JP2018127559A - 固形水彩絵具組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】パール顔料を含んだ際の色ムラを抑制することができる固形水彩絵具組成物を提供する。
【解決手段】固形水彩絵具組成物11は、パール顔料を含む30質量%以上の顔料と、25質量%以下の水と、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤とを含む。
【選択図】図1

Description

この発明は、固形水彩絵具組成物に関するものである。
従来から、水を含ませた筆でその表面を擦って筆に顔料成分を含ませ、画用紙等の描画対象に描画することができる固形水彩絵具組成物が、特開昭58−96661号公報(特許文献1)および特開2007−9198号公報(特許文献2)に開示されている。
特開昭58−96661号公報 特開2007−9198号公報
固形水彩絵具組成物はブロック状の形態を有しており、仕切りが設けられたパレットに色毎に配置されている。ユーザーは描画をする際に描画したい色に相当する固形水彩絵具組成物を目視で選択し、水を含ませた筆で固形水彩絵具組成物の表面を擦って固形水彩絵具組成物を筆に含ませることとしている。そして、固形水彩絵具組成物を含ませた筆により描画対象となる画用紙等に描画する。
ここで、固形水彩絵具組成物において、顔料として光が多重層反射されるパール顔料を用いる場合がある。このようなパール顔料については、一般的な顔料と異なり、固形水彩絵具組成物における顔料の良好な分散性が求められる。すなわち、パール顔料を用いた固形水彩絵具組成物は、顔料の分散性が良好でないと、色ムラとして目立ちやすい。このような状況は、好ましくない。
この発明の目的は、パール顔料を含んだ際の色ムラを抑制することができる固形水彩絵具組成物を提供することである。
この発明に係る固形水彩絵具組成物は、パール顔料を含む30質量%以上の顔料と、25質量%以下の水と、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤とを含む。
この発明に係る固形水彩絵具組成物は、30質量%以上の顔料と、25質量%以下の水とを含む。そして、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含むため、固形水彩絵具組成物としての顔料分散性および伸びが良好である。したがって、パール顔料を含んだ際の色ムラを抑制することができる。
この発明に係る固形水彩絵具組成物に含まれるアルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むことが好ましい。こうすることにより、より確実に顔料分散性および伸びを良好にして、色ムラを抑制することができる。
この発明に係る固形水彩絵具組成物は、さらにポリエチレングリコールを含むことが好ましい。こうすることにより、描画した際の塗膜の乾燥時間を調整して、描画のしやすさを確保することができる。
この発明に係る固形水彩絵具組成物において、顔料のうち、体質顔料以外の顔料の割合は、30質量%以上である。こうすることにより、色によらず、発色性を良好にすることができる。
この発明に係る固形水彩絵具組成物は、さらにカルボキシメチルセルロースエーテル系水溶性樹脂を含むことが好ましい。カルボキシメチルセルロースエーテル系水溶性樹脂を用いることにより、発色性の向上等を図ることができる。
また、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合は、10質量%以下であることが好ましい。このような含有割合とすることにより、より確実に良好な伸びを確保することができる。
また、この発明に係る固形水彩絵具組成物は、さらに消泡剤を含むことが好ましい。こうすることにより、固形水彩絵具組成物における消泡効果を得ることができる。
このような構成の固形水彩絵具組成物は、パール顔料を含んだ際の色ムラを抑制することができる。
この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物の外観を示す斜視図である。 この発明の一実施形態に係る複数の固形水彩絵具組成物が収容されたパレットの外観の一部を示す斜視図である。 この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物を用いて描画する際の筆の外観を示す斜視図である。 この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物の代表的な製造工程を示すフローチャートである。
以下、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物の外観を示す斜視図である。図1を参照して、この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物11は、直方体形状であって、いわゆるブロック状である。すなわち、未使用の状態において、直方体形状に成型される。使用されるに従い、その大きさは徐々に小さくなる。それぞれの角については、若干丸められた形状である。図1中の矢印Dで示す下向きに見た場合に、固形水彩絵具組成物11の表側に位置する一つの面12は、略正方形状である。
図2は、複数の固形水彩絵具組成物11が収容されたパレットの外観の一部を示す斜視図である。図2を参照して、パレット13には、固形水彩絵具組成物11を収容する複数の凹部14が形成されている。凹部14の形状は、固形水彩絵具組成物11の直方体形状に沿ったものである。それぞれの凹部14に、色の異なる複数の固形水彩絵具組成物11が収容されている。収容された固形水彩絵具組成物11は、その直方体形状を構成する一つの面12が表側に露出した状態である。
図3は、固形水彩絵具組成物11を用いて描画する際の筆の外観を示す斜視図である。図3を参照して、筆15は、描画する際に固形水彩絵具組成物11を含ませる毛部16と、描画時等に主にユーザーが握る胴部17とを備える。胴部17は、中央の領域で第一の部材18、および第二の部材19に分離可能な構成である。第二の部材19の内方側には空洞が設けられており、胴部17を分離して、第二の部材19の内側に水を収容することができる。第二の部材19の空洞に所定量の水を収容し、第一の部材18と第二の部材19を接合し、第二の部材19の領域をユーザーの指等で押圧することにより、第二の部材19内に収容させた水を第一の部材18を通じて毛部16側に染み出させることができる。すなわち、第二の部材19内に収容させた水により毛部16を適量の水で濡らすことができる。ユーザーは、胴部17を持ち、水で濡らせた毛部16により固形水彩絵具組成物11のうちの表側に露出する面12をある程度の圧力で数回擦って、固形水彩絵具組成物11の一部を筆15側に付着させる。そして、固形水彩絵具組成物11を含まれた筆15の毛部16により、画用紙等の描画対象に塗って描画する。色の選択については、固形水彩絵具組成物11の表面を見てユーザーが判断する。
なお、固形水彩絵具組成物11の形状については、直方体形状であることとしたが、これに限らず、立方体形状や薄板状であってもよいし、柱状や棒状であってもよい。すなわち、使用される用途や求められる使い勝手等に応じて、任意にその形状が定められる。
ここで、固形水彩絵具組成物11は、パール顔料を含む30質量%%以上の顔料と、25質量%以下の水と、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤とを含む。以下、固形水彩絵具組成物11を構成する成分の詳細について説明する。
(1)顔料
顔料としては、固形水彩絵具組成物11を着色する意味で、種々のものが用いられる。顔料としては、有機顔料、無機顔料、レーキ顔料、およびその他の固形水彩絵具組成物11に用いられる顔料として一般的な着色剤などが挙げられる。すなわち、固形水彩絵具組成物11を構成する顔料は、有機顔料、無機顔料、およびレーキ顔料からなる群から選択される一種または二種以上の物質とすることができる。
ここで、顔料として、光が多重層反射されるパール顔料を含む構成である。このようなパール顔料は、描画において昨今、特に要求される色である。また、描画時における色ムラが生じると見た目が好ましくないので、色ムラの抑制が望まれる。
顔料の含有割合については、30質量%以上である。また、固形水彩絵具組成物11に含まれる水は、25質量%以下である。すなわち、固形水彩絵具組成物11の全体に対して、30質量%以上の顔料が含まれる。このような構成によれば、図1に示すような固形水彩絵具組成物11としての形態を保つことができる。
ここで、顔料のうちの体質顔料については、過剰な添加により、色によっては発色性が損なわれるおそれがある。たとえば、上記したパール顔料と共に体質顔料を含有させる場合において、その傾向は顕著である。したがって、顔料のうち、体質顔料以外の顔料の含有割合を30質量%以上とすることが好ましい。こうすることにより、色によらず、発色性を良好にすることができる。
(2)セルロースエーテル系水溶性樹脂
固形水彩絵具組成物11に含まれるセルロースエーテル系水溶性樹脂は、主に紙に顔料を固結させる固結剤および展色剤として作用する。セルロースエーテル系水溶性樹脂としては、セルロースエーテルを含む水溶性樹脂であり、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。固形水彩絵具組成物11を構成するセルロース系水溶性樹脂は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC(Sodium Carboxymethyl Cellulose))、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、およびメチルヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される一種または二種以上の物質とすることができる。
セルロースエーテル系水溶性樹脂の含有割合として、過剰に含有させると、色によっては発色性が低下したり、水溶け性が低下したりする場合がある。したがって、全体に対して30質量%以下とすることが好ましい。
(3)他の水溶性樹脂
固形水彩絵具組成物11に含まれる他の水溶性樹脂として、展色剤として用いられる水溶性樹脂をさらに含むことが好ましい。具体的には、アラビアガム、デキストリン、ポリビニルアルコール(PVA(Polyvinyl Alcohol))、ポリビニルピロリドン(PVP(Polyvinylpyrrolidone))等が挙げられる。固形水彩絵具組成物11を構成する他の水溶性樹脂は、アラビアガム、デキストリン、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)からなる群から選択される一種または二種以上の物質とすることができる。
(4)湿潤剤
固形水彩絵具組成物11は、凍結防止剤、乾燥遅延剤として作用する湿潤剤を含むことが好ましい。湿潤剤は、描画を終えた後の塗膜のひび割れ防止にも作用する。湿潤剤としては、ポリエチレングリコール(PEG(Polyethylene glycol))、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、尿素等が挙げられる。固形水彩絵具組成物11を構成する湿潤剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、および尿素からなる群から選択される一種または二種以上の物質とすることができる。なお、上記したPEG等の含有の有無については、たとえば、ガスクロマトグラフィーによる分析で判断することができる。
(5)界面活性剤(分散剤)
固形水彩絵具組成物11は、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含む。アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は、いわゆる乳化や分散性に優れるアニオン界面活性剤の一種であり、特に水への溶解性が良好である。このように構成することにより、顔料を分散させる顔料分散性を良好にすることができると共に、伸びも良好にすることができる。したがって、いわゆる色ムラを抑制することができる。なお、このようなアルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有の有無については、たとえば、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)分析により判断することができる。
(6)界面活性剤(消泡剤)
固形水彩絵具組成物11は、消泡効果を奏する界面活性剤を含むことが好ましい。消泡効果を奏する界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、疎水性シリカ系界面活性剤、金属石鹸系界面活性剤、ポリエーテル系界面活性剤等が挙げられる。固形水彩絵具組成物11を構成する界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤、疎水性シリカ系界面活性剤、金属石鹸系界面活性剤、およびポリエーテル系界面活性剤からなる群から選択される一種または二種以上の物質とすることができる。
(7)その他の成分
固形水彩絵具組成物11は、上記(1)〜(6)の成分のほか、例えば、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
次に、この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物11の製造方法の概略について、説明する。図4は、この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物11の代表的な製造工程を示すフローチャートである。
図4を参照して、まず、顔料、セルロースエーテル系水溶性樹脂、他の水溶性樹脂、湿潤剤、界面活性剤、防腐剤、および水をそれぞれ所定量準備する。そして、ニーダーで準備した材料を混練する(S11:混練工程)。
次に、混練した混練物を土練機で成型する(S12:成型工程)。この場合、細長い棒状、具体的には、四角柱状となるよう成型する。なお、成型後、45℃の状態で24時間乾燥させる。この段階における成形物に含まれる水の含有割合は、色によって多少の差異はあるものの、5.0質量%〜16.0質量%程度である。
その後、成型したものを、所定の大きさに切断する(S13:切断工程)。この時に、上記した図1に示す固形水彩絵具組成物11の形状に近い形状となる。
そして、得られたものを乾燥させる(S14:乾燥工程)。乾燥工程については、自然乾燥である。このようにして、この発明の一実施形態に係る固形水彩絵具組成物11を得る。
成分組成の異なる固形水彩絵具組成物を実施例1〜実施例6に示す配合に沿って作製し、評価試験を実施した。具体的な評価試験の内容については、後述する。また、この発明の範囲外であり、成分組成の異なる固形水彩絵具組成物を比較例1〜比較例3に示す配合に沿って作製した。そして、同様に評価試験を実施した。実施例1〜実施例6、および比較例1〜比較例3の配合および評価結果については、表1および表2に示す。なお、表1および表2中の「−」は、材料が含まれていないことを示している。また、表1および表2中の数値の単位は、質量%である。以下に、実施例1〜実施例6、および比較例1〜比較例3の配合の詳細について説明する。
Figure 2018127559
Figure 2018127559
(実施例1)
実施例1に係る固形水彩絵具組成物の製造に際し、以下の材料を準備した。具体的には、顔料としてパール顔料である商品名「Iriodin 300 Gold Pearl」(メルク パフォーマンス マテリアル社製)、セルロースエーテル系水溶性樹脂としてカルボキシメチルセルロースである商品名「セロゲン5A」(第一工業製薬株式会社製)、水溶性樹脂としてアラビアガムである商品名「インスタントガム BA」(ネキシラ社製)、湿潤剤としてグリセリンである商品名「精製グリセリン」(新日本理化株式会社製)、同じく湿潤剤としてポリエチレングリコールである商品名「PEG−6000S」(三洋化成工業株式会社製、平均分子量8600)、分散剤であるアルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤として直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである商品名「ニューレックス ソフトタイプ 30」(日油株式会社製)、消泡剤として疎水性シリカ系界面活性剤である商品名「ノプコ8034−L」(サンノプコ株式会社製)、防腐剤として商品名「サンアイバックSA」(三愛石油株式会社製)、および水を準備した。各材料を表1に示す配合割合で混ぜ、図4に示す製造工程に従い、実施例1に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、42%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(実施例2)
実施例2に係る固形水彩絵具組成物の製造に際し、以下の材料を準備した。分散剤であるアルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤として直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである商品名「ニューレックス ソフトタイプ 30」の代わりに、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである商品名「ネオペレックス G−25」(花王株式会社製)を準備した。顔料、セルロースエーテル系水溶性樹脂、他の水溶性樹脂、湿潤剤、消泡剤、および防腐剤については、実施例1と同じものを用いた。各材料を表1に示す配合割合で混ぜ、図4に示す製造工程に従い、実施例2に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、42%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(実施例3)
実施例1に係る固形水彩絵具組成物の製造工程において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合と水の含有割合とを表1に示す割合とした以外は実施例1と同様の工程で実施例3に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、43%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(実施例4)
実施例1に係る固形水彩絵具組成物の製造工程において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合と水の含有割合とを表1に示す割合とした以外は実施例1と同様の工程で実施例4に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、38%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(実施例5)
実施例1に係る固形水彩絵具組成物の製造工程において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合と水の含有割合とを表1に示す割合とした以外は実施例1と同様の工程で実施例5に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、43%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(実施例6)
実施例1に係る固形水彩絵具組成物の製造工程において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合と水の含有割合とを表1に示す割合とした以外は実施例1と同様の工程で実施例6に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、36%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(比較例1)
比較例1に係る固形水彩絵具組成物の製造工程において、顔料、セルロースエーテル系水溶性樹脂、他の水溶性樹脂、湿潤剤、消泡剤、および防腐剤については、実施例1と同じものを用いた。なお、比較例1においては、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は含有されていない。各材料を表2に示す配合割合で混ぜ、図4に示す製造工程に従い、比較例1に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、43%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(比較例2)
比較例2に係る固形水彩絵具組成物の製造に際し、分散剤としてノニオン系界面活性剤である商品名「プライサーフA−212E」(第一工業製薬株式会社製)を準備した。顔料、他の水溶性樹脂、湿潤剤、消泡剤、および防腐剤については、実施例1と同じものを用いた。なお、比較例2においても、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は含有されていない。各材料を表2に示す配合割合で混ぜ、図4に示す製造工程に従い、比較例2に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、43%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
(比較例3)
比較例3に係る固形水彩絵具組成物の製造に際し、分散剤としてナフタレン・スルホネートのホルマリン縮合物である商品名「ラベリン FC−P」(第一工業製薬株式会社製)を準備した。顔料、他の水溶性樹脂、湿潤剤、消泡剤、および防腐剤については、実施例1と同じものを用いた。なお、比較例3においても、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は含有されていない。各材料を表2に示す配合割合で混ぜ、図4に示す製造工程に従い、比較例3に係る固形水彩絵具組成物を得た。得られた固形水彩絵具組成物における顔料の含有割合は、43%であり、水の含有割合は、0.3%であった。
次に、評価試験の内容について説明する。評価試験については、以下の二つの評価項目について実施した。
「顔料分散性」については、水をたっぷり含ませた筆(丸筆10号、ROWNEY DIANA KOLINSKY SABLE)で固形水彩絵具組成物の表面を5回擦り、画用紙にいわゆるジグザグに塗って顔料の分散性を目視で評価した。
顔料分散性の評価としては、筆跡が残らないものを「A」、筆跡が若干残るものを「B」、筆跡が完全に残るものを「C」として評価した。「A」および「B」の評価までが、問題のないレベルである。
「伸び」については、上記した顔料分散性と同じ方法で画用紙にジグザグに塗り、伸びを評価した。よく伸びて正常に塗布できるものを「A」、やや伸びにくく所々かすれるものを「B」、画用紙に浸透しやすく、かすれやすいものを「C」として評価した。「A」および「B」の評価が、問題のないレベルである。
表1および表2を参照して、実施例1〜実施例4については、「顔料分散性」および「伸び」は全て「A」の評価であり、優良なものとなっている。実施例5については、「伸び」について「A」の評価であるが、「顔料分散性」について「B」の評価である。したがって、良好な顔料分散性を確保したい場合には、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合を0.005質量%よりも多くするのが良い。実施例6については、「顔料分散性」について「A」の評価であるが、「伸び」について「B」の評価である。したがって、良好な伸びを確保したい場合には、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合を15.000質量%よりも少なくするのが良い。
これらに対し、比較例1〜比較例3を見てみると、少なくともいずれか一方の項目で「C」の評価となっている。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を全く含有しない比較例1については、「顔料分散性」の項目で「C」の評価となっている。したがって、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含有しない系については、「顔料分散性」が不十分である。アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含有せず、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩を含有した比較例2については、「顔料分散性」および「伸び」の双方の項目で「C」の評価となっている。したがって、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含有せず、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩のみを含有した系については、「顔料分散性」および「伸び」が不十分である。アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含有せず、ナフタレン・スルホネートのホルマリン縮合物を含有した比較例3についても、「顔料分散性」および「伸び」の双方の項目で「C」の評価となっている。したがって、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤を含有せず、ナフタレン・スルホネートのホルマリン縮合物のみを含有した系についても、「顔料分散性」および「伸び」が不十分である。
以上より、この発明に係る固形水彩絵具組成物によれば、パール顔料を含んだ際の色ムラを抑制することができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明に係る固形水彩絵具組成物は、パール顔料を含んだ際の色ムラの抑制が要求される場合に、特に有効に利用される。
11 固形水彩絵具組成物、12 面、13 パレット、14 凹部、15 筆、16 毛部、17 胴部、18 第一の部材、19 第二の部材。

Claims (7)

  1. パール顔料を含む30質量%以上の顔料と、
    25質量%以下の水と、
    アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤とを含む、固形水彩絵具組成物。
  2. 前記アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の固形水彩絵具組成物。
  3. さらにポリエチレングリコールを含む、請求項1または請求項2に記載の固形水彩絵具組成物。
  4. 前記顔料のうち、体質顔料以外の顔料の割合は、30質量%以上である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の固形水彩絵具組成物。
  5. さらにカルボキシメチルセルロースエーテル系水溶性樹脂を含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の固形水彩絵具組成物。
  6. 前記アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤の含有割合は、15質量%以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の固形水彩絵具組成物。
  7. さらに消泡剤を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の固形水彩絵具組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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