JP2018120651A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】緩和層や放電層の界面剥離を抑制できるスパークプラグを提供すること。【解決手段】スパークプラグは、第1電極が、Ptを主体とする放電層とPtを主体とする緩和層とが接合されたチップと、Niを主体とする合金またはNiからなる電極母材と、を備えている。火花ギャップを介して第2電極と第1電極が対向する。緩和層はNiを第2成分として含有する厚さ0.05mm以上の合金からなり、電極母材に溶接される。放電層はRhを第2成分として含有する合金からなる。電極母材に溶接された後のチップの放電層および緩和層の組織は、放電層の平均結晶粒径と緩和層の平均結晶粒径とが互いに異なる。【選択図】図1

Description

本発明はスパークプラグに関し、特にPtを主体とするチップを電極に設けたスパークプラグに関するものである。
電極の耐火花消耗性を向上させるため、Ptを主体とするチップを電極母材に接合した第1電極と第2電極とを対向させたスパークプラグが知られている。特許文献1には、チップと電極母材との熱膨脹差に起因する熱応力の緩和のため、Pt−Ni合金からなる緩和層にPt−Ir合金からなる放電層を接合したチップを用いる技術が開示されている。
特開平6−60959号公報
しかしながら上述した従来の技術では、熱衝撃等による熱応力が原因の、電極母材と緩和層との界面剥離や緩和層と放電層との界面剥離が問題となる。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、緩和層や放電層の界面剥離を抑制できるスパークプラグを提供することを目的としている。
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、第1電極が、Ptを主体とする放電層とPtを主体とする緩和層とが接合されたチップと、Niを主体とする合金またはNiからなる電極母材と、を備えている。火花ギャップを介して第2電極と第1電極が対向する。緩和層はNiを第2成分として含有する厚さ0.05mm以上の合金からなり、電極母材に溶接される。放電層はRhを第2成分として含有する合金からなる。電極母材に溶接された後のチップの放電層および緩和層の組織は、放電層の平均結晶粒径と緩和層の平均結晶粒径とが互いに異なる。
請求項1記載のスパークプラグによれば、Ptを主体とする緩和層は、Niを第2成分として含有する厚さ0.05mm以上の合金からなるので、Niを主体とする合金またはNiからなる電極母材と、Ptを主体としRhを第2成分として含有する合金からなる放電層との熱膨脹差に起因する熱応力を緩和する。
さらに、チップが電極母材に溶接された後の放電層および緩和層の組織は、放電層の平均結晶粒径と緩和層の平均結晶粒径とが互いに異なるので、放電層や緩和層の結晶粒界に割れを生じさせて熱応力を緩和できる。その結果、電極母材と緩和層との界面剥離や緩和層と放電層との界面剥離を抑制できる効果がある。
請求項2記載のスパークプラグによれば、チップが電極母材に溶接された後の放電層および緩和層の組織は、放電層の平均結晶粒径が、緩和層の平均結晶粒径よりも大きいので、熱応力により放電層の結晶粒界に割れを生じさせて熱応力を緩和できる。よって、請求項1の効果に加え、界面剥離をより抑制できる効果がある。
請求項3記載のスパークプラグによれば、チップが電極母材に溶接された後の放電層の厚さを、チップが電極母材に溶接された後の緩和層の厚さで除した値は3未満である。その結果、請求項2の効果に加え、熱応力により放電層を変形させ易くすることができ、熱応力の緩和効果を確保できる。
請求項4記載のスパークプラグによれば、チップが電極母材に溶接された後の放電層および緩和層の組織は、放電層の平均結晶粒径が、緩和層の平均結晶粒径よりも小さいので、熱応力により緩和層の結晶粒界に割れを生じさせ易くできる。その結果、請求項1の効果に加え、緩和層の結晶粒界の割れによって熱応力を緩和し、界面剥離を抑制できる効果がある。
請求項5記載のスパークプラグによれば、緩和層はNiを3質量%よりも多く含有するので、緩和層の線膨張率を、放電層の線膨張率と電極母材の線膨張率との中間に近づけることができる。その結果、請求項4の効果に加え、界面剥離をより抑制できる効果がある。
請求項6記載のスパークプラグによれば、放電層および緩和層の組成は、チップが1200℃で33時間加熱された後の放電層および緩和層の組織において、放電層の平均結晶粒径が、緩和層の平均結晶粒径よりも大きくなるように設定されている。従って、請求項1から5のいずれかの効果に加え、燃焼室で第1電極が1000℃程度に加熱される環境下において、放電層の結晶粒界に微小な割れを生じさせ易くすることができ、熱応力を緩和できる効果がある。
請求項7記載のスパークプラグによれば、放電層および緩和層の組成は、チップが1200℃で33時間加熱された後の放電層および緩和層の組織において、放電層の平均結晶粒径が、緩和層の平均結晶粒径よりも小さくなるように設定されている。従って、請求項1から5のいずれかの効果に加え、燃焼室で第1電極が1000℃程度に加熱される環境下において、緩和層の結晶粒界に割れを生じさせ易くすることができ、熱応力を緩和できる効果がある。
請求項8記載のスパークプラグによれば、放電層はPt及びRhを85質量%以上含有するので、請求項1から7のいずれかの効果に加え、耐火花消耗性を向上できる効果がある。
本発明の一実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。 中心電極および接地電極の断面図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるスパークプラグ10の片側断面図であり、図2は中心電極13及び接地電極18の断面図である。図1及び図2では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という。
図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極13(第2電極)、主体金具17及び接地電極18(第1電極)を備えている。絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材である。絶縁体11は、軸線Oに沿って軸孔12が貫通する。
中心電極13は、軸孔12に挿入されて軸線Oに沿って絶縁体11に保持される棒状の電極である。中心電極13は、電極母材14と、電極母材14の先端に接合されるチップ15とを備えている。電極母材14は熱伝導性に優れる芯材が埋設されている。電極母材14は、Niを主体とする合金またはNiからなる金属材料で形成されており、芯材は銅または銅を主成分とする合金で形成されている。チップ15は、電極母材14よりも耐火花消耗性の高い白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属または貴金属を主体とする合金によって形成されている。
端子金具16は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、先端側が絶縁体11内に配置される。端子金具16は、軸孔12内で中心電極13と電気的に接続されている。主体金具17は、内燃機関のねじ穴(図示せず)に固定される略円筒状の金属製の部材である。主体金具17は絶縁体11の外周に固定されている。
接地電極18は、主体金具17に接合される電極母材19と、電極母材19に接合されるチップ20と、を備えている。電極母材19は熱伝導性に優れる芯材が埋設されている。電極母材19は、Niを主体とする合金またはNiからなる金属材料で形成されており、芯材は銅または銅を主成分とする合金で形成されている。なお、芯材を省略して、Niを主体とする合金またはNiからなる金属材料で電極母材19の全体を形成することは当然可能である。電極母材19は中心電極13へ向けて屈曲し、チップ20は火花ギャップG(図2参照)を介して中心電極13と対向する。
スパークプラグ10は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、中心電極13を絶縁体11の軸孔12に挿入する。中心電極13は先端が軸孔12から外部に露出するように配置される。軸孔12に端子金具16を挿入し、端子金具16と中心電極13との導通を確保した後、予め電極母材19が接合された主体金具17を絶縁体11の外周に組み付ける。電極母材19にチップ20を接合した後、チップ20が中心電極13と軸線O方向に対向するように電極母材19を屈曲して、スパークプラグ10を得る。
図2に示すようにチップ20は、緩和層21、及び、緩和層21に積層された放電層22を備えたクラッド材料であり、円盤状に形成されている。放電層22は、圧延法、爆着法、拡散法、爆着圧延法などの種々の方法により、緩和層21と金属学的に接合されている。チップ20は、抵抗溶接などによって電極母材19に緩和層21が接合される。
放電層22は、Ptを主体とし、Rhを第2成分として含有する合金である。放電層22がPt及びRhを含有することにより、耐酸化性および耐火花消耗性を確保できる。なお、「Ptを主体とする」とは、放電層22に対するPtの含有率が50質量%以上であることをいう。放電層22は、Pt,Rh以外に、Ni,Cr,Ti,Si,Y,Sr等の第3成分を含有できる。放電層22は、Pt及びRhを85質量%以上含有することが望ましい。耐火花消耗性を向上させるためである。
緩和層21は、Ptを主体とし、Niを第2成分として含有する厚さ0.05mm以上の合金である。緩和層21は電極母材19と放電層22との間に介在して、電極母材19と放電層22との熱膨脹差に起因する熱応力を緩和する。なお、「Ptを主体とする」とは、緩和層21に対するPtの含有率が50質量%以上であることをいう。緩和層21はNiを3質量%よりも多く含有することが望ましい。緩和層21による熱応力の緩和効果を確保するためである。
緩和層21は厚さが0.05mm以上あるので、電極母材19と緩和層21との溶接性を確保できる。その反面、緩和層21の厚さが0.05mm以上になると、電極母材19と放電層22との熱膨脹差に起因する熱応力により、電極母材19と緩和層21との界面剥離や緩和層21と放電層22との界面剥離が生じ易くなる。界面剥離が生じると放電層22やチップ20が浮き上がるので、火花ギャップGが小さくなり、スパークプラグ10の着火性が損なわれる。また、界面剥離が進行して放電層22やチップ20が脱落すると、火花ギャップGが大きくなり、やはりスパークプラグ10の着火性が損なわれる。これらの界面剥離は、最高到達温度が600〜1000℃程度の熱衝撃によって生じる可能性がある。
界面剥離を抑制するため、緩和層21及び放電層22の平均結晶粒径を制御する。結晶粒径が大きいと、転移が集積する範囲(長さ)が大きくなり、集積する転移も多くなる。その結果、応力集中を起こり易くすることができ、結晶粒界に割れを生じさせ易くできる。即ち、緩和層21の平均結晶粒径と放電層22の平均結晶粒径とを異ならせることにより、緩和層21及び放電層22のうち平均結晶粒径の大きい方の層の結晶粒界に割れを生じさせ、熱応力を緩和し、界面剥離を抑制する。緩和層21及び放電層22の結晶粒径は、緩和層21及び放電層22の加工条件や組成を制御して調製できる。
PtNi合金からなる緩和層21やPtRh合金からなる放電層22は、600℃程度の温度では組織がほとんど変化しないので、電極母材19に溶接された後の緩和層21や放電層22の組織が、最高到達温度が600℃程度の熱衝撃による熱応力の緩和に大きな影響を与える。電極母材19に溶接された後の緩和層21や放電層22の組織は、緩和層21や放電層22の加工条件によって制御できる。
一方、緩和層21や放電層22は、1000℃程度に加熱されると経時的に組織が変化して平均結晶粒径が変化する。このときの緩和層21や放電層22の組織は、緩和層21や放電層22の組成によって制御できる。緩和層21や放電層22の組成によって制御された緩和層21や放電層22の組織は、最高到達温度が1000℃程度の熱衝撃による熱応力の緩和に大きな影響を与える。
なお、緩和層21や放電層22の平均結晶粒径は、ISO643(2003年版)を基に作成されたJIS G0551(2013年)の附属書C「切断法による評価」に準拠して求められる。平均結晶粒径は、顕微鏡観察のために研磨された試験片の平らな断面上に現出する結晶粒内を横切る試験線の1結晶粒当たりの平均線分長である。本実施の形態では、軸線Oと平行な直線の試験線、軸線Oと直交する直線の試験線、軸線Oと45°に交わる直線の試験線を、軸線Oを含む断面にそれぞれ1本以上引き、平均結晶粒径を求める。試験線1mm当たりの平均捕捉結晶粒数または試験線1mm当たりの平均交点の数から、結晶粒内を横切る試験線の1結晶粒当たりの平均線分長が求められる。捕捉結晶粒数は試験線が通過または捕捉した結晶の数であり、交点の数は結晶粒界と試験線との交点の数である。
電極母材19に溶接された後の放電層22及び緩和層21の組織において、緩和層21の平均結晶粒径と放電層22の平均結晶粒径とが同じ大きさであると、最高到達温度が600℃程度の熱衝撃によって、電極母材19と緩和層21との界面剥離や緩和層21と放電層22との界面剥離が生じ易いという問題点がある。
これに対し、電極母材19に溶接された後の放電層22及び緩和層21の組織において、放電層22の平均結晶粒径が緩和層21の平均結晶粒径よりも大きいと、最高到達温度が600℃程度の熱衝撃によって放電層22の結晶粒界に割れを生じさせ、放電層22(チップ20)を変形させ易くできる。その結果、放電層22の結晶粒界の割れや放電層22(チップ20)の変形によって熱応力を緩和し、界面剥離を抑制できる。
なお、放電層22の結晶粒界の割れが進行して結晶粒が脱落するとスパークプラグ10の着火性が損なわれるおそれがある。しかし、放電層22(チップ20)が変形することによって、結晶粒界の割れの程度を小さくできるので、放電層22の結晶粒界の割れがスパークプラグ10の着火性に悪影響を与えないようにできる。
また、電極母材19に溶接された後の放電層22及び緩和層21の組織において、放電層22の平均結晶粒径が緩和層21の平均結晶粒径よりも小さいと、最高到達温度が600℃程度の熱衝撃によって緩和層21の結晶粒界に割れを生じさせることができる。その結果、緩和層21の結晶粒界の割れによって熱応力を緩和し、界面剥離を抑制できる。なお、緩和層21は放電などの性能を担う部分ではないので、緩和層21の結晶粒界に割れが生じても、スパークプラグ10の着火性に悪影響を与えないようにできる。
さらに、放電層22及び緩和層21の組成が、チップ20が1200℃で33時間加熱された後の放電層22及び緩和層21の組織において、放電層22の平均結晶粒径が緩和層21の平均結晶粒径よりも大きくなるように設定されると、最高到達温度が1000℃程度の熱衝撃によって、放電層22の結晶粒界に割れを生じさせ易くすることができる。その結果、熱応力を緩和し、界面剥離を抑制できる。
また、放電層22及び緩和層21の組成が、チップ20が1200℃で33時間加熱された後の放電層22及び緩和層21の組織において、放電層22の平均結晶粒径が緩和層21の平均結晶粒径よりも小さくなるように設定されると、最高到達温度が1000℃程度の熱衝撃によって、緩和層21の結晶粒界に割れを生じさせ易くすることができる。その結果、熱応力を緩和し、界面剥離を抑制できる。
なお、放電層22及び緩和層21の厚さは、チップ20が電極母材19に溶接された後の放電層22の厚さを、チップ20が電極母材19に溶接された後の緩和層21の厚さで除した値を3未満にするのが好ましい。緩和層21の厚さに対する放電層22の厚さを3未満にすることで、熱応力により放電層22を変形させ易くして、熱応力の緩和効果を確保するためである。なお、放電層22及び緩和層21の厚さは、軸線Oを含む断面における放電層22及び緩和層21の中央の厚さである。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<サンプルの作成>
試験者は、形状、放電層22及び緩和層21の組成、平均結晶粒径および厚さの異なる種々のチップ20を、放電層22と緩和層21との固相拡散接合により作成した。NFC600製の電極母材19に放電層22を抵抗溶接により接合し、接地電極18に種々のチップ20が設けられたスパークプラグ10のサンプルを作成した。作成したサンプルを一覧にして表1に示した。各サンプルについて複数の評価を行うので、各サンプルは複数準備した。
Figure 2018120651
なお、サンプル1〜56は、クラッド材料で放電層22及び緩和層21が作られたチップ20が接地電極18に設けられている。サンプル57〜62は、放電層22と緩和層21とに分かれていないチップが接地電極18に設けられている。表1におけるチップの「放電層」「緩和層」の欄の数値は元素の質量%を示している。
試験者は、耐火花消耗性を評価するための2種類の試験(試験1及び試験2)、及び、バーナで接地電極18を加熱して放冷する2種類の冷熱繰り返し試験(冷熱試験1及び冷熱試験2)を、各サンプルに別々に実施した。
試験者は、これらの試験とは別に、電極母材19に溶接された後の試験前のチップ20を樹脂に埋め込んだ後に研磨して、顕微鏡観察によって、軸線Oを含む断面上に現出する結晶粒内を横切る試験線(軸線Oと平行、直交、45°に交わるそれぞれ1本以上の直線)の1結晶粒当たりの平均線分長(平均結晶粒径)を求めた。放電層22の平均結晶粒径を緩和層21の平均結晶粒径で除した値を、表1の「結晶粒径」「前」の欄に記した。それと同時に、軸線Oを含む断面上に現出する放電層22の厚さを緩和層21の厚さで除した値を求めた。その値を表1の「厚さ」の欄に記した。
これとは別に、試験者は、チップ20が溶接された試験前の電極母材19を切断した。切断した電極母材19及びチップ20を1200℃で33時間加熱し、その後、樹脂に埋め込んだ電極母材19及びチップ20を研磨して、軸線Oを含む断面上に現出する結晶粒内を横切る試験線(軸線Oと平行、直交、45°に交わるそれぞれ1本以上の直線)の1結晶粒当たりの平均線分長(平均結晶粒径)を求めた。放電層22の平均結晶粒径を緩和層21の平均結晶粒径で除した値を、表1の「結晶粒径」「後」の欄に記した。
<耐火花消耗性 試験1の試験方法および評価方法>
試験者は、排気タービン式過給装置の付いた排気量2.0リットルの4気筒直噴エンジンにスパークプラグ10の各サンプルを取り付け、エンジンを運転した。各サンプルの火花ギャップ(放電層22と中心電極13との間隔)は0.75mmとした。エンジンの運転条件は、回転数を4000rpm、空燃比を12.0、負荷を図示平均有効圧力(NMEP)190kPa、エンジンの運転時間は連続200時間とした。
試験者は、試験後の各サンプルの火花ギャップをピンゲージで測定し、試験による火花ギャップの増加量(消耗量)を求めた。評価は、増加量が0.15mm未満は「A」、増加量が0.15mm以上0.20mm未満は「B」、増加量が0.20mm以上は「C」とした。
<耐火花消耗性 試験2の試験方法および評価方法>
各サンプルの火花ギャップを1.05mmとした以外は、試験1と同様にして、スパークプラグ10の各サンプルを取り付けたエンジンを運転した。
試験者は、試験後の各サンプルの火花ギャップをピンゲージで測定し、試験による火花ギャップの増加量(消耗量)を求めた。評価は、増加量が0.15mm未満は「S」、増加量が0.15mm以上0.20mm未満は「A」、増加量が0.20mm以上0.30mm未満は「B」、増加量が0.30mm以上は「C」とした。
<冷熱試験1の試験方法>
試験者は、電極母材19の先端(主体金具17から最も離れた部分)の温度が600℃になるように2分間バーナで加熱した後、1分間かけて放冷することを1サイクルとして、1000サイクルを電極母材19に加えた。
<冷熱試験2の試験方法>
試験者は、電極母材19の先端の温度が1000℃になるように2分間バーナで加熱した後、1分間かけて放冷することを1サイクルとして、1000サイクルを電極母材19に加えた。
<界面剥離の評価方法>
試験者は、試験後の接地電極18を樹脂に埋め込み、研磨して、チップ20の中心を含む断面を露出させた。顕微鏡観察によって、チップ20の長さ(チップ20と電極母材19との界面に沿った寸法)をA、界面剥離が生じておらず緩和層21と電極母材19とが接合されている部分の長さをa、界面剥離が生じておらず放電層22と緩和層21とが接合されている部分の長さをbとし、界面剥離の割合、即ちX=(A−a)/A(%)、Y=(A−b)/A(%)を求めた。評価は、X,Yの大きい方の値が10%未満は「S」、10%以上40%未満は「A」、40%以上50%未満は「B」、50%以上は「C」とした。
<粒界割れの評価方法>
試験者は、上記の界面剥離を評価した断面(試験後の接地電極18を樹脂に埋め込み、研磨して露出させたチップ20の中心を含む断面)において、放電層22、緩和層21の各々の断面積に対する、粒界割れにより欠損している部分の面積の割合(%)をそれぞれ求めた。評価は、1%未満は「A」、1%以上10%未満は「B」、10%以上は「C」とした。
<変形の評価方法>
冷熱試験後にマイクロメータで測定した電極母材19からのチップ20の突き出し量から、冷熱試験前にマイクロメータで測定した電極母材19からのチップ20の突き出し量を減じた値をチップ20の変形量(μm)とした。
<総合評価の方法>
各評価の「S」に3点、「A」に2点、「B」に1点、Cに0点を付与して各評価を数値化し、合計点を算出した。総合評価は、その合計点が18点以上は「S」、15点〜17点は「A」、11点〜14点は「B」、0点〜10点は「C」とした。但し、各評価のなかに一つでも「C」が存在する場合は、合計点に関わらず、総合評価は「C」とした。
<結果>
表1の「チップ」「組成」の欄に示すように、サンプル1〜52は、放電層がPtRh合金からなり、緩和層がPtNi合金からなるサンプルであった。サンプル53,54は、緩和層はPtNi合金からなるが、放電層がPtRh合金以外の金属からなるサンプルであった。サンプル55,56は、放電層はPtRh合金からなるが、緩和層がPtNi合金以外の金属からなるサンプルであった。サンプル57〜62は、クラッド材料ではないチップを用いたサンプルであった。
冷熱試験1の界面剥離の評価において、サンプル53〜56,57,59,60,62は評価がCであったのに対し、サンプル1〜14,17〜52,58,61は評価がS〜Bであった。このサンプル1〜14,17〜52,58,61のうち、サンプル58,61以外のサンプル1〜14,17〜52は、耐火花消耗性 試験1の評価がA又はBであった。
サンプル1〜52のうち、表1の「結晶粒径」「前」の欄に示すように、サンプル15,16は、電極母材19に溶接された後の放電層22の平均結晶粒径と緩和層21の平均結晶粒径とが同じであった。サンプル1〜14,17〜52は、電極母材19に溶接された後の放電層22の平均結晶粒径と緩和層21の平均結晶粒径とが異なるサンプルであった。サンプル1〜14,17〜52のように、放電層がPtRh合金からなり、緩和層がPtNi合金からなるサンプルでは、電極母材19に溶接された後の放電層22の平均結晶粒径と緩和層21の平均結晶粒径とを互いに異ならせることにより、最高到達温度が600℃の冷熱試験1において、界面剥離を抑制できることが確認された。
サンプル1〜14,17〜52のうち、サンプル1〜14は、電極母材19に溶接された後の放電層22の平均結晶粒径が、緩和層21の平均結晶粒径より小さいサンプルであった。サンプル17〜52は、電極母材19に溶接された後の放電層22の平均結晶粒径が、緩和層21の平均結晶粒径より大きいサンプルであった。サンプル1〜14は、冷熱試験1において、緩和層21の粒界割れの面積が、放電層22の粒界割れの面積より大きいことがわかった。一方、サンプル17〜52は、冷熱試験1において、放電層22の粒界割れの面積が、緩和層21の粒界割れの面積より大きいことがわかった。
これらの結果から、放電層22及び緩和層21のうち平均結晶粒径の大きい層に生じた粒界割れにより、冷熱試験1の熱衝撃で生じた熱応力を緩和して界面剥離を抑制できたと推察される。
冷熱試験1の界面剥離の評価において、サンプル8,9,17〜20,34,35を比べると、緩和層21のNiの含有率が3質量%以下のサンプル17〜20,34,35は評価がBであった。しかし、緩和層21がNiを3質量%よりも多く(5質量%)含有するサンプル8,9は評価がSであった。この結果から、Niを3質量%よりも多く含む緩和層21は、緩和層21の線膨張率が、放電層22の線膨張率と電極母材19の線膨張率との中間に近づいたことで、界面剥離を抑制できたと推察される。
冷熱試験1の界面剥離の評価において、サンプル31〜33を比べると、電極母材19に溶接された後の放電層22の厚さを緩和層21の厚さで除した値が3以上のサンプル32,33は評価がBであった。しかし、放電層22の厚さを緩和層21の厚さで除した値が3未満のサンプル29〜31は評価がSであった。この結果から、放電層22の厚さを薄くすることにより、熱応力により放電層22を変形させ易くすることができ、熱応力の緩和効果を向上できたと推察される。
なお、耐火花消耗性 試験2の評価において、サンプル6,7,13,14を比べると、放電層22がPt及びRhを80質量%含有するサンプル14は評価がCであった。しかし、放電層22がPt及びRhを85質量%以上含有するサンプル6,7,13は評価がA又はBであった。同様に、耐火花消耗性 試験1の評価において、サンプル6,7,13,14を比べると、放電層22がPt及びRhを80質量%含有するサンプル14は評価がBであった。しかし、放電層22がPt及びRhを85質量%以上含有するサンプル6,7,13は評価がAであった。この結果から、放電層22がPt及びRhを85質量%以上含有することにより、耐火花消耗性を向上できることがわかった。
冷熱試験2の界面剥離および粒界割れの評価において、サンプル8〜12とサンプル13,14とを比較し、サンプル17〜24とサンプル25〜33とを比較し、サンプル34〜36とサンプル37〜44とを比較した。サンプル8〜12,17〜24,34〜36は、電極母材19及びチップ20を1200℃で33時間加熱した後の緩和層21の平均結晶粒径が放電層22の平均結晶粒径よりも大きいサンプルであった。サンプル13,14,25〜33,37〜44は、電極母材19及びチップ20を1200℃で33時間加熱した後の放電層22の平均結晶粒径が緩和層21の平均結晶粒径よりも大きいサンプルであった。
それらを比較した結果、サンプル8〜12,17〜24,34〜36は、サンプル13,14,25〜33,37〜44に比べて、粒界割れにより緩和層21の欠損した部分がそれぞれ大きいことが確認された。サンプル8〜12,17〜24,34〜36のように、1200℃で33時間加熱した後の緩和層21の平均結晶粒径が、放電層22の平均結晶粒径よりも大きくなるように緩和層21及び放電層22の組成を調製することにより、最高到達温度が1000℃の冷熱試験2において、緩和層21に粒界割れを生じさせ易くできることがわかった。その結果、熱応力を緩和してチップ20の界面剥離を抑制できる。
また、サンプル13,14,25〜33,37〜44は、サンプル8〜12,17〜24,34〜36に比べて、粒界割れにより緩和層21の欠損した部分がそれぞれ小さいことが確認された。サンプル13,14,25〜33,37〜44のように、1200℃で33時間加熱した後の放電層22の平均結晶粒径が、緩和層21の平均結晶粒径よりも大きくなるように緩和層21及び放電層22の組成を調製することにより、最高到達温度が1000℃の冷熱試験2において、緩和層21の粒界割れを抑制しつつ放電層22に微小な粒界割れを生じさせ易くできることがわかった。その結果、熱応力を緩和してチップ20の界面剥離を抑制できる。
冷熱試験2の変形量において、サンプル17〜24,34〜36を比べると、放電層22が第3成分を含有するサンプル23,24,36は、その他のサンプル17〜22,34,35に比べて、変形量を小さくできることが確認された。
なお、本実施例では、円盤または角柱の形状をしたチップ20を接地電極18に設けたサンプル1〜62について各種の評価を行った。サンプル1〜62によれば、評価結果は、チップ20の形状に何ら影響されないことが確認された。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態では、チップ20の形状が円盤または角柱の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形状を採用することは当然可能である。他のチップ20の形状としては、例えば円錐台状、楕円柱状などが挙げられる。
上記実施の形態では、チップ20を電極母材19に抵抗溶接で接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の手段によってチップ20を電極母材19に接合することは当然可能である。他の手段としては、例えばレーザ溶接が挙げられる。
上記実施の形態では、接地電極18にチップ20(緩和層21及び放電層22)を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。中心電極13に設けられたチップ15に代えて、中心電極13の電極母材14にチップ20を接合することは当然可能である。この場合にも、上記実施の形態で説明したのと同様の作用効果を実現できる。
上記実施の形態では、主体金具17に接合された電極母材19を屈曲させる場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではない。屈曲した電極母材19を用いる代わりに、直線状の電極母材を用いることは当然可能である。この場合には、主体金具17の先端側を軸線O方向に延ばし、直線状の電極母材を主体金具17に接合して、電極母材を中心電極13と対向させる。
上記実施の形態では、中心電極13の軸線Oとチップ20とを一致させ、チップ20が中心電極13と軸線O方向に対向するように接地電極18を配置する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、接地電極18と中心電極13との位置関係は適宜設定できる。接地電極18と中心電極13との他の位置関係としては、例えば、中心電極13の側面と接地電極18とが対向するように接地電極18を配置すること等が挙げられる。
10 スパークプラグ
13 主体金具(第2電極)
18 接地電極(第1電極)
19 電極母材
20 チップ
21 緩和層
22 放電層

Claims (8)

  1. Ptを主体とする放電層とPtを主体とする緩和層とが接合されたチップと、Niを主体とする合金またはNiからなり前記緩和層が溶接された電極母材と、を備える第1電極と、
    前記放電層と火花ギャップを介して対向する第2電極と、を備えるスパークプラグであって、
    前記放電層は、Rhを第2成分として含有する合金からなり、
    前記緩和層は、Niを第2成分として含有する厚さ0.05mm以上の合金からなり、
    前記チップが前記電極母材に溶接された後の前記放電層および前記緩和層の組織は、前記放電層の平均結晶粒径と前記緩和層の平均結晶粒径とが互いに異なることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記チップが前記電極母材に溶接された後の前記放電層および前記緩和層の組織は、前記放電層の前記平均結晶粒径が、前記緩和層の前記平均結晶粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記チップが前記電極母材に溶接された後の前記放電層の厚さを、前記チップが前記電極母材に溶接された後の前記緩和層の厚さで除した値は3未満であることを特徴とする請求項2記載のスパークプラグ。
  4. 前記チップが前記電極母材に溶接された後の前記放電層および前記緩和層の組織は、前記放電層の前記平均結晶粒径が、前記緩和層の前記平均結晶粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のスパークプラグ。
  5. 前記緩和層は、Niを3質量%よりも多く含有することを特徴とする請求項4記載のスパークプラグ。
  6. 前記放電層および前記緩和層の組成は、前記チップが1200℃で33時間加熱された後の前記放電層および前記緩和層の組織において、前記放電層の前記平均結晶粒径が、前記緩和層の前記平均結晶粒径よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスパークプラグ。
  7. 前記放電層および前記緩和層の組成は、前記チップが1200℃で33時間加熱された後の前記放電層および前記緩和層の組織において、前記放電層の前記平均結晶粒径が、前記緩和層の前記平均結晶粒径よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスパークプラグ。
  8. 前記放電層は、Pt及びRhを85質量%以上含有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のスパークプラグ。
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