文書でも200pg/mL以下が正常範囲として指定されている。37〜172pg/mL(株式会社LSIメディエンス)、30〜150pg/mL(シスメック株式会社)といった範囲を正常として指定する例もある。なお、ガストリンを低下させる作用をもつ疾患は特には存在しないと認識されており、ガストリンの測定値が低いことは一般的には問題視されない。
一方、胃の健常性に関する評価手法の研究は鋭意進められている。例えばペプシノーゲン検査とヘリコバクターピロリ菌抗体価の検査とを組み合わせて胃癌のリスクを評価するABC検診といった評価方法が提案され、既に広範囲で実施されている。ABC検診では、ピロリ菌抗体価の測定値とペプシノーゲンの測定値とに基づいて、症例がA〜Dの4つの群に区分される。A群はいずれの検査でも陰性と判定された症例の群、B群はヘリコバクターピロリ菌抗体価の検査結果が陽性で、かつペプシノーゲンの検査結果が陰性と判定された症例の群、C群はいずれの検査結果でも陽性と判定された症例の群、D群はヘリコバクターピロリ菌抗体価の検査結果が陰性で、かつペプシノーゲンの検査結果が陽性と判定された症例の群である。C群は胃癌のリスクが高い群、D群はリスクがさらに高い群である。
しかしながら、ABC検診にてC群と判定された症例に関してガストリンを測定すると、その測定値は122〜317pg/mLの範囲で分布し、中央値は168pg/mLである。上述したガストリンの正常範囲に照らせば、C群の症例のおよそ半数はガストリン測定において正常と判定されることになる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、胃の健常性を適切に評価するためにガストリン測定キットにて指定されるべきカットオフ値を推定する方法、及びその方法を利用したガストリン測定キットを提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るカットオフ値の推定方法は、個体群のそれぞれに対するヘリコバクターピロリ菌検査、及びペプシノーゲン検査のそれぞれの検査結果に基づいて前記個体群を胃の健常性に関する正常群と疾患群とに区分する手順と、前記正常群及び前記疾患群のそれぞれの個体から取得した血液サンプルを対象として所定の測定キットにてガストリンを測定したときの測定値に基づいて、前記測定キットに関して指定されるべきカットオフ値を推定する手順と、を含むものである。
上記態様の推定方法によれば、胃癌リスクを評価するために実施されるヘリコバクターピロリ菌検査と、ペプシノーゲン検査とのそれぞれの検査結果に基づいて個体群を胃の健常性に関する正常群と疾患群とに区分しているので、所定の測定キットに関するガストリン測定値のカットオフ値を推定する前提として、胃が正常な個体に関してその測定キットで測定されるガストリン測定値の分布と、胃が疾患を有している個体に関してその測定キットで測定されるガストリン測定値の分布とを求めることができる。そして、正常群及び疾患群のそれぞれの個体におけるガストリン測定値の分布を利用すれば、その測定キットにて指定されるべきカットオフ値を推定することができる。
上記態様に係る推定方法の一形態において、前記区分する手順では、前記個体群のそれぞれから取得した血液サンプルにおけるヘリコバクターピロリ菌抗体価、及びペプシノーゲンの測定値(一例として、ペプシノーゲンIの値、及びペプシノーゲンIとIIの比率(ペプシノーゲンI/II比)の少なくともいずれか一方の測定値)とのそれぞれ測定値に基づいて前記個体群を前記正常群と前記疾患群とに区分してもよい。これによれば、個体群から取得した血液サンプルを用いて正常群の個体と疾患群の個体とを区別し、ガストリン測定も個体群から取得した血液サンプルを用いて行うので、カットオフ値の推定に必要な手間や負担を軽減することができる。
上記形態の推定方法において、前記区分する手順では、前記ヘリコバクターピロリ菌抗体価の測定値、及び前記ペプシノーゲンの測定値のそれぞれが正常な範囲にある個体を前記正常群に区分してもよい。このような要件を満たす個体の胃は正常と定義することが可能であり、係る要件を満たす個体を正常群に区分することにより、カットオフ値を推定する基準となるべき正常群と疾患群とを精確に選別し、カットオフ値の推定精度を高めることができる。なお、ヘリコバクターピロリ菌抗体価に関しては、一般的には測定感度未満であれば「正常」と評価されるので、測定感度未満の範囲を「正常な範囲」とすることができる。もっとも、感度や特異度が高い測定キットでは、ヘリコバクターピロリ菌抗体価の測定値がその測定キットの測定感度以上であっても、カットオフ値未満あれば「正常」とみなすべき場合も想定される。そのような場合には、ヘリコバクターピロリ菌抗体価の測定値が、その測定に用いたキットにおけるカットオフ値未満の場合に、ヘリコバクターピロリ菌抗体価検の測定値に関しては正常な範囲にあると判断してもよい。
上記態様の推定方法において、前記推定する手順では、前記正常群を基準群としてROC解析を実施することにより前記カットオフ値を推定してもよい。ROC解析は、カットオフ値を推定する統計学的手法として医療分野で頻繁に利用されている。したがって、かかる解析手法を用いることにより、カットオフ値の推定に関する信頼性、合理性を十分に担保することができる。
本発明の一態様に係るガストリン測定キットは、上述した態様又は形態に係る推定方法に従ってカットオフ値が推定され、得られたカットオフ値が指定されたものである。これによれば、胃の健常性を適切に評価することが可能なカットオフ値が指定された測定キットを提供することができる。そのように指定されたカットオフ値と測定キットにて得られたガストリン測定値とを比較することにより、個体の胃の健常性、すなわち胃が正常か否かを精確に評価することができる。
本発明の一態様に係る分析方法は、胃の健常性評価のための分析方法であって、個体から取得した血液サンプルに対して所定の測定キットを用いてガストリン測定を実施し、得られた測定値を、前記測定キットに関して上記態様に係る推定方法にて推定したカットオフ値と比較するものである。この態様の方法によれば、上記態様で推定したカットオフ値を利用して、胃の健常性評価に資するガストリン測定値の分析方法を提供することができる。
ガストリン測定のカットオフ値を推定するために実施したROC解析の結果を示す図。
本発明の一形態に係るカットオフ値の推定方法を以下に説明する。本形態の推定方法は、個体群を胃の健常性に関する正常群とそれ以外の疾患群とに区別する手順と、正常群及び疾患群のそれぞれのガストリン測定値に基づいて、ガストリン測定におけるカットオフ値を推定する手順とを含む。正常群と疾患群との区分は、「正常な胃」の定義に基づいて行われる。「正常な胃」は、個体群のそれぞれに対するヘリコバクターピロリ菌(以下、ピロリ菌と略称することがある。)検査、及びペプシノーゲン検査のそれぞれの検査結果と関連付けて定義される。ピロリ菌検査、及びペプシノーゲン検査は、一例として、個体群のそれぞれから採取した血液サンプル中のピロリ菌抗体価、及びペプシノーゲンをそれぞれ測定することにより実施することができる。以下では、そのような検査を実施する場合を例として説明を続ける。血液サンプルは一例として血清サンプルであるが、血漿サンプルが用いられてもよい。ピロリ菌と胃癌との間には関連性があることが知られており、ピロリ菌が感染すると胃粘膜の萎縮が進行して胃癌のリスクが高まる。ピロリ菌の感染の有無はピロリ菌抗体価の検査によって判定することができる。また、胃粘膜の萎縮が進行しているか否かはペプシノーゲンの検査により判定することができる。
ピロリ菌抗体価の検査においては、カットオフ値が10U/mL(液体1mL中におけるピロリ菌抗体の量)とされており、カットオフ値よりも抗体価が高い場合に陽性判定される。測定されるピロリ菌抗体はIgG抗体が典型例であるが、一部の測定キットではIgG抗体以外も測定されることがある。しかしながら、ピロリ菌抗体価が3.0〜9.9U/mLの範囲であっても、その概ね半数はピロリ菌に感染していることが明らかにされている。したがって、ピロリ菌抗体価に関しては、測定感度未満(3.0U/mL未満)であることを「正常な胃」の要件の一つとして設定する。つまり、ピロリ菌抗体価の測定に関しては、測定値が測定感度未満の範囲を「正常な範囲」として設定する。なお、上記の値は、栄研化学株式会社の測定キットである「Eプレート”栄研”H.ピロリ抗体II」を利用する場合の値である。当該測定キットを用いた場合において、ピロリ菌抗体価が3.0U/mL以上はピロリ菌感染症例が含まれている可能性があることは、例えば以下の論文(1)〜(3)にて示唆されている。
(1)望月ら 人間ドックにおける胃癌リスク評価(ABC分類)の有用性と課題 日本消化器がん検診学会雑誌 2014; 52: 545-555.
(2)鈴木ら ピロリ菌感染症の診療をめぐる最新知識―胃がん検診再考と国民総除菌、胃がん撲滅へー 総合検診 2014; 41: 444-450.
(3)Kishikawa H, Kimura K, Ito A, et al. Predictors of gastric neoplasia in cases negative for Helicobacter pylori antibody and with normal pepsinogen. Anticancer Res 2015, 35: 6765-71.
なお、ピロリ菌抗体価の測定に関しては、測定に用いるキットに応じて感度や特異度が異なっている。そのため、測定感度未満よりも高い測定値が得られた場合でも、その測定値を「正常な範囲」とみなすことが可能なほど感度及び特異度が極めて高い測定キットが存在し、あるいは今後提供されることが予想される。このような場合には、測定キットにおけるカットオフ値を基準として、ピロリ菌抗体価の測定値が「正常な範囲」内か否かを判別してもよい。
一方、ペプシノーゲンの検査においては、ペプシノーゲンIの値、及びペプシノーゲンI、IIの比率(ペプシノーゲンI/II比)を測定することが通例である。ペプシノーゲンIの値に関するカットオフ値は70ng/mL、ペプシノーゲンI/II比に関するカットオフ値は3であり、いずれかの測定値がカットオフ値より大きければ陰性と判定され、両者の測定値がカットオフ値以下であれば陽性(萎縮あり)と判定される。よって、ペプシノーゲン検査の結果が正常、つまり陰性判定される正常な範囲にあることを「正常な胃」の要件の他の一つとして設定する。ちなみに、ペプシノーゲンIの値が70ng/mL以下で、かつペプシノーゲンの比率(ペプシノーゲンI/II比)が3以下である場合には胃粘膜が萎縮しているとみなすべきであることは、例えば以下の論文(4)、(5)にて指摘されている。
(4)Miki K. Gastric cancer screening by combined assay for serum anti-Helicobacter pylori IgG antibody and serum pepsinogen levels - "ABC method". Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci, vol. 87, no. 7, pp. 405-414, 2011.
(5)Yamaguchi Y, Nagata Y, Hiratsuka R, et al. Gastric cancer screening by combined assay for serum anti-Helicobacter pylori IgG antibody and serum pepsinogen levels-the ABC method. Digestion 2016;93:13-18.
ピロリ菌抗体価、及びペプシノーゲンのそれぞれの検査結果に関する要件を上記の通り設定した上で、表1に示すように、両要件のいずれもが満たされる症例を「正常な胃」として定義し、それ以外の症例を疾患とする。そして、個体群から採取した血清サンプルのピロリ菌抗体価、及びペプシノーゲンの検査を実施し、「正常な胃」の定義に当てはまる個体を正常群に、定義に当てはまらない個体を疾患群にそれぞれ区分する。
Figure 2018128268
以上のようにして正常群及び疾患群を区分した後、各群に対するガストリン測定の結果に基づいてガストリン測定におけるカットオフ値を推定する。この場合、ガストリンの測定には、カットオフ値を推定しようとする測定キット(推定対象キット)が用いられる。なお、ガストリン測定は、ピロリ菌抗体価及びペプシノーゲンの測定時に併せて実施されてもよいし、正常群と疾患群との区分後に実施されてもよい。ただし、ガストリン測定にあたっては空腹時の採血が必要である。カットオフ値の推定にはROC(Reciever Operating Characteristicの略)解析を用いることができる。例えば、正常な胃を有する正常群をコントロール群(陰性判定される基準群)とし、正常群におけるガストリン測定値の分布と、疾患群におけるガストリン測定値の分布とから、感度及び特異度が最も優れた値を特定し、得られた値をカットオフ値として推定することができる。なお、感度は、陽性と判定されるべき個体を正しく陽性と判定する確率、特異度は陰性と判定されるべき個体を正しく陰性と判定する確率である。ただし、カットオフ値を推定する手法はROC解析に限らない。例えば、RCD(Relative Cumulative Distributionの略)曲線を利用したカットオフ値の推定手法等が用いられてもよい。
次に、上記の形態を実際の臨床現場に適用してガストリン測定のカットオフ値を推定した具体例を説明する。まず、604例の個体(ヒト)から血清サンプルを採取し、各サンプルに対して、ペプシノーゲン法によるペプシノーゲンIの値、及びペプシノーゲンI/II比の測定、ピロリ菌抗体価の測定、及びガストリンの測定を実施した。各測定に用いた測定キットは次の通りである。
ペプシノーゲン測定:アボットジャパン株式会社の「ペプシノーゲン・リアキット」
ピロリ菌抗体価測定:栄研化学株式会社の「Eプレート”栄研”H.ピロリ抗体II」
ガストリン測定」富士レビオ株式会社の「ガストリン・リアキットII」
次に、上述した「正常な胃」の定義を満たす個体を正常群、満たさない個体を疾患群として区分した。正常群は240例、疾患群は364例であった。次に、正常群をコントロール群として、正常群におけるガストリン測定値の分布、及び疾患群におけるガストリン測定値の分布に基づきROC解析を実施した。ちなみに、正常群におけるガストリン測定値の平均値は79.38pg/mL、中央値は72.00pg/mL、標準偏差は37.54pg/mL、疾患群におけるガストリン測定値の平均値は304.14pg/mL、中央値は125.00pg/mL、標準偏差は815.47pg/mLであった。ガストリンの測定結果に基づくROC解析の結果を図1に示す。図中の曲線がROC曲線である。図中のROC曲線上で左上隅(感度及び特異度がいずれも1.0となる点)から最も距離が小さくなる点(図中に黒丸で示す)をカットオフ値として推定したところ、得られたカットオフ値は92.0pg/mLであり、その際の感度は0.736、特異度は0.800であった。
本例で推定されたカットオフ値は、ガストリン測定で用いた富士レビオ株式会社の測定キットではカットオフ値が200pg/mLと指定されている。その指定値と比較すると、上記の例で推定されたカットオフ値は半分以下の値である。しかしながら、「正常な胃」の定義に基づいて症例を正常群と疾患群に区分した上でカットオフ値を推定しており、かつ感度及び特異度が十分に高い。したがって、上記のカットオフ値を利用すれば、ガストリン測定の結果を適切に分析し、胃の健常性を高感度かつ高特異度で評価することが可能な分析結果を提供することができる。すなわち、特定の個体から取得した血清サンプルに対してガストリン測定を実施し、得られた測定値を、そのガストリン測定に用いた測定キットに関して、上述した手法により推定したカットオフ値と大小比較すれば、個体の胃が正常か、あるいは疾患を有しているかといった胃の健常性の評価に資する高精度な分析結果を提供することができる。また、上記の手法で推定したカットオフ値をその測定キットのカットオフ値として測定キットそれ自体、又は添付文書等で指定することにより、胃の健常性の評価に適した測定キットを医療機関、検査機関等のユーザに提供することができる。
なお、上記の例で推定したカットオフ値は測定キットによって変動する可能性がある。しかしながら、測定キットが異なっている場合でも、上記の手順に従ってカットオフ値を推定すれば、測定キットに応じた適切なカットオフ値を求めることが可能である。検査対象の人口構成といった個体群の特性、属性が異なっている場合でも同様である。例えば、上記の形態では栄研化学株式会社によるピロリ菌抗体価測定キットを利用しているため、その測定キットにおける測定感度の下限値である3.0U/mL未満をピロリ菌抗体価に関する「正常な胃」の要件とした。しかしながら、本発明はその測定キットを用いる例に限定されるものではない。どのような測定キットであっても測定感度が存在することから、上記形態とは異なる測定キットを用いる場合でも、ピロリ菌抗体価がそれらの測定キットにおける測定感度未満であれば、ピロリ菌抗体価に関して正常な胃の定義を満たすものとし、ペプシノーゲン測定結果と併せて症例を正常群又は疾患群に区分することが可能である。上述したように、測定感度以上の測定値であっても正常な範囲をみなし得る高感度、高特異度のピロリ菌抗体価測定キットが提供される場合には、その測定キットのカットオフ値を利用するなどして、ピロリ菌抗体価の測定値が正常な範囲か否かを判別してもよい。
本発明は上述した形態に限定されることなく、適宜の変更が施された形態にて実施されてもよい。例えば、正常群と疾患群とに区分するために用いた「正常な胃」を定義するための要件として、ピロリ菌抗体価の測定値が正常な範囲であり、かつペプシノーゲンの測定値が正常な範囲であることを設定したが、測定値に関する「正常な範囲」を規定する数値はピロリ菌抗体価及びペプシノーゲンのそれぞれの測定値に関する評価基準に応じて変更されてもよい。例えば、ピロリ菌抗体価の測定に関しては、上述したように測定感度未満を正常な範囲としてもよいが、感度及び特異度が極めて高い測定キットではその測定キットのカットオフ値を利用して正常な範囲を規定してもよい。ペプシノーゲンの測定に関しても、ペプシノーゲンIの値が70ng/mLより大きいこと、又はペプシノーゲンI/II比が3よりも大きいこと、のいずれか一方でも満たされれば「正常な範囲」であるとしたが、ペプシノーゲンIの値が50ng/mLより大きいこと、又はペプシノーゲンI/II比が2よりも大きいこと、のいずれか一方でも満たされれば「正常な範囲」であるとする評価基準も存在する。
上記の形態では、個体から取得した血液サンプルを用いてピロリ菌検査、及びペプシノーゲン検査のそれぞれを実施し、それらの検査結果を利用して正常群と疾患群とを区別したが、少なくともピロリ菌検査については、血液サンプルを用いた検査方法に代えて、他の検査方法を実施し、その検査結果を正常群と疾患群との区分に用いてもよい。例えば、胃粘膜の生検組織を顕微鏡で検査した所見(病理所見)、ピロリ菌の有無を判定する他の方法(一例として尿素呼気試験、ピロリ菌培養法、便中ピロリ菌抗原検査等)、内視鏡検査の結果といったピロリ菌検査で用いられている各種の手法が正常群と疾患群との区分に用いられてよい。ピロリ菌に関する各種の検査方法(血液サンプルを用いたピロリ菌抗体価の検査を含む。)は、正常群及び疾患群の区分に関して単独で又は適宜に組み合わせて用いられてよい。

Claims (6)

  1. 個体群のそれぞれに対するヘリコバクターピロリ菌検査、及びペプシノーゲン検査のそれぞれの検査結果に基づいて前記個体群を胃の健常性に関する正常群と疾患群とに区分する手順と、前記正常群及び前記疾患群のそれぞれの個体から取得した血液サンプルを対象として所定の測定キットにてガストリンを測定したときの測定値に基づいて、前記測定キットに関して指定されるべきカットオフ値を推定する手順と、を含むガストリン測定のカットオフ値の推定方法。
  2. 前記区分する手順では、前記個体群のそれぞれから取得した血液サンプルにおけるヘリコバクターピロリ菌抗体価及びペプシノーゲンのそれぞれ測定値に基づいて前記個体群を前記正常群と前記疾患群とに区分する請求項1に記載のカットオフ値の推定方法。
  3. 前記区分する手順では、前記ヘリコバクターピロリ菌抗体価の測定値、及び前記ペプシノーゲンの測定値のそれぞれが正常な範囲にある個体を前記正常群に区分する請求項2に記載のカットオフ値の推定方法。
  4. 前記推定する手順では、前記正常群を基準群としてROC解析を実施することにより前記カットオフ値を推定する請求項1〜3のいずれか一項に記載のカットオフ値の推定方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載の推定方法に従ってカットオフ値が推定され、得られたカットオフ値が指定されたガストリン測定キット。
  6. 個体から取得した血液サンプルに対して所定の測定キットを用いてガストリン測定を実施し、得られた測定値を、前記測定キットに関して請求項1〜4のいずれか一項記載の推定方法にて推定したカットオフ値と比較する胃の健常性評価のための分析方法。
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