JP2018127366A - ガラス物品およびその製造方法 - Google Patents

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朋広 山田
Tomohiro Yamada
朋広 山田
秀文 小▲高▼
Hidefumi Odaka
秀文 小▲高▼
信孝 青峰
Nobutaka Aomine
信孝 青峰
崇平 見矢木
Takahira Miyagi
崇平 見矢木
鈴木 賢一
Kenichi Suzuki
賢一 鈴木
雄一 ▲桑▼原
雄一 ▲桑▼原
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修二 種田
Shuji Taneda
修二 種田
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Keisuke Abe
啓介 阿部
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Abstract

【課題】従来に比べて、アルカリに対して有意な耐性を有し、かつ砂などの汚れが付着しにくいガラス物品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明のガラス物品は、透光性基板と、透光性基板上に設けられる機能層と、機能層上に設けられ、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内である第1の保護層と、第1の保護層上に設けられ、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘーズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘーズ値を引いた値が1.0以内である第2の保護層とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、ガラス物品およびその製造方法に関し、特に、反射防止防汚膜付きガラスおよびその製造方法に関する。
ガラス基板に機能膜を付与した様々なガラス物品がある。例えば、建築用としてガラス物品を使用する形態において、機能膜を付与した面が屋外側になるように使用することがある。例えば、機能膜として、反射防止膜を選択した場合、高い透過性を有することから、建造物のファサード、店舗、および坪庭などの屋外建築物への適用が期待されている。
機能膜として反射防止膜を選択した場合として、ガラス基板の上に、TiO層、AlドープSiO層、TiO層、およびAlドープSiO層をこの順に有する積層膜を配置することにより、ガラス基板の反射率が抑制する文献がある(特許文献1)。
国際公開第WO2005/030663号
しかしながら、従来のガラス物品は、積層膜の耐アルカリ特性及び耐防汚特性が良好であるとは言い難い。
このため、例えば、従来のガラス物品を屋外建築物等に適用した場合、コンクリートなどに含まれるアルカリ成分を含む水分と接触することにより、機能膜が劣化するという問題がある。加えて、従来のガラス物品を屋外建築物等に適用した場合、ガラス物品の機能膜に砂などの汚れが付着することにより、ガラス物品の透光性が劣化するという問題がある。
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて、アルカリに対して有意な耐性を有し、かつ砂などの汚れが付着しにくいガラス物品及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の形態は、
透光性基板と、
前記透光性基板上に設けられる機能層と、
前記機能層上に設けられ、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内である第1の保護層と、
前記第1の保護層上に設けられ、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘーズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘーズ値を引いた値が1.0以内である第2の保護層と、を備えたことを特徴とするガラス物品である。
本発明の第2の形態は、
透光性基板を準備する工程と、
前記透光性基板上に機能層を設ける工程と、
シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法を用いて、前記機能層上に、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内である第1の保護層を設ける工程と、
ゾルゲル法を用いて、前記第1の保護層上に、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘーズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘーズ値を引いた値が1.5以内である第2の保護層を設ける工程と、を備えたことを特徴とするガラス物品の製造方法である。
本発明では、従来に比べて、従来に比べて、アルカリに対して有意な耐性を有し、かつ砂などの汚れが付着しにくいガラス物品及びその製造方法を提供することができる。
従来の反射防止膜付きガラスの構成を概略的に示した図である。 本発明による第1の反射防止膜付きガラスの一構成例を概略的に示した図である。 本発明による第2の反射防止膜付きガラスの一構成例を概略的に示した図である。 本発明による第3の反射防止膜付きガラスの一構成例を概略的に示した図である。 本発明による第4の反射防止膜付きガラスの一構成例を概略的に示した図である。 本発明による第5の反射防止膜付きガラスの一構成例を概略的に示した図である。 本発明による第6の反射防止膜付きガラスの一構成例を概略的に示した図である。 本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスの製造方法の一例を概略的に示したフロー図である。 例1に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。 例2に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。 例3に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。 例4に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。 例5に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。 例6に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。 例7に係るサンプルにおいて得られた、浸漬処理前後の反射率の変化を示したグラフである。
以下、図面を参照して、本発明について詳しく説明する。
(従来のガラス物品)
まず、本発明の構成および特徴をより良く理解するため、図1を参照して、従来のガラス物品(反射防止膜付きガラス)の構成例について、簡単に説明する。
図1には、従来の反射防止膜付きガラスの構成例を概略的に示す。
図1に示すように、従来の反射防止膜付きガラス10は、ガラス基板20と、積層膜30とで構成される。
ガラス基板20は、第1の表面22および第2の表面24を有する。積層膜30は、ガラス基板20の第1の表面22側に配置される。
積層膜30を構成する層の数、各層の材質および配置順等を適正に設計することにより、積層膜30に反射防止性を発現させることができる。また、これにより反射防止膜付きガラス10を得ることができる。
なお、通常、積層膜には、様々な構成のものが存在し、その全てをここで説明することは難しい。そこで、以下、一例として、前述の特許文献1に記載されているような、4層構成の積層膜について説明する。
この場合、図1に示すように、積層膜30は、ガラス基板20の第1の表面22に近い側から、第1の層40、第2の層45、第3の層50および第4の層55を順次積層することにより構成される。
第1の層40および第3の層50は、例えば、TiO層である。また、第2の層45および第4の層55は、例えば、SiO層である。このSiO層には、アルミニウムなどの他の元素がドープされても良い。
ここで、TiO層の屈折率は、約2.4程度である。また、SiO層の屈折率は、約1.47程度である。従って、積層膜30では、高屈折率層(第1の層40および第3の層50)と、低屈折率層(第2の層45および第4の層55)の繰り返し構造を有し、この繰り返し構造により、積層膜30に反射防止性を発現させることができる。
このように、ガラス基板20の第1の表面22に積層膜30を配置することにより、反射防止膜付きガラス10を得ることができる。
しかしながら、本願発明者らの知見によれば、このような従来の反射防止膜付きガラス10は、アルカリに対する耐性があまり良好ではないという問題がある。このため、例えば、反射防止膜付きガラス10を屋外建築物等に適用した場合、反射防止膜付きガラス10がコンクリートなどに含まれるアルカリ成分を含む水分と接触すると、積層膜30が劣化してしまう。また、積層膜30にそのような劣化が生じた場合、積層膜30による良好な反射低減効果が発現されず、反射防止膜付きガラス10の反射率が上昇してしまうという問題がある。
(本発明のガラス物品:耐アルカリ性を向上した反射防止膜付きガラス)
これに対して、本発明では、
第1および第2の表面を有するガラス基板と、前記ガラス基板の第1の表面に配置された第1の積層膜とを有する反射防止膜付きガラスであって、
前記第1の積層膜は、前記ガラス基板の第1の表面に近い側から、第1の層、第2の層、および最外層を有し、
前記第2の層は、前記第1の層に隣接して配置され、
前記最外層は、ジルコニアがドープされたシリカで構成され、
前記最外層の直下には、シリカを含まない層が配置されることを特徴とする反射防止膜付きガラスが提供される。
ジルコニアがドープされたシリカ層(以下、「ZrOドープSiO層」とも称する)は、アルカリに対して良好な耐性を示す。従って、本発明による反射防止膜付きガラスでは、積層膜の最外層として配置されたZrOドープSiO層が、アルカリに対する保護膜としての機能を示すようになる。このため、積層膜がアルカリ成分を含む水分と接触しても、積層膜が劣化することを有意に抑制することができる。
従って、本発明では、従来に比べてアルカリに対して有意に高い耐性を有する反射防止膜付きガラスを提供することができる。
ただし、本願発明者等によれば、ZrOドープSiO層の直下にシリカ層が配置された場合、そのような積層膜では、アルカリに対する耐性が低下することが見出されている。
以上の問題を回避するため、本発明では、ZrOドープSiO層の直下に、シリカ層が配置されないこと、すなわちZrOドープSiO層の直下には、シリカを含まない層が配置されることを第2の特徴とする。
この場合、反射防止膜付きガラスのアルカリに対する耐性が低下することを有意に抑制することができる。
なお、本願において、「最外層」と言う用語は、反射防止機能を発現させるために構成された積層膜において、最も外側に配置される層を意味する。従って、この「最外層」の上には、反射防止機能に影響しないように構成された、さらに別の1または2以上の層(例えば防汚層など)が設置される場合もあり得ることに留意する必要がある。換言すれば、「最外層」と言う用語は、反射防止機能発現用の積層膜における相対的な位置関係を表すために使用されており、「最外層」は、反射防止膜付きガラスにおいて、必ずしも最も外側に配置される層であるとは限られない。
(本発明の一実施例による反射防止膜付きガラス)
次に、図2を参照して、本発明の一実施例による反射防止膜付きガラス(以下、「第1の反射防止膜付きガラス」と称する)の構成について説明する。
図2に示すように、第1の反射防止膜付きガラス100は、ガラス基板120と、積層膜130とを有する。
ガラス基板120は、第1の表面122および第2の表面124を有し、積層膜130は、ガラス基板120の第1の表面122側に配置される。
図2に示す例では、積層膜130は、3層で構成され、すなわち第1の層140、第2の層145、および最外層160を有する。
第1の層140は、第2の層145よりも大きな屈折率を有する。例えば、第1の層140は、2.0以上の屈折率を有し、第2の層145は、1.4〜1.8の範囲の屈折率を有する。第2の層は、シリカ以外の層で構成される。
このような屈折率の異なる2つの層140、145を積層膜130に使用することにより、第1の反射防止膜付きガラス100に低反射特性を発現させることができる。
ここで、最外層160は、ジルコニアがドープされたシリカで構成され、すなわちZrOドープSiO層である。
このような構成の第1の反射防止膜付きガラス100は、最外層160にZrOドープSiO層を有するため、従来の反射防止膜付きガラスに比べて、有意に改善された耐アルカリ特性を発揮することができる。
また、第1の反射防止膜付きガラス100では、最外層160、すなわちZrOドープSiO層の直下に、シリカ層は配置されない。このため、第1の反射防止膜付きガラス100では、アルカリに対する耐性が時間とともに低下することを有意に抑制することができる。
(本発明の一実施例による別の反射防止膜付きガラス)
次に、図3を参照して、本発明の一実施例による別の反射防止膜付きガラス(以下、「第2の反射防止膜付きガラス」と称する)の構成について説明する。
図3に示すように、第2の反射防止膜付きガラス200は、図2に示した第1の反射防止膜付きガラス100と同様の構成を有する。従って、第2の反射防止膜付きガラス200において、第1の反射防止膜付きガラス100と同様の部材には、図2に示した参照符号に100を加えた参照符号が使用されている。例えば、第2の反射防止膜付きガラス200は、ガラス基板220と、積層膜230とを有する。
ただし、この第2の反射防止膜付きガラス200では、積層膜230の構成が、前述の第1の反射防止膜付きガラス100の積層膜130の構成とは異なっている。
より具体的には、図3に示すように、積層膜230は、5層で構成され、すなわち第1の層240、第2の層245、第3の層250、第4の層255、および最外層260を有する。
ここで、第1の層240、第2の層245、および最外層260は、それぞれ、前述の第1の層140、第2の層145、および最外層160と同様の構成を有する。
ただし、第2の層245は、第1の反射防止膜付きガラス100の第2の層145とは異なり、シリカ層であっても良いことに留意する必要がある。最外層260の直下には、第4の層255が配置され、第2の層245は、直接最外層260と接触しないためである。
第3の層250は、隣接する第2の層245よりも大きな屈折率、例えば2.0以上の屈折率を有する。なお、第3の層250は、第1の層240と同じ組成であっても良い。
また、第4の層255は、隣接する第3の層250よりも小さな屈折率、例えば1.4〜1.8の範囲の屈折率を有する。なお、第4の層255は、シリカ層ではない限り、第2の層245と同じ組成であっても良い。
このような屈折率の異なる第1の層240および第2の層245の組、ならびに屈折率の異なる第3の層250および第4の層255の組を有する積層膜230を使用することにより、第2の反射防止膜付きガラス200に低反射特性を発現させることができる。
ここで、第2の反射防止膜付きガラス200においても、第1の反射防止膜付きガラス100と同様の効果、すなわち従来の反射防止膜付きガラスに比べて、有意に改善された耐アルカリ特性が得られることは当業者には明らかであろう。
なお、図3に示した例では、第2の反射防止膜付きガラス200の積層膜230は、第1の層240〜最外層260の5層で構成されている。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、第2の反射防止膜付きガラス200の積層膜230を構成する層の数は、4層以上である限り、特に限られない。
例えば、積層膜230は、4層で構成されても良い。この場合、例えば、図3に示した積層膜230において、第4の層255は、省略されても良い。
あるいは、積層膜230は、6層以上で構成されても良い。例えば、図3に示した積層膜230において、第4の層255と最外層260の間に、1または2以上の追加層が配置されても良い。この場合、これらの追加層は、高屈折率層と低屈折率層の組を1組以上含んでも良い。
(本発明による反射防止膜付きガラスを構成する各部材について)
次に、本発明による反射防止膜付きガラスを構成する各部材について詳しく説明する。
なお、ここでは、図3に示した第2の反射防止膜付きガラス200を例に、各構成部材について説明する。従って、各部材を表す際には、図3に示した参照符号を使用する。ただし、以下の説明が、図2に示した第1の反射防止膜付きガラス100、さらには以降に示す反射防止膜付きガラスにも同様に適用できることは当業者には明らかであろう。
(ガラス基板220)
ガラス基板220は、第1の表面222および第2の表面224を有し、第1の表面222には、積層膜230が配置される。
ガラス基板220の組成は、特に限られない。ガラス基板220は、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、およびアルミノシリケートガラス等であっても良い。また、ガラス基板220は、物理強化または化学強化されていても良い。化学強化されたガラスであれば、ガラスの板厚が1.5mm以下とすることができる。例えば、ソーダライムガラスの化学強化されたガラス基板の場合、酸化物基準の質量百分率表示でSiOを60〜75%、Alを2〜12%、MgOを2〜11%、CaOを0〜10%、SrOを0〜3%、BaOを0〜3%、NaOを10〜18%、KOを0〜8%、ZrOを0〜4%含有している(以上の成分の合計は100%以下であり、また通常95%以上である)。また、アルミノシリケートガラスの化学強化されたガラス基板の場合、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを61〜70%、Alを1〜18%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%、SrOを0〜1%、BaOを0〜1%、NaOを8〜18%、KOを0〜6%、ZrOを0〜4%、Bを0〜8%含有している。
(積層膜230)
積層膜230は、ガラス基板220の側から順に、第1の層240、第2の層245、第3の層250、第4の層255...を有する。なお、積層膜230は、最上部に、最外層260、すなわちZrOドープSiO層を有する。
ここで、第1の層240は、第2の層245よりも大きな屈折率を有するため、第1の層240を「高屈折率層」240と称し、第2の層245を「低屈折率層」245と称し、両者を「異屈折率層組」と称する。
この場合、図2の例では、積層膜130中の異屈折率層組の数は、1であり(合計3層)、図3の例では、積層膜230中の異屈折率層組の数は、2となる(合計5層)。異屈折率層組の数は、3以上(合計7層以上)であっても良い。
また、最外層260の直下は、必ずしも低屈折率層(145、255)である必要はなく、最外層260の直下は、高屈折率層(例えば第3の層250)であっても良い。なお、例えば、最外層260の直下が第3の層250(高屈折率層)である場合、異屈折率層組の数は、1.5と表記することができる。
このような表記に従えば、積層膜230中の異屈折率層組の数は、2.5、3.5、4.5...等であっても良い。
(第1の層240)
第1の層240は、直上に配置される第2の層245よりも大きな屈折率を有する。
第1の層240は、例えば、2.0以上の屈折率を有しても良い。第1の層240の屈折率は、例えば2.1以上であっても良い。
そのような「高屈折率層」240を構成する材料としては、これに限られるものではないが、例えば、チタニア、酸化ニオブ、ジルコニア、セリア、および酸化タンタル等が挙げられる。
第1の層240の厚さは、例えば5nm〜20nmの範囲であり、7nm〜17nmの範囲であることが好ましい。
(第2の層245)
第2の層245は、直下に配置される第1の層240よりも小さな屈折率を有する。また、異屈折率層組の数が1.5以上の場合、第2の層245は、直上に配置される第3の層245よりも小さな屈折率を有する。
第2の層245は、例えば、1.4〜1.8の範囲の屈折率を有しても良い。第2の層245の屈折率は、例えば1.45〜1.7の範囲であっても良い。
そのような「低屈折率層」245を構成する材料としては、これに限られるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。シリカには、アルミニウムなどの他の元素がドープされても良い。ただし、異屈折率層組の数が1.0の場合、第2の層245は、シリカ以外の層である必要がある。
第2の層245の厚さは、例えば15nm〜45nmの範囲であり、20nm〜40nmの範囲であることが好ましい。
(第3の層250)
積層膜230において、異屈折率層組の数が1.5以上の場合、第3の層250が存在する。
第3の層250は、直下に配置される第2の層245よりも大きな屈折率を有する。また、異屈折率層組の数が2.0以上の場合、第3の層250は、直上に配置される第4の層255よりも大きな屈折率を有する。
第3の層250は、例えば、2.0以上の屈折率を有しても良い。第3の層250の屈折率は、例えば2.1以上であっても良い。
第3の層250の厚さは、例えば45nm〜125nmの範囲であり、50nm〜115nmの範囲であることが好ましい。
第3の層250は、第1の層240と同じ材質で構成されても良く、同じ屈折率を有しても良い。
(第4の層255)
積層膜230において、異屈折率層組の数が2.0以上の場合、第4の層255が存在する。
第4の層255は、直下に配置される第3の層250よりも小さな屈折率を有する。また、異屈折率層組の数が2.5以上の場合、第4の層255は、直上に配置される第5の層よりも小さな屈折率を有する。
第4の層255は、例えば、1.4〜1.8の範囲の屈折率を有しても良い。第4の層255の屈折率は、例えば1.45〜1.7の範囲であっても良い。
そのような「低屈折率層」255を構成する材料としては、これに限られるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。シリカには、アルミニウムなどの他の元素がドープされても良い。
第4の層255の厚さは、例えば0nm〜110nmの範囲であり、0nm〜100nmの範囲であることが好ましい。
第4の層255は、第2の層245と同じ材質で構成されても良く、同じ屈折率を有しても良い。ただし、異屈折率層組の数が2.0の場合、第4の層255は、シリカ以外の層である必要がある。
(第5の層以降)
もし存在する場合、第5の層、第6の層、…第nの層(nは、5以上の整数)は、隣接する層と、相互に異屈折率層組を構成しても良い。
例えば、第5の層は、第4の層および第6の層よりも大きな屈折率を有し、第6の層は、第5の層および第7の層よりも小さな屈折率を有し、以下同様である。
これらの層の仕様としては、前述の(第1の層240)および(第2の層245)の欄の記載を参照できる。
(最外層260)
前述のように、最外層260は、ZrOドープSiO層で構成される。
最外層260の厚さは、特に限られないが、例えば5nm〜110nmの範囲であり、例えば10nm〜100nmの範囲であっても良い。
ジルコニアのドープ量は、特に限られないが、例えば、5at%〜50at%の範囲であっても良い。ジルコニアのドープ量が5at%以上の場合、積層膜230における耐アルカリ特性が向上する。ジルコニアのドープ量の下限は、例えば6at%であり、7at%であることが好ましく、8at%であることがより好ましく、9at%であることがさらに好ましい。一方、ジルコニアのドープ量が50at%以下の場合、酸に対する耐性が向上する。ジルコニアのドープ量は、10at%〜33at%の範囲であることが好ましい。
ジルコニアのドープ量が5at%の場合、最外層260の屈折率は、約1.50程度であり、ジルコニアのドープ量が10at%の場合、最外層260の屈折率は、約1.54程度であり、ジルコニアのドープ量が33at%の場合、最外層260の屈折率は、約1.69程度であり、ジルコニアのドープ量が50at%の場合、最外層260の屈折率は、約1.79程度である。
積層膜230を構成する各層は、いかなる方法で設置されても良い。各層は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、およびCVD(化学気相成長)法等により成膜されても良い。
(本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス)
次に、図4を参照して、本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス(以下、「第3の反射防止膜付きガラス」と称する)の構成について説明する。
図4に示すように、第3の反射防止膜付きガラス300は、ガラス基板320と、第1の積層膜330と、第2の積層膜365とを有する。
第3の反射防止膜付きガラス300は、図3に示した第2の反射防止膜付きガラス200と同様の部材を有する。従って、第3の反射防止膜付きガラス300において、第2の反射防止膜付きガラス200と同様の部材には、図3に示した参照符号に100を加えた参照符号が使用されている。
ただし、この第3の反射防止膜付きガラス300では、ガラス基板320の両表面322、324側に、積層膜が配置されている点で、前述の第2の反射防止膜付きガラス200の構成とは異なっている。
より具体的には、図4に示すように、ガラス基板320の第1の表面322側には、第1の積層膜330が配置され、ガラス基板320の第2の表面324側には、第2の積層膜365が配置される。
図4に示した例では、第1の積層膜330は、合計4層で構成され、異屈折率層組の数は、1.5である。すなわち、第1の積層膜330は、「高屈折率層」としての第1の層340、「低屈折率層」としての第2の層345、「高屈折率層」としての第3の層350、および第1の最外層360を有する。
同様に、第2の積層膜365は、合計4層で構成され、異屈折率層組の数は、1.5である。すなわち、第2の積層膜365は、「高屈折率層」としての第1の層370、「低屈折率層」としての第2の層375、「高屈折率層」としての第3の層380、および第2の最外層390を有する。
第3の反射防止膜付きガラス300では、ガラス基板320の両側に配置された第1の積層膜330および第2の積層膜365のそれぞれが、異屈折率層組を有する。従って、第3の反射防止膜付きガラス300では、より良好な低反射特性を発現させることができる。
ここで、第3の反射防止膜付きガラス300においても、第1の最外層360および第2の最外層390の存在のため、第1および第2の反射防止膜付きガラス100、200と同様の効果、すなわち従来の反射防止膜付きガラスに比べて、有意に改善された耐アルカリ特性が得られることは当業者には明らかであろう。
なお、図4に示した例では、第3の反射防止膜付きガラス300において、第1の積層膜330は、第1の層340〜最外層360の4層で構成されている。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、第1の積層膜330を構成する層の数は、3層以上である限り、特に限られない。
例えば、第1の積層膜330は、図2に示した積層膜130のような3層構造を有しても良い(異屈折率層組の数=1)。また、第1の積層膜330は、図3に示した積層膜230のような5層構造を有しても良い(異屈折率層組の数=2)。あるいは、第1の積層膜330は、6層以上で構成されても良い(異屈折率層組の数≧2.5)。
また、図4に示した例では、第2の積層膜365は、第1の積層膜330と同様の層構成を有する。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、第2の積層膜365は、低反射特性を発現できる限り、いかなる構成を有しても良い。
例えば、第2の積層膜365は、前述の図1〜図3に示した積層膜30、130、230のような構成を有しても良い。
さらに、第2の積層膜365は、必ずしもZrOドープSiO層で構成された最外層390を有する必要はなく、第2の最外層として、いかなる層が配置されても良い。
例えば、第3の反射防止膜付きガラス300を建物の窓ガラスとして使用することを想定した場合、室内側では、雨によるコンクリートからのアルカリ成分の流出は生じ難い。従って、ZrOドープSiO層で構成された最外層を含まない積層膜の側が室内側となるようにして、反射防止膜付きガラスを設置した場合、そのような積層膜がアルカリ成分によって劣化する現象は生じ難く、反射防止膜付きガラスの低反射特性の低下を抑制することが可能になる。
ただし、ガラス基板の両側に、ZrOドープSiO層で構成された最外層が配置された場合、いずれの側を屋外側に使用しても、アルカリ成分による積層膜の劣化を有意に抑制することができる。このため、図4に示したような第3の反射防止膜付きガラス300の場合、ガラス基板320の向きに留意することなく、反射防止膜付きガラスを使用することができる。
(本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス)
次に、図5を参照して、本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス(以下、「第4の反射防止膜付きガラス」と称する)の構成について説明する。
図5に示すように、第4の反射防止膜付きガラス400は、図2に示した第1の反射防止膜付きガラス100と同様の構成を有する。すなわち、第4の反射防止膜付きガラス400は、ガラス基板420と、積層膜430とを有し、積層膜430は、第1の層440、第2の層445、および最外層460の3層で構成される。
ただし、この第4の反射防止膜付きガラス400では、積層膜430の構成が、前述の第1の反射防止膜付きガラス100の積層膜130の構成とは異なっている。
より具体的には、積層膜430の第1の層440は、直上の第2の層445よりも小さな屈折率を有し、第2の層445は、第1の層440の屈折率よりも大きな屈折率を有する。すなわち、積層膜430は、積層膜130とは逆に、ガラス基板420に近い側から、「低屈折率層」と「高屈折率層」の異屈折率層組を有する。
積層膜430がこのような構成の異屈折率層組を有する場合も、第4の反射防止膜付きガラス400に低反射特性を発現させることができる。
なお、積層膜430において、最外層460は、前述のようなZrOドープSiO層で構成される。また、最外層460の直下には、シリカ層は配置されない。
従って、第4の反射防止膜付きガラス400においても、第1の反射防止膜付きガラス100と同様の効果、すなわち従来の反射防止膜付きガラスに比べて、有意に改善された耐アルカリ特性が得られる。
ここで、積層膜430における第1の層440は、前述の積層膜230の第2の層245のような「低屈折率層」であっても良い。そのような「低屈折率層」の仕様は、前述の(第2の層245)の欄に記載されている。また、積層膜430における第2の層445は、前述の積層膜230の第1の層240のような「高屈折率層」であっても良い。そのような「高屈折率層」の仕様は、前述の(第1の層240)の欄に記載されている。
(本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス)
次に、図6を参照して、本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス(以下、「第5の反射防止膜付きガラス」と称する)の構成について説明する。
図6に示すように、第5の反射防止膜付きガラス500は、図3に示した第2の反射防止膜付きガラス200と同様の構成を有する。すなわち、第5の反射防止膜付きガラス500は、ガラス基板520と、積層膜530とを有し、積層膜530は、第1の層540、第2の層545、第3の層550、第4の層555、および最外層560の5層で構成される。
ただし、この第5の反射防止膜付きガラス500では、積層膜530の構成が、前述の第2の反射防止膜付きガラス200の積層膜230の構成とは異なっている。
より具体的には、積層膜530の第1の層540は、直上の第2の層545よりも小さな屈折率を有する。また、第2の層545は、第1の層540および第3の層550の屈折率よりも大きな屈折率を有する。さらに、第3の層550は、第2の層545および第4の層555の屈折率よりも小さな屈折率を有し、第4の層555は、第3の層550の屈折率よりも大きな屈折率を有する。
すなわち、第5の反射防止膜付きガラス500では、積層膜530の層構成が、図3に示した第2の反射防止膜付きガラス200の積層膜230とは反対になっており、ガラス基板520に近い側から、「低屈折率層」と「高屈折率層」の異屈折率層組を、2組有する。
積層膜530がこのような構成の異屈折率層組を有する場合も、第5の反射防止膜付きガラス500に低反射特性を発現させることができる。
なお、積層膜530において、最外層560は、前述のようなZrOドープSiO層で構成される。また、最外層560の直下には、シリカ層は配置されない。
従って、第5の反射防止膜付きガラス500においても、第1の反射防止膜付きガラス100〜第4の反射防止膜付きガラス400と同様の効果、すなわち従来の反射防止膜付きガラスに比べて、有意に改善された耐アルカリ特性が得られる。
ここで、積層膜530における第1の層540および第3の層550は、前述の積層膜230の第2の層245のような「低屈折率層」であっても良い。そのような「低屈折率層」の仕様は、前述の(第2の層245)の欄に記載されている。また、積層膜530における第2の層545および第4の層555は、前述の積層膜230の第1の層240のような「高屈折率層」であっても良い。そのような「高屈折率層」の仕様は、前述の(第1の層240)の欄に記載されている。
なお、図6に示した例では、第5の反射防止膜付きガラス500において、積層膜530は、第1の層540〜最外層560の5層で構成されている。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、積層膜530を構成する層の数は、4層以上である限り、特に限られないことに留意する必要がある。
(本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス)
次に、図7Aを参照して、本発明の一実施例によるさらに別の反射防止膜付きガラス(以下、「第6の反射防止膜付きガラス」と称する)の構成について説明する。
図7Aに示すように、第6の反射防止膜付きガラス600は、ガラス基板620と、第1の積層膜630と、第2の積層膜665とを有する。
第6の反射防止膜付きガラス600は、図6に示した第5の反射防止膜付きガラス500と同様の部材を有する。従って、第6の反射防止膜付きガラス600において、第5の反射防止膜付きガラス500と同様の部材には、図6に示した参照符号に100を加えた参照符号が使用されている。
ただし、この第6の反射防止膜付きガラス600では、ガラス基板620の両側に、積層膜が配置されている点で、前述の第5の反射防止膜付きガラス500の構成とは異なっている。
より具体的には、図7Aに示すように、ガラス基板620の第1の表面622側には、第1の積層膜630が配置され、ガラス基板620の第2の表面624側には、第2の積層膜665が配置される。
図7Aに示した例では、第1の積層膜630は、合計4層で構成され、異屈折率層組の数は、1.5である。すなわち、第1の積層膜630は、「低屈折率層」としての第1の層640、「高屈折率層」としての第2の層645、「低屈折率層」としての第3の層650、および第1の最外層660を有する。
同様に、第2の積層膜665は、合計4層で構成され、異屈折率層組の数は、1.5である。すなわち、第2の積層膜665は、「低屈折率層」としての第1の層670、「高屈折率層」としての第2の層675、「低屈折率層」としての第3の層680、および第2の最外層690を有する。
第6の反射防止膜付きガラス600では、ガラス基板620の両側に配置された第1の積層膜630および第2の積層膜665のそれぞれが、異屈折率層組を有する。従って、第6の反射防止膜付きガラス600では、より良好な低反射特性を発現させることができる。
また、第1の最外層660および第2の最外層690は、ZrOドープSiO層で構成される。さらに、第1の最外層660の直下、および第2の最外層690の直下には、シリカ層は、配置されない。
従って、第6の反射防止膜付きガラス600においても、第4および第5の反射防止膜付きガラス400、500と同様の効果、すなわち従来の反射防止膜付きガラスに比べて、有意に改善された耐アルカリ特性が得られることは当業者には明らかであろう。
なお、図7Aに示した例では、第6の反射防止膜付きガラス600において、第1の積層膜630は、第1の層640〜最外層660の4層で構成されている。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、第1の積層膜630を構成する層の数は、3層以上である限り、特に限られない。
例えば、第1の積層膜630は、図5に示した積層膜430のような3層構造を有しても良い(異屈折率層組の数=1)。また、第1の積層膜630は、図6に示した積層膜530のような5層構造を有しても良い(異屈折率層組の数=2)。あるいは、第1の積層膜630は、6層以上で構成されても良い(異屈折率層組の数≧2.5)。
また、図7Aに示した例では、第2の積層膜665は、第1の積層膜630と同様の層構成を有する。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、第2の積層膜665は、低反射特性を発現できる限り、いかなる構成を有しても良い。
さらに、第2の積層膜665は、必ずしもZrOドープSiO層で構成された最外層690を有する必要はなく、第2の最外層として、いかなる層が配置されても良い。
(本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスの製造方法)
次に、前述のような特徴を有する本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスの製造方法の一例について、簡単に説明する。
なお、以下に示す反射防止膜付きガラスの製造方法は、単なる一例であって、本発明による反射防止膜付きガラスは、別の方法で製造されても良い。また、以下の記載では、一例として、図3に示した第2の反射防止膜付きガラス200において、積層膜230中の第4の層255が省略された構成(すなわち4層構成の積層膜を有する反射防止膜付きガラス)を例に、その製造方法について説明する。
図7Bには、そのような反射防止膜付きガラスの製造方法のフローの一例を概略的に示す。
図7Bに示すように、この製造方法(以下、「第1の製造方法」と称する)は、
ガラス基板の第1の表面の側に、第1の層を形成するステップ(ステップS110)と、
前記第1の層の直上に、第2の層を形成するステップ(ステップS120)と、
前記第2の層の直上に、第3の層を形成するステップであって、前記第3の層は、シリカを含まない層で構成されるステップ(ステップS130)と、
前記第3の層の直上に、ジルコニアがドープされたシリカで構成された層を形成するステップであって、前記ジルコニアがドープされたシリカで構成された層は、シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法により形成されるステップ(ステップS140)と、
ステップS140後に、前記ガラス基板を熱処理するステップ(ステップS150)と、
を有する。
ただし、ステップS150は、省略しても良い。
以下、各ステップについて説明する。なお、以降の説明では、明確化のため、各部材を説明する際に、図3に示した参照符号を使用する。
(ステップS110)
まず、第1および第2の表面222、224を有するガラス基板220が準備される。ガラス基板220の組成は、特に限られない。ガラス基板220は、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、およびアルミノシリケートガラス等であっても良い。
次に、ガラス基板220の第1の表面222の側に、第1の層240が形成される。
前述のように、第1の層240は、以降のステップS120で形成される第2の層245よりも屈折率の高い材料で構成される。第1の層240は、例えば、チタニア、酸化ニオブ、ジルコニア、セリア、または酸化タンタル等であっても良い。
第1の層240の形成方法は、特に限られない。第1の層240は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、およびCVD(化学気相成長)法等により、ガラス基板220の第1の表面222に成膜されても良い。
(ステップS120)
次に、第1の層240の直上に、第2の層245が形成される。
前述のように、第2の層245は、第1の層240よりも屈折率が低い材料であって、以降のステップS130で形成される第3の層255よりも屈折率の低い材料で構成される。第2の層245は、例えば、シリカまたはアルミナ等であっても良い。
第2の層245の形成方法は、特に限られない。第2の層245は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、およびCVD(化学気相成長)法等により成膜されても良い。
(ステップS130)
次に、第2の層245の直上に、第3の層250が形成される。
前述のように、第3の層250は、第2の層245よりも屈折率の高い材料で構成される。第3の層250は、例えば、チタニア、酸化ニオブ、ジルコニア、セリア、または酸化タンタル等であっても良い。なお、第3の層250は、シリカを含まない層で形成される。
第3の層250の形成方法は、特に限られない。第3の層250は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、およびCVD(化学気相成長)法等により成膜されても良い。
(ステップS140)
次に、第3の層250の直上に、ZrOドープSiO層(いわゆる最外層260)が形成される。
最外層260におけるジルコニアのドープ量は、特に限られないが、例えば、5at%〜50at%の範囲であっても良い。
最外層260は、例えば、スパッタリング法により成膜することができる。
特に、スパッタリング法の中では、シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法が好ましい。この「シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法」では、通常の平坦ターゲットの代わりに、中空円筒状ターゲットが使用される。この中空円筒状ターゲットを延伸軸方向に回転させながら、スパッタリング成膜が実施される(例えば特許第4639764号明細書)。
後に詳しく説明するように、最外層260を「シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法」で成膜した場合、積層膜へのデブリ(異物)の付着が有意に抑制される。従って、欠陥の少ない反射防止膜付きガラスを得ることが可能となる。
(ステップS150)
次に、必要な場合、第1の表面222に積層膜230(第1の層240、第2の層245、第3の層250、および最外層260)が形成されたガラス基板220が熱処理される。熱処理は、ガラス基板220を強化したり、曲げたりするために実施される。ただし、このステップは、省略されても良い。
熱処理は、例えば、大気下、550℃〜700℃の温度範囲で実施される。熱処理は、例えば、650℃まで加熱されたガラス基板220を、空気ブローにより急冷することにより実施されても良い。
以上の工程により、ガラス基板220および積層膜230により構成された、反射防止膜付きガラスを製造することができる。
以上、本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスの製造方法の一例について説明した。ここで、上記記載が単なる一例に過ぎず、本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスがその他の方法で製造され得ることは当業者には明らかである。例えば、上記記載では、最外層260のみがシリンドリカルマグネトロンスパッタリング法で成膜される場合を例に説明したが、さらに、第1の層〜第3の層の少なくとも一つをシリンドリカルマグネトロンスパッタリング法で成膜しても良い。
また、上記記載では、図3に示した第2の反射防止膜付きガラス200において、積層膜230中の第4の層255が省略された構成を例に、その製造方法について説明した。しかしながら、上記第1の製造方法が、その他の構成の積層膜を有する反射防止膜付きガラスについても、同様に適用し得ることは、当業者には明らかである。
(本発明のガラス物品:反射防止防汚膜付きガラス)
さらに本発明のガラス物品は、透光性基板と、透光性基板上に設けられる機能層と、機能層上に設けられ、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内である第1の保護層と、第1の保護層上に設けられ、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘーズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘーズ値を引いた値が1.0以内である第2の保護層と、を備えたことを特徴とする。
ここで、第2の保護膜は、防汚層が良い。防汚層は粒子の凝集体およびバインダーを含む複数の突起体を表面に有し、該突起体中、基体面からの最大高さを有する突起体を基準として、90%以上の高さを有する突起体Tについて、隣り合う該突起体Tの頂点間距離の平均値が100〜1,000nmであり、前記防汚層が配置された基体の面積に対する前記粒子による総被覆面積の割合が7〜100%である。
本明細書において、「粒子の凝集体およびバインダーを含む突起体」を単に「突起体」ともいう。
防汚層は、防汚層の表面に突出した、前記粒子の凝集体およびバインダーを含む複数の突起体と、それ以外の領域(たとえば、凝集していない粒子とバインダーとを含む凸部および/またはバインダー)とで、その表面に凹凸が形成される。突起体は、基体の表面に不均一に存在する、粒子の凝集体とバインダーとの集合体であるため、粒子単独で形成される凹凸に比べて、より適切な凹凸が形成され、防汚性がより向上する傾向がある。防汚性物品に付着する汚れは、防汚層の表面に存在する凸部に接触するため、本発明においては、汚れは突起体に接触する。そのため、防汚層において、汚れに接触する接触面積をより小さくすることができ、防汚性により優れる防汚層が得られる。一方、後述する頂点間距離が100nm以上あることで、汚れが油汚れの場合でも、毛管現象による吸着を抑制することができる。その結果、油汚れが付きにくく、また付着したとしても水洗により容易に除去することが可能となる。
突起体の形状は、特に限定されず、例えば、略四角錐、略三角錐、略円錐等が挙げられる。突起体の頂点から高さ50%までの領域を部分球面に近似したとき、上記部分球面の曲率半径は、特に限定されないが、5nm以上が好ましく、5nm〜15nmがより好ましい。また、突起体の高さは、特に限定されないが、10nm以上が好ましく、30〜200nmがより好ましい。突起体の高さは、基体面から突起体の頂点までの高さであり、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
突起体の底面のサイズは、特に限定されないが、10〜700nmが好ましく、30〜200nmがより好ましい。また、突起体の底面(基体に平行な面)と側面との角度の平均値は、特に限定されないが、10〜90°が好ましく、20〜70°がより好ましい。突起体の底面と側面との角度が、10°以上であれば、より急峻な突起体が得られている。ここで、突起体の底面のサイズとは、突起体の底面形状が内接する円の直径とする。突起体の底面サイズは、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
防汚層において、突起体中、基体面からの最大高さを有する突起体を基準として、90%以上の高さを有する突起体Tについて、隣り合う該突起体Tの頂点間距離の平均値(以下、単に「頂点間距離」ともいう。)が100〜1,000nmであり、100〜800nmが好ましく、100〜500nmがより好ましい。頂点間距離が、100〜1,000nmであることは、防汚層の表面に、突起体Tにより形成される凹凸の間隔が大きいことを意味する。また、突起体Tが、2以上の粒子およびバインダーを含むため、単独粒子およびバインダーを含む凸部で形成される防汚層の表面粗さに比べて、大きな凸部構造が形成されていることを意味する。頂点間距離は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。具体的には、頂点間距離は、防汚性物品の断面写真から、基板の防汚層を有する面に平行な方向に、所定の領域内に存在する突起体中、最大高さを有する突起体を選択し、その90%以上の高さを有する突起体Tを選択し、これら突起体Tについて、隣り合う突起体Tの頂点間距離(すなわち、頂点間隔)を測定し、平均値を算出することにより求めることができる。好ましくは、頂点間距離は、実施例において後述する「頂点間距離」の測定方法により測定することができる。
防汚層が配置された基体の面積に対する、粒子による総被覆面積の割合(以下、「凸部被覆率」ともいう。)は、7〜100%である。凸部被覆率が7%未満であると、防汚層において、汚れに接触できる、粒子の凝集体およびバインダーを含む突起体の存在割合が少なく、充分な防汚性が得られない。凸部被覆率は、10〜100%が好ましく、20〜100%がより好ましく、50〜100%が特に好ましい。凸部被覆率は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。具体的には、実施例において後述する「凸部被覆率」の測定方法により測定することができる。
防汚層における突起体の数は、特に限定されないが、30〜100個/μmが好ましく、50〜100個/μmがより好ましい。突起体の数は、例えば、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
防汚層の表面粗さ(以下、「Ra」ともいう。)は、特に限定されないが、5〜30nmが好ましく、6〜25nmがより好ましく、7〜20nmが特に好ましい。Raが5nm以上であれば、単独粒子およびバインダーを含む凸部の頂点より膜厚が薄い部分と汚れとの接触が抑えられ、より優れた防汚性が得られる。30nm以下であれば、耐摩耗強度に優れる。Raは、走査型プローブ顕微鏡で測定することができる。
(粒子)
粒子は、後述するバインダーと共に集合体を形成し、防汚層の表面に突起体を形成できるものであれば特に限定されない。粒子として、無機粒子および有機粒子が挙げられ、無機粒子が好ましい。無機粒子として、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の粒子が挙げられる。粒子として、酸化ケイ素の粒子が好ましい。粒子が酸化ケイ素の粒子であれば、光の散乱が抑制され、基材の色味を損なわず、特に基材がガラスの場合に粒子が酸化ケイ素の粒子であることが好ましい。
粒子は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
粒子が2種以上の組合せである場合は、粒子が酸化ケイ素を主成分とするのが好ましい。粒子が、酸化ケイ素を主成分とすることで、より容易に、より適切な形状を有する突起体が形成され、防汚性がより向上する傾向がある。本明細書において、「主成分」とは、粒子中の酸化ケイ素の含有率が、50質量%以上、好ましくは75質量%以上であることをいう。
粒子の形状は、特に限定されないが、球状およびパールネックレス状等が挙げられる。粒子として、パールネックレス状シリカが特に好ましい。粒子がパールネックレス状シリカであれば、防汚層が形成するときに、より適切な凹凸を形成できる突起体が形成され、防汚性がより向上する傾向がある。パールネックレス状シリカは、平均一次粒子径が5〜300nmである球状粒子が、複数個連結して二次凝集した、直線状または分岐を有していてもよい細長い形状のシリカ粒子である。
粒子の平均一次粒子径は、特に限定されないが、5〜300nmが好ましく、10〜100nmがより好ましく、10〜50nmがさらに好ましく、10〜30nmが特に好ましい。粒子の平均粒子径が5nm以上である場合、より容易に凝集して突起体を形成しやすくなり、防汚性がより向上する傾向がある。また、粒子の平均粒子径が300nm以下であれば、可視光の波長よりも十分に短いため、ヘーズ値をより低減させることができる。
パールネックレス状粒子の二次粒子径は、40〜200nmが好ましく、50〜100nmがより好ましく、60〜90nmが特に好ましい。パールネックレス状粒子において、二次粒子を構成する各粒子の平均一次粒子径は、好ましいものを含み、上記した粒子の平均粒子径が挙げられる。
粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡により観察した値であり、平均二次粒径は、動的光散乱法により測定した値である。
なお、粒子には、本発明の効果を損なわない範囲内で、鎖状粒子を含有してもよい。
鎖状粒子とは、例えば、10〜100nmの平均一次粒径dを有し、60〜500nmの平均長さ(L)、および3〜20の平均一次粒径に対する平均長さの比(L/d)を有する、細長い形状を有する粒子である。鎖状粒子およびパールネックレス状粒子は、いずれも細長い形状であるが、両者は球状部分の存在割合が異なる。パールネックレス状粒子は、電子顕微鏡による二次元像において、球状部分に起因する円状図形が真円度70%以上を有し、かつ各円状図形の内接円の合計面積がパールネックレス状粒子全投影面積の70%以上を占め、かつ各円状図形の内接円が互いに重ならない。ここで、真円度とは、対象とする図形輪郭の外接円の半径に対する内接円の半径の比率で表され、真円では100%となる。
球状シリカ粒子の市販品として、IPA−ST、IPA−STL、IPA−STZL(いずれも、日産化学工業社製)が挙げられる。
パールネックレス状シリカ粒子の市販品として、ST−PS−S、ST−PS−SO、ST−PS−M、ST−PS−MO(いずれも、日産化学工業社製)が挙げられる。
鎖状シリカ粒子の市販品として、ST−OUP、ST−U(いずれも、日産化学工業社製)が挙げられる。
(バインダー)
バインダーは、粒子および基体を接着することができるものであれば特に限定されず、無機バインダーが挙げられる。無機バインダーとして、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化スズ等の金属酸化物が挙げられる。バインダーは、酸化ケイ素がより好ましい。バインダーが酸化ケイ素であれば、防汚性がより向上する傾向がある。酸化ケイ素は、加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解物またはケイ酸の加水分解物であるのが好ましく、アルコキシシラン化合物の加水分解物またはケイ酸のアルカリ金属塩からアルカリ金属の一部を除去した脱塩ケイ酸の加水分解物がより好ましい。なお、これらの加水分解物には、未反応のシラノール基(Si−OH)基を有していてもよい。
バインダーが2種以上のバインダーの混合物である場合、酸化ケイ素を主成分として含むのが好ましい。ここで、主成分とは、バインダーに含まれる酸化ケイ素の含有率が、50質量%以上であり、好ましくは75質量%以上であることをいう。
バインダーは、後述するバインダー前駆体の硬化物が用いられる。
バインダーは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
防汚層において、粒子とバインダーとの質量比(粒子/バインダー)が、7/93〜95/5であるのが好ましい。粒子とバインダーとの質量比が7/93以上であれば、基体表面に適切な突起体の頂点間距離の平均値を有する防汚層を形成できるために、防汚性がより向上する傾向があり、95/5以下であれば、基体と防汚層との密着力が充分である傾向がある。粒子とバインダーとの質量比は、粒子が無機粒子である場合は、金属酸化物換算であり、粒子が有機粒子である場合は、粒子の質量は有機粒子の質量である。
(更なる成分)
防汚層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更なる成分を含有することができる。更なる成分として、界面活性剤、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。更なる成分の含有率は、防汚層中、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
(膜厚)
防汚層の膜厚は、特に限定されないが、5〜350nmが好ましく、8〜300nmがより好ましく、10〜300nmが特に好ましい。防汚層の膜厚が、5nm以上であれば、防汚性が充分に発揮する傾向があり、350nm以下であれば、機械的強度に優れ、また経済性に優れる。ここで膜厚は、電子顕微鏡等により得られた膜断面画像から、基板の防汚層を有する面に平行な方向に1.5μmの範囲において、最大高さを有する突起体から、高い順に10番目の突起体までを10点抽出し、それら10点の突起体の高さを平均することにより求められる値である。
(汚れおよび防汚性)
防汚性物品は、様々な汚れに対して、防汚性を有する。汚れとして、大気中の砂塵、コンクリート壁由来のアルカリ分が残ったもの(水の乾きジミ)、水アカ、ガラス自体のヤケなどの無機系の汚れ、大気中の煤煙や自動車の排気ガス、たばこの煙、油などの有機系の汚れが挙げられる。防汚性物品は、砂塵、油汚れに対して、より優れた防汚効果を有する。防汚性物品の防汚性は、例えば、後述の実施例における「汚れ付着試験」により測定されるヘイズ値変化で評価することができる。防汚性物品のヘイズ値変化は、後述の実施例における「汚れ付着試験」により測定された場合、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。ヘイズ値変化が5%超であると、実用上の防汚性が発現できない。なお、ヘイズ値は、市販のヘイズ測定装置を用いて測定することができる。
(本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスの製造方法)
さらに本発明では、反射防止防汚膜付きガラスの製造方法であって、
(1)ガラス基板の第1の表面の側に、第1の層を形成するステップと、
(2)前記第1の層の直上に、第2の層を形成するステップと、
(3)前記第2の層の直上に、第3の層を形成するステップであって、前記第3の層は、シリカを含まない層で構成されるステップと、
(4)前記第3の層の直上に、ジルコニアがドープされたシリカで構成された最外層を形成するステップであって、前記ジルコニアがドープされたシリカで構成された最外層は、シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法により形成されるステップと、
(5)前記最外層の直上に、多孔質シリカで構成された防汚層を形成するステップであって、前記防汚層は、ゾルゲル法により形成されるステップと、
を有する、反射防止防汚膜付きガラスの製造方法が提供される。
なお、以下に示す反射防止防汚膜付きガラスの製造方法は、単なる一例であって、本発明による反射防止防汚膜付きガラスは、別の方法で製造されても良い。
反射防止防汚膜付きガラスの製造方法の製造方法は、基板上に、突起体を形成できる粒子とバインダー前駆体とを含み、該突起体を形成できる粒子と該バインダー前駆体との、金属酸化物換算での質量比が、7/93〜95/5である防汚層形成組成物を付与して、防汚層形成組成物層を形成する工程と、該防汚層形成組成物層を加熱処理して、防汚層を形成する工程とを含む。
好ましくは、防汚性物品の製造方法は、基体上に、平均一次粒子径が5〜300nmであるパールネックレス状シリカと酸化ケイ素前駆体とを含み、該パールネックレス状シリカと該酸化ケイ素前駆体との、酸化ケイ素換算での質量比(パールネックレス状シリカ/酸化ケイ素前駆体)が、7/93〜95/5である防汚層形成組成物を付与して、防汚層形成組成物層を形成する工程と、該防汚層形成組成物層を加熱処理して、防汚層を形成する工程とを含む。
(防汚層形成組成物)
防汚層形成組成物は、突起体を形成できる粒子とバインダー前駆体とを含む。
(突起体を形成できる粒子)
突起体を形成できる粒子としては、平均一次粒子径が5〜300nmであるパールネックレス状シリカが好ましい。球状のシリカ粒子を含む防汚層形成組成物を基体表面に塗布したのでは、粒子が比較的均一に積層しやすいため、得られる被膜は防汚性を充分に発現させる程度の凹凸は形成されない。
(バインダー前駆体)
バインダー前駆体とは、加熱処理によりバインダーを形成する成分である。バインダー前駆体は、無機バインダー前駆体が挙げられ、酸化ケイ素前駆体、酸化アルミニウム前駆体、酸化チタン前駆体、酸化ジルコニウム前駆体、酸化タンタル前駆体、酸化スズ前駆体等の金属酸化物前駆体が挙げられる。酸化ケイ素前駆体として、加水分解性基を有するシラン化合物およびケイ酸が挙げられる。酸化ケイ素前駆体以外のバインダー前駆体として、加水分解性基を有する金属化合物が挙げられる。金属酸化物前駆体は、加水分解反応により金属酸化物を形成する成分である。バインダー前駆体として、酸化ケイ素前駆体が好ましい。防汚層形成組成物が、酸化ケイ素前駆体を含有することにより、形成される防汚層と基体との密着性をより向上させることができる。
バインダー前駆体は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
(酸化ケイ素前駆体)
酸化ケイ素前駆体としては、ケイ酸および加水分解性基を有するシラン化合物が挙げられる。酸化ケイ素前駆体としては、後述するケイ酸のアルカリ金属塩からアルカリ金属の一部を除去した脱塩ケイ酸またはアルコキシシラン化合物もしくはその部分加水分解縮合物が好ましい。防汚層形成組成物が、ケイ酸のアルカリ金属塩からアルカリ金属の一部を除去した脱塩ケイ酸および/またはアルコキシシラン化合物もしくはその部分加水分解縮合物を含有することで、形成される防汚層と基体との密着性をより向上させることができる。
(ケイ酸)
ケイ酸として、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸が挙げられ、メタケイ酸が好ましい。ケイ酸は、ケイ酸のアルカリ金属塩からアルカリ金属の少なくとも一部を除去した脱塩ケイ酸(以下、単に「脱塩ケイ酸」ともいう。)が好ましい。脱塩ケイ酸は、陽イオン交換樹脂を用いて、ケイ酸のアルカリ金属塩の水溶液からアルカリ金属イオンを減らす方法により得られるのが好ましい。脱塩ケイ酸のアルカリ金属イオンの量は、特に限定されないが、ケイ酸100質量部に対して、アルカリ金属イオンが0.001〜1質量部が好ましく、0.001〜0.2質量部がより好ましく、0.001〜0.15質量部が特に好ましい。アルカリ金属イオン濃度は、セイコーインスツルメンツ社製SPS4000などを用いて、ICP発光分析にて測定することができる。
陽イオン交換樹脂としては、特に限定されないが、強酸性陽イオン交換樹脂(RSOH型)、弱酸性陽イオン交換樹脂(RCOOH型)等が挙げられ、強酸性陽イオン交換樹脂が反応速度の点で好ましい。使用する陽イオン交換樹脂の量、接触時間、接触方法等を制御することで、減らすアルカリ金属イオンの量を調節できる。
ケイ酸のアルカリ金属塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムおよびケイ酸カリウム等が挙げられ、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸リチウムが好ましく、ケイ酸ナトリウムが好ましい。
ケイ酸ナトリウムの水溶液としては、SiO/NaOの組成比が異なる材料が知られており、NaOの含有比が小さい材料がアルカリ金属イオンを除去しやすいので好ましい。市販のケイ酸ナトリウムとしては、ケイ酸ソーダ1号(SiO/NaOのモル比:2.0/1.0〜2.3/1.0)、ケイ酸ソーダ2号(同モル比:2.4/1.0〜2.7/1.0)、ケイ酸ソーダ3号(同モル比:3.0/1.0〜3.3/1.0)、ケイ酸ソーダ4号(同モル比:3.7/1.0〜3.9/1.0)がある。NaOの含有比が小さいケイ酸ソーダ3号または4号が特に好ましい。
ケイ酸リチウムの水溶液としては、SiO/LiOの組成比が異なる材料が知られており、LiOの含有比が小さい材料がアルカリ金属イオンを除去しやすいので好ましい。市販のケイ酸リチウムとしては、ケイ酸リチウム35(SiO/LiOのモル比:3.5/1.0)(ケイ酸リチウム35とは日本化学工業社製の商品名である。以下、45、75についても同じ。)、ケイ酸リチウム45(同モル比:4.5/1.0)、ケイ酸リチウム75(同モル比:7.5/1.0)がある。特に、LiOの含有比が小さいケイ酸リチウム75が特に好ましい。
(加水分解性基を有するシラン化合物)
加水分解性基を有するシラン化合物は、1分子中にケイ素原子に結合する1〜4の加水分解性基を有する化合物である。加水分解性基として、アルコキシ基、イソシアナト基、アシルオキシ基、アミノキシ基、ハロゲン基等が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。よって、加水分解性基を有するシラン化合物として、アルコキシシラン化合物が好ましい。また、アルコキシシラン化合物は、少なくとも一部の分子同士が加水分解縮合している縮合物(以下、「アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物」ともいう。)であってもよい。
アルコキシシラン化合物は、1分子中にケイ素原子に結合する1〜4のアルコキシ基を有する化合物である。
アルコキシシラン化合物として、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
(RO)SiR (4−p) (I)
式中、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、pは1〜4の数を示す。RまたはRが複数存在する場合、それらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
は、炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチルが挙げられ、メチル、エチルが好ましい。Rにおける、炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖または分岐状であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル等が挙げられる。Rは、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。Rにおける、置換基は、特に限定されないが、エポキシ基、グリシドキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、イソシアナト基、ヒドロキシ基、アミノ基、フェニルアミノ基、アルキルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、ウレイド基、メルカプト基等が挙げられる。なお、Rにおける、「炭素数1〜10のアルキル基」は、置換基を除いたアルキル基部分の炭素数が1〜10であることを意味する。
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の1分子中に4のケイ素原子に結合するアルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の1分子中にケイ素原子に結合する1〜3のアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。アルコキシシラン化合物としては、テトラアルコキシシラン化合物が好ましい。
(質量比)
防汚層形成組成物において、突起体を形成できる粒子とバインダー前駆体との質量比(突起体を形成できる粒子/バインダー前駆体)は、7/93〜95/5である。突起体を形成できる粒子とバインダー前駆体との質量比は、金属酸化物換算である。例えば、防汚層形成組成物が、平均一次粒子径が5〜300nmであるパールネックレス状シリカと酸化ケイ素前駆体とを含む場合、パールネックレス状シリカと酸化ケイ素前駆体との、酸化ケイ素換算での質量比(パールネックレス状シリカ/酸化ケイ素前駆体)が、7/93〜95/5である。防汚層形成組成物において、突起体を形成できる粒子とバインダー前駆体との、金属酸化物換算での質量比が7/93未満であれば、基体上に粒子が充分に存在せず、防汚性が劣り、95/5超であれば、防汚層と基体との密着性が充分な防汚層が得られない。なお、防汚層形成組成物がアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物を含有する場合、アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物の含有量は、酸化ケイ素の換算量である。
(水および酸触媒)
防汚層形成組成物は、バインダー前駆体の加水分解縮合物が得られる条件において、水および酸触媒を含んでいてもよい。
防汚層形成組成物は、水を含んでいてもよい。防汚層形成組成物が水を含有することにより、加水分解縮合反応が進行する。水の量は、バインダー前駆体100質量部に対して、10〜500質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましい。ここで、バインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
防汚層形成組成物は、酸触媒を含んでいてもよい。防汚層形成組成物が、酸触媒を含有することにより、バインダー前駆体の加水分解縮合の反応速度を調整することが可能となる。酸触媒として、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。酸触媒の量は、バインダー前駆体100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、0.2〜3.5質量部がより好ましい。ここで、バインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
(溶剤)
防汚層形成組成物は、溶剤を含有してもよい。防汚層形成組成物が、溶剤を含有することで、作業性が向上する傾向がある。溶剤は、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の分散性が良好であり、かつこれらの成分に対する反応性が低い溶剤であれば特に限定されない。溶剤は、アルコール(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)、エステル(酢酸エステル(酢酸ブチル)等)、エーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(メチルエチルケトン等)、水(イオン交換水等)等が挙げられ、エステルおよびアルコールが好ましく、アルコールがより好ましい。溶剤は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。なお、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の少なくとも1つは、それぞれ単独または2以上の組合せと溶剤との混合物として使用される場合がある。この場合には、該混合物中に含まれる溶剤を防汚層形成組成物における溶剤としてもよく、さらに他の溶剤を加えて防汚層形成組成物としてもよい。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の合計100質量部に対して、1,000〜100,000質量部が好ましく、2,000〜50,000質量部がより好ましい。溶剤の含有量が、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の合計100質量部に対して、1,000質量部以上であれば加水分解、縮合反応の急激な進行を防ぐことができ、100,000質量部以下であれば、加水分解、縮合反応がより進行する。ここで、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
(更なる成分)
防汚層形成組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で更なる成分を含有することができる。このような成分として、界面活性剤、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤、顔料等が挙げられる。
防汚層形成組成物中の更なる成分の含有量は、特に限定されないが、突起体を形成できる粒子およびバインダー前駆体の合計100質量部に対して、0.02〜1質量部が好ましく、0.02〜0.5質量部がより好ましく、0.02〜0.3質量部が特に好ましい。ここで、バインダー前駆体の量は、金属酸化物換算の量である。
(防汚層形成組成物の付与方法)
防汚層形成組成物の付与は、ウェットコーティング法で行うことができる。ウェットコーティング法としては、特に限定されないが、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、フローコート、ダイコート等が挙げられ、スピンコートが好ましい。防汚層形成組成物は、基体上の少なくとも一部の表面に付与され、基体の少なくとも1つの主面の全面に付与されるのが好ましい。防汚層形成組成物層の厚みは、所望の防汚層が得られる厚みとなる量であれば特に限定されない。
基体上に付与される防汚層形成組成物の付与量は、前記した防汚層の厚みとなる量であれば特に限定されず、固形分として1.6〜1,600g/mとすることが好ましく、8.0〜800g/mとすることがより好ましい。本発明において、成分の固形分換算の含有量とは、水等の揮発性成分を除いた残渣の質量をいう。
防汚層形成組成物層を加熱処理することにより、バインダー前駆体が単独で、または突起体を形成できる粒子と反応して、防汚層が形成される。防汚層形成組成物が、パールネックレス状シリカおよび酸化ケイ素前駆体を含む場合、酸化ケイ素前駆体が反応して、バインダーが得られる。酸化ケイ素前駆体が、ケイ酸およびアルコキシシラン化合物である場合、ケイ酸およびアルコキシシラン化合物が加水分解縮合して、ケイ酸およびアルコキシシラン化合物の加水分解物である酸化ケイ素が得られる。なお、ケイ酸およびアルコキシシラン化合物の少なくとも一部は、場合により、パールネックレス状シリカ粒子に存在するシラノール基と加水分解縮合する。
防汚層形成組成物層の熱処理は、所定温度に設定した電気炉やガス炉や赤外加熱炉などの任意の加熱手段により行なうことができる。熱処理温度は、20〜700℃が好ましく、80〜500℃がより好ましく、100〜400℃が特に好ましい。熱処理温度が20℃以上であると、基体と防汚層との密着力がより向上し、700℃以下であると、基材の熱による劣化が抑制され、また生産性に優れる。熱処理時間は、熱処理温度により異なるが、1〜180分の間での熱処理が好ましく、より好ましくは5〜120分であり、特に好ましくは10〜60分である。熱処理時間が、1分以上であると、基体と防汚層との密着力がより向上し、180分以下であると、基材の熱による劣化が抑制され、また生産性に優れる。
次に、本発明の耐アルカリ性を備えた実施例について説明する。なお、以下の説明において、例1〜例4は、実施例であり、例5〜例7は、比較例である。
(例1)
以下の方法で、ガラス基板の一方の表面に積層膜を構成して、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例1に係るサンプル」と称する)を製作した。
例1に係るサンプルは、以下のように製作した。
まず、縦25mm×横50mm×厚さ2mmのガラス基板(ソーダライムガラス)を準備した。
次に、スパッタリング法により、このガラス基板の一方の表面に、第1の層〜第4の層からなる、合計4層からなる積層膜を形成した。積層膜は、ガラス基板に近い側から、以下の層構成を有する:
第1の層:TiO層、厚さ11nm
第2の層:SiO層、厚さ31nm
第3の層:TiO層、厚さ99nm
第4の層:90at%SiO−10at%ZrO層、厚さ83nm
第1の層は、ターゲットとしてTiOxターゲット(x<2)(製品名TXOターゲット:AGCセラミックス株式会社製)を使用し、Ar+O雰囲気(酸素8vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.37Paとした。
第2の層は、ターゲットとしてSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.17Paとした。
第3の層は、ターゲットとして、前述のTiOxターゲット(x<2)を使用し、Ar+O雰囲気(酸素8vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.37Paとした。
第4の層は、ターゲットとして10at%のZrがドープされたSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.12Paとした。
なお、ガラス基板の積層膜が配置されていない側の表面には、反射防止処理(粗表面化処理)を行った。
(例2)
例1と同様の方法で、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例2に係るサンプル」と称する)を製作した。ただし、この例2では、積層膜は、以下の層構成とした:
第1の層:TiO層、厚さ13nm
第2の層:SiO層、厚さ28nm
第3の層:TiO層、厚さ97nm
第4の層: 80at%SiO−20at%ZrO層、厚さ68nm
なお、第4の層は、ターゲットとして20at%のZrがドープされたSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.12Paとした。
(例3)
例1と同様の方法で、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例3に係るサンプル」と称する)を製作した。ただし、この例3では、積層膜は、以下の層構成とした:
第1の層:TiO層、厚さ16nm
第2の層:SiO層、厚さ25nm
第3の層:TiO層、厚さ65nm
第4の層: 67at%SiO−33at%ZrO層、厚さ76nm
なお、第4の層は、ターゲットとして33at%のZrがドープされたSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.12Paとした。
(例4)
例1と同様の方法で、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例4に係るサンプル」と称する)を製作した。ただし、この例4では、ガラス基板の両側に、同一の積層膜を形成した。(従って、ガラス基板に対して、反射防止処理(粗表面化処理)は実施していない。)
各積層膜は、以下の層構成とした:
第1の層:TiO層、厚さ12nm
第2の層:SiO層、厚さ30nm
第3の層:TiO層、厚さ99nm
第4の層:90at%SiO−10at%ZrO層、厚さ81nm
(例5)
例1と同様の方法で、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例5に係るサンプル」と称する)を製作した。ただし、この例5では、積層膜は、以下の層構成とした:
第1の層:TiO層、厚さ13nm
第2の層:SiO層、厚さ28nm
第3の層:TiO層、厚さ97nm
第4の層:SiO層、厚さ81nm
なお、第4の層は、ターゲットとしてSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.17Paとした。
(例6)
例1と同様の方法で、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例6に係るサンプル」と称する)を製作した。ただし、この例6では、ガラス基板の両側に、同一の積層膜を形成した。(従って、ガラス基板に対して、反射防止処理(粗表面化処理)は実施していない。)
各積層膜は、以下の層構成とした:
第1の層:TiO層、厚さ11nm
第2の層:AlドープSiO層、厚さ31nm
第3の層:TiO層、厚さ97nm
第4の層:AlドープSiO層、厚さ86nm
なお、第2の層は、ターゲットとして10wt%のAlがドープされたSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.17Paとした。
第4の層は、第2の層と同様の成膜条件で成膜した。
(例7)
例5と同様の方法で、反射防止膜付きガラス用サンプル(以下、「例7に係るサンプル」と称する)を製作した。ただし、この例7では、積層膜は、以下の層構成とした:
第1の層:TiO層、厚さ11nm
第2の層:SiO層、厚さ30nm
第3の層:TiO層、厚さ103nm
第4の層:SiO層、厚さ17nm
第5の層:90at%SiO−10at%ZrO層、厚さ60nm
なお、第5の層は、ターゲットとして10at%のZrがドープされたSiターゲットを使用し、Ar+O雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタリング法により成膜した。スパッタリング圧力は、0.12Paとした。
(評価)
前述の方法で作製した例1〜例7に係る各サンプルを用いて耐アルカリ特性の評価を行った。耐アルカリ特性の評価は、以下の耐アルカリ特性試験により実施した。
(耐アルカリ特性試験)
各サンプルに対して、積層膜が配置された側(例4および例6に係るサンプルではどちらか一方の側)から光を照射し、分光光度計により反射率(初期反射率)を測定する。
次に、各サンプルを、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させる。その後、サンプルを水溶液から取り出し、純水で洗浄した後、乾燥させる。
乾燥後のサンプルを用いて、浸漬処理前と同様の測定を行い、反射率(処理後反射率)を測定する。
各サンプルにおいて、初期反射率と処理後反射率を比較し、耐アルカリ特性を評価する。
ここで、最上層は、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内であることが好ましく、0.3以内であることがより好ましく、0.1以内であることが特に好ましい。
(可視光反射率)
反射防止膜付きガラスの可視光反射率は、低いほど低反射特性が良いと言える。
ガラス基板の一方の表面のみに積層膜が形成され、もう一方の表面を粗表面化処理した状態において、JIS R 3106に基づいて測定される当該反射防止膜付きガラスの可視光反射率が1%を超える場合、低反射特性は不十分である。前記可視光反射率は、1%以下であることが好ましい。
ガラス基板の両表面に積層膜が形成された状態において、JIS R 3106に基づいて測定される当該反射防止膜付きガラスの可視光反射率が2%を超える場合、低反射特性は不十分である。前記可視光反射率は、2%以下であることが好ましい。特に、前記可視光反射率は、1%以下であることがより好ましい。
(反射色)
一般に、反射色が赤色系やオレンジ色系の反射防止膜付きガラスは敬遠される傾向にあり、反射色が青色系や緑色系の反射防止膜付きガラスが好まれることが多い。ただし、反射色が青色系や緑色系であっても、彩度が強過ぎる場合はやはり敬遠される傾向にある。
標準イルミナントD65、10度視野での反射色を、JIS Z 8729によるL表色系の色座標(a,b)で表したとき、反射防止膜付きガラスの反射色が、(0,0)、(20,−20)、(−15,−20)、(−15,10)、および(0,10)の5点を頂点とする五角形の内側にあることが好ましい。この場合、反射防止膜付きガラスの反射色は、赤色系やオレンジ色系ではなく、彩度が強過ぎることもない。
(結果)
図8には、例1に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図8に示すように、例1に係るサンプルでは、浸漬処理前後において、反射率特性は、ほぼ一致しており、両者に顕著な差異は認められなかった。すなわち、例1に係るサンプルでは、浸漬処理前および後の何れの場合も、波長約400nm〜約650nmの範囲にわたって、十分に低い反射率を示すことがわかった。表2に示すように、例1に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.26%、0.26%であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例1に係るサンプルの可視光反射率は1%以下であった。
このように、例1に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を有することが確認された。
また、表2に示すように、例1に係るサンプルの浸漬処理前後の反射色(a,b)は、それぞれ(−0.47,−4.14)、(−0.45,−3.61)であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例1に係るサンプルの反射色は、前述の五角形の内側にあった。
図9には、例2に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図9に示すように、例2に係るサンプルにおいても、浸漬処理前後において、反射率特性は、ほぼ一致しており、両者に顕著な差異は認められなかった。すなわち、例2に係るサンプルでは、浸漬処理前および後の何れの場合も、波長約400nm〜約650nmの範囲にわたって、十分に低い反射率を示すことがわかった。表2に示すように、例2に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.87%、0.90%であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例2に係るサンプルの可視光反射率は1%以下であった。
このように、例2に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を有することが確認された。
また、表2に示すように、例2に係るサンプルの浸漬処理前後の反射色(a,b)は、それぞれ(−3.35,0.75)、(−2.84,−1.03)であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例2に係るサンプルの反射色は、前述の五角形の内側にあった。
図10には、例3に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図10に示すように、例3に係るサンプルにおいても、浸漬処理前後において、反射率特性は、ほぼ一致しており、両者に顕著な差異は認められなかった。すなわち、例3に係るサンプルでは、浸漬処理前および後の何れの場合も、波長約450nm〜約650nmの範囲にわたって、十分に低い反射率を有することがわかった。表2に示すように、例3に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.71%、0.70%であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例3に係るサンプルの可視光反射率は1%以下であった。
このように、例3に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を有することが確認された。
また、表2に示すように、例3に係るサンプルの浸漬処理前後の反射色(a,b)は、それぞれ(9.98,−15.44)、(11.02,−17.86)であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例3に係るサンプルの反射色は、前述の五角形の内側にあった。
ここで、例1〜例3の可視光反射率を比較する。例1〜例3の最外層は、それぞれ90at%SiO−10at%ZrO層、80at%SiO−20at%ZrO層、67at%SiO−33at%ZrO層であるが、屈折率が最も低い90at%SiO−10at%ZrO層を最外層とした、例1の可視光反射率が最も低く、低反射特性が良いことがわかる。
図11には、例4に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図11に示すように、例4に係るサンプルにおいても、浸漬処理前後において、反射率特性は、ほぼ一致しており、両者に顕著な差異は認められなかった。すなわち、例4に係るサンプルでは、浸漬処理前および後の何れの場合も、波長約450nm〜約650nmの範囲にわたって、十分に低い反射率を有することがわかった。表2に示すように、例4に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.77%、0.74%であった。この例4に係るサンプルは、例1と同じく、ZrOドープSiO層としては屈折率が低い90at%SiO−10at%ZrO層が最外層である。そのため、ガラス基板の両面に積層膜が形成されているにもかかわらず、可視光反射率は、2%はおろか1%以下であり、低反射特性が良いことがわかる。
このように、例4に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を有することが確認された。
また、表2に示すように、例4に係るサンプルの浸漬処理前後の反射色(a,b)は、それぞれ(−1.76,−6.28)、(−1.18,2.34)であった。すなわち、浸漬処理前後の何れも、例4に係るサンプルの反射色は、前述の五角形の内側にあった。
図12には、例5に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図12に示すように、例5に係るサンプルでは、浸漬処理前後において、反射率特性に顕著な差異が認められた。すなわち、例5に係るサンプルは、浸漬処理前には良好な低反射特性を示すものの、浸漬処理後には、波長約400nm〜約750nmの範囲にわたって、反射率が上昇することがわかった。表2に示すように、例5に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.27%、10.35%であった。
このように、例5に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を示さないことが確認された。
図13には、例6に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図13に示すように、例6に係るサンプルでは、浸漬処理前後において、反射率特性に顕著な差異が認められた。すなわち、例6に係るサンプルは、浸漬処理前には良好な低反射特性を示すものの、浸漬処理後には、ほぼ全ての測定波長範囲にわたって、反射率が上昇することがわかった。表2に示すように、例6に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.55%、22.47%であった。
このように、例6に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を示さないことが確認された。
図14には、例7に係るサンプルにおいて得られた耐アルカリ特性試験結果を示す。
図14に示すように、例7に係るサンプルでは、浸漬処理前後において、反射率特性に顕著な差異が認められた。すなわち、例7に係るサンプルは、浸漬処理前には良好な低反射特性を示すものの、浸漬処理後には、ほぼ全ての測定波長範囲にわたって、反射率が上昇することがわかった。表2に示すように、例7に係るサンプルの浸漬処理前後の可視光反射率は、それぞれ0.43%、10.81%であった。
このように、例7に係るサンプルは、良好な耐アルカリ特性を示さないことが確認された。
以下の表1には、例1〜例7に係るサンプルの積層膜の仕様を示した。
Figure 2018127366
以下の表2には、例1〜例7に係るサンプルの浸漬処理前後における可視光反射率、色座標a、b、および耐アルカリ特性試験結果をまとめて示した。可視光反射率は、JIS R 3106に基づいて測定された値である。また、色座標a、bは、標準イルミナントD65、10度視野での反射色であり、JIS Z 8729によるL表色系に基づく。
Figure 2018127366
以上のように、本発明による反射防止膜付きガラスの構成を採用した例1〜例4に係るサンプルでは、耐アルカリ特性が有意に改善されることが確認された。
(生産性評価)
次に、本発明の一実施例による反射防止膜付きガラスを連続製造し、その生産性を評価した。
反射防止膜付きガラスは、100インチ×144インチの縦横寸法を有するガラス基板(ソーダライムガラス製)の第1の表面上に、前述の例1と同様の、4層構成の積層膜を有する構成とした。ここで、各層の構成条件は、以下の通りである:
第1の層:TiO層、厚さ12nm
第2の層:SiO層、厚さ35nm
第3の層:TiO層、厚さ105nm
第4の層(最外層):90at%SiO−10at%ZrO層、厚さ84nm
このうち、第1の層は、通常の平坦TiOxターゲット(x<2)を使用したスパッタリング法により成膜した。また、第2の層〜第4の層は、円筒状ターゲットを使用したシリンドリカルマグネトロンスパッタリング法により成膜した。
反射防止膜付きガラスは、前記寸法のガラス基板を、単一コーター内にローラー搬送させることにより、連続的に製造した。コーター内の雰囲気は、Ar+O雰囲気とした。
各層の厚さ調整等を含む約4日間の連続放電の後半約1.5日で、合計290枚の反射防止膜付きガラスが製造された。製造された各反射防止膜付きガラスの全数について、表面のデブリの付着および積層膜内の欠陥の有無を目視で観察した。その結果、製造不良となった製品は存在せず、不良品率は0(ゼロ)であった。
このように、上記方法で製造した反射防止膜付きガラスは欠陥が少なく、高い歩留まりが得られることが確認された。
(耐熱性評価)
次に、本発明による反射防止膜付きガラスの耐熱性の評価を行った。
評価用のサンプルには、前述の(生産性評価)の項で製造した、100インチ×144インチの縦横寸法を有する反射防止膜付きガラスを使用した。
この反射防止膜付きガラスを、大気中、650℃まで加熱した後、空気ブローにより、室温まで冷却した。加熱前後における反射防止膜付きガラスのヘーズを、ヘーズメータで測定した。
ヘーズ測定の結果、熱処理前の反射防止膜付きガラスのヘーズは、0.09%であった。一方、熱処理後の反射防止膜付きガラスのヘーズは、0.35%であり、熱処理を実施しても、ヘーズの上昇は有意に抑制されることがわかった。
このように、前述の製造方法で製造された反射防止膜付きガラスは、良好な耐熱性を有することが確認された。
次に、本発明の耐防汚特性を備えた実施例について説明する。なお、以下の説明において、例8〜例11及び例23は、耐アルカリ性を備えた実施例であり、例12〜例22及び例24は、比較例である。
(防汚層の形成)
(バインダー前駆体(1)(脱塩ケイ酸ソーダ液)の調製)
蒸留水の237.5gを撹拌しながら、これにケイ酸ソーダ4号(日本化学工業社製、(SiO:24.0質量%、NaO:7.0質量%。SiO/NaOのモル比:3.5/1)の62.5g、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製、ダイヤイオンSK1BH)の180gの順で加え、10分以上撹拌した後、吸引ろ過により陽イオン交換樹脂を分離し、酸化ケイ素換算の固形分濃度が5質量%の脱塩ケイ酸ソーダ液として、バインダー前駆体(1)を得た。
(防汚層形成用組成物の調製)
2−プロパノール(純正化学社製)の6.58gを撹拌しながら、これにパールネックレス状シリカ分散液(日産化学社製、スノーテックスPS−SO、平均一次粒子径15nm、平均二次粒子径88nm)の1.19g、バインダー前駆体(1)の2.18gの順で加え、酸化ケイ素換算固形分が2.95質量%、粒子(パールネックレス状シリカ)とバインダー前駆体(脱塩ケイ酸ソーダ液)との酸化ケイ素換算固形分質量比率が60/40である防汚層形成用組成物(A1)を調製した。
(例8)
スピンコータ―に、室温に保持した例1に係るサンプルをセッティングし、防汚層形成用組成物(A1)を表面に2.0g滴下し、スピンコートした後、300℃で30分間焼成し、防汚性物品を製造した。
(例9〜例12)
粒子とバインダーとの質量比(粒子/バインダー)を表1に示す量に変更した以外は、例1と同様にして、防汚層形成組成物A2〜A5を調製した。次いで、防汚層形成組成物A2〜A5を用いて、例8と同様にして、防汚性物品を製造した。
(例13〜例17)
パールネックレス状シリカ分散液を、平均一次粒子径11nmの球状シリカ分散液(日産化学社製、スノーテックスOS)に変更し、粒子とバインダーとの質量比を表1に示す量に変更した以外は、例1と同様にして、防汚層形成組成物A6〜A10を調製した。次いで、防汚層形成組成物A6〜A10を用いて、例8と同様にして、防汚性物品を製造した。
(例18〜例22)
パールネックレス状シリカ分散液を平均一次粒子径30nmの球状シリカ分散液(日産化学社製、スノーテックスO−40)に変更し、粒子とバインダーとの質量比を表1に示す量に変更した以外は、例1と同様にして、防汚層形成組成物A11〜A15を調製した。次いで、防汚層形成組成物A11〜A15を用いて、例8と同様にして、防汚性物品を製造した。
(例23)
(バインダー前駆体(2)(アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物の溶液)の調製)
2−プロパノール(純正化学社製)の16.45gを撹拌しながら、これにメチルシリケート重合体(多摩化学工業社製、Mシリケート51、シリカ換算固形分51%、メタノール溶媒)の1.18g、蒸留水の2.26g、10質量%の硝酸水溶液(関東化学社製)の順で加えた後、25℃で60分撹拌し、シリカ換算固形分濃度が3質量%のアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物の溶液として、バインダー前駆体(2)を得た。
(防汚層形成用組成物の調製)
バインダー前駆体(1)をバインダー前駆体(2)に変更した以外は、例8と同様にして、防汚層形成用組成物A16を調製した。
(防汚性物品の製造)
防汚層形成組成物A16を用いて、例8と同様にして、防汚性物品を製造した。
(例24)
例1に係るサンプルについて、そのまま評価を行った。
[防汚性物品の評価]
各例における防汚性物品の評価は以下のように行った。
(粒子の平均一次粒子径)
防汚性物品の防汚層を有する面に対して、上方から防汚層の表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、型式:S−4800)にて観察し得られた画像から、無作為に100個の粒子を抽出し、各粒子の直径の平均値を粒子の平均一次粒子径とした。
(表面粗さ(Ra))
走査型プローブ顕微鏡(SIIナノテクノロジー社製、型式SPA400)を用いて測定した。
<設定条件>
カンチレバーはSI−DF40(背面AL有)、XYデータ数256点、走査エリアは10μm×10μmで測定した。
(頂点間距離)
防汚性物品の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、型式:S−4800)にて観察し得られた画像から、ガラス板の防汚層を有する面に平行な方向に無作為に抽出された1.5μmの範囲において、ガラス板表面からの高さが最も高い突起体を基準とし、その高さの90%以上の高さを有する突起体について、隣り合う突起体の頂点間の距離を全て測定し、平均値を算出した。
(凸部被覆率)
基体の主面に対し上方から防汚層の表面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、型式:S−4800)にて観察し得られた画像から、画像変換ソフト(image J)により、無作為に抽出された1μm×1μmの範囲で粒子が付着している部分の面積比率を算出した。
(汚れ付着試験)
防汚性物品を5cm×5cmにカットし、初期ヘーズ値を測定した。その後、防汚性物品にJIS試験粉体1の2種0.5gを、茶漉しを使用して、均等に振りかけた。10秒静置後、防汚性物品を135°傾け、3cmの高さから基体の端部を10cm/秒の勢いで2回地面に接触させ、粉体を落とし、再度ヘーズ値を測定した。これを10回繰り返し、8、9、10回目のヘイズ値を平均した値から初期ヘーズ値を引いた値を、乾燥砂かけ試験後ヘーズ値変化(ΔHaze)とした。
ここで、防汚層は、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘイズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘイズ値を引いた値が1.0以内であることが好ましく、0.9以内であることがより好ましく、0.8以内であることが特に好ましい。
<ヘーズ値の測定条件>
透光性部材のヘーズは、ヘーズ測定装置(ビックガードナー社製、型名:ヘイズガードプラス)で測定した。
Figure 2018127366
表3に示されるように、例8〜例11および例23の防汚性物品は、防汚性に優れることがわかる。一方、防汚層を有さない例24は防汚性が十分ではなかった。防汚層表面において粒子が存在する面積の割合が7%未満である例12の防汚性物品は、防汚性が十分ではなかった。防汚層の頂点間距離が100nm未満である、例13〜例22の防汚性物品は、防汚性が十分ではなかった。
本発明のガラス物品は、例えば、建築物用の反射防止防汚膜付きガラス等に利用することができる。その利用形態は、ガラス基板の片面のみに反射防止防汚膜が配置される形態、ガラス基板の両面に反射防止防汚膜が配置される形態に限られない。例えば、片面のみに反射防止防汚膜が配置されたガラス基板を2枚用意し、合わせガラスとしても良い。また、両面に反射防止防汚膜が配置されたガラス基板を2枚用意し、複層ガラスとしても良い。あるいは、片面のみに反射防止防汚膜が配置されたガラス基板のもう一方の面に、別の効果を有する膜を配置しても良い。
なお、本発明のガラス物品は、防汚特性を備えていることから、窓ガラス(例えば、自動車、鉄道、船舶、飛行機等の輸送機器用窓ガラス)、壁(例えば、間仕切り、道路壁等)、冷蔵ショーケース、鏡(例えば、洗面化粧台用鏡、浴室用鏡等)、光学機器、タイル、便器、浴槽、浴室用壁、洗面化粧台、カーテンウォール、アルミサッシ、水栓金具、建築用ボード、レンズ等に使用できる。
10 従来の反射防止膜付きガラス
20 ガラス基板
22 第1の表面
24 第2の表面
30 積層膜
40 第1の層
45 第2の層
50 第3の層
55 第4の層
100 本発明による第1の反射防止膜付きガラス
120 ガラス基板
122 第1の表面
124 第2の表面
130 積層膜
140 第1の層
145 第2の層
160 最外層
200 本発明による第2の反射防止膜付きガラス
220 ガラス基板
222 第1の表面
224 第2の表面
230 積層膜
240 第1の層
245 第2の層
250 第3の層
255 第4の層
260 最外層
300 本発明による第3の反射防止膜付きガラス
320 ガラス基板
322 第1の表面
324 第2の表面
330 第1の積層膜
340 第1の層(第1の積層膜)
345 第2の層(第1の積層膜)
350 第3の層(第1の積層膜)
360 第1の最外層
365 第2の積層膜
370 第1の層(第2の積層膜)
375 第2の層(第2の積層膜)
380 第3の層(第2の積層膜)
390 第2の最外層
400 本発明による第4の反射防止膜付きガラス
420 ガラス基板
422 第1の表面
424 第2の表面
430 積層膜
440 第1の層
445 第2の層
460 最外層
500 本発明による第5の反射防止膜付きガラス
520 ガラス基板
522 第1の表面
524 第2の表面
530 積層膜
540 第1の層
545 第2の層
550 第3の層
555 第4の層
560 最外層
600 本発明による第6の反射防止膜付きガラス
620 ガラス基板
622 第1の表面
624 第2の表面
630 第1の積層膜
640 第1の層(第1の積層膜)
645 第2の層(第1の積層膜)
650 第3の層(第1の積層膜)
660 第1の最外層
665 第2の積層膜
670 第1の層(第2の積層膜)
675 第2の層(第2の積層膜)
680 第3の層(第2の積層膜)
690 第2の最外層

Claims (4)

  1. 透光性基板と、
    前記透光性基板上に設けられる機能層と、
    前記機能層上に設けられ、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内である第1の保護層と、
    前記第1の保護層上に設けられ、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘーズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘーズ値を引いた値が1.0以内である第2の保護層と、
    を備えたことを特徴とするガラス物品。
  2. 前記機能層は、反射防止層であることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品。
  3. 標準イルミナントD65、10度視野での反射色を、JIS Z 8729によるL表色系の色座標(a,b)で表したとき、前記反射色は、(0,0)、(20,−20)、(−15,−20)、(−15,10)、および(0,10)の5点を頂点とする五角形の内側にあることを特徴とする請求項2に記載のガラス物品。
  4. 透光性基板を準備する工程と、
    前記透光性基板上に機能層を設ける工程と、
    シリンドリカルマグネトロンスパッタリング法を用いて、前記機能層上に、90℃に加熱した濃度0.1kmol/mのNaOH水溶液中に2時間浸漬させた試験前後の可視光反射率の差が0.4以内である第1の保護層を設ける工程と、
    ゾルゲル法を用いて、前記第1の保護層上に、JIS試験粉体を振りかけて10秒静置し、135°傾け、3cmの高さから10cm/秒の勢いで2回地面に接触させて前記粉体を落とし、ヘーズ値を測定することを複数繰り返し、その平均値から試験前のヘーズ値を引いた値が1.5以内である第2の保護層を設ける工程と、
    を備えたことを特徴とするガラス物品の製造方法。
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