JP2018128264A - 超音波流量計および流量計測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シグナルの検出に失敗する頻度を少なくし、計測される流量が正しい確率を高める。ピーク位置のトラッキングに失敗しても正しい状態に復帰できるようにする。初回の測定にも適用できるようにする。【解決手段】順方向の波形データS1のピーク位置tp1と逆方向の波形データS2のピーク位置tp2との間隔をピーク間隔PWとして求める。ピーク間隔PWが所定の値PWth以上であった場合、順方向の波形データS1のピークP1maxおよび逆方向の波形データS2のピークP2maxのうち値が大きい方の位置を第1のピーク位置PX1として決定する。値が小さい方の波形データについては、第1のピーク位置PX1から所定の範囲(PX1−a〜PX1+b)内でピークを探索し、その探索したピークの位置を第2のピーク位置PX2とする。第1のピーク位置PX1と第2のピーク位置PX2とから伝播時間差Δtを求める。【選択図】 図4

Description

本発明は、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計および流量計測方法に関する。
〔伝播時間差法〕
従来より、流体の流量を計測する流量計として、超音波を用いて流体の流量を計測する超音波流量計が用いられている。この超音波流量計では、図7にその概略図を示すように、測定対象の流体が流れる配管1の上流側の外周面に第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)2を配置し、下流側の外周面に第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)3を配置し、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で互いに逆方向に伝播する超音波の伝播時間の差に基づいて流体の流速Vを測定し、この測定した流速Vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求める。この方法を伝播時間差法と呼んでいる。なお、この明細書では、超音波送受信器2,3から発射される超音波を超音波ビームと呼んだり、超音波信号と呼んだりもする。
図7において、θは配管1の軸と超音波ビームの軸とのなす角である。第1の超音波送受信器2から発射されて第2の超音波送受信器3で受信される超音波(上流側から下流側へと伝播する超音波(順方向に伝播する超音波))の伝播時間t1(順方向伝播時間)は、下記(1)式のように表される。
t1=L/(C+Vcosθ)・・・・(1)
ここで、Lは超音波伝播距離〔m〕、Cは流体中の音速〔m/s〕である。超音波は流体の流れに乗って伝播するため、流れが速いほど短い時間で伝播する。
同様に、第2の超音波送受信器3から発射されて第1の超音波送受信器2で受信される超音波(下流側から上流側へと伝播する超音波(逆方向に伝播する超音波))の伝播時間 (逆方向伝播時間)は、下記(2)式のように表される。
t2=L/(C−Vcosθ)・・・・(2)
超音波は流体の流れに逆らって伝播するため、流れが速いほど長い時間をかけて伝播する。
上記の(1),(2)式から、超音波の伝播時間差Δt=t2−t1と流速Vとの関係は、以下のようになる。
Δt=t2−t1=2LVcosθ/(C2−V2cos2θ)
C>>Vであるので、
Δt≒2LVcosθ/C2
したがって、
V≒C2/(2Lcosθ)Δt ・・・・(3)
この流速Vに断面積Sと流量補正係数kを乗じると流量Qを求めることができる。
Q=kSV ・・・・(4)
流量補正係数kは、超音波ビームが流体を通る部分の平均流速と配管断面における平均流速との比を補正するための係数であり、配管内面の表面粗さとレイノルズ数の関数となっている。
〔伝播時間の範囲〕
一般に、流量計では流量計測範囲が定められている。流量計測範囲の最小流量をQmin、最大流量をQmaxとする。Qmin,Qmaxは正の数でも0でも負の数でも良い。すなわち、
1)0<Qmin<Qmax
2)0=Qmin<Qmax
3)Qmin<0<Qmax
4)Qmin<Qmax=0
5)Qmin<Qmax<0
といった場合が考えられる。
配管のディメンジョンや流体中での音速に加え、流量が定まると、伝播時間差Δtが求まる。すなわち、上記の(3),(4)式より、
Δt=t2−t1=2LQcosθ/(kSC2
と表され、流量が流量計測範囲に収まっているとすると、
Qmin≦Q≦Qmax
であるため、
2LQmincosθ/(kSC2)≦(t2−t1)≦2LQmaxcosθ/(kSC2) ・・・・(5)
となる。
したがって、
〔t1+2LQmincosθ/(kSC2)〕≦t2≦〔t1+2LQmaxcosθ/(kSC2)〕 ・・・・(6)
もしくは、
〔t2−2LQmaxcosθ/(kSC2)〕≦t1≦〔t2−2LQmincosθ/(kSC2)〕 ・・・・(7)
と表すことができる。
伝播時間差法において、順方向伝播時間t1や逆方向伝播時間t2を所要の時間精度で検出することは容易ではない。そこで、伝播時間差Δtを直接求める方式として、相関法が考えられている(例えば、特許文献1参照)。相関法では、順方向に伝播する超音波の波形データ(順方向の波形データ)のピークの位置(時間軸上の位置)を順方向のシグナルの位置として推定し、逆方向に伝播する超音波の波形データ(逆方向の波形データ)のピークの位置(時間軸上の位置)を逆方向のシグナルの位置として推定し、この推定した順方向のシグナルの位置および逆方向のシグナルの位置を基にして順方向の波形データおよび逆方向の波形データの双方から波形データを切り出し、この切り出した波形データに対して相関演算を行って伝播時間差Δtを算出する。
また、超音波流量計として、クランプオン式超音波流量計が用いられている(例えば、特許文献2参照)。クランプオン式超音波流量計では、超音波の送受信を行うトランスデューサを流量を計測する配管外部に押し付けて設置することにより、配管を切らずに流量を計測できるというメリットがある。
特開2013−88322号公報 特開2015−232519号公報
しかしながら、クランプオン式超音波流量計では、超音波信号が配管の管壁にも伝わり、この管壁を伝わる超音波信号(ノイズ)が大きく、流体中を伝わる超音波信号(シグナル)とのSN比が小さい状態(例えば、一桁台)で流量を計測せざるを得ないことがある。
このような場合、シグナルの位相とノイズの位相の状態により、順方向もしくは逆方向のシグナルがノイズよりも小さな振幅となってしまうことがある。相関法では、取得した超音波の波形データのピーク位置からシグナルの位置を推定するが、この場合、誤った位置にシグナルがあると判定してしまい、シグナルの検出に失敗し、流量計測を誤る虞がある。
図8に正常な状態における超音波の波形データを例示する。同図において、S1は順方向の波形データ、S2は逆方向の波形データ、NLはノイズレベルであり、順方向の波形データS1のピークP1max、逆方向の波形データS2のピークP2maxともに、ノイズレベルNLよりも大きい。
図9にシグナルの検出に失敗する場合の超音波の波形データを例示する。この例において、逆方向の波形データS2の正しいピークはP2maxであるが、この正しいピークP2maxはノイズレベルNLよりも小さい。このため、ノイズのピークPNmaxを逆方向の波形データS2のピークであると見誤ってしまう。
なお、正しいピーク位置を探索する方法として、直前のピーク位置を保持しておき、そこからいきなり大きくは変化しないという前提条件のもとで前回のピーク位置付近のピークを探索するというものがある。しかし、この方法では、ピーク位置のトラッキングに失敗すると、正しい状態に復帰できなくなる虞がある。また、初回の測定には適用できないといった問題もある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シグナルの検出に失敗する頻度を少なくし、計測される流量が正しい確率を高めることができる超音波流量計および流量計測方法を提供することにある。
また、ピーク位置の検出に失敗しても正しい状態に復帰することができ、初回の測定にも適用することができる超音波流量計および流量計測方法を提供することにある。
このような目的を達成するために本発明は、測定対象の流体が流れる配管(1)と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器(2)と、配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器(3)とを備え、第1の超音波送受信器と第2の超音波送受信器との間で互いに逆方向に伝播する超音波の伝播時間の差に基づいて流体の流量を計測するように構成された超音波流量計(100)において、第1の超音波送受信器から発射され第2の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データを順方向の波形データとして取得するように構成された順方向波形データ取得部(41)と、第2の超音波送受信器から発射され第1の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データを逆方向の波形データとして取得するように構成された逆方向波形データ取得部(42)と、順方向波形データ取得部によって取得された順方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置として検出するように構成された順方向ピーク位置検出部(43)と、逆方向波形データ取得部によって取得された逆方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置として検出するように構成された逆方向ピーク位置検出部(44)と、順方向ピーク位置検出部によって検出された順方向の波形データのピーク位置と逆方向ピーク位置検出部によって検出された逆方向の波形データのピーク位置との間隔をピーク間隔として算出するように構成されたピーク間隔算出部(45)と、ピーク間隔算出部によって算出されたピーク間隔が所定の値以上である場合、順方向の波形データのピークおよび逆方向の波形データのピークのうち値が大きい方の位置を第1のピーク位置とし、値が小さい方のピークを含む波形データについては、第1のピーク位置から所定の範囲内でピークを探索し、この探索したピークの位置を第2のピーク位置とするように構成されたピーク位置決定部(46)と、ピーク位置決定部によって決定された第1のピーク位置と第2のピーク位置とから伝播時間の差を算出するように構成された伝播時間差算出部(47)とを備えることを特徴とする。
この発明によれば、第1の超音波送受信器から発射され第2の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データが順方向の波形データとして取得され、この取得された順方向の波形データのピーク位置が検出される。また、第2の超音波送受信器から発射され第1の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データが逆方向の波形データとして取得され、この取得された逆方向の波形データのピーク位置が検出される。そして、この検出された順方向の波形データのピーク位置と逆方向の波形データのピーク位置との間隔がピーク間隔として算出される。
ここで、算出されたピーク間隔が所定の値以上である場合、順方向の波形データのピークおよび逆方向の波形データのピークのうち値が大きい方の位置が第1のピーク位置とされ、値が小さい方のピークを含む波形データについては、第1のピーク位置から所定の範囲内でピークが探索され、この探索されたピークの位置が第2のピーク位置とされる。そして、この第1のピーク位置と第2のピーク位置とから、順方向と逆方向の超音波の伝播時間の差が算出される。
すなわち、本発明では、算出されたピーク間隔が所定の値以上である場合、順方向の波形データのピークおよび逆方向の波形データのピークのうち、値が大きい方の位置が正しいピークの位置と仮定され、この正しいピークの位置と仮定されたピークの位置が第1のピーク位置として決定される。値が小さい方のピークを含む波形データについては、正しいピークの位置と仮定したピークの位置(第1のピーク位置)から所定の範囲内で本来のピークが探索され、この探索された本来のピークの位置が第2のピーク位置として決定される。
本発明では、この決定された第1のピーク位置(ピークの値が大きい方の波形データのピーク位置)と第2のピーク位置(ピークの値が小さい方の波形データの本来のピーク位置)とから伝播時間の差を算出することにより、シグナルの検出に失敗する頻度を少なくし、計測される流量が正しい確率を高めることができるようになる。また、毎回洗い直しで計測が行われるものとなり、ピーク位置の検出に失敗しても正しい状態に復帰することができ、初回の測定にも適用することができるようになる。
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
以上説明したことにより、本発明によれば、順方向の波形データのピーク位置および逆方向の波形データのピーク位置を検出し、この検出した順方向の波形データのピーク位置と逆方向の波形データのピーク位置との間隔をピーク間隔として算出し、この算出したピーク間隔が所定の値以上である場合、順方向の波形データのピークおよび逆方向の波形データのピークのうち値が大きい方の位置を第1のピーク位置とし、値が小さい方のピークを含む波形データについては、第1のピーク位置から所定の範囲内でピークを探索し、この探索したピークの位置を第2のピーク位置とし、この第1のピーク位置と第2のピーク位置とから伝播時間の差を算出するようにしたので、シグナルの検出に失敗する頻度を少なくし、計測される流量が正しい確率を高めることができるようになる。また、ピーク位置の検出に失敗しても正しい状態に復帰することができ、初回の測定にも適用することができるようになる。
図1は、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の要部を示す図である。 図2は、この超音波流量計における流量演算装置のハードウェア構成の概略図である。 図3は、この超音波流量計における流量演算装置のCPUが実行する処理動作を説明するためのフローチャートである。 図4は、図3に続くフローチャートである。 図5Aは、順方向の波形データの具体例を示す図である。 図5Bは、逆方向の波形データの具体例を示す図である。 図6は、流量演算装置の要部の機能ブロック図である。 図7は、超音波流量計の概略を示す図である。 図8は、正常な状態における超音波の波形データを例示する図である。 図9は、シグナルの検出に失敗する場合の超音波の波形データを例示する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る超音波流量計100の要部を示す図である。同図において、図7と同一符号は図7を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
この超音波流量計100において、第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)2および第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)3に対しては、第1の超音波送受信器2と第2の超音波送受信器3との間で互いに逆方向に伝播する超音波の伝播時間の差に基づいて流体の流速Vを測定し、この測定した流速Vと配管1の断面積Sとから流体の流量Qを求める流量演算装置4が設けられている。
流量演算装置4は、図2に示すように、中央演算処理装置(CPU)4−1と、ランダムアクセスメモリ(RAM)4−2と、読み出し専用メモリ(ROM)4−3と、ハードディスクなどの記憶装置4−4と、入出力用のインタフェース4−5,4−6と、これらを接続する母線4−7とを備えている。
この流量演算装置4には、本実施の形態特有のプログラムとして、流量演算プログラムがインストールされている。この流量演算プログラムは、例えばCD−ROMなどの記録媒体に記録された状態で提供され、この記録媒体から読み出されて記憶装置4−4に記録され、使用可能な状態として流量演算装置4にインストールされている。
この流量演算装置4において、CPU4−1は、インタフェース4−5を介する入力情報を処理することで、RAM4−2やROM4−3、記憶装置4−4にアクセスしながら、流量演算装置4にインストールされている流量演算プログラムに従って動作する。以下、この流量演算プログラムに従ってCPU4−1が実行する処理動作について、図3および図4に分割して示すフローチャートを参照しながら説明する。
CPU4−1は、インタフェース4−5を介する入力情報として、第1の超音波送受信器2から発射され第2の超音波送受信器3によって受信される超音波の波形データを順方向の波形データとして取得し(図3:ステップS101)、第2の超音波送受信器3から発射され第1の超音波送受信器2によって受信される超音波の波形データを逆方向の波形データとして取得する(ステップS102)。なお、この順方向の波形データおよび逆方向の波形データは、超音波が発射されてからの時間軸上でその値が変化する波形データとして取得される。
そして、CPU4−1は、ステップS101で取得した順方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置tp1として検出し(ステップS103)、ステップS102で取得した逆方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置tp2として検出し(ステップS104)、この検出した順方向の波形データのピーク位置tp1と逆方向の波形データのピーク位置tp2との間隔をピーク間隔PW(PW=|tp2−tp1|)として算出する(ステップS105)。
そして、CPU4−1は、ステップS105で算出したピーク間隔PWと所定の値PWthとを比較する(ステップS106)。このステップS106で用いる所定の値PWthは、超音波流量計100の流量計測範囲から定められている。すなわち、流量が流量計測範囲(計測可能な流量の上限値と下限値との間)に収まっていたとすると、伝播時間差Δt=t2−t1は前記した(5)式で示される範囲内に収まる。この伝播時間差Δt=t2−t1が収まる範囲以上の値として所定の値PWthが定められている。
ここで、ピーク間隔PWが所定の値PWth以上であった場合(ステップS106のYES)、CPU4−1は、順方向の波形データのピークP1maxの値と逆方向の波形データのピークP2maxの値とを比較する(図4:ステップS107)。
CPU4−1は、順方向の波形データのピークP1maxの値が逆方向の波形データのピークP2maxの値よりも大きかった場合(P1max>P2max)、値が大きい方の波形データ(順方向の波形データ)のピークの位置(tp1)を正しいピークの位置と仮定し、この正しいピークの位置と仮定したピーク位置tp1を第1のピーク位置PX1とする(ステップS108)。
CPU4−1は、値が小さい方の波形データ(逆方向の波形データ)については、正しいピークの位置と仮定したピーク位置(第1のピーク位置PX1(tp1))から所定の範囲(PX1−a〜PX1+b)内で本来のピークを探索し、この探索した本来のピークの位置を第2のピーク位置PX2とする(ステップS109)。
このステップS109での所定の範囲を規定するa,bは、超音波流量計100の流量計測範囲から定められている。すなわち、流量が流量計測範囲(計測可能な上限値と下限値との間)に収まっていたとすると、逆方向の超音波の伝播時間t2は前記した(6)式で示される範囲内に収まる。この逆方向の超音波の伝播時間t2が収まる範囲を規定する値としてa,bが定められている。
一方、逆方向の波形データのピークP2maxの値が順方向の波形データのピークP1maxの値よりも大きかった場合(P2max>P1max)、CPU4−1は、値が大きい方の波形データ(逆方向の波形データ)のピーク位置(tp2)を正しいピークの位置と仮定し、この正しいピークの位置と仮定したピーク位置tp2を第1のピーク位置PX1とする(ステップS110)。
CPU4−1は、値が小さい方の波形データ(順方向の波形データ)については、正しいピークの位置と仮定したピーク位置(第1のピーク位置PX1(tp2))から所定の範囲(PX1−c〜PX1+d)内で本来のピークを探索し、この探索した本来のピークの位置を第2のピーク位置PX2とする(ステップS111)。
このステップS111での所定の範囲を規定するc,dは、超音波流量計100の流量計測範囲から定められている。すなわち、流量が流量計測範囲(計測可能な上限値と下限値との間)に収まっていたとすると、順方向の超音波の伝播時間t1は前記した(7)式で示される範囲内に収まる。この順方向の超音波の伝播時間t1が収まる範囲を規定する値としてc,dが定められている。
なお、ピーク間隔PWが所定の値PWth未満であった場合(図3:ステップS106のNO)、CPU4−1は、ステップS103で検出した順方向の波形データのピーク位置tp1を第1のピーク位置PX1とし、ステップS104で検出した逆方向の波形データのピーク位置tp2を第2のピーク位置PX2とする(ステップS112)。
CPU4−1は、このようにして第1のピーク位置PX1と第2のピーク位置PX2とを決定した後(ステップS108、S109、S110、S111、S112)、この決定した第1のピーク位置PX1および第2のピーク位置PX2を基にして順方向の波形データおよび逆方向の波形データの双方から波形データを切り出し、この切り出した波形データに対して相関演算を行って伝播時間差Δtを算出する(ステップS113)。
そして、CPU4−1は、この算出した伝播時間差Δtより前記の(3)式に従って流速Vを求め(ステップS114)、この求めた流速Vより前記の(4)式に従って流量Qを求める(ステップS115)。
このようにして、本実施の形態では、順方向の波形データのピーク位置tp1と逆方向の波形データのピーク位置tp2とのピーク間隔PWが所定の値PWthと比較され、ピーク間隔PWが所定の値PWth以上であった場合には、順方向の波形データのピークP1maxおよび逆方向の波形データのピークP2maxのうち値が大きい方の位置が正しいピークの位置と仮定され、この正しいピークの位置と仮定されたピークの位置が第1のピーク位置PX1として決定されるものとなる。
また、順方向の波形データのピークP1maxおよび逆方向の波形データのピークP2maxのうちその値が小さい方のピークを含む波形データについては、正しいピークの位置と仮定されたピーク位置(第1のピーク位置PX1)から所定の範囲内で本来のピークが探索され、この探索された本来のピークの位置が第2のピーク位置PX2として決定されるものとなる。
そして、この決定された第1のピーク位置PX1および第2のピーク位置PX2を基にして、順方向の波形データおよび逆方向の波形データの双方から波形データが切り出され、この切り出された波形データに対して相関演算を行うことによって伝播時間差Δtが求められる。これにより、順方向もしくは逆方向のシグナルがノイズよりも小さな振幅となってしまうような場合であっても、流量計測が正しく行われるようになる。
図5Aに順方向の波形データの具体例を示す。この順方向の波形データS1のピーク位置はtp1として検出されている。図5Bに逆方向の波形データの具体例を示す。この逆方向の波形データS2のピーク位置はtp2として検出されている。このピーク位置tp2は、ノイズにより生じたものであり、誤ったピーク位置である。
この例において、順方向の波形データS1のピーク位置tp1と逆方向の波形データS2のピーク位置tp2とのピーク間隔PWは所定の値PWth以上であり、順方向の波形データS1のピークP1maxの値の方が逆方向の波形データS2のピークP2maxの値よりも大きい。
このため、順方向の波形データS1のピーク位置tp1が正しいピークの位置と仮定され、この正しいピークの位置と仮定されたピーク位置tp1が第1のピーク位置PX1として決定される。そして、第1のピーク位置PX1(tp1)から所定の範囲(PX1−a〜PX1+b)内で、逆方向の波形データS2のピークが探索され、この探索されたピークの位置が第2のピーク位置PX2として決定される。
なお、本実施の形態では、ピークの値が大きい方を正しいピークの位置と仮定するが、ノイズにより生じたピーク位置が正しいピークの位置と仮定されてしまう場合もある。しかし、このようなケースは希であり、シグナルの検出に失敗する頻度は少ない。したがって、本実施の形態において、計測される流量が正しい確率は高い。また、毎回洗い直しで計測が行われるものとなり、ピーク位置の検出に失敗しても正しい状態に復帰することができ、初回の測定にも適用することができる。
クランプオン式超音波流量計では、100%の確率で正しく流量を計測することは原理的には難しい。このため、計測結果に対して、異常値であることを検出し前の値をホールドする、メディアンフィルタにより大きく外れた値を捨てる、移動平均により誤検出の影響を小さくするなどといった後処理が不可欠である。本実施の形態では、計測される流量が正しい確率を高めることができるので、ホールドを起こりにくくすることができる、メディアンフィルタや移動平均のデータ数を小さくし応答を高速化できる、といったような効果が期待できる。
なお、上述した実施の形態では、信号の振幅(波形データのピーク)としてプラス側のピークの高さを用いたが、流量計の設置条件によってはマイナス側のピークの方がより鮮明に識別できる場合もあり、このような場合にはマイナス側のピークの高さを用いてもよい。
図6に、本実施の形態の超音波流量計100における流量演算装置4の要部の機能ブロック図を示す。この流量演算装置4は、CPU4−1の処理機能として、順方向波形データ取得部41と、逆方向波形データ取得部42と、順方向ピーク位置検出部43と、逆方向ピーク位置検出部44と、ピーク間隔算出部45と、ピーク位置決定部46と、伝播時間差算出部47と、流速算出部48と、流量算出部49とを備えている。
この流量演算装置4において、順方向波形データ取得部41は、第1の超音波送受信器2から発射され第2の超音波送受信器3によって受信される超音波の波形データを順方向の波形データとして取得する。逆方向波形データ取得部42は、第2の超音波送受信器3から発射され第1の超音波送受信器2によって受信される超音波の波形データを逆方向の波形データとして取得する。
順方向ピーク位置検出部43は、順方向波形データ取得部41によって取得された順方向の波形データのピーク位置tp1を検出する。逆方向ピーク位置検出部44は、逆方向波形データ取得部42によって取得された逆方向の波形データのピーク位置tp2を検出する。
ピーク間隔算出部45は、順方向ピーク位置検出部43によって検出された順方向の波形データのピーク位置tp1と逆方向ピーク位置検出部44によって検出された逆方向の波形データのピーク位置tp2との間隔をピーク間隔PWとして算出する。
ピーク位置決定部46は、ピーク間隔算出部45によって算出されたピーク間隔PWが所定の値PWth以上であった場合(PW≧PWth)、順方向の波形データのピークおよび逆方向の波形データのピークのうち値が大きい方の位置を第1のピーク位置PX1として決定し、値が小さい方の波形データについては、第1のピーク位置PX1から所定の範囲(PX1−a〜PX1+b)内でピークを探索し、この探索したピークの位置を第2のピーク位置PX2として決定する。
また、ピーク位置決定部46は、ピーク間隔算出部45によって算出されたピーク間隔PWが所定の値PWth未満であった場合(PW<PWth)、順方向の波形データのピーク位置tp1を第1のピーク位置PX1、逆方向の波形データのピーク位置tp2を第2のピーク位置PX2として決定する。
伝播時間差算出部47は、ピーク位置決定部46によって決定された第1のピーク位置PX1と第2のピーク位置PX2とから伝播時間差Δtを算出する。流速算出部48は、伝播時間差算出部47によって算出された伝播時間差Δtより、前記の(3)式に従って流速Vを求める。流量算出部49は、流速算出部48によって算出された流速Vより、前記の(4)式に従って流量Qを求める。
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
1…配管、2…第1の超音波送受信器(上流側トランスデューサ)、3…第2の超音波送受信器(下流側トランスデューサ)、4…流量演算装置、4−1…CPU、4−2…RAM、4−3…ROM、4−5,4−6…インタフェース、41…順方向波形データ取得部、42…逆方向波形データ取得部、43…順方向ピーク位置検出部、44…逆方向ピーク位置検出部、45…ピーク間隔算出部、46…ピーク位置決定部、47…伝播時間差算出部、48…流速算出部、49…流量算出部。

Claims (8)

  1. 測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送受信器と前記第2の超音波送受信器との間で互いに逆方向に伝播する超音波の伝播時間の差に基づいて前記流体の流量を計測するように構成された超音波流量計において、
    前記第1の超音波送受信器から発射され前記第2の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データを順方向の波形データとして取得するように構成された順方向波形データ取得部と、
    前記第2の超音波送受信器から発射され前記第1の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データを逆方向の波形データとして取得するように構成された逆方向波形データ取得部と、
    前記順方向波形データ取得部によって取得された前記順方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置として検出するように構成された順方向ピーク位置検出部と、
    前記逆方向波形データ取得部によって取得された前記逆方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置として検出するように構成された逆方向ピーク位置検出部と、
    前記順方向ピーク位置検出部によって検出された前記順方向の波形データのピーク位置と前記逆方向ピーク位置検出部によって検出された前記逆方向の波形データのピーク位置との間隔をピーク間隔として算出するように構成されたピーク間隔算出部と、
    前記ピーク間隔算出部によって算出された前記ピーク間隔が所定の値以上である場合、前記順方向の波形データのピークおよび前記逆方向の波形データのピークのうち値が大きい方の位置を第1のピーク位置とし、値が小さい方のピークを含む波形データについては、前記第1のピーク位置から所定の範囲内でピークを探索し、この探索したピークの位置を第2のピーク位置とするように構成されたピーク位置決定部と、
    前記ピーク位置決定部によって決定された前記第1のピーク位置と前記第2のピーク位置とから前記伝播時間の差を算出するように構成された伝播時間差算出部と
    を備えることを特徴とする超音波流量計。
  2. 請求項1に記載された超音波流量計において、
    前記ピーク位置決定部は、
    前記ピーク間隔算出部によって算出された前記ピーク間隔が前記所定の値未満である場合、前記順方向の波形データのピーク位置を第1のピーク位置とし、前記逆方向の波形データのピーク位置を第2のピーク位置とするように構成されている
    ことを特徴とする超音波流量計。
  3. 請求項1又は2に記載された超音波流量計において、
    前記伝播時間差算出部は、
    前記ピーク位置決定部によって決定された前記第1のピーク位置および前記第2のピーク位置を基にして前記順方向の波形データおよび前記逆方向の波形データの双方から切り出した波形データに対して相関演算を行って前記伝播時間の差を算出するように構成されている
    ことを特徴とする超音波流量計。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載された超音波流量計において、
    前記ピーク位置決定部で用いられる前記所定の値は、
    計測可能な流量の上限値と下限値とから規定される、前記伝播時間の差が取り得る範囲以上の値として定められている
    ことを特徴とする超音波流量計。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載された超音波流量計において、
    前記ピーク位置決定部で用いられる前記所定の範囲は、
    計測可能な流量の上限値と下限値とから規定される、前記ピーク位置を探索する側の超音波の伝播時間が取り得る範囲として定められている
    ことを特徴とする超音波流量計。
  6. 測定対象の流体が流れる配管と、この配管の上流側に配置された第1の超音波送受信器と、前記配管の下流側に配置された第2の超音波送受信器とを備え、前記第1の超音波送受信器と前記第2の超音波送受信器との間で互いに逆方向に伝播する超音波の伝播時間の差に基づいて前記流体の流量を計測するように構成された超音波流量計に適用される流量計測方法において、
    前記第1の超音波送受信器から発射され前記第2の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データを順方向の波形データとして取得する順方向波形データ取得ステップと、
    前記第2の超音波送受信器から発射され前記第1の超音波送受信器によって受信される超音波の波形データを逆方向の波形データとして取得する逆方向波形データ取得ステップと、
    前記順方向波形データ取得ステップによって取得された前記順方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置として検出する順方向ピーク位置検出ステップと、
    前記逆方向波形データ取得ステップによって取得された前記逆方向の波形データのピークの時間軸上の位置をピーク位置として検出する逆方向ピーク位置検出ステップと、
    前記順方向ピーク位置検出ステップによって検出された前記順方向の波形データのピーク位置と前記逆方向ピーク位置検出ステップによって検出された前記逆方向の波形データのピーク位置との間隔をピーク間隔として算出するピーク間隔算出ステップと、
    前記ピーク間隔算出ステップによって算出された前記ピーク間隔が所定の値以上である場合、前記順方向の波形データのピークおよび前記逆方向の波形データのピークのうち値が大きい方の位置を第1のピーク位置とし、値が小さい方のピークを含む波形データについては、前記第1のピーク位置から所定の範囲内でピークを探索し、この探索したピークの位置を第2のピーク位置とするピーク位置決定ステップと、
    前記ピーク位置決定ステップによって決定された前記第1のピーク位置と前記第2のピーク位置とから前記伝播時間の差を算出する伝播時間差算出ステップと
    を備えることを特徴とする流量計測方法。
  7. 請求項6に記載された流量計測方法において、
    前記ピーク位置決定ステップは、
    前記ピーク間隔算出ステップによって算出された前記ピーク間隔が前記所定の値未満である場合、前記順方向の波形データのピーク位置を第1のピーク位置とし、前記逆方向の波形データのピーク位置を第2のピーク位置とする
    ことを特徴とする流量計測方法。
  8. 請求項6又は7に記載された流量計測方法において、
    前記伝播時間差算出ステップは、
    前記ピーク位置決定ステップによって決定された前記第1のピーク位置および前記第2のピーク位置を基にして前記順方向の波形データおよび前記逆方向の波形データの双方から切り出した波形データに対して相関演算を行って前記伝播時間の差を算出する
    ことを特徴とする流量計測方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022030251A1 (ja) * 2020-08-07 2022-02-10 オムロン株式会社 伝搬時間測定装置

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