JP2018126314A - プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、シリンジおよびプレフィルドシリンジ - Google Patents
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Abstract
【課題】 薬液を充填した状態で一定期間保存した後の、酸素バリア性に優れ、かつ、加熱殺菌後の白化が抑制されたプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、ならびに、シリンジおよびプレフィルドシリンジの提供。
【解決手段】 ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分とする層(X)、および、ポリアミド樹脂(A)を主成分とする層(Y)を有し、前記ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
【選択図】 図1
【解決手段】 ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分とする層(X)、および、ポリアミド樹脂(A)を主成分とする層(Y)を有し、前記ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
【選択図】 図1
Description
本発明は、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、シリンジおよびプレフィルドシリンジに関する。
近年、プレフィルドシリンジが活用されている。プレフィルドシリンジとは、薬液が予め充填されたシリンジ(注射器)である。プレフィルドシリンジは、感染の危険を軽減できること、正確な投与量をあらかじめ充填することにより、投与量の過誤を減らすことができる等のメリットがある。
このようなプレフィルドシリンジ用のシリンジバレルについて、ガラス製のものが使用されている。しかし、ガラス製のシリンジバレルは、使用時にフレークスという微細なガラス物質が発生する、落下等の衝撃により割れやすい等の問題がある。また、ガラスは、比較的、比重が大きいため、シリンジ自体が重くなるという問題もある。
一方、プラスチックは、ガラスに比べて軽量であり、素材によっては耐衝撃性、耐熱性、透明性等に優れることから、ガラス製のシリンジバレルの代替品としてプラスチック製のシリンジバレルが検討されている。
このようなプレフィルドシリンジ用のシリンジバレルについて、ガラス製のものが使用されている。しかし、ガラス製のシリンジバレルは、使用時にフレークスという微細なガラス物質が発生する、落下等の衝撃により割れやすい等の問題がある。また、ガラスは、比較的、比重が大きいため、シリンジ自体が重くなるという問題もある。
一方、プラスチックは、ガラスに比べて軽量であり、素材によっては耐衝撃性、耐熱性、透明性等に優れることから、ガラス製のシリンジバレルの代替品としてプラスチック製のシリンジバレルが検討されている。
しかしながら、プラスチック容器は、一般的に、ガラス容器に比べてガスバリア性に劣るため、ガスバリア性の改善が要求されている。そこで、プラスチック容器のガスバリア性を向上させるため、ガスバリア層を中間層として有するプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが検討されている。例えば、特許文献1には、最内層および最外層がポリオレフィン樹脂からなり、中間層がバリア性に優れた樹脂層であるプレフィルドシリンジが開示されている。
酸素バリア性に優れた熱可塑性樹脂としては、ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「N−MXD6」と略することがある。)が知られている(特許文献2、3)。しかしながら、N−MXD6は、ポリオレフィン樹脂、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)の熱成形温度である250〜320℃では非常に速く結晶化するため、N−MXD6をガスバリア層とし、COPを最内層および最外層として用いた多層シリンジバレルは、成形時に、N−MXD6層の破損や厚みムラ、白化がみられ、ガスバリア性、透明性等の性能が低下したり、変形したりする場合がある。また、加熱殺菌処理後に白化を生じ、透明性が損なわれる場合がある。
N−MXD6の白化を抑制する手段としては、白化防止剤として特定の脂肪酸金属塩を添加する方法や特定のジアミド化合物またはジエステル化合物を添加する方法が知られている。これら添加剤を用いた白化抑制は、水に直接晒される単層フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略することがある。)を用いた、例えば、PET/N−MXD6/PETの層構成からなる延伸ボトルのように、延伸される用途には効果があることが知られている。しかしながら、COP/N−MXD6/COPの層構成からなるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける加熱殺菌処理後の白化抑制効果は満足できるものではない。
また、N−MXD6に対して結晶化核剤を添加する方法や、加熱殺菌処理時に結晶化核剤として作用するナイロン6等の結晶性ポリアミド樹脂をN−MXD6とブレンドする方法も知られている。しかしながら、これらの方法によっても、COP/N−MXD6/COPの層構成からなるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける加熱殺菌処理後の白化抑制効果は満足できるものではない。
また、N−MXD6に対して結晶化核剤を添加する方法や、加熱殺菌処理時に結晶化核剤として作用するナイロン6等の結晶性ポリアミド樹脂をN−MXD6とブレンドする方法も知られている。しかしながら、これらの方法によっても、COP/N−MXD6/COPの層構成からなるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける加熱殺菌処理後の白化抑制効果は満足できるものではない。
上述のとおり、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、加熱殺菌処理後も白化が抑制されることが求められる。また、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、酸素バリア性についても、薬液を充填した状態で保存した後でも、優れた酸素バリア性が求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、薬液を充填した状態で一定期間保存した後の、酸素バリア性に優れ、かつ、加熱殺菌後の白化が抑制されたプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、ならびに、シリンジおよびプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、薬液を充填した状態で一定期間保存した後の、酸素バリア性に優れ、かつ、加熱殺菌後の白化が抑制されたプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、ならびに、シリンジおよびプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題のもと、検討を行った結果、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<10>により、上記課題は解決された。
<1>ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分とする層(X)、および、ポリアミド樹脂(A)を主成分とする層(Y)を有し、前記ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<2>前記ポリアミド樹脂(A)が、カルシウム原子を含む、<1>に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<3>前記ポリアミド樹脂(A)に含まれるカルシウム原子が、次亜リン酸カルシウムに由来する、<2>に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<4>前記ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を3〜300質量ppmの割合で含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<5>前記ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を20〜200質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含む、<1>または<3>に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<6>前記層(X)が、シクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分として含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<7>前記ジカルボン酸由来の構成単位の30〜60モル%が、アジピン酸由来の構成単位である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<8>前記プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが少なくとも3層からなり、内層および外層が、前記層(X)であり、中間層の少なくとも1層が、前記層(Y)である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<9><1>〜<8>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを有するシリンジ。
<10><9>に記載のシリンジと、前記シリンジに充填されている薬液を含む、プレフィルドシリンジ。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<10>により、上記課題は解決された。
<1>ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分とする層(X)、および、ポリアミド樹脂(A)を主成分とする層(Y)を有し、前記ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<2>前記ポリアミド樹脂(A)が、カルシウム原子を含む、<1>に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<3>前記ポリアミド樹脂(A)に含まれるカルシウム原子が、次亜リン酸カルシウムに由来する、<2>に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<4>前記ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を3〜300質量ppmの割合で含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<5>前記ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を20〜200質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含む、<1>または<3>に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<6>前記層(X)が、シクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分として含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<7>前記ジカルボン酸由来の構成単位の30〜60モル%が、アジピン酸由来の構成単位である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<8>前記プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが少なくとも3層からなり、内層および外層が、前記層(X)であり、中間層の少なくとも1層が、前記層(Y)である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
<9><1>〜<8>のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを有するシリンジ。
<10><9>に記載のシリンジと、前記シリンジに充填されている薬液を含む、プレフィルドシリンジ。
本発明により、薬液を充填した状態で一定期間保存した後の、酸素バリア性に優れ、かつ、加熱殺菌後の白化が抑制されたプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、ならびに、シリンジおよびプレフィルドシリンジを提供可能になった。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル(以下、単に、「多層シリンジバレル」ということがある)は、ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分とする層(X)、および、ポリアミド樹脂(A)を主成分とする層(Y)を有し、前記ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来することを特徴とする。
このような非晶性ポリアミド樹脂であって、特定の組成のポリアミド樹脂を用いることにより、薬液を充填した状態で一定期間保存した後でも、酸素バリア性に優れ、かつ、加熱殺菌後の白化が抑制されたプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、ならびに、シリンジおよびプレフィルドシリンジを提供可能になる。さらに、薬液を充填した状態で一定期間保存した後の白化も抑制され、かつ、加熱殺菌後の酸素バリア性にも優れた多層シリンジが得られる。
このような効果は、ポリアミド樹脂(A)として、所定の組成からなるポリアミド樹脂(A)を用い、かつ、ポリオレフィン樹脂として、ポリプロピレン系ポリマーまたはガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーを用いることにより達成される。
上記ポリアミド樹脂(A)は、通常、非晶性ポリアミド樹脂であるが、このようなポリアミド樹脂を用いることにより、加熱殺菌処理後も、より優れたガスバリア性および透明性を有する多層シリンジバレルとすることができる。
ここで、非晶性ポリアミド樹脂とは、明確な融点を持たない樹脂であり、具体的には、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g未満であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がさらに好ましい。
このような非晶性ポリアミド樹脂であって、特定の組成のポリアミド樹脂を用いることにより、薬液を充填した状態で一定期間保存した後でも、酸素バリア性に優れ、かつ、加熱殺菌後の白化が抑制されたプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、ならびに、シリンジおよびプレフィルドシリンジを提供可能になる。さらに、薬液を充填した状態で一定期間保存した後の白化も抑制され、かつ、加熱殺菌後の酸素バリア性にも優れた多層シリンジが得られる。
このような効果は、ポリアミド樹脂(A)として、所定の組成からなるポリアミド樹脂(A)を用い、かつ、ポリオレフィン樹脂として、ポリプロピレン系ポリマーまたはガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーを用いることにより達成される。
上記ポリアミド樹脂(A)は、通常、非晶性ポリアミド樹脂であるが、このようなポリアミド樹脂を用いることにより、加熱殺菌処理後も、より優れたガスバリア性および透明性を有する多層シリンジバレルとすることができる。
ここで、非晶性ポリアミド樹脂とは、明確な融点を持たない樹脂であり、具体的には、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g未満であることをいい、3J/g以下が好ましく、1J/g以下がさらに好ましい。
<層構成>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける層構成は特に限定されず、層(X)および層(Y)の数や種類は特に限定されない。
プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層の数は、少なくとも3層からなることが好ましく、3〜10層がより好ましく、3〜5層がさらに好ましい。
プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける、層(X)の数は、1〜5層が好ましく、2層〜4層がより好ましい。プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける、層(Y)の数は、1層〜3層が好ましく、1層または2層がより好ましい。
例えば、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが、1層の層(X)および1層の層(Y)からなるX/Y構成(層(X)が内層である)またはY/X構成(層(Y)が内層である)であってもよく、2層の層(X)および1層の層(Y)からなるX/Y/Xの3層構成であってもよい。さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、層(X)および層(Y)が互いに接していてもよいが、接着層(AD)等の任意の層を含んでもよい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、内層および外層が、前記層(X)であり、中間層の少なくとも1層が、前記層(Y)であること(X/Y/X構成)が好ましい。本実施形態においては、内層および外層である、前記層(X)がそれぞれ中間層である(Y)層に接していてもよいし(X/Y/X)、前記層(Y)と前記層(X)とがそれぞれ接着層(AD)を介して接着していてもよい(X/AD/Y/AD/X)。また、本発明では、これらに限らず、目的に応じて様々な熱可塑性樹脂層をさらに有することが可能である。
ここでの内層とは、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層のうち、1つの中間層である(Y)層よりも内側に位置する層をいい、外層とは、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層のうち、1つの中間層である(Y)層よりも外側に位置する層をいう。内層および外層は、それぞれ、最内層および最外層であってもよいし、別途、最内層および最外層を有していてもよい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける層構成は特に限定されず、層(X)および層(Y)の数や種類は特に限定されない。
プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層の数は、少なくとも3層からなることが好ましく、3〜10層がより好ましく、3〜5層がさらに好ましい。
プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける、層(X)の数は、1〜5層が好ましく、2層〜4層がより好ましい。プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける、層(Y)の数は、1層〜3層が好ましく、1層または2層がより好ましい。
例えば、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが、1層の層(X)および1層の層(Y)からなるX/Y構成(層(X)が内層である)またはY/X構成(層(Y)が内層である)であってもよく、2層の層(X)および1層の層(Y)からなるX/Y/Xの3層構成であってもよい。さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、層(X)および層(Y)が互いに接していてもよいが、接着層(AD)等の任意の層を含んでもよい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、内層および外層が、前記層(X)であり、中間層の少なくとも1層が、前記層(Y)であること(X/Y/X構成)が好ましい。本実施形態においては、内層および外層である、前記層(X)がそれぞれ中間層である(Y)層に接していてもよいし(X/Y/X)、前記層(Y)と前記層(X)とがそれぞれ接着層(AD)を介して接着していてもよい(X/AD/Y/AD/X)。また、本発明では、これらに限らず、目的に応じて様々な熱可塑性樹脂層をさらに有することが可能である。
ここでの内層とは、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層のうち、1つの中間層である(Y)層よりも内側に位置する層をいい、外層とは、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層のうち、1つの中間層である(Y)層よりも外側に位置する層をいう。内層および外層は、それぞれ、最内層および最外層であってもよいし、別途、最内層および最外層を有していてもよい。
本発明の多層容器の総厚みは、下限値が、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましい。前記総厚みは、2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。
<層(X)>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層(X)は、ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマー(以下、「特定ポリオレフィン樹脂」ということがある)から選択される少なくとも1種を主成分とする層であり、通常は、水蒸気バリア層として働く。ここで、「主成分とする」とは、層(X)中に、特定ポリオレフィン樹脂(水蒸気バリア性ポリマー)を層(X)中に70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90〜100質量%含まれることを意味する。層(X)は、特定ポリオレフィン樹脂を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、特定ポリオレフィン樹脂の合計量が、上記範囲となる。
層(X)は、特定ポリオレフィン樹脂に加えて、所望する性能等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、特定ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂、酸化防止剤や艶消剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、層(X)を複数有していてもよく、複数の層(X)の構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層(X)の厚みは特に限定されないが、強度およびコストの観点から、20〜2000μmが好ましく、50〜1500μmがより好ましい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層(X)は、ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマー(以下、「特定ポリオレフィン樹脂」ということがある)から選択される少なくとも1種を主成分とする層であり、通常は、水蒸気バリア層として働く。ここで、「主成分とする」とは、層(X)中に、特定ポリオレフィン樹脂(水蒸気バリア性ポリマー)を層(X)中に70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90〜100質量%含まれることを意味する。層(X)は、特定ポリオレフィン樹脂を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、特定ポリオレフィン樹脂の合計量が、上記範囲となる。
層(X)は、特定ポリオレフィン樹脂に加えて、所望する性能等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、特定ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂、酸化防止剤や艶消剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、層(X)を複数有していてもよく、複数の層(X)の構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層(X)の厚みは特に限定されないが、強度およびコストの観点から、20〜2000μmが好ましく、50〜1500μmがより好ましい。
<<特定ポリオレフィン樹脂>>
本発明では、上述のとおり、ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を用いる。特定ポリオレフィン樹脂を用いることにより、加熱殺菌処理後の多層シリンジバレルの白化を効果的に抑制できる。
特定ポリオレフィン樹脂は、シクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
ガラス転移温度が100℃以上のシクロオレフィン系ポリマーのガラス転移温度の下限値は、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。また、ガラス転移温度の上限値は、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、150℃以下であってもよい。ガラス転移温度は、後述する実施例の記載に従って測定される。但し、実施例で使用する機器等が廃版等の場合、他の同様の性能を有する機器等を用いることができる。以下、他の測定方法についても同様である。
特定ポリオレフィン樹脂は、公知のポリオレフィン樹脂から選択することができる。
具体的には、特開2014−068767号公報の段落0101〜0103に記載のポリオレフィン樹脂のうち、特定ポリオレフィン樹脂に該当するものが例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
シクロオレフィン系ポリマーは、シクロオレフィンポリマー(COP)であってもよいし、シクロオレフィンコポリマー(COC)であってもよい。COPおよびCOCは、耐熱性や耐光性などの化学的性質や耐薬品性はポリオレフィン樹脂としての特徴を示し、かつ、機械特性、溶融、流動特性、寸法精度などの物理的性質は非晶性樹脂としての特徴を示すことから好ましい。一方、ポリプロピレン系ポリマー(PP)は、耐油性の観点から好ましい。
本発明では、上述のとおり、ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を用いる。特定ポリオレフィン樹脂を用いることにより、加熱殺菌処理後の多層シリンジバレルの白化を効果的に抑制できる。
特定ポリオレフィン樹脂は、シクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
ガラス転移温度が100℃以上のシクロオレフィン系ポリマーのガラス転移温度の下限値は、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。また、ガラス転移温度の上限値は、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、150℃以下であってもよい。ガラス転移温度は、後述する実施例の記載に従って測定される。但し、実施例で使用する機器等が廃版等の場合、他の同様の性能を有する機器等を用いることができる。以下、他の測定方法についても同様である。
特定ポリオレフィン樹脂は、公知のポリオレフィン樹脂から選択することができる。
具体的には、特開2014−068767号公報の段落0101〜0103に記載のポリオレフィン樹脂のうち、特定ポリオレフィン樹脂に該当するものが例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
シクロオレフィン系ポリマーは、シクロオレフィンポリマー(COP)であってもよいし、シクロオレフィンコポリマー(COC)であってもよい。COPおよびCOCは、耐熱性や耐光性などの化学的性質や耐薬品性はポリオレフィン樹脂としての特徴を示し、かつ、機械特性、溶融、流動特性、寸法精度などの物理的性質は非晶性樹脂としての特徴を示すことから好ましい。一方、ポリプロピレン系ポリマー(PP)は、耐油性の観点から好ましい。
COPとは、例えば、ノルボルネンを開環重合し水素添加した重合物である。COPは、例えば、特開平5−317411号公報に記載されており、また、日本ゼオン(株)製のZEONEX(登録商標)またはZEONOR(登録商標)や大協精工(株)製のDaikyo Resin CZ(登録商標)として市販されている。具体的には、ZEONEX690Rなどが例示される。
COCとは、例えば、ノルボルネンとエチレン等のオレフィンを原料とした共重合体、およびテトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンを原料とした共重合体である。COCは、例えば三井化学(株)製、アペル(登録商標)として市販されている。
PPとしては、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等の公知のポリマーを使用することができる。市販品としては、BOREALIS社製、Bormed RB845MOなどが挙げられる。
<層(Y)>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層(Y)は、所定のポリアミド樹脂(A)の少なくとも1種を主成分とする層であり、通常は、ガスバリア層として働く。
層(Y)は、通常、多層シリンジバレル外部から進入する酸素を遮断し、多層シリンジバレル内の内容物(薬液)の酸化劣化を防止する役割を有する。良好なガスバリア性の観点から、層(Y)の23℃、相対湿度60%の環境下における酸素透過係数が1.0mL・mm/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、0.05〜0.8mL・mm/(m2・day・atm)であることがより好ましい。酸素透過係数は、ASTM D3985に準じて測定することができ、例えば「OX−TRAN(登録商標) 2/61」(MOCON社製)を使用して測定することができる。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを構成する層(Y)は、所定のポリアミド樹脂(A)の少なくとも1種を主成分とする層であり、通常は、ガスバリア層として働く。
層(Y)は、通常、多層シリンジバレル外部から進入する酸素を遮断し、多層シリンジバレル内の内容物(薬液)の酸化劣化を防止する役割を有する。良好なガスバリア性の観点から、層(Y)の23℃、相対湿度60%の環境下における酸素透過係数が1.0mL・mm/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、0.05〜0.8mL・mm/(m2・day・atm)であることがより好ましい。酸素透過係数は、ASTM D3985に準じて測定することができ、例えば「OX−TRAN(登録商標) 2/61」(MOCON社製)を使用して測定することができる。
また、上記「主成分とする」とは、層(Y)中に、ポリアミド樹脂(A)(ガスバリア性ポリマー)が70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは95〜100質量%、一層好ましくは98〜100質量%含まれることを意味する。層(Y)は、ポリアミド樹脂(A)を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、ポリアミド樹脂(A)の合計量が、上記範囲となる。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、層(Y)を複数有していてもよく、複数の層(Y)の構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層(Y)の厚みは特に限定されないが、ガスバリア性、透明性およびコストの観点から、1〜800μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける層(Y)の厚みは、ガスバリア性、透明性およびコストの観点から、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの総厚み(肉厚)に対して2〜40%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜38%であり、さらに好ましくは10〜35%である。プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける層(Y)の厚みは、容器を切断し、層(X)から剥離することによって測定できる。尚、層(Y)が2層以上ある場合は、その合計を層(Y)の厚みとして算出する。
層(Y)は、ポリアミド樹脂(A)に加えて、所望する性能等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含有してもよい。具体的には、顔料(無機顔料など)、滑剤(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなど)、艶消剤、耐熱安定剤(酸化防止剤、より好ましくはリン系酸化防止剤など)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等が例示される。添加剤は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。層(Y)中における添加剤の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。添加剤の詳細としては、特開2014−068767号公報の段落0071〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明における層(Y)の好ましい実施形態として、以下のものが例示される。
(1)実質的に、1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)のみからなる層
(2)実質的に、1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂のみからなる層
(3)実質的に、1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)と酸化防止剤のみからなる層
(4)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂と酸化防止剤のみからなる層
(5)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)と滑剤のみからなる層
(6)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂と滑剤のみからなる層
(7)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)と酸化防止剤と滑剤のみからなる層
(8)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂と酸化防止剤と滑剤のみからなる層
(9)上記において、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂が、非晶性ポリアミド樹脂である層
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、層(Y)を複数有していてもよく、複数の層(Y)の構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層(Y)の厚みは特に限定されないが、ガスバリア性、透明性およびコストの観点から、1〜800μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける層(Y)の厚みは、ガスバリア性、透明性およびコストの観点から、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの総厚み(肉厚)に対して2〜40%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜38%であり、さらに好ましくは10〜35%である。プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおける層(Y)の厚みは、容器を切断し、層(X)から剥離することによって測定できる。尚、層(Y)が2層以上ある場合は、その合計を層(Y)の厚みとして算出する。
層(Y)は、ポリアミド樹脂(A)に加えて、所望する性能等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含有してもよい。具体的には、顔料(無機顔料など)、滑剤(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなど)、艶消剤、耐熱安定剤(酸化防止剤、より好ましくはリン系酸化防止剤など)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等が例示される。添加剤は1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。層(Y)中における添加剤の含有量は、添加剤の種類にもよるが、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。添加剤の詳細としては、特開2014−068767号公報の段落0071〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明における層(Y)の好ましい実施形態として、以下のものが例示される。
(1)実質的に、1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)のみからなる層
(2)実質的に、1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂のみからなる層
(3)実質的に、1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)と酸化防止剤のみからなる層
(4)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂と酸化防止剤のみからなる層
(5)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)と滑剤のみからなる層
(6)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂と滑剤のみからなる層
(7)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)と酸化防止剤と滑剤のみからなる層
(8)1種または2種以上のポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂と酸化防止剤と滑剤のみからなる層
(9)上記において、ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂が、非晶性ポリアミド樹脂である層
<ポリアミド樹脂(A)>
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は非晶性樹脂である。非晶性樹脂を用いることにより、透明性を向上させることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は非晶性樹脂である。非晶性樹脂を用いることにより、透明性を向上させることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、カルシウム原子を含むことが好ましい。カルシウム原子を含むことにより、透明性をより向上させることができる。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、リン原子を20〜200質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、加熱殺菌処理後のヘイズがより低く、かつ、薬液充填し一定期間保存した後のYI値(黄色度)がより低いプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが得られる。カルシウム原子は、次亜リン酸カルシウムに由来することが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、リン原子を20〜200質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、加熱殺菌処理後のヘイズがより低く、かつ、薬液充填し一定期間保存した後のYI値(黄色度)がより低いプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが得られる。カルシウム原子は、次亜リン酸カルシウムに由来することが好ましい。
メタキシリレンジアミンと、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸と、イソフタル酸とから合成されるポリアミド樹脂を用いると、黄色度が高くなってしまう場合がある。そこで、重縮合時に着色防止剤であるリン含有化合物を添加することが考えられる。しかしながら、ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合が40モル%以上と多くなると、リン含有化合物として一般的に用いられている、次亜リン酸ナトリウムを用いた場合、黄色度は改善されるものの透明性が劣る場合があることがわかった。さらに次亜リン酸ナトリウムを用いた場合、得られたポリアミド樹脂は透明であっても、浸水処理等を行うと透明性が悪化する場合があることがわかった。そして、さらに検討を行った結果、リン含有化合物として、次亜リン酸ナトリウムの代わりに、次亜リン酸カルシウムを添加することにより、より透明性(ヘイズ)を向上させ、浸水処理後もより透明性を向上させることが可能であることを見出した。しかしながら、次亜リン酸カルシウムのようなカルシウム塩は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸やイソフタル酸に対する溶解性が低く、カルシウム塩の添加量が多くなると白色の異物が発生してしまう場合があることが分かった。本発明は、以上の知見に基づき、ポリアミド樹脂のリン原子とカルシウム原子の割合を上記のように設定することにより、より透明性に優れたポリアミド樹脂の提供に成功し、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの透明性をより向上させることに成功したものである。
本発明では、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来する。ジアミン由来の構成単位は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは98モル%以上、より一層好ましくは99モル%以上が、メタキシリレンジアミンに由来する。
メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、が例示される。これらの他のジアミンは、1種のみでも2種以上であってもよい。
メタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、が例示される。これらの他のジアミンは、1種のみでも2種以上であってもよい。
本発明では、ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する。
ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、41モル%以上が好ましく、43モル%以上がより好ましく、45モル%以上がさらに好ましい。前記イソフタル酸の割合の上限値は、68モル%以下が好ましく、66モル%以下がより好ましい。このような範囲とすることにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルのヘイズがより低下する傾向にあり好ましい。
ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸の割合の下限値は、41モル%以上が好ましく、43モル%以上がより好ましく、45モル%以上がさらに好ましい。前記イソフタル酸の割合の上限値は、68モル%以下が好ましく、66モル%以下がより好ましい。このような範囲とすることにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルのヘイズがより低下する傾向にあり好ましい。
ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の割合の下限値は、32モル%以上が好ましく、34モル%以上がより好ましい。炭素数4〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸の割合の上限値は、59モル%以下が好ましく、57モル%以下がより好ましく、55モル%以下がさらに好ましい。このような範囲とすることにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの酸素バリア性がより向上する傾向にある。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示され、アジピン酸およびセバシン酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示され、アジピン酸およびセバシン酸が好ましく、アジピン酸がより好ましい。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ジカルボン酸由来の構成単位を構成する全ジカルボン酸のうち、イソフタル酸と炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の合計の割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。このような割合とすることにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの透明性がより向上し、黄色度がより低下する傾向にある。
イソフタル酸と炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、炭素数6〜12の脂環式ジカルボン酸等が例示される。これらの具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等が例示される。
尚、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸由来の構成単位とジアミン由来の構成単位から構成されるが、ジカルボン酸由来の構成単位およびジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。他の構成単位としては、ε−カプロラクタム、バレロラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸等由来の構成単位が例示できるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、合成に用いた添加剤等の微量成分が含まれる。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、通常、95質量%以上、好ましくは98質量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位である。
上述のとおり、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、リン原子を3〜300質量ppmの割合で含むことが好ましく、4〜250質量ppmの割合で含むことがより好ましく、20〜200質量ppmの割合で含むことがさらに好ましい。また、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含むことが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)におけるリン原子濃度は、下限値は、3質量ppm以上が好ましく、4質量ppm以上であることがより好ましく、20質量ppm以上であることがさらに好ましく、22質量ppm以上であることが一層好ましく、50質量ppm以上であってもよく、さらには100質量ppm以上であってもよく、特には150質量ppm以上であってもよい。ポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度を高くすることにより、黄色度(YI値)をより効果的に低下させることが可能になる。特に、本発明の多層シリンジバレルを加熱殺菌処理した後の黄色度および本発明の多層シリンジバレルに水を充填して一定期間保存した後の黄色度をより効果的に低くでき、色調がより向上する。リン原子濃度の上限値は、300質量ppm以下であることが好ましく、250質量ppm以下であることがより好ましく、230質量ppm以下であることがさらに好ましく、200質量ppm以下であることが一層好ましく、190質量ppm以下であることがより一層好ましく、180質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。ポリアミド樹脂におけるリン原子濃度を下限値以上とすることにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの黄色度をより低くでき、色調がより向上する。また、ポリアミド樹脂におけるリン原子濃度を上限値以下とすることにより、得られるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの透明性がより向上する傾向にある。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)におけるリン原子:カルシウム原子のモル比は1:0.3〜0.7となる割合であることが好ましく、1:0.4〜0.6となる割合がより好ましく、1:0.45〜0.55となる割合であることがさらに好ましく、1:0.48〜0.52となる割合であることが特に好ましい。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)に含まれるリン原子およびカルシウム原子は、それぞれ、次亜リン酸カルシウムに由来することが好ましい。ポリアミド樹脂におけるリン原子:カルシウム原子のモル比を下限値以上とすることにより、得られる多層シリンジバレルのヘイズがより低くなる傾向にある。また、ポリアミド樹脂におけるリン原子:カルシウム原子のモル比を上限値以下とすることにより、得られるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルのヘイズがより低くなる傾向にある。特に、本発明の多層シリンジバレルを加熱殺菌処理した後のヘイズおよび本発明の多層シリンジバレルに水を充填して一定期間保存した後のヘイズをより効果的に低くできる。
リン原子濃度およびカルシウム原子濃度の測定方法は、それぞれ、後述する実施例に記載の方法に従う。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)におけるリン原子濃度は、下限値は、3質量ppm以上が好ましく、4質量ppm以上であることがより好ましく、20質量ppm以上であることがさらに好ましく、22質量ppm以上であることが一層好ましく、50質量ppm以上であってもよく、さらには100質量ppm以上であってもよく、特には150質量ppm以上であってもよい。ポリアミド樹脂(A)中のリン原子濃度を高くすることにより、黄色度(YI値)をより効果的に低下させることが可能になる。特に、本発明の多層シリンジバレルを加熱殺菌処理した後の黄色度および本発明の多層シリンジバレルに水を充填して一定期間保存した後の黄色度をより効果的に低くでき、色調がより向上する。リン原子濃度の上限値は、300質量ppm以下であることが好ましく、250質量ppm以下であることがより好ましく、230質量ppm以下であることがさらに好ましく、200質量ppm以下であることが一層好ましく、190質量ppm以下であることがより一層好ましく、180質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。ポリアミド樹脂におけるリン原子濃度を下限値以上とすることにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの黄色度をより低くでき、色調がより向上する。また、ポリアミド樹脂におけるリン原子濃度を上限値以下とすることにより、得られるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの透明性がより向上する傾向にある。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)におけるリン原子:カルシウム原子のモル比は1:0.3〜0.7となる割合であることが好ましく、1:0.4〜0.6となる割合がより好ましく、1:0.45〜0.55となる割合であることがさらに好ましく、1:0.48〜0.52となる割合であることが特に好ましい。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)に含まれるリン原子およびカルシウム原子は、それぞれ、次亜リン酸カルシウムに由来することが好ましい。ポリアミド樹脂におけるリン原子:カルシウム原子のモル比を下限値以上とすることにより、得られる多層シリンジバレルのヘイズがより低くなる傾向にある。また、ポリアミド樹脂におけるリン原子:カルシウム原子のモル比を上限値以下とすることにより、得られるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルのヘイズがより低くなる傾向にある。特に、本発明の多層シリンジバレルを加熱殺菌処理した後のヘイズおよび本発明の多層シリンジバレルに水を充填して一定期間保存した後のヘイズをより効果的に低くできる。
リン原子濃度およびカルシウム原子濃度の測定方法は、それぞれ、後述する実施例に記載の方法に従う。
<<ポリアミド樹脂(A)の物性>>
ポリアミド樹脂の重合度の指標としては、相対粘度が一般的に使われる。本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、層(X)の溶融粘度および共射出成形性の観点から、好ましくは1.5〜3.0である。相対粘度の下限値は、1.6以上がより好ましく、1.8以上がさらに好ましく、1.9以上が特に好ましい。相対粘度の上限値としては、2.8以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましく、2.3以下が一層好ましく、2.0以下がより一層好ましい。このような範囲とすることにより、共射出成形性が向上し、層間密着性の高いプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが得られるという効果が発揮される。
尚、ここでいう相対粘度とは、ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96質量%の硫酸水溶液20mLに25℃で撹拌溶解し、完全に溶解した後、速やかに、粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定する。また、96質量%の硫酸水溶液そのものの落下時間(t0)も同様に測定する。tおよびt0から次式により相対粘度を算出する。より詳しくは、実施例に記載の方法に従う。
相対粘度=t/t0
ポリアミド樹脂の重合度の指標としては、相対粘度が一般的に使われる。本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、層(X)の溶融粘度および共射出成形性の観点から、好ましくは1.5〜3.0である。相対粘度の下限値は、1.6以上がより好ましく、1.8以上がさらに好ましく、1.9以上が特に好ましい。相対粘度の上限値としては、2.8以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましく、2.3以下が一層好ましく、2.0以下がより一層好ましい。このような範囲とすることにより、共射出成形性が向上し、層間密着性の高いプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが得られるという効果が発揮される。
尚、ここでいう相対粘度とは、ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96質量%の硫酸水溶液20mLに25℃で撹拌溶解し、完全に溶解した後、速やかに、粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定する。また、96質量%の硫酸水溶液そのものの落下時間(t0)も同様に測定する。tおよびt0から次式により相対粘度を算出する。より詳しくは、実施例に記載の方法に従う。
相対粘度=t/t0
<ポリアミド樹脂(A)の製造方法>
次に、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の製造方法の一例について述べる。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、以下に述べる方法で製造されたポリアミド樹脂であることが好ましいが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
次に、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の製造方法の一例について述べる。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、以下に述べる方法で製造されたポリアミド樹脂であることが好ましいが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の製造方法は、ジアミンとジカルボン酸を次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムおよび/または次亜リン酸カルシウム、好ましくは、次亜リン酸カルシウム)の存在下で重縮合することを含み、前記ジアミンの70モル%以上がメタキシリレンジアミンであり、前記ジカルボン酸の30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸であり、70〜40モル%がイソフタル酸であることを特徴とする。
特に、次亜リン酸カルシウムの存在下で合成することにより、得られるポリアミド樹脂中のリン原子濃度を所定の値とでき、黄色度をより低下させることができ、かつ、カルシウム原子濃度を所定範囲とすることができ、透明性をより向上させることができる。尚、次亜リン酸塩の一部または全部は、重縮合時や二次加工時の酸化により、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム)、ポリリン酸塩(例えば、ポリリン酸カルシウム)等に変化する。また、その比率は、重縮合条件や重縮合時の酸素濃度等によって変化する。従って、例えば、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)がカルシウム原子やリン原子を含んでいても、次亜リン酸カルシウムが全く存在しない場合もあろう。
重縮合は、通常、溶融重縮合法であり、溶融させた原料ジカルボン酸に原料ジアミンを滴下しつつ加圧下で昇温し、縮合水を除きながら重合させる方法、もしくは、原料ジアミンと原料ジカルボン酸から構成される塩を水の存在下で、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が好ましい。
本発明では、次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムおよび/または次亜リン酸カルシウム、好ましくは、次亜リン酸カルシウム)を、ポリアミド樹脂(A)に含まれるリン原子濃度が、3〜300質量ppmとなる割合で添加することが好ましい。より好ましい範囲は、上述のポリアミド樹脂(A)に含まれるリン原子の割合の好ましい範囲と同様の割合となる範囲である。
特に、次亜リン酸カルシウムの存在下で合成することにより、得られるポリアミド樹脂中のリン原子濃度を所定の値とでき、黄色度をより低下させることができ、かつ、カルシウム原子濃度を所定範囲とすることができ、透明性をより向上させることができる。尚、次亜リン酸塩の一部または全部は、重縮合時や二次加工時の酸化により、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸カルシウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム)、ポリリン酸塩(例えば、ポリリン酸カルシウム)等に変化する。また、その比率は、重縮合条件や重縮合時の酸素濃度等によって変化する。従って、例えば、本発明で用いるポリアミド樹脂(A)がカルシウム原子やリン原子を含んでいても、次亜リン酸カルシウムが全く存在しない場合もあろう。
重縮合は、通常、溶融重縮合法であり、溶融させた原料ジカルボン酸に原料ジアミンを滴下しつつ加圧下で昇温し、縮合水を除きながら重合させる方法、もしくは、原料ジアミンと原料ジカルボン酸から構成される塩を水の存在下で、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法が好ましい。
本発明では、次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムおよび/または次亜リン酸カルシウム、好ましくは、次亜リン酸カルシウム)を、ポリアミド樹脂(A)に含まれるリン原子濃度が、3〜300質量ppmとなる割合で添加することが好ましい。より好ましい範囲は、上述のポリアミド樹脂(A)に含まれるリン原子の割合の好ましい範囲と同様の割合となる範囲である。
また、重縮合時には、次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムおよび/または次亜リン酸カルシウム、好ましくは、次亜リン酸カルシウム)と併用して他のアルカリ金属化合物を添加してもよい。アルカリ金属化合物を添加することにより、アミド化反応速度を調整することが可能になる。アルカリ金属化合物としては、酢酸ナトリウムが例示される。アルカリ金属化合物を配合する場合、アルカリ金属化合物/次亜リン酸塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムおよび/または次亜リン酸カルシウム、好ましくは、次亜リン酸カルシウム)のモル比は0.5〜2.0であることが好ましい。
その他重合条件については、特開2015−098669号公報や国際公開WO2012/140785号パンフレットの記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、ジアミン、ジカルボン酸等の詳細は、上述のポリアミド樹脂の所で述べたものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
その他重合条件については、特開2015−098669号公報や国際公開WO2012/140785号パンフレットの記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、ジアミン、ジカルボン酸等の詳細は、上述のポリアミド樹脂の所で述べたものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明における層(Y)は、上記ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよい、上記ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂としては、非晶性樹脂であっても、結晶性樹脂であってもよいが、非晶性樹脂が好ましい。
また、本発明における層(Y)は、上記ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、層(Y)におけるポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂の量がポリアミド樹脂(A)の1質量%以下であることをいう。
また、本発明における層(Y)は、上記ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、層(Y)におけるポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂の量がポリアミド樹脂(A)の1質量%以下であることをいう。
<任意の層>
上述のとおり、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、前記層(X)および層(Y)に加えて、所望する性能等に応じて任意の層を含んでいてもよい。そのような任意の層としては、例えば、上述の接着層等が挙げられる。
上述のとおり、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、前記層(X)および層(Y)に加えて、所望する性能等に応じて任意の層を含んでいてもよい。そのような任意の層としては、例えば、上述の接着層等が挙げられる。
<<接着層>>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおいて、隣接する2つの層の間で実用的な層間接着強度が得られない場合には、前記隣接する2つの層の間に接着層を設けることが好ましい。
接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系ブロック共重合体を主成分とした、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。接着層としては、接着性の観点から、層(X)として用いられている特定ポリオレフィン樹脂と同種の樹脂を変性したものを用いることが好ましい。
接着層の厚みは、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは10〜80μmである。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルにおいて、隣接する2つの層の間で実用的な層間接着強度が得られない場合には、前記隣接する2つの層の間に接着層を設けることが好ましい。
接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系ブロック共重合体を主成分とした、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。接着層としては、接着性の観点から、層(X)として用いられている特定ポリオレフィン樹脂と同種の樹脂を変性したものを用いることが好ましい。
接着層の厚みは、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは10〜80μmである。
<プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの物性>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、ヘイズ、全光線透過率、YI値および酸素透過率が以下に示す範囲であることが好ましく、特に、これらの各物性を併せ持つことがより好ましい。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、ヘイズ、全光線透過率、YI値および酸素透過率が以下に示す範囲であることが好ましく、特に、これらの各物性を併せ持つことがより好ましい。
<<ヘイズ>>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、ヘイズ(Haze)(%)が4.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましい。前記ヘイズの下限値については、0%が好ましいが、2.0%以上であっても十分実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱殺菌処理後のヘイズの低下(加熱殺菌処理後のヘイズ−初期ヘイズ)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることが一層好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後のヘイズの低下(保存後のヘイズ−初期ヘイズ)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることが一層好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
ここで、ヘイズの測定方法、加熱殺菌処理および水充填保存の詳細は、後述する実施例の記載に従う。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、ヘイズ(Haze)(%)が4.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましい。前記ヘイズの下限値については、0%が好ましいが、2.0%以上であっても十分実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱殺菌処理後のヘイズの低下(加熱殺菌処理後のヘイズ−初期ヘイズ)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることが一層好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後のヘイズの低下(保存後のヘイズ−初期ヘイズ)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることが一層好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
ここで、ヘイズの測定方法、加熱殺菌処理および水充填保存の詳細は、後述する実施例の記載に従う。
<<全光線透過率>>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、全光線透過率(%)が85.0%以上であることが好ましく、86.0%以上であることがより好ましく、88.0%以上であることがさらに好ましい。前記全光線透過率の上限値については、100.0%が好ましいが、90.0%以上であっても十分実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱殺菌処理後の全光線透過率の低下(加熱殺菌処理後の全光線透過率−初期全光線透過率)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることが一層好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後の全光線透過率の低下(保存後の全光線透過率−初期全光線透過率)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、全光線透過率(%)が85.0%以上であることが好ましく、86.0%以上であることがより好ましく、88.0%以上であることがさらに好ましい。前記全光線透過率の上限値については、100.0%が好ましいが、90.0%以上であっても十分実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱殺菌処理後の全光線透過率の低下(加熱殺菌処理後の全光線透過率−初期全光線透過率)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.8%以下であることが一層好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後の全光線透過率の低下(保存後の全光線透過率−初期全光線透過率)が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましい。下限値は、理想は、0%以上であるが、0.1%以上であっても、十分に実用レベルである。
全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
<<YI値>>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、YI値が4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。前記YI値の下限値については、0が好ましいが、2.0以上であっても十分実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱処理後のYI値の低下(加熱処理後のYI値−初期YI値)が、2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。下限値は、0が好ましいが、0.1以上であっても十分実用レベルである。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後のYI値の低下(保存後のYI値−初期YI値)が、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。下限値は、0が好ましいが、0.1以上であっても十分実用レベルである。
YI値は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、YI値が4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。前記YI値の下限値については、0が好ましいが、2.0以上であっても十分実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱処理後のYI値の低下(加熱処理後のYI値−初期YI値)が、2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。下限値は、0が好ましいが、0.1以上であっても十分実用レベルである。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後のYI値の低下(保存後のYI値−初期YI値)が、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。下限値は、0が好ましいが、0.1以上であっても十分実用レベルである。
YI値は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
<<酸素透過率>>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの酸素透過率(mL/(0.21atm・day・package))は、0.00030mL/(0.21atm・day・package)以下であることが好ましく、0.00028mL/(0.21atm・day・package)以下であることがより好ましい。前記酸素透過率の下限値については、0mL/(0.21atm・day・package)が好ましいが、0.00025mL/(0.21atm・day・package)以上であっても十分に実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱殺菌処理後の酸素透過率の低下(加熱殺菌処理後の酸素透過率−初期酸素透過率)が、0.00002mL/(0.21atm・day・package)以下であることが好ましく、0.00001mL/(0.21atm・day・package)以下であることがより好ましい。下限は、例えば、0.00000mL/(0.21atm・day・package)以上とすることもできる。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後の酸素透過率の低下(保存後の酸素透過率−初期酸素透過率)が、0.00002mL/(0.21atm・day・package)以下であることが好ましく、0.00001mL/(0.21atm・day・package)以下であることがより好ましい。下限は、例えば、0.00000mL/(0.21atm・day・package)以上とすることができる。
酸素透過率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの酸素透過率(mL/(0.21atm・day・package))は、0.00030mL/(0.21atm・day・package)以下であることが好ましく、0.00028mL/(0.21atm・day・package)以下であることがより好ましい。前記酸素透過率の下限値については、0mL/(0.21atm・day・package)が好ましいが、0.00025mL/(0.21atm・day・package)以上であっても十分に実用レベルである。
また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの加熱殺菌処理後の酸素透過率の低下(加熱殺菌処理後の酸素透過率−初期酸素透過率)が、0.00002mL/(0.21atm・day・package)以下であることが好ましく、0.00001mL/(0.21atm・day・package)以下であることがより好ましい。下限は、例えば、0.00000mL/(0.21atm・day・package)以上とすることもできる。
さらに、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの水充填保存後の酸素透過率の低下(保存後の酸素透過率−初期酸素透過率)が、0.00002mL/(0.21atm・day・package)以下であることが好ましく、0.00001mL/(0.21atm・day・package)以下であることがより好ましい。下限は、例えば、0.00000mL/(0.21atm・day・package)以上とすることができる。
酸素透過率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
<プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの製造方法>
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、射出(インジェクション)成形により製造されることが好ましい。
例えば、2台以上の射出機を備えた成形機および射出用金型を用いて、層(X)を構成する材料および層(Y)を構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応した多層シリンジバレルを製造することができる。
また、先ず、層(X)を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで、層(Y)を構成する材料を別の射出シリンダーから層(X)を構成する樹脂と同時に射出し、層(X)を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより3層構造X/Y/Xの多層シリンジバレルを製造できる。
あるいは、先ず、層(X)を構成する材料を射出し、次いで、層(Y)を構成する材料を単独で射出し、最後に、層(X)を構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造X/Y/X/Y/Xの多層シリンジバレルを製造できる。
本発明で用いる多層シリンジバレルは、延伸されていてもよいが、通常は未延伸体である。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、射出(インジェクション)成形により製造されることが好ましい。
例えば、2台以上の射出機を備えた成形機および射出用金型を用いて、層(X)を構成する材料および層(Y)を構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応した多層シリンジバレルを製造することができる。
また、先ず、層(X)を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで、層(Y)を構成する材料を別の射出シリンダーから層(X)を構成する樹脂と同時に射出し、層(X)を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより3層構造X/Y/Xの多層シリンジバレルを製造できる。
あるいは、先ず、層(X)を構成する材料を射出し、次いで、層(Y)を構成する材料を単独で射出し、最後に、層(X)を構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造X/Y/X/Y/Xの多層シリンジバレルを製造できる。
本発明で用いる多層シリンジバレルは、延伸されていてもよいが、通常は未延伸体である。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルには、無機物または無機酸化物の蒸着膜や、アモルファスカーボン膜をコーティングしてもよい。
無機物または無機酸化物としては、アルミニウムやアルミナ、酸化珪素等が挙げられる。無機物または無機酸化物の蒸着膜は、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルから、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の溶出物を遮蔽できる。蒸着膜の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が挙げられる。蒸着膜の厚みは、ガスバリア性、遮光性および耐屈曲性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
アモルファスカーボン膜はダイヤモンド状炭素膜で、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜とも呼ばれる硬質炭素膜である。膜の形成法としては、排気により中空成形体の内部を真空にし、そこへ炭素源ガスを供給し、プラズマ発生用エネルギーを供給することにより、その炭素源ガスをプラズマ化させる方法が例示され、これにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの内側面にアモルファスカーボン膜を形成させることができる。アモルファスカーボン膜は酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることができるだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を抑制することができる。アモルファスカーボン膜の厚みは、低分子有機化合物の収着抑制効果、ガスバリア性の向上効果、プラスチックとの接着性、耐久性および透明性等の観点から、50〜5000nmが好ましい。
無機物または無機酸化物としては、アルミニウムやアルミナ、酸化珪素等が挙げられる。無機物または無機酸化物の蒸着膜は、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルから、アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の溶出物を遮蔽できる。蒸着膜の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が挙げられる。蒸着膜の厚みは、ガスバリア性、遮光性および耐屈曲性等の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは5〜200nmである。
アモルファスカーボン膜はダイヤモンド状炭素膜で、iカーボン膜または水素化アモルファスカーボン膜とも呼ばれる硬質炭素膜である。膜の形成法としては、排気により中空成形体の内部を真空にし、そこへ炭素源ガスを供給し、プラズマ発生用エネルギーを供給することにより、その炭素源ガスをプラズマ化させる方法が例示され、これにより、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの内側面にアモルファスカーボン膜を形成させることができる。アモルファスカーボン膜は酸素や二酸化炭素のような低分子無機ガスの透過度を著しく減少させることができるだけでなく、臭いを有する各種の低分子有機化合物の収着を抑制することができる。アモルファスカーボン膜の厚みは、低分子有機化合物の収着抑制効果、ガスバリア性の向上効果、プラスチックとの接着性、耐久性および透明性等の観点から、50〜5000nmが好ましい。
<プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの構造>
次に、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの構造について、図1を例に説明する。本発明におけるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが図1に示されるものに限定されるものではないことは言うまでもない。
図1は、本発明におけるプレフィルドシリンジを示す概略図であって、1はプレフィルドシリンジの多層シリンジバレルを、2は多層シリンジバレルの先端部を、3は多層シリンジバレルのツバを、4は先端部のキャップを、5はガスケットを、6はプランジャーのロッドを、7は薬液を示している。
本発明では、多層シリンジバレル1を、上述した多層構造とすることにより、薬液を充填して一定期間保存した後でも、酸素バリア性に優れ、かつ、白化しにくくすることができる。
本発明の多層シリンジバレル1の長さ(L)は、50〜200mmであることが好ましく、55〜175mmであることがより好ましい。本発明における多層シリンジバレルの長さ(L)は、例えば、図1で示すように、先端部の端から、反対側の端(図1では、ツバの部分)までをいう。
本発明の多層シリンジバレル1の本体(薬液が充填される部分)は、円筒状であることが好ましい。本発明の多層シリンジバレル1の本体が円筒状である場合の外径(D)は、2〜40mmであることが好ましく、5〜36mmであることがより好ましい。本発明における多層シリンジバレルの外径(D)は、例えば、図1で示すように、薬液が充填される部分の多層シリンジバレルの外径をいう。
本発明の多層シリンジバレル1に充填される薬液7の量は、例えば、0.1〜150mLであることが好ましく、0.4〜120mLであることがより好ましい。
また、多層シリンジバレル1の先端部2は、テーパー状、円筒状など任意の形状とすることができる。
一方、多層シリンジバレルのツバ3の部分の形状も特に定めるものではない。また、ツバを設けない態様とすることもできる。
キャップ4は、多層シリンジバレルを封止できるものであれば、特に定めるものではない。材料としては、ゴムなどが挙げられる。また、キャップとして、注射針などがすでに取り付けられているものを採用することもできる。
次に、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルの構造について、図1を例に説明する。本発明におけるプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが図1に示されるものに限定されるものではないことは言うまでもない。
図1は、本発明におけるプレフィルドシリンジを示す概略図であって、1はプレフィルドシリンジの多層シリンジバレルを、2は多層シリンジバレルの先端部を、3は多層シリンジバレルのツバを、4は先端部のキャップを、5はガスケットを、6はプランジャーのロッドを、7は薬液を示している。
本発明では、多層シリンジバレル1を、上述した多層構造とすることにより、薬液を充填して一定期間保存した後でも、酸素バリア性に優れ、かつ、白化しにくくすることができる。
本発明の多層シリンジバレル1の長さ(L)は、50〜200mmであることが好ましく、55〜175mmであることがより好ましい。本発明における多層シリンジバレルの長さ(L)は、例えば、図1で示すように、先端部の端から、反対側の端(図1では、ツバの部分)までをいう。
本発明の多層シリンジバレル1の本体(薬液が充填される部分)は、円筒状であることが好ましい。本発明の多層シリンジバレル1の本体が円筒状である場合の外径(D)は、2〜40mmであることが好ましく、5〜36mmであることがより好ましい。本発明における多層シリンジバレルの外径(D)は、例えば、図1で示すように、薬液が充填される部分の多層シリンジバレルの外径をいう。
本発明の多層シリンジバレル1に充填される薬液7の量は、例えば、0.1〜150mLであることが好ましく、0.4〜120mLであることがより好ましい。
また、多層シリンジバレル1の先端部2は、テーパー状、円筒状など任意の形状とすることができる。
一方、多層シリンジバレルのツバ3の部分の形状も特に定めるものではない。また、ツバを設けない態様とすることもできる。
キャップ4は、多層シリンジバレルを封止できるものであれば、特に定めるものではない。材料としては、ゴムなどが挙げられる。また、キャップとして、注射針などがすでに取り付けられているものを採用することもできる。
本発明におけるシリンジは、本発明の多層シリンジバレル1を含む。さらに、本発明におけるシリンジは、通常、多層シリンジバレル1の先端部2を封止するキャップ4および、先端にガスケット5を取り付けたロッド6を有するプランジャーを有する。
さらに、本発明のシリンジは、シリンジの多層シリンジバレル1に薬液7が充填され、キャップ4とガスケット5によって、封止され、プレフィルドシリンジとして用いられる。
薬液としては、薬剤を水に溶解した水溶液、高濃度塩化ナトリウム注射液、ブドウ糖注射液、ヘパリンナトリウム水溶液、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗生物質、ヘパリンのような抗血栓剤、インシュリン、抗潰瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウィルス剤、免疫賦活剤が例示され、薬剤を水に溶解した水溶液が好ましい。薬剤を水に溶解した水溶液の場合、濃度は、0.0001〜30質量%であることが好ましい。
本発明のシリンジに保存される薬剤としては、医薬品のほか、栄養補給を目的として投与される成分なども含む趣旨である。本発明で用いられる薬剤としては、ミネラル類、ビタミン剤、各種アミノ酸が例示される。
さらに、本発明のシリンジは、シリンジの多層シリンジバレル1に薬液7が充填され、キャップ4とガスケット5によって、封止され、プレフィルドシリンジとして用いられる。
薬液としては、薬剤を水に溶解した水溶液、高濃度塩化ナトリウム注射液、ブドウ糖注射液、ヘパリンナトリウム水溶液、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗生物質、ヘパリンのような抗血栓剤、インシュリン、抗潰瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウィルス剤、免疫賦活剤が例示され、薬剤を水に溶解した水溶液が好ましい。薬剤を水に溶解した水溶液の場合、濃度は、0.0001〜30質量%であることが好ましい。
本発明のシリンジに保存される薬剤としては、医薬品のほか、栄養補給を目的として投与される成分なども含む趣旨である。本発明で用いられる薬剤としては、ミネラル類、ビタミン剤、各種アミノ酸が例示される。
本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、殺菌処理を行うことが好ましい。殺菌処理は、高エネルギー放射線(例えば、ガンマ線と電子線)による殺菌処理や、エチレンオキサイドガス(EOG)を用いた殺菌処理が好ましい。また、本発明のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルは、加熱殺菌処理をすることも好ましい。
加熱殺菌処理温度としては、100℃以上であり、110℃以上が好ましい。前記加熱殺菌処理温度の上限は、例えば、150℃以下であってもよい。また、加熱殺菌処理としては、10分〜1時間が好ましい。
加熱殺菌処理温度としては、100℃以上であり、110℃以上が好ましい。前記加熱殺菌処理温度の上限は、例えば、150℃以下であってもよい。また、加熱殺菌処理としては、10分〜1時間が好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(1)相対粘度
ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96質量%の硫酸水溶液20mLに25℃で撹拌溶解した。ポリアミド樹脂を完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%の硫酸水溶液そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96質量%の硫酸水溶液20mLに25℃で撹拌溶解した。ポリアミド樹脂を完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%の硫酸水溶液そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
(2)リン原子濃度およびカルシウム原子濃度の測定方法
ポリアミド樹脂0.2gと35質量%硝酸水溶液8mLをTFM変性PTFE(3M社製)容器に入れ、マイルストーンゼネラル社製、ETHOS Oneを用いて内部温度230℃で30分間、マイクロウエーブ分解を行った。分解液を超純水で定容し、ICP測定溶液とした。島津製作所製、ICPE−9000を用いて、リン原子濃度およびカルシウム原子濃度を測定した。
ポリアミド樹脂0.2gと35質量%硝酸水溶液8mLをTFM変性PTFE(3M社製)容器に入れ、マイルストーンゼネラル社製、ETHOS Oneを用いて内部温度230℃で30分間、マイクロウエーブ分解を行った。分解液を超純水で定容し、ICP測定溶液とした。島津製作所製、ICPE−9000を用いて、リン原子濃度およびカルシウム原子濃度を測定した。
(3)ガラス転移温度
ガラス転移温度はJIS K7122に準拠して測定した。測定装置は、示差走査熱量計(DSC;(株)島津製作所製、「DSC−60」)を使用した。なお、DSCの測定条件は、以下のとおりとした。
測定装置:(株)島津製作所製、「DSC−60」
測定開始温度:25℃
昇温速度:10℃/分
到達温度:220℃
降温速度:5℃/分
ガラス転移温度はJIS K7122に準拠して測定した。測定装置は、示差走査熱量計(DSC;(株)島津製作所製、「DSC−60」)を使用した。なお、DSCの測定条件は、以下のとおりとした。
測定装置:(株)島津製作所製、「DSC−60」
測定開始温度:25℃
昇温速度:10℃/分
到達温度:220℃
降温速度:5℃/分
(4)121℃30分加熱処理(加熱殺菌処理、レトルト処理)
オートクレーブ((株)トミー精工製、製品名:「SR−240」)を用い、多層シリンジバレルを121℃、30分加熱処理した。なお、前記加熱処理時間には、昇温時間および冷却時間は含まれない。
オートクレーブ((株)トミー精工製、製品名:「SR−240」)を用い、多層シリンジバレルを121℃、30分加熱処理した。なお、前記加熱処理時間には、昇温時間および冷却時間は含まれない。
(5)水充填保存
多層シリンジバレルの先端部をゴムキャップで封止し、水を充填した後、ツバ側を多層シリンジバレル内に空間が生じないようにガスケットで封止した。この状態で、40℃、相対湿度50%下に3ヶ月間保存した。その後、水を取り出した。
多層シリンジバレルの先端部をゴムキャップで封止し、水を充填した後、ツバ側を多層シリンジバレル内に空間が生じないようにガスケットで封止した。この状態で、40℃、相対湿度50%下に3ヶ月間保存した。その後、水を取り出した。
(6)多層シリンジバレルの透明性(HAZE)
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルの側面部について、ヘイズ(HAZE、単位%)を測定した(初期HAZE)。また、121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルのHAZEも、それぞれ同様に測定した。
ヘイズの測定は、JIS K7136に準じて行った。
測定装置は、色彩・濁度測定器(日本電色工業(株)製、製品名:「COH−300A」)を使用した。測定箇所における多層シリンジバレルの側面部の厚さを測定し、厚さ300μmに換算した値として示した。
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルの側面部について、ヘイズ(HAZE、単位%)を測定した(初期HAZE)。また、121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルのHAZEも、それぞれ同様に測定した。
ヘイズの測定は、JIS K7136に準じて行った。
測定装置は、色彩・濁度測定器(日本電色工業(株)製、製品名:「COH−300A」)を使用した。測定箇所における多層シリンジバレルの側面部の厚さを測定し、厚さ300μmに換算した値として示した。
(7)多層シリンジバレルの全光線透過率
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルの側面部について、全光線透過率(単位%)を測定した(初期全光線透過率)。また、121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルの全光線透過率も、それぞれ同様に測定した。
全光線透過率の測定は、JIS K7375に準じて行った。
測定装置は、色彩・濁度測定器(日本電色工業(株)製、製品名:「COH−300A」)を使用した。測定箇所における多層シリンジバレルの側面部の厚さを測定し、厚さ300μmに換算した値として示した。
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルの側面部について、全光線透過率(単位%)を測定した(初期全光線透過率)。また、121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルの全光線透過率も、それぞれ同様に測定した。
全光線透過率の測定は、JIS K7375に準じて行った。
測定装置は、色彩・濁度測定器(日本電色工業(株)製、製品名:「COH−300A」)を使用した。測定箇所における多層シリンジバレルの側面部の厚さを測定し、厚さ300μmに換算した値として示した。
(8)酸素透過率(OTR)
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルについて、23℃、多層シリンジバレルの内部の相対湿度100%、多層シリンジバレルの外部の相対湿度50%における多層シリンジバレルの酸素透過率(OTR)を測定した(初期OTR)。121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルの酸素透過率(OTR)も、それぞれ同様に測定した。
酸素透過率は、ASTM D3985に準じて、酸素透過率測定装置(MOCON社製、製品名:「OX−TRAN(登録商標) 2/61」)を使用して測定した。測定値が低いほど、酸素バリア性が良好であることを示す。
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルについて、23℃、多層シリンジバレルの内部の相対湿度100%、多層シリンジバレルの外部の相対湿度50%における多層シリンジバレルの酸素透過率(OTR)を測定した(初期OTR)。121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルの酸素透過率(OTR)も、それぞれ同様に測定した。
酸素透過率は、ASTM D3985に準じて、酸素透過率測定装置(MOCON社製、製品名:「OX−TRAN(登録商標) 2/61」)を使用して測定した。測定値が低いほど、酸素バリア性が良好であることを示す。
(9)多層シリンジバレルの色調(YI値)
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルの側面部を切り出してYI値を測定した(初期YI)。121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルのYI値も、それぞれ同様に測定した。
測定装置は、色彩・濁度測定器(日本電色工業(株)製、製品名:「COH−300A」)を使用した。
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルの側面部を切り出してYI値を測定した(初期YI)。121℃30分加熱処理および水充填保存後の多層シリンジバレルのYI値も、それぞれ同様に測定した。
測定装置は、色彩・濁度測定器(日本電色工業(株)製、製品名:「COH−300A」)を使用した。
(10)多層シリンジバレルの耐油性試験
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルに日清MCTオイル(成分は中鎖脂肪酸トリグリセリド100%(炭素鎖8〜12の脂肪酸グリセリド))を10mL注ぎ、40℃で6ヶ月保間存した。多層シリンジバレルの外観に変化の無いものを○、多層シリンジバレルよりオイルが漏れ出たものを×とした。
上記121℃30分加熱処理および水充填保存を行っていない多層シリンジバレルに日清MCTオイル(成分は中鎖脂肪酸トリグリセリド100%(炭素鎖8〜12の脂肪酸グリセリド))を10mL注ぎ、40℃で6ヶ月保間存した。多層シリンジバレルの外観に変化の無いものを○、多層シリンジバレルよりオイルが漏れ出たものを×とした。
<実施例1>
以下の方法に従って表1に示すポリアミド樹脂を合成した。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸6,000g(41.06mol)、イソフタル酸6,821g(41.06mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)10.04g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として175質量ppm)、酢酸ナトリウム7.26gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸カルシウムのモル比は1.50とした。
これにメタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、265℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて270℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、約21kgのポリアミド樹脂(A1)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A1)の相対粘度は1.95であった。
以下の方法に従って表1に示すポリアミド樹脂を合成した。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、精秤したアジピン酸6,000g(41.06mol)、イソフタル酸6,821g(41.06mol)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)10.04g(ポリアミド樹脂中のリン原子濃度として175質量ppm)、酢酸ナトリウム7.26gを入れ、十分に窒素置換した後、窒素を内圧0.4MPaまで充填し、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら190℃まで加熱した。酢酸ナトリウム/次亜リン酸カルシウムのモル比は1.50とした。
これにメタキシリレンジアミン11,185g(82.12mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を上昇させ、265℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、更に内温を上昇させて270℃で10分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化し、約21kgのポリアミド樹脂(A1)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A1)の相対粘度は1.95であった。
下記の条件により、層(X)を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層(Y)を構成する材料を別の射出シリンダーから、層(X)を構成する樹脂と同時に射出し、次に層(X)を構成する樹脂を必要量射出して射出金型内キャビティーを満たすことにより、層(X)/層(Y)/層(X)の3層構成の多層シリンジバレルを製造した。多層シリンジバレルの総質量を1.95gとし、層(Y)の質量を多層シリンジバレルの総質量の30質量%とした。層(X)を構成する樹脂としてはシクロオレフィンポリマー(COP、日本ゼオン(株)製、商品名:ZEONEX(登録商標)690R、Tg136℃を使用した。層(Y)を構成する樹脂としては、上記ポリアミド樹脂(A1)を使用した。
<<多層シリンジバレルの形状>>
ISO11040−6に準拠した内容量1cc(1mL)(スタンダード)とした。なお、多層シリンジバレルの製造には、射出成形機(日精エー・エス・ビー機械(株)製、型式:ASB−12N/10)を使用した。得られた多層シリンジバレルにおける本体(薬液が充填される部分)の、肉厚(層(X)(内層)、層(Y)、層(X)(外層)の厚さは、順に、300μm、250μm、950μmであった。総厚み(肉厚、すなわち、層(X)/層(Y)/層(X)の3層の合計の厚さ)は、1500μmとなる。多層シリンジバレルの長さは64.5mm、多層シリンジバレルのバレル本体における外径は9.2mmであった。
(シリンジの成形条件)
層(X)用の射出シリンダー温度:260℃
層(Y)用の射出シリンダー温度:250℃
射出金型内樹脂流路温度:270℃
金型温度:18℃
ISO11040−6に準拠した内容量1cc(1mL)(スタンダード)とした。なお、多層シリンジバレルの製造には、射出成形機(日精エー・エス・ビー機械(株)製、型式:ASB−12N/10)を使用した。得られた多層シリンジバレルにおける本体(薬液が充填される部分)の、肉厚(層(X)(内層)、層(Y)、層(X)(外層)の厚さは、順に、300μm、250μm、950μmであった。総厚み(肉厚、すなわち、層(X)/層(Y)/層(X)の3層の合計の厚さ)は、1500μmとなる。多層シリンジバレルの長さは64.5mm、多層シリンジバレルのバレル本体における外径は9.2mmであった。
(シリンジの成形条件)
層(X)用の射出シリンダー温度:260℃
層(Y)用の射出シリンダー温度:250℃
射出金型内樹脂流路温度:270℃
金型温度:18℃
<実施例2>
実施例1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比率が40:60となるように調整し、他は同様に行って、ポリアミド樹脂ペレット(A2)を得た。ポリアミド樹脂(A2)の相対粘度は1.94であった。
実施例1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比率が40:60となるように調整し、他は同様に行って、ポリアミド樹脂ペレット(A2)を得た。ポリアミド樹脂(A2)の相対粘度は1.94であった。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリアミド樹脂(A2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<実施例3>
実施例1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比率が60:40となるように調整し、他は同様に行って、ポリアミド樹脂ペレット(A3)を得た。ポリアミド樹脂(A3)の相対粘度は1.94であった。
実施例1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比率が60:40となるように調整し、他は同様に行って、ポリアミド樹脂ペレット(A3)を得た。ポリアミド樹脂(A3)の相対粘度は1.94であった。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリアミド樹脂(A3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<実施例4>
実施例1において、次亜リン酸塩として、次亜リン酸ナトリウムを用い、他は同様に行ってポリアミド樹脂(A4)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A4)の相対粘度は1.95であった。
実施例1において、次亜リン酸塩として、次亜リン酸ナトリウムを用い、他は同様に行ってポリアミド樹脂(A4)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A4)の相対粘度は1.95であった。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリアミド樹脂(A4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<実施例5>
実施例1において、次亜リン酸カルシウムの添加量を、表1に示す通りとなるように変更し、他は同様に行ってポリアミド樹脂(A5)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A5)の相対粘度は1.93であった。
実施例1において、次亜リン酸カルシウムの添加量を、表1に示す通りとなるように変更し、他は同様に行ってポリアミド樹脂(A5)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A5)の相対粘度は1.93であった。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリアミド樹脂(A5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<実施例6>
実施例1において、次亜リン酸カルシウムの添加量を、表1に示す通りとなるように変更し、他は同様に行ってポリアミド樹脂(A6)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A6)の相対粘度は1.93であった。
実施例1において、次亜リン酸カルシウムの添加量を、表1に示す通りとなるように変更し、他は同様に行ってポリアミド樹脂(A6)ペレットを得た。ポリアミド樹脂(A6)の相対粘度は1.93であった。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリアミド樹脂(A6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<実施例7〜9>
層(X)を構成する樹脂として、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製、製品名:「ZEONEX(登録商標)690R」)に変えてポリプロピレン系ポリマー(BOREALIS社製、製品名:「Bormed RB845MO」)を用いたこと以外は、実施例1〜3と、それぞれ、同様にして多層シリンジバレルを製造した。
層(X)を構成する樹脂として、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製、製品名:「ZEONEX(登録商標)690R」)に変えてポリプロピレン系ポリマー(BOREALIS社製、製品名:「Bormed RB845MO」)を用いたこと以外は、実施例1〜3と、それぞれ、同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<比較例1>
実施例1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比率が94:6となるように調
整し、他は同様に行って、比較例1のポリアミド樹脂ペレット(A8)を得た。ポリアミド樹脂(A8)の相対粘度は2.65であった。
実施例1において、アジピン酸とイソフタル酸のモル比率が94:6となるように調
整し、他は同様に行って、比較例1のポリアミド樹脂ペレット(A8)を得た。ポリアミド樹脂(A8)の相対粘度は2.65であった。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリアミド樹脂(A8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<比較例2>
ポリアミド樹脂(A1)に代えてメタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位とからなるN−MXD6(三菱ガス化学(株)製、製品名:「MXナイロンS6007」、相対粘度=2.65)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてメタキシリレンジアミン単位とアジピン酸単位とからなるN−MXD6(三菱ガス化学(株)製、製品名:「MXナイロンS6007」、相対粘度=2.65)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<比較例3>
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ディ・エス・エム(DSM)ジャパンエンジニアリングプラスチックス(株)製、製品名:「ノバミッド(登録商標)X21」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ディ・エス・エム(DSM)ジャパンエンジニアリングプラスチックス(株)製、製品名:「ノバミッド(登録商標)X21」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<比較例4>
ポリアミド樹脂(A1)に代えてエチレン−ビニルアルコールコポリマー(クラレ(株)製、製品名:「エバール(登録商標)F171B」)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
ポリアミド樹脂(A1)に代えてエチレン−ビニルアルコールコポリマー(クラレ(株)製、製品名:「エバール(登録商標)F171B」)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして多層シリンジバレルを製造した。
<比較例5>
実施例1において、層(X)のみからなる単層のシリンジバレルを製造した。層(X)の厚さは、1500μmとした。
実施例1において、層(X)のみからなる単層のシリンジバレルを製造した。層(X)の厚さは、1500μmとした。
実施例1〜9および比較例1〜5で得られた多層シリンジバレルについて、実施例1と同様に、各種性能を評価した。評価結果を表1または表2に示す。
上記表1および表2において、略語等は以下の通りである。
※1:ジアミン単位中の量(mol%)
※2:ジカルボン単位中の量(mol%)
COP:シクロオレフィンポリマー(特定ポリオレフィン樹脂)
PP:ポリプロピレン系ポリマー
N−6I/6T:ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー
EVOH:エチレン−ビニルアルコールコポリマー
また、ポリアミド樹脂(A1)〜(A6)は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。
※1:ジアミン単位中の量(mol%)
※2:ジカルボン単位中の量(mol%)
COP:シクロオレフィンポリマー(特定ポリオレフィン樹脂)
PP:ポリプロピレン系ポリマー
N−6I/6T:ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー
EVOH:エチレン−ビニルアルコールコポリマー
また、ポリアミド樹脂(A1)〜(A6)は、昇温過程における結晶融解エンタルピーΔHmがほぼ0J/gであり、非晶性であることが分かった。
比較例1および2の多層シリンジバレルは、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズが高かった。また、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の全光線透過率が低かった。さらに、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率が高かった。
ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマーを使用した比較例3では、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率が高かった。
さらに、エチレン−ビニルアルコールコポリマーを使用した比較例4は、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズが高かった。また、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の全光線透過率が低かった。さらに、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率も高かった。
加えて、シクロオレフィンポリマー単層を使用した比較例5では、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率が高かった。
ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマーを使用した比較例3では、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率が高かった。
さらに、エチレン−ビニルアルコールコポリマーを使用した比較例4は、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズが高かった。また、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の全光線透過率が低かった。さらに、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率も高かった。
加えて、シクロオレフィンポリマー単層を使用した比較例5では、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率が高かった。
これに対し、実施例1〜9の多層シリンジバレルは、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズが低かった。また、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の全光線透過率が高かった。さらに、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後の酸素透過率が低かった。
実施例7〜9は、実施例1〜6に比べ、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズがやや高く、全光線透過率がやや低く、透明性がやや劣る結果となったが、十分に内容物が視認できるレベルであった。さらに、耐油性に優れる多層シリンジバレルであることがわかった。
実施例7〜9は、実施例1〜6に比べ、初期、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズがやや高く、全光線透過率がやや低く、透明性がやや劣る結果となったが、十分に内容物が視認できるレベルであった。さらに、耐油性に優れる多層シリンジバレルであることがわかった。
また、ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を20〜200質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含む場合、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のヘイズがより低く、かつ、121℃30分加熱処理後および水充填保存後のYI値のより低い、総合的に特に優れた多層シリンジバレルが得られた。
本発明の多層シリンジバレルは、加熱殺菌処理して用いる、薬液を保存するプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルとして好適な酸素バリア性および透明性を有する。さらに、色調の安定性にも優れる。従って、薬液を長期保存することができ、しかも薬液保存後においても、内容物を視認することができ、ガラス容器の代替品として顧客の利便性向上を図ることができる。
1 プレフィルドシリンジの多層シリンジバレル
2 多層シリンジバレルの先端部
3 多層シリンジバレルのツバ
4 先端部のキャップ
5 ガスケット
6 プランジャーのロッド
7 薬液
2 多層シリンジバレルの先端部
3 多層シリンジバレルのツバ
4 先端部のキャップ
5 ガスケット
6 プランジャーのロッド
7 薬液
Claims (10)
- ポリプロピレン系ポリマーおよびガラス転移温度が100℃以上であるシクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分とする層(X)、および、ポリアミド樹脂(A)を主成分とする層(Y)を有し、
前記ポリアミド樹脂(A)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の、30〜60モル%が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、70〜40モル%がイソフタル酸に由来する、プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。 - 前記ポリアミド樹脂(A)が、カルシウム原子を含む、請求項1に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 前記ポリアミド樹脂(A)に含まれるカルシウム原子が、次亜リン酸カルシウムに由来する、請求項2に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 前記ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を3〜300質量ppmの割合で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 前記ポリアミド樹脂(A)が、リン原子を20〜200質量ppmの割合で含み、カルシウム原子をリン原子:カルシウム原子のモル比が1:0.3〜0.7となる割合で含む、請求項1または3に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 前記層(X)が、シクロオレフィン系ポリマーから選択される少なくとも1種を主成分として含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 前記ジカルボン酸由来の構成単位の30〜60モル%が、アジピン酸由来の構成単位である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 前記プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルが少なくとも3層からなり、内層および外層が、前記層(X)であり、中間層の少なくとも1層が、前記層(Y)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジ用多層シリンジバレルを有するシリンジ。
- 請求項9に記載のシリンジと、前記シリンジに充填されている薬液を含む、プレフィルドシリンジ。
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JP2017021353A JP2018126314A (ja) | 2017-02-08 | 2017-02-08 | プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、シリンジおよびプレフィルドシリンジ |
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ID=63171622
Family Applications (1)
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JP2017021353A Pending JP2018126314A (ja) | 2017-02-08 | 2017-02-08 | プレフィルドシリンジ用多層シリンジバレル、シリンジおよびプレフィルドシリンジ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018126314A (ja) |
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2017
- 2017-02-08 JP JP2017021353A patent/JP2018126314A/ja active Pending
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